特許第6636162号(P6636162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ペトロチャイナ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許6636162パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用
<>
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000019
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000020
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000021
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000022
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000023
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000024
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000025
  • 特許6636162-パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用 図000026
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636162
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/50 20060101AFI20200120BHJP
   B01J 23/62 20060101ALI20200120BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20200120BHJP
   B01J 23/52 20060101ALI20200120BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200120BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20200120BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20200120BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20200120BHJP
   C07C 5/09 20060101ALI20200120BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200120BHJP
【FI】
   B01J23/50 Z
   B01J23/62 Z
   B01J23/89 Z
   B01J23/52 Z
   B01J37/02 101A
   B01J37/16
   B01J35/10 301A
   C07C11/04
   C07C5/09
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-533766(P2018-533766)
(86)(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公表番号】特表2019-501767(P2019-501767A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】CN2016082976
(87)【国際公開番号】WO2017201644
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512172224
【氏名又は名称】ペトロチャイナ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PETROCHINA COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】チュー、チュンシャ
(72)【発明者】
【氏名】リャン、ユーロン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、イン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ファン
(72)【発明者】
【氏名】ゴウ、ガーリェン
(72)【発明者】
【氏名】ジン、シーリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シャオシン
(72)【発明者】
【氏名】グィ、チェン
(72)【発明者】
【氏名】グー、リーフェン
(72)【発明者】
【氏名】シェ、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジョンドン
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ドゥーファ
(72)【発明者】
【氏名】タン、ドゥーピン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、ユアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、リン
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−515631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al23を含有する担体をヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液に含浸し、必要に応じて乾燥した後、さらに主活性成分としてのパラジウムイオン及び助活性成分としてのMn+イオン(MがAg、Au、Ni、Pb及びCuから選ばれる1種である)を含む混合溶液に含浸し、さらに必要に応じて乾燥した後、焼成し、前記パラジウム系担持型水素化触媒を得るステップを含む、パラジウム系担持型水素化触媒の製造方法。
【請求項2】
Al23を含有する担体をヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液に含浸することが20℃〜60℃で行われ、含浸時間が2〜24時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ヒドロキシビピリジン/Al23前駆体を主活性成分としてのパラジウムイオン及び助活性成分としてのMn+イオンを含む混合溶液に含浸することが30℃〜100℃で行われ、含浸時間が2〜24時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記焼成の温度が300℃〜600℃であり、時間が2〜12時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Al23を含有する担体がアルミナ及び/又はアルミナとその他の酸化物とを含有する混合物を含み、前記その他の酸化物がシリカ、チタニア、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムの1種又は複数種の組み合わせを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記Al23を含有する担体におけるAl23の結晶形がγ、δ、θ、α又はこれらの結晶形の複数種の混合結晶形である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記Al23を含有する担体が球状、歯球状、円柱状、リング状、ストライブ状、クローバー状又は四葉のクローバー状である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体がヒドロキシ基含有2,2’−ビピリジン誘導体及び/又はヒドロキシ基含有3,3’−ビピリジン誘導体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体と、前記主活性成分としてのパラジウムイオン及び助活性成分としてのMn+イオンを含む混合溶液におけるパラジウム及びMとのモル比が1〜100:1である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記主活性成分としてのパラジウムイオン及び助活性成分としてのMn+イオンを含む混合溶液において、MがAgである場合、AgとPdとのモル比が0.4〜10:1であり、MがAuである場合、AuとPdとのモル比が0.5〜15:1であり、MがNiである場合、NiとPdとのモル比が0.4〜20:1であり、MがPbである場合、PbとPdとのモル比が1〜10:1であり、MがCuである場合、CuとPdとのモル比が1〜10:1である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記主活性成分としてのパラジウムイオン及び助活性成分としてのMn+イオンを含む混合溶液のpHが1.5〜4.0である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記パラジウム系担持型水素化触媒の使用前、一旦水素ガス含有ガスで還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒を得るステップをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載のパラジウム系担持型水素化触媒の製造方法により製造された、パラジウム系担持型水素化触媒であって、
前記パラジウム系担持型水素化触媒の質量を100%とすると、該触媒におけるPdの含有量が0.01〜0.8%であり、MがAgである場合、その含有量が0.03〜3%であり、MがAuである場合、その含有量が0.02〜0.25%であり、MがNiである場合、その含有量が0.04〜3%であり、MがPbである場合、その含有量が0.04〜3%であり、MがCuである場合、その含有量が0.02〜1%であり、該触媒の比表面積が1〜200m2/gであり、細孔容積が0.15〜0.8mL/gであり、嵩密度が0.5〜1.2g/cm3である、パラジウム系担持型水素化触媒
【請求項14】
請求項13に記載のパラジウム系担持型水素化触媒のアセチレン選択的水素化プロセスにおける利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化触媒の技術分野に関し、詳しくは、パラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンは、石油化学工業において最も重要な基礎原料の一種であり、各種のポリマーを合成するモノマーとして、一般には石油炭化水素(例えば、エタン、プロパン、ブタン、ナフサ及び軽油など)の水蒸気分解により取得される。このような方法により得られる、エチレンを主成分とするC2留分には、アセチレンが0.5%〜2.5%(モル分率)含有されている。アセチレンの存在により、エチレンの重合過程が複雑となり、またポリマー性能を劣化させる。高圧法でポリエチレンを生産する場合、アセチレンの蓄積により、爆発の虞が生じる。また、ポリエチレンを生産するときには、アセチレンの存在によって、重合触媒の活性を低下させ、触媒の消費量が増加する。このため、エチレンにおけるアセチレンがある程度以下に低減されなければ、ポリマーを合成するモノマーとして使うことができない。故に、エチレン工業上の主な生成物であるC2留分は、アルキン水素化精製をすることで、重合用の生産原料として、ポリエチレンなどの下流製品の生産に用いられることが可能である。
【0003】
現在、工業上には、選択的水素化法及び溶剤抽出法を採用してC2留分中のアセチレンを除去することは一般的である。溶剤抽出法は、精製エチレンを取得するとともに、製品のアセチレンを回収することができる一方、そのプロセスフローが複雑であり、作業が困難である。現在、アセチレンがエチレンに転換されるのに最も経済的且つ普及される方法は、触媒選択水素化方法である。
【0004】
エチレンの生産過程において、触媒選択水素化のプロセスは、一般にフロントエンド水素化プロセスとバックエンド水素化プロセスとに分けられる。フロントエンド水素化プロセスとバックエンド水素化プロセスとは、主に水素化反応器の位置によって分けられるものであり、水素化反応器が脱メタン塔の上流に位置するものがフロントエンド水素化プロセスと名付けられ、水素化反応器が脱メタン塔の下流に位置するものがバックエンド水素化プロセスと名付けられる。代表的なバックエンド水素化プロセスは、米ABB Lummus Global社によって開発された水素化プロセスであり、逐次分離フロー、即ち、メタン、エタンを順次に除去した後、C2留分のアセチレン水素化を行うフローを採用するものである。中国国内の初期導入されたエチレン生産システムには、バックエンド水素化プロセスが普及されている。フロントエンド水素化プロセスは、さらにフロントエンド脱エタンフロントエンド水素化とフロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化との2種類のプロセスに分けられ、それぞれドイツLinde Group社及び米Stone & Webster Engineering Corporation社により開発され、フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスは、水素化反応器が脱プロパン塔の下流且つ脱メタン塔の上流に設けられ、フロントエンド脱エタンフロントエンド水素化プロセスは、水素化反応器が脱エタン塔の下流且つ脱メタン塔の上流に設けられる。
【0005】
C2、C3留分に含まれるアルキンとジオレフィンは、通常、選択的水素化によって除去される。選択的水素化触媒は、貴金属(例えば、パラジウム)を多孔質の無機材担体に担持させたものである(例えば、US4762956に記載される)。US4404124では、活性成分シェル層を持つ選択的水素化触媒は、多段階含浸法によって製造され、エチレン中のアセチレン及びプロピレン中のプロピンとアレンを除去するためにC2、C3留分の選択的水素化に使用可能である。US5587348では、アルミナを担体とし、銀とパラジウムとを複合したうえでアルカリ金属のフッ素化物を添加することにより、性能に優れたアセチレン水素化触媒を製造した。該触媒は、グリーンオイルの生成量を低減し、エチレン選択性を向上し、酸素含有化合物の生成量を減少するという特徴を持つ。US5519566には、含浸液に有機又は無機還元剤を加えて銀・パラジウム二成分選択的水素化触媒を製造する、ウェット還元法で銀・パラジウム触媒を製造する方法が開示されている。
【0006】
上記の従来の選択的水素化触媒は、何れも含浸法により製造され、且つPdとAgとの2つの金属を活性成分としたものである。これらの方法には、以下の欠点がある。(1)担体の細孔構造の影響によって、活性成分の分散を精確に制御できず、ランダム性が高いこと、(2)含浸液の表面張力及び溶剤化効果の影響によって、金属活性成分の前駆体が凝集体として担体表面に堆積され、均一の分布にならないこと、及び(3)C2留分の水素化は触媒選択性への要求が高く、助活性成分としてのAgと主活性成分としてのPdとの相互作用は触媒選択性を向上する肝心な因子であり、従来方法で製造される触媒は、パラジウム塩溶液と銀塩溶液の表面張力が異なるため、担体上にPd、Agを同一の層に分布させることができず、Agの助剤としての効果が明らかではなく、Agの使用量を多くすることによりその助剤効果を促進しなければならないことから、水素の授受に支障をもたらし、オリゴマー化の可能性が増加し、ひいてはグリーンオイルの生成量が多くなり、触媒の寿命に影響すること。上記のような3つの問題点によって、金属活性成分の分散性が劣り、反応の選択性が低くなりがちであり、ひいては触媒の性能に影響を及ぼす。
【0007】
US4714692は、マイクロエマルジョンの方法で単一成分の貴金属触媒を製造した。このような方法で多成分触媒を製造する場合、依然として溶剤化効果による触媒活性成分分布への影響を避けることができない。
【0008】
CN102206130A及びCN102205243Aは、何れも担体に特定の高分子化合物を吸着させ、担体表面に高分子鎖被覆層を形成し、特定の官能基を有する化合物に担体上の高分子鎖とを反応させることにより活性成分と錯合可能な官能基を有させ、活性成分を担体表面官能基において錯形成反応を起こさせることで、活性成分の順番と高度分散を確保するものである。この2つの方法により触媒を製造する場合、担体への特定の高分子化合物の吸着は、担体であるアルミナのヒドロキシ基と高分子化合物との化学的な吸着によって実現され、担体による高分子化合物の吸着量はアルミナのヒドロキシ基の量によって制限される。官能化された高分子鎖は、パラジウムイオンとの錯形成作用が強くなく、活性成分の担持量が要求を満足しない場合もあるため、含浸液に一部の活性成分が残存され、触媒コストが上昇する。また、この2つの方法によりC2留分水素化触媒を製造するには、プロセスフローが複雑である欠点もある。
【0009】
CN104971698Aには、Rを含有するアルミナ成形体及びその製造方法並びにその利用が開示されている。そのうち、前記Rが1級アンモニウム塩、2級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩から選ばれる1種又は複数種であり、Xが塩素、臭素或ヨウ素から選ばれ、置換基が直鎖状または分枝状アルキルであってもよく、シクロアルキル、アリールであってもよく、ヒドロキシ基含有及び/又は複素シクロ置換基含有炭化水素基であってもよい。該アルミナ成形体の製造方法は、アルミナを含有する担体を成形し乾燥した後、オートクレーブに入れて、適量のR溶液によって室温で250℃まで熱処理し、温度を下げた後、40℃〜250℃で乾燥し、余分の溶剤を除去し、Rを含有する、比表面積が大きく細孔容積が大きいアルミナ担体を製造して得る。該担体は、特にMo−Ni系担持型水素化触媒の製造に好適に使用され、ガソリン、ディーゼルの水素化に用いられ、触媒水素化脱硫活性の向上に寄与する。しかし、Pd系貴金属触媒において、該方法で用られる有機物に塩素、臭素又はヨウ素が含有されるため、活性化後に触媒表面にCl、Br、Iのような強酸中心を形成しやすく、不飽和アルケン、アルキン、ジオレフィンを重合させ、「グリーンオイル」を多量に生成し、コークス化した触媒が大きく増加し、触媒使用寿命に影響を及ぼす。同時に、該方法で製造した担体は、比表面積が大きく、細孔容積が大きい担体であるため、シェル層分布のPd系触媒の製造に不適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような技術課題を解決するために、性能がより優れたパラジウム系担持型水素化触媒及びその製造方法、並びにその利用を提供することを目的とするものである。本発明にかかる触媒製造方法は、パラジウム原子ともう1つの金属原子を担体に高度に均一分散させることを可能とし、含浸液の表面張力及び溶剤化効果による活性成分の分散性への悪影響を克服することができる。
【0011】
上記の目的を達成するように、本発明は、まず、Alを含有する担体をヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液に含浸し、必要に応じて乾燥した後、さらに主活性成分としてのパラジウムイオン(即ち、2価のパラジウム陽イオン)及び助活性成分としてのMn+イオン(MがAg、Au、Ni、Pb及びCuから選ばれる1種である)を含む混合溶液に含浸し、さらに必要に応じて乾燥した後、焼成し、前記パラジウム系担持型水素化触媒を得るステップを含む、パラジウム系担持型水素化触媒の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の製造方法において、ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体とAlを含有する担体との間で強力な吸着を形成した後、さらに主活性成分としてのPd及び助活性成分としてのMの金属陽イオンと有機錯体を形成し、最後に活性成分が高度に分散されたPd−M担持型触媒を得る。
【0013】
より具体的には、本発明のパラジウム系担持型水素化触媒の製造方法は、
(1)Alを含有する担体をヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液に含浸し、必要に応じて乾燥(即ち、乾燥してもしなくてもよい)した後、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を形成するステップ、
(2)その後、パラジウムイオン及びMn+イオンを含む混合溶液で前記ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を含浸し、必要に応じて乾燥(即ち、乾燥してもしなくてもよい)した後、(Pd−M)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を形成するステップ、及び
(3)さらに前記(Pd−M)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を焼成し、前記のパラジウム系担持型水素化触媒を得るステップ、を含む。
【0014】
前記製造方法において、好ましくは、ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液における、Alを含有する担体の含浸(即ち、前記ステップ(1))が20℃〜60℃で行われ、含浸時間が2〜24時間である。その後の乾燥の温度が60℃〜150℃であってもよく、時間が2〜10時間であってもよい。
【0015】
前記製造方法において、好ましくは、パラジウムイオン及びMn+イオンを含む混合溶液における、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体の含浸(即ち、前記ステップ(2))が20℃〜100℃(好ましくは、30℃〜100℃)で行われ、含浸時間が2〜24時間である。その後の乾燥の温度が60℃〜150℃であってもよく、時間が2〜10時間であってもよい。
【0016】
前記製造方法において、好ましくは、前記焼成(即ち、前記ステップ(3))の温度が300℃〜600℃であり、時間が2〜12時間である。より好ましくは、前記焼成の温度が350℃〜600℃である。さらに、前記焼成は、酸素含有雰囲気で行われることが好ましい。
【0017】
前記製造方法において、好ましくは、使用するAlを含有する担体がアルミナ及び/又はアルミナとその他酸化物とを含有する混合物などを含む。ただし、前記その他の酸化物がシリカ、チタニア、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムなどの1種又は複数種の組み合わせを含んでもよい。さらに、担体におけるAlの結晶形がγ、δ、θ、α又はこれらの結晶形の複数種の混合結晶形であってもよく、好ましくは、θ、α又はこれらの混合結晶形である。
【0018】
前記製造方法において、好ましくは、使用するAlを含有する担体が球状、歯球状、円柱状、リング状、ストライブ状、クローバー状又は四葉のクローバー状などであってもよい。
【0019】
Al前記製造方法において、好ましくは、前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体がヒドロキシ基含有2,2’−ビピリジン誘導体及び/又はヒドロキシ基含有3,3’−ビピリジン誘導体である。より好ましくは、ヒドロキシ基含有2,2’−ビピリジン誘導体である。
【0020】
本発明の製造方法において、前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液における溶剤は、例えば、エタノール及び/又はジエチルエーテルなどの当分野において慣用の有機溶剤であってもよい。該溶剤は、前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を完全に溶解する働きを発揮し、それを担体に吸着させるのに有利である。該溶剤の使用量は特に制限されなく、前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を完全に溶解できればよい。
【0021】
前記製造方法において、好ましくは、前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体と、前記パラジウムイオン及びMn+イオンを含む混合溶液におけるPd及びMとのモル比が1〜100:1であり、より好ましくは、該モル比が5〜80:1であり、最も好ましくは、該モル比が20〜60:1である。
【0022】
前記製造方法において、好ましくは、前記パラジウムイオン及びMn+イオンを含む混合溶液が1種又は複数種のパラジウムの可溶性塩と、1種又は複数種のMの可溶性塩との混合溶液であってもよい。例えば、Pd(NOとM(NOとの混合溶液であってもよい。該混合溶液におけるパラジウム塩及びM塩の使用量は、触媒に必要なPd及びMの含有量によって決定される。好ましくは、MがAgである場合、該混合溶液におけるAgとPdとのモル比が0.4〜10:1であり、MがAuである場合、該混合溶液におけるAuとPdとのモル比が0.5〜15:1であり、MがNiである場合、該混合溶液におけるNiとPdとのモル比が0.4〜20:1であり、MがPbである場合、該混合溶液におけるPbとPdとのモル比が1〜10:1であり、MがCuである場合、該混合溶液におけるCuとPdとのモル比が1〜10:1である。
【0023】
前記製造方法において、好ましくは、前記パラジウムイオン及びMn+イオンを含有する混合溶液のpHが1.5〜4.0であり、より好ましくは、2.0〜4.0である。該混合溶液のpHを慣用のpH調整剤によって調整することができる。
【0024】
本発明の好ましい一態様において、該パラジウム系担持型水素化触媒の製造方法は、以下のステップを含んでもよい。
【0025】
ステップ(1):ヒドロキシビピリジン/Al前駆体の製造
Alを含有する担体をヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液に含浸し、20℃〜60℃で2〜24時間反応させ、その後、必要に応じて反応生成物を60℃〜150℃で2〜10時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得る。そのなかでも、好ましくは、前記ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を含む有機溶液の体積が前記Alを含有する担体の体積の80%以上(80%を含む)である。
【0026】
ステップ(2):(Pd−M)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体の製造
ステップ(1)で製造されたヒドロキシビピリジン/Al前駆体をpH1.5〜4.0のパラジウムイオン及びMn+イオンを含む混合溶液に含浸し、30℃〜100℃で2〜24時間反応させ、その後、必要に応じて反応生成物を60℃〜150℃で2〜10時間乾燥し、(Pd−M)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(ヒドロキシビピリジンと(Pd+M)とのモル比が1〜100:1であり、好ましくは、5〜80:1であり、より好ましくは、20〜60:1である)を得る。そのなかでも、好ましくは、前記混合溶液の体積が前記ヒドロキシビピリジン/Al前駆体の体積の60%〜200%である。
【0027】
ステップ(3):パラジウム系担持型水素化触媒の製造
ステップ(2)で製造された(Pd−M)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を300〜600℃で2〜12時間焼成し、前記パラジウム系担持型水素化触媒を得る。
【0028】
本発明の一態様において、上記のパラジウム系担持型水素化触媒の製造方法は、該パラジウム系担持型水素化触媒の使用前、一旦水素ガス含有ガスで還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒を得るステップをさらに含む。
【0029】
本発明の製造方法において、まず、Alを含有する担体のAl−O結合によって、ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体のヒドロキシ基を強く吸着することで、ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体を担体に担持させ、官能化された分子鎖が担持した前駆体を得る。その後、該前駆体におけるヒドロキシ基ビピリジン由来の残りのヒドロキシ基(即ち、Al−O結合と吸着した後に残ったヒドロキシ基)及び/又は窒素含有基を、パラジウムイオン及びMn+イオンと錯形成反応を起こさせることにより、担体上に吸着した分子鎖にパラジウムイオン及びMn+イオンを結合させる。この錯形成反応は、錯体基−金属イオンのin−situ反応であり、金属イオンが物理的吸着ではなく化学反応によって分子鎖に結合されているため、PdとMの原子が分子鎖において均一の秩序分布をしており、分子鎖に結合されるPd原子及びM原子の数と分子鎖におけるヒドロキシ基及び窒素含有基の数とは正比例している。その後、焼成過程において、Pd原子及びM原子はin−situで酸化反応し、Pd−M共晶複合金属酸化物を形成することにより、パラジウム系二金属担持型水素化触媒を製造して得る。
【0030】
本発明にかかる製造方法は、主として以下の利点を有する。まず、ヒドロキシ基含有ビピリジン誘導体におけるヒドロキシ基は、Alを含有する担体におけるAl−O結合によって強く吸着されるため、担体によるヒドロキシ基ビピリジンの吸着量を効果的に確保でき、溶液中のヒドロキシ基ビピリジンの損失を避けることができる。さらに、担体に吸着されるヒドロキシ基ビピリジンのヒドロキシ基及び窒素含有基は主活性成分であるPd及び助活性成分であるMとの錯形成能力が強いため、溶液中のパラジウムイオン及びMn+イオンを完全に反応させることを確保し、溶液中の活性成分であるPd及びMの損失を避け、生産コストを低減し、且つ金属原子を担体上に高度に均一分散させることができる。同時に、該製造方法は、含浸液表面張力及び溶剤化効果によるPd及びMの担体上の分散への悪影響を克服する。本発明の製造方法で製造される触媒は、優れた水素化活性、エチレン選択性及び耐コークス化性能を持っている。
【0031】
一方、本発明は、上記のパラジウム系担持型水素化触媒の製造方法により製造されたパラジウム系担持型水素化触媒を提供する。該触媒は、優れた活性、選択性及び耐コークス化性能を持っている。
【0032】
本発明の一態様によれば、前記パラジウム系担持型水素化触媒の質量を100%とすると、該触媒におけるPdの含有量が0.01〜0.8%であり、MがAgである場合、その含有量が0.03〜3%であり、MがAuである場合、その含有量が0.02〜0.25%であり、MがNiである場合、その含有量が0.04〜3%であり、MがPbである場合、その含有量が0.04〜3%であり、MがCuである場合、その含有量が0.02〜1%であることが好ましい。
【0033】
本発明の一態様によれば、前記パラジウム系担持型水素化触媒の比表面積が1〜200m/gであり、細孔容積が0.15〜0.8mL/gであり、嵩密度が0.5〜1.2g/cmであることが好ましい。
【0034】
さらに、本発明は、前記パラジウム系担持型水素化触媒のアセチレン選択的水素化プロセスにおける利用を提供する。
【0035】
前記利用において、前記アセチレン選択的水素化プロセスが微量のアセチレンの選択的水素化プロセスであることが好ましい。
【0036】
前記利用において、前記アセチレン選択的水素化プロセスには、C2留分フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセス、C2留分フロントエンド脱エタンフロントエンド水素化プロセス、C2留分バックエンド水素化プロセス、エチレンを精製して重合用エチレンを製造する過程中のアセチレン選択的水素化プロセス、及びメタノールからオレフィンを製造する過程中のアセチレン選択的水素化プロセスが含まれることが好ましい。
【0037】
以上のように、本発明にかかる触媒製造方法は、Pd原子及びM原子を担体上に高度に均一分散させ、含浸液表面張力及び溶剤化効果による活性成分の分散性への悪影響を克服する。本発明にかかるパラジウム系担持型水素化触媒は、優れた水素化活性、エチレン選択性及び耐コークス化性能を持ち、微量のアセチレンの選択的水素化の触媒に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】逐次分離フローを利用したC2留分バックエンド水素化プロセスのフロー図。
図2】C2留分フロントエンド脱エタンフロントエンド水素化プロセスのフロー図。
図3】C2留分フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスのフロー図。
図4】逐次分離フローを利用したエチレン精製プロセスのフロー図。
図5】フロントエンド脱エタンフロントエンド水素化プロセスフローを利用したエチレン精製プロセスのフロー図。
図6】逐次分離フローを利用した、メタノールからオレフィンを製造する(MTO)プロセスのフロー図。
図7】フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスフローを利用したエチレン精製プロセスのフロー図。
図8】フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスフローを利用した、メタノールからオレフィンを製造する(MTO)プロセスのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
分析測定方法
比表面積:規格GB/T−5816に準じる。
細孔容積:規格GB/T−5816に準じる。
嵩密度:規格Q/SY142−2006に準じる。
触媒におけるPd、Ag、Au、Ni、Cu又はPbの含有量:プラズマ発光分光光度計若しくは原子吸光分光光度計を利用する(規格GB/T 1537−94に準じる)。
エチレン選択性=(反応後エチレンのモルパーセント含有量−反応前エチレンのモルパーセント含有量)/(反応前アセチレンのモルパーセント含有量−反応後アセチレンのモルパーセント含有量)。
【0040】
実施例1
Φ3.5mm、比表面積20.0m/g、細孔容積0.48mL/g、嵩密度0.82g/cmの球状α−Al担体を500g秤取した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜50nm、300〜500nmの細孔径である。
4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン34.12gをエタノール650mLに溶解させ、溶液を得た。上記の担体を該溶液に含浸し、2時間静置し、溶液中の4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を60℃で10時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.37g、AgNO0.79gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpHを3.5に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、10分間撹拌した後、2時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、(Pd−Ag)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Ag)とのモル比が30である)を得た。
上記の(Pd−Ag)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を550℃、大気雰囲気中で3時間焼成し、(Pd−Ag)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ag)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−1を得た。該触媒S−1におけるPdの含有量が0.03wt.%と、Agの含有量が0.10wt.%と測定された。
【0041】
比較例1
Φ3.5mm、比表面積20.0m/g、細孔容積0.48mL/g、嵩密度0.82g/cmの球状α−Al担体を500g秤取した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜50nm、300〜500nmの細孔径である。
ポリクロロエチレン(PVC)8.9gをテトラヒドロフラン(THF)800mLに溶解させ、溶液を得た。上記の担体を該溶液に含浸し、2時間静置し、溶液中のPVCを担体の表面に吸着させ、固体反応生成物を60℃で10時間乾燥し、PVC/Al前駆体を得た。
ジシアノジアミド19.28g、NaCO4.0gを加熱下で脱イオン水1000mLに溶解させ、さらに上記PVC/Al前駆体を添加し、1時間還流して反応させた。室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後60℃で10時間乾燥し、官能化されたPVC/Al前駆体を得た。
Pd(NO)0.37g、AgNO0.79gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH3.5に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたPVC/Al前駆体を該混合溶液に添加し、0.5時間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後120℃で4時間乾燥し、(Pd−Ag)−PVC/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Ag)−PVC/Al前駆体を550℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Ag)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ag)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−1を得た。該触媒D−1におけるPdの含有量が0.03wt.%と、Agの含有量が0.10wt.%と測定された。
【0042】
触媒の適用
実施例1と比較例1で製造された触媒は、それぞれ逐次分離フローを利用したC2留分バックエンド水素化プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図1に示されるように、石油炭化水素の水蒸気分解により得られるC2留分を順次に油洗浄塔1、水洗浄塔2、アルカリ洗浄塔3、乾燥器4、脱メタン塔5、脱エタン塔6を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、さらにC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。ただし、水洗浄塔2とアルカリ洗浄塔3との間、及び脱メタン塔5と脱エタン塔6との間に圧縮機8を設置する。
2つのC2水素化反応器を直列して反応させ、即ち、1段目の反応器の出口物質が2段目の反応器に入るようにする。反応器ごとに独立の配気システムが設置され、両反応器はともに固定床断熱反応器である。
C2水素化反応器に入って処理されるC2物質の組成は、体積パーセント含有量でC1.58%、C81.55%及びC16.87%である。
反応条件は、物質ガス空間速度を2000h−1とし、反応圧力を1.7MPaとし、両反応器の触媒充填量をともに450mLとし、1段目の反応器におけるH/C=1.5:1(モル比)であり、2段目の反応器におけるH/C=3:1(モル比)であり、500時間反応した。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例2
Φ2.5mm、比表面積50m/g、細孔容積0.75mL/gの球状担体を500g秤取した。該担体はθ−Al440g、チタニア60gを含有する。
4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン6.82gをエタノール600mLに溶解させ、溶液を得た。上記の担体を該溶液に含浸し、8時間静置し、溶液中の4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を110℃で6時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
塩化パラジウム0.38g、クロロ金酸1.72gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに塩酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、1時間撹拌した後、8時間静置し、残存液をデカンテーションし、(Pd−Au)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Au)とのモル比が5.03である)を得た。
上記の(Pd−Au)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を500℃、大気雰囲気中で6時間焼成し、(Pd−Au)/Al触媒S−2を得た。該触媒S−2におけるPdの含有量が0.045wt.%と、Auの含有量が0.20wt.%と測定された。
【0045】
比較例2
Φ2.5mm、比表面積50m/g、細孔容積0.75mL/gの球状担体を500g秤取した。該担体はθ−Al440g、チタニア60gを含有する。
ポリスチレンアクリロニトリル(SAN)2.2gをジメチルホルムアミド(DMF)600mLに添加し、室温でSANが完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。上記の担体を該溶液に添加し、十分に撹拌した後、1時間静置し、固体反応生成物を120℃で6時間乾燥し、SAN/Al前駆体を得た。
上記のSAN/Al前駆体を脱イオン水1000mLに添加し、さらにエチレンジアミン57.6gを添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、1時間還流して反応させた。室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後80℃で5時間乾燥し、官能化されたSAN/Al前駆体を得た。
塩化パラジウム0.38g、クロロ金酸1.72gを脱イオン水1200mLに溶解させ、さらに塩酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたSAN/Al前駆体を該混合溶液に添加し、2時間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、(Pd−Au)−SAN/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Au)−SAN/Al前駆体を380℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Au)/Al触媒D−2を得た。該触媒D−2におけるPdの含有量が0.045wt.%、Auの含有量が0.20wt.%と測定された。
【0046】
触媒の適用
実施例2と比較例2で製造された触媒は、それぞれ逐次分離フローを利用したC2留分バックエンド水素化プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図を図1に示す。
2つのC2水素化反応器を直列して反応させ、即ち、1段目の反応器の出口物質が2段目の反応器に入るようにする。反応器ごとに独立の配気システムが設置され、両反応器はともに固定床断熱反応器である。
C2水素化反応器に入って処理されるC2物質の組成は、体積パーセント含有量でC1.7%、C74.3%及びC24.0%である。
反応条件は、物質ガス空間速度を4000h−1とし、反応圧力を1.2MPaとし、両反応器の触媒充填量をともに500mLとし、1段目の反応器におけるH/C=1.6:1(モル比)であり、2段目の反応器におけるH/C=2.8:1(モル比)であり、1000時間反応した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例3
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積17m/g、細孔容積0.33mL/gの円柱状担体を500g秤取した。該担体はα−Al400g、酸化マグネシウム100gを含有する。
6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジン82.65gをエタノール650mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、12時間静置し、溶液中の6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.68g、Ni(NO・6HO 2.43gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpHを3.4に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、60分間撹拌した後、10時間静置し、残存液をデカンテーションし、(Pd−Ni)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Ni)とのモル比が40である)を得た。
上記の(Pd−Ni)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で8時間焼成し、(Pd−Ni)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ni)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−3を得た。該触媒S−3におけるPdの含有量が0.056wt.%と、Niの含有量が0.098wt.%と測定された。
【0049】
比較例3
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積17m/g、細孔容積0.33mL/gの円柱状担体を500g秤取した。該担体は、α−Al400g、酸化マグネシウム100gを含有する。
ポリクロロエチレン(PVC)8.9gをテトラヒドロフラン(THF)800mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、2時間静置し、溶液中のPVCを担体の表面に吸着させ、固体反応生成物を60℃で10時間乾燥し、PVC/Al前駆体を得た。
ジシアノジアミド19.28g、NaCO4.0gを加熱下で脱イオン水1000mLに溶解させ、さらに上記のPVC/Al前駆体を添加し、1時間還流して反応させた。室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後60℃で10時間乾燥し、官能化されたPVC/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.68g、Ni(NO・6HO 2.43gを脱イオン水2400mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH3.4に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたPVC/Al前駆体を該混合溶液に添加し、0.5時間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後120℃で4時間乾燥し、(Pd−Ni)−PVC/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Ni)−PVC/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で8時間焼成し、(Pd−Ni)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ni)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−3を得た。該触媒D−3におけるPdの含有量が0.056wt.%と、Niの含有量が0.098wt.%と測定された。
【0050】
触媒の適用
実施例3と比較例3で製造された触媒は、それぞれC2留分フロントエンド脱エタンフロントエンド水素化プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図2に示されるように、石油炭化水素水蒸気分解により得られるC2留分を順次に油洗浄塔1、水洗浄塔2、アルカリ洗浄塔3、乾燥器4、脱エタン塔6を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、さらにC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。その後、脱メタン塔5に導入して処理する。ただし、水洗浄塔2とアルカリ洗浄塔3との間、及び脱エタン塔6とC2水素化反応器7との間に圧縮機8を設置する。
1つのC2水素化反応器で反応させる。該反応器には、配気システムが設置され、該反応器は固定床断熱反応器である。
反応物質は脱エタン塔の塔頂からのものであり、その組成は表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
反応条件は、物質ガス空間速度を7000h−1とし、反応圧力を3.0MPaとし、反応器の触媒充填量を500mLとし、500時間反応した。結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
実施例4
Φ2.4mm、比表面積18.0m/g、細孔容積0.16mL/gの球状α−Al担体を500g秤取した。
4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン53.26gをエタノール600mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、16時間静置し、溶液中の4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を120℃で5時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.61g、Pb(NO3.90gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpHを3.5に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、10分間撹拌した後、12時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を90℃で8時間乾燥し、(Pd−Pb)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Pb)とのモル比が20である)を得た。
上記の(Pd−Pb)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で8時間焼成し、(Pd−Pb)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Pb)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、N:Hのモル比が1:1の混合ガスにより、200h−1の空間速度、115℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−4を得た。該触媒S−4におけるPdの含有量が0.05wt.%と、Pbの含有量が0.48wt.%と測定された。
【0055】
比較例4
Φ2.4mm、比表面積18.0m/g、細孔容積0.16mL/gの球状α−Al担体を500g秤取した。
ポリスチレンアクリロニトリル(SAN)3.3gをジメチルホルムアミド(DMF)600mLに添加し、室温でSANが完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。上記の担体を該溶液に添加し、十分に撹拌した後、1時間静置し、固体反応生成物を120℃で6時間乾燥し、SAN/Al前駆体を得た。
上記のSAN/Al前駆体を脱イオン水1000mLに添加し、さらにエチレンジアミン85.2gを添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、1時間還流して反応させた。室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後80℃で5時間乾燥し、官能化されたSAN/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.61g、Pb(NO3.90gを脱イオン水1200mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpHを2.7に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたSAN/Al前駆体を該混合溶液に添加し、2時間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、(Pd−Pb)−SAN/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Pb)−SAN/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で8時間焼成し、(Pd−Pb)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Pb)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、N:Hのモル比が1:1の混合ガスにより、200h−1の空間速度、115℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−4を得た。該触媒D−4におけるPdの含有量が0.05wt.%と、Pbの含有量が0.48wt.%と測定された。
【0056】
触媒の適用
実施例4と比較例4で製造された触媒は、それぞれC2留分フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図3に概略に示されるように、石油炭化水素水蒸気分解により得られるC2留分を順次に油洗浄塔1、水洗浄塔2、アルカリ洗浄塔3、乾燥器4、脱プロパン塔11を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、さらにC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。その後、脱メタン塔5に導入して処理する。ただし、水洗浄塔2とアルカリ洗浄塔3との間、及び脱プロパン塔11とC2水素化反応器7との間に圧縮機8を設置する。
2つのC2水素化反応器を直列して反応させ、即ち、1段目の反応器の出口物質が2段目の反応器に入るようにする。反応器ごとに独立の配気システムが設置され、両反応器はともに固定床断熱反応器である。
反応物質は脱プロパン塔の塔頂からのものであり、その組成は表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
反応条件は、物質ガス空間速度を4000h−1とし、反応圧力を3.5MPaとし、両反応器の触媒充填量をともに500mLとし、200時間反応した。結果を表6に示す。
【0059】
【表6】
【0060】
実施例5
Φ4.2mm、比表面積45.0m/g、細孔容積0.35ml/g、嵩密度0.77g/cmの歯球状担体を500g秤取した。該担体はθ−Al460g、チタニア40gを含有する。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜35nm、200〜450nmの細孔径である。
6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジン15.79gをエタノール650mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、12時間静置し、溶液中の6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.25g、Cu(NO0.59gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.1に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、1時間撹拌した後、8時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を100℃で8時間乾燥し、(Pd−Cu)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Cu)とのモル比が20である)を得た。
上記の(Pd−Cu)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で6時間焼成し、(Pd+Cu)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Cu)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−5を得た。該触媒S−5におけるPd含有量が0.02wt.%と、Cu含有量が0.04wt.%と測定された。
【0061】
比較例5
Φ4.2mm、比表面積45.0m/g、細孔容積0.35mL/g、嵩密度0.77g/cmの歯球状担体を500g秤取した。該担体はθ−Al460g、チタニア40gを含有する。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜35nm、200〜450nmの細孔径である。
塩化ポリエチレン(CPE)16.0gをテトラヒドロフラン(THF)800mLに溶解させ、その後、ジシアノジアミド480g及びNaCO4.0gを添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、還流して2時間反応させた。室温まで冷却した後、反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、官能化されたCPE溶液を得た。
Pd(NO0.25g、Cu(NO0.59g及び硝酸1mLを上記の官能化されたCPE溶液に添加し、1時間撹拌し、(Pd−Cu)−CPE前駆体溶液を得た。
上記の担体を上記の(Pd−Cu)−CPE前駆体溶液に添加し、十分に撹拌した後、4時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後、100℃で8時間乾燥し、(Pd−Cu)−CPE/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Cu)−CPE/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で8時間焼成し、(Pd−Cu)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Cu)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−5を得た。該触媒D−5におけるPdの含有量が0.02wt.%と、Cu含有量が0.04wt.%と測定された。
【0062】
触媒の適用
実施例5と比較例5で製造された触媒は、それぞれC2留分フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図を図3に概略的に示す。
2つのC2水素化反応器を直列して反応させ、即ち、1段目の反応器の出口物質が2段目の反応器に入るようにする。反応器ごとに独立の配気システムが設置され、両反応器はともに固定床断熱反応器である。
反応物質は脱プロパン塔の塔頂からのものであり、その組成は表7に示す。
【0063】
【表7】
【0064】
反応条件は、物質ガス空間速度を8000h−1とし、反応圧力を3.6MPaとし、両反応器の触媒充填量をともに500mLとし、1000時間反応した。結果を表8に示す。
【0065】
【表8】
【0066】
実施例6
Φ4.0mm、比表面積20.0m/g、細孔容積0.48mL/g、嵩密度0.87g/cmの球状α−Al担体を500g秤取した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜50nm、300〜500nmの細孔径である。
4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン167.81gをエタノール650mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、2時間静置し、溶液中の4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンを完全にAl担体上に担持させた後、固体反応生成物を60℃で10時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.49g、AgNO1.57gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.7に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、10分間撹拌した後、2時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、(Pd−Ag)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Ag)とのモル比が80である)を得た。
上記の(Pd−Ag)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を550℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Ag)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ag)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−6を得た。該触媒S−6におけるPdの含有量が0.04wt.%と、Agの含有量が0.20wt.%と測定された。
【0067】
比較例6
Φ4.0mm、比表面積20.0m/g、細孔容積0.48mL/g、嵩密度0.87g/cmの球状α−Al担体を500g秤取した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜50nm、300〜500nmの細孔径である。
ポリクロロエチレン(PVC)8.9gをテトラヒドロフラン(THF)800mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、2時間静置し、溶液中のPVCを担体の表面に吸着させ、固体反応生成物を90℃で6時間乾燥し、PVC/Al前駆体を得た。
ジシアノジアミド119.28g、NaCO4.0gを加熱下で脱イオン水1000mLに溶解させ、さらに上記のPVC/Al前駆体を添加し、1時間還流して反応させた。室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後60℃で10時間乾燥し、官能化されたPVC/Al前駆体を得た。
Pd(NO)0.49g、AgNO1.57gを脱イオン水200mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.7に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたPVC/Al前駆体を該混合溶液に添加し、0.5時間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後120℃で4時間乾燥し、(Pd−Ag)−PVC/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Ag)−PVC/Al前駆体を550℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Ag)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ag)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−6を得た。該触媒D−6におけるPdの含有量が0.038wt.%と、Agの含有量が0.19wt.%と測定された。
【0068】
触媒の適用
実施例6と比較例6で製造された触媒は、それぞれ逐次分離フローを利用したエチレン精製プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図4に示されるように、石油炭化水素水蒸気分解により得られるC2留分を順次に油洗浄塔1、水洗浄塔2、アルカリ洗浄塔3、乾燥器4、脱メタン塔5、脱エタン塔6を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、さらにC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。その後、順次にエチレン精留塔9、エチレン精製反応器10を経て処理した。ただし、水洗浄塔2とアルカリ洗浄塔3との間、及び脱メタン塔5と脱エタン塔6との間に圧縮機8を設置する。
1つのC2水素化反応器で反応させる。該反応器には、配気システムが設置され、該反応器は固定床断熱反応器である。
C2水素化反応器に入った反応物質におけるCの含有量が5μL/Lである。
反応条件は、物質ガス空間速度を2500h−1とし、反応圧力を2.0MPaとし、反応器触媒充填量を200mLとし、反応器中のH含有量を10μL/Lとし、500時間反応した。結果を表9に示す。
【0069】
【表9】
【0070】
実施例7
Φ3.5mm、高さ3.5mm、比表面積47.0m/g、細孔容積0.30mL/g、嵩密度0.70g/cmの円柱状δ−Al担体を500g秤取した。該担体は、アルカリ土類金属元素であるMgにより変性された後のMg含有量が0.35wt.%である。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜30nm、100〜450nmの細孔径である。
4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン5.30gをエタノール600mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、10時間静置し、溶液中の4,4’−ジヒドロキシ−2,2−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を100℃で6時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.61g、クロロ金酸0.21gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH3.0に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、1時間撹拌した後、10時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を90℃で10時間乾燥し、(Pd−Au)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Au)とのモル比が10である)を得た。
上記の(Pd−Au)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を600℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Au)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Au)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−7を得た。該触媒S−7におけるPdの含有量が0.05wt.%と、Auの含有量が0.02wt.%と測定された。
【0071】
比較例7
Φ3.5mm、高さ3.5mm、比表面積47.0m/g、細孔容積0.30mL/g、嵩密度0.70g/CMの円柱状δ−Al担体を500g秤取した。該担体は、アルカリ土類金属元素であるMgにより変性された後のMg含有量が0.35wt.%である。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜30nm、100〜450nmの細孔径である。
Pd(NO0.61gを脱イオン水300mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、5分間撹拌した後、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を110℃で6時間乾燥し、Pd/Al前駆体を得た。
クロロ金酸0.21gを脱イオン水600mLに溶解させ、溶液を得た。上記のPd/Al前駆体を該溶液に添加し、5分間撹拌した後、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を110℃で6時間乾燥し、その後500℃、大気雰囲気中で4時間焼成し、(Pd−Au)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Au)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−7を得た。該触媒D−7におけるPdの含有量が0.05wt.%と、Auの含有量が0.02wt.%と測定された。
【0072】
触媒の適用
実施例7と比較例7で製造された触媒は、それぞれフロントエンド脱エタンフロントエンド水素化プロセスフローを利用したエチレン精製プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図5に示されるように、石油炭化水素水蒸気分解により得られるC2留分を順次に油洗浄塔1、水洗浄塔2、アルカリ洗浄塔3、乾燥器4、脱エタン塔6を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、さらにC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。その後、順次に脱メタン塔5、エチレン精留塔9、エチレン精製反応器10を経て処理する。だだし、水洗浄塔2とアルカリ洗浄塔3との間、及び脱エタン塔6とC2水素化反応器7との間に圧縮機8を設置する。
1つのC2水素化反応器で反応させる。該反応器には、配気システムが設置され、該反応器は固定床断熱反応器である。
C2水素化反応器に入った反応物質におけるCの含有量が15μL/Lであった。
反応条件は、物質ガス空間速度を8000h−1とし、反応圧力を1.8MPaとし、反応器の触媒充填量を500mLとし、反応器中のH/C=5:1(モル比)であり、100時間反応した。結果を表10に示す。
【0073】
【表10】
【0074】
実施例8
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積50.0m/g、細孔容積0.31mL/g、嵩密度0.73g/cmの円柱状θ−Al担体を500g秤取した。該担体は、アルカリ土類金属元素であるMgにより変性された後のMg含有量が0.15wt.%である。担体細孔径は、20〜220nmである。
4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン130.79gをエタノール650mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、8時間静置し、溶液中の4,4’ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を90℃で8時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO1.03g、Ni(NO・6HO 6.94gを脱イオン水500mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、1時間撹拌した後、8時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を110℃で6時間乾燥し、(Pd−Ni)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Ni)とのモル比が25である)を得た。
上記の(Pd−Ni)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を500℃、大気雰囲気中で4時間焼成し、(Pd−Ni)/Al触媒を得た。
上記の(Pd+Ni)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−8を得た。該触媒S−8におけるPdの含有量が0.084%と、Ni含有量が0.28wt.%と測定された。
【0075】
比較例8
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積50.0m/g、細孔容積0.31mL/g、嵩密度0.73g/cmの円柱状θ−Al担体を500g秤取した。該担体は、アルカリ土類金属元素であるMgにより変性された後のMg含有量が0.15wt.%である。担体細孔径は、20〜220nmである。
ポリスチレンアクリロニトリル(SAN)2.2gをジメチルホルムアミド(DMF)600mLに添加し、室温でSANが完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。上記の担体を該溶液に添加し、十分に撹拌した後、1時間静置し、固体反応生成物を80℃で5時間乾燥し、SAN/Al前駆体を得た。
上記のSAN/Al前駆体を脱イオン水1000mLに添加し、さらにエチレンジアミン57.6gを添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、還流して4時間反応させ、室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後80℃で5時間乾燥し、官能化されたSAN/Al前駆体を得た。
Pd(NO1.03g、Ni(NO・6HO6.94gを脱イオン水500mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたSAN/Al前駆体を該混合溶液に添加し、5分間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後100℃で3時間乾燥し、(Pd−Ni)−SAN/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Ni)−SAN/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で4時間焼成し、(Pd−Ni)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ni)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−8を得た。該触媒D−8におけるPdの含有量が0.084wt.%と、Niの含有量が0.28wt.%と測定された。
【0076】
触媒の適用
実施例8と比較例8で製造された触媒は、それぞれ逐次分離フローを利用した、メタノールからオレフィンを製造する(MTO)プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図6に示されるように、メタノールからエチレンを製造する反応器13で製造された製品を順次に分離器15、アルカリ洗浄塔3、乾燥器4、脱メタン塔5、脱エタン塔6を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、脱エタン塔6の塔頂生成物をC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。その後、エチレン精製反応器10に導入して処理する。脱エタン塔6の塔底生成物を順次にプロピレン精留塔12、脱プロパン塔11に導入して処理する。ただし、メタノールからエチレンを製造する反応器13は再生器14とも接続している。
1つのC2水素化反応器で反応させる。該反応器には、配気システムが設置され、該反応器は固定床断熱反応器である。
C2水素化反応器に入った反応物質におけるCの含有量が10μL/Lであった。
反応条件は、物質ガス空間速度を6000h−1とし、反応圧力を2.0MPaとし、反応器の触媒充填量を300mLとし、反応器中のH/C=5:1(モル比)であり、500時間反応した。結果を表11に示す。
【0077】
【表11】
【0078】
実施例9
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積48.0m/g、細孔容積0.32mL/g、嵩密度0.73g/cmの円柱状Al担体を500g秤取した。Alは、δとθとの混合結晶形である。該担体は、アルカリ金属元素であるNaにより変性された後のNa含有量が0.12wt.%である。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜35nm、200〜450nmの細孔径である。
4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジン106.52gをエタノール600mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、8時間静置し、溶液中の4,4’ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンを完全にAl担体上に担持させた後、固体反応生成物を90℃で8時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.49g、Cu(NO1.77gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、1時間撹拌した後、8時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を110℃で8時間乾燥し、(Pd−Cu)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Cu)とのモル比が50である)を得た。
上記の(Pd−Cu)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を500℃、大気雰囲気中で4時間焼成し、(Pd−Cu)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Cu)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−9を得た。該触媒S−9におけるPdの含有量が0.04wt.%と、Cuの含有量が0.12wt.%と測定された。
【0079】
比較例9
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積48.0m/g、細孔容積0.32mL/g、嵩密度0.73g/cmの円柱状Al担体を500g秤取した。Alは、δとθとの混合結晶形である。該担体は、アルカリ金属元素であるNaにより変性された後のNa含有量が0.12wt.%である。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ20〜35nm、200〜450nmの細孔径である。
ポリスチレンアクリロニトリル(SAN)2.2gをジメチルホルムアミド(DMF)600mLに添加し、室温でSANが完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。上記の担体を該溶液に添加し、十分に撹拌した後、1時間静置し、固体反応生成物を70℃で5時間乾燥し、SAN/Al前駆体を得た。
上記のSAN/Al前駆体を脱イオン水1000mLに添加し、さらにエチレンジアミン57.6gを添加し、完全に溶解するまで撹拌した後、還流して4時間反応させた。室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後80℃で3時間乾燥し、官能化されたSAN/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.49g、Cu(NO1.77gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたSAN/Al前駆体を該混合溶液に添加し、5分間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後120℃で5時間乾燥し、(Pd−Cu)−SAN/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Cu)−SAN/Al前駆体を500℃、大気雰囲気中で4時間焼成し、(Pd−Cu)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Cu)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−9を得た。該触媒D−9におけるPdの含有量が0.04wt.%と、Cuの含有量が0.12wt.%と測定された。
【0080】
触媒の適用
実施例9と比較例9で製造された触媒は、それぞれフロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスフローを利用したエチレン精製プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図7に示されるように、石油炭化水素水蒸気分解により得られるC2留分を順次に油洗浄塔1、水洗浄塔2、アルカリ洗浄塔3、乾燥器4、脱プロパン塔11を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、さらにC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。その後、順次に脱メタン塔5、脱エタン塔6、エチレン精留塔9、エチレン精製反応器10を経て処理する。ただし、水洗浄塔2とアルカリ洗浄塔3との間、及び脱プロパン塔11とC2水素化反応器7との間に圧縮機8を設置する。
1つのC2水素化反応器で反応させる。該反応器には、配気システムが設置され、該反応器は固定床断熱反応器である。
C2水素化反応器に入った反応物質におけるCの含有量が12μL/Lであった。
反応条件は、物質ガス空間速度を20000h−1とし、反応圧力を2.0MPaとし、反応器の触媒充填量を500mLとし、反応器中のH/C=5.6:1(モル比)であり、1000時間反応した。結果を表12に示す。
【0081】
【表12】
【0082】
実施例10
Φ4.0mm、比表面積20.0m/g、細孔容積0.52mL/g、嵩密度0.85g/cmの球状α−Al担体を500g秤取した。担体細孔径は80〜350nmである。
6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジン69.5gをエタノール700mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、2時間静置し、溶液中の6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を60℃で10時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.49g、Pb(NO1.82gを溶解させ脱イオン水600mLにおいて、さらに硝酸を適量添加してpH2.7に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、10分間撹拌した後、2時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、(Pd−Pb)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Pb)とのモル比が20である)を得た。
上記の(Pd−Pb)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を550℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Pb)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Pb)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−10を得た。該触媒S−10におけるPdの含有量が0.04wt.%と、Pbの含有量が0.23wt.%と測定された。
【0083】
比較例10
Φ4.0mm、比表面積20.0m/g、細孔容積0.52mL/g、嵩密度0.85g/cmの球状α−Al担体を500g秤取した。担体細孔径は80〜350nmである。
ポリクロロエチレン(PVC)8.9gをテトラヒドロフラン(THF)800mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、2時間静置し、溶液中のPVCを担体表面に吸着させた。固体反応生成物を100℃で3時間乾燥し、PVC/Al前駆体を得た。
ジシアノジアミド119.28g、NaCO4.0gを加熱下で脱イオン水1000mLに溶解させ、さらに上記のPVC/Al前駆体を添加し、1時間還流して反応させた。室温まで冷却した後、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後60℃で10時間乾燥し、官能化されたPVC/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.49g、Pb(NO1.82gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記の官能化されたPVC/Al前駆体を該混合溶液に添加し、0.5時間撹拌し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を脱イオン水で中性になるまで洗浄し、その後120℃で4時間乾燥し、(Pd−Pb)−PVC/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Pb)−PVC/Al前駆体を550℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Pb)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Pb)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより200h−1の空間速度、120℃で該触媒を3時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−10を得た。該触媒D−10におけるPdの含有量が0.04wt.%と、Pbの含有量が0.23wt.%と測定された。
【0084】
触媒の適用
実施例10と比較例10で製造された触媒は、それぞれフロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスフローを利用した、メタノールからオレフィンを製造する(MTO)プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図は、図8に示されるように、メタノールを順次にメタノール脱水によるジメチルエーテル製造反応器(即ち、DME反応器)16、メタノールからプロピレンを製造する反応器(即ち、MTP反応器)17、予備急冷分離器18、急冷分離器19、四段圧縮機20、四段分離器21、乾燥器4を経て処理した後、微量のアセチレンを除去するよう、さらにC2水素化反応器7に導入して選択的水素化を行う。その後、順次に脱メタン塔5、脱エタン塔6を経て処理する。
1つのC2水素化反応器で反応させる。該反応器には、配気システムが設置され、該反応器は固定床断熱反応器である。
C2水素化反応器に入った反応物質におけるCの含有量が5.3μL/Lであった。
反応条件は、物質ガス空間速度を2700h−1とし、反応圧力を2.0MPaとし、反応器の触媒充填量を500mLとし、反応器中のH/C=5:1(モル比)であり、1000時間後反応した。結果を表13に示す。
【0085】
【表13】
【0086】
実施例11
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積10.0m/g、細孔容積0.21mL/g、嵩密度0.75g/cmの円柱状担体を500g秤取した。該担体は、θとαとの混合結晶形であるAl487.5g、及び酸化マグネシウム12.5gを含有した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ100〜180nm、350〜750nmの細孔径である。
6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジン47.2gをエタノール600mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、10時間静置し、溶液中の6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を100℃で6時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.37g、AgNO1.18gを脱イオン水450mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、1時間撹拌した後、10時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を90℃で10時間乾燥し、(Pd−Ag)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Ag)とのモル比が30である)を得た。
上記の(Pd−Ag)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を600℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Ag)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ag)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより300h−1の空間速度、100℃で該触媒を4時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒S−11を得た。該触媒S−11におけるPdの含有量が0.03wt.%と、Agの含有量が0.15wt.%と測定された。
【0087】
比較例11
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積10.0m/g、細孔容積0.21mL/g、嵩密度0.75g/cmの円柱状担体を500g秤取した。該担体は、θとαとの混合結晶形であるAl487.5g、及び酸化マグネシウム12.5gを含有した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ100〜180nm、350〜750nmの細孔径である。
Pd(NO0.37g、AgNO1.18gを脱イオン水450mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。該混合溶液を上記の担体にスプレーして0.5時間振動した。残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を90℃で10時間乾燥し後、600℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Ag)/Al触媒を得た。
上記の(Pd−Ag)/Al触媒を固定床反応装置に載せて、純度99.9%の水素ガスにより300h−1の空間速度、100℃で該触媒を4時間還元処理し、還元状態のパラジウム系担持型水素化触媒D−11を得た。該触媒D−11におけるPdの含有量が0.03wt.%と、Agの含有量が0.15wt.%と測定された。
【0088】
触媒の適用
実施例11と比較例11で製造された触媒は、それぞれC2留分フロントエンド脱プロパンフロントエンド水素化プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図を図3に概略的に示す。
3つのC2水素化反応器を直列して反応させ、即ち、1段目の反応器の出口物質が2段目の反応器に入るようにし、2段目の反応器の出口物質が3段目の反応器に入るようにする。反応器ごとに独立の配気システムが設置され、3つの反応器はともに固定床断熱反応器である。
反応物質は脱プロパン塔の塔頂からのものであり、その組成は表14に示す。
反応条件は、物質ガス空間速度を10000h−1とし、反応圧力を3.9MPaとし、3つの反応器の触媒充填量をともに500mLとし、1000時間反応した。結果を表15に示す。
【0089】
【表14】
【0090】
【表15】
【0091】
実施例12
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積8.0m/g、細孔容積0.38mL/g、嵩密度0.75g/cmの円柱状担体を500g秤取した。該担体は、α−Al481.5g、酸化マグネシウム12.5g、酸化カルシウム6gを含有した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ100〜180nm、350〜750nmの細孔径である。
6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジン16.68gをエタノール650mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、12時間静置し、溶液中の6,6’−ジヒドロキシ−3,3’−ビピリジンを完全に担体上に担持させた後、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を得た。
Pd(NO0.49g、Cu(NO0.83gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記のヒドロキシビピリジン/Al前駆体を該混合溶液に添加し、1時間撹拌した後、12時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、(Pd−Cu)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体(その中では、ヒドロキシビピリジンと(Pd+Cu)とのモル比が15である)を得た。
上記の(Pd−Cu)−ヒドロキシビピリジン/Al前駆体を450℃、大気雰囲気中で8時間焼成し、(Pd−Cu)/Al触媒S−12を得た。該触媒S−12におけるPdの含有量が0.04wt.%と、Cuの含有量が0.056wt.%と測定された。
【0092】
比較例12
Φ4.5mm、高さ4.5mm、比表面積8.0m/g、細孔容積0.38mL/g、嵩密度0.75g/cmの円柱状担体を500g秤取した。該担体は、α−Al481.5g、酸化マグネシウム12.5g、酸化カルシウム6gを含有した。担体細孔径は、二重ピークの細孔径分布を呈し、それぞれ100〜180nm、350〜750nmの細孔径である。
ドデシルピリジン塩酸塩6.0gをエタノール600mLに溶解させ、溶液を得た。上記担体を該溶液に含浸し、室温で密閉して48時間静置した。その後、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、C1225N・HClを含むAl前駆体を得た。
Pd(NO0.49g、Cu(NO0.83gを脱イオン水600mLに溶解させ、さらに硝酸を適量添加してpH2.5に調整し、混合溶液を得た。上記のC1225N・HClを含むAl前駆体を該混合溶液に添加し、2時間静置し、残存液をデカンテーションし、固体反応生成物を120℃で4時間乾燥し、(Pd−Cu)−アルキルピリジン塩酸塩/Al前駆体を得た。
上記の(Pd−Cu)−アルキルピリジン塩酸塩/Al前駆体を500℃、大気雰囲気中で2時間焼成し、(Pd−Cu)/Al触媒D−12を得た。該触媒D−12におけるPdの含有量が0.04wt.%と、Cuの含有量が0.056wt.%と測定された。
【0093】
触媒の適用
実施例12と比較例12で製造された触媒は、それぞれC2留分フロントエンド脱エタンフロントエンド水素化プロセスに用いられた。そのプロセスフロー図を図2に示す。
1つのC2水素化反応器で反応させる。該反応器には、配気システムが設置され、該反応器は固定床断熱反応器である。
反応物質は脱エタン塔の塔頂からのものであり、その組成は表16に示す。
反応条件は、物質ガス空間速度を12000h−1とし、反応圧力を3.6MPaとし、反応器の触媒充填量を500mLとし、1000時間反応した。結果を表17に示す。
【0094】
【表16】
【0095】
【表17】
【0096】
上記の実施例と比較例から明らかなように、従来の含浸法で製造された触媒、クロロ含有有機物を含む担体で製造された触媒、及び有機高分子化合物に官能基をグラフトし担体上に担持することで製造された触媒と比べ、活性成分の含有量が同一である場合、本発明の方法で製造された触媒は、各種のアセチレン選択的水素化プロセスに用いられるときに、何れもより優れた活性、選択性及び耐コークス化性能を示すとともに、水素化過程でのグリーンオイルの生成量も大きく低減する。同時に、グリーンオイル生成量の低減により、触媒の活性中心が副生物に覆われることを減少するため、触媒活性及び選択性が良好に保持され、触媒の使用寿命が長くなる。
【符号の説明】
【0097】
1 油洗浄塔、2 水洗浄塔、3 アルカリ洗浄塔、4 乾燥器、5 脱メタン塔、6 脱エタン塔、7 C2水素化反応器、8 圧縮機、9 エチレン精留塔、10 エチレン精製反応器、11 脱プロパン塔、12 プロピレン精留塔、13 メタノールからエチレンを製造する反応器、14 再生器、15 分離器、16 メタノール脱水によるジメチルエーテル製造反応器、17 メタノールからプロピレンを製造する反応器、18 予備急冷分離器、19 急冷分離器、20 四段圧縮機、21 四段分離器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8