【実施例】
【0118】
(溶解度パラメーターの計算)
二色性染料とポリオレフィン樹脂との間の相溶性を計算するために、ヒルデブラント溶解度パラメーターを用いた。
【0119】
分子間の凝集は、分子の間にファンデルワールス(van der Waals)および双極子モーメント(dipole moments)などの結合力が複合的に働いて起こるが、このような凝集の原因となるエネルギーを凝集エネルギー(cohesive energy;Ecoh)と定義した。このような凝集エネルギーは、1モル当たりの内部エネルギーの変化であり、下記の関係式1で表わされ得る。
【0120】
[関係式1]
E
coh=ΔU=ΔH−ΔT
【0121】
式中、E
cohは凝集エネルギーであり、ΔUは1モル当たりの内部エネルギーの変化量であり、ΔHは、エンタルピーの変化量であり、ΔTは、温度の変化量である。
【0122】
また、単位体積当たりの凝集エネルギーは、凝集エネルギー密度(CED)と定義可能であり、凝集エネルギー密度(CED)は、下記の関係式2で表わされ得る。
【0123】
[関係式2]
CED=(ΔH−RT)/Vm
【0124】
式中、CEDは、凝集エネルギー密度であり、ΔHは、エンタルピーの変化量であり、Rは、定数であり、Tは、温度であり、Vmは、モル体積である。
【0125】
凝集エネルギー密度は、ヒルデブラントによって溶解能を数値的に表現可能な溶解度パラメーターを定義するのに用いられ、溶解度パラメーターは、特定の温度において密度やモル体積を用いれば、下記の関係式3によって計算され得る。
【0126】
[関係式3]
δ=(CED)
0.5=(ΣEcoh
i/ΣVm
i)
0.5
【0127】
式中、δは、溶解度パラメーターであり、CEDは、凝集エネルギー密度であり、Ecoh
iは、分子内の官能基iに対する凝集エネルギーであり、Vm
iは、モル体積である。
【0128】
二色性染料の構造の設計時に用いられたヒルデブラント溶解度パラメーター値は、分子の基の寄与を用いて計算することができる。
【0129】
二色性染料の溶解度パラメーターを計算するのに用いられる凝集エネルギー(Ecoh)とモル体積(Vm)の基の寄与を、表4に示す(参考文献:Polym. Eng. Sci. 1974, 14, 147.; J. Appl. Polym. Sci. 2005, 96, 416.)。
【0130】
【表4A】
【表4B】
【0131】
例えば、下記の一般式1aで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、下記表5に示す凝集エネルギー(Ecoh
i)およびモル体積(Vm
i)と関係式3を用いて計算することができる。
【0132】
【化3】
【0133】
【表5】
【0134】
一般式1aで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、21.9であった。
【0135】
(二色性染料の合成)
合成例1
1−1.モノアゾ化合物の合成
4−(4−ニトロフェニルアゾ)フェノール(4-(4-nitrophenylazo)phenol)(日本国の東京化成工業株式会社製)10g(41.1mmol)をアセトン200mLに溶かした後、ここに1−ブロモオクタン(1-bromooctane)8.5mL(48.9mmol)と炭酸カリウム(K
2CO
3)11.4g(82.5mmol)を入れた。次いで、反応混合物を60℃において24時間還流攪拌した後、室温まで降温した。次いで、反応混合物を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(silica gel column chromatography)(CH
2Cl
2:n‐ヘキサン=2:1)で精製して4−ニトロ化合物(4-nitro)12.3g(34.6mmol)を得た。このとき、歩留まりは、84%であった。精製された4−ニトロ化合物5.7g(16.0mmol)を熱いエタノール150mLに溶かした後、ここに熱いエタノールと水に溶かしたNa
2S・9H
2O11.5g(47.9mmol)を入れた。次いで、反応混合物を80℃において5時間攪拌した後、室温まで降温した。次いで、析出された結晶をろ過し、水で複数回洗浄した後に乾燥して、4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼン(4-amino-4’-octyloxyazobenzene)4.3g(13.2mmol)を得た。このとき、歩留まりは、82%であった。
【0136】
4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼンの構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0137】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0138】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.89 (t, J = 6.9 Hz, 3 H, CH
3), 1.26 - 1.34 (m, 8 H, CH
2 X 4), 1.45 - 1.49 (m, 2 H, CH
2), 1.57 - 1.83 (m, 2 H, CH
2), 3.98 (br s, 2H, NH
2), 4.02 (t, J = 6.6 Hz, 2H, OCH
2), 6.74 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH), 6.97 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.76 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.82 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH).
【0139】
1−2.ビスアゾ化合物の合成
上記において得られた4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼン2g(6.15mmol)をジメチルアセトアミド(dimethylacetamide;DMAc)120mLと酢酸(acetic acid;AcOH)30mLに溶かした後、ここに12N HCl3mLを添加し、0℃に保持した。次いで、硝酸ナトリウム(NaNO
2)446mg(6.46mmol)を水2mLに溶かした後、反応混合物に徐々に滴加した。滴加が終わると、反応物を0℃に保持しながら1時間攪拌した。次いで、メタノール150mLにm−トルイジン(m-toluidine)6.15mmolを溶かした後、反応混合物に徐々に滴加し、0℃において1時間攪拌した。次いで、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で中和を行って反応を終えた後、析出された固体をろ過した。混合物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製してビスアゾ(bisazo)化合物を得た。このとき、歩留まりは、60〜80%であった。
【0140】
1−3.トリアゾ化合物の合成
上記において得られたビスアゾ化合物1mmolをジメチルアセトアミド(DMAc)20mLと酢酸(AcOH)5mLに溶かした後、12N HCl(0.5mL)を添加し、0℃に保持した。次いで、硝酸ナトリウム(NaNO
2)72mg(1.04mmol)を水1mLに溶かした後、反応混合物に徐々に滴加した。滴加が終わると、反応物を0℃に保持しながら1時間攪拌した。次いで、メタノール25mLに2−ピペリジノチオフェン(2-piperidinothiophene)167mg(1mmol)を溶かした後、反応混合物に徐々に滴加し、0℃において約1時間攪拌した。次いで、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で中和を行って反応を終えた後、析出された固体をろ過した。混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(n−ヘキサン:EtOAc=3:1)で精製して下記の一般式1aで表わされるトリアゾ二色性染料398mg(0.64mmol)を得た。このとき、歩留まりは、64%であった。
【0141】
【化4】
【0142】
上記の一般式1aで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0143】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0144】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ(ppm): 0.90 (t, J = 6.6 Hz, 3 H, CH3), 1.25 - 1.33 (m, 8 H, CH2 X 4), 1.45 - 1.48 (m, 2 H, CH2), 1.70 - 1.88 (m, 8 H, CH2 X 4), 2.80 (s, 3 H, CH3), 3.44 - 3.46 (m, 4 H, NCH2 X 2), 4.05 (t, J = 6.5 Hz, 2 H, OCH2), 6.20 (d, J = 4.5 Hz, 1 H, ArH), 7.02 (d, J = 8.9 Hz, 2 H, ArH), 7.58 - 8.07 (m, 10 H, ArH).
【0145】
上記の一般式1aで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、21.9であった。
【0146】
合成例2
m−トルイジンの代わりに、3−クロロアニリン(3-chloroaniline)を用いた以外は、合成例1の方法と同様にして下記の一般式1bで表わされる二色性染料456mg(0.71mmol)を得た。このとき、歩留まりは、71%であった。
【0147】
【化5】
【0148】
上記の一般式1bで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0149】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0150】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.90 (t, J = 6.7 Hz, 3 H, CH
3), 1.25 - 1.38 (m, 8 H, CH
2 X 4), 1.45 - 1.49 (m, 2 H, CH
2), 1.71 - 1.86 (m, 8 H, CH
2 X 4), 3.46 - 3.50 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 4.06 (t, J = 6.4 Hz, 2 H, OCH
2), 6.24 (d, J = 4.8 Hz, 1 H, ArH), 7.02 (d, J = 9.0 Hz, 2 H, ArH), 7.61 - 8.12 (m, 10 H, ArH).
【0151】
上記の一般式1bで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、22.5であった。
【0152】
合成例3
4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼンの代わりに、4−アミノ−2−クロロ−4’−オクチルオキシアゾベンゼン(4-amino-2-chloro-4’-octyloxyazobenzene)を用い、m−トルイジンの代わりに、3−クロロアニリン(3-chloroaniline)を用いた以外は、合成例1の方法と同様にして下記の一般式1cで表わされる二色性染料 450mg(0.7mmol)を得た。このとき、歩留まりは、70%であった。
【0153】
【化6】
【0154】
上記の一般式1cで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0155】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0156】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.90 (t, J = 6.7 Hz, 3 H, CH
3), 1.25 - 1.36 (m, 8 H, CH
2 X 4), 1.45 - 1.50 (m, 2 H, CH
2), 1.71 - 1.85 (m, 8 H, CH
2 X 4), 3.43 - 3.47 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 4.06 (t, J = 6.6 Hz, 2 H, OCH
2), 6.21 (d, J = 4.7 Hz, 1 H, ArH), 7.02 (d, J = 9.0 Hz, 2 H, ArH), 7.59 - 8.11 (m, 10 H, ArH).
【0157】
上記の一般式1cで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、22.5であった。
【0158】
合成例4
m−トルイジンの代わりに、o−トルイジン(o-toluidine)を用いた以外は、合成例1の方法と同様にして、下記の一般式1dで表わされる二色性染料466mg(0.75mmol)を得た。このとき、歩留まりは、75%であった。
【0159】
【化7】
【0160】
上記の一般式1dで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0161】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0162】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.90 (t, J = 6.6 Hz, 3 H, CH
3), 1.22 - 1.36 (m, 8 H, CH
2 X 4), 1.45 - 1.50 (m, 2 H, CH
2), 1.71 - 1.86 (m, 8 H, CH
2 X 4), 2.67 (s, 3 H, CH
3), 3.42 - 3.45 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 4.05 (t, J = 6.5 Hz, 2 H, OCH
2), 6.18 (d, J = 4.7 Hz, 1 H, ArH), 7.02 (d, J = 8.9 Hz, 2 H, ArH), 7.56 - 8.07 (m, 10 H, ArH).
【0163】
上記の一般式1dで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、21.9であった。
【0164】
合成例5
4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼンの代わりに、4−アミノ−4’−ブチルオキシアゾベンゼン(4-amino-4’-butyloxyazobenzene)を用いた以外は、合成例1の方法と同様にして下記の一般式1eで表わされる二色性染料357g(0.63mmol)を得た。このとき、歩留まりは、63%であった。
【0165】
【化8】
【0166】
上記の一般式1eで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0167】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0168】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 1.00 (t, J = 7.2 Hz, 3 H, CH
3), 1.47 - 1.59 (m, 2 H, CH
2), 1.70 - 1.86 (m, 8 H, CH
2 X 4), 2.80 (s, 3 H, CH
3), 3.43 - 3.46 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 4.06 (t, J = 6.4 Hz, 2 H, OCH
2), 6.19 (d, J = 4.3 Hz, 1 H, ArH), 7.02 (d, J = 8.5 Hz, 2 H, ArH), 7.57 - 8.07 (m, 10 H, ArH).
【0169】
上記の一般式1eで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、22.6であった。
【0170】
合成例6
m−トルイジンの代わりに、1−ナフチルアミン(1-naphthylamine)を用いた以外は、合成例1の方法と同様にして下記の一般式1fで表わされる二色性染料494mg(0.75mmol)を得た。このとき、歩留まりは、75%であった。
【0171】
【化9】
【0172】
上記の一般式1fで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0173】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0174】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.90 (t, J = 6.9 Hz, 3 H, CH
3), 1.22 - 1.36 (m, 8 H, CH
2 X 4), 1.45 - 1.50 (m, 2 H, CH
2), 1.73 - 1.85 (m, 8 H, CH
2 X 4), 3.48 - 3.52 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 4.06 (t, J = 6.6 Hz, 2 H, OCH
2), 6.24 (d, J = 4.7 Hz, 1 H, ArH), 7.02 (d, J = 9.0 Hz, 2 H, ArH), 7.63 - 8.19 (m, 11 H, ArH), 8.93 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH), 9.04 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH).
【0175】
上記の一般式1fで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、23.3であった。
【0176】
合成例7
4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼンの代わりに、4−アミノ−4’−ブチルアゾベンゼン(4-amino-4’-butylazobenzene)を用い、m−トルイジンの代わりに、フェノールを水酸化ナトリウム水溶液と併用した後、プロピルブロミドを用いた以外は、合成例1の方法と同様にして下記の一般式1gで表わされる二色性染料を得た。
【0177】
【化10】
【0178】
上記の一般式1gで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0179】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0180】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.95 (t, J = 7.3 Hz, 3 H, CH
3), 1.07 (t, J = 7.3 Hz, 3 H, CH
3), 1.34 - 1.43 (m, 2 H, CH
2), 1.58 - 1.66 (m, 2 H, CH
2), 1.82 - 1.89 (m, 2 H, CH
2), 2.70 (t, J = 7.7 Hz, 2 H, ArCH
2), 4.01 (t, J = 6.6 Hz, 2 H, OCH
2), 7.01 (d, J = 9.0 Hz, 2 H, ArH), 7.33 (d, J = 8.4 Hz, 2 H, ArH), 7.86 - 8.02 (m, 8 H, ArH).
【0181】
上記の一般式1gで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、21.4であった。
【0182】
合成例8
4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼンの代わりに、4−アミノ−4’−N,N−ジメチルアゾベンゼン(4-amino-4’-N,N-dimethylazobenzene)を用い、m−トルイジンの代わりに、2−クロロフェノールを水酸化ナトリウム水溶液と併用した後、ヘプチルブロミドを用いた以外は、合成例1の方法と同様にして下記の一般式1hで表わされる二色性染料を得た。
【0183】
【化11】
【0184】
上記の一般式1hで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0185】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0186】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.91 (t, J = 6.6 Hz, 3 H, CH
3), 1.31 - 1.39 (m, 6 H, CH
2 X 3), 1.47 - 1.52 (m, 2 H, CH
2), 1.85 - 1.92 (m, 2 H, CH
2), 3.11 (s, 6 H, CH
3 X 2), 4.12 (t, J = 6.5 Hz, 2 H, OCH
2), 6.77 (d, J = 9.1 Hz, 2 H, ArH), 7.04 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH), 7.86 - 8.03 (m, 8 H, ArH).
【0187】
上記の一般式1hで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、21.7であった。
【0188】
合成例9
2−クロロフェノールの代わりに、3−クロロフェノールを用いた以外は、合成例8の方法と同様にして下記の一般式1iで表わされる二色性染料を得た。
【0189】
【化12】
【0190】
上記の一般式1iで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0191】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0192】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.93 (t, J = 7.0 Hz, 3 H, CH
3), 1.28 - 1.42 (m, 6 H, CH
2 X 3), 1.46 - 1.52 (m, 2 H, CH
2), 1.81 - 1.88 (m, 2 H, CH
2), 3.14 (s, 6 H, CH
3 X 2), 4.05 (t, J = 6.6 Hz, 2 H, OCH
2), 6.80 (d, J = 9.2 Hz, 2 H, ArH), 6.89 (dd, J = 9.2, 2.8 Hz, 1 H, ArH), 7.10 (d, J = 2.8 Hz, 1 H, ArH), 7.82 - 8.08 (m, 7 H, ArH).
【0193】
上記の一般式1iで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、21.7であった。
【0194】
比較合成例1
4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼンの代わりに、4−アミノ−4’−ブチルアゾベンゼンを用いた以外は、合成例6の方法と同様にして下記の一般式2aで表わされる二色性染料を得た。
【0195】
【化13】
【0196】
上記の一般式2aで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0197】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0198】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.96 (t, J = 7.2 Hz, 3 H, CH
3), 1.37 - 1.41 (m, 2 H, CH
2), 1.61 - 1.76 (m, 8 H, CH
2 X 4), 2.71 (t, J = 7.7 Hz, 2 H, ArCH
2), 3.48 - 3.52 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 6.24 (d, J = 4.7 Hz, 1 H, ArH), 7.33 - 8.17 (m, 13 H, ArH), 8.93 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH), 9.04 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH).
【0199】
上記の一般式2aで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、24.0であった。
【0200】
比較合成例2
4−アミノ−4’−オクチルオキシアゾベンゼンの代わりに、4−アミノ−4’−ヒドロキシアゾベンゼン(4-amino-4’-hydroxyazobenzene)を用いた以外は、合成例6の方法と同様にして染料中間体を得た。
【0201】
染料中間体の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0202】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0203】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 1.71 - 1.85 (m, 6 H, CH
2 X 2), 3.48 - 3.52 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 6.24 (d, J = 4.7 Hz, 1 H, ArH), 7.02 (d, J = 9.0 Hz, 2 H, ArH), 7.63 - 8.19 (m, 11 H, ArH), 8.93 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH), 9.04 (d, J = 8.8 Hz, 1 H, ArH).
【0204】
前記染料中間体500mg(0.92mmol)をジクロロメタン(CH
2Cl
2)10mLおよびトリエチルアミン(Et
3N)1mLに溶かした後、ここに4−ブチルベンゾイルクロリド(4-butylbenzoyl chloride)258mL(1.38mmol)を添加し、24時間攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(n−ヘキサン:EtOAc=3:1)で精製して下記の一般式2bで表わされる二色性染料545mg(0.77mmol)を得た。このとき、歩留まりは、84%であった。
【0205】
【化14】
【0206】
上記の一般式2bで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0207】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0208】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.96 (t, J = 7.3 Hz, 3 H, CH
3), 1.36 - 1.43 (m, 2 H, CH
2), 1.61 - 1.69 (m, 2 H, CH
2), 1.71 - 1.78 (m, 6 H, CH
2 X 3), 2.73 (t, J = 7.7 Hz, 2 H, ArCH
2), 3.49 - 3.54 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 6.26 (d, J = 4.8 Hz, 1 H, ArH), 7.33 - 8.19 (m, 17 H, ArH), 8.94 (d, J = 8.5 Hz, 1 H, ArH), 9.05 (d, J = 8.5 Hz, 1 H, ArH).
【0209】
上記の一般式2bで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、24.4であった。
【0210】
比較合成例3
比較合成例2の染料中間体500mg(0.92mmol)をジクロロメタン(CH
2Cl
2)10mLおよびトリエチルアミン(Et
3N)1mLに溶かした後、ここにペンタノイルクロリド(pentanoyl chloride)166mg(1.38mmol)を添加し、24時間攪拌した。次いで、反応混合物を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(n−ヘキサン:EtOAc=3:1)で精製して下記の一般式2cで表わされる二色性染料492mg(0.78mmol)を得た。このとき、歩留まりは、85%であった。
【0211】
【化15】
【0212】
上記の一般式2cで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0213】
1H NMRの分析結果は、下記の通りであった。
【0214】
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ (ppm): 0.99 (t, J = 7.3 Hz, 3 H, CH
3), 1.43 - 1.50 (m, 2 H, CH
2), 1.73 - 1.84 (m, 8 H, CH
2 X 4), 2.61 (t, J = 7.5 Hz, 2 H, CH
2CO
2), 3.48 - 3.52 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 6.25 (d, J = 4.7 Hz, 1 H, ArH), 7.33 - 8.19 (m, 13 H, ArH), 8.93 (d, J = 8.3 Hz, 1 H, ArH), 9.05 (d, J = 8.3 Hz, 1 H, ArH).
【0215】
上記の一般式2cで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、24.5であった。
【0216】
比較合成例4
ビスアゾ化合物の代わりに、1−ナフチルレッドヒドロクロリド(1-naphthyl red hydrochloride)を用いた以外は、合成例1の方法と同様にして下記の一般式2dで表わされる二色性染料を得た。
【0217】
【化16】
【0218】
上記の一般式2dで表わされる二色性染料の構造を
1H NMR(Bruker Co. 300MHz)測定により分析した。
【0219】
1H NMRの分析結果は、下記の通りである。
【0220】
1H NMR (300 MHz, acetone-d
6) δ (ppm): 1.73 - 1.83 (m, 6 H, CH
2 X 3), 3.59 - 3.63 (m, 4 H, NCH
2 X 2), 6.53 (d, J = 4.8 Hz, 1 H, ArH), 7.54 - 8.08 (m, 10 H, ArH), 8.92 (d, J = 7.4 Hz, 1 H, ArH), 9.03 (d, J = 7.4 Hz, 1 H, ArH).
【0221】
上記の一般式2dで表わされる二色性染料の溶解度パラメーターは、24.8であった。
【0222】
(偏光フィルムの製造)
実施例1
ポリプロピレン(PP)とポリプロピレン−ポリエチレン共重合体(PP−PE)を5:5(w/w)で含むポリオレフィン樹脂(溶解度パラメーター:16.6)とポリオレフィン樹脂100重量部に対して、合成例1に従い得られた二色性染料0.5重量部を混合して、偏光フィルム用の組成物を準備した。
【0223】
偏光フィルム用の組成物を約230℃においてDSM社製のマイクロコンパウンダーを用いて溶融混合した。次いで、溶融混合物をシート状のモールドに入れた後、高温高圧プレスで押し付けてフィルムを製造した。
【0224】
次いで、115℃においてフィルムを1000%の倍率で一軸延伸(インストロン社製の引張試験機を用いて)して偏光フィルムを製造した。
【0225】
実施例2
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例2に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0226】
実施例3
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例3に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0227】
実施例4
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例4に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0228】
実施例5
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例5に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0229】
実施例6
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例6に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0230】
実施例7
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例7に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0231】
実施例8
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例8に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0232】
実施例9
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、合成例9に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0233】
比較例1
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、比較合成例1に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0234】
比較例2
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、比較合成例2に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0235】
比較例3
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、比較合成例3に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0236】
比較例4
合成例1に従い得られた二色性染料の代わりに、比較合成例4に従い得られた二色性染料を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0237】
(評価1)
実施例1〜9と比較例1〜4による偏光フィルムの可視光領域における透光度、偏光効率および二色比を評価した。
【0238】
透光度は、分光光度計(V−7100 UV/Vis、JASCO社製)を用いて評価した。
【0239】
透光度は、偏光フィルムの透過軸に平行に入射した光に対する偏光フィルムの透光度と、偏光フィルムの透過軸に垂直に入射した光に対する偏光フィルムの透光度をそれぞれUV−VIS分光測光器(JASCO社製、V−7100)を用いて測定した。
【0240】
前記測定した透光度を用いて二色比(dichroic ratio;DR)および偏光効率(polarizing efficiency;PE)を求めた。
【0241】
二色比(DR)は、下記の数式1によって求めた。
【0242】
[数式1]
DR=Log(1/T
⊥)/Log(1/T
‖)
【0243】
式中、
DRは、二色比であり、
T
‖は、偏光フィルムの透過軸に平行に入射した光に対する偏光フィルムの透光度であり、
T
⊥は、偏光フィルムの透過軸に垂直に入射した光に対する偏光フィルムの透光度である。
【0244】
偏光効率は、下記の数式2により求めた。
【0245】
[数式2]
PE%=[T
‖−T
⊥/T
‖+T
⊥]
1/2×100
【0246】
式中、
PEは、偏光効率であり、
T
‖は、偏光フィルムの透過軸に平行に入射した光に対する偏光フィルムの透光度であり、
T
⊥は、偏光フィルムの透過軸に垂直に入射した光に対する偏光フィルムの透光度である。
【0247】
その結果について、
図4〜
図7と表6に基づいて説明する。
【0248】
図4は、実施例1〜5による偏光フィルムの可視光領域における二色比を示すグラフであり、
図5は、実施例6による偏光フィルムの可視光領域における二色比を示すグラフであり、
図6は、実施例7〜9による偏光フィルムの可視光領域における二色比を示すグラフであり、
図7は、比較例1〜4による偏光フィルムの可視光領域における二色比を示すグラフである。
【0249】
表6中、実施例1〜9と比較例1〜4による偏光フィルムの透光度、偏光効率および二色比は、偏光フィルムの最大吸収波長(λ
max)における値を示す。
【0250】
【表6】
【0251】
図4〜
図7と表1を参照すると、実施例1〜9による偏光フィルムは、比較例1〜4による偏光フィルムと比較して高い透光度、偏光効率および二色比を示すことがわかる。
【0252】
具体的に、実施例1〜9による偏光フィルムは、約30.0%以上の透光度と約90%以上の偏光効率を両立させることを確認することができる。これに対し、比較例1〜4による偏光フィルムは、約30.0%以上の透光度と約90%以上の偏光効率を両立させないだけではなく、二色比が低いことを確認することができる。
【0253】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の欄および添付図面の範囲内において種々に変形して実施することが可能であり、これもまた本発明の範囲に属するということはいうまでもない。