特許第6636243号(P6636243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636243
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】酸化染毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20200120BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20200120BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20200120BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20200120BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20200120BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20200120BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61K8/46
   A61K8/41
   A61Q5/10
   A61Q5/06
   A61K8/06
   A61K8/02
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-225326(P2014-225326)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-88891(P2016-88891A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】松谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】川合 正樹
(72)【発明者】
【氏名】町田 昌治
(72)【発明者】
【氏名】永渕 章子
(72)【発明者】
【氏名】高田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩明
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/018145(WO,A1)
【文献】 特開2011−102244(JP,A)
【文献】 特開2011−088867(JP,A)
【文献】 特開2013−144645(JP,A)
【文献】 特開2013−184964(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/020147(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0289972(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0298595(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0298594(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0298598(US,A1)
【文献】 特表2013−516434(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02275079(EP,A1)
【文献】 特開2012−031072(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/105447(WO,A1)
【文献】 特開2003−040748(JP,A)
【文献】 Re-Pigmentation Hair Cream,Mintel GNPD,2007年 4月,ID686129,URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】 アルキルグリコシドとその周辺化合物,油化学,日本,1990年,第39巻、第7号,p451〜458
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを混合して用いる酸化染毛剤であって、
前記第1剤が、第1剤の全質量を基準として、〜20質量%の酸化染料を含み、
前記第1剤が、少なくとも1種の硫酸エステル型のアニオン性界面活性剤、少なくとも1種のベタイン型の両性界面活性剤、および少なくとも1種のアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤を含み、
前記酸化染毛剤がジェル状または乳液状である、酸化染毛剤。
【請求項2】
酸化染毛剤の粘度が、25℃において100〜2000mPa・sである、請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤および前記両性界面活性剤の質量比は、1:3〜3:1である、請求項1または2に記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
前記酸化染料は、塩の形態の酸化染料を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪、特に白髪を十分に染色することができるとともに、毛髪への塗布時に酸化染毛剤の垂れ落ちを抑制することができ、かつ放置時間中においても毛髪からの酸化染毛剤の垂れ落ちも抑制することができ、さらに保存安定性にも優れる酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の染毛剤として、アルカリ剤を含む第1剤と酸化剤を含む第2剤とからなり、使用直前に両者を混合して用いる染毛剤、いわゆる2剤式染毛剤が用いられている(特許文献1〜4)。このような2剤式染毛剤において、毛髪、特に白髪を十分に染色するためには、第1剤における酸化染料の配合量を増やす必要がある。これにより、毛髪を十分に染色することができるが、一方で、多量の酸化染料が染毛剤中に存在することによって、酸化染料と界面活性剤やポリマー等の添加剤との間で相互作用が生じることがある。この相互作用により、経時的に染毛剤の粘度が上昇したり、沈殿物が生成するために、保存安定性の低下や、染毛剤の使用時に温度上昇を引き起こすといった問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−006804号公報
【特許文献2】特開2011−132213号公報
【特許文献3】特開2011−132228号公報
【特許文献4】特開2012−072128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化染料を高濃度で染毛剤に配合すると、上記のとおり、界面活性剤やポリマー等の添加剤と酸化染料との間で相互作用が生じ、経時的に染毛剤の粘度低下や沈殿物の析出が生じたりすることがある。その結果、酸化染毛剤として求められる性能である保存安定性が低下し得る。さらに、毛髪に適用している間に染毛剤が毛髪上にとどまり、たれ落ちを生じないことも求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、第1剤に高濃度の酸化染料を配合しても経時的に安定であるため保存安定性に優れ、また塗布時および塗布後の放置時間中において酸化染毛剤の毛髪からの垂れ落ちを抑制することができ、毛髪、特に白髪を十分に染色することができる染毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために酸化染毛剤について詳細に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明には、以下の好適な実施態様が含まれる。
〔1〕アルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを混合して用いる酸化染毛剤であって、
前記第1剤が、第1剤の全質量を基準として、1〜20質量%の酸化染料を含み、
前記第1剤が、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤、少なくとも1種の両性界面活性剤、および少なくとも1種のアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤を含み、
前記酸化染毛剤がジェル状または乳液状である、酸化染毛剤。
〔2〕酸化染毛剤の粘度が、25℃において100〜2000mPa・sである、上記〔1〕に記載の酸化染毛剤。
〔3〕前記アニオン性界面活性剤および前記両性界面活性剤の質量比は、1:3〜3:1である、上記〔1〕または〔2〕に記載の酸化染毛剤。
〔4〕前記酸化染料は、塩の形態の酸化染料を含有する、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の酸化染毛剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の酸化染毛剤によれば、毛髪、特に白髪を十分に染色することができるとともに、毛髪への塗布時に酸化染毛剤の垂れ落ちを抑制することができ、かつ放置時間中においても毛髪からの酸化染毛剤の垂れ落ちを抑制することができる。また、本発明において、第1剤は経時的に安定なため、本発明の酸化染毛剤は保存安定性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の酸化染毛剤は、アルカリ剤を含む第1剤と酸化剤を含む第2剤とを含む。本発明の酸化染毛剤は、多剤式の酸化染毛剤であり、少なくとも第1剤と第2剤とが混合されて用いられる。第1剤は、アルカリ剤に加えて、酸化染料をさらに含む。また、第1剤は、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤、少なくとも1種の両性界面活性剤、および少なくとも1種のアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤をさらに含む。
【0009】
酸化染料は、染料中間体およびカプラーに分類される。酸化染料は、好ましくは、染料中間体を含む。酸化染料として、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0010】
染料中間体としては、例えば、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、およびそれらの塩が挙げられる。上記塩類としては、塩酸塩および硫酸塩等が挙げられる。これらの染料中間体として、1種のみが単独で含有されてもよいし、2種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0011】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えば、レゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、およびそれらの塩が挙げられる。上記塩類としては、塩酸塩および硫酸塩等が挙げられる。これらのカプラーとして、1種のみが単独で含有されてもよいし、2種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0012】
第1剤における酸化染料の含有量は、第1剤の全質量を基準として、1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。第1剤における酸化染料の含有量が上記下限値以上である場合、染毛性がより向上する。また、第1剤における酸化染料の含有量が上記上限値以下である場合、安定な剤とすることができる。
【0013】
また、本発明において、酸化染料は、塩の形態の酸化染料を含有してもよい。塩の形態の酸化染料は保存安定性の低下等の問題を引き起こしやすいと言われているが、本発明によれば、第1剤に塩の形態の酸化染料を含有しても、本発明の酸化染毛剤は良好な保存安定性を発揮することができる。
【0014】
色調を調節するために、第1剤は直接染料をさらに含んでもよい。直接染料としては、例えばニトロ染料、酸性染料、分散染料、HC染料および塩基性染料等が挙げられる。ニトロ染料としては、例えば、パラニトロオルトフェニレンジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、硫酸パラニトロメタフェニレンジアミン、2−アミノ−5−ニトロフェノールおよびピクラミン酸等が挙げられる。酸性染料としては、例えば、青色1号およびアシッドオレンジ7等が挙げられる。分散染料としては、例えば、ディスパーズバイオレット1、ディスパーズブルー1およびディスパーズブラック9等が挙げられる。HC染料としては、例えば、HCレッド1およびHCイエロー2等が挙げられる。塩基性染料としては、例えば、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16およびベーシックイエロー87等が挙げられる。
【0015】
第1剤は、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤、少なくとも1種の両性界面活性剤、および少なくとも1種のアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸、アシル乳酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩およびN−アシルメチルアラニン塩等が挙げられる。その中でも、起泡性の観点から、アルキル硫酸エステル塩およびアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。アルキル硫酸エステル塩としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数10〜22、より好ましくは10〜16のアルキル基を有するものである。アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数10〜20、より好ましくは12〜14の直鎖状1級アルコール、直鎖状2級アルコールもしくは分岐鎖状アルコールに基づくアルキル基を有し、アルキレンオキシド基の平均付加モル数が好ましくは0.5〜5、より好ましくは0.5〜4、更により好ましくは1〜3であるものである。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド等が挙げられる。その塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、例えばナトリウム塩およびカリウム塩等が挙げられる。上記のアニオン性界面活性剤の使用は、起泡性および製剤の安定性の観点から好ましい。これらアニオン性界面活性剤として、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。第1剤中のアニオン性界面活性剤の含有量は、起泡性および製剤の安定性の観点から、第1剤の全質量を基準として、0.1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0016】
両性界面活性剤としては、例えば、炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基またはアシル基を有するカルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系およびイミダゾリニウム系の界面活性剤が挙げられる。なかでも、粘性の観点から、カルボベタイン系界面活性剤およびスルホベタイン系界面活性剤が好ましい。好ましい両性界面活性剤としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインおよびラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。これら両性界面活性剤として、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。本発明において、第1剤中の両性界面活性剤の含有量は、適正な粘度を得るため、第1剤の全質量を基準として、0.1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0017】
アルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤としては、例えば、オクチルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、オクチルチオグルコシド、ラウリルグルコシドおよびヤシ油アルキルグルコシド等が挙げられる。アルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤は、好ましくはC〜C20アルキル−、より好ましくはC〜C15アルキル−、更により好ましくはC〜C12アルキル−グルコシドである。これらのアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤の使用は、起泡性の観点から好ましい。これらアルキルグルコシド型ノニオン性界面活性剤として、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。本発明において、アルキルグルコシド型ノニオン性界面活性剤の含有量は、製剤の安定性の観点から、第1剤の全質量を基準として、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0018】
本発明の酸化染毛剤において、第1剤は、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤、少なくとも1種の両性界面活性剤、および少なくとも1種のアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤を含むため、第1剤と第2剤とを含む酸化染毛剤が毛髪に塗布された後に、酸化染毛剤を泡立てて泡状にすることができる。シャンプーするように泡立てることで、酸化染毛剤を毛髪に均一に付着させることができる。このため、染色後の毛髪に、染色むらを生じ難くすることができる。
【0019】
第1剤における界面活性剤の総含有量は、垂れ落ちや泡立ちを考慮して、第1剤の全質量を基準として、5.0〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0020】
第1剤におけるアニオン性界面活性剤および両性界面活性剤の質量比は、好ましくは1:3〜3:1、より好ましくは1:2〜2:1である。第1剤におけるアニオン性界面活性剤および両性界面活性剤の質量比が上記範囲内であると、特に染毛性に優れ、塗布しやすい粘性を得ることができる。
【0021】
本発明において、第1剤はアルカリ剤を含む。本発明において、アルカリ剤は特に限定されない。アルカリ剤として、従来公知のアルカリ剤を用いることができる。アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよく、有機アルカリ剤であってもよい。アルカリ剤として、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0023】
本発明において、第1剤中のアルカリ剤の含有量は、特に限定されないが、所望とする染色性などを考慮して適宜調整することができる。第1剤におけるアルカリ剤の含有量は、第1剤の全質量を基準として、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更により好ましくは3〜10質量%である。アルカリ剤の含有量が上記下限値以上であると、染色性が特に高くなる。アルカリ剤の含有量が上記上限値以下であると、皮膚刺激が少なくなる。
【0024】
本発明において第1剤には、アルカリ剤および酸化染料に加えて、還元剤をさらに含むことが好ましい。還元剤を添加することによって、第1剤が大気暴露された際に、酸化染料の発色を抑制することができる。還元剤としては、例えば、N−アセチル−L−システイン、L−アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムおよびチオグリコール酸等、ならびにこれらの塩が挙げられる。還元剤として、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。第1剤における還元剤の含有量は、保存安定性向上の観点から、第1剤の全質量を基準として、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0025】
本発明において第1剤には、必要に応じて、染毛剤に通常添加することができるその他の成分をさらに配合することができる。例えば、添加することができるその他の成分として、カチオン化セルロースおよびその誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガムおよびその誘導体、ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体等の水溶性カチオン性高分子;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル等のエステル;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ等のロウ類;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン等のアルコール類;ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン類;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;キレート剤;パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;シルクから得られる蛋白質またはその加水分解物、マメ科植物の種子から得られる蛋白含有抽出物、オタネニンジン抽出物、米胚芽抽出物、ヒバマタ抽出物、ツバキ抽出物、アロエ抽出物、月桃葉抽出物、クロレラ抽出物等のエキス類;雲母チタン等のパール粉体;香料;色素;紫外線吸収剤;酸化防止剤等が挙げられる。
【0026】
本発明において第2剤は酸化剤を含む。本発明において、酸化剤は特に限定されず、従来公知の酸化剤を用いることができる。酸化剤として、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。酸化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過硫酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、臭素酸塩および過ヨウ素酸塩等が挙げられる。染色性をより一層高める観点から、上記酸化剤は、好ましくは過酸化水素である。本発明において、第2剤における酸化剤の含有量は、適宜調整することができる。第2剤における酸化剤の含有量は、染色性向上の観点から、第2剤の全質量を基準として、好ましくは0.01〜12質量%、より好ましくは0.1〜6質量%である。
【0027】
第2剤は、増粘性高分子としてアニオン性高分子を含んでもよい。第2剤がアニオン性高分子を含むことによって、第1剤と混合したときに、本発明の酸化染毛剤はより好ましい粘度を有することとなり、毛髪からのたれ落ちがより生じ難くなる。アニオン性高分子として、例えば、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンべへネスエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・イタコン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル共重合体およびアクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテルクロスポリマー等が挙げられる。第2剤におけるアニオン性高分子の含有量は、酸化染毛剤の粘度および性状などを考慮して適宜調整することができる。第2剤におけるアニオン性高分子の含有量は、第2剤の全質量を基準として、好ましくは0〜7質量%、より好ましくは0.3〜5.0質量%である。第2剤におけるアニオン性高分子の含有量が上記下限値以上であると、塗布するときおよび放置時間中に垂れ落ちが生じ難くなる。第2剤におけるアニオン性高分子の含有量が上記上限値以下であると、毛髪全体に塗布しやすく染色むらが生じ難い。
【0028】
第2剤は、25℃において、好ましくは2〜5、より好ましくは2〜4のpHを有する。第2剤のpHが上記範囲内であると、第1剤と混合して用いる酸化染毛剤の染毛性が良好である。
【0029】
本発明の酸化染毛剤において、第1剤と第2剤との質量比は特に限定されない。本発明の酸化染毛剤における第1剤と第2剤との質量比(第1剤:第2剤)は、染毛性の観点から、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1、更により好ましくは1:4〜3:1、特により好ましくは1:3〜2:1である。
【0030】
第1剤および第2剤は、それぞれ液状またはジェル状であることが好ましい。第1剤および第2剤が液状またはジェル状であると、これらの剤を混ぜる際に、混合むらを抑制することができる。
【0031】
上記の第1剤と第2剤とを混合して用いる本発明の酸化染毛剤は、ジェル状または乳液状である。本発明の酸化染毛剤は適度な粘度を有するため、酸化染毛剤を毛髪に塗布する際に垂れ落ち難く、全体に塗布しやすい。本発明の酸化染毛剤は、泡立てながら毛髪全体に塗り広げられることが好ましい。毛髪に塗布された酸化染毛剤を毛髪上で泡立てることにより、酸化染毛剤を毛髪にむらなくいきわたらせることができる。酸化染毛剤を泡立てる際には、シャンプーする要領で泡立てて、酸化染毛剤を毛髪に充分に馴染ませることができる。本発明によれば、泡立てられた酸化染毛剤は、放置時間中に垂れ落ちが生じ難い。また、本発明によれば、少ない使用量で毛髪を染色することができ、経済的に毛髪を染色することができる。
【0032】
第1剤と第2剤とを混合して用いる本発明の酸化染毛剤は、25℃において、好ましくは100〜2000mPa・s、より好ましくは200〜1000mPa・s、更により好ましくは350〜1000mPa・sの粘度を有する。酸化染毛剤の粘度が上記下限値以上であると、塗布時および放置時間中に垂れ落ちが生じ難い。酸化染毛剤の粘度が上記上限値以下であると、酸化染毛剤を毛髪へ塗布することがより容易となり、酸化染毛剤を毛髪にむらなくいきわたらせることができる。
【0033】
第1剤と第2剤とを混合して用いる本発明の酸化染毛剤は、25℃において、好ましくは7〜12、より好ましくは8〜11のpHを有する。酸化染毛剤のpHが上記範囲内であると、染毛性が良好である。
【0034】
本発明の酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とを混合した後に、乾いた毛髪または水洗後タオルドライした毛髪に塗布し、そのまま所定の時間放置してもよいし、毛髪上で泡立ててから所定時間放置してもよい。所定時間経過した後、酸化染毛剤を水で洗い流し乾燥させる。
【0035】
酸化染毛剤を毛髪に塗布してから泡立てるまでの時間は、垂れ落ちを防ぐ観点から、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下、更に好ましくは3分以下である。酸化染毛剤を泡立ててから毛髪を染色するための放置時間は、染毛効果の観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは40分以下である。毛髪の染色が充分に進行した後、酸化染毛剤は毛髪から洗い流すことによって除去される。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0037】
各実施例および比較例において、表1に記載された組成を有する第1剤と第2剤とを含む酸化染毛剤を調製した。
【0038】
これらの酸化染毛剤について、以下の方法で粘度を測定した。第1剤と第2剤との混合物の粘度は、直径35mm×高さ78mmサイズの円柱ガラスサンプル管内に、第1剤と第2剤とを1:1の混合比で合計50gとなるように秤量し、フタを閉めて、第1剤と第2剤とが混ざり合うまで、混合したものを用いた。25℃の恒温相に30分間浸した後、恒温相から取り出し、25℃における粘度をB型粘度計(TVB−10M 東機産業株式会社製)にて、3号ローターで1分間、30回転で測定し、400mPa・s以下のときは2号ローターで1分間、30回転で測定し、結果を数値で示した。測定は3回行い、平均値を採用した。
【0039】
各実施例および比較例において調製した酸化染毛剤について、以下の評価を行った。評価は、5名の専門のパネラーによって行われ、以下の判定基準によって決定した。なお、5名の専門のパネラーの評価が2つに分かれる場合は多い方の評価を採用し、評価が3つ以上に分かれる場合は再度試験、評価を行った。
この結果を表1に示す。
【0040】
1.塗布時の垂れ落ちの官能評価
第1剤10gと第2剤10gとを、均一になるまで混合して得られた酸化染毛剤を評価に用いた。評価は人頭で行った。まず、シャンプーを用いて毛髪を洗浄し、タオルで十分に水分をふき取ったあと、各実施例または比較例において得られた酸化染毛剤を塗布した。酸化染毛剤の塗布時の垂れ落ちについて、専門のパネラー5名が下記の判定基準に従って判定した。
[塗布時の垂れ落ちの判定基準]
◎:垂れ落ちが全くない
○:液だまりが生じるが垂れ落ちはない
△:わずかに垂れ落ちが生じる
×:垂れ落ちが生じて塗布に支障がある
【0041】
2.染色時の泡立ち(起泡性)の官能評価
上記の評価の後、専門のパネラー5名がそれぞれ、毛髪に塗布された酸化染毛剤を、シャンプーをする要領で泡立てようと試みた。専門のパネラー5名が、酸化染毛剤の泡立ち(起泡性)について、下記の判定基準に従って判定した。
[泡立ちの判定基準]
◎:十分に泡立ち、毛髪全体に泡がいきわたる
○:やや泡立ちは少ないが、毛髪全体に泡がいきわたる
△:泡立ちが悪く、毛髪全体に泡がいきわたらない
×:泡立たない
【0042】
3.放置時間中の垂れ落ちの官能評価
上記の評価の後、専門のパネラー5名がそれぞれ、泡立ててから、または全く泡立たなかった場合には泡立てようとする作業をしてから、30分間放置した。専門のパネラー5名が、30分間放置している間の酸化染毛剤の垂れ落ちについて、下記の判定基準に従って判定した。
[放置時間中の垂れ落ちの判定基準]
◎:放置時間中に垂れ落ちが全くない
○:液だまりが生じるが垂れ落ちはない
△:わずかに垂れ落ちが生じる
×:垂れ落ちがひどく30分間放置できない
【0043】
4.染色後の仕上がりの官能評価
上記の評価の後、専門のパネラー5名がそれぞれ、30分間放置後の酸化染毛剤を温水で洗い流し、シャンプー、リンスを行った。次に、タオルドライおよびドライヤーによる温風乾燥を行った。専門のパネラー5名が、染色された毛髪の仕上がりについて、下記の判定基準に従って判定した。
[仕上がりの判定基準]
◎:むらがなく、毛の根元まで均一に染色されている
○:ほぼむらがなく、毛の根元まで均一に染色されている
△:わずかにむらがある
×:むらがあり、均一に染色されていない
【0044】
【表1】
【表2】
【0045】
以上の結果より、第1剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤を含む実施例1〜14においては、塗布時の垂れ落ち、泡立ち、放置時間中の垂れ落ち、および染色後の仕上がりの官能評価において、いずれも良好な結果となった。また、本発明の酸化染毛剤は、多量の酸化染料を含んでいても良好な保存安定性を有していた。一方、第1剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびアルキルグルコシド型のノニオン性界面活性剤の少なくともいずれかを含まない比較例1〜7においては、上記の官能評価において不十分な結果となり、本発明の目的を達成することはできなかった。
さらに、例えば実施例1(417mPa・s)、実施例3(609mPa・s)、実施例8(388mPa・s)、実施例13(510mPa・s)等の場合では、塗布時の垂れ落ちが全くなかった。一方、比較例1、3および7においては、粘度が100mPa・s未満であり、垂れ落ちが生じて塗布に支障があった。