特許第6636315号(P6636315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6636315コンクリート躯体の爆破におけるひび割れを制御するための装薬方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636315
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】コンクリート躯体の爆破におけるひび割れを制御するための装薬方法
(51)【国際特許分類】
   F42D 3/02 20060101AFI20200120BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   F42D3/02
   E04G23/08 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-248939(P2015-248939)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-116127(P2017-116127A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山地 宏志
(72)【発明者】
【氏名】中森 純一郎
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/084207(WO,A1)
【文献】 特開2009−144450(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104533418(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104453898(CN,A)
【文献】 特開2014−001592(JP,A)
【文献】 特開昭57−098800(JP,A)
【文献】 特開2003−269069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42D 3/00− 3/06
E04G 23/08
E21C 37/00−37/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体の爆破におけるひび割れを制御するための装薬方法であって、
前記コンクリート躯体の表面から所定の深さの装薬孔を形成するステップと、
前記コンクリート躯体の表面において前記装薬孔を通る第1直線上の互いに前記装薬孔を挟む位置に配置された第1及び第2ひび割れ誘導孔、並びに前記コンクリート躯体の表面において前記装薬孔を通りかつ前記第1直線と所定の角度をなす第2直線上の互いに前記装薬孔を挟む位置に配置された第3及び第4ひび割れ誘導孔を形成するステップと、
前記装薬孔の中に爆薬を配置するステップと、
を備え
前記第1〜第4ひび割れ誘導孔の直径は、それぞれ、前記装薬孔の直径より大きいことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記所定の角度は、60°〜120°であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1〜第4ひび割れ誘導孔は、各々の前記装薬孔からの距離が最大抵抗線長の0.5倍〜1.5倍となるように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1〜第4ひび割れ誘導孔の前記装薬孔からの距離は互いに等しいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記装薬孔及び前記第1〜第4ひび割れ誘導孔からなるグループは、互いに間隔をおいて複数形成され、
複数の前記装薬孔にそれぞれ配置された前記爆薬は、順次起爆されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記装薬孔及び前記第1〜第4ひび割れ誘導孔からなるグループは、前記装薬孔、前記第1及び第3ひび割れ誘導孔、並びに前記第2及び第4ひび割れ誘導孔が、それぞれ1列に並ぶように互いに間隔をおいて複数形成され、
複数の前記装薬孔にそれぞれ配置された前記爆薬は、同時に起爆されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート躯体において爆破によるひび割れを制御するための装薬方法に関する。特にコンクリート躯体の解体等を目的として爆破を行う際に生じるひび割れの方向及び範囲を制御するための装薬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート躯体の解体工において、コンクリート躯体は、所定の範囲にひび割れが形成され、その自重等によりひび割れ部分から崩壊して解体される場合がある。例えば、そのひび割れは、装薬孔をコンクリート躯体に形成して、爆薬を装薬孔に装填して爆破させることによって形成される。そのメカニズムは、爆薬を装填された装薬孔の表面で爆薬の膨張エネルギーが運動エネルギーに変換され、このエネルギー変化によって生じる衝撃波が伝播することで、ひび割れが形成されるというものである。この衝撃波は起爆点から球状に伝播するため、単に装薬孔を設けて爆薬を爆破しただけでは、ひび割れの発生方向を任意の方向に誘導することや、ひび割れの発達を特定の範囲内に抑制することはできない。そこで、このひび割れの発生方向等を制御するための方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、装薬孔と空孔とを1つの線上に、交互に配置する方法が記載されている。この方法によると、互いに隣り合う2つの装薬孔の間に空孔が存在するため、装薬孔に装填された爆薬の爆発によって装薬孔から空孔に到達するひび割れが生じやすくなり、装薬孔と空孔とを結ぶ破断面が形成されやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−1912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、装薬孔と空孔とを結ぶ破断面以外にもひび割れが発生するおそれが高かった。本発明は、コンクリート躯体を爆破する際に、より効率的に爆薬の爆発によるエネルギーを利用して環境への負荷を低減し、かつひび割れの発生を高精度に制御できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面は、コンクリート躯体(2)の爆破におけるひび割れ(18)を制御するための装薬方法であって、前記コンクリート躯体の表面から所定の深さの装薬孔(10)を形成するステップと、前記コンクリート躯体の表面において前記装薬孔を通る第1直線(14)上の互いに前記装薬孔を挟む位置に配置された第1及び第2ひび割れ誘導孔(12a,12b)、並びに前記コンクリート躯体の表面において前記装薬孔を通りかつ前記第1直線と所定の角度(θ)をなす第2直線(16)上の互いに前記装薬孔を挟む位置に配置された第3及び第4ひび割れ誘導孔(12c,12d)を形成するステップと、前記装薬孔の中に爆薬(8)を配置するステップとを備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ひび割れが第1直線及び第2直線に沿った方向に発生し、そのひび割れの進展は、第1〜第4ひび割れ誘導孔又はその近傍で停止するため、ひび割れの方向を制御できる。また、爆薬の爆破によるエネルギーがこれらのひび割れに集中するため、爆薬の量を減らして環境への負荷を低減でき、効率的にコンクリートを破壊することができる。
【0008】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記所定の角度は、60°〜120°であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、概ね、第1直線及び第2直線に沿った方向にのみひび割れを発生させることができる。
【0010】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記第1〜第4ひび割れ誘導孔は、各々の前記装薬孔からの距離が最大抵抗線長(W)の0.5倍〜1.5倍となるように配置されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、確実にひび割れを発生させるように第1〜第4ひび割れ誘導孔の位置を設定できる。
【0012】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記第1〜第4ひび割れ誘導孔の直径は、それぞれ、前記装薬孔の直径より大きいことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1〜第4ひび割れ誘導孔で反射及び回折する衝撃波の割合が増加し、ひび割れの発生方向及び進展範囲の制御がより確実になる。
【0014】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記第1〜第4ひび割れ誘導孔の前記装薬孔からの距離は互いに等しいことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1〜第4ひび割れ誘導孔の配置が対称形になり、ひび割れの進展が概ね均等になる。
【0016】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記装薬孔及び前記第1〜第4ひび割れ誘導孔からなるグループは、互いに間隔をおいて複数形成され、複数の前記装薬孔にそれぞれ配置された前記爆薬は、順次起爆されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、各グループにひび割れが形成されるため、広範囲にひび割れを形成することができる。
【0018】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記装薬孔及び前記第1〜第4ひび割れ誘導孔からなるグループは、前記装薬孔、前記第1及び第3ひび割れ誘導孔、並びに前記第2及び第4ひび割れ誘導孔が、それぞれ1列に並ぶように互いに間隔をおいて複数形成され、複数の前記装薬孔にそれぞれ配置された前記爆薬は、同時に起爆されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、装薬孔がなす列に沿ってひび割れを発生させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、効率的に爆薬の爆発によるエネルギーを利用して環境への負荷を低減し、かつコンクリート躯体へのひび割れの発生を高精度で制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る方法が適用されるコンクリート躯体を示す模式的な(A)平面図及び(B)正面図(起爆前)
図2】第1実施形態に係る方法が適用されるコンクリート躯体を示す模式的平面図(起爆後)
図3】第1実施形態を説明するための模式的平面図(A)ひび割れ誘導孔なし(比較例)、(B)2つのひび割れ誘導孔(比較例)、(C)4つのひび割れ誘導孔(第1実施形態)
図4】第2実施形態においてコンクリート躯体に形成する孔の位置を示す模式図的平面図
図5】第3実施形態においてコンクリート躯体に形成する孔の位置を示す模式図的平面図
図6】交差角度が36°の場合のひび割れ状態を示す写真
図7】交差角度が68°の場合のひび割れ状態を示す写真
図8】交差角度が90°の場合のひび割れ状態を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1及び図2は、第1実施形態に係る方法によってひび割れが形成されるコンクリート躯体2を模式的に示す。コンクリート躯体2は、鉄筋4及びコンクリート部分6を含む鉄筋コンクリートである。
【0023】
まず、図1に示すように、爆薬8が装填される1つの装薬孔10と、空孔となる第1ひび割れ誘導孔12a、第2ひび割れ誘導孔12b、第3ひび割れ誘導孔12c及び第4ひび割れ誘導孔12d(以下、4つをひび割れ誘導孔の全てを示すときはa〜dの符号を省略し、単に「ひび割れ誘導孔12」という)とをコンクリート部分6にコンクリート躯体2の表面から所定の深さまで形成する。鉄筋4によって装薬孔10及びひび割れ誘導孔12の形成が阻害されないように、あらかじめ、電磁レーダー法、電磁誘導法又はX線透過撮影法等の公知の鉄筋探査手段により、コンクリート躯体2中の鉄筋4の位置を把握し、鉄筋4を避けて装薬孔10及びひび割れ誘導孔12を形成することが好ましい。
【0024】
第1ひび割れ誘導孔12a及び第2ひび割れ誘導孔12bは、コンクリート躯体2の表面において装薬孔10を通る仮想の第1直線14上の互いに装薬孔10を挟む位置に配置される。第3ひび割れ誘導孔12c及び第4ひび割れ誘導孔12dは、コンクリート躯体2の表面において装薬孔10を通りかつ第1直線14と所定の角度θをなす仮想の第2直線16上の互いに装薬孔10を挟む位置に配置される。
【0025】
第1直線14と第2直線16とがなす所定の角度θは、60°〜120°であることが好ましい。装薬孔10から4つのひび割れ誘導孔12の距離は、それぞれ、破壊媒体(コンクリート部分6)、装薬孔10のせん孔径および爆薬8の使用爆薬種により取り得る最大抵抗線長(W)の0.5〜1.5倍とすることが好ましく、互いに等しいことが好ましい。4つのひび割れ誘導孔12は、それぞれ装薬孔10に対して、直径が同じか大きく、深さが深いことが好ましい。本実施形態では、装薬孔10は、爆薬8が板状のコンクリート躯体2の厚さ方向の中央に配置できるようにコンクリート躯体2の略中央までの深さを有し、ひび割れ誘導孔12は、貫通孔となっている。なお、コンクリート躯体2が片側配筋の場合や、厚さが大きい場合、装薬孔10は、薬量によって指定される爆薬8の填塞効果が得られる深さ以上に爆薬8を装薬できる深さに設定される。
【0026】
装薬孔10に爆薬8を装填して起爆すると、図2に示すように、第1直線14及び第2直線16に沿ってひび割れ18が発生する。また、ひび割れ18は、装薬孔10から、ひび割れ誘導孔12又はその近傍に至る。装薬孔10から4つのひび割れ誘導孔12の距離が最大抵抗線長Wの0.5〜1.0倍の場合、ひび割れ18が装薬孔10からひび割れ誘導孔12を超えて広がる可能性が高く、装薬孔10から4つのひび割れ誘導孔12の距離が最大抵抗線長Wの1.0〜1.5倍の場合、ひび割れ18の進展は、ひび割れ誘導孔12又はその近傍で停止し易くなる。ひび割れ誘導孔12の直径が装薬孔10の直径以上である場合、好ましくはひび割れ誘導孔12の直径が装薬孔10の直径より大きい場合、爆破による衝撃波がひび割れ誘導孔12で反射されやすくなり、第1直線14及び第2直線16に沿ったひび割れ18が生じやすくなる。第1直線14と第2直線16とがなす所定の角度θが60°〜120°であると、ひび割れ18は、第1直線14及び第2直線16に沿った方向にのみ生じやすくなり、所定の角度θが40°より小さいと、その他の方向にもひび割れ18が生じやすくなる。
【0027】
理論的に拘束されるものではないが、このようにひび割れ18が発生する原理を図3を参照して説明する。図3(A)に示すように、ひび割れ誘導孔12を設けずに、装薬孔10のみを設けた場合、爆破による衝撃波は、起爆点から均等に球状に伝播するため、これに起因するひび割れ18の発生位置や方向は、材料の不均質性や、自由表面等の境界条件に支配され、ひび割れの発生方向や範囲を制御することはできない。
【0028】
図3(B)に示すように、2つのひび割れ誘導孔12を、装薬孔10を挟む位置に形成した場合、爆破による衝撃波は、ひび割れ誘導孔12で反射及び回折して、ひび割れ18は、装薬孔10とひび割れ誘導孔12を結ぶ主方向と、起爆孔を通り主方向に直交する共役方向とに生じる。爆破による衝撃波は、装薬孔10から圧縮波として伝わるが、ひび割れ誘導孔12で反射する際に位相が反転して引張波として伝わるため、2つのひび割れ誘導孔12で反射された衝撃波によって、ひび割れ誘導孔12から装薬孔10に向かってひび割れ18が形成されるとともに、2つの反射波が互いに衝突する共役方向に沿ってひび割れ18が形成されると考えられる。
【0029】
図3(C)に示すように、装薬孔10において互いに交差する第1直線14及び第2直線16上に、合計4つのひび割れ誘導孔12を装薬孔10を挟むように形成した場合、第1直線14及び第2直線16は、互いに他方に対する共役方向となるため、第1直線14及び第2直線16に沿ってひび割れ18が生じる。
【0030】
次に、図4を参照して、第2実施形態を説明する。第2実施形態では、装薬孔10及び第1〜第4ひび割れ誘導孔12からなるグループが複数形成され、爆薬8(図2参照)は、全ての装薬孔10に装填される。図4では、互いに隣接する装薬孔10間の距離が互いに等しく、装薬孔10、第1及び第3ひび割れ誘導孔12a,12c、並びに第2及び第4ひび割れ誘導孔12b,12dが、それぞれ1列に並ぶように配置されているが、ひび割れ18を形成すべき位置に応じて、装薬孔10及びひび割れ誘導孔12の配置は適宜変更される。爆薬8を順次爆破することにより、各グループの装薬孔10、第1ひび割れ誘導孔12a及び第2ひび割れ誘導孔12bを結ぶ線14、並びに装薬孔10、第3ひび割れ誘導孔12c及び第4ひび割れ誘導孔12dを結ぶ線にそってひび割れ18が形成される。なお、各グループを1列に配置する場合は、あるグループの第1及び第4ひび割れ誘導孔12a,12dは、それぞれ隣接する他のグループの第3及び第2ひび割れ誘導孔12c,12bと共通の孔であってもよい。
【0031】
次に、図5を参照して、第3実施形態を説明する。第3実施形態では、装薬孔10及び第1〜第4ひび割れ誘導孔12からなるグループが複数形成され、爆薬8(図2参照)は、全ての装薬孔10に装填される。装薬孔10が1列に並ぶように配置され、互いに隣接する装薬孔10間の距離が互いに等しい。装薬孔10から第1〜第4ひび割れ誘導孔12までの距離は、各グループ内において互いに等しく、他のグループの装薬孔10から第1〜第4ひび割れ誘導孔12までの距離とも互いに等しいことが好ましい。また、全てのグループにおける第1直線14と第2直線16とのなす角度θ(図1参照)は互いに等しいことが好ましい。この場合、図5に示すように、第1ひび割れ誘導孔12a及び第3ひび割れ誘導孔12cは1列に配置され、第2ひび割れ誘導孔12b及び第4ひび割れ誘導孔12dも1列に配置され、これら2つの列は、装薬孔10がなす列に対して平行であって、装薬孔10がなす列から互いに等しい距離だけ離間している。あるグループの第1及び第4ひび割れ誘導孔12a,12dと、これらに隣接する他のグループの第3及び第2ひび割れ誘導孔12c,12bとの距離は、爆薬8の起爆力に依存するが、同一のグループにおける第1及び第4ひび割れ誘導孔12a,12dと第3及び第2ひび割れ誘導孔12c,12bとの距離以下とすることが好ましい。各装薬孔10に装填された爆薬8は同時に起爆することにより、装薬孔10がなす列に沿ってひび割れ18が生じる。理論的に拘束されるものではないが、このように装薬孔10がなす列に沿ってひび割れ18が生じるのは、ひび割れ誘導孔12で反射された衝撃波が逃げ場を失って装薬孔10を結ぶ線上で衝突するためと考えられる。なお、あるグループの第1及び第4ひび割れ誘導孔12a,12dは、それぞれ隣接する他のグループの第3及び第2ひび割れ誘導孔12c,12bと共通の孔であってもよい。
【実施例】
【0032】
第1直線14と第2直線16とのなす角度θが互いに異なる3つの実施例について説明する。図6図8は、それぞれ、第1実施形態においてθを36°、68°、90°に設定して爆破した結果を示す。図6に示すようにθが36°の場合は、第1直線14及び第2直線16に沿った方向以外にもひび割れが発生した。一方、図7及び図8に示すように、θが68°又は90°の場合は、第1直線14及び第2直線16に沿ってひび割れが発生し、他の方向にはひび割れはほぼ発生しなかった。
【0033】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、鉄筋コンクリート躯体ではなく、無筋コンクリート躯体に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
2:コンクリート躯体
4:鉄筋
6:コンクリート部分
8:爆薬
10:装薬孔
12:ひび割れ誘導孔 (12a:第1、12b:第2、12c:第3、12d:第4)
14:第1直線
16:第2直線
18:ひび割れ
θ:第1直線と第2直線とのなす角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8