(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾き調整部の調整値および前記配列方向調整部の調整値は、ユーザによって前記記録制御装置に対して入力され、前記記録制御装置は当該入力された傾き調整値および配列方向調整値を前記記録装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の記録システム。
前記記録装置には、複数の前記記録ヘッドが前記搬送方向に規定の間隔を置いて並置され、前記取得部は、前記搬送方向における前記記録ヘッドの記録位置の調整範囲における、最も大きい同時駆動数を前記最大同時駆動数とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の記録システム。
前記記録制御装置は、前記最大同時駆動数を前記画像データに付加して前記記録装置に送信し、前記記録装置の前記制御ユニットは、当該付加された最大同時駆動数に基づいて前記搬送速度を設定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の記録システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳しく説明する。但し、以下の説明は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本明細書で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する場合がある。
【0013】
なお、本明細書において、「記録」(「画像形成」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみを表すものではない。また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。すなわち、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成に供される液体を表すものとする。さらに加えて、「ノズル」とは、特にことわらない限り、吐出口と、これに連通する液路と、インクの吐出に利用されるエネルギを発生する素子と、を総括して言うものとする。
【0014】
1.記録システム
図1は、本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を説明する模式図である。記録システムは、記録データを生成する画像作成ユニットとしての記録制御装置であるパーソナルコンピュータ(PC)形態のホスト装置101と、ホスト装置101からの指示に従って記録を実行可能な記録装置102とを含む。本実施形態では、記録装置102の一例をインクジェット記録装置として説明する。ホスト装置101と記録装置102とは、接続ケーブル103を介して相互に通信可能である。記録装置102は、ホスト装置101から受信した記録データに基づいて、記録用紙等の記録媒体104に記録する。なお、図示の例では1台のホスト装置101に1台の記録装置102が接続ケーブル103を介して接続されたシステムを示しているが、LAN等を介した接続が行われたものでもよく、また複数台の記録装置が接続されていてもよい。さらに、接続の態様についても、有線通信を行うものであっても無線通信を行うものであってもよい。
【0015】
図2は、記録システムの構成要素であるホスト装置101および記録装置102のそれぞれの内部の機能ブロック構成を示す図である。ホスト装置101は、例えば一般的なパーソナルコンピュータその他の公知の形態を有する。ホスト装置101は、記録装置102に記録を行わせる画像データの供給源をなすとともに、その記録動作を行わせるためのプログラムであるプリンタドライバがインストールされている。ホスト装置101のCPU220がプリンタドライバを実行することにより、画像データや、後述する記録装置の搬送動作制御を行わせるために供される最大吐出数データが送られるようになっている。CPU220は、オペレーティングシステム(OS)の制御の下で、RAM等の記憶領域に格納されたプリンタドライバや各種プログラムを実行して本実施形態の動作を実現する。
【0016】
CPU220のシステムバスは階層的なバス構成を有し、例えば、ホスト/PCIブリッジ221を介してローカルバスとしての例えばPCIバスに接続され、さらにPCI/ISAブリッジ228を介してISAバスと接続されて、各バス上の機器と接続される。ホスト装置101内の各ブロックは、システムバスを介して相互にデータの送受信を行う。なお図示はしないが、システムバスには、L2キャッシュと称されるSRAM(StaticRAM)を使用した高速のメモリを接続し、CPU220が常時アクセスするコードやデータを記憶させておくことができる。
【0017】
メインメモリ222は、オペレーティングシステム(OS),アプリケーションプログラム,プリンタドライバ等の実行プログラムを一時的に記憶する記憶領域として用いられる。また、メインメモリ222は、各プログラム実行のための作業用メモリ領域としても用いられる。さらにメインメモリ222は、アプリケーションプログラムにより描画処理されたRGB画像データや、RGB画像データから色空間変換された、記録装置102の各記録ヘッドの各インク色に対応したインク色データ等も記憶する。本実施形態において、インク色データは、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各インク色に対応した2値の画像データである。
【0018】
ホスト装置101は、誤差拡散法等で2値化された画像データや、後述する処理に基づいて得た最大同時吐出数のデータ等をメインメモリ222上に展開する。そして、画像データに最大吐出数データを付加したものを記録データとし、通信インタフェース223を介して記録装置102に送信する。通信インタフェース223は、例えばUSBインタフェースやネットワークインタフェースであり、PCIバスに接続されている。
【0019】
CRTC224は、ビデオコントローラである。CRTC224は、CPU220によりVRAM225に書き込まれた表示用ビットマップデータを読み取って、CRT,LCD,PDP等のディスプレイ226に転送する。ユーザは、ディスプレイ226により、例えば、記録を指示した記録ジョブの処理経過や処理結果を確認することができる。
【0020】
ROM229は、入力デバイス232やFDD231等の入出力機器を制御するBIOS(Basic Input Output System)プログラムや、電源投入時の初期化プログラムや自己診断プログラム等を格納する。入力デバイス232は、例えば、キーボードやポインティングデバイスである。ユーザは、入力デバイス232により、例えば、記録装置102での記録等を指示することができる。EEPROM230は、恒久的に利用する各種のパラメータを記憶させるための書き換え可能な不揮発性のメモリである。
【0021】
オペレーティングシステム(OS)、各種アプリケーションプログラム、各処理を実行するプログラム、および記録装置102に対応したプリンタドライバ等のプログラムは、HDD227からメインメモリ222に読み出されてCPU220により実行される。オフラインで作成した記録データはHDD227に記憶される。同時吐出数の取得処理は、後述する記録データ作成時に行われる。
【0022】
記録装置102は、記録データおよび最大同時吐出数データを記憶するRAM202、制御プログラム等を記憶するROM203、ホスト装置101との通信を行うインタフェースとなる通信装置204、および各記録ヘッドを駆動制御する記録ヘッド制御部205を含む。また、記録装置102は、後述する各種調整値を装置電源のオフ時にも保存しておくための不揮発性メモリとして、例えばEEPROM213を含む。また、記録装置102は、記録媒体搬送のためのアクチュエータ等を駆動制御する装置駆動部206、各記録ヘッド内のメモリ(EEPROM)208〜211に対する読み込み及び書き込み(R/W)を制御するメモリ制御回路207を含む。CPU201は、ROM203に格納された各種プログラムを実行して本実施形態の動作を実現する。記録装置102は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの4色それぞれのノズル列に対応するライン型の記録ヘッドを搭載している。本実施形態においては、上記4色に対応した記録ヘッドを備える記録装置を例示するが、淡シアンや淡マゼンタなど上記4色以外の色や、特定の目的に応じた特色に対応した記録ヘッドを含んでもよい。各記録ヘッドは、キャリッジ等に着脱自在に取り付けられている。
【0023】
2.記録装置
図3は、本実施形態における記録装置102の構成の概要を示す図である。記録装置102は、ホスト装置101から送信される記録対象の記録データに基づいて、記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yから記録媒体Pに各色インクを吐出して記録を行う。4色のそれぞれに対応した記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yは記録媒体Pの搬送方向(矢印A方向)に沿ってこの順に並置されている。記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yは、それぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを吐出する。これらの記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yは、いずれも、所謂、フルライン型記録ヘッドであり、記録媒体の搬送方向Aに対して交差する方向(本実施形態では直交する方向。以下では幅方向ともいう)にノズルが配列されている。ノズルは、幅方向の寸法が最も大きい記録媒体に対応し、且つその最大記録幅よりも広い範囲にわたって配列される。記録媒体Pは矢印Aで示す方向(以下、媒体搬送方向ともいう)に搬送される。一方、各記録ヘッドは移動することなく、記録幅に対応した範囲のノズルを使用し、ノズルに設けられた吐出エネルギ発生素子(電気熱変換素子やピエゾ素子など)を駆動することにより、吐出口からインクを吐出して記録を行う。
【0024】
記録ヘッドによる記録に伴って記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yの吐出口形成面に塵埃やインク滴等の異物が付着して吐出状態が変わると、記録画質が影響を受けることがある。また、吐出口内方にあるインクが増粘することもある。そのため、各記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yから安定してインクを吐出できるように、記録装置102には回復ユニット40が構成されている。CPU220は、回復ユニット40による回復処理を定期的に行うことによって、記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yのインク吐出状態を良好な状態に維持または回復する。また、回復ユニット40には、記録動作を行わないときに吐出口形成面のキャッピングが可能なキャップを含むキャップユニット50が各記録ヘッドに対応して設けられている。また、キャップユニット50は、吐出口形成面のクリーニングを行うために、吐出口形成面に対して払拭動作を行うブレードやブレード保持部材を備える。さらに、キャップユニット50は、所謂吸引回復や予備吐出に伴ってキャップに受容されたインクを除去する手段を含む。加えて、記録装置102には、各記録ヘッドに供給されるインクを貯留するインクタンク28K、28C、28Mおよび28Yや、各記録ヘッドにインクを補充可能なポンプ、あるいは回復動作を行う際に利用されるポンプ等が配設されている。
【0025】
図3においてロール紙として例示されている記録媒体Pは、ロール紙供給ユニット24から供給され、記録装置102に構成された搬送ユニットである搬送機構26により矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、記録媒体Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるためのローラ26c等を含んで構成されている。搬送速度は、高速モードや低速モード等のように複数段階に変更設定可能であり、特に本実施形態においては、ホスト装置101から送られた記録データに含まれる、複数のノズルの最大同時駆動数(最大同時吐出数;後述)のデータに基づいて設定される。CPU220は、記録時に、設定された速度で搬送されてきた記録媒体Pが記録ヘッド22Kと対向する記録領域に到達すると、記録データに含まれる画像データに基づいて、記録ヘッド22Kからブラック(K)インクを吐出させる。同様に、CPU220は、記録ヘッド22C、22Mおよび22Yの順に、各色のインクを吐出させて記録媒体Pにカラー記録を行う。この際、CPU220は、予め設定されている調整値に基づいてレジストレーション処理を行いながら記録ヘッドを駆動する。なお、記録媒体はロール紙に限られず、ファンフォールド紙であってもよい。また、それらのようなウェブ状の連続紙の形態に限られず、
図1に示したようなカットシートの形態の記録媒体104であってもよい。
【0026】
3.レジストレーション処理
CPU220は、搬送速度と各記録ヘッド間の距離との関係に基づいて各記録ヘッドの吐出タイミングの標準値を決定するが、記録ヘッドの組み付け位置等による誤差により記録位置ずれ(ノズルによるドット形成位置のずれ)が生じる。この記録位置ずれを調整するため、CPU220は、記録装置102の設置時やユーザが位置ずれの修正を所望したタイミングで、ある一定の間隔で記録されているパターン要素からなるテストパターンを用いて吐出タイミング調整値を決定する。この値を用いた、記録媒体Pの搬送方向における吐出タイミング調整が、上述した縦方向調整である。また、吐出口配列方向における記録ヘッド間の位置ずれに対応して、記録ヘッド間で記録に使用する吐出口の範囲を調整する横方向調整や、搬送方向に対する記録ヘッドの傾きを考慮した傾き調整も行われる。
【0027】
記録媒体Pの搬送、各記録ヘッド(22K、22C、22M、22Y)からのインク吐出動作等に必要な電力は単一の電源ユニット(不図示)から供給されている。必要な電力は一定ではなく、記録媒体Pの搬送速度が高ければ高いほど、また各記録ヘッドの同時に駆動されるノズル数(同時吐出数)の合計が多ければ多いほど、必要な電力は大きくなる。各記録ヘッド(22K、22C、22M、22Y)の実質的な全ノズルで同時に吐出を行うような、ドットを広範囲にわたり高密度に形成する画像はそれほど多くはない。したがって、各記録ヘッド(22K、22C、22M、22Y)の全ノズルからの同時吐出を、高速で記録媒体Pを搬送するモードでの搬送動作で実現可能にするほどの大容量の電源ユニットを用いることの利点は少ない。このため、電源ユニットの電源容量をできるだけ小さく抑え、各記録ヘッドの同時吐出数(ノズル数)が所定の数(電源容量閾値ドット数)を超える場合は低速モードに自動的に変更して、高デューティ即ち高密度の画像データに対応する。
【0028】
ここで、縦方向調整、横方向調整および傾き調整について説明する。
【0029】
3−1.縦方向調整
図4(a)および
図4(b)の実線部分は、各記録ヘッド間の距離が均等になっている状態での記録動作を示す図である。矢印A方向に搬送される記録媒体Pに対し、記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yから同時に吐出動作を行うと、記録媒体Pには、記録媒体の幅方向に延在する横罫線状の画像401K、401C、401Mおよび401Yが等間隔に記録される。
【0030】
また、
図4(a)は、各記録ヘッド間の距離が均等になっていない状態、すなわち二点鎖線で示すように記録ヘッド22Yが媒体搬送方向Aと逆の方向にずれた状態での記録動作も示している。この状態で記録ヘッド22K、22C、22Mおよび22Yから同時に吐出動作を行うと、
図4(a)および
図4(b)の二点鎖線で示すように、記録媒体Pには、等間隔の画像401K、401C、401Mと、画像401Mに対する間隔が狭くなった画像601Yとが形成される。
【0031】
記録媒体P上の矢印A方向の任意の2点(隣接する記録ヘッドの矢印A方向において対応するノズル)間の間隔(mm)は、矢印A方向の記録解像度(dpi)を使用してドット数に換算できる。隣接する記録ヘッドが規定の間隔である場合、すなわち記録ヘッド22Kおよび22Cの間隔並びに記録ヘッド22Cおよび22Mの間隔が規定の間隔となっている場合において、その規定の間隔がnドット分であるとする。この状態であると、画像401K,401C,401Mは矢印A方向にnドット分の間隔を置いて等間隔に形成される。一方、二点鎖線で示すように記録ヘッド22Yが記録ヘッド22M側にzドット分偏倚している場合、画像601Yと画像401Mとの間隔はn−zドット分となる。したがって、同時吐出によって形成された画像401Mと601Yとの間隔から判断し、各隣接記録ヘッド間の吐出タイミングがnドット分に揃うように調整する場合、記録ヘッド22Yの吐出タイミングは、zドット分を設定搬送速度で除したZ時間早く設定される。本実施形態では、このときのZ値を吐出タイミング調整値または縦方向調整値と定義する。吐出タイミングを遅くしたい場合、すなわち例えば記録ヘッド22Yが記録ヘッド22Mから離れる方向にzドット分偏倚している場合には、Zの負値(−Z)を吐出タイミング調整値に設定すればよい。
【0032】
逆に、吐出タイミングが調整済みである状態を基準に考えると、例えば吐出タイミング調整値がZであるとわかれば、同時吐出により形成される画像の間隔が一定(n−z)ドット分の間隔となるように、記録ヘッド22K〜22Yの吐出タイミングを設定できる。
【0033】
3−2.横方向調整
図5(a)は、各記録ヘッドの横方向位置すなわちノズル配列方向の位置が揃っている状態で画像が記録された記録媒体Pを鉛直方向上から見た図である。各記録ヘッド左右中央位置のノズルを使用して記録した画像801K,801C,801M,801Yに示す通り、同じ位置に記録される。
【0034】
図5(b)は、記録ヘッドの横方向位置が揃っていない状態、特に記録ヘッド22Yが他の記録ヘッドに対して図中右方向にずれた状態である場合に、各記録ヘッドの左右中央位置にあるノズルにより画像が記録された記録媒体Pを鉛直方向上から見た図である。この場合は、画像901K,901C,901Mは同じ位置に記録され、重なり合っているのに対し、画像901Yのみ右にずれて記録されている。このずれ量がrドット分であるとする。
【0035】
上述のように、各記録ヘッドのノズルは、幅方向の寸法が最も大きい記録媒体に対応し、且つその最大記録幅よりも広い範囲にわたって配列されている。つまり、各記録ヘッドの両端部には所定数の余剰ノズルが例えば均等に設けられ、通常は余剰ノズルを除いた中央部分のノズル群が最大限使用されて記録が行われる一方、横方向調整が必要な場合には余剰ノズルが使用される。
図5(b)に示すような画像901Yのずれが生じないようにする場合は、記録ヘッド22Yのみ、ノズルの使用範囲を左方向にrドット(=rノズル)分ずらして記録動作を実行する。このr値は横方向(ノズルの配列方向)のレジストレーション用の調整値であり、これをノズル(記録素子)の配列方向調整値または横方向調整値(ノズルの配列方向調整値)と定義する。図の左方向にずらしたい場合は横方向調整値をrの正値(+r)、右方向にずらしたい場合は横方向調整値をrの負値(−r)に設定すればよい。
【0036】
横方向調整は、このような横方向の色ずれを防ぐ目的以外に、同じ位置に縦罫線(媒体搬送方向に延在する縦罫線状の画像)を形成し続けることによる特定ノズルへの負荷を避けるべく、全色の記録ヘッドのノズル使用範囲を横へずらす目的で使用してもよい。本実施形態では、横方向の色ずれ調整と縦罫線ずらし用の調整とを区別する必要がないため、これらを合わせて横方向調整として扱うことができる。
【0037】
図6は、ホスト装置101が有するメインメモリ222に読み込まれたプリンタドライバを実行するCPU220による縦および横方向調整パターンの記録コマンド送信から記録装置102による縦および横方向調整値保存までの、記録システムの動作の概要を示す。ここで、ステップS1701およびS1705はホスト装置101側で行われる処理、ステップS1702、S1703、S1706およびS1707は記録装置102側で行われる処理、ステップS1704はユーザがホスト装置101に対して行う処理である。
【0038】
まず、ステップS1701では、CPU220は、ホスト/PCIブリッジ221および通信インタフェース223を介して、縦および横方向調整パターンの記録コマンドを送信する。記録装置102のCPU201は、ステップS1702にて、通信装置204を介して縦および横方向調整パターン記録コマンドを受信し、ステップS1703にて、縦および横方向調整用のテストパターンを記録ヘッド22K〜22Yにより記録媒体に記録させる。これらのパターンは、
図4(b)および
図5(b)に示したようなずれがドット単位で認識できるパターンになっている。具体的には、パターンは、各色1本ずつの直線ではなく、複数の直線を1ドットずつずらして記録し、何ドット分ずらして記録した直線が最も正しい位置に記録されているかをユーザが確認できるものとなっている。この確認に応じ、ステップS1704では、ユーザは入力デバイス232を用いて縦および横方向調整値をホスト装置101に対し選択設定する。
【0039】
続いて、CPU220は、ユーザが選択した縦および横方向調整値を、ステップS1705にて、ホスト/PCIブリッジ221および通信インタフェース223を介して送信する。記録装置102のCPU201は、ステップS1706にて、通信装置204を介して縦および横方向調整値を受信し、EEPROM213に保存する(ステップS1707)。以上の縦および横方向調整値処理は、ユーザが所望したタイミングで行い、後の記録動作(
図9のステップS1208)に調整値を反映させる。なお、ステップS1707の処理によってEEPROM213に保存された横方向調整値に基づいて記録動作を制御するCPU201の機能が、配列方向調整部に相当する。
【0040】
3−3.傾き調整
図7(a)は、各記録ヘッドが互いに平行になっていない状態、特に記録ヘッド22Yが媒体搬送方向Aおよびそれに直交する幅方向に対して傾いている状態で記録動作が行われた記録媒体Pを鉛直方向上から見た図である。この場合、媒体搬送方向Aに直交する方向に形成されるべき画像を記録しても、画像1001K、1001Cおよび1001Mは平行に記録されるのに対し、画像1001Yは傾いて記録される。なお、
図7(a)は傾きを強調して描いているが、ここでは実際の画像1001Yの左端から右端の傾きが1ドット分であると仮定して傾き調整を説明する。
【0041】
図7(b)は、
図7(a)のような記録が行われてしまう各記録ヘッド配置状態において、記録ヘッド22Yの傾き調整を行った後に記録された記録媒体Pを鉛直方向上から見た図である。具体的には、記録ヘッド22Yの使用ノズル範囲を中央で分割し、右半分にあるノズルの吐出タイミングを左半分のノズルに対して搬送方向1ドット分の記録に要する時間分、遅らせた記録結果である。この結果、左半分のノズルによる画像部分1101Y1は
図7(a)の画像1001Yの左半分と同じ位置に形成され、右半分のノズルによる画像部分1101Y2は1ドット分搬送方向上流側にずれた位置に形成されるので、画像の傾きが目立たないものとなる。なお、この状態を、記録ヘッドの傾き調整値が「1」であると定義する。記録ヘッドの左端から右端の傾きが2ドット分の場合、記録ヘッドの使用ノズル範囲の中央で2ドット分ずらすと画像部分1101Y1と画像部分1101Y2との境界が目立つ。この場合は中央での分割は行わず、分割位置を記録ヘッドの左端から1/3および2/3の位置として使用ノズル範囲を3つのブロックに分割し、それぞれ1ドットずつ、計2ドット分の傾き調整を行えばよい。一般化すれば、sドット分の傾きがある場合、記録ヘッドの左端から1/(s+1)毎に分割位置を設定し、分割位置を挟んで隣接する使用ノズル範囲間でそれぞれ1ドットずつ、計sドット分の傾き調整を行う。また、傾きが
図7(a)に示したものと逆であれば、傾き調整値に負値を設定する。
【0042】
図8は、ホスト装置101が有するメインメモリ222に読み込まれたプリンタドライバを実行するCPU220による傾き調整パターンの記録コマンド送信から記録装置102による傾き調整値保存までの、記録システムの動作の概要を示すフローチャートである。ここで、ステップS1801およびS1805はホスト装置101側で行われる処理、ステップS1802、S1803、S1806およびS1807は記録装置102側で行われる処理、ステップS1804はユーザがホスト装置101に対して行う処理である。
【0043】
まず、ステップS1801では、CPU220は傾き調整パターンの記録コマンドを送信する。記録装置102は、ステップS1802にて傾き調整パターンの記録コマンドを受信し、ステップS1803にて傾き調整用のテストパターンを記録媒体に記録する。このパターンは
図7(a)のようなずれがドット単位で認識できるパターンになっている。具体的には、記録媒体Pの左端と右端とに、左端から右端の傾きが何ドット分であるかがわかる目盛りを記録ヘッド22Kによって記録する。これにより、記録ヘッド22Kに対して記録ヘッド22C、22M、22Yが左右それぞれ何ドット傾いているかをユーザが確認できるようになっている。この確認に応じ、ステップS1804では、ユーザは入力デバイス232を用いて傾き調整値をホスト装置101に対し選択設定する。
【0044】
続いて、CPU220は、ユーザが選択した傾き調整値をステップS1805にて送信する。記録装置102は、ステップS1806にて傾き調整値を受信し、EEPROM213に保存する(ステップS1807)。この傾き調整値の設定処理は、ユーザが所望したタイミングで行い、後の記録動作(
図9のステップS1208)に傾き調整値を反映させることができる。なお、ステップS1806の処理およびEEPROM213が、傾き調整値保存手段に相当する。
【0045】
以上の説明では、縦方向および横方向調整値の設定処理、並びに傾き調整値の設定処理はユーザが所望するタイミングで起動されるものとした。しかし、調整処理の起動タイミングをホスト装置101で管理し、所定期間調整値の更新が行われていない場合には、ディスプレイ226を介してユーザにこれを報知して調整処理の起動を促すようにしてもよい。また、メンテナンスや交換のために記録ヘッドが取り外され、その後装着されたときに、調整処理の起動を促すようにしてもよい。
【0046】
4.実施形態の特徴構成
CPU201は、以上の調整値に基づいたレジストレーションを行いながら記録動作を実行する。その際、記録媒体Pの搬送速度は、ホスト装置101で計算された最大同時吐出数のデータに基づいて変更される。従来は、上述のように、ホスト装置101が記録データを作成する際、計算に反映させるべき調整値を記録装置102から取得して計算を行う。そのため、両者の通信が確立された後に直ちに記録動作を開始させることができない。また、ホスト装置101に複数の記録装置が接続され、同じ画像を記録できるように記録システムが構成されることがある。この場合、ホスト装置101は個々の記録装置からそれぞれ調整値を受け取り、それぞれの記録装置固有の調整値に基づいて同時吐出数計算を行う必要がある。そのため、ホスト装置101は効率的な処理を行えない。さらに、記録装置102が画像データのみをホスト装置101から受け取り、CPU201が画像データと記録装置102に設定されている調整値とから同時吐出数計算を行うと、記録開始までに時間がかかる。
【0047】
そこで本実施形態では、ホスト装置101は画像データと記録装置102で生じ得るドット形成位置のずれ量とに基づいて、駆動され得るノズル数の最大値(最大同時吐出数)を計算する。そして、ホスト装置101は、最大同時吐出数のデータを画像データとともに記録装置102に送信する。記録装置102では受信した最大同時吐出数のデータに基づいて、制御ユニットであるCPU201が搬送速度の設定を行う。
【0048】
図9は、ホスト装置101が有するメインメモリ222に読み込まれたプリンタドライバを実行するCPU220による記録データ作成から、記録装置102による記録までの、記録システムの動作の概要を示すフローチャートである。ここで、ステップS1201およびS1202がホスト装置101側で行われる処理であり、ステップS1203〜S1208が記録装置102側で行われる処理である。
【0049】
まず、ステップS1201では、CPU220は記録データを作成する。詳細は
図10のフローチャートを用いて後述する。この後、ステップS1202に移行し、CPU220が作成した記録データを記録装置102に送信する。
【0050】
記録装置102のCPU201は、ステップS1203にて記録データを受信し、記録データに付加されている最大同時吐出数データを解析する(ステップS1204)。そして、CPU201は、最大同時吐出数が所定値より未満の場合は搬送速度を高速に設定し(ステップS1205)、所定値以上の場合は低速に設定する(ステップS1206)。続いて、分割位置変更部であるステップS1207にて、CPU201は、傾き調整の分割位置を標準の分割位置(左端から右端の傾きが1ドット分であれば使用ノズル範囲の中央)から実際の横方向調整値と同数分、横ずれが生じている方向と反対方向にシフトした位置に変更する。この後、ステップS1208に移行して、CPU201は記録媒体104への記録動作を実行し、記録動作が終了となる。
【0051】
記録装置102においてCPU201が最大同時吐出数データを解析するのではなく、ホスト装置101においてCPU220が最大同時吐出数データに基づいて搬送速度(記録速度)を直接決定することもできる。その場合、CPU220は記録速度を指示するデータ(搬送速度データ)を記録データに付加して記録装置102に送信する。記録装置102のCPU201はこの記録速度の指示に基づいて記録速度を設定する。また、ステップS1207の分割位置決定処理は、
図6のステップS1707の縦および横方向調整値保存処理の後、および、
図8のステップS1807の傾き調整値保存処理の後に実施し、当該決定した分割位置をEEPROM213に保存するようにしてもよい。この場合は、ステップS1207は、分割位置決定処理ではなく、EEPROM213からの分割位置読み込み処理に変えればよい。なお、EEPROM213に保存された傾き調整値に基づいて記録動作を制御するCPU201の機能が、傾き調整部に相当する。
【0052】
図10は、
図9におけるステップS1201の記録データ作成の詳細を示すフローチャートである。まず、画像データ作成工程であるステップS1301では、ホスト装置101のCPU220は各記録ヘッドに対応したK,C,M,Yの2値画像データを作成し、ステップS1302に移行する。ステップS1302では、CPU220は
図11および
図12について詳述する吐出数リストを作成する。この後、ステップS1303に移行し、CPU220は吐出数リストを使用して最大同時吐出数を計算する。この詳細は
図16のフローチャートを用いて後述する。この後、ステップS1304に移行し、CPU220は記録データに最大同時吐出数情報を付加して、記録データ作成を終了する。なお、CPU220が実行するステップS1303すなわち
図16に示す手順が取得部に相当する。
【0053】
図11は、吐出数リストを示す図である。ここで、記録すべき1枚の画像がLラスタ(搬送方向におけるドット数に等しい)で構成されるものとする。この場合、吐出数リストは、K,C,M,Yそれぞれについて、搬送方向における画像先端の1番目のラスタから画像後端のL番目のラスタまでの、各ラスタにおける吐出数を格納するリストとなる。吐出数の計算開始前は吐出数リスト内がすべて「0」で埋められているが、計算過程において、それまでで最大の同時吐出数が現れる度に更新される。
図11の例では、Kのx番目のラスタに最大同時吐出数「2000」が格納された状態を示している。
【0054】
図12は、
図10におけるステップS1302の吐出数リスト作成の詳細を示すフローチャートである。まず、ステップS1401では、ホスト装置101のCPU220は、吐出数リスト作成の対象色を、媒体搬送方向Aの最上流側に位置する記録ヘッド22Kが吐出するK(ブラック)に設定し、ステップS1402に移行する。ステップS1402では、CPU220は、吐出数リスト作成のラスタ番号を1番目に設定し、ステップS1403に移行する。
【0055】
以下の計算に使用される記録ヘッドの傾き調整値は、記録装置102との通信が確立されていない場合を考慮して、ユーザが選択設定した実際の傾き調整値ではなく、記録装置において想定される範囲の傾きに基づいて設定される。本実施形態では、傾き調整値は、−hsから+hs(hsは1以上の整数)の範囲で設定できるものとする。ステップS1403では、CPU220は、対象色(最初はK)の記録ヘッドの傾き調整値に最小値−hsを設定する。次に、ステップS1404に移行して、CPU220は、吐出数計算を行う。ここで、
図13から
図15を用いて吐出数の計算方法を説明する。
【0056】
図13は、横方向調整値が0、かつ、傾き調整値が+1の状態での吐出数を示す図である。細線で囲まれた長方形の領域1603は2値画像データを示しているが、媒体搬送方向Aの上流側は省略し、点線で表示している。斜線部1604はドットONである(ドットで埋められる)領域を示している。この例では、図の上端側にある画像先端からx番目のラスタがすべてドットONの状態、その他のラスタはすべてドットOFFとなっている。太線で囲まれた長方形の領域1601は記録ヘッドの左半分の範囲にあるノズルで記録される領域を示しており、横方向調整値と吐出数との関連を示すため、左端の余剰ノズル数rの部分も領域1601に含めている。また、太線で囲まれた長方形の領域1602は記録ヘッドの右半分の範囲にあるノズルで記録される領域を示しており、領域1602には右端の余剰ノズル数rの部分も含めている。2値画像データ1603の幅をwドットとすると、記録ヘッドの右半分および左半分のドット数(ノズル数)はともに(w/2)+rドットとなる。この図で示す記録ヘッド左端が画像先端からx番目のラスタにある瞬間の吐出数は、記録ヘッド左半分で記録される領域1601の吐出数がw/2ドット、記録ヘッド右半分で記録される領域1602の吐出数が0ドット、左右合計w/2ドットである。
【0057】
図14は、横方向調整値が最大値r、且つ、記録ヘッド傾き調整値が+1の状態での吐出数を示す図である。この図で示す記録ヘッド左端が画像先端からx番目のラスタにある瞬間の吐出数は、記録ヘッド左半分で記録される領域1601の吐出数が左半分の全ノズル数と一致する(w/2)+rドット、記録ヘッド右半分で記録される領域1602の吐出数は0ドットである。したがって左右合計(w/2)+rとなる。このように、
図13と同じ傾き調整値であり、且つ、同じx番目のラスタの吐出数であっても、横方向調整値の差により吐出数に差が出ることがわかる。
【0058】
ホスト装置101が横方向調整値を記録装置102から取得せずに、吐出数を計算する場合を想定する。この場合、すべての瞬間(すべてのラスタに対するノズルの駆動位置)に対応する吐出数を、ホスト装置101のCPU220が正確に計算するためには、横方向調整値を−rからrまで1単位でずらした回数、つまり(2r+1)回の計算を行う必要がある。しかも、この計算は1ヘッド分であり、CPU220は、(記録ヘッド全個数×1枚の画像のラスタ数L)回だけ計算を行わなければならない。
【0059】
図15は、ホスト装置101のCPU220が多数回の計算を行わずに、横方向調整値の全範囲をカバーするための計算方法を示す図である。この図は、
図14と同様に横方向調整値最大値r、且つ、記録ヘッド傾き調整値+1の状態での吐出数を示しているが、傾き調整の分割位置が
図14よりも横方向調整値r分だけ移動している。
【0060】
この図で示す記録ヘッド左端が画像先端からx番目のラスタにある瞬間の吐出数は、記録ヘッドの左半分で記録される領域1601の吐出数はw/2ドットである。即ち、記録ヘッドの左半分のノズルで記録される領域1601と、ドットONである斜線部1604と、はw/2ドットだけ重なっている。
【0061】
一方、記録ヘッド右半分で記録される領域1602の吐出数は0ドットである。即ち、ドットONである斜線部1604と、記録ヘッドの右半分ノズルで記録される領域1602は重なっている部分がない。
【0062】
従って、所定のラスタにおける合計w/2ドットである。この値は横方向調整値0の場合の
図13と同じであり、傾き調整の分割位置を標準の分割位置から横方向調整値rと同数分左方向にシフトすることにより、吐出数の計算に2r+1個分の横方向調整値を考慮する必要がなくなったことを示している。
【0063】
即ち、本実施例において、記録装置102は、記録素子であるノズルの配列方向の調整値である横方向調整値に対して、ノズルの配列方向に沿って逆方向に同量だけシフトした位置へ、傾き調整の分割位置を変更する。そのため、ホスト装置101は、記録装置102から横方向調整値を取得せずに、同時吐出数を正確に計算することが可能となる。
【0064】
再び
図12を参照する。
図15に示した方法で計算を行うため、ステップS1404でCPU220が計算するx番目のラスタの吐出数は、記録ヘッドの左端が画像データの先端からx番目のラスタにある場合において、傾き調整値と横方向調整値とを考慮した吐出数である。
図13から
図15は傾き調整値が+1である場合の例であった。しかし、実際の傾き調整値が上述した−hsから+hsの範囲のどの値であっても、
図15の太線で囲んだすべてのブロックの分割位置を標準の分割位置から横方向調整値と同数分、横ずれを仮定している方向と反対の方向にシフトする方法は同様である。
【0065】
次に、ステップS1405において、CPU220は、ステップS1404で計算した吐出数が、吐出数リストの現在の対象色のラスタ番号が示す位置に格納されている値より大きいか否かを判定する。大きい場合はステップS1406に移行し、それ以外の場合はステップS1407に移行する。ステップS1406では、CPU220は、ステップS1404で計算した吐出数を吐出数リストの現在位置に格納して更新してから、ステップS1407に移行する。
【0066】
ステップS1407では、CPU220は、計算対象色の記録ヘッドの傾き調整値が最大値hsに達しているか否かを判定し、肯定判定の場合はステップS1408に移行し、否定判定の場合はステップS1409に移行する。ステップS1408では、CPU220は、計算対象色のラスタ番号がL(1ページのラスタ数)に達しているか否かを判定する。肯定判定の場合はステップS1410に移行し、否定判定の場合はステップS1411に移行する。一方、ステップS1409では、CPU220は、計算対象色の記録ヘッドの傾き調整値を1加算し、ステップS1404に復帰して、以降の手順を繰り返す。
【0067】
ステップS1410では、CPU220は、計算対象色が媒体搬送方向最下流側に位置する記録ヘッド22Yが吐出するYであるか否かを判定する。計算対象の記録ヘッド色がY以外の場合はステップS1412に移行する。一方、ステップS1411では、計算対象色のラスタ番号を1加算し、ステップS1403に復帰して、以降の手順を繰り返す。
【0068】
ステップS1412では、CPU220は、計算対象色を次の色に変更し、ステップS1402に復帰して、以降の手順を繰り返す。本実施形態では、記録ヘッド22K,22C,22M,22Yは、媒体搬送方向上流側からこの順に配置されている。従って、計算対象色はK、C、M、Yの順に切り換えられる。そして、ステップS1410で計算対象色がYの場合は、CPU220は吐出数リスト作成を終了する。
【0069】
図16は、
図10におけるステップS1303の最大同時吐出数計算の詳細を示すフローチャートである。また、
図17は、吐出数リストを使用した最大同時吐出数計算を説明する図である。以下の説明では、1ページのラスタ数(搬送方向のドット数)をLラスタ、ドット数に換算した隣接する記録ヘッド間の標準的な間隔をnドット(ラスタ)とする。また、記録ヘッド22Kを基準とし、その他の記録ヘッドについて吐出タイミングが調整され得る範囲、すなわち媒体搬送方向におけるずれ量を加味すべきラスタの範囲を、−TからT(Tは正の整数)まで、1単位で設定可能とする。
【0070】
図17はK,C,M,Yの各ラスタをnドット分ずつ縦方向にずらして描いており、図内の同じ縦方向の位置に描かれているK、C、M、Yそれぞれのラスタは、画像データ上、同時に吐出動作が行われるラスタを示している。すなわち、Kのラスタ番号からn、2nおよび3nを減じたものが、それぞれ、同時吐出が行われるC、MおよびYのラスタ番号に対応している。Kの1ラスタ目を1番とし、1つ下の行に下がるごとに1加算し、Yの最後までを計数カウントしたものを通し番号と定義する。したがって、最後のYの吐出終了は、通し番号L+3n番となる。
【0071】
図16のステップS2101では、CPU220は、最大同時吐出数を示すパラメータSyncMaxに0を設定し、ステップS2102にて、通し番号を示すパラメータyに1を設定して、ステップS2103に移行する。ステップS2103では、CPU220は、y番目の同時吐出数を示すSyncXにKの通し番号y番目の吐出数(Kのx番目の吐出数)を設定する。
図17の例では、2000が設定されている。
【0072】
次に、ステップS2104では、CPU220は、Cの吐出タイミング調整値の全調整範囲のうち、最大となるCの同時吐出数をSyncXに加算する。
図17の例では、Kのx番目の吐出と同時に吐出する可能性のあるCの範囲は太枠で囲んだx−n−T番目からx−n+T番目までである。この中で最大値となるのはx−n番目の1000である。よってSyncx=2000+1000=3000となる。この後、ステップS2105に移行する。
【0073】
ステップS2105では、CPU220は、Mの吐出タイミング調整値の全調整範囲のうち、最大となるMの同時吐出数をSyncXに加算する。
図17の例では、Kのx番目の吐出と同時に吐出する可能性のあるMの範囲は太枠で囲んだx−2n−T番目からx−2n+T番目までである。この中で最大値となるのはx−2n−T番目の1000である。よってSyncx=3000+1000=4000となる。この後、ステップS2106に移行する。
【0074】
ステップS2106では、CPU220は、Yの吐出タイミング調整値の全調整範囲のうち、最大となるYの同時吐出数をSyncXに加算する。
図17の例では、Kのx番目の吐出と同時に吐出する可能性のあるYの範囲は太枠で囲んだx−3n−T番目からx−3n+T番目までである。この中で最大値となるのはx−3n番目からx−3n+T番目の間にある500である。よってSyncx=4000+500=4500となる。この後、ステップS2107に移行する。
【0075】
ステップS2107では、CPU220は、SyncXがSyncMaxより大きいか否かを判定し、肯定判定の場合はステップS2108に移行し、SyncXの値をSyncMaxに代入して更新してから、ステップS2109に移行する。一方、否定判定の場合は、直ちにステップS2109に移行する。
【0076】
ステップS2109では、CPU220は、yが1つの画像の最大通し番号L+3nに達しているか否かを判定し、否定判定の場合は、ステップS2110に移行してyに1を加算し、ステップS2103に復帰してそれ以降の処理を繰り返す。一方、肯定判定であれば最大同時吐出数計算を終了する。
【0077】
以上のように、本実施形態は、縦方向調整値、傾き調整値および横方向調整値を記録装置から取得せず、ホスト装置(記録制御装置)においてそれらの調整値の全範囲を考慮し、起こり得る最大同時吐出数を算出するようにした。このため、ホスト装置と記録装置との通信確立後、記録動作を開始するまでに要する時間を短縮し、且つ電源容量不足が生じることなく最適な搬送速度で記録動作を行うことができる。これはまた、ホスト装置に複数の記録装置が接続され、複数の記録装置が接続され、同じ画像を記録できるように記録システムが構成される場合にも、ホスト装置は個々の記録装置からそれぞれの調整値を受け取る必要がないので、効率的な処理を行う上で有利である。
【0078】
5.その他
なお、本発明は、以上説明した実施形態および随所に述べた変形例に限られるものではない。例えば、記録素子の最大の同時駆動数によっては電源容量不足が生じ得る記録装置であれば、本発明は、インクジェット記録ヘッド以外の記録ユニットを有する記録装置およびシステムへの適用も可能である。また、記録ヘッドの個数、記録色および配置順についても、適宜定め得るものである。さらに本発明は、シリアルプリンタ形態の記録装置を用いるシステムへの適用を排除するものではない。記録ヘッドの駆動と記録媒体に対する走査とが同時に生じ、記録素子の最大の同時駆動数によって電源容量不足が生じ得るものであれば、本発明の適用は有効である。加えて、計算の過程で使用したz,n,Tなどの諸値についても、レジストレーション処理が可能な範囲で適宜の値を設定できるのは勿論である。