(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記位置検出部が前記一定時間ごとの前記基準の位置の検出をできなかった場合の、前記指示部材の前記反対の方向への前記第1の回転量の回転と、その後の前記一定の方向への予め設定された第2の回転量の回転との間で、前記位置検出部による前記基準の位置の検出ができなかったときは、前記第1の回転量及び前記第2の回転量をそれぞれ増加させた上で、前記指示部材の前記反対の方向への前記第1の回転量の回転と、その後の前記一定の方向への第2の回転量の回転をさせての前記位置検出部による前記基準の位置を検出させる制御を繰り返し、前記検出ができなかったときに増加させた前記第1の回転量及び前記第2の回転量は、前記繰返し回数に応じて段階的に増加させる請求項1に記載の電子時計。
前記制御部は、前記第1の回転量及び前記第2の回転量をそれぞれ増加させた上で前記指示部材の前記反対の方向への前記第1の回転量の回転と前記一定の方向への前記第2の回転量の回転をさせての前記位置検出手段による前記基準の位置を検出させる制御を繰り返す繰り返し回数が予め設定された一定の回数に達したときは、前記一定の方向への回転を継続させながら、前記位置検出手段による前記基準の位置を検出させる制御を行う請求項2に記載の電子時計。
前記制御部は、前記位置検出部が前記一定時間ごとの前記基準の位置の検出をできなかった場合の、前記位置検出部による前記基準の位置の検出のための前記指示部材の前記一定の方向への回転の角速度を、前記時刻表示のための前記指示部材の前記一定の方向への回転の角速度よりも速くするように制御する請求項1から3のうちいずれか1項に記載の電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電子時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
<電波修正時計の構成>
図1は、本発明に係る電子時計の一実施形態である電波修正時計1を示す平面図、
図2は、電波修正時計1の内部に設けられたステップモータ、駆動輪列、検出部50,60(位置検出部の一例)及び制御部70(制御部の一例)を示す斜視図である。また、
図3は、
図2のステップモータ及び駆動輪列の平面図であり、(A)は電波修正時計1の裏蓋の側から見た図、(B)は電波修正時計1の文字板の側から見た図をそれぞれ示す。
【0017】
本実施形態の電波修正時計1は、
図1に示すように、文字板2に表示されたインデックス3を、一定方向(時計回り方向)に回転する時針4(指示部材の一例)、分針5(指示部材の一例)及び秒針6(指示部材の一例)で指し示すことにより時刻を表示する。すなわち、文字板2並びに時針4、分針5及び秒針6は時刻表示部の一例である。
【0018】
また、電波修正時計1は、時刻の情報を含む信号(例えば、標準電波)を受信するアンテナと、各指針(時針4、分針5、秒針6)を駆動するステップモータ31,41及び駆動輪列10,20と、検出部50,60で検出された各指針の回転の方向における基準の位置を一定時間ごとに検出するとともに、アンテナで受信した電波に基づいて、各指針が正しい時刻を指し示すようにステップモータ31,41の回転を制御するIC等で構成された制御部70とを備えている。
【0019】
ここで、電波修正時計1は、
図2,3に示すように、時針4を駆動する第1のステップモータ31及び第1の駆動輪列10を備えている。なお、第1の駆動輪列10は時針4の他に、日付を表示するための指示部材である日板も駆動するが、日板についての説明は省略する。
【0020】
また、電波修正時計1は、分針5及び秒針6を駆動する第2のステップモータ41及び第2の駆動輪列20を備えている。なお、以下において、第1のステップモータ31及び第1の駆動輪列10を時輪列系、第2のステップモータ41及び第2の駆動輪列20を分秒輪列系という。
【0021】
第1の駆動輪列10は、第1時中間車11、第2時中間車12、第3時中間車13及び筒車14を備えている。第2時中間車12は、後述する第2の駆動輪列20と一部が重なってもよいが、第2時中間車12に形成された後述の検出孔12aは第2の駆動輪列20と重ならない部分となっている。筒車14は第2の駆動輪列20とは重なる部分となっている。第1の駆動輪列10は、第1のステップモータ31の駆動力を、第1時中間車11、第2時中間車12、第3時中間車13、筒車14の順に伝える。
【0022】
図3に示すように、第2時中間車12には、歯車を軸方向に貫通した検出孔12aが1つ形成されている。第2時中間車12は、平面視(駆動輪列10,20の軸方向に直交する方向に見た面)において筒車14とは重ならない位置に配置されている。
【0023】
図4は、検出孔22a,23a,24a,14a,12aが形成された輪列(歯車)を示す図であり、(A)は四番車22、(B)は三番車23、(C)は二番車24、(D)は筒車14、(E)は第2時中間車12、をそれぞれ示す。
筒車14には、時針4が固定されているとともに、
図4(D)に示すように、歯車を軸方向に貫通した検出孔14aが11個形成されている。11個の検出孔14aは、筒車14の回転中心回りに角度間隔30[度]で周方向に並んで形成されている。11個の検出孔14aの両端の2つの検出孔14a,14aの間の角度間隔は60[度]となっている。
【0024】
制御部70は、通常の運針時は、筒車14を軸回りに12時間で1回転させるように第1のステップモータ31の駆動を制御する。このとき、第2時中間車12は軸回りに1時間で1回転する。なお、第2時中間車12は、第1のステップモータ31に対する60ステップの入力に対応して1回転し、筒車14は、第1のステップモータ31に対する720(=60×12)ステップの入力に対応して1回転する。なお、第1の駆動輪列10の各輪列の減速比は一例であり、他の減速比でもよい。
【0025】
第2の駆動輪列20は、五番車21、四番車22、三番車23及び二番車24を備えていて、第2のステップモータ41の駆動力を、五番車21、四番車22、三番車23、二番車24の順に伝える。四番車22には、秒針6が固定されているとともに、
図4に示すように、歯車を軸方向に貫通した検出孔22aが1つ形成されている。
三番車23には、
図4に示すように、歯車を軸方向に貫通した検出孔23aが回転中心を挟んで180[度]の角度間隔で2つ形成されている。二番車24には、分針5が固定されているとともに、
図4に示すように、歯車を軸方向に貫通した検出孔24aが1つ形成されている。
【0026】
また、制御部70は、通常の運針時(時刻表示の動作時)は、四番車22を軸回りに1分間で1回転させ、三番車23を軸回りに8分間で1回転させ、かつ二番車24を軸回りに1時間で1回転させるように、第2のステップモータ41の駆動を制御する。このとき、第2時中間車12は軸回りに1時間で1回転する。
【0027】
なお、四番車22は、第2のステップモータ41に対する60ステップの入力に対応して1回転し、三番車23は、第2のステップモータ41に対する480(=60×8)ステップの入力に対応して1回転し、二番車24は、第2のステップモータ41に対する3600(=60×60)ステップの入力に対応して1回転する。また、三番車23の減速比は一例であり、他の減速比でもよい。
【0028】
また、第2の駆動輪列20は、四番車22の検出孔22aと、三番車23の検出孔23aと、二番車24の検出孔24aとが、通常の運針時は1時間に1回、平面視での位置が一致して軸方向に重なるように、回転方向の位置が整えられている。
【0029】
なお、三番車23の2つの検出孔23aは他の検出孔22a,24aに比べて周方向に長い孔である。これは、二番車24と四番車22とは同軸で回転するため検出孔24aと検出孔22aとを重ねた状態で組み付け易いのに対して、三番車23は二番車24及び四番車22と同軸でないため、検出孔23aを検出孔22a,24aと平面視で重なった状態で組み付け易くするためである。したがって、検出孔22a,23a,24aを軸方向に重ねた状態での組み付け性を問わなければ、検出孔23aは他の検出孔22a,24aと同様の円であってもよい。
【0030】
二番車24、四番車22、筒車14は、一致した回転中心Cを有し、
図1に示すように、時針4、分針5及び秒針6の回転中心となっている。つまり、第1の駆動輪列10と第2の駆動輪列20とは、一部同士が同一の軸線上に重なって配置されている。
そして、筒車14の検出孔14aは、四番車22の検出孔22aと三番車23の検出孔23aと二番車24の検出孔24aとが軸方向に重なった状態で、軸方向に重なる位置に形成されている。
【0031】
ただし、筒車14は、第1のステップモータ31によって駆動され、一方、四番車22、三番車23及び二番車24は、第2のステップモータ41によって駆動される。つまり、時輪列系の筒車14と、分秒輪列系の四番車22、三番車23及び二番車24とは、互いに独立して回転させることができる。
【0032】
したがって、四番車22の検出孔22a、三番車23の検出孔23a及び二番車24の検出孔24aを軸方向に重ねて第2の駆動輪列20を組み立て、筒車14の検出孔14aが検出孔22a、検出孔23a及び検出孔24aに重ならない状態で筒車14を組み立てたとしても、第1のステップモータ31を駆動して筒車14を回転させることにより、筒車14の検出孔14aを、検出孔22a、検出孔23a及び検出孔24aに重ねた状態にすることができる。
【0033】
なお、筒車14の検出孔14aは11個形成されているため、筒車14に固定される時針4が、0時(12時)00分00秒を指示したときから1時間おきに、10時(22時)00分00秒を指示するときに対応して、検出孔14a,22a,23a,24aが軸方向に重なるように調整されている。
【0034】
ただし、これは、筒車14を1回転させたときに、筒車14の回転位置を検出するための構造であるため、時針4が0時(12時)00分00秒を指示したときから1時間おきに、10時(22時)00分00秒を指示するときまで、検出孔14a,22a,23a,24aが軸方向に重なるように調整されているものに限定されない。
【0035】
したがって、時針4が1時(13時)00分00秒を指示したときから1時間おきに、11時(23時)00分00秒を指示するときまで、検出孔14a,22a,23a,24aが軸方向に重なるように調整されていてもよいし、時針4が23時(11時)00分00秒を指示したときから1時間おきに、9時(21時)00分00秒を指示するときまで、検出孔14a,22a,23a,24aが軸方向に重なるように調整されていてもよい。
【0036】
また、電波修正時計1は、上述した検出孔14a,22a,23a,24aが特定の位置で重なった軸方向の両側に配置されて、4つの検出孔14a,22a,23a,24aの軸方向の重なりを検出する第2の検出部60と、第2時中間車12の回転方向の特定の位置で検出孔12aを貫通した軸方向の両端に配置されて検出孔12aを検出する第1の検出部50とを備えている。
【0037】
第1の検出部50は、発光するLEDチップ51と、LEDチップ51が発光した光を検知するフォトトランジスタ52とを備えている。LEDチップ51とフォトトランジスタ52との間には、第2時中間車12の歯車が配置されているため、第2時中間車12が1回転する1時間のうちの多くの期間は、LEDチップ51から発光した光は第2時中間車の歯車に遮られてフォトトランジスタ52には到達せず、フォトトランジスタ52は光を検出しない。
【0038】
しかし、第2時中間車12の検出孔12aがLEDチップ51とフォトトランジスタ52との間を通過したときだけは、LEDチップ51から発光した光がフォトトランジスタ52に到達して、フォトトランジスタ52は光を検出する。フォトトランジスタ52による光の検出結果は、制御部70に入力されている。つまり、制御部70は、1時間に1回、第1の駆動輪列10の回転位置を検出し、この検出した位置を時輪列系の基準位置として、記憶部71に記憶させる。
【0039】
図5は、筒車14の検出孔14a、四番車22の検出孔22a、三番車23の検出孔23a及び二番車24の検出孔24aが軸方向に重なった位置に、LEDチップ61及びフォトトランジスタ62が配置されている様子を示す断面図である。
【0040】
第2の検出部60も第1の検出部50と同様に、発光するLEDチップ61と、LEDチップ61が発光した光を検知するフォトトランジスタ62とを備えている。LEDチップ61とフォトトランジスタ62との間には、筒車14、四番車22、三番車23及び二番車24が配置されているため、これら筒車14、四番車22、三番車23及び二番車24が回転している期間のうちの多くの期間は、LEDチップ61から発光した光は筒車14、四番車22、三番車23及び二番車24のうちいずれかの歯車に遮られてフォトトランジスタ62には到達せず、フォトトランジスタ62は光を検出しない。
【0041】
しかし、4つの検出孔14a,22a,23a,24aが軸方向に重なったときは、LEDチップ61からの光がフォトトランジスタ62に到達して、フォトトランジスタ62は光を検出する。フォトトランジスタ62による光の検出結果は、制御部70に入力されている。つまり、制御部70は、1時間に1回、第2の駆動輪列20の回転位置を検出し、この検出した位置を分秒輪列系の基準位置(基準の位置)として、記憶部71に記憶させる。
【0042】
フォトトランジスタ52が光を検出するタイミングとフォトトランジスタ62が光を検出するタイミングとは、必ずしも一致しないが、フォトトランジスタ52が光を検出するタイミングとフォトトランジスタ62が光を検出するタイミングとの時間差(第1のステップモータ31を駆動するステップ数の差)は、各ステップモータ31,41及び各駆動輪列10,20が正常に動作している限りにおいて、常に一定の基準となる対応関係を有していて変化することはない。ただし、この時間差は、電波修正時計1ごとの個体差によって異なる値となっていてもよい。
【0043】
制御部70は、記憶部71と判定部72とを備えている。
記憶部71は、電波修正時計1が実際に組み立てられた後にフォトトランジスタ52が光を検出した時輪列系の基準位置からフォトトランジスタ62が光を検出した分秒輪列系の基準位置までに第1のステップモータ31を駆動したステップ数を基準のステップ数として記憶する。この基準のステップ数は、フォトトランジスタ52が光を検出できた第2時中間車12の検出孔12aの基準位置から、筒車14の検出孔14aによりフォトトランジスタ62が光を検出できるようになる位置までの位相差に対応している。
【0044】
したがって、制御部70は、第2時中間車12の検出孔12aが検出された時輪列系の基準位置から、位相差に対応した基準のステップ数だけ第1のステップモータ31を駆動することにより、筒車14の検出孔14aを、分秒輪列系の基準位置に配置することができる。
【0045】
その後の電波修正時計1の使用中において、制御部70は、記憶部71に記憶された時輪列系の基準位置で、時輪列系に対応したLEDチップ51を発光させて、フォトトランジスタ52が光を検出することができるか否かを判定部72に判定させる。フォトトランジスタ52が光を検出することができたときは、判定部72は、時輪列系の基準位置はずれておらず、時針の回転位置は正しいと判定する。
【0046】
一方、フォトトランジスタ52が光を検出することができなかったときは、例えば電波修正時計1に衝撃や外部磁場が加わる等して第1のステップモータ31のロータが、制御部70から指令されたステップ数に対応せずに回転した場合であり、判定部72は、時輪列系の基準位置はずれていて、時針の回転位置は誤っていると判定する。
【0047】
また、制御部70は、記憶部71に記憶された分秒輪列系の基準位置で、分秒輪列系に対応したLEDチップ61を発光させて、フォトトランジスタ62が光を検出することができるか否かを判定部72に判定させる。フォトトランジスタ62が光を検出することができたときは、判定部72は、分秒輪列系の基準位置はずれておらず、分針及び秒針の回転位置は正しいと判定する。
【0048】
これに対して、フォトトランジスタ62が光を検出することができなかったときは、例えば電波修正時計1に衝撃や外部磁場が加わる等して第1のステップモータ31のロータ及び第2のステップモータ41のロータのうち少なくとも一方が、制御部70から指令されたステップ数に対応せずに回転した場合であり、時輪列系と分秒輪列系との間の位相差に対応したステップ数が、記憶部71に記憶された位相差に対応した基準のステップ数に対してずれている。この場合、判定部72は、分秒輪列系の基準位置がずれていて、時刻表示は誤っている判定する。
【0049】
時輪列系の基準位置がずれていると判定部72が判定したときは、制御部70は、時輪列系の基準位置を探索する制御を行う。つまり、制御部70は、時輪列系の第1のステップモータ31を1ステップずつ駆動させながら基準位置の探索を行う。すなわち、制御部70は、時輪列系の第1のステップモータ31を1ステップずつ駆動するとともに、1ステップごとにLEDチップ51を発光させて、フォトトランジスタ52が光を検出した位置を時輪列系の基準位置として検出する。この制御部70による第1のステップモータ31の駆動の制御及び第1の検出部50の制御の詳細は後述する。
【0050】
なお、基準位置のずれは、モータステアリングとの関係によっては、必ず偶数ステップずれるため、このような場合は、1ステップずつ駆動させながら1ステップごとにLEDチップ51を発光させて基準位置の探索を行うのではなく、2ステップずつ駆動させながら2ステップごとにLEDチップ51を発光させて基準位置の探索を行うようにすればよい。
【0051】
制御部70は、分秒輪列系の基準位置がずれていると判定したときは、分秒輪列系の基準位置を探索する制御を行う。つまり、制御部70は、まず、時輪列系を時輪列系の基準位置から、記憶部71に記憶された位相差に対応した基準のステップ数だけ通常運針の方向に駆動する。このとき、時輪列系の筒車14は、検出孔14aが分秒輪列系の基準位置に停止した状態となる。
【0052】
制御部70は、次に、筒車14の検出孔14aが分秒輪列系の基準位置に停止した状態で、分秒輪列系の第2のステップモータ41を1ステップずつ駆動させながら基準位置の探索を行う。すなわち、制御部70は、分秒輪列系の第2のステップモータ41を1ステップずつ駆動するとともに、1ステップごとにLEDチップ61を発光させて、フォトトランジスタ62が光を検出した位置を分秒輪列系の基準位置として特定する。この制御部70による第2のステップモータ41の駆動の制御及び第2の検出部60の制御の詳細は後述する。
【0053】
なお、分秒輪列系についても、時輪列系の場合と同様の理由により、1ステップずつ駆動させながら1ステップごとにLEDチップ61を発光させて基準位置の探索を行うのではなく、2ステップずつ駆動させながら2ステップごとにLEDチップ61を発光させて基準位置の探索を行うようにしてもよい。
【0054】
<電波修正時計の動作>
以上のように構成された電波修正時計1は、第2の駆動輪列20が組み立てられる際には、第2の検出部60により検出孔22a,23a,24aが検出されるように、四番車22、三番車23及び二番車24の各検出孔22a,23a,24aが軸方向に重ねられた状態に位置決めされる。
組み立ての際は、これら3つの輪列(四番車22、三番車23及び二番車24)だけ、第2の検出部60で検出される位置に、回転位置を揃えればよい。
【0055】
次いで、二番車24及び四番車22と同軸に、第1の駆動輪列10の筒車14を組み立てる際は、筒車14の検出孔14aを第2の駆動輪列20の3つの検出孔22a,23a,24aに重ねる必要は無い。また、筒車14の検出孔14aと第2時中間車12の検出孔12aとの回転位置の関係(位相関係)も特定の位置関係とする必要はない。
【0056】
つまり、第1の検出部50が検出の対象とする輪列(歯車)は、第2時中間車12であり、第2の検出部60が検出する輪列(歯車)は、筒車14、二番車24、三番車23及び四番車22であり、第1の検出部50が検出する対象の歯車と第2の検出部60が検出する対象の歯車とは共通しない。
【0057】
したがって、電波修正時計1は、第1の駆動輪列10及び第2の駆動輪列20との組み立ての際に、4つ以上の歯車(番車)の回転位置を特定の状態に揃えるものに比べて、組み立ての難易度を緩和することができる。
また、回転位置の検出に用いられる、軸方向に重なる輪列の数が少なくなるため、電波修正時計1の厚さを薄くすることができる。
【0058】
組み立てられた状態の電波修正時計1は、上述した時輪列系の基準位置、分秒輪列系の基準位置及び位相差に対応した基準のステップが記憶部71に記憶されている。
図6は、制御部70による、時輪列系の基準位置を探索する動作を示すフローチャートである。時刻表示を行っている通常の運針時に、制御部70は、第2時中間車12の検出孔12aが、記憶部71に記憶された時輪列系の基準位置を通過する所定のタイミング(1時間に1回の周期)で、フォトトランジスタ52が光を検出したか否か、すなわち時輪列系の基準位置を検出したか否かを判定する(
図6のS11)。
【0059】
検出できたとき(S11においてYES)は、1時間後である次の所定のタイミングで同様に検出できるか否かを判定する。
検出できなかったとき(S11においてNO)は、制御部70は、時輪列系を通常の運針時の回転方向とは反対の方向に、第2時中間車12の一回転の半分よりも少ない予め設定された第1の回転量、例えば、第1のステップモータ31の10ステップだけ回転させるように、第1のステップモータ31を制御する。(S12)
【0060】
第1のステップモータ31の10ステップは、第2時中間車12が角度60[度]回転する回転量に相当する。
なお、時輪列系を通常の運針時の回転方向とは反対の方向に回転させる第1の回転量は、上述した10ステップに限定されるものではなく、2ステップ以上30ステップ(第2時中間車12の1回転の半分に相当)未満であれば、4ステップであってもよいし、6ステップでも、8ステップでもよい。なお、ロータのずれは通常は多くても数ステップであるから、第1の回転量は、2ステップ以上10ステップ以下で設定されていることが好ましい。
【0061】
その後、制御部70は、時輪列系を通常の運針時の回転方向に第1のステップモータ31の1ステップずつ回転させながら、1ステップごとにLEDチップ51を発光させて、フォトトランジスタ52が光を検出するのを待つ(S13、S14)。フォトトランジスタ52が光を検出した時点で、制御部70による、時輪列系を通常の運針時の回転方向に第1のステップモータ31の1ステップずつ回転させる制御は終了する。
そして、制御部70は、フォトトランジスタ52が光を検出し時輪列系の基準位置を検出したときの回転位置を、時輪列系の基準位置として設定し直し、記憶部71に記憶させる。
【0062】
なお、制御部70が、時輪列系の基準位置の検出のために第1のステップモータ31を、通常の運針時の回転方向と反対の方向に回転させ、また、その後、通常の運針時の回転方向に1ステップずつ回転させるときの回転は、通常の運針時(1[ステップ/min](=1/60[Hz]))よりも速い角速度(例えば、10[ステップ/s](=10[Hz]))で回転される。
【0063】
図7は、制御部70による、分秒輪列系の基準位置を探索する動作を示すフローチャートである。時刻表示を行っている通常の運針時に、制御部70は、筒車14の検出孔14a、二番車24の検出孔24a、三番車23の検出孔23a及び四番車22の検出孔22aが、記憶部71に記憶された分秒輪列系の基準位置を通過する所定のタイミング(1時間に1回の周期)で、フォトトランジスタ62が光を検出したか否か、すなわち分秒輪列系の基準位置を検出したか否かを判定する(
図7のS21)。
【0064】
検出できたとき(S21においてYES)は、1時間後である次の所定のタイミングで同様に検出できるか否かを判定する。
検出できなかったとき(S21においてNO)は、制御部70は、まず、時輪列系を基準位置から、記憶部71に記憶された位相差に対応する基準のステップ数だけ、通常の運針時の回転方向に回転させて停止させるように、第1のステップモータ31を制御する(S22)。このとき、時輪列系の筒車14は、検出孔14aが分秒輪列系の基準位置に停止した状態となる。
【0065】
筒車14の検出孔14aが分秒輪列系の基準位置に停止した状態で、制御部70は、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向とは反対の方向に、二番車24の一回転の半分よりも少ない予め設定された第2の回転量、例えば、第2のステップモータ41の60ステップだけ回転させるように、第2のステップモータ41を制御する(S23)。
【0066】
第2のステップモータ41の10ステップは、四番車22が角度60[度]回転する回転量に相当する。
なお、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向とは反対の方向に回転させる第2の回転量は、上述した10ステップに限定されるものではなく、2ステップ以上30ステップ(四番車22の1回転の半分に相当)未満であれば、4ステップであってもよいし、6ステップでも、8ステップでもよい。なお、ロータのずれは通常は多くても数ステップであるから、第2の回転量は、2ステップ以上10ステップ以下で設定されていることが好ましい。
【0067】
その後、制御部70は、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向に第2のステップモータ41の1ステップずつ回転させながら、1ステップごとにLEDチップ61を発光させて、フォトトランジスタ62が光を検出するのを待つ(S24,S25)。フォトトランジスタ62が光を検出した時点で、制御部70による、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向に第2のステップモータ41の1ステップずつ回転させる制御は終了する。
そして、制御部70は、フォトトランジスタ62が光を検出し分秒輪列系の基準位置を検出したときの回転位置を、分秒輪列系の基準位置として設定し直し、記憶部71に記憶させる。
【0068】
なお、制御部70が、分秒輪列系の基準位置の検出のために第2のステップモータ41を、通常の運針時の回転方向と反対の方向に回転させ、また、その後、通常の運針時の回転方向に1ステップずつ回転させるときの回転は、通常の運針時(1[ステップ/min](=1/60[Hz]))よりも速い角速度(例えば、10[ステップ/s](=10[Hz]))で回転される。
【0069】
このように、本実施形態の電波修正時計1によれば、時輪列系の基準位置及び分秒輪列系の基準位置の検出の動作において、時輪列系及び分秒輪列系を、通常の運針時とは反対の方向に少し回転させた後に、その反対の方向に少し回転させた位置から、通常の運針時の回転方向に回転させて検出を行う。したがって、通常の運針動作で検出の周期が1時間という長いものであって、通常の運針時に本来検出されるべきであった基準位置よりも早いタイミングの方向(時刻の進み方向)に基準位置がずれていた場合であっても、時輪列系や分秒輪列系を単純に通常の運針方向に回転させて検出できるか否かを探索する場合に比べて、短時間のうちに基準位置を検出することができる。
【0070】
なお、通常の運針時に本来検出されるべきであった基準位置よりも遅れたタイミングの方向(時刻の遅れ方向)に基準位置がずれていた場合であっても、時輪列系や分秒輪列系を通常の運針方向とは反対の方向に回転させる回転量は、本来の検出周期に比べてごくわずかであるため、時輪列系や分秒輪列系を単純に通常の運針方向に回転させて検出できるか否かを探索する場合に比べて、わずかに延びるにすぎない。
【0071】
また、本実施形態の電波修正時計1は、時輪列系の基準位置及び分秒輪列系の基準位置の検出の動作において、通常の運針時とは反対の方向に少し回転させた状態から通常の運針時の回転方向に回転させる際に、通常の運針動作よりも早回し(速い角速度)で回転させるため、一層早いタイミングで基準位置を検出することができる。
【0072】
なお、本実施形態の電波修正時計1は、通常の運針時において時輪列系の基準位置が検出できなかったとき、制御部70が、時輪列系を通常の運針時の回転方向とは反対の方向に回転させるように制御する(
図6におけるS11)が、時輪列系は60ステップごとに基準位置を検出可能であって、分秒輪列系に比べて短時間の周期で検出できるため、時輪列系については反対方向への回転を行わずに、分秒輪列系のみ反対方向に回転させての検出を行うようにしてもよい。
【0073】
<変形例>
上述した実施形態の電波修正時計1は、時輪列系の基準位置の探索も分秒輪列系の基準位置の探索も、制御部70が、通常の運針時の回転方向(以下、正回転方向という。)とは反対の方向に回転させるステップ数を一定の値に固定して回転させ、そのステップ数だけ反対に回転した回転位置から正回転方向に1周回転させるように制御している。
【0074】
しかし、本発明の電子時計はこの形態に限定されるものではなく、反対の方向に回転させるステップ数を最初は小さく設定した上で正回転方向への回転させるステップ数も一定の値(例えば、反対の方向に回転させるステップ数の2倍のステップ数)に設定して探索を行い、探索できなかったときは、反対の回転方向に回転させるステップ数及び正回転方向に回転させるステップ数を段階的に増やしながら探索範囲を徐々に広げて、反対の回転方向への回転と正回転方向への回転とを複数回繰り返すように、制御部70が制御してもよい。
【0075】
この場合、反対の回転方向への回転と正回転方向への回転との繰り返しの回数に上限となる所定回数を設けて、繰り返しの回数(反対の回転方向への回転の回数と一致)が所定回数に達した場合は、正回転方向への回転をよる探索を、1周回転させるまで継続させるようにしてもよい。
【0076】
図8は、制御部70が分秒輪列系の基準位置を探索する制御の変形例を示すフローチャートである。
図8に示した変形例では、制御部70が、反対の回転方向に回転させるステップ数N1及び正回転方向に回転させるステップ数N2(N2=2×N1)を段階的に増やし(αステップずつ増やし)ながら探索の範囲を徐々に広げ、反対の回転方向への回転と正回転方向への回転とを2以上の所定回数繰り返すように、第1のステップモータ31、第2のステップモータ41及び第2の検出部60を制御する。
【0077】
具体的には、制御部70は、筒車14の検出孔14a、二番車24の検出孔24a、三番車23の検出孔23a及び四番車22の検出孔22aが、記憶部71に記憶された分秒輪列系の基準位置を通過する所定のタイミング(1時間に1回の周期)で、フォトトランジスタ62が光を検出したか否か、すなわち分秒輪列系の基準位置を検出したか否かを判定する(
図8のS31)。
【0078】
検出できたとき(S31においてYES)は、1時間後である次の所定のタイミングで同様に検出できるか否かを判定する。検出できなかったとき(S31においてNO)は、制御部70は、まず、時輪列系を基準位置から、記憶部71に記憶された位相差に対応する基準のステップ数だけ、通常の運針時の回転方向に回転させて停止させるように、第1のステップモータ31を制御する(S32)。このとき、時輪列系の筒車14は、検出孔14aが分秒輪列系の基準位置に停止した状態となる。
【0079】
筒車14の検出孔14aが分秒輪列系の基準位置に停止した状態で、制御部70は、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向とは反対の方向に回転させるが、制御部70は、その反対の方向に回転させた回数M(初期値1)をカウントし、M=1(1回目)であるか否かを判定する(S33)。
【0080】
1回目であったときはステップ35(S35)に進む。1回目でなく2回目以後であったときは、反対の方向に回転させるステップ数N1(初期値は例えば10)をαステップ(αは例えば10)だけ増加させて(S34)、ステップ35(S35)に進む。1回目であったときは、ステップ数N1は初期値10のままである。
【0081】
なお、ステップ数N1の初期値は10ステップに限定されるものではなく、2ステップ以上1800ステップ(二番車24の1回転の半分に相当)未満であれば、4ステップであってもよいし、6ステップでも、8ステップでもよい。また、増加するステップ数αも、10ステップに限定されるものではなく、2ステップ以上30ステップ未満であれば、4ステップであってもよいし、6ステップでも、8ステップでもよい。
【0082】
そして、制御部70は、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向とは反対の方向に、第2のステップモータ41のN1ステップだけ回転させるように、第2のステップモータ41を制御する(S35)。
【0083】
その後、制御部70は、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向に第2のステップモータ41の1ステップ(又は2ステップ)ずつ回転させながら、正回転方向の回転のステップ数がN2(例えば、N1の2倍とする。第2の回転量)に達するまで、1ステップ(又は2ステップ)ごとにLEDチップ61を発光させて、フォトトランジスタ62が光を検出するのを待つ(S36,S37,S38)。正回転方向の回転のステップ数N2は、ステップ数N1の2倍に限定されるものではなく、ステップ数N1よりも大きな値であればよい。また、ステップ数N2は、ステップ数N1がαステップずつ増加するのに連動して増加しなくてもよく、一定値としてもよい。
【0084】
フォトトランジスタ62が光を検出した時点で、制御部70による、分秒輪列系を通常の運針時の回転方向に第2のステップモータ41の1ステップずつ回転させる制御は終了する(S37においてYES)。
【0085】
一方、反対の方向へステップ数N1回転した回転位置から、正回転方向にステップ数N2回転した回転位置までの1回目の探索範囲(例えば−10ステップ〜+10ステップ)で基準位置が検出できなかったとき(S37においてNO及びS38においてYES)は、制御部70は、反対の方向への回転の回数Mが予め設定された所定回数(例えば3回)に達したか否かを判定する(S39)。
【0086】
回数Mと対照される予め設定された回数は3回に限定されず、2回以上であれば制限を設けなくてもよい。ただし、この回数Mは繰り返しの回数であるため、繰り返し回数が多すぎても、その繰り返しに要する時間が無駄になるため、3回程度を上限に設定するのが好ましい。
【0087】
所定の回数に達していないとき(S39においてNO)は、ステップ42(S42)においてMを1だけカウントアップし、ステップ33(S33)に戻る。所定の回数に達していたとき(S39においてYES)は、ステップ40(S40)に進む。ここでは、M=1で、1回目の探索が終わったばかりであるため、2回目の探索を行うためにステップ33に戻る。
【0088】
2回目以後の探索では、反対の方向への1回目の回転を行う前の回転位置から、反対の方向への2回目以後の回転を行うステップ数N1をステップ数αずつ増加させて(S34)、反対の方向への回転を行い、これに連動して、正回転方向への1ステップずつの探索の上限のステップ数N2も増加させる。つまり、2回目の探索範囲は、例えば−20ステップ〜+20ステップとなる。同様に3回目の探索範囲は、例えば−30ステップ〜+30ステップとなる。
【0089】
このようにして、探索した結果、基準位置が検出できたとき(S37においてYES)は、ステップ31(S31)に戻って、次の1時間後のタイミングでの検出を行う。一方、繰り返しの回数Mが設定された所定値である3回目に達しても基準位置が検出できなかったとき(S37においてNO、S38においてYES及びS39においてYES)は、分秒針輪列を、正回転方向に1ステップずつ回転させながらの基準位置の検出動作(S40,S41)をそのまま継続して、基準位置の検出を行う。
【0090】
以上のように、変形例の電波修正時計1は、制御部70が、反対の方向への第1の回転量の回転とそこから正回転方向への第2の回転量の回転の範囲で基準位置の探索を行って、探索できなかったときは、反対の回転方向に回転させるステップ数及び正回転方向に回転させるステップ数を段階的に増やしながら探索範囲を徐々に広げて、反対の回転方向への回転と正回転方向への回転とを複数回繰り返すように制御する。
【0091】
このように、反対の方向と正回転方向との探索範囲を広げて繰り返しを行うことで、反対の方向に1回だけ回転させた後は正回転方向にのみ探索範囲を広げていく場合もより、基準位置を早く検出することができる可能性を高めることができる。
また、繰り返しの上限を設けたことにより、繰り返しのために元の回転位置まで戻るのに要する時間を、制限することができる。
【0092】
なお、上述した実施形態及び変形例の電波修正時計1は、時刻の正誤の判定を1時間ごとに行うものであるが、本発明に係る電子時計はこの形態に限らず、より短い時間間隔で判定を行うものであってもよいし、より長い時間間隔で判定を行うものであってもよい。
【0093】
この場合、第1の駆動輪列10及び第2の駆動輪列20に形成される検出孔12a,14a,22a,23a,24aの数を増減させたり、第1の駆動輪列10のうちの他の輪列(歯車)や第1の駆動輪列10に連動する他の輪列(歯車)、第2の駆動輪列20のうちの他の輪列(歯車)や第2の駆動輪列20に連動する他の輪列(歯車)に、検出孔を形成したりするなどの形態でもよい。
【0094】
上述した実施形態及び変形例は電波修正時計1であるが、本発明に係る電子時計は電波修正時計に限定されるものでは無い。すなわち、本発明に係る電子時計は、指針等の指示部材の位置を検出する全ての電子時計に適用され、例えば、GPSによる信号に基づいて指針の指示を修正する電子時計にも適用される。