特許第6636259号(P6636259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6636259排気ガス後処理システムおよび排気ガス後処理のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636259
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】排気ガス後処理システムおよび排気ガス後処理のための方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20200120BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20200120BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20200120BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20200120BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   F01N3/24 L
   F01N3/08 AZAB
   F01N5/02 A
   F01N3/20 K
   F01N3/08 B
   B01D53/94 212
   B01D53/94 222
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-81524(P2015-81524)
(22)【出願日】2015年4月13日
(65)【公開番号】特開2015-203416(P2015-203416A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】10 2014 005 418.7
(32)【優先日】2014年4月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラメン・トシェフ
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−043814(JP,A)
【文献】 特表2011−509366(JP,A)
【文献】 特表2007−527783(JP,A)
【文献】 特開2005−125275(JP,A)
【文献】 特開2004−082103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用の排気ガス後処理システム(2)であって、
内燃機関(1)の下流に配置された、硫黄酸化物を化学吸着するためのカルシウム含有粒状体を含む分離器(3)と、
ガス−ガス熱交換器であって、前記内燃機関(1)を出て行く排気ガスの温度を上昇させるために、一方で前記分離器(3)を通って導かれた排気ガスが当該ガス−ガス熱交換器を通って導かれ、他方で前記内燃機関(1)を出て行く前記排気ガスが導かれ得るように通る、ガス−ガス熱交換器(4)と、
前記ガス−ガス熱交換器(4)を通って導かれた前記排気ガスの温度をさらに上昇させるために、前記ガス−ガス熱交換器(4)の下流で前記分離器(3)の上流に配置された加熱装置(5)と
を備える排気ガス後処理システム。
【請求項2】
前記加熱装置(5)が、前記排気ガスを、375℃と450℃との間の温度まで加熱することを特徴とする、請求項1に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項3】
前記ガス−ガス熱交換器(4)が、前記排気ガスを、330℃と350℃との間の温度まで加熱することを特徴とする、請求項1または2に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項4】
前記分離器(3)の下流に、SCR触媒コンバータ(6)が位置付けられ、前記分離器(3)を出て行く排気ガスが、先ず前記SCR触媒コンバータ(6)を介して案内され、次に前記ガス−ガス熱交換器(4)を介して案内され得ることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項5】
前記ガス−ガス熱交換器(4)の上流に、SCR触媒コンバータ(6)が位置付けられ、前記分離器(3)を出て行く排気ガスが、先ず前記SCR触媒コンバータ(6)を介して案内され、次に前記ガス−ガス熱交換器(4)を介して案内され得ることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項6】
前記ガス−ガス熱交換器(4)の下流に、排気ガス後処理装置(7)が位置付けられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項7】
前記加熱装置(5)の下流で前記分離器(3)の上流に、SOをSOへと酸化するための酸化触媒コンバータ(8)が位置付けられ、前記酸化触媒コンバータ(8)を通って、前記加熱装置(5)において加熱された前記排気ガスが、前記分離器(3)の上流に案内され得ることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項8】
前記加熱装置(5)の下流で前記分離器(3)の上流に装置(9)が位置付けられ、前記装置(9)を通って、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末が、前記分離器(3)の上流の前記加熱装置(5)で加熱された前記排気ガスへと導入され得ることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項9】
カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末が前記排気ガスへと導入され得るように通る装置(9)は、SOをSOへと酸化するための酸化触媒コンバータ(8)の下流で前記分離器(3)の上流に位置付けられることを特徴とする、請求項7または8に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項10】
前記装置(9)を通って前記排気ガスの流れへと導入された前記カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末が、CaOおよび/またはCa(OH)および/またはCaCOおよび/またはNaHCOを含み、前記装置(9)を通って前記排気ガスの流れへと導入される前記カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末の粒径が、1mm未満となることを特徴とする、請求項8または9に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項11】
充填層反応器として、または、移動床反応器として優先的に設計された前記分離器(3)の粒状体が、CaOおよび/またはCa(OH)および/またはCaCOを含み、前記分離器(3)の粒状体の粒径が、2mm超となることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム。
【請求項12】
内燃機関を出て行く排気ガスの排気ガス後処理のための方法であって、
前記排気ガスが、硫黄酸化物を化学吸着するためのカルシウム含有粒状体を含む分離器を通って導かれ、
前記内燃機関を出て行く前記排気ガスの温度を上昇させるために、前記分離器を通って導かれた前記排気ガスと、他方で前記内燃機関を出て行く前記排気ガスとが、ガス−ガス熱交換器を通って導かれ、
前記ガス−ガス熱交換器で加熱された前記排気ガスが、温度をさらに上昇させるために、前記ガス−ガス熱交換器の下流で前記分離器の上流に配置された加熱装置を通るように導かれる方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の排気ガス後処理システムを用いて同様に実施されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス後処理システムに関する。さらに、本発明は、排気ガス後処理のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電所で用いられる静置された内燃機関における燃焼過程、および、例えば船舶で用いられるに静置されていない内燃機関における燃焼過程の間、SOおよびSOなどの硫黄酸化物が生成され、これらの硫黄酸化物は、典型的には、石炭、坑口炭、褐炭、油、または重油などの硫黄含有化石燃料の燃焼の間に形成される。そのため、このような内燃機関には、具体的には、内燃機関を出て行く排気ガスの脱硫に役立つ排気ガス後処理システムが設けられる。
【0003】
排気ガスを脱硫するために、吸収剤として、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、または炭酸カルシウム(CaCO)を主に使用する吸収による方法が、先行技術から主に知られている。過程では、粉末または粒状体が形成され、硫酸カルシウム粉末を排気ガスから除去するために、フィルタ装置が脱硫の下流に用いられる必要がある。
【0004】
特許文献1から、二酸化窒素および粉末を含む排気ガスの処理のための方法および排気ガス後処理システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3603365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このことから、本発明の目的は、新しい形の排気ガス後処理システムと、新しい形の排気ガス後処理のための方法とを作り出すことに基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1による排気ガス後処理システムによって解決される。本発明による内燃機関用の排気ガス後処理システムは、内燃機関の下流に配置された、硫黄酸化物を化学吸着するためのカルシウム含有粒状体を含む分離器を備える。さらに、本発明による排気ガス後処理システムは、内燃機関を出て行く排気ガスの温度を上昇させるために、一方で分離器を通って導かれた排気ガスが導かれ、他方で内燃機関を出て行く排気ガスが導かれ得るように通るガス−ガス熱交換器を備える。さらに、本発明による排気ガス後処理システムは、ガス−ガス熱交換器を通って導かれた排気ガスの温度をさらに上昇させるために、ガス−ガス熱交換器の下流で分離器の上流に配置された加熱装置を備える。
【0008】
分離器を使用することで、硫酸カルシウムの粉末または粒状体を排気ガスから除去するためのフィルタ装置を省略することが可能である。硫黄酸化物は、分離器のカルシウム含有粒状体と反応し、粒状体として排出できる。ガス−ガス熱交換器と、ガス−ガス熱交換器の下流に配置された加熱装置とが、分離器を通って導かれる排気ガスを、分離器における排気ガスの脱硫に最適な温度へと温度制御することができ、ガス−ガス熱交換器における排気ガスの温度制御に続くため、加熱装置の回路が縮小できる。分離器を通って導かれる排気ガスを、分離器における排気ガスの脱硫に最適な温度へと温度制御することによって、分離器において排気ガスを脱硫することは短い反応時間で確保される。これによってさらに、分離器で排気ガスを脱硫することに関しては、必要とされるカルシウム含有粒状体が比較的少なくて済むことが保証される。
【0009】
優先的には、ガス−ガス熱交換器は、内燃機関を出て行く排気ガスを、330℃と350℃との間の温度、好ましくは340℃と350℃との間の温度まで加熱する。加熱装置は、排気ガスを、375℃と450℃との間の温度、好ましくは400℃と450℃との間の温度、最も好ましくは360℃と420℃との間の温度まで加熱する。排気ガスのこの温度制御は、効果的であり、特に、分離器における排気ガスの脱硫に関して有利である。
【0010】
有利なさらなる発展形態によれば、SOをSOへと酸化するための酸化触媒コンバータが、加熱装置の下流で分離器の上流に位置付けられ、その酸化触媒コンバータを通って、加熱装置において加熱された排気ガスが、分離器の上流に導かれ得る。SOをSOへと酸化するための酸化触媒コンバータを使用することで、SOがSOよりも分離器のカルシウム含有粒状体とより素早く反応するため、分離器における排気ガスの滞留時間をずっと短くすることができる。これにより、排気ガスの特に効果的な脱硫を可能にする。
【0011】
さらに有利なさらなる発展形態によれば、加熱装置の下流で分離器の上流に装置が位置付けられ、その装置を通って、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末が、分離器の上流の加熱装置で加熱された排気ガスへと導入され得る。これにより、排気ガスの特に効果的な脱硫を可能にする。硫酸カルシウム粉末および/または硫酸ナトリウム粉末、あるいは、脱硫の間に形成される硫酸塩含有粒状体は、分離器を用いることで排気ガスから効果的に分離され得る。具体的には、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末または粒状体が、分離器の上流の加熱装置で加熱される排気ガスへと導入され得るように通る装置に加えて、酸化触媒コンバータも加熱装置の下流で分離器の上流に位置付けられる場合、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末または粒状体が排気ガスへと導入され得るように通る装置は、SOをSOへと酸化するための酸化触媒コンバータの下流で分離器の上流に位置付けられる。
【0012】
有利なさらなる発展形態によれば、排気ガス後処理システムはSCR触媒コンバータを備え、そのSCR触媒コンバータは、分離器の下流でガス−ガス熱交換器の上流に位置付けられるか、または、代替でガス−ガス熱交換器の下流に位置付けられるかのいずれかである。SCR触媒コンバータでは、排気ガスの脱窒と、それによる排気ガス排出物のさらなる低減とが行われる。
【0013】
本発明による排気ガス後処理のための方法が、請求項12で定められている。
【0014】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項および以下の説明から得られる。本発明の例示の実施形態が、図面を用いるが、これに限定されることなく、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による第1の排気ガス後処理システムのブロック図である。
図2】本発明による第2の排気ガス後処理システムのブロック図である。
図3】本発明による第3の排気ガス後処理システムのブロック図である。
図4】本発明による第4の排気ガス後処理システムのブロック図である。
図5】本発明によるさらなる排気ガス後処理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、例えば、発電所に静置された内燃機関用、または、船舶の静置されていない内燃機関用といった、内燃機関用の排気ガス後処理システムに関する。
【0017】
具体的には、排気ガス後処理システムは、重油で運転される船舶用ディーゼル機関で用いられる。
【0018】
図1は、内燃機関1の下流に配置された排気ガス後処理システム2の第1の例示の実施形態を示しており、本発明による排気ガス後処理システム2は、カルシウム含有粒状体または石灰に基づいた粒状体を含む分離器3を備えており、カルシウム含有粒状体または石灰に基づいた粒状体は、分離器3において硫黄酸化物を化学吸着するように作用する。分離器3は、いわゆる充填層反応器、または、いわゆる移動床反応器もしくは流動層反応器であってもよい。
【0019】
硫黄酸化物を化学吸着するための分離器3で用いられる粒状体は、優先的には、CaOおよび/またはCa(OH)および/またはCaCOを含む。過程では、排気ガスの硫黄酸化物が、以下の反応式に従ってカルシウム含有粒状体と反応する。すなわち、Ca(OH)については、以下の反応式に従う。
Ca(OH)+SO⇔CaSO+H
Ca(OH)+SO+1/2O⇔CaSO+H
Ca(OH)+CO⇔CaCO+H
Ca(OH)+SO⇔CaSO+H
CaCOについては、以下の反応式に従う。
CaCO+SO⇔CaSO+CO
CaCO+SO+1/2O⇔CaSO+CO
CaCO+SO⇔CaSO+CO
【0020】
分離器3を通って導かれた排気ガスは、後で分離器3を通って導かれる必要がある内燃機関1を出て行く排気ガスと同時に、排気ガス後処理システム2のガス−ガス熱交換器4を通って導かれ得る。分離器3において硫黄酸化物を化学吸着する間、熱が発熱反応の結果として発生し、その結果、分離器3を通ってすでに導かれた排気ガスは、内燃機関1を出て行く排気ガスより高い温度を有しており、その結果、ガス−ガス熱交換器4では、後で分離器3を通って導かれる必要がある内燃機関1を出て行く排気ガスは、分離器3を通ってすでに導かれた排気ガスによって加熱できる。ガス−ガス熱交換器4の下流で分離器3の上流に、本発明による排気ガス後処理システム2の加熱装置5が位置付けられ、加熱装置5は、ガス−ガス熱交換器4を通って導かれ、ガス−ガス熱交換器4ですでに加熱された排気ガスの温度をさらに上昇させるように機能する。
【0021】
したがって、分離器3の上流で内燃機関1を出て行く排気ガスの加熱が、一方でガス−ガス熱交換器4において、そして、ガス−ガス熱交換器4の下流で加熱装置5においての2段階で起こる。ガス−ガス熱交換器4では、分離器3を通ってすでに導かれた排気ガスの上昇した温度が、内燃機関1を出て行く排気ガスを加熱するために利用される。内燃機関1を出て行く排気ガスは、典型的には、320℃未満の温度を有している。ガス−ガス熱交換器4によって、内燃機関1を出て行く排気ガスは、330℃と350℃との間の温度、好ましくは340℃と350℃との間の温度まで加熱され得る。分離器3の上流での排気ガスのさらなる加熱およびそれに伴う温度の上昇は、前記の温度の高さから開始して、ガス−ガス熱交換器4の下流に位置付けられた加熱装置5を介して起こり、加熱装置5は、排気ガスを、375℃と450℃との間の温度、好ましくは400℃と450℃との間の温度まで加熱する。
【0022】
硫黄酸化物を化学吸着するために、排気ガスの硫黄酸化物が分離器3のカルシウム含有粒状体と反応する分離器3の上流での排気ガスの温度制御によって、排気ガスの硫黄酸化物は、分離器3における排気ガスの滞留時間が可能とされ得るように、最適な過程温度で分離器3のカルシウム含有粒状体と反応できる。さらに、具体的には、分離器3で処理される排気ガスが上記の排気ガス温度において分離器3を通って導かれるとき、比較的少ない還元剤、したがって、比較的少ないカルシウム含有粒状体が、硫黄酸化物を化学吸着するために、分離器3で必要とされる。したがって、全体として、分離器3において、非常に効果的な排気ガス後処理または排気ガスの脱硫が確保できる。
【0023】
すでに先に説明したように、分離器3における硫黄酸化物の化学吸着、つまり、分離器3におけるカルシウム含有粒状体との排気ガスの硫黄酸化物の反応は、分離器3を通って導かれる排気ガスに留意した発熱反応である。分離器3での発熱反応の間に放出されるこの熱エネルギーは、内燃機関1を出て行く排気ガスを中間温度へとすでに上昇させたものとするために、ガス−ガス熱交換器4で利用される。このため、優先的には、燃料運転される燃焼器、または、電気加熱装置であり得る加熱装置5が、小形化され得る。このため、本発明による排気ガス後処理システム2の効率が高められ得る。
【0024】
図1に示す例示の実施形態では、SCR触媒コンバータ6が、排気ガスを脱硫するように機能する分離器3の下流に位置付けられており、SCR触媒コンバータ6は、排気ガスを脱窒するように機能する。したがって、SCR触媒コンバータ6は、図1において、分離器3の下流でガス−ガス熱交換器4の上流に位置付けられている。
【0025】
SCR触媒コンバータ6では、アンモニアが還元剤として利用されている。SCR触媒コンバータ6で利用されるアンモニアは、分離器3とSCR触媒コンバータ6との間のノズルによって、SCR触媒コンバータ6の上流で排気ガスへと直接噴射されてもよいし、代わりに、排気ガスにおいてアンモニアへと変換されるアンモニアの前駆物質が、分離器3の下流でSCR触媒コンバータ6の上流に導入されてもよい。このような前駆物質は、具体的には尿素である。
【0026】
図1の例示の実施形態では、排熱回収装置7がガス−ガス熱交換器4の下流に位置付けられており、排気ガスの残留熱が、排気ガス後処理システム2の効率をさらに高めるために、および、おおよそ100℃の温度を有する排気ガスを排気ガス後処理システム2の下流の環境へと案内するために、ガス−ガス熱交換器4の下流で利用される。
【0027】
本明細書では、SCR触媒コンバータ6が、ガス−ガス熱交換器4の下流で排気ガス後処理装置7の上流に位置付けられてもよいことが注目される。この場合、分離器3を出て行く排気ガスは、最初にガス−ガス熱交換器4を通って、次にSCR触媒コンバータ6を通って導かれる。
【0028】
図2は、内燃機関1の下流に配置された排気ガス後処理システム2の第2の例示の実施形態であり、図2の排気ガス後処理システム2は、図2の例示の実施形態では、酸化触媒コンバータ8が分離器3の上流で加熱装置5の下流に位置付けられている点において、図1の排気ガス後処理システム2と異なっている。
【0029】
酸化触媒コンバータ8では、以下の反応式に従って、SOがSOへと反応する。
2SO+O→2SO
【0030】
以下の化学元素が、SOをSOへと酸化するために、酸化触媒コンバータ8における活性成分として用いられている。すなわち、V(バナジウム)、および/または、白金/パラジウム、および/または、Fe(鉄)、および/または、Ce(セリウム)、および/または、Cs(セシウム)、および/または、これらの元素の酸化物である。バナジウム(V)の成分は、優先的には、5%超、好ましくは7%超、最も好ましくは9%超までとなる。
【0031】
基材として、酸化触媒コンバータ8は、WO(酸化タングステン)によって優先的に安定化されたTiO(酸化チタン)および/またはSiO(酸化ケイ素)を用いる。
【0032】
SOがSOよりも素早く分離器3のカルシウム含有粒状体と反応するため、分離器3の上流に、SOをSOへと酸化するための酸化触媒コンバータ8が配置されることは有利である。このため、脱硫の効果が高められ得る。優先的には、酸化触媒コンバータ8においてSOをSOへと酸化することは、酸化触媒コンバータ8の下流で、排気ガスのすべての硫黄酸化物(SO)中のSOの成分が、少なくとも20%、好ましくは40%超、最も好ましくは60%超となるようなやり方で達成される。
【0033】
図3は、図1の例示の実施形態の代替の有利なさらなる発展形態を示しており、図3の排気ガス後処理システム2は、加熱装置5の下流で分離器3の上流に、装置9が位置付けられている点において、図1の排気ガス後処理システム2と異なっている。装置9を通って、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末が、カルシウム含有粒状体を含む分離器3の上流の加熱装置5で加熱された排気ガスへと導入され得る。
【0034】
図3の排気ガス後処理システム2の装置9は、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末を内燃機関1の排気ガスへと導入するように機能し、1mm未満の粒径、優先的には0.5mm未満の粒径、最も好ましくは0.25mm未満の粒径のカルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末を排気ガスへと導入し、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末のカルシウムおよび/またはナトリウムは、少なくとも酸化段階+1を有する。
【0035】
優先的には、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末は、CaOおよび/またはCa(OH)および/またはCaCOおよび/またはNaHCOを含んでいる。
【0036】
装置9は、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末を、搬送ガスとして空気を用いるエアロゾルとして乾燥して、または、溶剤として水を用いるエマルションとして湿らせてかのいずれかで、排気ガスへと導入できる。
【0037】
このようなカルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末を吸着剤として使用すること、および、装置9を通じて排気ガスへとカルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末を上記のように導入することは、カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末が、内燃機関1の排気ガスに含まれる硫黄酸化物と、つまり、SOおよびSOと反応するための大きな表面積を確保し、その結果、硫黄酸化物は、硫酸カルシウムCaSOおよび/または硫酸ナトリウムNaSOへと効果的に変換され得る。カルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末のSOおよびSOとの反応は、典型的には、以下の反応式に従ってもたらされる。すなわち、Ca(OH)については、以下の反応式に従う。
Ca(OH)+SO⇔CaSO+H
Ca(OH)+SO+1/2O⇔CaSO+H
Ca(OH)+CO⇔CaCO+H
Ca(OH)+SO⇔CaCO+H
CaCOについては、以下の反応式に従う。
CaCO+SO⇔CaSO+CO
CaCO+SO+1/2O⇔CaSO+CO
CaCO+SO⇔CaSO+CO
NaHCOについては、以下の反応式に従う。
2NaHCO→NaCO+CO+H
NaCO+SO+1/2O→NaSO+CO
NaCO+SO→NaSO+CO
【0038】
分離器3の上流の装置9を介してカルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末を排気ガスへと導入することで、粉末の硫酸カルシウムCaSOおよび/または硫酸ナトリウムNaSOが形成され、移動床反応器または流動層反応器として形成された分離器3の粒状体と共に排出され得る。
【0039】
分離器3では、装置9を通って排気ガスへと導入されるカルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末と比較して、比較的大きな粒径、すなわち、2mm超の粒径、好ましくは3mm超の粒径、最も好ましくは4mm超の粒径を有する粒状体が用いられる。
【0040】
分離器3の粒状体は、カルシウムを含むがナトリウムを含んではいない。したがって、分離器3の粒状体はNaHCOをまったく含んでいない。NaHCOは、せいぜい、分離器3の上流の装置9を通って、比較的細かい粒の粉末として排気ガスへと導入され得る。
【0041】
分離器3には、優先的には、粒状体を介して捕捉され、移動床反応器または流動床反応器として設計された分離器3から粒状体と共に排出される硫酸カルシウムを、移動床または流動床において粒状体から分離するために、図示されていない装置が設けられる。この装置は、例えば、ドラム剥離器、ドラムスクリーン、または粉砕器であり得る。これに続いて、硫酸カルシウムのなくなった粒状体が、粒状体回路を形成するために、および、粒状体を効果的に利用するために、移動床反応器または流動床反応器へと再び供給され得る。
【0042】
内燃機関1の下流に配置された排気ガス後処理システム2のさらなる例示の実施形態が図4に示されており、図4の例示の実施形態は、図2および図3の例示の実施形態の組立体を組み合わせている。したがって、図4の排気ガス後処理システム2は、一方でSOをSOへと酸化するための酸化触媒コンバータ8と、他方でカルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末を排気ガスへと導入するための装置9とを備えている。図4によれば、装置9は、それを通ってカルシウム含有および/またはナトリウム含有の粉末が排気ガスへと導入でき、酸化触媒コンバータ8の下流に位置付けられている。したがって、酸化触媒コンバータ8は加熱装置5の下流に位置付けられており、装置9は、酸化触媒コンバータ8の下流で分離器3の上流に位置付けられている。
【0043】
内燃機関用の排気ガス後処理システム2のさらなる例示の実施形態が図5によって示されており、図5の排気ガス後処理システム2は、図2の排気ガス後処理システム2と同様に、酸化触媒コンバータ8を備え、さらにはガス状のアンモニア(NH)を排気ガスへと導入するための装置10も備えており、ガス状のNHを排気ガスへと導入するためのこの装置10は、酸化触媒コンバータ8の下流に配置されており、その結果、NHは、酸化触媒コンバータ8の上流で内燃機関1の排気ガスへと導入される。
【0044】
ここで、NHそのものをガス状の形態で排気ガス流へと直接的に導入すること、または、例えば尿素などのNH前駆物質を排気ガス流へと噴射し、排気ガス流でNH前駆物質をNHへと蒸発させることが、提供され得る。ガス状のNHを酸化触媒コンバータ8の上流への排気ガス流へと導入することは、これによって行われる排気ガスの脱窒によって、続く脱硫が改善され得るという利点を有している。
【0045】
図1から図5に示す排気ガス後処理システム2では、移動床反応器または流動床反応器として設計された多段分離器3が、硫酸カルシウムと、適切な場合には硫酸ナトリウムとの分離を改善するために用いられてもよく、具体的には、多段分離器3が使用される場合、異なる粒径の粒状体が、分離器3の個々の段で使用される。したがって、分離器3の個々の段では、粒状体の粒径が互いと異なっている。優先的には、直交流分離器として設計された分離器3が利用される。
【0046】
本発明は、排気ガスターボ過給機を備える排気ガス過給内燃機関で用いられてもよい。したがって、このような場合、少なくとも粒子分離器3は、図示されていない排気ガスターボ過給機のタービンの下流に位置付けられることが、優先的に提供される。適切な場合には、酸化触媒コンバータ8は、タービンの上流にある高圧と排気流の高温とが酸化触媒コンバータ8におけるSOのSOへの酸化に好ましいため、優先的には、このようなタービンの上流に位置付けられる。
【0047】
本発明は、内燃機関用の排気ガス後処理システムと、内燃機関を出て行く排気ガスの排気ガス後処理のための方法とを提案し、排気ガスの脱硫が、カルシウム含有粒状体を備える分離器3で実施される。
【0048】
分離器3において最適な運転条件でこの脱硫を実施するために、内燃機関1を出て行く排気ガスが、分離器3の上流で、優先的には400℃と450℃との間のプロセス温度へと、つまり、多段において、最初にガス−ガス熱交換器4で次に加熱装置5において、加熱される。ガス−ガス熱交換器4は、内燃機関1を出て行く排気ガスを中間温度へと加熱するために、脱硫の間に分離器3で受け取った熱エネルギーを利用し、その結果として、加熱装置5の熱出力が低減できる。加熱装置5は、電気的に運転される加熱装置、または、具体的に重油といった、ガス状もしくは液状の燃料で運転される燃焼器であり得る。
【0049】
すでに上記で説明したように、分離器3のカルシウム含有粒状体または石灰に基づいた粒状体での硫黄酸化物の化学吸着は、充填層反応器として、または、移動床反応器として具体化された、カルシウム含有粒状体を含む分離器3で起こり、この反応は発熱し、したがって熱エネルギーを放出する。分離器3は、分離器3での熱損失を低減するために二重壁で具体化され得る。したがって、分離器3は、内燃機関を出て行く排気ガスをガス−ガス熱交換器で加熱するための、発熱反応によって解放された熱エネルギーを、よりよく利用できる。
【0050】
分離器3の下流のSCR触媒コンバータ6の任意の利用は、排気ガスの脱窒を可能にし、具体的には、アンモニア前駆物質としての尿素は、分離器3の下流かつSCR触媒コンバータ6の上流で排気ガスへと導入されるとき、粒子分離器3の下流にある高い温度のため、尿素にとっての短い蒸発距離は適切である。すでに脱窒された排気ガスがSCR触媒コンバータ6を通って導かれるという事実のため、SCR触媒コンバータ6の目詰まりの危険性はない。
【0051】
すべての示した実施形態では、任意の排熱回収装置7が、ガス−ガス熱交換器4の下流に位置付けられている。これは、例えば、排気ガスの残留熱が電力を発生させるために利用される蒸気タービンであり得る。先に実施された排気ガスの脱硫のため、落下するHSOによる腐食が排熱回収装置7の領域で成長する危険性はない。
【0052】
前述のように、本発明による排気ガス後処理システム2は、最適に適合された温度管理によって特徴付けられる。内燃機関1を出て行く排気ガスは、典型的には、320℃未満の温度を有している。内燃機関1を出て行く排気ガスの温度は、例えば、影響する排気ガスの絞り、または、ウェイストゲートによるといった、エンジン側での内燃機関1における干渉によって、ある程度まで上昇され得る。内燃機関1を出て行く排気ガスは、ガス−ガス熱交換器4を通って、おおよそ350℃の温度まで加熱され得る。加熱装置5の領域では、排気ガスは、分離器3で硫黄酸化物を化学吸着するための最適なプロセス温度を提供するために、優先的には、360℃と450℃との間の温度まで続いて加熱される。分離器3でのこの化学吸着は、発熱反応であり、分離器3を出て行く排気ガスはより高い温度を有する。すでに分離器3を通って導かれた排気ガスのこの上昇した温度は、ガス−ガス熱交換器4で利用される。任意で存在し、示した例示の実施形態では分離器3とガス−ガス熱交換器4との間に位置付けられたSCR触媒コンバータ6では、排気ガスの温度の小さな低下しか起こらない。ガス−ガス熱交換器4の下流では、排気ガスの残留熱が、電気エネルギーを発生するための排気ガス後処理装置7で有利に利用されている。排熱回収装置7の下流の温度は、最大でおおよそ120℃である。
【符号の説明】
【0053】
1 内燃機関
2 排気ガス後処理システム
3 分離器
4 ガス−ガス熱交換器
5 加熱装置
6 SCR触媒コンバータ
7 排熱回収装置、排気ガス後処理装置
8 酸化触媒コンバータ
9 装置
10 装置
図1
図2
図3
図4
図5