特許第6635932号(P6635932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立造船株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000002
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000003
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000004
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000005
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000006
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000007
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000008
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000009
  • 特許6635932-電子線滅菌設備 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635932
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】電子線滅菌設備
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/08 20060101AFI20200120BHJP
   G21K 5/10 20060101ALI20200120BHJP
   G21K 5/00 20060101ALI20200120BHJP
   G21K 5/04 20060101ALI20200120BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20200120BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   B65B55/08 B
   G21K5/10 T
   G21K5/00 S
   G21K5/04 E
   B65B55/04 C
   A61L2/08 108
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-554040(P2016-554040)
(86)(22)【出願日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2015078149
(87)【国際公開番号】WO2016059991
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-209571(P2014-209571)
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 万晶
(72)【発明者】
【氏名】横林 孝康
(72)【発明者】
【氏名】武田 真一
【審査官】 蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−86879(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0001434(US,A1)
【文献】 特表2007−522833(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/058204(WO,A1)
【文献】 特開2006−314407(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0279177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/08
A61L 2/08
B65B 55/04
G21K 5/00
G21K 5/04
G21K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を搬送しながら電子線の照射により滅菌する電子線滅菌設備において、上記容器を円経路で搬送する旋回搬送板と、この旋回搬送板に搬送されている際には電子線が照射されない上記容器に電子線を照射する電子線照射装置とを備える電子線滅菌設備であって、
上記旋回搬送板の下面に、上記電子線の照射により発生する放射線を遮蔽するとともに当該旋回搬送板の中心軸を囲う筒状遮蔽体が取り付けられ、
上記筒状遮蔽体に、通気空間が形成されることを特徴とする電子線滅菌設備。
【請求項2】
上記筒状遮蔽体が、複数の円弧状遮蔽板を有し、
上記複数の円弧状遮蔽板が、旋回搬送板の中心軸から見て互いに重複する部分を有することを特徴とする請求項1に記載の電子線滅菌設備。
【請求項3】
通気空間が、複数の円弧状遮蔽板の間であることを特徴とする請求項2に記載の電子線滅菌設備。
【請求項4】
外部から容器を導入する導入筒が設けられ、
上記導入筒が、放射線を遮蔽する材料で構成され、旋回搬送板に上記容器を受け渡す開口を有し、
上記導入筒の開口から旋回搬送板に向けて放射線を遮蔽する庇状遮蔽体が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子線滅菌設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品用や医薬品用などの容器などを電子線の照射により滅菌する電子線滅菌設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲食品用の容器を取り扱う企業は、その容器の滅菌が不十分ゆえに食中毒事件を引き起こすと、社会からの信用が大きく失墜することになる。このため、飲食品用の容器には、飲食品の安全性が重要視される先進諸国で、確実な滅菌が必要である。
【0003】
現在では、容器を確実に滅菌するための装置として、容器に電子線を照射する装置が採用されている。このような装置では、容器を確実に滅菌できるものの、容器に電子線を照射することで、生物にとって危険な放射線であるX線が発生する。このため、上記装置において、X線が十分に遮蔽されることで、発生したX線を危険なまま漏らさない構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の構造では、特許文献1の図6に示すように、容器を円経路に搬送する旋回テーブルの上に、X線を遮蔽するための円筒状の遮蔽体が取り付けられている。これにより、上記特許文献1の図11に示すように、X線が十分に遮蔽される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/058204号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、容器に電子線を照射する装置では、空気が電子線により化学反応を起こすことで、オゾンが生成される。このようなオゾンは、装置の金属部分などを腐食させる原因となるので、上記装置の外部に排出されなければならない。これに対して、上記特許文献1に記載の装置だと、旋回テーブルの上に遮蔽体が取り付けられているので、遮蔽体(円筒状)の径は制限される。このため、遮蔽体は、限られた径で十分にX線を遮蔽するために、上記特許文献1の図6に示すように、通気空間を有しない一体型の構造とされる。しかしながら、このような一体型の構造で通気空間を有しない遮蔽体が備えられた装置では、装置の内部における通気性が低下し、オゾンが内部に滞留して十分に排出されない。したがって、上記特許文献1に記載の装置だと、滞留したオゾンにより、腐食が生じやすいという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1に記載の装置だと、X線を十分に遮蔽するために、上記特許文献1の図11に示すように、遮蔽体が取り付けられた旋回テーブルが多く必要となり、必然的に各旋回テーブルを収納するための室も多く必要となる。したがって、上記特許文献1に記載の装置だと、多くの室のためにオゾンが排出されにくく、滞留したオゾンにより、腐食が生じやすいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、内部にオゾンが滞留しにくく、腐食を防止することができる電子線滅菌設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の発明に係る電子線滅菌設備は、容器を搬送しながら電子線の照射により滅菌する電子線滅菌設備において、上記容器を円経路で搬送する旋回搬送板と、この旋回搬送板に搬送されている際には電子線が照射されない上記容器に電子線を照射する電子線照射装置とを備える電子線滅菌設備であって、
上記旋回搬送板の下面に、上記電子線の照射により発生する放射線を遮蔽するとともに当該旋回搬送板の中心軸を囲う筒状遮蔽体が取り付けられ、
上記筒状遮蔽体に、通気空間が形成されるものである。
【0009】
また、第2の発明に係る電子線滅菌設備は、第1の発明に係る電子線滅菌設備における上記筒状遮蔽体が、複数の円弧状遮蔽板を有し、
上記複数の円弧状遮蔽板が、旋回搬送板の中心軸から見て互いに重複する部分を有するものである。
【0010】
さらに、第3の発明に係る電子線滅菌設備は、第2の発明に係る電子線滅菌設備における通気空間が、複数の円弧状遮蔽板の間であるものである。
【0011】
加えて、第4の発明に係る電子線滅菌設備は、第1乃至第3の発明のいずれか1つに係る電子線滅菌設備において、外部から容器を導入する導入筒が設けられ、
上記導入筒が、放射線を遮蔽する材料で構成され、旋回搬送板に上記容器を受け渡す開口を有し、
上記導入筒の開口から旋回搬送板に向けて放射線を遮蔽する庇状遮蔽体が設けられるものである。
【発明の効果】
【0012】
上記電子線滅菌設備によると、内部にオゾンが滞留しにくく、腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る電子線滅菌設備で滅菌される容器を示す側面図である。
図2】同電子線滅菌設備の全体構成を示す概略平面図である。
図3】同電子線滅菌設備における遮蔽室の斜視図である。
図4】同遮蔽室の平面図である。
図5図4のA−A断面図である。
図6図2のB−B断面図である。
図7図6のC−C矢視図である。
図8】同遮蔽室の変形例を示す平面図である。
図9】同電子線滅菌設備における導入スターホイールの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る電子線滅菌設備について図面に基づき説明する。上記電子線滅菌設備は、概略的に説明すると、容器を搬送しながら電子線の照射により滅菌する設備である。なお以下では、図1に示すように、容器の一例として、プリフォーム体P、つまり、ブロー成形によりペットボトルBに成形される前の原料体であって試験管形状(上端uが開口した縦断面U字形状)のものについて説明する。
【0015】
この電子線滅菌設備は、図2に示すように、概略的に5つの室を有する。これら5つの室は、搬送されるプリフォーム体Pの経路の上流側から順に、外部からプリフォーム体Pが供給される供給室1と、プリフォーム体Pの外面を電子線により滅菌する外面滅菌室4と、上記プリフォーム体Pの内面を電子線により滅菌する内面滅菌室5と、プリフォーム体Pに電子線を照射することで発生するX線(放射線の一例である)が外部に漏れないようにする遮蔽室6と、上記滅菌が不十分なプリフォーム体P(以下、単に不良品という)を排出する選別室9とである。なお、上記5つの室1,4,5,6,は、それぞれの床、壁および天井がX線を遮蔽する材料により構成されている。
【0016】
上記供給室1は、プリフォーム体Pを導入する導入筒11と、この導入筒11で導入されたプリフォーム体Pを搬送し始める導入スターホイール21(旋回搬送板の一例である)とを有する。
【0017】
上記外面滅菌室4は、導入スターホイール21からプリフォーム体Pを受け取ってその外面を電子線により滅菌する外面滅菌部41を有する。この外面滅菌部41は、導入スターホイール21から受け取ったプリフォーム体Pを楕円経路に搬送する楕円経路搬送機42と、この楕円経路搬送機42で搬送されているプリフォーム体Pの外面に電子線(横断面が略矩形状)を照射する外面電子線照射装置45とを具備する。上記楕円経路搬送機42は、上記外面電子線照射装置45の一端側近傍および他端側近傍に配置された2つの外面滅菌用スターホイール43と、これら2つの外面滅菌用スターホイール43に掛け渡されてプリフォーム体Pを搬送する無端状搬送帯44とを備える。
【0018】
上記内面滅菌室5は、上記楕円経路搬送機42からプリフォーム体Pを受け取って円経路に搬送する転向旋回テーブル51と、この転向旋回テーブル51からプリフォーム体Pを受け取ってその内面を電子線により滅菌する内面滅菌部52とを有する。この内面滅菌部52は、プリフォーム体Pを円経路に搬送する内面滅菌用旋回テーブル53と、この内面滅菌用旋回テーブル53に所定の中心角(例えば18°つまり0.1πrad)ピッチで設けられてプリフォーム体Pを昇降させ得る昇降装置(図示省略)と、これら昇降装置の直上方に当該昇降装置と同数だけ設けられてプリフォーム体Pの内面に電子線(横断面が略円形状)を照射する内面電子線照射装置(図示省略)とを具備する。これら内面電子線照射装置は、それぞれ、下端部から電子線を下方に照射するノズルを備える。これら内面電子線照射装置は、いずれも、対応する上記昇降装置の直上方に位置するように、当該昇降装置と同じ回転速度で円経路に移動するように構成される。上記昇降装置は、プリフォーム体Pを上昇させることにより、プリフォーム体Pの開口にノズルを挿入させ、この状態のプリフォーム体Pを下降させることにより、プリフォーム体Pの開口からノズルを抜くものである。プリフォーム体Pの開口からノズルが抜かれた状態は、他の旋回テーブル51,71でプリフォーム体Pの受け取りおよび受け渡しができる状態である。
【0019】
上記遮蔽室6は、上記内面滅菌用旋回テーブル53からプリフォーム体Pを受け取って円経路に搬送する無菌旋回テーブル71と、内面滅菌室5から侵入した上記X線を遮蔽する遮蔽壁81とを有する。
【0020】
上記選別室9は、上記無菌旋回テーブル71からプリフォーム体Pを受け取って円経路に搬送しつつ不良品とそれ以外に選別する選別旋回テーブル91と、この選別旋回テーブル91から不良品以外のプリフォーム体Pを受け取って円経路に搬送し外部に導出する導出旋回テーブル93とを有する。上記選別室9の床には、上記選別旋回テーブル91での円経路の一部における下方に、不良品を排出するための排出口92が形成されている。上記選別旋回テーブル91は、この円経路で搬送されているプリフォーム体Pが不良品と判断されると、上記排出口92の上で当該不良品を落とすようにされている。上記導出旋回テーブル93は、プリフォーム体Pの不良品以外を、外部の設備F(例えばブロー成型のための設備)に供給するものでもある。
【0021】
ところで、上述した旋回テーブル、すなわち、転向旋回テーブル51、内面滅菌用旋回テーブル53、無菌旋回テーブル71、選別旋回テーブル91、および導出旋回テーブル93には、一定の中心角(例えば18°つまり0.1πrad)ピッチでプリフォーム体Pを把持する把持具74(保持具の一例である)が設けられる。これら把持具74は、上流側からプリフォーム体Pを受け取り円経路で搬送する位置において、当該プリフォーム体Pのネック部n(図1参照)を把持し、下流側へプリフォーム体Pを受け渡す位置において、上記把持を解除するものである。これにより、上流側から下流側へのプリフォーム体Pの受け取りおよび受け渡しが、滑らかに行われる。なお、上記内面滅菌用旋回テーブル53に設けられた昇降装置は、上記把持具74ごとプリフォーム体Pを昇降させ得るものである。
【0022】
また、上記外面滅菌室4および内面滅菌室5では、その空気が電子線により化学反応を起こすことで、オゾンが生成される。オゾンは、電子線滅菌設備10の内部に滞留すると、電子線滅菌設備10を腐食させる原因になる。このため、電子線滅菌設備10には、内部のオゾンを外部に気圧差で排出する通気装置(図示省略)が設けられている。
【0023】
以下、本発明の要旨である遮蔽室6の構成について図3図5に基づき詳細に説明する。
【0024】
上記遮蔽室6は、図3図5に示すように、仕切壁61によって、隣接する室である内面滅菌室5および選別室9に区分けされている。この仕切壁61は、X線を遮蔽する材料により構成されている。また、上記仕切壁61には、上記内面滅菌室5の内面滅菌用旋回テーブル53からプリフォーム体Pを上記無菌旋回テーブル71が受け取るための上流側開口62と、上記無菌旋回テーブル71からプリフォーム体Pを上記選別室9の選別旋回テーブル91に受け渡すための下流側開口63とが形成されている。これら上流側開口62および下流側開口63は、それぞれ、X線の漏れを防止するために、プリフォーム体Pの受け取りおよび受け渡しのための最小限の空間にされている。
【0025】
上記無菌旋回テーブル71は、略水平に配置されたテーブルとしての円形板72と、図5に示すように、この円形板72を鉛直軸7v(円形板72の中心軸7v)周りに旋回させる駆動軸73とを有する。この駆動軸73は、下端が上記遮蔽室6の床の下方に設けられた駆動装置(図示省略)に接続されるとともに、上端が上記円形板72に接続される。
【0026】
上記無菌旋回テーブル71に設けられる把持具74は、図3および図5に示すように、上記無菌旋回テーブル71の周縁部における上面から上記中心軸7vの外方に亘る接続板75と、この接続板75の外端部から下方に亘る垂下体76と、この垂下体76の外方でプリフォーム体Pを把持し得る一対の把持アーム77とを有する。上記把持具74の構成により、プリフォーム体Pが把持される位置は、無菌旋回テーブル71の円形板72より外方で且つ下方となる。このため、上流側開口62も、無菌旋回テーブル71の円形板72よりも下方となる。
【0027】
上記遮蔽壁81は、図4および図5に示すように、上流側開口62に面して当該上流側開口62よりも面積が大きい上流側遮蔽壁82と、下流側開口63に面して当該下流側開口63よりも面積が大きい下流側遮蔽壁83とからなる。これら上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83は、いずれも、上記把持具74に辛うじて接触しない程度まで外方に配置される。このため、上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83は、図4に示すように、平面視が上記中心軸7vを中心にした円弧状で、それぞれ上流側開口62および下流側開口63を覆うような配置となる。また、上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83の高さは、図5に示すように、それぞれ、少なくとも上流側開口62および下流側開口63よりも高くされ、好ましくは上記把持具74に辛うじて接触しない程度にされる。上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83は、上記把持具74だけでなく上記無菌旋回テーブル71にも非接触である。
【0028】
上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83は、図4に示すように、互いに接続されず、完全に分離している。すなわち、上流側遮蔽壁82と下流側遮蔽壁83との間に、気体(オゾン)が通過し得る空間、つまり通気空間84が形成されている。この通気空間84は、上流側開口62から下流側開口63まで(またはその逆)の気体(オゾン)の流れがスムーズになるような形状および大きさ、すなわち、遮蔽室6に気体(オゾン)が滞留しにくい形状および大きさであることが好ましい。しかし、上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83は、それぞれ、上流側開口62および下流側開口63が直線的に接続された空間を完全に遮るように配置される。言い換えれば、上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83は、上流側開口62と下流側開口63とを結ぶ全ての直線を遮るような位置に配置される。また、上流側遮蔽壁82および下流側遮蔽壁83は、上流側開口62の端部と上流側遮蔽壁82の端部を結ぶ直線2と、下流側開口63の端部と下流側遮蔽壁83の端部を結ぶ直線3とが、遮蔽室6で交差しない位置に配置される。言い換えれば、上流側開口62と上流側遮蔽壁82の端部を結ぶ全ての直線と、下流側開口63と下流側遮蔽壁83の端部を結ぶ全ての直線とが、遮蔽室6で交差しない。この配置は、上流側開口62から侵入した全てのX線を、下流側開口63に至るまでに、3回以上遮蔽壁81および仕切壁61などに反射させる構成である。
【0029】
以下、本発明のもう一つの要旨である供給室1の構成について図6および図7に基づき詳細に説明する。
【0030】
上記導入スターホイール21は、図6に示すように、略水平に配置されたスターホイール板22と、このスターホイール板22を鉛直軸1v(スターホイール板22の中心軸1v)周りに旋回させる駆動軸23とを有する。この駆動軸23は、下端が上記供給室1の床の下方に設けられた駆動装置(図示省略)に接続されるとともに、上端が上記スターホイール板22に接続される。
【0031】
上記導入スターホイール21には、上記導入筒11からスターホイール板22の上流端まで、プリフォーム体Pを自重により滑らせて案内する案内具13が接続される。また、上記導入スターホイール21には、外面滅菌室4から侵入したX線を遮蔽する遮蔽部30が設けられる。
【0032】
上記遮蔽部30は、スターホイール板22の下面に取り付けられて上記駆動軸23の全周囲を囲う遮蔽短筒31(筒状遮蔽体の一例である)と、導入筒11の下流側における開口(以下、単に供給口12という)の上方からスターホイール板22の上面近傍に至る遮蔽庇体35とを有する。上記遮蔽短筒31は外面滅菌室4から侵入したX線が供給口12の下半分に到達しないようにするものであり、上記遮蔽庇体35は外面滅菌室4から侵入したX線が供給口12の上半分に到達しないようにするものである。このため、上記遮蔽短筒31および遮蔽庇体35は、供給室1のX線が危険なまま導入筒11を介して電子線滅菌設備10の外部に漏れないようにするものといえる。
【0033】
さらに、上記導入筒11は、X線を遮蔽する材料により構成されている。また、供給口12(つまり導入筒11の下流側における開口)の上端が導入筒11の上流側における開口の下端よりも低くなるように、導入筒11の傾斜角度および長さが設計されている。このため、X線は、供給口に到達しても、導入筒11により遮蔽されることになる。言い換えれば、上記導入筒11は、供給室1のX線が危険なまま電子線滅菌設備10の外部に漏れないようにするものといえる。
【0034】
上記遮蔽短筒31は、図7に示すように、大径の外側円弧状遮蔽板32と、小径の内側円弧状遮蔽板33とからなる。外側円弧状遮蔽板32および内側円弧状遮蔽板33は、いずれも、円弧中心が上記スターホイール板22の中心軸1vで共通し、平面視で中心角が180°以上であり、上記中心軸1vから見て互いに重複する部分wを有する。
【0035】
外側円弧状遮蔽板32および内側円弧状遮蔽板33は、互いに接続されず、完全に分離している。すなわち、外側円弧状遮蔽板32と内側円弧状遮蔽板33の間に、気体(オゾン)が通過し得る空間、つまり通気空間34が形成されている。この通気空間34は、外面滅菌室4から供給口12まで(またはその逆)の気体(オゾン)の流れがスムーズになるような形状および大きさ、すなわち、供給室1に気体(オゾン)が滞留しにくい形状および大きさであることが好ましい。しかし、内側円弧状遮蔽板33は外側円弧状遮蔽板32に接触しない程度に大径にされ、外側円弧状遮蔽板32は辛うじてプリフォーム体Pに接触しない程度に大径にされる。
【0036】
上記遮蔽庇体35は、図6に示すように、上記供給口12の上方から導入スターホイール21の上方まで略水平に突出した水平部36と、庇部における供給スターホイールの上方から垂下する垂直部37とを具備する。この垂直部37の下端は、導入スターホイール21およびこれに搬送されるプリフォーム体Pに辛うじて接触しない程度まで下方に位置する。
【0037】
以下、上記電子線滅菌設備10の作用について説明する。
【0038】
図2に示すように、供給室1に供給されたプリフォーム体Pは、順次、外面滅菌室4、内面滅菌室5、遮蔽室6、および選別室9に搬送され、この選別室9から外部の設備Fに供給される。この搬送において、プリフォーム体Pは、外面が外面滅菌室4で電子線により滅菌され、内面が内面滅菌室5で電子線により滅菌される。そして、外面滅菌室4および内面滅菌室5では、電子線による滅菌として、プリフォーム体Pに電子線が照射され、これによりX線が発生してしまう。また、外面滅菌室4および内面滅菌室5では、その空気が電子線により化学反応を起こすことで、オゾンが生成されてしまう。
【0039】
外面滅菌室4および内面滅菌室5で発生したX線は、隣接する室である遮蔽室6および供給室1に侵入して、電子線滅菌設備10の外部に漏れようとする。しかしながら、上記X線は、これら遮蔽室6および供給室1で遮蔽されるので、危険なまま外部には漏れない。一方で、外面滅菌室4および内面滅菌室5で生成されたオゾンも、遮蔽壁81および遮蔽部30などの複雑な構造を有する遮蔽室6および供給室1に侵入する。しかしながら、遮蔽室6および供給室1のオゾンは、通気空間84,34によりスムーズに流れるので、遮蔽室6および供給室1に滞留しにくく、通気装置により電子線滅菌設備10の外部に排出される。
【0040】
以下、遮蔽室6および供給室1を個別に着目して説明する。
【0041】
遮蔽室6において、図4に示すように、上流側開口62から侵入したX線は、遮蔽壁81により遮蔽されるとともに、遮蔽壁81および仕切壁61など(遮蔽室6の床、壁および天井も含む)に反射して減衰する。また、上流側開口62から侵入した全てのX線は、上述した遮蔽壁81の構成により、下流側開口63に至るまでに、3回以上遮蔽壁81および仕切壁61などに反射するので、危険の無い程度にまで減衰される。
【0042】
供給室1において、図2および図6に示すように、外面滅菌室4から侵入したX線は、遮蔽部30により遮蔽されるとともに、遮蔽部30など(供給室1の床、壁および天井も含む)に反射して減衰する。また、外面滅菌室4から侵入した全てのX線は、上述した遮蔽部30の構成により、供給口12に至るまでに、3回以上遮蔽部30などに反射するので、危険の無い程度にまで減衰される。
【0043】
このように、上記電子線滅菌設備10によると、重量物である遮蔽壁81が無菌旋回テーブル71に取り付けられていないので、無菌旋回テーブル71とともに他の旋回テーブル51,53,91,93も高速で回転させられることになり、高速化することができる。
【0044】
また、遮蔽室6および供給室1のみでX線を十分に遮蔽するので、X線を遮蔽するための他の室や構造が不要となり、小型化することができる。さらに、室を少なくすることができることにより、電子線滅菌設備10の内部にオゾンが滞留しにくくなるので、腐食を防止することができる。
【0045】
加えて、通気空間34,84により、電子線滅菌設備10の内部にオゾンが滞留しにくくなるので、腐食を防止することができる。
【0046】
ところで、上記実施の形態では、容器の一例として、プリフォーム体Pについて説明したが、ペットボトルBや他の容器であってもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、保持具の一例として把持具74について説明したが、これに限定されるものではなく、容器を保持するものであればよい。
【0048】
さらに、上記実施の形態では、遮蔽壁81が把持具74に辛うじて接触しない程度まで外方に配置されるとして説明したが、接続板75の無菌旋回テーブル71に取り付けられた部分(つまり無菌旋回テーブル71の周縁部)における下方であってもよく、遮蔽壁81が無菌旋回テーブル71の周縁部から外方に配置されていればよい。
【0049】
加えて、上記実施の形態では、選別室9の遮蔽壁については説明しなかったが、図8の選別室9に示すように、遮蔽室6および選別室9を区分けする仕切壁61に対して下流側遮蔽壁83と線対称に遮蔽壁95が設けられてもよい。この構成により、X線がさらに十分に遮蔽される。なお、選別室9の遮蔽壁95が設けられるのであれば、下流側遮蔽壁83がなくてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、内面滅菌室5の遮蔽壁については説明しなかったが、図8の内面滅菌室5に示すように、内面滅菌室5および遮蔽室6を区分けする仕切壁61に対して上流側遮蔽壁82と線対称に遮蔽壁55が設けられてもよい。この構成により、X線がさらに十分に遮蔽される。なお、内面滅菌室5の遮蔽壁55が設けられるのであれば、上流側遮蔽壁82がなくてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、遮蔽短筒31は、大径の外側円弧状遮蔽板32と、小径の内側円弧状遮蔽板33とからなるとして説明したが、図9に示すように、同径の円弧状遮蔽板32’,33’からなるものでもよく、通気空間34および重複する部分wとを有していればよい。また、円弧状遮蔽板は、2つとは限られず、3つ以上であってもよく、通気空間34としての切欠きを有するのであれば一体型の構造であってもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、遮蔽壁81の形状について説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも、上流側開口62または下流側開口63のいずれかに面して、面している上流側開口62または下流側開口63よりも面積が大きいものであればよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、把持具74の垂下体76について詳しく説明しなかったが、垂下体76がX線を遮蔽する材料により構成されていてもよい。この構成により、X線がさらに十分に遮蔽される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9