特許第6635831号(P6635831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧
特許6635831プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法
<>
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000003
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000004
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000005
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000006
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000007
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000008
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000009
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000010
  • 特許6635831-プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635831
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】プライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/07 20060101AFI20200120BHJP
【FI】
   B31F1/07
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-38741(P2016-38741)
(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公開番号】特開2017-154344(P2017-154344A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391054453
【氏名又は名称】川之江造機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上岡 一光
(72)【発明者】
【氏名】中野 茂美
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 陽二
(72)【発明者】
【氏名】与那覇 奨
(72)【発明者】
【氏名】一色 裕樹
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−520213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F 1/07−1/12
B31D 1/04
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭用薄葉紙の原紙である連続シートが積層されてなる積層連続シートに対して、その連続方向に沿って平行な二列のプライ圧着エンボスを形成するためのプライ圧着エンボス装置であって、
周面に複数の凸部により形成される凸エンボス条が回転方向に沿って一条配されている凸エンボスロールが二台、一つの受けロールに対して、その受けロールの回転方向の異なる二箇所の位置に、かつ、各凸エンボス条が軸方向に離間して、当接している、ことを特徴とするプライ圧着エンボス装置。
【請求項2】
凸エンボスロールの直径が、280〜320mmである請求項1記載のプライ圧着エンボス装置。
【請求項3】
凸エンボスロールが、肉抜き加工によって軽量化されている請求項1又は2記載のプライ圧着エンボス装置。
【請求項4】
凸エンボスロールの周面に配される凸部の配列パターンが、回転方向の各位置において軸方向に少なくとも一つの凸部の頂部又は凸部の頂部の一部が存在し、凸エンボスロールの凸部の頂部と受けロールとが常に接するパターンとなっている、請求項1〜3記載の何れか1項に記載のプライ圧着エンボス装置。
【請求項5】
各凸エンボスロールがシリンダー装置により各々受けロールに対して押し付けられる、請求項1〜4記載の何れか1項に記載のプライ圧着エンボス装置。
【請求項6】
家庭用薄葉紙の原紙である連続シートが積層されてなる積層連続シートに対して、その
連続方向に沿って平行な二列のプライ圧着エンボスを形成するプライ圧着工程を有する家庭用薄葉紙の製造方法であって、
周面に複数の凸部により形成される凸エンボス条が回転方向に沿って一条配されている凸エンボスロールが二台、一つの受けロールの回転方向の異なる位置において、軸方向に凸エンボス条が離間するようにして接している、プライ圧着エンボス装置を用いて、
積層連続シートに二列のプライ圧着エンボスを形成する、ことを特徴とする家庭用薄葉紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用薄葉紙にプライ圧着エンボスを付与するためのプライ圧着エンボス装置及び家庭用薄葉紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーやトイレットペーパー等の家庭用薄葉紙には、複数枚の原紙が積層された複数プライものがある。この複数プライの家庭用薄葉紙では、各プライの剥離を防止するためにプライ圧着エンボスが付与されているものがある。
【0003】
このプライ圧着エンボスは、エッジエンボス、ナーリング、コンタクトエンボスなどとも呼ばれ、家庭用薄葉紙の原紙となる紙シートを複数枚積層した状態で、周面が綾目ローレット加工されていたり、多数の四角形の凸部が一定ピッチで配列されたエンボスパターンとなっている凸エンボスロールと、この凸エンボスロールと対となる受けロールとの間を通して、前記家庭用薄葉紙の両側縁部に対応する部分に前記多数の凸部等によって形成される凸エンボスパターンに対応するパターンのエンボスを付与することで形成される。
【0004】
従来の、プライ圧着エンボスを付与するための、凸エンボスロールと受けロールとを有するプライ圧着エンボス装置は、図6に示すように、前記凸エンボスロールに、その周方向(回転方向)に沿って、複数の凸部が集合してなるエンボス条が軸方向に間隔を空けて二条配されている。そして、プライマシン等の積層設備において複数の原反ロールから繰出される衛生薄葉紙の各プライとなる連続シートを重ね合わせた積層シートを、上記のとおり凸エンボスロールと受けロールとの間を通すようにして、二条のプライ圧着エンボスを形成し、その後にその二条のプライ圧着エンボスの間で原紙をスリットする。二条のプライ圧着エンボスを形成するようにしているのは、その後のスリットの安定性を高める作用がある。
【0005】
しかし、従来のプライ圧着エンボス装置では、次のような問題が生じていた。第一に、積層した連続シートの搬送速度を加減速する際に、裂けや穴あきが生ずることがある。第二にプライ圧着エンボス付与時に、バウンシングによるプライ剥離や騒音、凸エンボスロールの摩耗が発生する。第三に二条のエンボス条の一方のみが当たる片当たりが発生することがある。そして、これらによって、積層連続シートの搬送速度を高めることが難しくなっている。なお、バウンシングとは、凸エンボスロールが振動して受けロールに対して安定的に接しなくなり、がたつく現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5331530号
【特許文献2】特許第4450421号
【特許文献3】特許第5331503号
【特許文献4】特許第5573594号
【特許文献5】特許第5175625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、上記従来のプライ圧着エンボス装置が有する問題点を改善でき、プライ圧着エンボス付与時における積層連続シートの搬送速度を早めることができ、家庭用薄葉紙の生産性を高めることができる、プライ圧着エンボス装置を提供するとともに、プライ圧着エンボスを形成するプライ圧着工程を有する家庭用薄葉紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
家庭用薄葉紙の原紙である連続シートが積層されてなる積層連続シートに対して、その連続方向に沿って平行な二列のプライ圧着エンボスを形成するためのプライ圧着エンボス装置であって、
周面に複数の凸部により形成される凸エンボス条が回転方向に沿って一条配されている凸エンボスロールが二台、一つの受けロールに対して、その受けロールの回転方向の異なる二箇所の位置に、かつ、各凸エンボス条が軸方向に離間して、当接している、ことを特徴とするプライ圧着エンボス装置。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
凸エンボスロールの直径が、280〜320mmである請求項1記載のプライ圧着エンボス装置。
【0010】
〔請求項3記載の発明〕
凸エンボスロールが、肉抜き加工によって軽量化されている請求項1又は2記載のプライ圧着エンボス装置。
【0011】
〔請求項4記載の発明〕
凸エンボスロールの周面に配される凸部の配列パターンが、回転方向の各位置において軸方向に少なくとも一つの凸部の頂部又は凸部の頂部の一部が存在し、凸エンボスロールの凸部の頂部と受けロールとが常に接するパターンとなっている、請求項1〜3記載の何れか1項に記載のプライ圧着エンボス装置。
【0012】
〔請求項5記載の発明〕
各凸エンボスロールがシリンダー装置により各々受けロールに対して押し付けられる、請求項1〜4記載の何れか1項に記載のプライ圧着エンボス装置。
〔請求項6記載の発明〕
家庭用薄葉紙の原紙である連続シートが積層されてなる積層連続シートに対して、その
連続方向に沿って平行な二列のプライ圧着エンボスを形成するプライ圧着工程を有する家庭用薄葉紙の製造方法であって、
周面に複数の凸部により形成される凸エンボス条が回転方向に沿って一条配されている凸エンボスロールが二台、一つの受けロールの回転方向の異なる位置において、軸方向に凸エンボス条が離間するようにして接している、プライ圧着エンボス装置を用いて、
積層連続シートに二列のプライ圧着エンボスを形成する、ことを特徴とする家庭用薄葉紙の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、従来のプライ圧着エンボス装置が有する問題点を改善でき、プライ圧着エンボス付与時における積層連続シートの搬送速度を早めることができ、家庭用薄葉紙の生産性を高めることができる、プライ圧着エンボス装置が提供されるとともに、プライ圧着エンボスを形成するプライ圧着工程を有する家庭用薄葉紙の製造方法が提供される
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るプライ圧着エンボス装置を説明するための下方から見た平面図である。
図2】本発明に係るプライ圧着エンボス装置を説明するための側面図である。
図3】本発明に係るプライ圧着エンボス装置の効果を説明するための側面図である。
図4】本発明の実施形態の凸エンボスパターンを示す図である。
図5】本発明の第二実施形態の凸エンボスパターンの例を示す図である。
図6】従来のプライ圧着エンボス装置を説明するための下方から見た平面図である。
図7】プライ剥離防止性の試験方法を説明するための図である。
図8】本発明に係るシリンダー装置を有するプライ圧着エンボス装置を説明するための図である。
図9】本発明に係るシリンダー装置を有するプライ圧着エンボス装置を受けロール側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図1〜9を参照しながら詳述する。
本実施形態に係るプライ圧着エンボス装置1は、図1及び図2に示すように、二つ一対の凸エンボスロール10A,10Bと受けロール20とを有しており、各凸エンボスロール10A,10Bが前記受けロール20に軸方向を一致させて周面同士が接するように配置されている。なお、図1に示す平面図では、二つ一対の凸エンボスロール10A,10Bが複数、一つの受けロール20を共用する態様を示している。
【0016】
凸エンボスロール10A,10Bは、周面にプライ圧着エンボス3のパターンに対応する所定のパターンで配された複数の凸部30,30…を有し、この複数の凸部30,30…が回転方向に沿って一条の凸エンボス条31を形成している。なお、本発明における一条の凸エンボス条とは、凸部が一列という意味ではない。複数の凸部からなる集合群が全体として一つの列を形成していることを意味する。
【0017】
本発明に係るプライ圧着エンボス装置1は、凸エンボスロール10A,10Bと受けロール20との間をティシュペーパーやトイレットペーパーの原紙である連続シートが積層された積層連続シート2が通された際に、凸エンボスロール10A,10Bの周面の凸部30,30…が、積層連続シート2に圧接し、これによって積層連続シート2がプライ圧着される。
【0018】
本発明のプライ圧着エンボス装置1は、その一条の凸エンボス条を有する二つの凸エンボスロール10A,10Bが、一つの受けロール20の回転方向の異なる二箇所の位置において、軸方向に凸エンボス条31,31が離間するようにして接する態様となっている。したがって、積層連続シート2は、まず、搬送方向上流側に位置する凸エンボスロール10Aと受けロールとの間を通過し、その後に搬送方向下流側に位置する凸エンボスロール10Bと受けロールとの間を通過する。本発明のプライ圧着エンボス装置1は、このように各凸エンボスロール10A,10Bと受けロールとの間を順に通されることで、二列のプライ圧着エンボス3,3が付与される。
【0019】
各凸エンボスロール10A,10Bは、片持ち或いは両持ちのアームやクランプ等の既知の軸受け部を有する固定手段によって独立に架台などに設置することができる。なお、二列のプライ圧着エンボス3,3が付与された積層連続シート2は、その後のその二列のプライ圧着エンボス3,3の間でスリットや裁断される等して、ティシュペーパーやトイレットペーパーに加工される(図1、スリットや裁断される位置は符号Aで示す)。
【0020】
本発明のプライ圧着エンボス装置1における従来例に対する利点を説明する。まず、図6に示す、一つの凸エンボスロール110に二つの凸エンボス条131,131が形成され、この一つの凸エンボスロール110の各凸エンボス条131,131が一つの受けロール120の回転方向の同位置で接する従来のプライ圧着エンボス装置(以下、従来装置ともいう)101では、積層連続シート102が凸エンボスロール110と受けロール120との間を通るプライ圧着時に、二条の凸エンボス条131,131が理想的に同時に紙面に当接しないことが多々生ずる。これは、家庭用薄葉紙となる原紙である連続シートは、微細なクレープを有し、また薄く低密度で搬送時に波打ちやすく、表面が金属のように平滑ではないことや、凸エンボス条131の摩耗による。そして、上記のように二条の凸エンボス条131,131が理想的に同時に紙面に接触しない場合には、特に二条の凸エンボス条131,131の間において積層連続シート102に皺が入り、その際に過度に積層連続シート102に負荷がかかると裂けが生ずる。このような現象は、積層連続シート102の搬送速度を変更する際、つまり積層連続シートの搬送速度を加減速する際に生じやすい。
【0021】
これに対して、図1に示す本発明に係るプライ圧着エンボス装置1では、二つの凸エンボスロール10A,10Bが一つの受けロール20の回転方向の異なる二箇所の位置において接しており、積層連続シート2が一条の凸エンボス条31のみ有する凸エンボスロール10A,10Bと受けロール20との間を、時間差をもって計二回通ることで、二列のプライ圧着エンボス3,3が付与される。したがって、積層連続シート2が各凸エンボスロール10A,10Bと受けロール20との間を積層連続シート2が通ってプライ圧着する際には、紙面幅方向の広範な部位に皺が逃げる余地があり、従来装置101のような皺や裂けが発生することがない。
【0022】
また、プライ圧着エンボス装置では、凸エンボス条が多数の凸部の集合で構成されていることから、凸部の摩耗が必ず生じ、また、上記のとおりプライ圧着エンボスの対象となる積層連続シートの特性等から周面の凸エンボス条が均等に摩耗することなく偏摩耗することが多々ある。従来装置101では、二条の凸エンボス条131,131の一方の凸エンボス条131に摩耗が生じた場合、その一方の凸エンボス条131が紙面に接しなくなったり、また、逆に軸が傾いて他方の凸エンボス条131が紙面に接しなくなることがある。また、一方の凸エンボス条131に摩耗が生じた場合には、他方の凸エンボス条131の摩耗が無くとも、凸エンボスロール全体の交換が必要となる。
【0023】
これに対して、本発明に係るプライ圧着エンボス装置1では、凸エンボスロール10A、10Bに一条の凸エンボス条31しか配されていないため、従来装置101のような一方の凸エンボス条131のみが摩耗することによる問題は生じ得ず、また、二列のプライ圧着エンボスを付与するための各凸エンボス条31,31が摩耗した際においても、凸エンボスロール10A,10B毎の交換が可能となる。
【0024】
ここで、本発明に係るプライ圧着エンボス装置1においては、二つの凸エンボスロール10A,10Bの特に各凸エンボス条31の軸方向の離間距離L1は、10〜35mmとするのが望ましい。トイレットペーパーやティシュペーパーなどの家庭用薄葉紙におけるプライ剥離の現象は、通常、家庭用薄葉紙の縁から生ずる。したがって、プライ圧着エンボス3は、プライ剥離の防止性を高めるべく、家庭用薄葉紙の縁部に形成される。通常は、縁から15mm以内に配される。上記のとおり、家庭用薄葉紙の製造方法の常法に従えば、プライ圧着エンボス装置1によって形成された二列のプライ圧着エンボス3,3の間のAにおいてスリットや裁断され、そのスリット位置や裁断位置のAが家庭用薄葉紙の縁となるため、本発明に係るプライ圧着エンボス装置1においては、凸エンボス条31,31の軸方向の離間距離L1は35mm以下とするのが望ましいのである。他方で、離間距離L1が10mm未満に過度に狭いと、スリットや裁断をし難くなる。さらに、二回目の凸エンボスロール10Bによるプライ圧着エンボス31と、先行して付与される一回目の凸エンボスロール10Aにおるプライ圧着エンボス31の距離が小さくなるため、皺の発生のおそれが高まる。また、設備設置のスペース的にも難しくなる。
【0025】
本発明に係るプライ圧着エンボス装置1における二つの凸エンボスロール10A,10Bの離間距離(受けロール20の接触位置の離間距離)L2としては、230〜325mmであるのが望ましい。従来一般的な積層連続シートの搬送速度は600〜1200m/min程度であり、二つの凸エンボスロール10A,10Bの離間距離L2が230mm未満であると、二回に分けて時間差をもって付与される本発明の特徴的なプライ圧着エンボス装置1の、その時間差の利点が発現し難くなる。また、特にこの離間距離L2であれば、従来の搬送速度以上に積層連続シートを速めることができる。反対に、シートの搬送速度が1200m/minを超えるようにするには、受けロール20の直径を大きくする必要が生じ、スペースの問題が生ずる。特に、通常、プライ圧着エンボス装置1或いはプライ圧着エンボス装置が設置されるプライマシンやインターフォルダでは、凸エンボスロールはそもそもが摩耗により交換可能であるように構成されているが、受けロールはシート搬送路を形成する搬送ロールを兼ねていることが殆どであるため、交換が難しくなっている。よって、受けロールの直径の拡大は、既存設備の大幅な改修が必要になることが殆どであるため、このような受けロールの直径を拡大することは、家庭用薄葉紙の製造分野においては難しい。
【0026】
他方、本発明に係るプライ圧着エンボス装置1は、従来装置101の凸エンボスロール110ように二条の凸エンボス条131を有さないため、凸エンボスロール10A,10Bの厚み(軸方向厚み)を薄くすることができ、これによる軽量化が図れる。さらに、この軽量化と二つの凸エンボスロール10A,10Bの受けロール20に対する接触位置が回転方向において異なっているため設備設置のスペースにも余裕が生ずる。その結果、凸エンボスロール10A,10Bの直径を大きくすることができる。具体的には、従来凸エンボスロール110の直径は、概ね240〜260mm前後であったところ、本発明に係るプライ圧着エンボス装置1では、凸エンボスロール10A,10Bの直径を280〜320mm、受けロールの径に対して60〜90%までに拡大することが容易に行えるようになる。
【0027】
プライ圧着エンボス装置1における凸エンボスロールは、凸エンボスロールを回転させるための駆動源といったものを有さないものであるため、軽量化すると積層連続シート2の紙面への追従性、特に積層連続シート2の加減速時における追従性が格段に向上するようになり、プライ圧着エンボス3が適切に付与されるようになり、裂けや穴あきが減少する。また、凸エンボスロール10A,10Bの直径の拡大は、周長さが長くなることになり、凸エンボス条31を構成する凸部30の耐摩耗性が向上する。さらに、特に、図2に示されるように、凸エンボスロール10A,10Bの直径が拡大すると、ミクロ的に凸エンボスロール10A,10B周面に付与されている凸部30のエッジ30Eが積層連続シート2の紙面(受けロール周面)に対する接触時の角度(図中の∠A)が小さくなるため、積層連続シート2に皺や穴あきが発生しがたくなる。このような効果は、公知の一般的な家庭用薄葉紙の坪量、厚みにおいて、特にプライ剥離を防止するのに必要な線圧でプライ圧着エンボスを付与する条件では、特に凸エンボスロール10A,10Bの直径が280mmを超えると顕著になる。なお、凸エンボスロール10A,10Bの直径が320mmを超えると設備設置の点で難しくなる。
【0028】
さらに、本発明のプライ圧着エンボス装置1では、凸エンボスロール10A,10Bの大径化と薄型化が可能となることにより、肉抜き加工によって軽量化することが可能となり、このように肉抜き加工によって軽量化するのが望ましい。特に、従来装置101においては、二条の凸エンボス条131,131を有するものであり、凸エンボスロール110の厚みがあったため軸方向に向かって精度よく肉抜き加工をするのが難しいところがあったが、本発明に係るプライ圧着エンボス装置1では、凸エンボスロール10A,10Bが大径化でき、また厚みが薄くなるため精度よく肉抜き加工が可能となる。肉抜き加工によってさらなる軽量化がなされ、積層連続シート2の加減速時における積層連続シート2の紙面(受けロール周面)への追従性が高まり、裂けや穴あきが防止される。この肉抜き加工は、凸エンボスロール10A,10Bの側面に軸方向に貫通する貫通穴を形成したり、ざぐり加工による凹部を形成したりすることにより達成できる。図2では、貫通穴を形成した円形の肉抜き加工部40,40を設けている。なお、回転ブレを防ぐため、このような肉抜き加工部40は、回転方向に等間隔となるように配置するのが望ましい。
【0029】
さらに、本発明のプライ圧着エンボス装置1のより好ましい形態では、図8及び図9に示すように二つの凸エンボスロール10A,10Bが各々、受けロール20に対し、シリンダー装置50,50によって、押し付けられるようになっている。このように凸エンボスロール10A,10Bが独立して動き、受けロール20に対して当接することで、片当たりがより発生し難くなる。さらに、凸部30のエッジ30Eが摩耗することがなくなり、凸エンボスロール10A,10B全体としての摩耗も少なくなり、高速化や長寿命化が図られる。シリンダー装置50は、エアシリンダー、油圧シリンダーなどが利用できるが、特に軽量なエアシリンダーが好ましい。
【0030】
さらに、図示の形態では、凸エンボスロール10A,10Bが、ガイドレールによるガイドによって、受けロールの周回り方向(回動方向)への実質的な移動なく受けロールとの間の距離のみが調整可能となっている。より具体的には、凸エンボスロール10A,10Bは、その両側に位置するアームや受け板などの軸受け部51,51によって両軸支持され、この軸受け部51,51の凸エンボスロール10A,10Bの両側位置の各々の下部52,52に溝が形成されており、凸エンボスロールの両側位置において受けロール20方向に向かって延在する二本のガイドレール53,53に嵌りガイドされるようになっている。なお、図示の形態は、軸受け部51の下部に溝部が形成され、これがガイドレールに嵌ってガイドされる形態であるが、受けロール方向に延在するガイド溝に、軸受け部51の下部が嵌るようにしてガイドされる形態であってもよい。また、軸受け部51は、一つ部材によって形成されている必要はない。
【0031】
そして、この軸受け部51,51が前記シリンダー装置50によって移動可能とされており、凸エンボスロール10A,10B、軸及び軸受け部51,51を含むユニット全体が直接にシリンダー装置50によって移動する直動式となっている。
【0032】
この形態では、凸エンボスロール10A,10Bが、両側に位置する軸受け部51,51によって両軸支持されていることで、凸エンボスロール10A,10Bが軸受け部51,51に対してブレ難く、さらに、その軸受け部51の下部52がガイドレール53によってガイドされているため軸受け部51もブレ難い。また、凸エンボスロール10A、10Bがガイドレールによるガイドによって受けロール20との間の距離のみが調整され、受けロール20の周回り方向に対する位置が変化しない。このため、極めて安定的に凸エンボスロール10A,10Bが受けロール20に接した状態を維持し、片当たりが極めて発生しがたく、そのうえ、シリンダー装置50によって凸エンボスロールと受けロールとの間の位置が調整されても、搬送される原紙に対する摩擦や負荷が少ない。もって、破れなく安定的にプライ圧着を行うことができる。
【0033】
他方、本発明に係るプライ圧着エンボス装置1の凸エンボス条31のエンボスパターンについては、必ずしも限定されない。図4に示すようなローレット加工による綾目パターンであり、特に凸部30の頂部35が平坦とされているものとすることができる。特に好ましいのは、図4及び図5に示すように、凸エンボスロール10A,10Bの周面に配される凸部30の配列パターンが、回転方向の各位置(図中における例えば、G位置、E位置、F位置等)において軸方向に少なくとも一つの凸部30の頂部35又は凸部30の頂部35の一部が存在し、凸エンボスロール10A,10Bの凸部30の頂部35と受けロール20とが常に接するパターンである。このような、凸エンボスロール10A,10Bの凸部30の頂部35と受けロール20とが常に接するパターンでは、凸エンボスロール10A,10Bのがたつきや振動が少なくなり、プライ圧着エンボス付与時における騒音が小さくなり、また、凸エンボスロール10A,10Bの耐摩耗性や穴あきや裂けの問題が格段に解消される。
【実施例】
【0034】
以下、さらに本発明に係るプライ圧着エンボス装置(実施例1〜4)と、比較例1及び従来例のプライ圧着エンボス装置を用いて家庭用薄葉紙を製造し、「プライ剥離の防止性」、製造時における凸エンボスロールの「振動、がたつき」、「耐摩耗性」について評価を行なった。特に、本実施例においては、プライ接合工程の際の搬送速度を、従来例1で行なわれていた速度よりも約150%速めた速度で行い、操業速度を高速化した際の評価となっている。積層連続シートは、坪量が10.7g/m2のティシュペーパー原紙である紙シートを2枚重ねにした2プライ構造のものを用いた。坪量はJIS P 8124(1998)に従って測定した。紙厚は2プライで110μmである。紙厚は、JIS P 8111(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて2プライのままで測定した。結果は、下記の表1に示す。
【0035】
なお、実施例1〜4に係るプライ圧着エンボス装置は、一条の凸エンボス条を有する二つの凸エンボスロールが、一つの受けロール20の回転方向の異なる二箇所の位置において接するもので、特に、受けロールのロール径が500mm、二つの凸エンボスロールの離間距離L2が269mmのものである。
【0036】
比較例1および従来例1に係るプライ圧着エンボス装置は、二つの凸エンボス条を有する一つの凸エンボスロールが、各凸エンボス条が一つの受けロールの回転方向の同位置で接するものである。受けロールのロール径は、実施例1〜4と同様に500mmである。
【0037】
また、実施例1は、図4に示される凸部の回転方向での凸部が連続する、重なりのある配列パターンであり、ロール径は300mm、搬送速度は1,400m/分で行なった。
【0038】
実施例2は、図5に示される凸部の回転方向での凸部が連続しない、重なりのない配列パターンであり、ロール径は300mm、搬送速度は1,400m/分で行なった。
【0039】
実施例3は、図4に示される凸部の回転方向での凸部が連続する、重なりのある配列パターンであり、ロール径は240mm、搬送速度は1,400m/分で行なった。
【0040】
実施例4は、図5に示される凸部の回転方向での凸部が連続しない、重なりのない配列パターンであり、ロール径は240mm、搬送速度は1,400m/分で行なった。
【0041】
比較例1は、上記の従来装置において、本発明において好ましいとされる図4に示される凸部の回転方向での凸部が連続する、重なりのある配列パターンの凸エンボスロールを用いてプライ圧着エンボスの付与を行った。その凸エンボスロールのロール径は250mmであり、搬送速度は1,200m/分とした。
【0042】
従来例1は、上記の従来装置において、従来の凸部の配列パターンである菱形の各頂点が、回転軸方向、回転方向にそれぞれ向いている所謂綾目ローレット加工が施された配列パターンの凸エンボスロールを用いてプライ圧着エンボスの付与を行った。その凸エンボスロールのロール径は250mm、搬送速度は920m/分とした。
【0043】
なお、振動、がたつきについては、約18,000,000mの積層連続シートに対してプライ圧着エンボスの付与をおこなった際の凸エンボスロールの様子を目視にて確認し、従来例を基準として、振動、がたつきが大幅に改善されているものを◎、やや改善されているものを○、振動がたつきが改善されていないものを×と評価した。
【0044】
凸エンボスロールの耐摩耗性については、振動、がたつきの試験を行ったのち、すなわち約18,000,000mの積層連続シートに対してプライ圧着エンボスの付与をおこなった後、凸エンボスロールの摩耗の具合を目視にて確認し、摩耗の進行や偏摩耗の発生具合が従来例以下又は従来例と同等であったものを△、摩耗の進行や偏摩耗の発生具合が従来例よりもやや改善が看られるものを○、摩耗の進行や偏摩耗の発生具合よりも明らかに改善されているものを◎と評価することとした。
【0045】
プライ剥離の防止性については、図7に(1)正面視、(2)側面視を示したように、積層連続シートのコンタクトエンボスが付与された部分を含むようにして幅方向(CD方向)に20mm、連続方向(MD方向)に100mm裁断した試料を用意し、その試料を連続方向の一方端から30mm剥離してその分離端25mmを引張り試験機の各チャックに固定してセットして、一方のチャックを100mm/minの速度で、50mm引っ張った際の、プライ剥離の強度を測定し、その測定値から評価した。評価は、この試験において4.5cN以上の測定値であれば、プライ剥離のおそれがほとんどないと判断できるため、測定値が4.5cN以上であるものを○、4.5cN未満であるものを×と評価した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示す結果のとおり、本発明に従ってプライ圧着エンボスを付与した場合には、プライ剥離の防止性において良好な結果となった。また、製造時における「凸エンボスロールの耐摩耗性」、「振動、がたつき」も顕著に改善されている。特に、本実施例は試験的に、搬送速度(加工速度)を速めて試験を行なっており、本発明に係るプライ圧着エンボス装置を採用して家庭用薄葉紙のプライ圧着を行うことにより、加工速度を速めることが可能である。
【0048】
以上のとおり、本発明に係るプライ圧着エンボス装置によれば、プライ圧着エンボス付与時における凸エンボスロールの摩耗や振動、がたつきが改善され、プライ圧着エンボス付与時における積層連続シートの搬送速度を早めることができ、家庭用薄葉紙の生産性を高めることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,101…プライ圧着エンボス装置、2,102…積層連続シート、3,103…プライ圧着エンボス、10A,10B、110…凸エンボスロール、20,120…受けロール、30…凸部、30E…凸部のエッジ、35…凸部の頂部、31,131…凸エンボス条、32…スリット(裁断)位置、L1…凸エンボス条の離間距離、L2…凸エンボスロールの離間距離、40…肉抜き加工部、50…シリンダー装置、51…軸受け部、52…軸受け部の下部等、53…ガイドレール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9