(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0016]この技術は、血管壁のインビボ調査を行うために近赤外分光法を使用する方法および装置、ならびにLCP被膜の厚さの分類を行う。この技術は、コレステロールを多量に含むLCPに対する健康な血管組織のさまざまな生化学的成分の間の近赤外スペクトル差を利用して、LCP被膜厚さを特徴付ける。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態では、この技術は、破裂に対するLCPの不安定さに関連すると考えられるプラーク特性を識別するために使用されうる。このような不安定LCPは、一般的に、トリガーとなる活動または患者側の事象がある場合、またはない場合に、急性冠動脈症候群の原因となる血栓症に至る潰瘍形成、破裂、または腐食などの事象を生じる傾向のあるLCPとして記述することができる。例えば、この技術は、不安定で、破裂する可能性が高い場合のある、薄被膜型アテローム性動脈硬化LCPを非破壊的に識別するために使用されうる。いくつかのアプリケーションでは、この技術によってもたらされる特定のLCPに関する情報は、医師がこれらのLCPに対処するために適切な薬剤または手術による介入を決定する際に役立ちうる。いくつかのアプリケーションでは、この技術によってもたらされる特定のLCPに関する情報は、特定のLCPの治療に関して特定の薬剤の有効性を評価するステップを円滑にすることができる。
【0018】
[0018]
図1は、それぞれがLCPを含む2つの動脈試料を示す図である。動脈断面100は、内腔115、線維性組織105、およびLCPと整合性のとれている脂質の豊富な構造、すなわち脂質プールを示す。線維性組織105は、その最も薄い領域110にあっても、プラークの脂質含有部分の上に載る極厚の被膜を構成する。この例などの、いくつかの場合において、極厚の被膜は、最小厚さが0.4mmを超える被膜とすることができる。動脈断面150は、LCPと整合性のとれている脂質の豊富な構造、脂質プール170および壊死性コア175を含む動脈の一例である。LCP構造を内腔165から分離する線維性組織155は、極薄の領域160を有する。いくつかの場合において、極薄の被膜は、最小厚さが0.1mm未満である被膜とすることができる。断面150内に示されているプラークは、領域160が脂質プール170および壊死性コア175を破裂させてその内容物を内腔165内に放出する可能性が高く、延いては血栓症および心臓組織への血流の喪失が引き起こされうるため、不安定であると考えることができる。
【0019】
[0019]近赤外分光法を実行するためにこの技術の一部として、またはこの技術と併せてさまざまな器具が使用されうる。
図2Aは、光学分光カテーテルシステム200を示す図である。カテーテルシステム200は、一般的に、血管分析に使用されうる。例えば、カテーテルシステム200は、近赤外線を血管壁に照射し、血管壁から反射された近赤外線を受光するために使用することができる。この技術では、受光した反射近赤外線を使用して、検出されたLCPの被膜厚さを評価することができる。
【0020】
[0020]カテーテルシステム200は、プローブもしくはカテーテル205、およびスペクトロメーターシステム210を備える。カテーテル205は、カテーテルヘッド207を備えることができる。分光計システム210は、プルバックおよび回転デバイス215、光源220、検出器システム225、および波長走査または波長復号化デバイス230を備える。
【0021】
[0021]カテーテル205は、光ファイバーもしくは光ファイバー束(図示せず)を備えることができる。カテーテル205は、大腿動脈245などの、末梢血管を介して患者240体内に挿入されうる。次いで、カテーテルヘッド207が、心臓255の冠動脈250または頸動脈260などの、血管内の所望の標的領域に移動されうる。示されている例では、これは、カテーテルヘッド207を大動脈265に通して上へ移動することによって達成される。
【0022】
[0022]カテーテルヘッド207が血管内の調査のためある部位に配置された後、放射線が生成されうる。示されている例では、光源220によって近赤外線が発生され、注目する1つまたは複数のスペクトル帯域にまたがる波長帯上で同調される。他の実施形態では、注目するスペクトル帯域を供給するために1つまたは複数の広帯域光源が使用され、スペクトロメーターまたは波長符号化方式を使用してさまざまな波長の信号強度が決定される。いずれの場合も、光信号がカテーテル205の光ファイバー内に結合され、カテーテルヘッド207に伝送されうる。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態では、近赤外スペクトル帯域が分光法のために使用される。例示的なスペクトル帯域は、1000から1450ナノメートル(nm)、1000nmから1350nm、1100nmから1900nm、1150nmから1250nm、1175nmから1280nm、および1190nmから1250nmまでの波長を有する光を含む。他の例示的なスペクトル帯域は、1660nmから1740nm、および1630nmから1800nmまでの波長を含む。いくつかの実装では、スペクトル応答は、完全なスペクトル領域について最初に得られ、次いで、さらなる分析のために完全なスペクトル領域内の帯域が選択される。
【0024】
[0024]いくつかの実施形態では、受光した拡散反射近赤外線がカテーテル205の光ファイバー内を下って伝送されプルバックおよび回転デバイス215に向かうか、または別の光ファイバー内に入る。これは、受光した放射線または光信号を、1つまたは複数の検出器を備えることができる、検出器システム225に供給する。
【0025】
[0025]波長走査または復号化デバイス230は、標的領域(例えば、血管の内壁)のスペクトル応答を探るために光源220を制御しながら、また典型的には流体である、介在する血液または不要な信号源を通して、カテーテルシステム200の応答を監視する。
【0026】
[0026]その結果、スペクトロメーターシステム210がスペクトルを収集することができる。スペクトルの収集が完了すると、次いで、スペクトロメーターシステム210は、データをアナライザー270に供給する。
【0027】
[0027]
図2Bは、
図2Aのカテーテル205の一部の代替的図面である。カテーテル205の光ファイバーからの光信号275(例えば、近赤外線)は、例えば、折り返し鏡277によって向き付けられて、カテーテルヘッド207から出て、血管壁282の標的領域280に当たる。次いで、カテーテルヘッド207は、標的領域280および介在する流体から拡散反射された光を集光し、反射光線285を下方のカテーテル205へ返す。
【0028】
[0028]一実施形態では、カテーテルヘッド207は、矢印287によって例示されているようにスピンする。これにより、カテーテルヘッド207は、血管壁282の周全体を走査することができる。他の実施形態では、カテーテルヘッド207は、複数の放射体および検出器窓を備え、これは好ましくはカテーテルヘッド207の周上に分配される。いくつかの例では、カテーテルヘッド207は、分析されている血管の一部分の長さを通して引き戻されている間にスピンする。
【0029】
[0029]アナライザー270は、反射された放射線285を受光し、血管壁282または注目する他の組織(例えば、カテーテルヘッド207の反対側にある領域280にある組織)の評価を行うことができる。いくつかの実施形態では、アナライザー270は、反射された放射線285に基づき反射スペクトルを決定する。いくつかの実施形態では、反射スペクトルは、拡散反射スペクトルまたは対数変換反射スペクトルであるものとしてよい。いくつかの実施形態では、吸光度スペクトルが決定されうるが、ただし、吸光度は式1で与えられる。
【0030】
吸光度=−log(I/I
0) 式1
式1において、Iは、反射された放射線の検出された強度であり、I
0は、入射強度である。以下で詳しく説明されるように、アナライザー270は、決定されたスペクトルに基づきLCPの被膜厚さを評価することができる。
LCP被膜厚さ分類器の構築
[0030]上で指摘されているように、この技術は、コレステロールを多量に含むLCPに対する健康な血管組織のさまざまな生化学的成分の間の近赤外スペクトル差を利用する。
図3は、異なる物質に対する例示的な近赤外吸収スペクトルのグラフ300である。グラフ300は、コラーゲンとともに、コレステリルオレイン酸、コレステロール、およびコレステリルリノール酸を含む、さまざまな形態のコレステロールに対する近赤外線スペクトルを含む。健康な血管組織は、コラーゲンに富んでいるが、LCPは、より高い相対的含有量のコレステロールを含む。グラフ300は、コラーゲンとさまざまなコレステロール形態との間のスペクトル差を示しており、本発明の技術ではこれを使用して、LCP被膜厚さを評価する。
【0031】
[0031]いくつかの実施形態では、この技術は、LCP被膜の厚さを分類するための数学的分類器またはモデルを構築するステップを伴う。数学的分類器は、知られている組織試料(例えば、LCP被膜の厚さが知られている試料)のスペクトルと組織状態との間の関係をモデル化することによって作成することができる。
【0032】
[0032]
図4は、LCP被膜厚さ分類器を構築する方法を示す流れ
図400である。いくつかの実施形態では、
図2Aの分光カテーテルシステム200は、LCP被膜厚さ分類器を構築する方法を実行することができる。いくつかの実施形態では、別のコンピューティングデバイスが、LCP被膜厚さ分類器を構築する方法を実行することができる。
【0033】
[0033]ステップ410で、血管内の場所に対して近赤外線が照射される。
図2Aを参照しつつ上で説明されているように、カテーテルシステム200は、例えば、血管内の場所に近赤外線を照射するために使用されうる。近赤外線は、特定のスペクトル帯域内の近赤外線を含むことができる。例示的なスペクトル帯域は、1000から1450ナノメートル(nm)、1000nmから1350nm、1100nmから1900nm、1150nmから1250nm、1175nmから1280nm、および1190nmから1250nmまでを含む。他の例示的なスペクトル帯域は、1660nmから1740nm、および1630nmから1800nmまでの波長を含む。ステップ420で、その場所から反射された近赤外線が受光される。例えば、カテーテルシステム200は、その場所から反射された近赤外線を受光することができる。
【0034】
[0034]ステップ430で、反射スペクトルは、その場所から反射された近赤外線に基づき決定される。いくつかの実施形態では、アナライザー270が、その場所から反射された近赤外線に基づき反射スペクトルを決定することができる。いくつかの実施形態では、反射スペクトルは、拡散反射スペクトルまたは対数変換反射スペクトルであるものとしてよい。いくつかの実施形態では、吸光度スペクトルが決定されうる。
【0035】
[0035]ステップ440で、反射スペクトルがLCPの存在を示しているかどうかが判定される。いくつかの実施形態では、反射スペクトルがLCPの存在を示しているかどうかは、参照により本明細書に組み込まれている、Sumらにより2007年1月3日に出願された米国特許第8,000,774号、名称「Method and System for Intra Luminal Thrombosis Detection」において説明されている方法を使用して判定されうる。いくつかの実施形態では、反射スペクトルがLCPの存在を示しているかどうかは、参照により本明細書に組み込まれている、Morenoらにより2001年1月24日に出願された米国特許第6,816,743号、名称「Methods and Apparatus for in vivo Identification and Characterization of Vulnerable Atherosclerotic Plaques」において説明されている方法を使用して判定されうる。ステップ450で、反射スペクトルがその場所にLCPが存在することを示す場合にその場所が選択される。
【0036】
[0036]ステップ460で、その場所に関連付けられている組織病理学データが受信される。組織病理学データは、その場所の目視検査によって得られるデータを含みうる。例えば、組織病理学者は、その場所の血管の断面を調査して、Lが存在しているかどうか、およびLCPの被膜の厚さを判定することができる。これらのデータは、データベース内に用意されるが、または他の好適な記憶装置デバイス内に収められうる。
【0037】
[0037]ステップ470で、データの収集元となる血管壁の場所がさらにあるかどうかが判定される。残されている複数の血管内に、スペクトルおよび組織病理学データの送り元である場所がさらにある場合、残りの場所毎にステップ410〜460が繰り返される。そうでない場合、この方法は、ステップ480に進む。
【0038】
[0038]ステップ480で、被膜厚さ閾値が受信される(例えば、約0.4mmまたは0.1mm)。
[0039]ステップ490で、LCP被膜厚さ分類器が、ステップ410〜470からのそれぞれの選択された場所の反射スペクトルおよび組織病理学データならびに被膜厚さ閾値に基づき生成される。いくつかの実施形態では、データは、それぞれの行が対応する場所に対するスペクトルを表す「xブロック」行列、および対応する場所に対する組織病理学データ(例えば、被膜厚さ基準値)の「yブロック」ベクトルとして設定される。いくつかの実施形態では、被膜厚さ閾値が組織病理学データのベクトルに適用され、その結果、「yブロック」は厚さが被膜厚さ閾値より大きい被膜の有無を示す。いくつかの実施形態では、被膜厚さ閾値が組織病理学データのベクトルに適用され、その結果、「yブロック」は厚さが被膜厚さ閾値より小さい被膜の有無を示す。
【0039】
[0040]次いで、被膜厚さ分類器は、それぞれの場所に対する反射スペクトルと組織病理学データとの間の関係をモデル化することによって作成される多変数数学的モデルなどの、いくつかの多変数技術のうちのどれかを使用して生成されうる。これらの数学的モデルは、部分最小二乗判別分析法(Partial Least Squares Discrimination Analysis)(PLS−DA)、マハラノビス距離および大きい残差を用いる主成分分析法(Principle Component Analysis with Mahalanobis Distance and augmented Residuals)(PCA/MDR)、およびK最近傍を用いるPCA、ユークリッド距離を用いるPCA、SIMCA、ブートストラップ誤差調整単一サンプル法(bootstrap error-adjusted single-sample technique)(BEST)、ニューラルネットワーク、およびサポートベクタマシンなどの他の方法、ならびに他の種類の判別手段などの技術に基づくものとすることができる。
【0040】
[0041]いくつかの実施形態では、複数の分類器が生成されうる。例えば、第1の分類器は、厚いLCP被膜(例えば、約0.4mm)に対応する被膜厚さ閾値を使用して生成されるものとしてよく、また、第2の分類器は、薄いLCP被膜(例えば、約0.1mm)に対応する被膜厚さ閾値を使用して生成されるものとしてよい。
血管壁の調査
[0042]いくつかの実施形態では、この技術は、血管壁を調査し、LCP被膜の厚さを示す指標を生成する方法を伴う。
図5は、血管壁を調査するための方法を表す流れ
図500である。いくつかの実施形態では、
図2Aの分光カテーテルシステム200は、血管壁を調査する方法を実行することができる。いくつかの実施形態では、別のコンピューティングデバイスが、血管壁を調査する方法を実行することができる。
【0041】
[0043]ステップ510で、血管壁に対して近赤外線が照射される。
図2Aを参照しつつ上で説明されているように、カテーテルシステム200は、例えば、血管に近赤外線を照射するために使用されうる。近赤外線は、特定のスペクトル帯域内の近赤外線を含むことができる。例示的なスペクトル帯域は、1000から1450ナノメートル(nm)、1000nmから1350nm、1100nmから1900nm、1150nmから1250nm、1175nmから1280nm、および1190nmから1250nmまでを含む。他の例示的なスペクトル帯域は、1660nmから1740nm、および1630nmから1800nmまでの波長を含む。ステップ520で、血管壁から反射された近赤外線が受光される。例えば、カテーテルシステム200は、その場所から反射された近赤外線を受光することができる。
【0042】
[0044]ステップ530で、反射スペクトルは、血管壁から反射された近赤外線に基づき決定される。いくつかの実施形態では、アナライザー270が、血管壁から反射された近赤外線に基づき反射スペクトルを決定することができる。いくつかの実施形態では、反射スペクトルは、拡散反射スペクトルまたは対数変換拡散反射スペクトルであるものとしてよい。いくつかの実施形態では、吸光度スペクトルが決定されうる。
【0043】
[0045]ステップ540で、反射スペクトルがLCPの存在を示しているかどうかが判定される。
図4のステップ450に関してすでに説明されている技術のどれかが使用されうる。反射スペクトルがLCPの存在を示している場合、この方法はステップ550に進む。
【0044】
[0046]ステップ550で、LCP被膜の厚さは、反射スペクトルがLCPの存在を示す場合にLCP被膜厚さ分類器を反射スペクトルに適用することによって決定される。
[0047]いくつかの実施形態では、LCP被膜厚さ分類器は、
図4を参照しつつ上で説明されているように生成された分類器とすることができる。LCP被膜厚さ分類器は、血管壁にそった特定の場所の組織を特徴付けるためにスペクトルに適用される。例えば、LCP被膜厚さ分類器を反射スペクトルに適用することで、スペクトルがLCP被膜厚さ分類器を構築するために使用される被膜厚さ閾値より大きい被膜厚さを持つLCP被膜を示す確率が求められる。そのような実施形態では、被膜厚さは、分類器によって与えられる確率が閾値(例えば、0.6)を超えた場合に被膜厚さ閾値より大きいと判定される。LCP被膜厚さ分類器を反射スペクトルに適用することで、スペクトルがLCP被膜厚さ分類器を構築するために使用される被膜厚さ閾値より小さい被膜厚さを持つLCP被膜を示す確率が求められる。そのような実施形態では、被膜厚さは、分類器によって与えられる確率が閾値(例えば、0.6)を超えた場合に被膜厚さ閾値より小さいと判定される。
【0045】
[0048]いくつかの実施形態では、複数の分類器が適用されうる。例えば、第1の分類器は、厚いLCP被膜(例えば、約0.4mm)に対応する被膜厚さ閾値を用いて適用されるものとしてよく、また、第2の分類器は、薄いLCP被膜(例えば、約0.1mm)に対応する被膜厚さ閾値を使用して適用されるものとしてよい。いくつかの実施形態では、複数の分類器の結果を組み合わせて単一の分類器が得られる。
【0046】
[0049]ステップ560で、LCP被膜の厚さを示す指標が表示される。いくつかの実施形態では、LCP被膜の厚さを示す指標が、グラフィックディスプレイ上に表示される。
図6は、LCP被膜の厚さを示す指標を表示するための例示的なグラフィックディスプレイ600を示す図である。グラフィックディスプレイ600上のプロット610は、例えば、LCP被膜厚さ分類器によって与えられるような、LCPの存在を示す空間分解図を示している。プロット620は、LCP分類器によって与えられるような、LCP被膜の厚さを示す指標の空間分解図を示している。上で説明されているように、LCP被膜厚さ分類器を反射スペクトルに適用することで、スペクトルがLCP被膜厚さ分類器を構築するために使用される被膜厚さ閾値より大きい被膜厚さを持つLCP被膜を示す確率が求められる。プロット620は、この確率を、濃陰影領域が分類器が閾値(例えば、0.6)を超える確率を持つ被膜厚さ閾値より大きい被膜厚さを有すると予測したLCP被膜を持つ血管内の場所を示し、薄陰影領域が分類器が閾値(例えば、0.6)より小さい確率を持つ被膜厚さ閾値より大きい被膜厚さを有すると予測したLCP被膜を持つ血管内の場所を示すツーシェードスケール(two-shade scale)にマッピングする。プロット630は、LCP被膜厚さ分類器によって与えられるような、LCP被膜の厚さを示す指標の空間分解図を示している。プロット620は、極厚の被膜を有すると予測された領域(中間陰影)(例えば、0.6より大きい確率)、極薄の被膜を有すると予測された領域(淡陰影)(例えば、0.4より小さい確率)、および分類器が中間確率を付けた領域(濃陰影)(例えば、0.4から0.6の間の確率)を際立たせるために、同じ確率をスリーシェードスケール(three-shade scale)にマッピングする。
【0047】
[0050]グラフィックディスプレイ600は、薄い被膜の指数の要約番号(thin cap index summary numbers)640および厚い被膜の指数の要約番号(thick cap index summary numbers)650も表示し、これは薄い被膜について被膜厚さ閾値より低いと予測するか、または厚い被膜について被膜厚さ閾値より高いと予測する評価されたLCPピクセルの場所の数および割合を示す。
【0048】
[0051]上述の技術は、デジタル電子回路で、またはコンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせで実装することができる。実装は、データ処理装置、例えば、プログラム可能なプロセッサ、1つのコンピュータ、もしくは複数のコンピュータによる実行のため、またはこれらのオペレーションを制御するために、コンピュータプログラム製品、つまり、情報媒体内に、例えば、機械可読記憶装置デバイス内に、明確に具現化されるコンピュータプログラムとしてなされうる。コンピュータプログラムは、コンパイル言語またはインタプリタ言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書かれ、スタンドアロンプログラム、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境において使用するのに適している他のユニットを含む、任意の形態で配備されうる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つのサイトにあるか、または複数のサイトにまたがって分散され、通信ネットワークによって相互接続されている複数のコンピュータ上で実行されるように配備されうる。
【0049】
[0052]方法ステップは、入力データを操作し、出力を生成することによりコンピュータプログラムを実行して本発明の機能を実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサによって実行されうる。方法ステップは、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(特定用途向け集積回路)によっても実行され、また装置は、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(特定用途向け集積回路)として実装されうる。モジュールは、その機能を実装するコンピュータプログラムおよび/またはプロセッサ/専用回路の部分を指すものとしてよい。
【0050】
[0053]コンピュータプログラムの実行に適しているプロセッサとしては、例えば、汎用マイクロプロセッサ、専用マイクロプロセッサ、および任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサが挙げられる。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリまたはその両方から命令およびデータを受け取る。一般に、コンピュータは、データを格納するための1つまたは複数の大容量記憶装置デバイス、例えば、磁気ディスク、磁気光ディスク、または光ディスクも備え、これらからデータを受け取るか、またはこれらにデータを転送するか、またはその両方を行うように動作可能なように結合されうる。データ伝送および命令も、通信ネットワークを経由してなされるものとしてよい。コンピュータプログラムの命令およびデータを具現化するのに好適な情報媒体は、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク、光磁気ディスク、ならびにCD−ROMおよびDVD−ROMディスクを含む、あらゆる形態の不揮発性メモリを含む。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路で補完されるか、または専用論理回路に組み込まれうる。
【0051】
[0054]ユーザーと情報のやり取りを行うために、上述の技術は、ユーザーに情報を表示するための表示デバイス(例えば、CRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタ)ならびにキーボードおよびユーザーがコンピュータに入力を送るために(例えば、ユーザーインターフェース要素とやり取りするために)使用できるポインティングデバイス、例えば、マウスもしくはトラックボールを有するコンピュータ上に実装することができる。他の種類のデバイスも、ユーザーと情報をやり取りするために使用することができ、例えば、ユーザーに返されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバックとすることができ、ユーザーからの入力は、音響、話し声、または触覚入力を含む、任意の形態で受け取ることができる。
【0052】
[0055]上述の技術は、バックエンドコンポーネントを、例えば、データサーバーとして、および/またはミドルウェアコンポーネントを、例えば、アプリケーションサーバとして、および/またはフロントエンドコンポーネントを、例えば、ユーザーと例示的実装との情報のやり取りに使用されるグラフィカルユーザーインターフェースおよび/またはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータとして、またはそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを備える分散コンピューティングシステム内に実装することができる。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体、例えば、通信ネットワークによって相互接続することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えばインターネットが挙げられ、有線とワイヤレスの両方がある。
【0053】
[0056]コンピューティングシステムは、クライアントおよびサーバーを備えることができる。クライアントおよびサーバーは、一般に、互いに隔てられており、典型的には、通信ネットワークを通じて情報のやり取りを行う。クライアントとサーバーとの関係は、コンピュータプログラムが各コンピュータ上で実行され、互いとの間にクライアント-サーバー関係を有することによって発生する。
【0054】
[0057]本発明の技術は、特定の実施形態に関して説明されている。本明細書で説明されている代替的形態は、例示することのみを目的とする例であり、いかなる形でも代替的形態を制限することはない。説明されている方法のステップは、異なる順序で実行されうるが、それでも、所望の結果が得られる。他の実施形態も、以下の請求項の範囲内に収まる。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
血管壁(blood vessel wall)を調査するためのコンピュータ実装方法(computer-implemented method)であって、
プローブを使って、近赤外線(near-infrared light)を血管壁に照射するステップと、
前記プローブによって、前記血管壁から反射された近赤外線を受光するステップと、
コンピューティングデバイスにより、前記血管壁から前記反射された近赤外線に基づき反射スペクトルを決定するステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記反射スペクトルが脂質コアプラーク(LCP:lipid core plaque)の存在を示すかどうかをLCP分類器(classifier)を前記反射スペクトルに適用することによって判定するステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記反射スペクトルが前記LCPの存在を示す(indicative)場合にLCP被膜厚さ分類器(cap thickness classifier)を前記反射スペクトルに適用することによってLCP被膜の厚さを決定するステップと、
ディスプレイ上に、前記LCP被膜(cap)の前記厚さを示す指標(indicia)を表示するステップとを含むコンピュータ実装方法。
(態様2)
前記LCP被膜厚さ分類器は、1つまたは複数の試料反射スペクトルおよび関連する(associated)組織病理学(histopathology)データに基づき生成される数学的モデルを含む態様1に記載の方法。
(態様3)
前記組織病理学データは、LCP被膜厚さ測定結果を含む態様2に記載の方法。
(態様4)
前記LCP被膜厚さ分類器を適用する(applying)ステップで、LCP被膜の厚さが厚さ閾値を超える確率を求める態様1に記載の方法。
(態様5)
前記厚さ閾値は、約0.4ミリメートルである態様4に記載の方法。
(態様6)
前記厚さ閾値は、約0.1ミリメートルである態様4に記載の方法。
(態様7)
前記LCP被膜厚さ分類器を適用するステップで、LCP被膜の厚さが厚さ閾値より小さい確率を求める態様1に記載の方法。
(態様8)
前記厚さ閾値は、約0.4ミリメートルである態様7に記載の方法。
(態様9)
前記厚さ閾値は、約0.1ミリメートルである態様7に記載の方法。
(態様10)
前記反射スペクトルが前記LCPの存在を示す場合に第2のLCP被膜厚さ分類器を前記反射スペクトルに適用することによって前記LCP被膜の厚さを決定するステップをさらに含む態様1に記載の方法。
(態様11)
前記LCP被膜の厚さを示す前記指標は、前記LCP被膜の前記厚さが厚さ閾値を超えることを表す指示を含む態様1に記載の方法。
(態様12)
前記LCP被膜の厚さを示す前記指標は、前記LCP被膜の前記厚さが厚さ閾値より小さいことを表す指示を含む態様1に記載の方法。
(態様13)
血管壁を調査するための、非一時的(non-transitory)なコンピュータ可読記憶媒体に明確に具現化された(tangibly embodied)、コンピュータプログラム製品であって、データ処理装置に、
近赤外線を照射された前記血管壁から反射された近赤外線を示す信号を受信し、
前記受信された信号に基づき反射スペクトルを決定し、
前記反射スペクトルが脂質コアプラーク(LCP)の存在を示すかどうかをLCP分類器を前記反射スペクトルに適用することによって判定し、
前記反射スペクトルが前記LCPの存在を示す場合にLCP被膜厚さ分類器を前記反射スペクトルに適用することによってLCP被膜の厚さを決定し、
ディスプレイ上に前記LCP被膜の前記厚さを示す指標を表示することを行わせるように動作可能である命令を備えるコンピュータプログラム製品。
(態様14)
前記LCP被膜厚さ分類器は、1つまたは複数の試料反射スペクトルおよび関連する組織病理学データに基づき生成される数学的モデルを含む態様13に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様15)
前記組織病理学データは、LCP被膜厚さ測定結果を含む態様14に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様16)
前記LCP被膜厚さ分類器を適用するステップで、LCP被膜の厚さが厚さ閾値を超える確率を求める態様13に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様17)
前記厚さ閾値は、約0.4ミリメートルである態様16に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様18)
前記厚さ閾値は、約0.1ミリメートルである態様16に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様19)
前記LCP被膜厚さ分類器を適用するステップで、LCP被膜の厚さが厚さ閾値より小さい確率を求める態様13に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様20)
前記厚さ閾値は、約0.4ミリメートルである態様19に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様21)
前記厚さ閾値は、約0.1ミリメートルである態様19に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様22)
前記データ処理装置に、前記反射スペクトルが前記LCPの存在を示す場合に第2のLCP被膜厚さ分類器を前記反射スペクトルに適用することによって前記LCP被膜の厚さを決定させるように動作可能である命令を備える態様13に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様23)
前記LCP被膜の厚さを示す前記指標は、前記LCP被膜の前記厚さが厚さ閾値を超えることを表す指示を含む態様13に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様24)
前記LCP被膜の厚さを示す前記指標は、前記LCP被膜の前記厚さが厚さ閾値より小さいことを表す指示を含む態様13に記載のコンピュータプログラム製品。
(態様25)
脂質コアプラーク(LCP)被膜厚さ分類器を構築するためのコンピュータ実装方法であって、
a.複数の血管壁上の複数の場所のそれぞれの場所について、
プローブを使って、近赤外線を前記場所に照射するステップと、
前記プローブによって、前記場所から反射された近赤外線を受光するステップと、
コンピューティングデバイスにより、前記場所から前記反射された近赤外線に基づき反射スペクトルを決定するステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記反射スペクトルが前記場所にLCPが存在することを示すかどうかをLCP分類器を前記反射スペクトルに適用することによって判定するステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記反射スペクトルが前記場所に前記LCPが存在することを示す場合に前記場所を選択するステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記場所に関連付けられている組織病理学データを受信するステップと、
b.前記コンピューティングデバイスにより、被膜厚さ閾値を受信するステップと、
c.前記コンピューティングデバイスにより、ステップaからのそれぞれの選択された場所の前記反射スペクトルおよび組織病理学データならびに前記被膜厚さ閾値に基づき前記LCP被膜厚さ分類器を生成するステップとを含むコンピュータ実装方法。
(態様26)
脂質コアプラーク(LCP)被膜厚さ分類器を構築するための、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に明確に具現化された、コンピュータプログラム製品であって、データ処理装置に、
a.複数の血管壁上の複数の場所のそれぞれの場所について、
近赤外線を照射された前記場所から反射された近赤外線を示す信号を受信し、
前記受信された信号に基づき反射スペクトルを決定し、
前記反射スペクトルが前記場所にLCPが存在することを示すかどうかをLCP分類器を前記反射スペクトルに適用することによって判定し、
前記反射スペクトルが前記場所にLCPが存在することを示す場合に前記場所を選択し、
前記場所に関連付けられている組織病理学データを受信し、
b.被膜厚さ閾値を受信し、
c.ステップaからのそれぞれの選択された場所の前記反射スペクトルおよび組織病理学データならびに前記被膜厚さ閾値に基づき前記LCP被膜厚さ分類器を生成することを行わせるように動作可能な命令を備えるコンピュータプログラム製品。