特許第6636124号(P6636124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636124
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】半導体デバイス及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20200120BHJP
【FI】
   H01L33/50
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-228527(P2018-228527)
(22)【出願日】2018年12月5日
(62)【分割の表示】特願2016-569712(P2016-569712)の分割
【原出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2019-62220(P2019-62220A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】102014107472.6
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーダム バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング メンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト ラッチュ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヴィトマン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シュルテン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス レフラー
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−19981(JP,A)
【文献】 特開2013−16588(JP,A)
【文献】 特表2008−523615(JP,A)
【文献】 特表2009−540614(JP,A)
【文献】 特開2008−177528(JP,A)
【文献】 特開2012−124257(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0049569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス(1)であって、
第1のピーク波長を有する1次放射を形成するために設けられた半導体チップ(2)と、該半導体チップ(2)上に配置された放射変換素子(3)とを有し、
前記放射変換素子(3)は、前記1次放射を、少なくとも部分的に、第2のピーク波長を有する2次放射へ変換する量子構造(30)と、前記1次放射に対して透過性を有する基板(35)とを有
前記半導体デバイスは、第3のピーク波長を有する放射を発するエミッタ(4)を有し、
前記エミッタは別の放射変換素子(41)であり、
前記放射変換素子(3)と前記別の放射変換素子(41)とは、前記半導体チップ(2)上に相並んで配置されており、
前記エミッタ(4)と前記放射変換素子(3)との間の光路にリフレクタ層(7)が配置されている、
半導体デバイス。
【請求項2】
前記放射変換素子(3)は、AlInGa1−x−yN、AlInGa1−x−yP、又は、AlInGa1−x−yAsを含む、
請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記第1のピーク波長は前記第2のピーク波長より短い、
請求項1又は2記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記リフレクタ層(7)は、前記半導体チップ(2)と前記放射変換素子(3)とに接している、
請求項1から3までのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記半導体デバイスのケーシングボディは、リフレクタ層(7)によって形成されている
請求項4記載の半導体デバイス。
【請求項6】
半導体デバイス(1)であって、
第1のピーク波長を有する1次放射を形成するために設けられた半導体チップ(2)と、該半導体チップ(2)上に設けられた放射変換素子(3)とを有し、
前記放射変換素子は、前記1次放射を、少なくとも部分的に、第2のピーク波長を有する2次放射へ変換する量子構造(30)と、前記1次放射に対して透過性を有する基板(35)とを有し、
前記半導体デバイスは、第3のピーク波長を有する放射を発するエミッタ(4)を有し、
前記エミッタ(4)は別の半導体チップ(44)であり、第3のピーク波長を形成するための活性領域(440)を有し、
前記別の半導体チップ(44)と前記半導体チップ(2)とが1つのリフレクタ層(7)に埋め込まれており、
前記別の半導体チップ(44)上に、第3のピーク波長の放射に対して透過性を有する基体(48)が設けられており、
前記リフレクタ層(7)は、前記透過性を有する基体(48)と前記放射変換素子(3)とに接しており、
前記放射に対して透過性を有する基体(48)及び前記放射変換素子(3)は、前記半導体デバイスの放射面(12)で、その少なくとも一部の領域を前記リフレクタ層(7)から露出させている、
半導体デバイス。
【請求項7】
前記放射変換素子(3)上に、波長選択性の透過率を有する誘電性コーティング(5)が設けられている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記放射変換素子(3)上に散乱層(55)が配置されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記量子構造(30)は、前記基板(35)の、前記半導体チップ(2)に向かう側の面に配置されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記放射変換素子(3)は、出力構造(58)を有する、
請求項1からまでのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項11】
前記出力構造(58)は、前記基板(35)の、前記量子構造(30)に向かう側の面に配置されている、請求項10記載の半導体デバイス。
【請求項12】
前記出力構造(58)は、前記基板(35)の、パターニングされた成長面によって形成される、請求項10又は請求項11記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記出力構造(58)は、前記基板(35)の、前記量子構造(30)とは反対側の面に配置されている、請求項10記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記半導体デバイスは、相互に異なるピーク波長を有する3つの放射成分を発し、該放射成分は、25nmから40nmまでの半値全幅を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記放射変換素子(3)の前記基板(35)は、半導体チップ(2)を少なくとも20%覆う、請求項1から14までのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項16】
前記放射変換素子(3)は、固定層(8)によって半導体チップ(2)に固定されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項17】
前記量子構造(30)は、複数の量子層(31)を有し、
前記複数の量子層(31)の間にバリア層(32)が配置され、
前記量子構造(30)は、電荷担体が閉じ込めによってそのエネルギ状態を量子化させうる構造を構成する、
請求項1から16までのいずれか1項記載の半導体デバイス。
【請求項18】
照明装置(11)であって、
請求項1から17までのいずれか1項記載の半導体デバイス(1)を少なくとも1つと、
前記半導体デバイスを上部に配置した接続支持体(15)と
を有する、照明装置。
【請求項19】
前記照明装置は、ディスプレイ装置のバックライト用、プロジェクション用、フラッシュライト用、又は、ヘッドランプ用の照明装置として構成されている、
請求項18記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体デバイス及び照明装置に関する。
【0002】
照明装置、例えば液晶ディスプレイ(LCD)のバックライト部では、発光ダイオードを放射源として使用可能である。ただし、こうした適用分野では、ヒトの眼が感知可能な色のできるだけ大きな成分を表示できるよう、大きな色域が要求される。例えば、青色スペクトル領域で発光するLEDと黄色スペクトル領域で発光する蛍光物質とによって、ヒトの眼に白色に見える放射を高い効率で形成できるが、色域は低下してしまう。別の蛍光物質を添加すれば色域を改善できるが、そうすると効率は低下する。また、相互に異なる3つの発光ダイオードによって直接に赤色スペクトル領域、緑色スペクトル領域及び青色スペクトル領域を形成する場合には、比較的大きな色域を達成可能である。しかし、これは、3つの個別色を調整しなければならないため、複雑な電子制御を要する。
【0003】
課題は、混合放射を高効率で得ることのできる半導体デバイスを提供することである。
【0004】
この課題は、特に、請求項1記載の半導体デバイス及びこうした半導体デバイスを有する照明装置によって解決される。別の実施形態及び利点は、各従属請求項の対象となっている。
【0005】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、当該半導体デバイスは、第1のピーク波長を有する1次放射を形成するために設けられた半導体チップを有する。第1のピーク波長は、例えば、紫外スペクトル領域又は青色スペクトル領域にある。例えば、半導体チップは、第1のピーク波長の形成のために設けられた活性領域を有する。活性領域は、例えば、成長基板上に例えばエピタキシャルに堆積された半導体積層体を含む半導体基体の一部である。例えば、半導体チップは支持体を有し、この支持体上に、活性領域を有する半導体積層体を含む半導体基体が設けられている。当該支持体は、半導体基体を機械的に安定化する。支持体は、半導体積層体に対する成長基板であってよい。これに代えて、支持体は、半導体積層体用の成長基板とは別のものであってもよい。
【0006】
半導体チップは、好ましくは、その電気的接続のための第1の接続面及び第2の接続面を有する。第1の接続面及び第2の接続面は、半導体チップの同じ側の面、又は、半導体チップの反対側の面に配置可能である。
【0007】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、この半導体デバイスは、1次放射を少なくとも部分的に第2のピーク波長を有する2次放射へ変換する放射変換素子を有する。2次放射は特に、1次放射のピーク波長よりも大きなピーク波長を有する。例えば、第2のピーク波長は、緑色スペクトル領域もしくは黄色スペクトル領域もしくは赤色スペクトル領域に位置する。
【0008】
特に、放射変換素子は、半導体チップの1次放射の一部のみを変換するので、半導体デバイスは全体で1次放射及び2次放射を含む混合放射を放射する。例えば、当該混合放射は、ヒトの眼に白色の印象を与える光である。
【0009】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、放射変換素子は、1次放射を少なくとも部分的に第2のピーク波長を有する2次放射へ変換する量子構造を有する。
【0010】
量子構造なる概念は、本願においては特に、電荷担体が閉じ込め(「コンファインメント」)によってそのエネルギ状態を量子化させうる構造を含む。特に、量子構造なる概念は、量子化の次元に関する情報を含まない。よって、量子構造は、特に量子井戸、量子ワイヤ、量子ドット及びこれらの構造のあらゆる組み合わせを含む。
【0011】
例えば、量子構造は、中間にそれぞれバリア層を配置した複数の量子層を含む。例えば、量子層とバリア層とは、多重量子井戸(Multi Quantum Well, MQW)構造を形成している。放射変換素子は、例えば、1次放射に対して透過性を有する基板を有する。当該基板は特に、量子構造の機械的安定化に用いられる。例えば、基板は、量子井戸構造の少なくとも5倍の厚さを有する。基板は、例えば量子構造をエピタキシャルに堆積させるための成長基板であってよい。これに代えて、基板は量子構造の成長基板とは別のものであってもよい。半導体デバイスは2つ以上のこうした放射変換素子を有することもできる。例えば、同じピーク波長の放射を発光する2つ以上の放射変換素子を上下方向に配置可能である。このようにして放射変換の効率を増大させることができる。
【0012】
放射変換素子の基板は、半導体チップを特には大面積で、例えば半導体チップの上面から見て少なくとも20%まで又は少なくとも50%まで覆う。当該基板は、半導体チップを完全に覆うことができる。
【0013】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態では、この半導体デバイスは、第1のピーク波長を有する1次放射を形成するために設けられた半導体チップと、この半導体チップ上に設けられた放射変換素子とを有する。放射変換素子は、1次放射を少なくとも部分的に第2のピーク波長を有する2次放射へ変換する量子構造を有する。放射変換素子はさらに、1次放射に対して透過性を有する基板を有する。
【0014】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、放射変換素子は、AlInGa1−x−yN、又は、AlInGa1−x−yP、又は、AlInGa1−x−yAsを含む。ここではそれぞれ[0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1]が該当する。当該材料では、緑色もしくは黄色もしくは赤色のスペクトル領域の放射を効率的に形成できる。基本的には、形成すべき第2のピーク波長の2次放射の発生に適するバンドギャップを有するものであれば、あらゆる半導体材料が当該放射変換素子に適する。
【0015】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、第1のピーク波長は第2のピーク波長よりも短い。例えば、第1のピーク波長は青色スペクトル領域にあり、第2のピーク波長は緑色スペクトル領域もしくは赤色スペクトル領域もしくは黄色スペクトル領域にある。例えば、第1のピーク波長は青色スペクトル領域にあり、第2のピーク波長は緑色スペクトル領域にある。緑色スペクトル領域の放射は、緑色スペクトル領域において発光される半導体チップによってではなく放射変換によって形成される。
【0016】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、半導体デバイスは、第3のピーク波長を放射するエミッタを有する。「エミッタ」なる概念は、一般に、励起の際に放射を発光するエレメントをいう。励起は、例えば、電気的もしくは光学的に行うことができる。
【0017】
第1のピーク波長、第2のピーク波長及び場合により第3のピーク波長は、好ましくはそれぞれ相互に異なる。例えば、ピーク波長間の差はそれぞれ少なくとも50nmである。
【0018】
例えば、第1のピーク波長及び第2のピーク波長及び第3のピーク波長のそれぞれは、青色スペクトル領域及び緑色スペクトル領域及び赤色スペクトル領域に位置する。第1のピーク波長が青色スペクトル領域にあり、かつ、第2のピーク波長が緑色スペクトル領域にある場合、第3のピーク波長は例えば赤色スペクトル領域に位置する。
【0019】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、半導体デバイスはリフレクタ層を有する。リフレクタ層は、例えば、反射性粒子が充填されたポリマー材料を含む。例えば、粒子は、二酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化アルミニウムを含む。リフレクタ層は、例えば、1次放射のピーク波長に対して少なくとも80%の反射性を有する。
【0020】
例えば、リフレクタ層は、半導体チップ及び/又は放射変換素子に一体に成形される。例えば、リフレクタ層は、少なくとも一部の領域で半導体チップ及び/又は放射変換素子に直接に接する。リフレクタ層は、例えば成形プロセスによって製造可能である。成形プロセスとは、一般に、成形材料を定められた形状にしたがって成形し、必要に応じて硬化することのできるプロセスであると理解されたい。特に、成形プロセスなる概念は、鋳込成形(casting)、射出成形(injection molding)、トランスファ成形(transfer molding)、圧縮成形(compression molding)及びフォイルアシスト成形(foil assisted molding)を含む。
【0021】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、リフレクタ層は、エミッタと放射変換素子との間の光路に配置される。つまり、リフレクタ層は、エミッタと放射変換素子との間の直接の光路を阻止する。半導体デバイス内の吸光損失、例えばエミッタでの第2のピーク波長の放射及び/又は放射変換素子での第3のピーク波長の放射の吸光による吸光損失は、回避されるか又は少なくとも低減される。
【0022】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、エミッタは別の放射変換素子である。例えば、当該別の放射変換素子は、第3のピーク波長の放射を形成する発光物質を有する。これに代えて、エミッタが、第3のピーク波長の放射を形成する別の量子井戸を有してもよい。別の量子井戸は、特には、上記量子井戸に関連して説明したものと同様であってよく、量子井戸及び別の量子井戸は好ましくは相互に異なるスペクトル領域で発光を行う。
【0023】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、放射変換素子と別の放射変換素子とが半導体チップ上に並ぶように配置される。放射変換素子は特に、重畳部分なしに半導体チップ上に配置される。放射変換素子と別の放射変換素子とは、相互に接して又は相互に間隔を置いて、配置できる。例えばリフレクタ層は、放射変換素子と別の放射変換素子との間に配置される。
【0024】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、放射変換素子と別の放射変換素子とは、半導体チップ上に上下方向に配置される。
【0025】
別の放射変換素子が別の量子構造を有する実施形態では、放射変換素子は別の基板を有することもできる。すなわち、放射変換素子と別の放射変換素子とは、製造の際には相互に独立に製造され、続いて縦方向もしくは横方向に配置される。これに代えて、放射変換素子と別の放射変換素子とが共通の基板を有してもよい。例えば、量子井戸及び別の量子井戸は、共通の半導体積層体内に集積可能であるか、又は、少なくとも共通の基板上に並ぶようにエピタキシャルに堆積可能である。
【0026】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態では、半導体デバイスが別の半導体チップを有する。例えば、別の放射変換素子は、別の半導体チップ上に配置される。別の半導体チップから形成される放射は、半導体チップの1次放射と同じであってよい。これに代えて、別の放射のピーク波長が1次放射の第1のピーク波長とは異なっていてもよい。
【0027】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、上記別の放射変換素子は半導体チップのカバー内に埋め込まれた蛍光物質によって形成される。カバーは例えば1次放射に対して透過性を有するポリマー材料、例えばエポキシド又はシリコーンを含む。
【0028】
半導体デバイスの製造時には、カバーが、例えば、特には既に電気的な接続部を有する半導体チップに一体に成形された成形材料によって構成される。
【0029】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、エミッタは別の半導体チップである。例えば、当該別の半導体チップは、第3のピーク波長を形成する活性領域を有する。例えば、当該別の半導体チップの活性領域は、AlInGa1−x−yP又はAlInGa1−x−yAsであり、それぞれ[0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1]を含む。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、上記別の半導体チップ及び上記半導体チップが1つのリフレクタ層内に埋め込まれる。上記別の半導体チップ上には、第3のピーク波長の放射に対して透過性を有する基体が設けられる。リフレクタ層は、放射透過性の基体と放射変換素子とに接する。半導体デバイスの放射面では、放射透過性の基体と放射変換素子の少なくとも一部の領域とがリフレクタ層から露出する。垂直方向で見ると、半導体チップの活性領域の主延在平面に対して垂直に延在する方向で、放射変換素子と放射透過性の基体とが、例えば同じ高さ、又は、例えば最大50μmの差のほぼ同じ高さで終端する。リフレクタ層の構成はこれにより簡単化される。
【0031】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、放射変換素子には誘電性コーティングが設けられる。当該誘電性コーティングは、例えば、互いに接する層がそれぞれ異なる屈折率を有する複数の誘電層を有する。誘電性コーティングは例えば波長選択性の透過率を有する。よって、当該透過率は、他のスペクトル領域の透過率よりも大きい。例えば、少なくとも1つの放射成分、例えば1次放射又はその一部のための誘電性コーティングは、反射性を有するように構成される。これに代えてもしくはこれに加えて、誘電性コーティングを用いて、例えば顧客の特別な要求に関して、発光スペクトルを予めフィルタリングすることもできる。
【0032】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、放射変換素子上に散乱層が設けられる。例えば、散乱層は、放射変換素子の、半導体チップとは反対側の面に設けられる。散乱層は、例えば、10重量%以上30重量%以下の濃度、例えば15重量%以上25重量%以下の濃度の散乱粒子を含む。散乱層の層厚さは、例えば10μm以上30μm以下である。当該散乱粒子は、例えば二酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムを含む。
【0033】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造は、基板の、半導体チップに向かう側の面に設けられる。量子構造で発生する損失熱は、半導体チップを介して放出できる。また、これとは異なって、量子構造を、基板の、半導体チップとは反対側の面に設けることもできる。
【0034】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、放射変換素子は出力構造を有する。当該出力構造は、放射変換素子からの放射出力を高めるために設けられる。例えば、出力構造は、基板の、量子構造に向かう側の面に設けられる。例えば、当該出力構造は、基板の、パターニングされた成長面によって形成される。さらに、出力構造は、量子構造の、基板とは反対側の面に設けることもできる。これに代えて、出力構造を、基板の、量子構造とは反対側の面に設けることもできる。例えば、出力構造は、基板の粗面部の形態で形成される。
【0035】
半導体デバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、半導体デバイスは、表面実装可能デバイス(surface mount device,SMD)として構成される。当該半導体デバイスは特に、放射変換素子とは反対側の実装面に、半導体デバイスを外部に電気的に接続するための少なくとも2つのコンタクトを有する。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、照明装置は、少なくとも1つの半導体デバイスとこの半導体デバイスを上部に配置した接続支持体とを有する。接続支持体は例えばプリント回路板であってよい。半導体デバイスは、1つもしくは複数の上述した特徴を有することができる。
【0037】
照明装置の少なくとも1つの実施形態によれば、この照明装置は、ディスプレイ装置のバックライト用、プロジェクション用、撮影フラッシュ用、又は、ヘッドランプ用の照明装置として構成される。
【0038】
上述した半導体デバイス及び照明装置により、特に、次の効果を達成できる。
【0039】
特にエピタキシャルに成長される量子井戸を有する放射変換素子は、高い温度安定性を特徴とすることができる。例えば、赤色スペクトル領域もしくは緑色スペクトル領域にある2次放射は、窒化物半導体材料、特にAlInGa1−x−yNをベースとした発光ダイオードの高い温度安定性を有する。さらに、こうした放射変換素子では、特に層厚さ及び量子井戸の材料を変化させることによって、発光波長を容易に調整できる。変換率は、量子層の数によって簡単かつ確実に調整可能である。エピタキシャルな堆積に代えて、例えばスパッタリングなどの他の堆積プロセスも可能である。フォトルミネセンス構造は、特に低コストに製造可能である。
【0040】
さらに、緑色スペクトル領域で発光する量子構造、例えばAlInGa1−x−yNをベースとした量子構造の光励起は、電気的励起でのこうした量子構造における直接の放射形成よりも効率が高いことが判明している。
【0041】
また特に、蛍光物質を含む放射変換素子とは異なり、狭帯域のスペクトル領域での発光、例えば約30nmの半値全幅(Full Width at Half Maximum, FWHM)の領域での発光を行うこともでき、一方、蛍光物質は、典型的には、約50nmから100nmまでの半値全幅の放射を形成する。こうしてより大きな色単位を達成でき、よって、大きな色域を高い効率で得ることができる。
【0042】
なお、放射変換素子では、放射変換と放射散乱との空間的分離が、例えば放射変換を量子構造で、放射散乱を基板、例えば放射面の出力構造によって行うことで、達成される。
【0043】
また、量子構造を有する放射変換素子は、小さな層厚さを特徴とすることができる。蛍光物質を含む放射変換素子が典型的には約100μmの層厚さを有するのに対して、量子構造を有する放射変換素子では、1μmを下回る層厚さ、例えば100nmから1μmまでの層厚さを達成することができる。したがって、動作中に発生する熱損失を効率的に放出させることができる。
【0044】
さらに、開発フェーズにおいて新たな半導体デバイスを製造する際の反復サイクルを、特に放射変換素子のフレキシブルな適応可能性によって短縮できる。
【0045】
基板の、量子構造とは反対側の面は、さらに、付加的な光学機能、例えば、特に波長選択性の鏡もしくはフィルタの機能、及び/又は、出力構造の機能、例えば粗面化機能を満たすことができる。
【0046】
半導体デバイスはさらに、特に蛍光物質をベースとする変換素子に比べて狭帯域で発光する少なくとも2つの放射源、すなわち、半導体チップと量子構造を有する変換素子とを有する。このため大きな色域を簡単に達成できる。さらに、半導体デバイスの放射スペクトルを、放射変換素子の適応化のみによって、例えば積層順序及び/又は各層厚さの適応化のみによって、顧客専用の要求に簡単かつ確実に適応化可能である。
【0047】
さらに、空間的に配向される発光を形成するために、放射特性を簡単に修正できる。
【0048】
また、半導体デバイスの散乱層又は散乱構造は、効率的な色混合を生じさせる。誘電性コーティングにより、例えば、波長選択性の出力、及び/又は、形成された放射のための共振キャビティの形成、及び/又は、半導体デバイスのスペクトルの予めのフィルタリングなどを簡単かつ確実に達成できる。
【0049】
なお、例えば基板に形成される、屈折率勾配を生じさせる構造によって、放射変換素子への効率的な入力及び/又は半導体デバイスからの効率的な出力も簡単に達成可能である。
【0050】
別の実施形態及び利点は、図に関連した以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A】半導体デバイスの一実施形態を示す概略的な断面図である。
図1B】半導体チップの一実施形態を示す図である。
図1C】放射変換素子の一実施形態を示す図である。
図1D】放射変換素子の一実施形態を示す図である。
図1E】放射変換素子の一実施形態を示す図である。
図1F】放射変換素子の一実施形態を示す図である。
図1G】放射変換素子の一実施形態を示す図である。
図2】Aは半導体デバイスの一実施形態を示す図であり、Bは半導体チップの一実施形態を示す図である。
図3】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図4】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図5】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図6】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図7】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図8】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図9】照明装置の一実施形態を示す図である。
図10】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図11】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
図12】半導体デバイスの一実施形態を示す図である。
【0052】
図中、同じ要素もしくは同種の要素又は同様の機能を有する要素には、同じ参照番号を付してある。
【0053】
各図は、概略的な図示であって、必ずしも縮尺通りに描かれていない。むしろ、比較的小さな要素、特に層厚さなどを、わかりやすくするために拡大して示したところがある。
【0054】
図1Aには、半導体デバイスの一実施形態が概略的な断面図で示されている。半導体デバイス1は、第1のピーク波長を有する1次放射を形成するために設けられた半導体チップ2を有する。第1のピーク波長は青色スペクトル領域にある。半導体チップ2上には、半導体デバイスの動作中に半導体デバイス2で形成される1次放射を部分的に第2のピーク波長を有する2次放射に変換する放射変換素子3が設けられている。したがって、半導体デバイス1は、1次放射と2次放射とを含む混合放射を発光する。
【0055】
半導体デバイス1はさらに、第1のコンタクト61と第2のコンタクト62とを有する。第1のコンタクト61及び第2のコンタクト62は、1つのリードフレームの各部分領域である。リードフレームは一部の位置でケーシングボディ6に埋め込まれている。半導体チップ2は、ケーシングボディ6のキャビティ67内に配置されている。
【0056】
半導体チップ2上には、量子構造を含む放射変換素子3が設けられている。放射変換素子の種々の構成については、図1Cから図1Gに即して説明する。
【0057】
さらに、同種の2つ以上の放射変換素子3、例えば同種の3つの放射変換素子3を上下方向に配置することもできる。「同種」とは、ここでは、放射変換素子のピーク波長が相互に全く異ならないか又は僅かしか異ならないこと、例えば最大で20nmしか異ならないことを意味する。変換率は、放射変換素子の個数によって簡単に調整可能である。
【0058】
放射変換素子3は、固定層8によって半導体チップに固定されている。当該固定層8は、1次放射に対して透過性を有する材料によって形成されると好都合である。例えば、固定層8は、ポリマー材料、例えばシリコーンを含む。好ましくは、屈折率は1.5から、当該固定層に接する半導体チップ材料の屈折率までの間の値となる。固定層8の屈折率が大きくなるにつれて、半導体チップ2と固定層8との界面で反射される放射の割合は小さくなる。こうした固定層は、図示の簡単化のために全ての図に示されていない場合であっても、以下の各実施形態にも同様に適する。
【0059】
半導体チップ2及び放射変換素子3は、リフレクタ層7によって包囲されている。リフレクタ層は、特に、半導体チップ2及び放射変換素子3に直接に接する。
【0060】
リフレクタ層7は、例えば、反射性の粒子を含むポリマー材料によって形成されている。例えばリフレクタ層は、シリコーン又はエポキシドを含む。粒子は例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化アルミニウムを含む。
【0061】
リフレクタ層7により、放射が半導体チップ2又は放射変換素子3から側方で放出されてしまうおそれが回避される。よって、形成される放射は、ケーシングボディ6へは入射しない。したがって、ケーシングボディの材料は、一貫して、光学特性から独立に、例えば高い機械的安定性又は高い温度安定性の観点で選択可能である。半導体材料1の固定は、例えばはんだ付けによって簡単化される。
【0062】
垂直方向では、半導体デバイス1は、自身の放射面12とその向かい側の自身の実装面13との間に延在している。
【0063】
半導体デバイス1の放射面12では、放射変換素子3が少なくとも一部の位置で、好ましくは完全に又はほぼ完全に、例えば放射変換素子の面積の少なくとも90%まで、リフレクタ層7の材料から露出されている。
【0064】
第1のコンタクト61及び第2のコンタクト62は、半導体デバイスの実装面13に構成され、半導体チップ2に導電接続される。半導体デバイスは表面実装可能デバイスとして構成される。
【0065】
半導体チップ2の構成が、図1Bに概略的に示されている。半導体チップ2は、実装面13に向かう側の後面に第1の接続面25と第2の接続面26とを有する。半導体チップ2は、1次放射の放射形成のために設けられた活性領域20を有する半導体積層体200を含む半導体基体を有する。活性領域20は、第1の半導体層21と第2の半導体層22との間に位置し、ここで、第1の半導体層及び第2の半導体層は少なくとも一部の位置においてその導電型の点で相互に異なり、これにより活性領域20がpn接合部に位置する。半導体チップ2の、特にエピタキシャルに堆積される各半導体層は、支持体29上に配置されている。図示の実施形態では、支持体は半導体チップの半導体積層体のための成長基板である。例えば、支持体はサファイア又は炭化ケイ素を含む。
【0066】
図1Aに示されている実施形態では、半導体チップ2はいわゆるフリップチップ装置として実装されるので、第1の接続面25及び第2の接続面26は、半導体デバイスの、実装面13に向かう側に配置される。半導体デバイスを上から見ると、それぞれ、第1のコンタクト61と第1の接続面25とが重なっており、第2のコンタクト62と第2の接続面26とが重なっている。
【0067】
半導体デバイス1を製造する際には、第1のコンタクト61及び第2のコンタクト62を備えたリードフレームを複数の半導体デバイスのためのリードフレーム複合体に設けることができる。半導体チップ2は当該リードフレーム複合体に実装される。半導体チップの実装の前後、リードフレーム複合体にはケーシングボディ6を成形するための材料が施与される。半導体チップ2上には放射変換素子3が形成される。これは、半導体チップ2をリードフレーム複合体に固定する前後で行うことができる。リードフレーム複合体に固定された半導体チップは、リフレクタ層のための成形材料によって包囲される。個々の半導体デバイス1は、リードフレーム複合体及びケーシングボディのための材料の双方を分断する個別化ステップによって生じる。よって、ケーシングボディ6は、半導体デバイス1の個別化の際にはじめて生じる。したがって、半導体デバイス1を横方向で画定するケーシングボディ6の各側面は、少なくとも一部の位置に、個別化トラック、例えばソートラックもしくはレーザーカットプロセストラックを有することができる。こうした半導体デバイス1は、特に低コストかつコンパクトに製造可能である。
【0068】
放射変換素子3の実施形態が、図1Cから図1Gに拡大図で示されている。放射変換素子3は量子構造30を有する。量子構造は、各バリア層32間に設けられた量子層31を含む。
【0069】
量子層31及びバリア層32は、多重量子井戸構造を形成する。こうした量子構造においては、量子層内部で正確に1つの空間方向に沿って量子化が行われる。ここでの量子構造は、特に確実に製造可能であり、高い効率を特徴とする。ただし、先に述べた量子構造のうち別のものを適用することもできる。
【0070】
量子層31の個数は、広い範囲を限界として種々であってよい。例えば、量子構造30は2個以上100個以下、例えば50個の量子層を有する。
【0071】
量子層の層厚さは、好ましくは、1nm以上10nm以下の範囲にある。バリア層32の層厚さは、好ましくは、3nm以上100nm以下の範囲にあり、例えば15nmである。各バリア層は好ましくは、公称上は非ドープで形成される。またこれとは異なり、バリア層にドープを行ってもよい。
【0072】
緑色の2次放射を形成するために、量子層31は好ましくはAlInGa1−x−yNを含む。インジウム成分を増大することにより及び/又は量子層31を拡大することにより、2次放射のピーク波長を高めることができる。
【0073】
インジウム成分をさらに増大することにより、黄色もしくは赤色のスペクトル領域にピーク波長を有する2次放射を得ることもできる。さらに、赤色スペクトル領域の2次放射に対しては、AlInGa1−x−yPの材料系も適する。
【0074】
100nm以上のピーク波長のために、各量子層は、好ましくはアルミニウムを含まないか、又は、アルミニウムをほとんど含まず、例えばx≦0.05である。さらに、インジウム含有量yは好ましくは約50%であり、例えば0.45以上0.55以下、特に0.44以上0.52以下である。このような材料は、ヒ化ガリウムに基づく高い結晶品質でエピタキシャルに堆積可能である。
【0075】
放射変換素子3は、さらに基板35を有する。基板35は、量子構造30をエピタキシャルに堆積させるための成長基板であってよい。特に、1次放射に対して放射透過性を有さない成長基板、例えばヒ化ガリウムの基板では、量子構造30は、成長基板とは別の基板へ、例えばガラス基板へ移し替えることもできる。この場合、基板は量子構造30のための成長基板とは異なり、量子構造を機械的に安定化する。このため成長基板は必要なく、これを除去でき、これにより放射変換素子は成長基板を有さない。
【0076】
基板35の主延在平面は、半導体チップの主延在平面に対して平行に、特に半導体チップの活性領域の主延在平面に対して平行に延在する。基板35は、図示の実施形態では、半導体チップ2を全面で覆う。これとは異なり、被覆面積をより小さくしても好都合となりうる。好ましくは、基板は、半導体チップを大きな面積で、特に少なくとも20%までもしくは少なくとも50%までの面積で、覆う。
【0077】
量子構造30は、基板35の、半導体チップ2とは反対側の面(図1C)又は半導体チップ2に向かう側の面(図1D)に設けることができる。
【0078】
図1Eに示されている実施形態では、放射変換素子3上、特に基板35の特に量子構造30とは反対側に、誘電性コーティング5が構成されている。当該誘電性コーティングは、複数の層を含む多層構造で構成することができ、この場合、誘電性コーティングの隣接する層どうしは、屈折率に関して相互に異なっている。当該誘電性コーティング5は、例えば、1次放射が少なくとも部分的に放射変換素子3へ反射され、2次放射がほとんど阻止されずに出射されるように構成される。さらに、誘電性コーティング5によって、少なくとも1つの放射成分用の共振キャビティ、すなわち、1次放射及び/又は2次放射のための共振キャビティを形成することができる。
【0079】
誘電性コーティング5に代えてもしくはこれに加えて、図1Fに示されているように、放射変換素子3上に散乱層55を配置することもできる。例えば、散乱層55は、散乱粒子が設けられたポリマー材料を含む。例えば、厚さが10μm以上30μm以下、散乱粒子の割合が10重量%以上30重量%以下、好ましくは15重量%以上25重量%以下の層が適する。散乱層により、放出される放射の色座標の角度依存性に関する均一性を改善できる。また、散乱層55での散乱は、量子構造30での放射変換から空間的に間隔を置いて行われる。放射変換及び散乱は、一貫して相互に独立に調整可能である。さらに、放射変換素子3、特に基板35は、図1Gに示されているように、出力構造58を有する。図示の実施形態では、出力構造は、基板35の、量子構造30とは反対側の面に構成される。出力構造は、例えば粗面化部によって、不規則に形成することができる。
【0080】
これに代えてもしくはこれに加えて、基板35は量子構造30に向かう側に出力構造を有してもよい。例えば、基板35は、予めパターニングされた基板、例えば予め定められたサファイア基板であってよい。
【0081】
こうした出力構造に加え、放射変換素子は、図1Eから図1Fに示されているように、散乱層55及び/又は誘電性コーティング5を有することができる。
【0082】
放射変換素子3の上述した構成は、半導体デバイス1の後述する実施形態に対しても適用可能である。図示の簡単化のために、放射変換素子3の詳細は以降の図には示していない。
【0083】
図2のAに示されている実施形態は、図1Aに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。図1Aとは異なり、半導体チップ2は、一方の接続面を前面に、もう一方の接続面を後面に配置した半導体チップとして構成されている。前面とは、半導体チップの、放射面に向かう側の面をいうものとする。
【0084】
図2のBには、こうした半導体チップ2の実施形態が示されている。図1Bに示されている半導体チップとは異なり、支持体29は半導体層のための成長基板ではない。こうした半導体チップは、薄膜半導体チップとも称される。支持体29が半導体層の機械的な安定化に用いられるので、成長基板はこのためにはもはや不要であり、製造時に除去可能である。第1の半導体層21の電気的接続のために、半導体チップ2は、第2の半導体層及び活性領域20を通って延在する複数の凹部23を有する。凹部23には、第1の接続層250が配置されており、第1の半導体層21に電気的に接続されている。半導体積層体200を有する半導体基体は、接続層28によって、例えば導電性のはんだ層もしくは接着層によって、支持体29に固定される。第1の半導体層の電気的接続は、第1の接続層250及び接続層28及び支持体29を通して、第1の接続面25によって行われる。第2の半導体層の電気的接続は、第2の接続層260と前面側の第2の接続面26とによって行われる。第2の接続面26が半導体基体200の側方に配置されているので、活性領域20のシェーディングは接続のための放射不透過層、例えば金属層によって回避される。第2の接続面26は、接続線69を介して、例えばワイヤボンディング接続によって、第2のコンタクト62に電気的に接続される。第2の接続層260は特には鏡面層として構成される。第2の接続層260は特に、活性領域で形成される放射に対する鏡面層として構成されている。こうした半導体チップ2では、側方での放射出力は、前面での放射出力を高めるために低減される。半導体チップに接する反射層が側方に存在しなくても、1次放射は主として放射変換素子に向かう側から出射される。
【0085】
後述する各実施形態では、図1Bに関連して説明した半導体チップ及び図2のBに関連して説明した半導体チップの双方を使用可能である。
【0086】
図3のAに示されている実施形態は、主として図1Aに関連して説明した実施形態に対応する。
【0087】
相違点は、半導体チップ2がカバー65に埋め込まれている点である。カバー65は、1次放射及び2次放射に対して放射透過性を有するように構成されており、これにより半導体チップ2と放射面12との間の光路にもカバーを配置可能である。
【0088】
この実施形態では、ケーシングボディ6、特にキャビティ67の内面が反射性を有するように構成することもできる。
【0089】
半導体デバイス1はさらに、半導体チップ2及び放射変換素子3に加えて、エミッタ4を有する。エミッタ4は、この実施形態では、別の放射変換素子41として構成されている。例えば、放射変換素子3は緑色スペクトル領域の2次放射の形成のために設けられており、別の放射変換素子41は赤色スペクトル領域の放射の形成のために設けられている。よって、半導体チップ2の1次放射とともに、半導体デバイス1は、赤色及び緑色及び青色のスペクトル領域の各ピーク波長を有する放射を発光する。
【0090】
図示の実施形態では、放射変換素子3と別の放射変換素子41とが半導体チップ2上に並ぶように配置される。放射変換素子3と放射変換素子41とは、特には相互に接していてもよい。
【0091】
別の放射変換素子41は、第3のピーク波長を有する放射を形成する蛍光物質を有する。当該蛍光物質は、例えばマトリクス材料、例えばシリコーン又はエポキシドに埋め込むことができる。これに代えて、別の放射変換素子は、蛍光物質を含むセラミックとして形成可能である。2次放射、例えば赤色スペクトル領域の放射を形成するための蛍光物質自体は公知であるので、ここではこれ以上立ち入らない。
【0092】
狭帯域で発光する半導体チップ2及び狭帯域で発光する放射変換素子41に加えて、半導体デバイス1は、比較的広帯域で、例えば半値全幅50nmから100nmまでの帯域で発光するエミッタを有する。
【0093】
図3のBに示されている実施形態は、図3Aに関連して説明した実施形態に対応する。図3のAの実施形態とは異なり、ケーシングボディ6は、半導体チップ2及び放射変換素子3及びエミッタ4に接するリフレクタ層7によって形成されている。半導体デバイスの製造時、ケーシングボディは、半導体チップ2が放射変換素子3及びエミッタ4によって第1のコンタクト61及び第2のコンタクト62に固定された後にはじめて、成形材料によって形成される。こうした半導体デバイス1は、特に小さな構造高さを有することができ、ここで、ケーシングボディ6は、放射面12では、放射変換素子3を超えて延在しないか又は超えて延在したとしても少なくとも僅かのみである。こうしたケーシング形状はもちろん、図1Aに関連して説明したような、半導体チップ2及び放射変換素子3のほかエミッタ4を有さない半導体デバイス1にも適する。
【0094】
図4のA,Bに示されている実施形態は、図3のA又はBに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。図3のA又はBの実施形態とは異なり、エミッタ4はそれぞれ、別の基板43上に形成された別の量子構造42を有する別の放射変換素子によって形成されている。別の量子構造42及び別の基板43は、図1Cから図1Gに関連して放射変換素子3について説明したように構成可能である。よって、こうした半導体デバイスは、それぞれ特に狭帯域の、例えば半値全幅25nmから40nmまでの、相互に異なるピーク波長を有する3つの放射成分で発光する。
【0095】
図5のA,Bに示されている実施形態は、図3のB又は図4のBに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。
【0096】
ただし、図3のB又は図4のBの実施形態とは異なり、エミッタ4は、図5のAでは蛍光物質を含む別の放射変換素子41であり、図5のBでは、リフレクタ層7によって放射変換素子3から光学的に分離された、別の基板43を有する別の量子構造42である。こうして、光クロストーク及びこれにともなう望ましくない放射吸収、又は、放射変換素子3とエミッタ4との間での放射の移行による、隣接する放射変換素子の励起を回避できる。リフレクタ層7は、半導体デバイス1を上から見たとき、その一部の領域が、放射面12に向かう側の半導体チップ2の前面を覆う。
【0097】
図6に示されている実施形態は、図3のAに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。図3のAの実施形態とは異なり、エミッタ4は、カバー65に埋め込まれた蛍光物質によって形成される。つまり、エミッタ4は、特に赤色のスペクトル領域で放射を発光するボリュームコンバータとして構成されている。放射面12では、放射変換素子3はカバー65から露出されている。エミッタ4の放射変換素子3で形成された2次放射の望ましくない吸収は、このようにして低減される。蛍光物質を含むカバーの形態のエミッタ4は半導体チップ2と放射変換素子3との双方に接する。
【0098】
また、半導体チップ2は、前面側に2つの接続面を有する半導体チップとして構成される。半導体チップ2の電気的接続は、それぞれ接続線69を介して行われる。もちろんこれとは異なり、図1B又は図2のBに関連して説明したような半導体チップを使用することもできる。さらに、図6に示されている半導体チップは別の実施形態にも適する。
【0099】
図7のA,Bに示されている実施形態は、図5のAに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。ただし、図5Aの実施形態と異なり、半導体デバイス1はリードフレームから露出されている。第1のコンタクト61及び第2のコンタクト62は半導体チップ2上に直接に形成されている。ケーシングボディ6は、半導体チップ2及び放射変換素子3及びエミッタ4と一体に成形されたリフレクタ層7によって構成されている。こうした半導体デバイスを製造する際には、半導体チップを補助支持体上、例えばシート上に形成し、続いてリフレクタ層7の材料を成形することができる。このために特には、成形プロセス、例えばフォイルアシスト成形が適する。
【0100】
リフレクタ層7の材料としては、上述したように、例えば反射性を有するように形成されたエポキシド又はシリコーンが適する。
【0101】
また、当該半導体デバイス1においても、その側面は、個々の半導体デバイスへの個別化が行われる際にはじめて生じる。
【0102】
こうした半導体デバイスは特にコンパクトに製造可能であり、横方向の広がりでは半導体チップよりも少しだけ大きい。したがって、こうしたケーシング形状は、CSP(チップサイズパッケージ)とも称される。
【0103】
図7のAでは、エミッタ4は蛍光物質を含む別の放射変換素子によって形成される。図7のBでは、放射変換素子は別の量子構造42を有する。
【0104】
図8のAからDに示されている実施形態は、放射変換素子3とエミッタ4とが特に別の放射変換素子の形態で半導体チップ2の上方に垂直方向に設けられる点で、先行の実施形態とは異なっている。放射変換素子3及びエミッタ4は、双方とも、半導体チップ2を全面でもしくはほぼ全面で覆うことができる。
【0105】
また、図8のAに示されている実施形態は、図3のAに関連して説明した実施形態に対応する。さらに、図8のBに示されている実施形態は、図4のBに関連して説明した実施形態に対応する。特に、エミッタ4は別の量子構造42を有する。図示の実施形態では、別の量子構造42は別の基板43上に設けられる。したがって、別の量子構造42と放射変換素子3の量子構造30とは相互に独立に製造可能であり、連続して並ぶように設けられる。これとは異なり、別の量子構造42及び量子構造30を共通の半導体積層体として共通の基板上にエピタキシャルに堆積することもできる。つまりこの場合、量子構造30及び別の量子構造42は、モノリシックに共通の半導体積層体に集積され、特に共通のエピタキシャル製造プロセスで製造される。
【0106】
さらに、図8のCに示されている実施形態は、おおよそ、図3のBに関連して説明した実施形態に対応する。
【0107】
さらに、図8のDに示されている実施形態は、放射変換素子3上に設けられているエミッタ4を除き、図2のAに関連して説明した実施形態に対応する。
【0108】
図8のC,Dに示されている実施形態においても、エミッタ4は蛍光物質もしくは別の量子構造を有することができる。
【0109】
図9には、照明装置11の実施形態が示されている。照明装置11は、接続支持体15、例えばプリント回路板上に設けられた複数の半導体デバイス1を有する。半導体デバイス1は、単に例示にすぎないが、図7のAに関連して説明したデバイスとして構成されている。半導体デバイス1の別の実施形態も利用可能である。図示の実施形態では、照明装置11は、光ファイバ19への放射入力のために構成されている。例えば、照明装置11は、ディスプレイ装置、例えばLCDのバックライトに用いられる。
【0110】
これとは異なり、照明装置11を、ヘッドランプ用又は撮影フラッシュ用又はプロジェクション用に構成することもできる。本願で説明した半導体デバイス1の実施形態によれば、大きな色域と同時に高い効率を達成可能である。したがって、半導体デバイス1はこうした照明装置11に特に適する。
【0111】
図10のAに示されている実施形態は図3のAに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。ただし、図3のAの実施形態とは異なり、エミッタ4は、別の半導体チップ44として構成されている。別の半導体チップは、第3のピーク波長を有する放射を形成するために設けられた活性領域440を有する。この実施形態では、別の半導体チップは、赤色スペクトル領域での放射を発光する。例えば、別の半導体チップ44の活性領域は、AlInGa1−x−yP又はAlInGa1−x−yAsを含む。
【0112】
半導体デバイス1はさらに、第1のコンタクト61及び第2のコンタクト62に加え、第3のコンタクト63を有する。第1のコンタクト61は半導体チップ2と別の半導体チップ44との共通のコンタクトとして用いられる。半導体デバイス1の動作中、半導体チップ2と別の半導体チップ44とは相互に独立に駆動可能である。
【0113】
図10のBに示されている実施形態は、図5のBに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。ただし、図5のBの実施形態とは異なり、半導体デバイス1は、図10のAに関連して説明したような別の半導体チップ44の形態のエミッタ4を含んでいる。別の半導体チップ44上には、放射透過性を有する基体48が形成される。例えば、放射透過性の基体はガラスを含む。リフレクタ層7は、別の半導体チップ44、放射透過性の基体48、半導体チップ2及び放射変換素子3に接している。特に、別の半導体チップ44及び放射透過性の基体48が半導体チップ2及び放射変換素子3からリフレクタ層7によって光学的に相互に分離されている。放射透過性の基体48により、別の半導体チップ44がリフレクタ層7によって覆われないよう、リフレクタ層7は簡単に製造可能である。特に、放射透過性の基体48及び放射変換素子3は、放射面12において、同じ高さもしくはほぼ同じ高さで終端する。
【0114】
言い換えれば、放射透過性の基体48及び放射変換素子3の、放射面12に向かう側の表面は一平面に延在する。
【0115】
図11のAに示されている実施形態は、図5のAに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。ただし、図5のAの実施形態とは異なり、別の放射変換素子41として構成されたエミッタ4を半導体チップ2上でなく、別の半導体チップ44上に配置することもできる。別の半導体チップ44は特に、半導体チップ2と同じピーク波長の放射を発光できる。半導体デバイスの動作中、エミッタ4から放出された放射と放射変換素子3から放出された放射との比は、図5のAに示されている実施形態とは異なり、半導体チップ2及び別の半導体チップ44を種々に駆動することによって調整可能である。別の半導体チップ44及びエミッタ4は、半導体チップ2及び放射変換素子3からリフレクタ層7によって光学的に分離されている。
【0116】
図11のAに示されている実施形態に代えて、エミッタ4を、図11のBに示されているように、別の量子構造42によって別の基板43上に形成してもよい。
【0117】
図12に示されている実施形態は、図10のAに関連して説明した実施形態にほぼ対応する。ただし、図10のAの実施形態とは異なり、放射変換素子3が半導体デバイス1を上から見て、半導体チップ2上にも別の半導体チップ44上にも延在している。よって、別の半導体チップ44上の放射透過性の基体48は不要である。好ましくは、別の半導体チップ44のピーク波長は、発光された放射が放射変換素子3を通過する際に吸収されないか又は少なくとも大幅には吸収されない程度の大きさに定められる。例えば、放射変換素子3は、青色スペクトル領域での放射の吸収のため、及び、緑色スペクトル領域での発光のために設けられる。したがって、別の半導体チップ44から赤色スペクトル領域で発光された放射は、放射変換素子3を通って吸収はされない。
【0118】
さらに、図10のAとは異なって、別の半導体チップ44をフリップチップとして構成でき、半導体チップの前面側での接続が不要となる。こうして、半導体チップ2上及び別の半導体チップ44上での放射変換素子の大面積での配設が簡単化される。
【0119】
本願は、独国特許出願公開第102014107472.6号(Deutsche Patentanmeldung 102014107472.6)の優先権を主張し、その開示内容は引用により本願に含まれるものとする。
【0120】
本発明は各実施形態の説明に限定されない。むしろ本発明は、新規の全ての特徴又はその全ての組み合わせを含む。特に、これらの特徴又はその組み合わせがそれ自体で特許請求の範囲及び発明の実施形態に明示されていなくても、特許請求の範囲の特徴の全ての組み合わせが含まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12