特許第6635797号(P6635797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6635797-剥離性感圧接着剤組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635797
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】剥離性感圧接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20200120BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20200120BHJP
   C09J 121/02 20060101ALI20200120BHJP
   C09J 107/02 20060101ALN20200120BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J11/08
   C09J121/02
   !C09J107/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-8190(P2016-8190)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-128645(P2017-128645A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502179994
【氏名又は名称】クォー・ユー化成有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】石井 光司
(72)【発明者】
【氏名】金子 英彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 征夫
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/098109(WO,A1)
【文献】 特開2003−119443(JP,A)
【文献】 特開2007−099797(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/103185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックス系接着剤、有機充填材及びワックスを含有し、かつ無機微粒子が固形分比で10質量%以下であかつ
前記ラテックス系接着剤の固形分100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下で前記有機充填材を含有している、
剥離性感圧接着剤組成物。
【請求項2】
前記ワックスが、炭化水素系ワックスである、請求項1に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
【請求項3】
前記ラテックス系接着剤が、ゴムラテックスである、請求項1又は2に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
【請求項4】
前記ラテックス系接着剤の固形分100質量部に対して、5質量部以上100質量部でワックスの固形分を含有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
【請求項5】
無機充填材を含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
【請求項6】
前記有機充填材が、でんぷんである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
【請求項7】
後糊方式用である、請求項1〜のいずれか一項に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時の取扱いが容易である、剥離性感圧接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
親展葉書に用いられる圧着葉書等のための剥離性感圧接着シートが知られている。剥離性感圧接着シートは、基材及び基材上の感圧接着剤層を有し、感圧接着剤層を被着物に対して圧着させることで、被着物の圧着した面に印刷された情報等を隠蔽することができる。感圧接着剤層を形成するための感圧接着剤組成物には、接着性と剥離性とを同時に付与するために、感圧接着剤層に、接着剤と共にシリカ等の無機充填材が添加されている。
【0003】
剥離性感圧接着シートには、所謂先糊方式のものと後糊方式のものとが存在することが知られている。先糊方式の剥離性感圧接着シートでは、基材に感圧接着剤層が形成された後で、その上にインキ層が形成される。先糊方式の剥離性感圧接着シートは、インキ層を形成する前の段階で、例えば製紙メーカー等から販売されている。後糊方式の剥離性感圧接着シートでは、基材にインキ層を形成した後に、感圧接着剤層が形成される。
【0004】
特許文献1は、先糊方式の剥離性感圧接着シートを開示している。ここで用いられている剥離性感圧接着剤組成物は、剥離性を付与するためのシリカと、滑り効果を与えるためのポリオレフィンワックスと、天然ゴムラテックス系の接着剤とを含有している。
【0005】
特許文献2は、後糊方式の剥離性感圧接着シートを開示している。ここで用いられている剥離性感圧接着剤組成物は、剥離性を付与するためのでんぷん及びシリカと、滑り効果を与えるためのポリオレフィンワックスと、天然ゴムラテックス系の接着剤とを含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−238447号公報
【特許文献2】特開2015−44384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の感圧接着剤組成物を用いて剥離性感圧接着シートを製造する時には、製造工程中でシートが接触するガイドロールに汚れが発生していた。そのため、定期的にシートの製造を止めて、クリーニングを行う必要があった。また、従来の剥離性感圧接着剤組成物は、基材に塗工する際に入れておくタンク中で泡立ちが発生し、タンク内での接着剤組成物の残量が確認できなかったり、塗工にムラが生じたりする場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、使用時の取扱いが容易である剥離性感圧接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
ラテックス系接着剤及びワックスを含有し、かつ無機微粒子が固形分比で10質量%以下である、剥離性感圧接着剤組成物。
《態様2》
前記ワックスが、炭化水素系ワックスである、態様1に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
《態様3》
前記ラテックス系接着剤が、ゴムラテックスである、態様1又は2に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
《態様4》
前記ラテックス系接着剤の固形分100質量部に対して、5質量部以上100質量部でワックスの固形分を含有している、態様1〜3のいずれか一項に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
《態様5》
さらに有機充填材を含む、態様1〜4のいずれか一項に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
《態様6》
前記ラテックス系接着剤の固形分100質量部に対して、10質量部以上200質量部で有機充填材を含有している、態様5に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
《態様7》
前記有機充填材が、でんぷんである、態様5又は6に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
《態様8》
後糊方式用である、態様1〜7のいずれか一項に記載の剥離性感圧接着剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用時の取扱いが容易である剥離性の感圧接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は、先糊方式の剥離性感圧接着シートの層構成を示す。図1(b)は、後糊方式の剥離性感圧接着シートの層構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の剥離性感圧接着剤組成物は、ラテックス系接着剤及びワックスを含有し、かつ組成物中の固形分比で無機充填材が10質量%以下である。
【0013】
本発明者らは、従来の剥離性感圧接着シートの製造時に発生していたガイドロールの汚れ対策を検討していた中で、ガイドロールへのコーティング、製造条件の変更等の様々な検討を行ったが、他の条件に悪影響を与えずにガイドロールの汚れをなくすことは極めて困難であった。しかし、鋭意検討した結果、本発明者らは、剥離性感圧接着剤組成物中の無機充填材の量を大幅に減らしつつ、無機充填材の代わりにワックスを使用することで、ガイドロールの汚れの発生を抑制することに成功した。剥離性感圧接着剤組成物において、無機充填材は、その機能の重要性、取扱い性の高さ、及び入手容易性から、代替することは困難であると考えられており、これをワックスの使用で代替できたことは予想外であった。
【0014】
また、無機充填材からワックスに変更したことで、剥離性感圧接着剤組成物は、タンク内で泡立ちを生じなくなり、アニロックスロールへの接着剤組成物の供給を安定化させることができた。これにより、剥離性感圧接着剤組成物の基材への塗工ムラも生じにくくなった。そして、タンク内の接着剤組成物の残量の確認も容易になった。
【0015】
さらに、感圧接着剤層からガイドロールへの無機充填材の脱離がなくなったため、感圧接着剤層の組成にばらつきが生じにくくなり、剥離性感圧接着シートの製造を安定化することができた。
【0016】
本発明の剥離性感圧接着剤組成物を用いて形成する剥離性感圧接着シートは、図1(a)に示すような、基材(1)上の感圧接着剤層(3)上にインキ層(2)が位置する先糊方式の剥離性感圧接着シート(11)であってもよく、図1(b)に示すような、基材(1)と感圧接着剤層(3)との間にインキ層(2)が位置する後糊方式の剥離性感圧接着シート(12)であってもよい。
【0017】
先糊方式の剥離性感圧接着シートの場合には、感圧接着剤層を形成した後に、ロールに巻き取られて、印刷を行う場所へと運搬することになる。このような態様では、ロール状態にある剥離性感圧接着シートが、ブロッキングを起こさないように、強いアンチブロッキング性を感圧接着剤層に与える必要がある。
【0018】
一方で、後糊方式の剥離性感圧接着シートの場合には、インキ層を形成した基材に、感圧接着剤層を形成した後、その場で用途に応じた大きさに切断することが殆どである。したがって、後糊方式の剥離性感圧接着シートの場合には、先糊方式の場合と比べて、強いアンチブロッキング性を感圧接着剤層に与える必要がない。そのため、この場合には剥離性感圧接着剤組成物に無機充填材を殆ど含有させる必要がなく、本発明において好適な態様であるといえる。
【0019】
剥離性感圧接着剤組成物を用いて感圧接着剤層を形成した剥離性感圧接着シートは、折り曲げて感圧接着剤層同士を接着させようとしてもそのままでは接着しないにもかかわらず、圧着した後には、その使用目的に応じた適切な接着性と、基材を破壊することなく手で剥がすことができる剥離性とを有する。
【0020】
例えば、本発明の剥離性感圧接着剤組成物をバーコーターを用いて乾燥時の塗布量約4g/mの条件で上質紙に感圧接着剤層を形成して得た剥離性感圧接着シートを折り曲げて、感圧接着剤層同士をシーラー機を用いて、ローラーギャップ50%の条件で圧着した場合に、JIS Z0238によるT型剥離試験に準拠して引張速度300mm/minで測定した接着力は、10gf/25mm以上、15gf/25mm以上、20gf/25mm以上、25gf/25mm以上、又は30gf/25mm以上であってもよく、300gf/25mm以下、200gf/25mm以下、100gf/25mm以下、80gf/25mm以下、50gf/25mm以下、又は30gf/25mm以下であってもよい。
【0021】
感圧接着剤層の厚みとしては、例えば0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、又は5.0μm以上であってもよく、300μm以下、100μm以下、50μm以下、30μm以下、又は10μm以下であってもよい。
【0022】
本発明の剥離性感圧接着剤組成物は、水系媒体に固形分が分散したラテックスの形態であってもよく、その場合、固形分濃度は、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってもよく、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下であってもよい。
【0023】
本発明の剥離性感圧接着剤組成物を用いて感圧接着剤層を形成した剥離性感圧接着シートは、例えば親展はがき、パンフレット、各種ダイレクトメール、カード等に用いることができる。
【0024】
〈無機充填材〉
無機充填材は、少量であれば本発明の剥離性感圧接着剤組成物に含有されていてもよいが、好ましくは本発明の剥離性感圧接着剤組成物は無機充填材を含有しない。本発明の剥離性感圧接着剤組成物の固形分比で、無機充填材は、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下である。ただし、無機充填材は、強力なアンチブロッキング性を付与することができるため、先糊方式用の剥離性感圧接着剤組成物では、少量では存在していることも好ましい場合がある。
【0025】
そのような無機充填材としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、水酸化アルミニウム、クレー、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等を挙げることができ、特に剥離性感圧接着剤組成物はシリカを含有しないことが好ましい。ただし、シリカは、先糊方式の剥離性感圧接着シートへの特に高いアンチブロッキング性の付与のためには、少量では接着剤組成物中に存在していてもよい。
【0026】
無機充填材は、通常は微粒子の形態であり、走査型電子顕微鏡で十分な数の粒子を観察した場合に観察される個数平均粒子径は、円相当径で、例えば1.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、又は10μm以上であり、100μm以下、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下である。
【0027】
〈ワックス〉
本発明の剥離性感圧接着剤組成物で用いるワックスとしては、感圧接着剤層に剥離性を与えることができるものであれば、特に限定されないが、例えば炭化水素系ワックスを挙げることができる。炭化水素系ワックスとしては、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素系ワックス及びその誘導体;並びにポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、酸化物、ビニル系単量体とのブロック共重合物、グラフト変性物等が挙げられる。また、その他のワックスとして、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びその誘導体等;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;酸アミドワックス;エステルワックス;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックス等も挙げられる。
【0028】
この中でも特に、パラフィンワックス及びその誘導体、ポリエチレンワックス及びその誘導体、並びにポリプロピレンワックス及びその誘導体を挙げることができる。
【0029】
ワックスは、本発明の剥離性感圧接着剤組成物に、固形分の形態で添加されてもよく、又は水中に乳化分散されたラテックスの形態で添加されてもよい。例えば、剥離性感圧接着剤組成物に含まれるラテックス系接着剤の固形分100質量部に対して、ワックスの固形分は、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、又は20質量部以上であってもよく、200質量部以下、150質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、60質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下又は15質量部以下であってもよい。
【0030】
〈ラテックス系接着剤〉
本発明の剥離性感圧接着剤組成物で用いるラテックス系接着剤としては、感圧接着剤層に接着性を与えることができるものであれば、特に限定されないが、例えばゴムラテックスを挙げることができる。ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、天然ゴムラテックス変性体及び合成ゴムラテックスが好適に使用される。天然ゴムラテックス変性体の具体例としては、アクリル変性天然ゴムラテックス、過酸化物前加硫ラテックス等を挙げることができる。また、合成ゴムラテックスの具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。
【0031】
感圧接着剤層が水に濡れた場合であっても、容易に剥離できるように、ラテックス系接着剤として、上記特許文献2に記載のようなノニオン型水系ウレタン樹脂を感圧接着剤組成物に含有させてもよい。ノニオン型水系ウレタン樹脂は、水性媒体にウレタン樹脂が溶解又は分散したものであり、例えば、ウレタン樹脂微粒子を乳化剤により水性媒体中に分散させたラテックスタイプのノニオン型水系ウレタン樹脂が挙げられる。
【0032】
ラテックス系接着剤として、ゴムラテックスとノニオン型水系ウレタン樹脂とを併用する場合には、ゴムラテックス100質量部に対して、ノニオン型水系ウレタン樹脂が3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上であってもよく、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下であってもよい。
【0033】
本発明の剥離性感圧接着剤組成物は、ラテックス系接着剤の固形分を、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上含有していてもよく、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下で含有していてもよい。
【0034】
〈有機充填材〉
本発明の剥離性感圧接着剤組成物は、接着力、剥離性、及び粘度を調整する目的で、有機充填材を含有していてもよい。有機充填材としては、上記の目的を達成できれば、その種類は特に限定されないが、例えばセルロース粉末、コーンスターチ等のでんぷん、スチレン粒子、PMMA粒子を挙げることができ、特にでんぷんを用いることが好ましい。
【0035】
有機充填材は、ラテックス系接着剤の固形分100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、又は50質量部以上であってもよく、300質量部以下、200質量部以下、150質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、60質量部以下、40質量部以下、30質量部以下又は20質量部以下であってもよい。
【0036】
〈基材〉
本発明の剥離性感圧接着剤組成物を用いて形成する感圧接着剤層のための基材としては、感圧接着剤層を形成できる材料であれば、特に限定されない。
【0037】
具体的には、基材としては、紙基材、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、フォイル紙、再生紙、含浸紙、可変情報用紙等;フィルム基材、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、可変情報用フィルム等;又は布基材、例えば、織布、不織布等を使用してよい。
【0038】
基材の厚みとしては、例えば1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、50μm以上、又は100μm以上であってもよく、10mm以下、1mm以下、500μm以下、300μm以下、又は100μm以下であってもよい。
【0039】
〈インキ層〉
インキ層は、インキで形成されている層である。インキ層は、感圧接着剤層を被着物に対して圧着することで隠蔽するべき、情報等を構成することができれば特に限定されることがなく、インキ層を形成するために使用することができるインキは、水性インキ、油性インキ、UVインキ等の公知のインキを用いることができる。
【0040】
基材又は感圧接着剤層へのインキ層の形成は、例えば、凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、インクジェット印刷等の任意の印刷方式により行なわれることができる。
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は以下に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
《試料作製》
以下の表1に記載の組成で、各種の剥離性感圧接着剤組成物を調製した。なお、表1中の組成の数値は、固形分の質量部を意味している。ここで、各成分の詳細は、以下のとおりである:
ラテックス系接着剤:天然ゴムラテックス(固形分50%、商品名QY−25MG・C、クォー・ユー化成有限会社)100質量部に対して、合成ゴムラテックス(固形分49%、商品名L−3200、旭化成ケミカルズ株式会社)を39質量部混合して得たラテックス;
ワックス:ポリオレフィン系ワックス(固形分40%、ノプコマルMS−40、サンノプコ株式会社);
有機充填材:カチオン化タピオカ澱粉(マーメイド C−50、敷島スターチ株式会社);
無機充填材:含水非結晶質二酸化ケイ素(Nipgel(商標)AZ−600、東ソー・シリカ株式会社)。
【0043】
剥離性感圧接着剤組成物を含むタンクから、アニロックスロールを通じて版胴に接着剤組成物を供給して、版胴と圧胴とを通過する文字を印刷した上質紙(NPiフォームNEXT-IJ α、日本製紙株式会社)に、接着剤組成物を塗工した。接着剤組成物を塗工した上質紙を、乾燥炉にロールツーロールで通過させて、接着剤組成物中の水分を乾燥させて、剥離性感圧接着シートを得た。その後、このシートは、複数のガイドローラーを通過して、折り曲げた後に切断し圧着させた。これを、各剥離性感圧接着剤組成物を用いて実施した。
【0044】
《評価方法》
〈ガイドローラー汚れ〉
乾燥炉を通過した後の剥離性感圧接着シートの感圧接着剤層と接触したガイドローラーに汚れがあるかどうかを目視で確認した。100m/minの速度で30分程度運転を続けて、汚れが確認できない場合を○、汚れが確認できた場合を×とした。
【0045】
〈タンク内の泡立ち〉
剥離性感圧接着剤組成物のタンク内に泡立ちが少ない場合を○、多量に発生している場合を×とした。
【0046】
〈接着力〉
バーコーターを用いて、上質紙(NPiフォームNEXT-IJ α、日本製紙株式会社株式会社)に乾燥時の塗布量約4g/mの条件で剥離性感圧接着剤組成物を塗工する。その後シーラー機を用いて、ローラーギャップ50%の条件で圧着し、圧着後1時間放置した後、JIS Z0238によるT型剥離試験に準拠して引張速度300mm/minで測定した。
【0047】
《結果》
実施例1〜8の剥離性感圧接着剤組成物を用いて製造した剥離性感圧接着シートでは、ガイドローラーの汚れが発生せず、またタンク内の剥離性感圧接着剤組成物の泡立ちも発生しなかった。さらに、圧着させた後に、手で圧着部分を剥離させた場合にも基材を損傷させることはなかった。特に、実施例3〜5の剥離性感圧接着剤組成物を用いて製造した剥離性感圧接着シートでは、手で圧着部分を剥離させやすく、かつ接着力も十分な範囲であった。ワックスを含有させなかった比較例1を用いて製造した剥離性感圧接着シートでは、圧着部を剥離させようとしたところ、基材に破れが発生した。また、ワックスの代わりに無機充填材を用いた従来の比較例2の感圧接着剤組成物を用いて製造した剥離性感圧接着シートでは、剥離性感圧接着剤組成物のタンク内で泡立ちが発生し、ガイドローラーにも汚れが発生した。
【0048】
【表1】
【符号の説明】
【0049】
1 基材
2 インキ層
3 感圧接着剤層
11 先糊方式の剥離性感圧接着シート
12 後糊方式の剥離性感圧接着シート
図1