(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記情報入力部における上記経路計画部は、上記環境地図内の上記走行障害物に対して、上記接触入力部を介してユーザの指先でタッチしても走行経路として対象外とし、ティーチング終了時点で上記走行経路エリアを確定する
ことを特徴とする請求項1に記載の自律移動体の走行経路教示システム。
上記情報入力部は、ユーザにより上記接触入力部を介して上記自律移動体の格納位置から緊急時に配置させたい所望の滞留位置まで指先でなぞって設定された走行経路を記憶しておき、
上記自律移動体は、接続端子を介して外部機器が導通接続された場合に当該外部機器に対して電力供給する駆動用バッテリと、放送無線による緊急情報を受信する受信部とを有し、当該緊急情報を受信するタイミングに同期して上記滞留位置を目的位置として走行する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自律移動体の走行経路教示システム。
外部環境に対して自己の位置を推定すると同時に、平面的または立体的な環境地図を作成するセンサ機能を有する自律移動体の走行経路を、情報入力部を用いて、当該自律移動体から無線通信を介して受信した上記環境地図を画面表示させた状態で、当該環境地図内にてユーザが指先でなぞりながら所望状態にティーチングするようになされた自律移動体の走行経路教示方法において、
上記情報入力部は、上記環境地図内における全ての領域について、上記自律移動体の走行障害物の表面位置から自律移動体の体幅の半分までの距離間を保つ緩衝領域を設定した後、表示されている上記環境地図上を、ユーザの指先により指定された開始位置を基準として、当該指先による接触状態が維持されながら枠線を描くように一筆書きにて元の上記開始位置に再び一致して閉ループが作成された時点において、当該閉ループの内部領域を全て走行可能に網羅する走行経路エリアとして決定し、当該走行経路エリアに対して外部環境や事前設定条件に応じた最適な走行経路を計画しておき、
上記自律移動体は、計画された走行経路上を走行する際、当該走行経路の中心ラインと上記緩衝領域との近接状態を検知しながら、当該走行経路の中心ラインと上記緩衝領域の境界線との距離が所定距離になった時点から自己の走行速度に応じて減速度合いを調整し始め、上記走行障害物と接触する直前の位置で一時停止すると同時に、当該走行経路の中心ラインが上記緩衝領域の境界線に可能な限り近い位置関係を保ち続けるように、上記走行経路の進行方向を補正する
ことを特徴とする自律移動体の走行経路教示方法。
【背景技術】
【0002】
近年、自動清掃ロボットなどの自律走行可能なロボットには、外部環境に対して自己の位置を推定すると同時に環境地図を作成するSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術が搭載されたものが数多く提案されている。
【0003】
このSLAM技術を用いた自律走行ロボットは、高精度に自己の位置を推定しながら、実空間内に存在する物体の3次元位置を表現する環境地図を動的に生成することにより、自己の移動経路を特定して環境内を自律的に移動するようになされている。
【0004】
このような自走式ロボットに対しては、事前にその移動環境内で最適な走行経路をティーチングして環境地図を作成しておく場合が多い。
【0005】
例えば、特許文献1においては、走行ロボットを経路に沿って人間が動かしながら経路情報をティーチングする。その際、走行経路を複数のパスに分割して、各パスごとに経路情報をサインパターン情報と共に設定しておき、これらに基づいてロボットを走行制御するようになされている。
【0006】
また特許文献2においては、自走式介護ロボットについて、タッチパネルを用いて教示した目的位置と進行方向に応じた移動ルートを生成し、障害物を検知した際には当該移動ルートを変更し得るものが開示されている。
【0007】
さらに特許文献3は、計画された走行経路に沿って目的位置まで自律的に走行する自律走行装置を開示している。この自律走行装置は、障害物が存在する障害物領域を示したマップにおいて自己位置を推定するとともに、自律走行装置の走行可能領域を抽出し、この走行可能領域において自己位置から目的位置までの走行経路を計画し、この計画した走行経路に沿って自己位置から目的位置まで走行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、自走式ロボットに対して移動可能範囲内で予め走行ルートを教示する手法は多々考えられるが、上述のタッチパネルを用いて走行ルートを指定した場合、実際に自走式ロボットが走行しながら障害物に特面すると、その障害物を回避したり停止したりする。
【0010】
その際、予め指定した目的地に対して安全な迂回経路を探索する方法をとるが、それだけでは、自走式ロボットの走行目的に沿った最適なルート選択をするには至らない問題があった。単に迂回するのではなく、ユーザが指定した走行経路になるべく忠実に自走式ロボットを走行させるのが望ましい。
【0011】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ユーザによるティーチングをなるべく忠実に反映させることができる自律移動体の走行経路教示システムおよび走行経路教示方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため本発明においては、外部環境に対して自己の位置を推定すると同時に、平面的または立体的な環境地図を作成するセンサ機能を有する自律移動体と、自律移動体と無線通信を介して各種情報を送受信する送受信部と、当該送受信部を介して受信した環境地図を画面表示する表示部と、当該表示部に表示された環境地図
上をユーザが指先でなぞりながら自律移動体の走行経路を所望状態にティーチングするための接触入力部とを有する情報入力部と、を備える自律移動体の走行経路教示システムにおいて、情報入力部は、環境地図内における全ての領域について、自律移動体の走行障害物の表面位置から自律移動体の体幅の半分までの距離間を保つ緩衝領域を設定する領域設定部と、表示部に表示されている環境地図上を、接触入力部を介してユーザの指先により指定された開始位置を基準として、当該指先による接触状態が維持されながら枠線を描くように一筆書きにて元の開始位置に再び一致して閉ループが作成された時点において、当該閉ループの内部領域を全て走行可能に網羅する走行経路エリアとして決定し、当該走行経路エリアに対して外部環境や事前設定条件に応じた最適な走行経路を計画する経路計画部と、を有し、自律移動体は、経路設計部により計画された走行経路上を走行する際、当該走行経路の中心ラインと緩衝領域との近接状態を検知しながら、当該走行経路の中心ラインと緩衝領域の境界線との距離が所定距離になった時点から自己の走行速度に応じて減速度合いを調整し始め、走行障害物と接触する直前の位置で一時停止すると同時に、当該走行経路の中心ラインが緩衝領域の境界線に可能な限り近い位置関係を保ち続けるように、走行経路の進行方向を補正する経路補正部と、を有するようにした。
【0013】
かかる構成によれば、自律移動体を可能な限り走行障害物に近接するぎりぎりの位置で一時停止させると同時にその位置関係を維持しながら走行させることができ、ユーザが所望する走行経路に可能な限り忠実に走行誤差を補正することができ、より一層ユーザによるティーチングの曖昧さを解消することが可能となる。
【0014】
さらに本発明においては、情報入力部における経路計画部は、環境地図内の走行障害物に対して、接触入力部を介してユーザの指先でタッチしても走行経路として対象外とし、ティーチング終了時点で走行経路エリアを確定するようにした。
【0015】
さらに本発明においては、情報入力部は、ユーザにより接触入力部を介して自律移動体の格納位置から緊急時に配置させたい所望の滞留位置まで指先でなぞって設定された走行経路を記憶しておき、自律移動体は、接続端子を介して外部機器が導通接続された場合に当該外部機器に対して電力供給する駆動用バッテリと、放送無線による緊急情報を受信する受信部とを有し、当該緊急情報を受信するタイミングに同期して滞留位置を目的位置として走行するようにした。この結果、災害や火事等の緊急時に自律移動体が予め指定しておいた所望の滞留位置に自動的に移動してくるため、利用者は自ら場所移動することなく、その自律移動体を非常用電源として活用することが可能となる。
【0016】
さらに本発明においては、外部環境に対して自己の位置を推定すると同時に、平面的または立体的な環境地図を作成するセンサ機能を有する自律移動体の走行経路を、情報入力部を用いて、当該自律移動体から無線通信を介して受信した環境地図を画面表示させた状態で、当該環境地図内にてユーザが指先でなぞりながら所望状態にティーチングするようになされた自律移動体の走行経路教示方法において、情報入力部は、環境地図内における全ての領域について、自律移動体の走行障害物の表面位置から自律移動体の体幅の半分までの距離間を保つ緩衝領域を設定した後、表示されている環境地図上を、ユーザの指先により指定された開始位置を基準として、当該指先による接触状態が維持されながら枠線を描くように一筆書きにて元の開始位置に再び一致して閉ループが作成された時点において、当該閉ループの内部領域を全て走行可能に網羅する走行経路エリアとして決定し、当該走行経路エリアに対して外部環境や事前設定条件に応じた最適な走行経路を計画しておき、自律移動体は、計画された走行経路上を走行する際、当該走行経路の中心ラインと緩衝領域との近接状態を検知しながら、当該走行経路の中心ラインと緩衝領域の境界線との距離が所定距離になった時点から自己の走行速度に応じて減速度合いを調整し始め、走行障害物と接触する直前の位置で一時停止すると同時に、当該走行経路の中心ラインが緩衝領域の境界線に可能な限り近い位置関係を保ち続けるように、走行経路の進行方向を補正するようにした。
【0017】
かかる構成によれば、自律移動体を可能な限り走行障害物に近接するぎりぎりの位置で一時停止させると同時にその位置関係を維持しながら走行させることができ、ユーザが所望する走行経路に可能な限り忠実に走行誤差を補正することができ、より一層ユーザによるティーチングの曖昧さを解消することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザによるティーチングと実際の自律走行ロボットとの走行誤差を効率的かつ自動的に補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0022】
(1)本実施の形態による自律走行ロボットの構成
図1(A)〜(C)において、1は全体として本実施の形態による自律走行ロボットを示す。本自律走行ロボット1は、自律的又は外部操作に応じて自走可能な二輪駆動型移動体であり、駆動二輪が直径をなすように取り付けられた略円盤状の走行ベース部2と、その平面上部から植立した略コ字状のセンサ保持部3とを備える。
【0023】
走行ベース部2は、本体下部に設けられ、前後方向中央位置の左右に設けられた一対の駆動輪4a、4bと、前後にそれぞれ設けられて自律走行ロボット1の走行に応じて揺動自在な前キャスタ5a及び後キャスタ5bとを備える。左右の駆動輪4a、4bはそれぞれ駆動モータ6a、6bによってそれぞれ独立して回転駆動し、駆動輪4a、4bの前進回転或いは後進回転によって前進及び後進し、駆動輪4a、4bの前進回転速度に差を与えることによって前進しつつ右或いは左に走行する。また、駆動輪4a、4bを互いに逆方向に回転駆動することによって自律走行ロボット1がスピン、即ちその位置で方向転換する。
【0024】
走行ベース部2における前キャスタ5aより前部位置には、斜め前方方向及び左右方向の障害物の検知を行うレーザレンジセンサ7が設けられている。またセンサ保持部3の上部中央には、3次元スキャン可能なRGB−Dセンサ8が設けられている。
【0025】
具体的にレーザレンジセンサ7は、設置位置から見た対象物(障害物)に照射し、その反射光を受光して距離を算出する。これを一定角度間隔で距離を測定することにより、平面上に扇状の距離情報を最大30m、角度270度の範囲で得ることができる。
【0026】
またRGB−Dセンサ8は、RGBカラーカメラ機能に加えて、当該カメラから見た対象物(障害物)までの距離を計測できる深度センサを有し、対象物の3次元スキャンを行うことができる。この深度センサは赤外線センサからなり、構造化光の単一のパターンを対象物に投影した状態で対象を撮影し、そのパラメータを用いて三角測量により画像上の各点のデプスを算出する。
【0027】
例えばRGB−Dセンサ8として、例えばKinect(マイクロソフト社、登録商標)を適用した場合、水平視野57度、垂直視野43度、センサ範囲は1.2m〜3.5mの範囲を撮影することが可能であり、RGB画像は640×480、Depth(深度)画像は320×240画素で共に30フレーム/秒で取得できる。
【0028】
RGB−Dセンサ8をセンサ保持部3の上部中央に設置したのは、ほぼ床面に近い走行ベース部では垂直視野が確保できないためであり、床面から0.6m〜1.8mの高さ確保が必要となる。
【0029】
図2は、自律走行ロボット1に搭載される統括制御部10の構成図である。統括制御部10はマイクロコンピュータを主体として構成され、全体の制御を司る走行制御部11、走行経路情報を記憶する目標走行経路記憶部12、および、駆動系を制御する作動制御部13を備える。
【0030】
走行制御部11は、予め設定された走行経路情報を記憶する目標走行経路記憶部12からの走行経路情報と、レーザレンジセンサ7およびRGB−Dセンサ8による各検出信号に基づいて自己位置推定と後述する環境地図の構築を同時に行いながら、走行経路の適否や変更の要否を判断したり、走行障害物の有無を判断する。
【0031】
本実施の形態では例えばオフィスフロアにおける自律走行ロボット1がティーチングされた走行経路上を走行する際に壁面や階段直前などの走行障害物に接触するか否かを判断し、接触する直前に一旦停止して当該走行経路に沿う方向に走行経路を変更する。走行制御部11は決定した走行経路情報を作動制御部13に送り、作動制御部13は、該走行経路情報に応じて、左右のモータドライバ14a、14bを制御し、駆動モータ6a、6bの回転を制御する。
【0032】
実際に自律走行ロボット1は、上述したSLAM技術を利用して、ユーザが所望する対象エリアの環境地図を自動的に作成する。
【0033】
具体的には自律走行ロボット1は、レーザレンジセンサ7から得られる対象物との距離情報および角度情報に基づいて、2次元格子で区切ったグリッド上の局所地図を移動環境を示すエリアとして設定していきながら、所望の対象エリア全体を表す環境地図を作成する。
【0034】
それと同時に自律走行ロボット1の一対の駆動輪4a、4bに対応するエンコーダ(図示せず)から読み出された回転角度に基づいて、自機の走行量を演算し、次の居所地図と現時点までに作成された環境地図とのマッチングおよび自機の走行量から自己位置を推定する。
【0035】
また自律走行ロボット1は、後述する情報入力装置と無線通信する通信部15を備え、統括制御部10の制御に応じて、上述した環境地図のデータを送信するとともに、外部の情報入力装置20(
図3参照)からの操作指示の内容を示すデータを受信する。
【0036】
さらに自律走行ロボット1は、二次電池またはキャパシタからなる比較的大容量の駆動用バッテリ16を内蔵しており、外部との給電台(図示せず)に設けられた給電端子に駆動用バッテリ16の充電端子を導電接続させることにより、商用電源から供給される電力を当該給電端子を介して駆動用バッテリ16に供給して充電することが可能となる。
【0037】
一方、自律走行ロボット1は、内蔵する駆動用バッテリ16を緊急時の非常用電源として利用できるようになされている。すなわち、自律走行ロボット1の走行ベース部2には、商用電源のプラグ受け(差込み口)と同一規格のプラグ受けが設けられ、当該プラグ受けは内蔵する駆動用バッテリ16と導通接続されている。これにより種々の汎用機器の差込プラグをベース部に設けられたプラグ受けに差し込むことにより、商用電源と同様に電力供給が可能となる。
【0038】
(2)情報入力装置の構成
情報入力装置20は、
図3に示すように、タッチパネル式のディスプレイ21が本体前面に配置され、その背面にはCPU、グラフィックプロセッサユニット、サウンドプロセッサ、メモリなど各種情報処理に必要な機構がバッテリとともに内蔵されている。
【0039】
ディスプレイ21は、例えば液晶パネルまたは有機EL(Electric Luminescence)パネルから構成され、上面が例えば抵抗膜方式または静電容量結合式によるタッチパネル22に覆われている。また情報入力装置20は、自律走行ロボット1や他の外部装置との通信を行う赤外線ポートや無線LANなどの通信部23(後述する
図4)を備えている。
【0040】
ディスプレイ21には、メニュー画面、アイコンなどユーザの操作入力に必要な画面、 情報処理の結果である環境地図画像などを機能に応じて表示する。さらにユーザが操作入力を行うためGUI(Graphical User Interface)をオンスクリーン表示する。ユーザは当該GUIを操作するように、タッチパネル22上を手指で触れたり手指を滑らせたりすることにより、情報入力装置20への操作入力を行う。
【0041】
図4に情報入力装置20の構成を示し、制御部25は、タッチパネル22、ディスプレイ21、情報記憶部26、通信部23と接続され、各種データの入出力を制御する。タッチパネル22から受信する入力信号は、タッチパネル22上でユーザが触れた接触点の座標、接触点が連続的に移動したときの座標の移動経路などである。制御部25は、タッチパネル22に表示画像のビデオ信号を出力する。
【0042】
また制御部25は、情報記憶部26にアクセスし、各種コンテンツの処理に必要なプログラムや各種データを読み出したり、GUI用画像としての十字キーやボタンなどの素材画像データを読み出す。情報記憶部26は、メモリやハードディスクなどの記憶装置であり、圧縮符号化されたビデオデータとそれを復号再生するためのプログラムを記憶する。また情報記憶部26は、十字キーや各種ボタンなど、GUI画像の素材となる画像データを記憶し、GUIの操作に応じて変化するバリエーションに富む画像データを複数記憶している。
【0043】
制御部25は、タッチパネル22からの入力信号を受けると、当該信号に含まれる接触点の座標などを操作内容の情報へ変換する。すなわち制御部25は、取得した接触点の座標と、現在表示されているGUIの種類とに基づいて、ユーザによる操作内容を特定し、当該操作内容に基づき、必要に応じてGUIの新たな画像を生成する。従って制御部は、操作内容と対応する画像の変化、新たに用いる画像の識別情報などを対応付けた情報を情報記憶部に記憶しておく。そして制御部は、現在表示されているGUIに対して、新たな操作内容に応じたGUIの画像データを情報記憶部から適宜読み出してオンスクリーン画像のデータを生成する。
【0044】
次に本実施の形態におけるGUI画面の具体例を
図5に示す。本実施の形態では自律走行ロボット1の走行環境を表すオフィスフロアの2次元地図を表示する。このオフィスフロアの平面図では、実際に自律走行ロボット1が走行可能な床面エリアのみタッチ操作にて走路指定できるようにGUI表示されている。
【0045】
すなわち床面エリアに対してはユーザが指先でタッチして走路を表す軌跡を線状に描くことが可能であるが、壁面や柱などの床面以外の構造物に対してはユーザが指先でタッチしても全く無反応で軌跡等が描けないようにGUI表示されている。
【0046】
なお、走路指定は、指による軌跡描画のみならず、
図6に示すように、例えば十字キーのGUI画面30を御スクリーン表示させ、任意の方向および移動量をタッチ操作により入力するようにしてもよい。
【0047】
(3)ティーチングによる走行経路設定方法
次に自律走行ロボット1に対して、環境地図内の走行可能な全ての経路を含む対象領域(以下、走行経路エリアという。)を情報入力装置20を用いてティーチングにより設定する方法について説明する。
【0048】
ユーザが情報入力装置20を把持しながら、タッチパネル22の表示画面に表示されている環境地図(例えばオフィスエリアの室内案内図)上を、指先でなぞりながら所望の走行経路をティーチング(教示・誘導)する。
【0049】
その際、情報入力装置20の制御部25は、自律走行ロボット1が環境地図内の走行経路エリア以外の壁や柱、階段、エレベータ等の走行障害物に対して、ユーザが指先でタッチしても走行経路として無反応(対象外)となり、ティーチング終了時点で走行経路エリアを確定する。
【0050】
(3−1)最適経路自動設定方法
ここで情報入力装置20におけるティーチングのモードを「最適経路自動設定モード」に切り替えた場合、タッチパネル22の表示画面上をユーザが指先で一筆書きにより枠線を描くことにより、当該枠線内の領域を走行経路エリアとして、外部環境や事前設定条件に応じた最適な走行経路を自動的に計画するようになされている。
【0051】
制御部25は、タッチパネル22の表示画面上をユーザの指先により指定された開始位置を基準として、当該表示画面上を指先による接触状態が維持されながら一筆書きが描かれ、元の基準位置に再び一致して閉ループが作成された時点において、その閉ループの内部領域を走行経路エリアとして決定する。
【0052】
そして制御部25は、走行経路エリアにおける最外周(指先でなぞった枠線対応経路)を走行経路とするのではなく、当該走行経路エリアの内部領域を全て自律走行ロボット1が走行可能に網羅するように最適な走行経路を自動的に選定する。
【0053】
その走行経路の最適パターンとして、走行経路エリアを自律走行ロボット1の体幅を基準とするブロック領域に分割し、各ブロック領域を繋ぎ合わせて開始位置から帰還するまでの距離が最短となるように一本の走行経路を計画する。
【0054】
また、自律走行ロボット1が掃除機能を有している場合には、例えばオフィスフロアの床面の埃検知状態、監視カメラの撮像結果に基づく通行者の検知数履歴、床面の種類(大理石や絨毯など)等の外部環境に応じて、走行速度や走行回数(反復回数)を調整して計画することが可能である。
【0055】
(3−2)緩衝エリア設定方法
実際に自律走行ロボット1が上述した走行経路エリア内を走行する際、推定した自己位置(指先で指示したポイント位置)と例えばオフィスフロア内の壁面や柱、階段、エレベータ等の走行障害物との距離が、自律走行ロボット1の円盤状の走行ベース部2の体幅の2分の1(中心位置からの外縁までの半径距離)(以下、これを半径長幅という)よりも短い場合は、当該走行障害物と衝突等するおそれがある。
【0056】
このため情報入力装置20の制御部25は、
図7に示すように、環境地図内における全ての領域について、壁面や柱等の走行障害物の表面位置から自律走行ロボット1の走行ベース部2の半径長幅までの距離間を保つ衝突回避用の領域(以下、これを緩衝エリアという)を設定する。
【0057】
そしてユーザがタッチパネル22の表示画面上を指先でなぞりながら走行経路エリアを指定した後、実際に自律走行ロボット1がその走行経路エリアを走行する際、統括制御部10は、当該走行経路エリア内の全ての走行経路におけるライン中心が緩衝エリアに近接するか否かを、レーザレンジセンサ7およびRGB−Dセンサ8の各センサ結果に基づいて検知する。
【0058】
統括制御部10は、指定された走行経路のライン中心と緩衝エリアとの近接状態を検知しながら、衝突可能性が高い所定状態に達した時点、すなわち
図8(A)に示す走行経路の中心ラインと緩衝エリアの境界線との距離が所定距離L1になった時点から一対の駆動輪4a、4bに対応する駆動モータ6a、6bを制御して徐々にブレーキをかけ始める。
【0059】
続いて統括制御部10は、走行ベース部2が走行障害物と接触する直前の位置、すなわち
図8(B)に示す走行経路の中心ラインと緩衝エリアの境界線との距離が所定距離L2になった位置で一時停止させると同時に、走行経路のライン中心が緩衝エリアの境界線に可能な限り近い位置関係(衝突回避可能な位置関係)を保ち続けるように、各駆動モータ6a、6bを制御して走行ベース部2を角度αだけ回転させて自律走行ロボット1の進行方向を補正する。
【0060】
ここで、統括制御部10は、緩衝エリアへの近接時の自律走行ロボット1の走行速度に応じて、一対の駆動輪4a、4bに対するブレーキの度合いを調整するように各駆動モータ6a、6bを制御する。すなわち、統括制御部10は、緩衝エリアへの近接時の走行速度に比例してブレーキ度合いが大きくなるように制御することにより、自律走行ロボット1を走行障害物との接触を限りなく回避可能な近接位置にて停止させることができる。
【0061】
このようにしてユーザは情報入力装置20を用いて走行経路エリアを指定した際、環境地図内の走行障害物に対して自律走行ロボット1の走行ベース部2の体幅が全く考慮されていない場合でも、自動的に走行経路エリア内の全ての走行経路を補正する。この結果、自律走行ロボット1は、走行時に走行障害物と接触することなく、その直前で一時停止すると同時に進行方向を切り替えて元の走行経路に沿って走行し続けることができる。
【0062】
(4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態によれば、ユーザが情報入力装置20のタッチパネル22の表示画面を指先でなぞりながら走行経路エリアを指定した際、自律走行ロボット1の走行ベース部2が壁面や柱などの走行障害物と接触しないように、当該走行経路エリア内の該当する走行経路を補正演算するようにした。この結果、ユーザによるティーチングと実際の自律走行ロボット1との走行誤差を効率的かつ自動的に補正することができる。
【0063】
特に自律走行ロボット1が走行経路エリア内において、緩衝エリアへの近接状態に合わせながらブレーキをかけて走行障害物の手前で一時停止すると同時に、緩衝エリアの境界線に可能な限り近い位置関係を保ち続けるように走行経路の方向を変更することにより、より一層ユーザによるティーチングの曖昧さを解消することが可能となる。
【0064】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、自律走行ロボット1を、主としてオフィスフロア内の自律型掃除ロボットとして適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、自走式搬送用ロボット、建設現場や農薬散布などの自走式作業ロボット、自動セキュリティロボット、介護等の歩行ガイドロボットなどの種々の自走式ロボットに適用することができる。
【0065】
特に、本発明の自律走行ロボット1は、内蔵する駆動用バッテリ16(
図2)を緊急時の非常用電源として利用する場合、自律移動型の電源供給ロボットとして適用することができる。例えば病院内において地震や火事等の災害時に待合室や共有広場などに自律走行ロボットを自律的に移動させることにより、商用電源が遮断された場合でも供給電源を確保することが可能となる。
【0066】
具体的には、情報入力装置20におけるティーチングのモードを「緊急時滞留モード」に切り替えた場合、例えばディスプレイ21の表示画面に環境地図として病院内フロアを表示させておき、自律走行ロボット1の格納位置から緊急時に配置させたい所望の滞留位置(待合室や共有広場など)まで、ユーザがタッチパネル22を指先でなぞって走行経路を設定しておく。この結果、自律走行ロボット1は、地震や火事等の災害時に病院内の緊急警告信号を受信するタイミングに同期して、事前にユーザにより設定された所望位置を目的位置として自律的に走行する。かくして利用者は自ら場所移動することなく、その自律走行ロボット1を非常用電源として活用することが可能となる。