特許第6636323号(P6636323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636323
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】調光器及びこれを用いた映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20200120BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20200120BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20200120BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20200120BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   G02B27/02 Z
   G02B27/01
   G02F1/13 505
   G02F1/1347
   H04N5/64 511A
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-256512(P2015-256512)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120311(P2017-120311A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 真悟
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 欣穂
(72)【発明者】
【氏名】川村 友人
(72)【発明者】
【氏名】村田 誠治
(72)【発明者】
【氏名】松田 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
【審査官】 後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−161214(JP,A)
【文献】 特開2013−007935(JP,A)
【文献】 実開平04−112228(JP,U)
【文献】 特開2012−088472(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111471(WO,A1)
【文献】 特開平6−324346(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104360526(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01−27/02
G02F 1/13
G02F 1/1347
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの視界内に映像を表示する映像表示装置であって、
映像光を生成する映像生成器と、
前記映像生成器で生成された映像光をユーザの視界内に虚像として投射する映像投射器と、
前記映像投射器のユーザへの投射側とは反対側に配置され、前記映像投射器を介してユーザの眼に入射する外界光の光量を調整する調光器と、
前記外界光の明るさを検出する外光検出器と、
前記外光検出器により検出された外界光の明るさに応じて前記調光器を制御する調光制御器と、を備え、
前記調光器は、印加電圧を制御することで可視光領域の波長の光の透過率が変化する調光層として、印加電圧により入射光に付与する位相が変化する液晶層を、前記外界光の入射方向に2層以上積層した構成とし、
前記調光制御器は、調整する透過率に応じて前記入射光に所定の位相を付与するために前記液晶層に印加する所定の電圧を設定し、前記液晶層のそれぞれに対し前記所定の電圧を交互に印加することで前記液晶層を交互に駆動することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像表示装置を搭載したヘッドマウントディスプレイであって、
前記映像表示装置を搭載し、ユーザの頭部に装着するためのアームと、
前記映像表示装置に電源を供給する電源供給器と、
情報を記録するための記憶器と、
ユーザの位置や姿勢を検出するためのセンシング器と、
外部機器と通信するための通信器と、
マイクやイヤホンにより音声の処理を行う音声処理器と、
ユーザの操作を受け付ける操作器と、
前記ヘッドマウントディスプレイの全体を制御する制御器と、
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の眼に到達する外界光の明るさを制御する調光器、及びこれを用いた映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
虚像を用いて所定の映像をユーザに表示する映像表示装置が知られ、ヘッドマウントディスプレイやヘッドアップディスプレイとして製品化されている。また、このような映像表示装置では、表示された映像と同時に外界も見ることができるように、様々な光学系構成が提案されている。例えば特許文献1では、外界を観察することができるとともに外界光によって映像の観察が妨げられることを防止するために、導光板の外界側に対向して調光板を配置し、外界光の透過状態を調整する虚像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−88472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
虚像を用いた映像表示装置により映像と外界とを同時に観察するためには、外界が明るい場合と暗い場合とで、外界光に対する透過状態(透過率)を変える必要がある。すなわち、外界が明るい場合には映像が相対的に暗く見えるため、外界光の透過率を低くする。逆に、外界が暗い場合には外界をはっきり視認するため、外界光の透過率を高くする。
【0005】
特許文献1には、外界光の透過率を調整するための調光板を備えた虚像表示装置が開示され、これに用いる光学素子として、液晶パネル、エレクトロクロミック素子、透過型電圧素子などが挙げられている。
【0006】
しかしながら、ヘッドマウントディスプレイなどの映像表示装置にこれらの光学素子を用いるとき、実用的な課題が存在する。例えば液晶パネルでは、一定電圧を継続して印加した場合の焼き付き現象、エレクトロクロミック素子では素子厚さに伴う応答速度の低下、透過型電圧素子では高電圧駆動を必要とすることなどの課題がある。前記特許文献1では、これらの課題については考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を鑑み、焼き付き等の実用上の問題を解消し、外界光に対する透過率を容易に変えることのできる調光器とこれを用いた映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、入射光の透過率を調整する調光器であって、印加電圧を制御することで可視光領域の波長の光の透過率が変化する調光層と、前記調光層に電圧を印加する電極を有し、前記調光層を前記入射光の入射方向に2層以上積層した構成とする。
【0009】
本発明は、ユーザの視界内に映像を表示する映像表示装置であって、映像光を生成する映像生成器と、前記映像生成器で生成された映像光をユーザの視界内に虚像として投射する映像投射器と、前記映像投射器のユーザへの投射側とは反対側に配置され、前記映像投射器を介してユーザの眼に入射する外界光の光量を調整する調光器と、前記外界光の明るさを検出する外光検出器と、前記外光検出器により検出された外界光の明るさに応じて前記調光器を制御する調光制御器と、を備え、前記調光器は、印加電圧を制御することで可視光領域の波長の光の透過率が変化する調光層を、前記外界光の入射方向に2層以上積層した構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、調光層の焼き付き等の実用上の問題を解消し、外界光に対する透過率を容易に変えることのできる調光器とこれを用いた映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】調光器を有する映像表示装置の基本構成を示す上面図(実施例1)。
図2】映像表示装置の構成を示すブロック図。
図3】調光制御器による調光制御を示すフローチャート。
図4】映像表示装置を搭載したヘッドマウントディスプレイの外観を示す模式図。
図5】ヘッドマウントディスプレイのブロック構成を示す図。
図6】調光器に液晶を用いた映像表示装置の構成を示す上面図(実施例2)。
図7】調光器の調光動作を説明する図。
図8】透過率調整層の透過率特性を示す図。
図9】調光器に懸濁粒子デバイスを用いた映像表示装置の構成を示す上面図(実施例3)。
図10】懸濁粒子デバイス層の透過率と印加電圧の関係を示す図。
図11】懸濁粒子デバイス層に電圧を印加する電極と電源の配置の一例を示す図。
図12】調光器にエレクトロクロミック層を用いた映像表示装置の構成を示す上面図(実施例4)。
図13】エレクトロクロミック層の応答速度と厚さの関係を示す図。
図14】視界の一部を調光可能な映像表示装置の構成を示す上面図(実施例5)。
図15】ヘッドマウントディスプレイによるユーザの視界を示す図。
図16】調光器をヘッドアップディスプレイに適用した例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下では、調光器及び映像表示装置をヘッドマウントディスプレイに適用した場合を例に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。また、各図において同じ作用を示す構成要素は、同じ符号を用いて示している。
【実施例1】
【0013】
実施例1では、調光器とこれを用いた映像表示装置の基本構成について説明する。
図1は、調光器を有する映像表示装置100の基本構成を示す上面図である。映像表示装置100は、映像生成器101、映像投射器102、外光検出器105と、外界光を調整する調光器10を備えている。ユーザの眼2は、映像表示装置100からの映像光111と、外界光112の両方を同時に観察することができる。
【0014】
映像生成器101は、映像を生成する映像表示素子(例えば透過又は反射型の液晶パネルやデジタルミラーデバイス)と、その映像表示素子に光を照射する照明光学系(例えばLEDバックライトや、LEDとレンズで構成される光学系)を有する。映像生成器101から出射した映像光111は映像投射器102に入射する。
【0015】
映像投射器102は、反射膜103とレンズ面104から構成されている。映像投射器102に入射した映像光111は、レンズ面104を通過し反射膜103で反射され、ユーザの眼2の瞳孔3へ投射される。そのときレンズ面104は、映像生成器101で生成した映像をユーザの眼2に対し虚像として視認させるレンズ機能を有している。ここに反射膜103は、映像光111の一部を反射し一部を透過させるビームスプリット機能を有している。これは、調光器10を透過した外界光112を、同時にユーザの眼2に導くためである。反射膜103は、例えば透過率と反射率が共に50%のハーフミラーの機能でもよいし、光の偏光性を用いた偏光ビームスプリッターの機能でもよい。
【0016】
調光器10は、第1の調光層11と第2の調光層12の2層構造としており、ユーザの眼2から見て映像投射器102の反対側に配置されている。調光器10は、外界光112に対する透過率を変化させることで、ユーザの眼2に入射する外界光112の光量を調整する機能を有している。調光器10の材料、すなわち第1の調光層11と第2の調光層12には、可視光領域の波長の光に対する透過率が可変となる光学素子として、液晶素子、懸濁粒子デバイス(Suspended Particle Device)、エレクトロクロミック素子などを使用する。これらは、印加する電圧を制御することで透過率を変化させる素子である。
【0017】
外光検出器105は、外界光112の明るさを検出する機能を有しており、照度センサやカメラ等を用いる。外光検出器105で検出した外界光112の明るさの情報は、調光器10や映像生成器101の制御に用いられる。
【0018】
ここで調光器10の調光層11,12として、例えば2層の液晶層を用いる場合には、駆動する液晶層を交互に切り替えて使用することができる。よって、1層のみの調光層に対して一定の電圧が継続して印加されることがなく、調光層が1層の場合に課題となる液晶の焼き付きを防止する効果が得られる。
【0019】
また、調光層に懸濁粒子デバイスを用いる場合には、2層構造とすることで各懸濁粒子デバイス層に対する印加電圧が低減し、より低い印加電圧で所望の透過率に調整することができる。
【0020】
また、調光層にエレクトロクロミック素子を用いる場合には、2層構造とすることで各エレクトロクロミック層における応答速度が向上し、透過率と応答速度を両立させることができる。
【0021】
このように、調光器10を2層の調光層で積層することで、焼き付き・印加電圧・応答速度等の実用上の問題を回避しつつ、外界光に対する透過率を外界光の明るさに応じて適切に変化させる調光器を実現できる。ここでは調光器10の調光層を2層化する構成について説明したが、3層以上に多層化する構成としても同様の効果が得られることは言うまでもない。なお、調光層に用いる各光学素子の特性については、後述の実施例2−4でそれぞれ詳細に説明する。
【0022】
図2は、映像表示装置100の構成を示すブロック図である。映像表示装置100は、調光器10、映像生成器101、外光検出器105、駆動電源106、調光制御器107から構成されている。このうち、調光器10、映像生成器101、外光検出器105は図1で説明した通りである。
【0023】
調光制御器107は、外光検出器105で検出した外界光112の明るさに応じて、調光器10の透過率や映像生成器101で生成する映像光の強度を制御する。具体的には、調光器10に対しては、第1、第2の調光層11,12の駆動条件(印加電圧)を切り替える。駆動電源106は、調光制御器107を介して調光器10や映像生成器101へ電力を供給する。
【0024】
例えば、ユーザの周囲が明るい環境で映像表示装置100を使用する場合について説明する。明るい環境では、映像光111に強い外界光112が重畳されるため、映像のコントラストが低下しユーザは映像を視認しにくくなる。この場合、調光器10の透過率を下げることで外界光の光量を減少させ、また映像生成器101で生成する映像光の強度を増加させるよう制御する。その結果、映像のコントラストが向上し、ユーザは映像を視認しやすくなる。このように映像表示装置100は、周囲環境の明るさが変化しても必要な映像のコントラストを保持する機能を有している。
【0025】
図3は、調光制御器107による調光制御を示すフローチャートである。以下のフローは、映像表示装置100が動作中は所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0026】
S601では、外光検出器105により外界光112の明るさ(光量)を検出する。S602では、映像生成器101で生成する映像光111の強度を取得する。例えば、映像信号の最大輝度レベルまたは平均輝度レベルを取得する。S603では、映像光111と外界光112の強度レベルを比較し、映像のコントラストを算出する。すでに調光器10が調光状態(例えば透過率を下げている状態)であれば、これを加味してユーザの眼に入射する映像のコントラストを算出する。
【0027】
S604では、算出した映像のコントラストが所定の範囲か否か、すなわち所定のコントラストを保つために調光状態の調整が必要か否かを判定する。調光(調整)が必要の場合はS605へ進み、調光(調整)が不要の場合はS607へ進む。
【0028】
S605では、調光器10の透過率を調整する。例えば、外界光の明るさが大きい場合には透過率を下げ、外界光の明るさが小さい場合には透過率を上げるよう調整する。またS606では、映像生成器101の映像光の強度を調整する。例えば、外界光の明るさが大きい場合には映像光の強度を上げ、外界光の明るさが小さい場合には映像光の強度を下げるよう調整する。
【0029】
S607では、ユーザの周囲環境の変化に備え、所定時間待機する。その後S601に戻り上記フローを繰り返す。以上の調光制御動作により、ユーザは所定のコントラストで映像を観察し続けることができる。
【0030】
なお、S605における調光器10の制御とS606における映像生成器101の制御は互いに相補的な関係にあり、いずれを使用するか、あるいは両方使用するかは適宜決定すればよい。例えば、調光器10の制御をメインとし、調光器10の制御だけでは所望のコントラストを実現できないときに映像生成器101の制御を行うようにしてもよい。
【0031】
次に、映像表示装置100を搭載したヘッドマウントディスプレイについて説明する。
図4は、映像表示装置100を搭載したヘッドマウントディスプレイ200の外観を示す模式図である。ヘッドマウントディスプレイ200は、メガネ状のアーム210に映像表示装置100を搭載した構成であり、アーム210をユーザ1の頭部に装着し、映像表示装置100をユーザ1の眼(この例では左眼)に対向するよう配置する。
【0032】
ユーザ1は、視界全体の領域500の内にある映像表示範囲501に、映像表示装置100で生成された虚像を映像として視認することができる。またユーザ1の眼には、映像表示装置100の調光器10を介して外界光が入射する。その際、調光器10の透過率を変えることで外界光の明るさを調整しながら、映像と同時に視認することができる。
【0033】
図5は、ヘッドマウントディスプレイ200のブロック構成を示す図である。ヘッドマウントディスプレイ200は、映像表示装置100とともに、制御器201、電源供給器202、記憶器203、センシング器204、通信器205、音声処理器206、操作器207を有する。センサ入出力端子204a、通信入出力端子205a、音声入出力端子206aは、外部機器と接続する端子である。これらの要素部品は、図4のアーム210の部分に収納されている。
【0034】
制御器201は、ヘッドマウントディスプレイ200の全体を制御する。電源供給器202は、電池やバッテリー等により映像表示装置100に電源を供給する。なお、電源供給器202は、図2における駆動電源106と兼用してもよい。記憶器203は、情報を記憶するデバイスで、半導体メモリや小型のハードディスクドライブなどを用いる。
【0035】
センシング器204は、センサ入出力端子204aを介して外部センサを接続し、多様な情報を検出する。例えば、傾斜センサや加速度センサなどによるユーザの体勢、向き、動きを検出すること、視線センサや温度センサなどユーザの身体状態を検出すること、GPSセンサによるユーザの現在位置の検出すること、感圧センサや静電容量センサなどユーザの指示入力を検知すること、または、近接センサによるユーザの装着の有無の検知すること、などが可能である。センシング器204は、上記の機能を複数有してもよい。
【0036】
通信器205は、通信入出力端子205aを介して外部ネットワークと無線または有線で通信する。これにより、例えば、ヘッドマウントディスプレイ200が直接インターネットの基地局と通信して情報を取得することができる。音声処理器206は、音声入出力端子206aを介しマイクやイヤホンと接続し、音声信号を処理する。操作器207は、ユーザからの操作を受け付ける。
【0037】
なお、図中の矢印は制御や情報の伝送方向を示したものであるが、必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。また、センシング器204や音声処理器206は、外部機器(外部センサ、マイク等)そのものを含む構成でも構わない。
【0038】
以上説明したように実施例1によれば、2層以上の調光層を備えた調光器10を用いることで、周囲環境の明るさによらず必要な映像のコントラストを保つことができ、実用特性に優れた映像表示装置100、及びこれを搭載したヘッドマウントディスプレイ200を実現できる。
以下の各実施例では、調光器の具体的構成について詳細に説明する。
【実施例2】
【0039】
実施例2では、調光器の調光層に液晶を用いる場合について説明する。
図6は、調光器に液晶を用いた映像表示装置の構成を示す上面図である。実施例1(図1)と同じ機能のものには同じ符号を付与し、説明を省略する。映像表示装置100aにおいて、調光器20は2層の液晶層21,22と偏光板26を組み合わせて構成している。また映像投射器102aにおいて、反射膜103aは、偏光光を分離する偏光ビームスプリッターの機能を有している。調光器20の構成を詳しく説明する。
【0040】
調光器20は、第1の液晶層21、第2の液晶層22、2個の正の透明電極23、2個の負の透明電極24、3個の透明基板25、偏光板26、透過率調整層27から構成されている。これらは外界光112の入射側から、偏光板26、透明基板25、正の透明電極23、第1の液晶層21、負の透明電極24、透明基板25、正の透明電極23、第2の液晶層22、負の透明電極24、透明基板25、及び透過率調整層27の順に積層されている。
【0041】
偏光板26は、ランダムな偏光の外界光112から所定方向の偏光のみを選択する。第1の液晶層21と第2の液晶層22は、共に印加電圧により光に付与する位相が変化する液晶が封入された層である。第1の液晶層21に対して第2の液晶層22は、付与される位相の方向を直交させている。
【0042】
正の透明電極23と負の透明電極24は、第1の液晶層21、第2の液晶層22に電圧を印加する電極で、印加電圧を制御することで、第1の液晶層21、第2の液晶層22が入射光に付与する位相を制御する。透明基板25は、光学的に透明な基板であり、第1の液晶層21、第2の液晶層22で不足する強度を補強する。
【0043】
透過率調整層27は、波長により透過率特性が異なるフィルタ機能を持つ。これにより、第1、第2の液晶層21,22のもつ透過率の波長依存性を補正することができる。
【0044】
上記の構成によれば、外界光112は偏光板26により偏光方向が選択され、2個の液晶層21,22の印加電圧をそれぞれ制御することでこれらを通過する光の位相が変えられる。最後に反射膜103aにより偏光方向が選択される結果、調光器20を透過する外界光112の光量を調整することができる。さらに本実施例では、2個の液晶層21,22を交互に駆動することで、液晶層の焼き付き現象を防止することが可能となる。以下、これについて具体的に説明する。
【0045】
図7は、調光器20の調光動作を説明する図である。ここでは簡単のため、代表的な3つの調光条件を取り上げる。<条件1>は半透明(透過率50%)、<条件2>は1/4透明(透過率25%)、<条件3>は遮光(透過率0%)である。その他の中間条件(透過率50〜0%)についても印加電圧を調整することで可能である。なお、透過率調整層27については後述するため、ここではその機能を除いて説明する。
【0046】
<条件1>半透明(透過率50%)を実現するには、第1の液晶層21と第2の液晶層22に電圧を印加しない(V1=V2=0)。外界光の偏光状態は、前述したようにランダムな偏光のため、紙面縦、横の成分に分けられる。この外界光は、入射側から、偏光板26、第1の液晶層21、第2の液晶層22、反射膜103aの順に通過し、ユーザの眼に到達する。
【0047】
まず外界光が偏光板26を通過すると、所定方向(ここでは紙面縦方向)の偏光成分が選択される。この時点で光量は1/2になる。次に光は、第1の液晶層21に入射する。液晶層21は電圧が印加されていないので(V1=0)、いわゆる1/2波長板の機能を有している。このため、光の偏光状態は90度直交した方向(紙面横方向)に変換される。次に光は、第2の液晶層22に入射する。液晶層22も電圧が印加されていないので(V2=0)、いわゆる1/2波長板の機能を有している。このため、光の偏光状態は、90度直交した方向(紙面縦方向)に変換される。
【0048】
最後に光は、反射膜103aに入射する。反射膜103aは光の偏光性を用いた偏光ビームスプリッターであり、偏光板26と同じ偏光選択特性を有するものとする。すなわち、所定方向(紙面縦方向)の偏光を透過させ、それと直交する偏光(紙面横方向)を反射する。このため光は、反射膜103aをそのまま透過する。以上の結果、<条件1>では、50%の光がユーザの眼に到達することになる。
【0049】
<条件2>1/4透明(透過率25%)を実現するためには、第1の液晶層21と第2の液晶層22に電圧を交互に印加する。印加する電圧は、1/4λ波長板に相当する位相が付与される電圧(=A)とする。<状態1>は、第1の液晶層21に電圧(V1=A)が印加されている場合、<状態2>は、第2の液晶層22に電圧(V2=A)が印加されている場合を示している。
【0050】
<状態1>について説明する。偏光板26で光量が1/2になり、第1の液晶層21に入射した光は、液晶層21により円偏光に変換される。これは、液晶層21は電圧(V1=A)が印加され、1/4波長板の機能を有しているためである。次に光は、第2の液晶層22に入射する。液晶層22は電圧が印加されていないため(V2=0)、1/2波長板の機能を有している。このため、光の偏光状態は、回転方向が反転した円偏光に変換される。
【0051】
最後に光は反射膜103aに入射する。円偏光は、横方向と縦方向の偏光成分からなる。このため、所定方向(紙面縦方向)の偏光は透過するが、それと直交する偏光(紙面横方向)は反射する。つまり、反射膜103aにて光量は1/2に減じる。その結果、<状態1>では、トータルとして25%の光がユーザの眼に到達することになる。
【0052】
<状態2>について説明する。偏光板26で光量が1/2になり、第1の液晶層21に入射した光は、液晶層21は電圧が印加されていないため(V1=0)、90度直交した方向(紙面横方向)の偏光に変換される。次に光は、第2の液晶層22に入射する。液晶層22は電圧(V2=A)が印加されているため、円偏光に変換される。
【0053】
最後に円偏光となった光は反射膜103aに入射するため、光量は反射膜103aにて1/2に減じる。その結果、<状態2>では、<状態1>同様にトータルで25%の光がユーザの眼に到達することになる。
【0054】
このように、<状態1>と<状態2>はいずれも1/4透明(透過率25%)の条件を実現するものである。そこで<条件2>では、<状態1>と<状態2>を交互に切り替える。すなわち、第1の液晶層21と第2の液晶層22に対し、電圧Aを交互に印加して駆動する。
【0055】
<条件3>遮光(透過率0%)を実現する場合にも、第1の液晶層21と第2の液晶層22に電圧を交互に印加する。印加する電圧は、位相が付与されないような電圧(=B)とする。<状態3>は、第1の液晶層21に電圧(V1=B)が印加されている場合、<状態4>は、第2の液晶層22に電圧(V2=B)が印加されている場合を示している。
【0056】
<状態3>について説明する。偏光板26で光量が1/2になり、第1の液晶層21に入射した光は、液晶層21には電圧(V1=B)が印加され、付与される位相が零(0λ)のため、液晶層21をそのまま通過する。次に光は、第2の液晶層22に入射する。液晶層22は電圧が印加されていないため(V2=0)、1/2λの位相が付与され、光の偏光状態は90度直交した方向(紙面横方向)に変換される。
【0057】
最後に光は、反射膜103aに入射する。このとき光は、反射膜103aで全光量が反射される。その結果トータルの透過率が0%になり、ユーザの眼に光は到達しない。
【0058】
<状態4>について説明する。偏光板26で光量が1/2になり、第1の液晶層21に入射した光は、液晶層21は電圧が印加されていないため(V1=0)、1/2λの位相が付与され、液晶層21により90度直交した方向(紙面横方向)の偏光に変換される。次に光は、第2の液晶層22に入射するが、液晶層22には電圧(V2=B)が印加され、付与される位相が零(0λ)のため、そのまま通過する。
【0059】
最後に光は反射膜103aに入射するが、<状態3>と同様に、全光量が反射膜で反射される。その結果、<状態3>と同様に、トータルの透過率が0%になり、ユーザの眼に光は到達しない。
【0060】
このように、<状態3>と<状態4>はいずれも遮光(透過率0%)の条件を実現するものである。そこで<条件3>では、<状態3>と<状態4>を交互に切り替える。すなわち、第1の液晶層21と第2の液晶層22に対し、電圧Bを交互に印加して駆動する。
【0061】
以上説明したように、第1の液晶層21と第2の液晶層22の印加電圧を制御することで、外界光の透過率を0%から50%の範囲で自由に制御することができる。ただし従来の液晶の駆動方式では、印加する電圧を大きく変化させながら使用する。その理由は、一定の電圧のままだと、液晶に焼き付きが発生し動作しなくなるからである。本実施例の調光器20では、所定の透過率を長時間維持する必要があるため、上記で説明したように2個の液晶層を交互に動作させることで、容易に焼き付きを防止する効果が得られる。ここでは調光器20の液晶層を2層化する構成について説明したが、3層以上の多層化する構成としても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0062】
次に、透過率調整層27の役割について説明する。透過率調整層27は、調光器20を透過する外界光の光量を波長に依らず均一に補正するためのものである。
図8は、透過率調整層27の透過率特性を示す図である。横軸が波長、縦軸が透過率を示している。実線700は透過率調整層27の透過率特性である。破線701は、透過率調整層27がない場合の調光器20(すなわち液晶層21,22のみ)の透過率特性であり、一点鎖線702は、透過率調整層27を設けた調光器20の透過率特性を示している。
【0063】
一般的に液晶は、波長に依存した透過率特性がある。可視光の略中心波長である550nm付近で透過率が最小となるように液晶の層厚を設計した場合、設計中心の波長と異なる波長の光に付与される位相は理想値から誤差を持つ。このため、破線701に示したように、調光器20(液晶層のみ)を通過する光の透過率は波長に依存した特性を持ち、長波長側(赤色)と短波長側(青色)の透過率が大きくなる。白色の物体を見ているときに、ユーザには、青色と赤色が混ざった色として見えてしまう。
【0064】
そこで透過率調整層27には、破線701とは逆の透過率特性(実線700)を持たせている。このため、透過率調整層27を適用した調光器20を通過する外界光の波長依存性は、一点鎖線702で示したように平坦化し、波長依存性の影響をなくすことができる。
【0065】
このように実施例2の構成によれば、調光層である2層以上の液晶層を交互に動作させることで、液晶層に生じる焼き付きを容易に防止することができる。また、透過率調整層を追加することで、液晶層を透過する外界光の波長依存性をなくす効果がある。
【実施例3】
【0066】
実施例3では、調光器の調光層に懸濁粒子デバイスを用いる場合について説明する。
図9は、調光器に懸濁粒子デバイスを用いた映像表示装置の構成を示す上面図である。実施例1(図1)と同じ機能のものには同じ符号を付与し、説明を省略する。映像表示装置100bにおいて、調光器30は2層の懸濁粒子デバイス層31,32とそれらの電極33,34、及び透明基板35を用いて構成している。これらは外界光112の入射側から、透明基板35、正の透明電極33、第1の懸濁粒子デバイス層31、負の透明電極34、透明基板35、正の透明電極33、第2の懸濁粒子デバイス層32、負の透明電極34、透明基板35の順に積層されている。
【0067】
懸濁粒子デバイス層31,32は、電極33,34により交流電圧を印加すると配向粒子が電場と平行に配向するため、入射光が直進し透明となる。電圧を印加しない場合は配向粒子が無秩序な状態となり、入射した光は配向粒子に吸収され、又は乱反射して不透明となる。このように、懸濁粒子デバイス層31,32に印加する電圧を変えることで、調光器30の透過率を調整することができる。次に、調光層として2個の懸濁粒子デバイス層31,32を用いた効果について説明する。
【0068】
図10は、懸濁粒子デバイス層の透過率と印加電圧の関係を示す図である。実線300は、厚さDの懸濁粒子デバイス層の場合、破線301は、2倍の厚さ2Dの懸濁粒子デバイス層の場合、一点鎖線302は、厚さDの懸濁粒子デバイス層を2層構造とした場合である。
【0069】
実線300で示すように、懸濁粒子デバイス層(厚さD)は、印加電圧Vを高くすると透過率が大きくなる。ただし、電圧Vをゼロとしても透過率がゼロにならず、残留値T0を有している。1層構造で厚さ2Dとした場合は、破線301で示すように、全体に透過率が低くなり、電圧V=0での残留値T0’も低下する。すなわち遮光特性が良くなる。しかし印加電圧Vに対する透過率の勾配が緩いので、高い透過率を得るには、より高い電圧Vを印加しなければならない。
【0070】
これに対し厚さDで2層構造とした場合は、一点鎖線302で示すように、電圧に対する透過率の勾配が急峻化する。すなわち、破線301で示す1層構造の場合よりも低い電圧で高い透過率特性が得られる。例えば、透過率T1を得るための電圧は、1層構造では電圧V1を必要としたが2層構造ではV2まで低減する。
【0071】
一般に懸濁粒子デバイス層で高い遮光特性(低い透過率)を得たい場合、その厚みを増やす必要がある。一方、高い透過率を得たい場合には印加電圧を高くする必要がある。しかし、ウエアラブルなヘッドマウントディスプレイ等では印加できる電圧に制限があり、所望の透過率範囲をカバーすることが困難であった。
【0072】
これに対し本実施例では、懸濁粒子デバイス層の厚さを一定値に制限して2層化することで、低い印加電圧で所望の透過率範囲をカバーすることができる。ここでは調光器30の懸濁粒子デバイス層を2層化する構成について説明したが、3層以上の多層化する構成としても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0073】
図11は、懸濁粒子デバイス層に電圧を印加する電極と電源の配置の一例を示す図である。(A)は2電源駆動方式、(B)は1電源駆動方式の場合である。
図11(A)には、2電源駆動の調光器30aを示す。これは図9の調光器30と同じ構造であり、透明基板35、正の透明電極33、第1の懸濁粒子デバイス層31、負の透明電極34、透明基板35、正の透明電極33、第2の懸濁粒子デバイス層32、負の透明電極34、透明基板35の順に積層されている。2個の懸濁粒子デバイス層31,32を動作させるために、2個の電源311,312と4本の配線321を必要としている。
【0074】
図11(B)には、1電源駆動の調光器30bの例を示す。その構造は、透明基板35、負の透明電極34、第1の懸濁粒子デバイス層31、正の透明電極33、第2の懸濁粒子デバイス層32、負の透明電極34、透明基板35の順に積層されている。この場合、第1の懸濁粒子デバイス層31と第2の懸濁粒子デバイス層32の隣接する側に設けられたそれぞれの電極を共通化して、1個の正の透明電極33とし、中間の透明基板35を削除している。2個の懸濁粒子デバイス層31,32を動作させるために、1個の電源313と3本の配線322とを配置させれば良く、電源の個数と配線の本数を削減することができる。また、中間の透明基板が不要になり薄型化できる効果も得られる。
【0075】
このように実施例3によれば、調光層である懸濁粒子デバイス層を2層以上の多層化することで、実現可能な印加電圧の範囲で、所望の透過率範囲をカバーすることが可能となる。また、多層化する際には、駆動用電源と配線を共通化することが可能である。
【実施例4】
【0076】
実施例4では、調光器の調光層にエレクトロクロミック層を用いる場合について説明する。
図12は、調光器にエレクトロクロミック層を用いた映像表示装置の構成を示す上面図である。実施例1(図1)と同じ機能のものには同じ符号を付与し、説明を省略する。映像表示装置100cにおいて、調光器40は2層のエレクトロクロミック層41,42とそれらの電極43,44、及び透明基板45を用いて構成している。これらは外界光112の入射側から、透明基板45、正の透明電極43、第1のエレクトロクロミック層41、負の透明電極44、透明基板45、正の透明電極43、第2のエレクトロクロミック層42、負の透明電極44、透明基板45の順に積層されている。
【0077】
エレクトロクロミック層41,42は、電極43,44により正、又は負の電圧を印加することで、電荷の授受により酸化還元反応して発消色する素子である。すなわち、エレクトロクロミック層41,42に印加する電圧を変えることで、調光器40の透過率を調整することができる。次に、調光層として2個のエレクトロクロミック層41,42を用いた効果について説明する。
【0078】
図13は、エレクトロクロミック層の応答速度と厚さの関係を示す図である。実線401は、1層構造(厚さt)のエレクトロクロミック層の場合、一点鎖線402は、2層構造(厚さt/2の2層)のエレクトロクロミック層の場合で、全厚tに対する応答速度の変化を示している。
【0079】
実線401に示した通り、エレクトロクロミック層は厚いほど応答速度が遅くなる特性がある。一方、所定の透過率範囲を得るためには、所定以上の厚みtのエレクトロクロミック層を用いる必要がある。そのため、1層構造のエレクトロクロミック層でウエアラブルなヘッドマウントディスプレイ等に必要な透過率と応答速度を両立させることは難しい。本実施例では、2層構造とすることで透過率と応答速度を両立させることができる。例えば、所望の透過率を得るための全厚t=2Dのとき、1層構造では応答速度がS1である。これを1層当たり厚さDの2層構造とすることで、応答速度は厚さDの時の速度S2に向上する。
【0080】
また本実施例においても、前記実施例3の図11で述べた効果と同様に、多層構成における電圧印加電極を共通化し、電源の個数と配線の本数を削減することができる。ここでは調光器40のエレクトロクロミック層を2層化する構成について説明したが、3層以上の多層化する構成としても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0081】
このように実施例4によれば、調光層であるエレクトロクロミック層を2層以上の多層化することで、透過率を保持したまま応答速度を向上させる効果がある。
【実施例5】
【0082】
実施例5では、ユーザの視界内で調光する領域を切り替える構成について説明する。前記実施例1−4では視界全体を調光するものとしたが、ここでは視界の一部のみを調光可能とするものである。
【0083】
図14は、視界の一部のみを調光可能な映像表示装置の構成を示す上面図である。映像表示装置100dは実施例1(図1)の映像表示装置100と比較し、映像投射器102bと調光器50の構成が異なり、映像生成器101、映像投射器102b、第1の調光領域51と第2の調光領域52を備えた調光器50、外光検出器105で構成されている。ユーザは、映像表示装置100dをメガネのようにユーザの視界全体を覆うように装着する。
【0084】
映像生成器101から出射された映像光111は、映像投射器102bへ入射する。映像投射器102bには2枚の反射膜103b,103cがあり、映像光111はこれらの反射膜103b,103cで反射してユーザの瞳孔3へ入射する。反射膜103bと103cの間では、映像光111は映像投射器102bの側面で全反射して進行する。
【0085】
調光器50は、ユーザの眼2から見て映像投射器102bの反対側に配置されている。調光器50は、外界光112の入射方向に第1の調光層11と第2の調光層12を積層して構成するとともに、外界光112の入射面を第1の調光領域51と第2の調光領域52に分割している。例えば、第1の調光領域51は映像光111がユーザの瞳孔3へ入射する領域(すなわち映像表示領域)に対応させ、第2の調光領域52は映像光111が入射する外側の領域(すなわち映像表示領域の外側)に対応させる。そして、調光制御器(図2の符号107)により、第1の調光領域51と第2の調光領域52をそれぞれ独立に調光制御するようにした。
【0086】
図15は、映像表示装置100dを搭載したヘッドマウントディスプレイ200によるユーザの視界を示す図である。(A)は第1の調光領域51のみを調光した場合、(B)は、第1の調光領域51と第2の調光領域52の両方を調光した場合である。(A)と(B)の切り替えは、ヘッドマウントディスプレイ200の操作器(図5の符号207)でユーザ1が操作する。
【0087】
図15(A)の場合、ユーザ1に対し、視界全体の領域500のうち映像表示範囲501のみ透過率を調整することで、外界の視界を明るく保ちながら映像のコントラストを向上させることができる。一方、図10(B)の場合は、視界全体の領域500の透過率を調整することで、外界の明るさを調整しながら映像のコントラストを向上させることができる。もちろん、(B)の場合に、第1の調光領域51と第2の調光領域52とを異なる透過率で調整することも可能である。
【0088】
このように実施例5によれば、調光する領域を分割してそれぞれ独立に調光制御することで、使用状況に応じて、映像のコントラストだけを改善することと、サングラスのように全体の明るさを調整することを切り替えることができる。なお、調光領域の分割形状と分割数は用途に応じて適宜変更できることは言うまでもない。
【0089】
以上述べた各実施例1−5では、調光器及び映像表示装置をヘッドマウントディスプレイ200に適用する場合を例に説明したが、これに限定するものではない。例えば次のように、ヘッドアップディスプレイにも適用できる。
【0090】
図16は、調光器をヘッドアップディスプレイに適用した例を示す概略図である。ヘッドアップディスプレイ800は、映像生成器801、コンバイナ802、調光器10から構成される。調光器10は、第1、第2の調光層11,12から構成されており、前記各実施例で述べた各光学素子を採用できる。
【0091】
映像生成器801は、運転手8の視界の邪魔にならないよう車両9の内部に配置されている。映像生成器801から出射した映像光811は、コンバイナ802で反射して、運転手8の眼に到達する。運転手8は、ヘッドアップディスプレイ800内のスクリーンにて生成した映像光811を、運転手8の前方位置に虚像として認識する。コンバイナ802には、運転手8から見て反対側に調光器10が配置されており、これにより車両前方から入射する外界光812の明るさを調整する。
【0092】
このようにヘッドアップディスプレイ800においても、調光器10を用いて外界光812を調整することで、外界光に対する映像のコントラストを高めることが可能になる。その際、調光器10を2層構造とすることで、各実施例で述べたように実用性能を向上させることができる。この例では、調光器10をコンバイナ802に貼り付ける構造としたが、もちろんフロントガラス91に張り合わせる構造でも構わない。
【0093】
本発明の調光器は、その他の分野への応用として、ビルや飛行機、車両などのカーテンとしての代用やデジタルサイネージ分野に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…ユーザ、2…ユーザの眼、3…ユーザの瞳孔、8…運転手、9…車両、10,20,30,40,50…調光器、11…第1の調光層、12…第2の調光層、21…第1の液晶層、22…第2の液晶層、23,33,43…正の透明電極、24,34,44…負の透明電極、25,35,45…透明基板、26…偏光板、27…透過率調整層、31…第1の懸濁粒子デバイス層、32…第2の懸濁粒子デバイス層、41…第1のエレクトロクロミック層、42…第2のエレクトロクロミック層、51…第1の調光領域、52…第2の調光領域、100,100a,100b,100c,100d…映像表示装置、101…映像生成器、102,102a,102b…映像投射器、103,103a,103b,103c…反射膜、104…レンズ面、105…外光検出器、106…駆動電源、107…調光制御器、111,811…映像光、112,812…外界光、200…ヘッドマウントディスプレイ、201…制御器、202…電源供給器、203…記憶器、204…センシング器、205…通信器、206…音声処理器、207…操作器、210…アーム、311,312,313…電源、321,322…配線、500…視界全体の領域、501…映像表示範囲、800…ヘッドアップディスプレイ、801…映像生成器、802…コンバイナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16