特許第6636161号(P6636161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636161
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】大型トラック用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20200120BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   B60C11/00 B
   B60C11/00 C
   B60C1/00 A
   B60C11/00 D
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-533100(P2018-533100)
(86)(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公表番号】特表2018-538200(P2018-538200A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】US2016067707
(87)【国際公開番号】WO2017116834
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】PCT/US2015/067663
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】トローブリッジ ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】クレス ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】マヘシャ チャイトラ
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−512142(JP,A)
【文献】 特表2015−522472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブケーシングと、ベルトパッケージ(19)と、ゴムトレッド(2)とを有し、前記トレッドが、転がりトレッド幅(RTW)にわたって第1のトレッドエッジ(N)から第2のトレッドエッジ(N’)まで軸方向に延在し、前記トレッドが、前記第1及び第2のエッジの各々に隣接したショルダーゾーン(21)と、2つのショルダーゾーンを分ける中央ゾーン(25)とを備え、各ショルダーゾーンが、半径方向下部ショルダー層(24)と、半径方向上部ショルダー層(22)とを備え、前記上部ショルダー層が、地面と接触することを意図し、前記下部ショルダー層が、前記ベルトパッケージと前記上部ショルダー層との間に間置され、前記上部ショルダー層が、上部ショルダーゴム化合物からなり、前記下部ショルダー層が、前記上部ショルダーゴム化合物と異なる下部ショルダーゴム化合物からなる、大型トラック用タイヤ(1)であって、
−前記上部ショルダー層が、トレッドエッジ(N、N’)から軸方向内方に距離L1延在し、前記距離L1が、前記転がりトレッド幅(RTW)の15%超え、かつ40%未満であり、
−前記上部ショルダー層が、前記距離L1の少なくとも80%にわたって、トレッド溝深さの70%〜130%の厚さ(T22)を有し、
−前記下部ショルダー層が、トレッドエッジ(N、N’)から軸方向内方に距離L2延在し、前記距離L2が、前記転がりトレッド幅(RTW)の15%を超え、
−前記下部ショルダー層が、前記ベルトパッケージを覆う前記ショルダーゾーンの部分にわたって、少なくとも4mmの厚さを有し、
−前記上部ショルダーゴム化合物が、少なくとも1.3MpaのG*50及び少なくとも0.12の最大tan(δ)を有し、
−前記下部ショルダーゴム化合物が、前記地面と接触することを意図する前記中央ゾーンの中央ゴム化合物の最大tan(δ)を超えない最大tan(δ)を有し、
−前記中央ゴム化合物が、最大で0.09の最大tan(δ)を有する、大型トラック用タイヤ。
【請求項2】
前記中央ゾーンが、前記地面と接触することを意図する上部中央層と、前記ベルトパッケージと前記上部中央層との間に間置された下部中央層とを備え、前記下部中央層が、前記上部中央ゴム化合物の最大tan(δ)を超えない最大tan(δ)を有する下部中央ゴム化合物からなる、請求項1に記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項3】
前記上部中央ゴム化合物が、最大で0.08の最大tan(δ)を有する、請求項2に記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項4】
前記上部ショルダーゴム化合物が、少なくとも1.6MpaのG*50を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項5】
前記下部ショルダー層が、前記ベルトパッケージを覆う前記距離L1の部分にわたって、少なくとも4.5mmの厚さを有する、請求項1〜4のいずれかに記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項6】
前記下部中央ゴム化合物が、前記上部中央ゴム化合物と異なり、また、0.07を超えない最大tan(δ)を有する、請求項2または3に記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項7】
前記下部中央層が、前記タイヤの推奨される摩耗寿命中に前記地面と接触しないように設計され、前記下部中央ゴム化合物が、0.05を超えない最大tan(δ)を有する、請求項6に記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項8】
前記下部中央層が、前記タイヤの前記推奨される摩耗寿命中に前記地面と接触しないように設計され、前記下部中央ゴム化合物が、55phrを超えない添加量で35〜65m2/gのCTAB比表面積を有するカーボンブラックのブレンドを使用する、請求項7に記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項9】
前記上部ショルダーゴム化合物と、前記地面と接触することを意図する前記中央ゴム化合物との間の可視界面(I)が、トレッド溝内に配置される、請求項1〜8のいずれかに記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項10】
前記下部中央ゴム化合物と前記上部中央ゴム化合物の境界が、前記トレッドの地面接触表面に対して実質的に平行である、請求項6または7記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項11】
前記下部中央ゴム化合物と前記上部中央ゴム化合物の間の境界が、前記トレッド溝の底部から2mm〜5mm半径方向外側に位置付けられる、請求項6、7、または10に記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項12】
前記中央ゾーンが、前記地面と接触することを意図する上部中央層と、前記ベルトパッケージと前記上部中央層との間に間置された下部中央層とを備え、同じゴム化合物が、前記下部ショルダー層及び前記下部中央層に使用される、請求項1〜11のいずれかに記載の大型トラック用タイヤ。
【請求項13】
同じゴム化合物が、前記下部ショルダー層、前記下部中央層、及び前記上部中央層に使用される、請求項1〜5の何れか1項に従属する請求項12に記載の大型トラック用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にタイヤに関する。より具体的には、本発明は、大型商用車用のタイヤ、特に、製品の地域または長距離輸送に関与するトラック及びトレーラー用のタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ設計者らが、多くの場合、彼らが設計しているタイヤのある特定の特徴のことで妥協しなければならないことが当該産業において知られている。タイヤ設計を変更して、タイヤの1つの特徴を改善することは、しばしば妥協、すなわち、別のタイヤの特徴における相殺的な低下という結果をもたらすことになる。1つのそのような妥協は、タイヤトレッドの摩耗寿命の延長とタイヤの転がり抵抗の低減との間に存在する。
【0003】
トレッドの摩耗寿命は、耐磨耗性がより高いトレッドゴム化合物を使用することによって、またはより厚いトレッドを提供することによって改善することができる。しかしながら、これらの措置は、典型的に、転がり抵抗の増加をもたらす。次に、転がり抵抗は、ヒステリシスが少ないゴム化合物を使用することによって改善されることが知られているが、そのような化合物は、概して、耐磨耗性が低い。
【0004】
タイヤ設計者及びタイヤ産業における研究を行っている者は、既知の妥協の一部を打開できる材料及びタイヤ構造を研究している。摩耗寿命と転がり抵抗との間のこの妥協を打開する新しいタイヤ設計を提供することが望ましい。
【0005】
本明細書で使用される場合、「半径」方向は、タイヤの回転軸を含む任意の平面における任意の方向である。
【0006】
本明細書で使用される場合、「横」、「横断」、または「軸」方向は、タイヤ幅に沿い、かつタイヤの回転軸に平行である。
【0007】
本明細書で使用される場合、「円周」または「長手」方向は、半径及び軸方向に対して直角である。
【0008】
本明細書で使用される場合、「トレッド要素」は、地面に接触するトレッドにおいて見出されるあらゆる種類または形状の構造的特徴である。トレッド要素の例としては、トレッドブロック及びトレッドリブが挙げられる。
【0009】
本明細書で使用される場合、「リブ」は、実質的にタイヤの長手方向に延びるトレッド要素であり、また、実質的に横方向に延びるいかなる溝によっても、または該リブに対して斜めに延びるいかなる他の溝によっても中断されない。
【0010】
本明細書で使用される場合、「phr」は、「ゴム100重量部当たりの重量部」であり、当該技術分野において一般的な測定値である。ここでは、ゴム組成物の成分は、組成物中のゴムの総重量に対して測定され、すなわち、組成物中の全てのゴム(複数可)100重量部当たりの成分の重量部として測定される。
【0011】
本明細書で使用されるとき、エラストマー及びゴムは同義語である。
【0012】
本明細書で使用される場合、「に基づく」は、本発明の実施形態が、組み合わせ時には未硬化であった加硫または硬化ゴム組成物で構成されることを認識する用語である。したがって、硬化済ゴム組成物は、未硬化ゴム組成物「に基づく」。換言すれば、架橋ゴム組成物は、架橋性ゴム組成物に基づくか、またはその構成成分を含む。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、サブケーシングと、ベルトパッケージと、ゴムトレッドとを有し、トレッドは、転がりトレッド幅にわたって第1のトレッドエッジから第2のトレッドエッジまで軸方向に延在し、トレッドは、該第1及び第2のエッジの各々に隣接したショルダーゾーンと、2つのショルダーゾーンを分ける中央ゾーンとを備え、各ショルダーゾーンは、半径方向下部ショルダー層と、半径方向上部ショルダー層とを備え、上部ショルダー層は、地面と接触することを意図し、下部ショルダー層は、ベルトパッケージと上部ショルダー層との間に間置され、上部ショルダー層は、上部ショルダーゴム化合物からなり、下部ショルダー層は、上部ショルダーゴム化合物と異なる下部ショルダーゴム化合物からなる、大型トラック用タイヤであって、
−上部ショルダー層は、トレッドエッジ点から軸方向内方に距離L1延在し、距離L1は、転がりトレッド幅15%超え、かつ40%未満であり、
−上部ショルダー層は、距離L1の少なくとも80%にわたって、トレッド深さの70%〜130%の厚さを有し、
−下部ショルダー層は、トレッドエッジから軸方向内方に距離L2延在し、距離L2は、転がりトレッド幅15%を超え
−下部ショルダー層は、ベルトパッケージを覆うショルダーゾーンの部分にわたって、少なくとも4mmの厚さを有し、
−上部ショルダーゴム化合物は、少なくとも1.3MpaのG*50及び少なくとも0.12の最大tan(δ)を有し、
−下部ショルダーゴム化合物は、地面と接触することを意図する中央ゾーン中央ゴム化合物の最大tan(δ)を超えない最大tan(δ)を有し、
−中央ゴム化合物は、最大で0.09の最大tan(δ)を有する、大型トラック用タイヤを提供する。
【0014】
別の実施形態において、中央ゾーンは、地面と接触することを意図する上部中央層と、ベルトパッケージと上部中央層との間に間置された下部中央層とを備え、下部中央層は、上部中央ゴム化合物の最大tan(δ)を超えない最大tan(δ)を有する下部中央ゴム化合物からなる。
【0015】
別の実施形態において、上部中央ゴム化合物は、最大で0.08の最大tan(δ)を有する。
【0016】
別の実施形態において、上部ショルダーゴム化合物は、少なくとも1.6MpaのG*50を有する。
【0017】
別の実施形態において、下部ショルダー層は、ベルトパッケージを覆う距離L1の部分にわたって、少なくとも4.5mmの厚さを有する。
【0018】
別の実施形態において、下部中央ゴム化合物は、上部中央ゴム化合物と異なり、また、0.07を超えない最大tan(δ)を有する。
【0019】
別の実施形態において、下部中央層は、タイヤの推奨される摩耗寿命中に地面と接触しないように設計され、下部中央ゴム化合物は、0.05を超えない最大tan(δ)を有する。
【0020】
別の実施形態において、下部中央層は、タイヤの推奨される摩耗寿命中に地面と接触しないように設計され、下部中央ゴム化合物は、55phrを超えない添加量で35〜65m2/gのCTAB比表面積を有するカーボンブラックのブレンドを使用する。
【0021】
別の実施形態において、上部ショルダーゴム化合物と、地面と接触することを意図する中央ゴム化合物との間の可視界面は、トレッド溝内に配置される。
【0022】
別の実施形態において、下部ゴム化合物と上部ゴム化合物との間の境界は、トレッドの地面接触面に対して実質的に平行である。
【0023】
別の実施形態において、下部ゴム化合物と上部ゴム化合物との間の境界は、トレッド溝の底部から2mm〜5mm半径方向外側に位置付けられる。
【0024】
別の実施形態において、中央ゾーンは、地面と接触することを意図する上部中央層と、ベルトパッケージと上部中央層との間に間置された下部中央層とを備え、同じゴム化合物が、下部ショルダー層及び下部中央層に使用される。
【0025】
別の実施形態では、同じゴム化合物が、下部ショルダー層、下部中央層、及び上部中央層に使用される。
【0026】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点は、本発明の特定の実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【0027】
当業者を対象として、本発明の最良の形態を含む本発明の完全かつ実施可能な開示が本明細書において示され、本明細書は添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
図2】本発明による大型トラック用タイヤの一実施形態の部分断面図である。
図3】別の実施形態による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
図4】別の実施形態による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
図5】別の実施形態による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
図6】別の実施形態による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
図7】別の実施形態による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
図8】別の実施形態による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
図9】別の実施形態による大型トラック用タイヤの部分断面図である。
【0029】
図面における同じまたは類似の参照番号の使用は、同じまたは類似の特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1によって断面で示されるように、概して、大型トラック用ラジアルタイヤ1は、それぞれのサイドウォール12、12’によってビード部分(図示せず)に接続されたクラウン部分11を備える。より具体的には、1つまたは2つ以上のボディプライ13が、ビード部分内のビードコアから、反対側のビード部分の反対側のビードコアまで半径方向に延びる。ビード、ボディプライ、及びサイドウォールは、概して、タイヤサブケーシングと称される。
【0031】
タイヤのクラウン部分11において、ベルト14、15、16、17、及び18は、サブケーシングの周囲に、したがって、ボディプライ13(複数可)の周囲に半径方向外方に位置付けられる。ベルトは、ブレーカープライ14と、ワーキングプライ15及び17とを備えることができる(これらは、互いに対してある角度で、及びボディプライに対してある角度で補強材を提供するので、そのように呼ばれる)。ベルト16は、円周方向補強材の螺旋状巻線とすることができる(しばしば、補強材がタイヤの円周方向に対してゼロ度に近い角度で延びるので、「ゼロ度補強材」と呼ばれる)。ベルト18は、プロテクタープライとすることができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「プライ(ply)」または「プライ(plies)」という用語は、タイヤの補強層を指し、また、タイヤを製造する、またはプライ自体を製造する特定の方法に限定されない。それらの円周方向ベルトのアセンブリは、概して、ベルトパッケージ19と称される。この補強構造は、正確なタイヤの種類及びその製造過程に依存して、より少ないもしくはより多いパイル数または異なるパイルの配設を備えることができるが、この原理は、大型トラック用タイヤにおいて広く知られ、使用されている。ベルト幅BWは、ベルトパッケージ19内の任意のベルトの遠隔ベルトエッジの間の最大軸方向距離として定義される。
【0033】
サブケーシング及びベルトパッケージのアセンブリは、概して、ケーシングと称される。
【0034】
トレッド2は、上で説明した補強構造の周囲に取設される。トレッドは、タイヤが転がるときに地面と接触する、タイヤのゴム部分である。転がりトレッド幅RTWは、第1のエッジNから反対側の第2のエッジN’までの距離として定義される。トレッドエッジは、標準的な直線転がり条件(タイヤの標準圧力におけるTRA荷重の75%)の下で、タイヤのトレッドがもはや地面と接触しない、最大軸方向位置として定義される。これらの位置は、(犠牲リブの事例のような)断続的に接触し得るトレッドを考慮しない。
【0035】
トレッドは、異なる種類の表面にわたってグリップを提供するために、及び濡れた路面を転がるときに接地面から水を排出するために、任意の形状または形態の任意の数の溝23を含むことができる。新しいトレッドにおいて、そうした溝の深さは、概して、トレッド深さTDと称される。
【0036】
タイヤ1は、赤道面EPを中心に実質的に対称である。したがって、赤道面EPは、タイヤ1を実質的に同じ構造の対向する半部に二分する。
【0037】
以下、本発明の実施形態を詳細に参照し、それらの実施例を添付図面に例示する。これらの実施例は、本発明の説明として提供される。
【0038】
本発明の異なる実施形態を示す図2〜9は、図1の全幅表示の左側部分に限定した部分図である。赤道面EPに対して、タイヤの残り半部は、実質的に対称であり得る。また、特許請求の範囲によって限定されるような本発明の範囲内である限り、顕著に異なり得る。
【0039】
図2に示されるように、一実施形態によれば、タイヤ1は、中央ゾーンを有するトレッドと、異なるゴム化合物の使用によって画定されたショルダーゾーンとを有する。
【0040】
ショルダーゾーン21は、2つの異なる層、すなわち、半径方向下部ショルダー層24と、半径方向上部ショルダー層22とを備える。上部ショルダー層22は、タイヤが転がるときに地面と接触することを意図し、下部ショルダー層24は、上部ショルダー層とベルトパッケージ19との間に間置される。上部ショルダー層22は、距離L1にわたってエッジNから第1の溝231まで軸方向内方に延在し、厚さT22を有する。この実施形態において、厚さT22は、全距離L1にわたってトレッド深さTDの約110%である。
【0041】
上部ショルダー層22は、下部ショルダー層24において使用される下部ショルダーゴム化合物と異なる上部ショルダーゴム化合物からなる。上部ショルダー化合物は、より高い耐摩耗性特性を有し、下部ショルダーゴム化合物は、より良好な転がり抵抗特性を有する。
【0042】
この実施形態において、トレッドの中央ゾーン25は、その全厚さにわたって、下部ショルダー層24において使用されるものと同じゴム化合物を使用する。
【0043】
この実施形態において、長さL1は、RTWの18%を表す。下部ショルダー層24の厚さは、ベルトパッケージ19を覆うショルダーゾーンの部分よりも4mm厚い。
【0044】
図3は、上部ショルダー層22が、第1の溝231を越えて延在し、第2のリブの中へ先細になる、別の実施形態を示す。距離L1は、RTWの約25%であり、図1よりもかなり長い。しかしながら、2つの異なる化合物間の可視界面Iは、依然として第1の溝231内に位置付けられる。
【0045】
図4は、可視界面Iが第2のリブの接触面上に位置付けられ、距離L1が図3の距離に類似する値である、別の実施形態を示す。
【0046】
図5は、上部ショルダー層22が、第2の溝232まで延在し、第2のリブにおいて下部層が徐々に厚くなることを可能にするように先細になる、別の実施形態を示す。距離L1は、RTWの約35%であり、よって、図3及び4よりもかなり長い。
【0047】
図6は、トレッド中央ゾーン25も、異なるゴム化合物を使用した2つの層を備える、別の実施形態を示す。上部中央層28は、下部中央層27において使用される下部中央化合物と異なり、さらに、上部ショルダー層22において使用される化合物とも異なる、上部中央層化合物を使用する。この実施形態において、中央及びショルダーゾーンの下部層には同じ化合物が使用されるが、トレッド全体にわたって異なる化合物とすることもできることが理解される。
【0048】
図7は、中央ゾーン25が、異なるゴム化合物を使用した2つの層を備える点で図6に類似し、ここでは、図5に示される上部層の構成を含む、別の実施形態を示す。
【0049】
図6及び7は、図4及び5に示される構成に基づくものと同じ原理を例示するが、任意の他の構成を適用することができることが明らかであるべきである。
【0050】
図8は、中央ゾーン25が、異なるゴム化合物を使用する2つの層を備える点で図6に類似するが、中央及びショルダーゾーン内の下部層が、トレッド溝の底部よりも高く到達するように厚く作製される、別の実施形態を示す。境界は、トレッド溝の底部から2mm〜5mm半径方向外側に位置付けられる。
【0051】
図9は、中央ゾーン25が、その全厚さにわたって同じゴム化合物を使用する点で図5に類似するが、下部ショルダー層が、距離L2にわたってエッジNから内方に(赤道面EPに向かって)延在する別のゴム化合物を使用する、別の実施形態を示す。
【0052】
ここでも、図面は、異なるゾーン及び化合物の構成のうちの限定された数の実施例のみを例示する。例えば、例示される要素を修正することによって、または異なる図面上に分離して示される要素を組み合わせることによって、多くの他の構成が可能である。同じく前に説明したように、本発明によるタイヤは、対称である場合もあり、またはそうでない場合もあり、すなわち、本発明によるタイヤは、その赤道面EPのいずれかの側のタイヤ半部の両方が同じ構成を有する場合があり、またはそうでない場合もある。
【0053】
しかしながら、本発明によれば、距離L1は、転がりトレッド幅RTWの15%〜40%で構成され、上部ショルダー層22は、距離L1の少なくとも80%にわたってトレッド深さTDの70%〜130%の厚さを有する。
【0054】
本発明によれば、下部ショルダー層は、エッジ(N)から軸方向内方に距離L2延在し、距離L2は、転がりトレッド幅RTWよりも15%超長く、下部ショルダー層は、ベルトパッケージを覆うショルダーゾーンの部分にわたって少なくとも4mmの厚さを有する。
【0055】
本発明によれば、上部ショルダーゴム化合物は、少なくとも1.3Mpaの50%歪み(G*50)において複素動的剪断弾性率を有し、また、少なくとも0.12の最大tan(δ)を有する。
【0056】
本発明によれば、中央ゾーンにおいて地面に接触することを意図するゴム化合物は、最大で0.09の最大tan(δ)を有する。
【0057】
本発明によれば、下部ショルダーゴム化合物は、中央ゾーンにおいて地面に接触することを意図するゴム化合物の最大tan(δ)を超えない最大tan(δ)を有する。
【0058】
本発明によるタイヤは、耐摩耗性及び転がり抵抗に関して本明細書の前文において説明される性能の妥協の打開を示す。
【0059】
中央ゾーン及び下部ショルダー層に使用されるゴム化合物は、天然ゴムに基づくこと、または大部分がシス1,4鎖である合成ポリイソプレン、及び場合により、少なくとも1つの他のジエンエラストマー、ならびに
−(i)沈降もしくは焼成シリカ、アルミナ、またはアルミノシリケートによって形成された群から選択され、120〜200m2/gの比表面積を有し、0phr〜70phrの添加量で使用される、SiOH及び/またはAlOH表面官能基を有するシリカ及び/またはアルミナ系の白色充填剤か、または
−(ii)充填剤の全体的な添加量が40phr〜70phrである、0phr以上かつ25phr以下の添加量において20〜120m2/gのCTAB比表面積を有するカーボンブラックと、(i)に記載された白色充填剤とのブレンド、のいずれかからなる補強充填剤に基づくことができる。
【0060】
CTAB比表面積は、AFNOR規格NFT45−007(1987年11月、方法B)に従って決定される。
【0061】
透明な充填剤または白色の充填剤が使用される場合、当業者に知られている薬剤から選択される、カップリング剤及び/または被覆剤を使用しなければならない。言及することができる好ましいカップリング剤の例としては、ビス−(3−トリアルコキシルイルプロピル)ポリスルフィド型の硫化アルコキシシラン、及び特に、純粋な液体製品の場合は、Si69の商標名で、また、固体製品の場合は、X50Sの商標名(N330ブラックと50/50の重量で配合される)でDegussaにより市販されている、ビス(3−トリエトキシルイルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。言及することができる被覆剤の例としては、脂肪族アルコール、Si116及びSi216の商標名でそれぞれDegussaにより市販されているヘキサデシルトリメトキシまたはトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン、ジフェニルグアニジン、ポリエチレングリコール、及び必要に応じてOHもしくはアルコキシ官能基で修飾されたシリコン油が挙げられる。被覆剤及び/またはカップリング剤は、充填剤に対して重量で1/100〜20/100の比率で、好ましくは、透明な充填剤が補強充填剤の全体を形成する場合には2/100〜15/100で、補強充填剤がカーボンブラック及び透明な充填剤のブレンドで形成される場合には1/100〜20/100で使用される。
【0062】
上で説明したシリカ及び/またはアルミナ型の材料のモルフォロジならびにSiOH及び/またはAlOH表面官能基を有し、これら材料の完全なまたは部分的な代替物として本発明に従って使用するのに適した、言及することができる補強充填剤の他の例としては、合成中に、炉に供給される油へのシリコン及び/もしくはアルミニウムの化合物の添加により、または合成後に、ケイ酸ナトリウム及び/もしくはアルミネートの溶液のカーボンブラックの水性懸濁液への酸の添加により、カーボンブラックの表面の少なくとも一部をSiOH及び/またはAlOH官能基で覆うことによって改質されるカーボンブラックを挙げることができる。SiOH及び/またはAlOH表面官能基を有するこの種類の炭酸化充填剤の言及できるいくつかの非限定的な例としては、1997年5月6〜9日のACS Meeting,Rubber Division,Anaheim,Calif.の会議番号24において説明され、また、欧州特許出願公開第EP−A−0 799 854号に記載された、CSDP充填剤が挙げられる。
【0063】
透明な充填剤が、唯一の補強充填剤として使用される場合、ヒステリシス及び粘着性といった特性は、120〜180m2/gのCTAB比表面積を有する、沈降もしく焼成シリカ、または沈降アルミナまたはアルミノシリケートを使用することによって得られる。言及することができるこの種類の充填剤の非限定的ないくつかの例としては、Akzoによって市販されているKS404、Degussaによって市販されているUltrasil VN2またはVN3及びBV3370GR、Huberによって市販されているZeopol8745、Rhodiaによって市販されているZeosil175MPまたはZeosil11 65M、PPGによって市販されているHI−SIL 2000等が挙げられる。
【0064】
天然ゴム、または大部分がシス−1,4鎖である合成ポリイソプレンとのブレンドに使用することができ、言及することができるジエンエラストマーのうち、好ましくは大部分がシス−1,4鎖であるポリブタジエン(BR)、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)溶液もしくはエマルジョン、ブタジエン−イソプレンコポリマー(BIR)、またはスチレン−ブタジエン−イソプレンターポリマー(SBIR)を挙げることができる。これらエラストマーは、重合中に、または重合後に、ジビニルベンゼンまたは星形成剤等の分岐剤によって、または代替的に、例えばジメチルまたはジエチルアミノベンゾフェノンの作用によって鎖もしくは鎖の端にグラフトされる酸素化したカルボニル、カルボキシル官能基、もしくはアミン官能基を生じさせる官能化剤によって改質された、エラストマーとすることができる。天然ゴム、または大部分がシス1,4鎖である合成ポリイソプレンと、上で述べた1つまたは2つ以上のジエンエラストマーとのブレンドの場合、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンは、好ましくは、主な比率で、より好ましくは、70phrを超える比率で使用される。
【0065】
例えば、トレッドが図2〜5のような2つのエラストマー化合物からなる構成において、それらの化合物は、下の表で説明されるようなものとすることができる。
【表1】
【0066】
損失因子「tan(δ)」は、ゴム化合物の動的特性である。この動的特性は、ASTM規格D5992−96に従って、粘度分析装置(Metravib VA4000)で測定される。各々厚さ2mm、直径1センチメートルの2つの円筒ペレットからなる試験片の応答を記録し(試験片は、試験片を形成することができるのに十分な厚さである領域内の赤道面の領域にできる限り近い、関係する層の高さの半分までタイヤから採取したサンプルで作製される)、試験片に、10Hzの振動数、60℃の温度で、単純交互正弦剪断応力を受けさせる。スイープは、0.1%から50%までのピークツーピーク(アウトバウンドサイクル)、次いで、50%から1%までのピークツーピーク(戻りサイクル)の変形の振幅をカバーする。本明細書で使用される結果は、損失係数tan(δ)及び複素動的剪断弾性率である。複素動的剪断弾性率は、試験中に印加される50%の歪みに関して「G*50」で示される。アウトバウンドサイクル中に、観察されるtan(δ)の最大値は、「最大tan(δ)」で示される。
【0067】
本発明の真の趣旨から逸脱することなく、様々な修正及び変更が本発明の実施形態に対して行われ得ることが、前述の説明から理解されるべきである。例えば、いくつかのゴム化合物の電気伝導の欠如のため、タイヤトレッドが、地面とタイヤリムとの間で静電気を伝導するための提供物を含み得ることがよく知られている。そのような提供物としては、この特定の目的のためにトレッドに挿入されている特定の化合物または層プロファイルを挙げることができる。そのような限定された変形物が、本発明の趣旨と矛盾しないこと、及び上の説明または添付の特許請求の範囲から本発明が認められる方法に影響を及ぼすべきではないことが理解される。
図1
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図9