(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、RC建物では、壁や梁に比べて柱に高い圧縮強度が必要になることが多い。
しかしながら、特許文献1、2に記載の工法は、高さの異なる部位に対して強度の異なるコンクリートの打ち分けを行うものである。従って、例えば、柱と壁とでコンクリートを打ち分けることや、柱と梁とでコンクリートを打ち分けることはできない。
【0005】
このように同じ高さに互いに隣接して設けられる部位のコンクリートの圧縮強度が異なる場合であっても、各部位を互いに接合させる必要がある。即ち、壁や梁は柱に接合させる必要がある。そのため、強度の異なるコンクリートを用いて同じ高さの部位を打ち分ける場合には、鉄筋を挿通させたコンクリート止めを境界部に鉛直方向に設けなければならない。
【0006】
ところが、このようにコンクリート止めを設けてコンクリートの打ち分けを行うと、作業が煩雑になる。施工性を高めるために、高い強度のコンクリートを用いてこれらの部位を同時に構築(コンクリート打設)することも可能であるが、このようにすると材料費が高くなる。
【0007】
近年では、現場でコンクリートを打設せずに、予め工場で製作したPCa部材を施工現場に搬入し、揚重機を用いてPCa部材を組み立てることによってRC建物を構築する方法が多く行われている。この方法では、コンクリートを打ち分ける部位ごとにPCa部材を製作すれば、コンクリート止めを設ける必要は生じない。一方、PCa部材の数が多くなるとその分だけ接合箇所が増え、コストや施工手間が増大する。また、柱や梁等の大きな部位をPCa部材によって構築する場合には、部材の搬入や組み立てに大型の揚重機が必要になり、これによっても施工コストが増大する。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑み、RC建物の施工現場においてコンクリート止めを設けることなく壁や梁のコンクリートと柱のコンクリートとの打ち分けを可能にすると共に、コスト及び施工手間の増大を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、壁縦筋(51)のピッチ(P51)よりも小さな壁延在方向長さ(L1)を有すると共に、少なくとも定着長さ(L2)分を突出させる態様で壁横筋(52)が一体に形成されたPCa部分壁(11(10))を提供する。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明は、第1コンクリートにより構築される柱(2)と、前記壁縦筋(51)及び壁横筋(52)を有すると共に第2コンクリートにより構築され、前記柱に接合される壁(5)と、前記壁縦筋に重ならない位置に設けられ、前記壁の一部を構成する上記のPCa部分壁(11(10))とを備えるRC建物(1)を提供する。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明は、上記のPCa部分壁(11(10))を用意するステップ(
図2)と、柱筋(21、22)を組み立てるステップ(
図3(A))と、前記PCa部分壁を壁縦筋(51)に重ならない所定の位置に配置するステップ(
図3(B)〜
図4(C))と、前記壁横筋(52)及び壁縦筋(51)を組み立てるステップ(
図4(D))と、柱型枠(7)及び壁型枠(8)を組み立てるステップ(
図5(E))と、前記PCa部分壁に対して前記柱型枠側の型枠内に第1コンクリートを打設するステップ(
図5(F))と、前記PCa部分壁に対して前記柱型枠と相反する側の型枠内に第2コンクリートを打設するステップ(
図6(G))とを含むRC建物(1)の構築方法を提供する。
【0012】
これらの構成によれば、PCa部分壁を、壁を構築する位置に配置し、PCa部分壁の壁横筋を含めて鉄筋を組み立てると共にPCa部分壁を壁厚方向から挟むように型枠を組み立てることにより、コンクリート止めを設けることなく壁のコンクリートと柱のコンクリートとを打ち分けることができる。これにより、作業が煩雑になることがなく、また、高い材料を必要以上に多く用いる必要がないため材料コストを低減できる。更に、PCa部分壁は壁延在方向長さが小さく軽量であるため、施工現場に大型の揚重機が必要になることもない。
【0013】
また、上記のRC建物(1)において、前記PCa部分壁(11(10))が前記柱(2)と前記壁(5)との接合部に設けられた構成とするとよい。同様に、上記のRC建物の構築方法において、前記PCa部分壁を前記柱と前記壁との接合部に配置する構成とするとよい。
【0014】
これらの構成によれば、PCa部分壁により構成される部分を除く壁全体を第2コンクリートにより構築できる。なお、PCa部分壁を柱に突入しないように壁の端部に配置する場合には、第2コンクリートを用いてPCa部分壁を製作することによって壁全体を第2コンクリートにより構築できる。
【0015】
また、上記のRC建物(1)において、前記PCa部分壁(11(10))が前記壁(5)の延在方向の中間部に設けられ、前記壁における前記PCa部分壁に対して前記柱(2)側の部分が第1コンクリートにより構築された構成とするとよい。同様に、上記のRC建物の構築方法において、前記PCa部分壁を前記壁の延在方向の中間部に配置し、前記壁における前記PCa部分壁に対して前記柱側の部分に第1コンクリートを打設する構成とするとよい。
【0016】
これらの構成によれば、壁のPCa部分壁よりも柱側の部分が第1コンクリートにより構築されることになるが、施工の容易性を考慮して所望の位置にPCa部分壁を設けることができる。また、工区境が壁の中間部にある場合等には、壁の延在方向の一部分だけを構築することもできる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明は、壁縦筋(51)のピッチ(P51)よりも小さな梁延在方向長さ(L2)を有すると共に、少なくとも定着長さ分(L3)を突出させる態様で梁主筋(41)が一体に形成されたPCa部分梁(12(10))を提供する。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明は、第1コンクリートにより構築される柱(2)と、梁主筋(41)及びスターラップ(42)を有すると共に第2コンクリートにより構築され、前記柱に接合される梁(4)と、前記壁縦筋(51)に重ならない位置に設けられ、前記梁の一部を構成する上記のPCa部分梁(12(10))とを備えるRC建物(1)を提供する。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明は、上記のPCa部分梁(12(10))を用意するステップ(
図2、
図7)と、柱筋(21、22)を組み立てるステップ(
図3(A)、
図8(A)、
図10(A)〜(C))と、前記PCa部分梁を前記壁縦筋(51)に重ならない所定の位置に配置するステップ(
図3(B)〜
図4(C)、
図8(A)〜(B)、
図10(A)〜(B))と、前記梁主筋(41)、スターラップ(42)及び前記壁縦筋(51)を組み立てるステップ(
図4(D)、
図8(B)、
図10(A))と、柱型枠(7)及び梁型枠(8、9)を組み立てるステップと、前記PCa部分梁に対して前記柱型枠側の型枠内に第1コンクリートを打設するステップ(
図5(F)、
図9(D))と、前記PCa部分梁に対して前記柱型枠と相反する側の型枠内に第2コンクリートを打設するステップ(
図6(G)、
図9(E))とを含むRC建物(1)の構築方法を提供する。
【0020】
これらの構成によれば、PCa部分梁を、梁を構築する位置のうち、壁縦筋に重ならない位置に配置し、PCa部分梁の梁主筋を含めて鉄筋を組み立てると共にPCa部分梁を下方及び両側方の3方から取り囲むように型枠を組み立てることにより、コンクリート止めを設けることなく梁のコンクリートと柱のコンクリートとを打ち分けることができる。これにより、作業が煩雑になることがなく、また、高い材料を必要以上に多く用いる必要がないため材料コストを低減できる。更に、PCa部分梁は梁延在方向長さが小さく軽量であるため、施工現場に大型の揚重機が必要になることもない。
【0021】
また、上記のRC建物(1)において、前記PCa部分梁(12(10))が前記柱(2)と前記梁(4)との接合部に設けられた構成とするとよい。同様に、上記のRC建物の構築方法において、前記PCa部分梁を前記柱と前記梁との接合部に配置する構成とするとよい。
【0022】
これらの構成によれば、PCa部分梁により構成される部分を除く梁全体を第2コンクリートにより構築できる。なお、PCa部分梁を柱に突入しないように梁の端部に配置する場合には、第2コンクリートを用いてPCa部分梁を製作することによって梁全体を第2コンクリートにより構築できる。
【0023】
また、上記のRC建物において、前記PCa部分梁(12(10))が前記梁(4)の延在方向の中間部に設けられ、前記梁における前記PCa部分梁に対して前記柱(2)側の部分が第1コンクリートにより構築された構成とするとよい。同様に、上記のRC建物の構築方法において、前記PCa部分梁を前記梁の延在方向の中間部に配置し、前記梁における前記PCa部分梁に対して前記柱側の部分に第1コンクリートを打設する構成とするとよい。
【0024】
これらの構成によれば、梁のPCa部分梁よりも柱側の部分が第1コンクリートにより構築されることになるが、施工の容易性を考慮して所望の位置にPCa部分梁を設けることができる。また、工区境が梁の中間部にある場合等には、梁の延在方向の一部分だけを構築することもできる。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明によれば、RC建物の施工現場においてコンクリート止めを設けることなく壁や梁のコンクリートと柱のコンクリートとの打ち分けを可能にすると共に、コスト及び施工手間の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
≪第1実施形態≫
まず、
図1〜
図6を参照して第1実施形態に係るRC建物1について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るRC建物1における複数階に亘る部分の側面を、現場打ちのコンクリートを透視して示している。図示されるように、RC建物1は、図示しない基礎の上に構築される多層建物である。RC建物1は、桁行方向(紙面に直交する方向)に3列以上に、及び梁間方向(紙面の左右方向)に2列に並べられた複数の柱2を有するいわゆる板状構造となっている。なお、
図1には、RC建物1における梁間方向の左側部分のみが示されているが、RC建物1の右側部分は左側部分と対称的に構成される。
【0029】
RC建物1は、桁行方向において、同方向に延在するように各階に設けられた梁3の両端が一対の柱2に剛接合されたラーメン構造とされている。また、RC建物1は、梁間方向において、同方向に延在するように各階に設けられた梁4及び耐震壁5の両端が一対の柱2に剛接合された、耐震壁5を有するラーメン構造とされている。梁間方向に設けられた耐震壁5は、平面視で同じ位置に配置され、上下方向に連続する連層耐震壁6を構成している。
【0030】
本実施形態では、梁間方向に延在する梁4の幅が耐震壁5の壁厚と同じ寸法となっている。他の実施形態では、梁4の幅が耐震壁5の壁厚よりも大きな寸法とされてもよい。或いは、RC建物1は、梁間方向については、梁4が設けられずに耐震壁5のみが設けられて一対の柱2に剛接合される壁式構造とされてもよい。更に、RC建物1は、桁行方向についても梁4が設けられない壁式構造とされてもよい。
【0031】
RC建物1は、梁4及び耐震壁5における柱2との接合部近傍の一部がPCa部材10により構築され、それ以外の大部分が現場打ちのコンクリートによって構築された部分プレキャスト構造となっている。柱2は、比較的高強度の第1コンクリートを用いて現場で構築される。耐震壁5及び梁4の大部分は、比較的低強度の第2コンクリートを用いて現場で構築される。また、梁4の上部に接合する図示しない床は、梁4及び耐震壁5と同じ第2コンクリートを用いて現場で構築される。或いは、第2コンクリートよりも低強度の第3コンクリートを用いて床が構築されてもよい。
【0032】
柱2は、複数の柱主筋21と、柱主筋21の周りに柱主筋21を取り囲むように配置された複数のフープ筋22とを有している。梁4は、複数の梁主筋41(上端筋41U及び下端筋41L)と、梁主筋41の周りに梁主筋41を取り囲むように配置された複数のスターラップ42とを有している。耐震壁5は、壁縦筋51及び壁横筋52を有しており、壁縦筋51及び壁横筋52が壁厚方向に2列に配置されたダブル配筋となっている。スターラップ42のピッチP42は、壁縦筋51のピッチP51よりも小さくなっている。
【0033】
図2に併せて示されるように、PCa部材10は、コンクリート部が耐震壁5及び梁4と同断面を有し、且つスターラップ42のピッチP42及び壁縦筋51のピッチP51よりも小さな延在方向長さL1(
図1の左右方向の長さ)を有する構成とされている。PCa部材10は、上記の第2コンクリートやそれよりも高強度のコンクリートを用いて工場やRC建物1の敷地内のヤードで製作される。PCa部材10は、当該延在方向長さL1を有する耐震壁5の一部をなすPCa部分壁11と、当該延在方向長さL1を有する梁4の一部をなすPCa部分梁12とを一体形成した構成とされている。他の実施形態では、延在方向長さL1を有する耐震壁5の一部をなすPCa部分壁11と、延在方向長さL1を有する梁4の一部をなすPCa部分梁12とが別体として構成され、PCa部分壁11の上にPCa部分梁12が配置されてもよい。
【0034】
PCa部材10の柱2側の第1端面10a及びこれに相反する側(耐震壁5側)の第2端面10bには、複数のシアコッター13が形成されている。本実施形態では、シアコッター13は凹部として構成されている。他の実施形態では、シアコッター13が凸部として構成されてもよく、一方の端面で凹部として構成され、他方の端面で凸部として構成されてもよい。更には、シアコッター13が1つの端面に形成された凹部と凸部との組み合わせとして構成されてもよい。
【0035】
PCa部材10は、壁横筋52及び梁主筋41を内部に含むように構成されている。具体的には、壁厚方向に2列に配置された壁横筋52が、所定のピッチをもって上下方向に並べられ、壁厚方向に2列に配置された梁主筋41が壁横筋52の上方に上下それぞれ2段に並べられている。
【0036】
壁横筋52は、柱2側の第1端面10aから、少なくとも柱2内に所定の定着長さL2をもって進入する長さだけ突出し、且つ耐震壁5側の第2端面10bから、少なくとも所定の重ね継手長さL3だけ突出するように設けられている。重ね継手長さL3は定着長さL2よりも大きな値である。機械式継手が用いられる場合には、第2端面10bからの突出長さは重ね継手長さL3や定着長さL2よりも短くてもよい。梁主筋41は、壁横筋52よりも太径を有するため、PCa部材10の端面からの突出する長さも壁横筋52よりも長くなっている。
【0037】
他の実施形態では、PCa部材10が、予め組み立てたれた壁縦筋51及び柱2に対する定着長さL2を有する定着部を有する壁横筋52に対し、壁縦筋51が設けられない部分に壁横筋52の一部を内部に含むように第2コンクリートを打設した構成とされてもよい。
【0038】
PCa部材10は、最も端に配置されるスターラップ42及び壁縦筋51の外側(柱側)、或いは互いに隣接する一対のスターラップ42の間、且つ延在方向に互いに隣接する一対の壁縦筋51の間に配置される。つまり、PCa部材10は、内部にスターラップ42や壁縦筋51が設けられない構成とされている。なお、コンクリート部を補強するための補強筋が上下方向に延在するようにPCa部材10内に設けられてもよい。或いは、PCa部材10がスターラップ42を内部に含むように構成されてもよい。
【0039】
図1に示されるように、N階及びN+2階、・・・においては、PCa部材10は、柱2側の第1端面10aが柱2の外面に一致する位置に、つまり耐震壁5の端部に設けられる。N+1階、N+3階、・・・においては、PCa部材10は、下階のPCa部材10に対して柱2から離れる側にオフセットした位置に、つまり耐震壁5の延在方向の中間部に設けられる。
【0040】
他の実施形態では、N+1階、N+3階、・・・においてもPCa部材10が柱2側の第1端面10aを柱2の外面に一致させる位置に設けられ、各階のPCa部材10が上下方向に直線状に連続する配置とされてもよい。或いは、N階及びN+2階、・・・においてPCa部材10が、柱2側の第1端面10aを柱2から離した位置に設けられ、N+1階、N+3階・・・においてPCa部材10が下階のPCa部材10と同じ位置若しくは第1端面10aを柱2から更に離した位置に設けられてもよい。
【0041】
PCa部材10が柱2と同じ第1コンクリート又はそれよりも高強度のコンクリートを用いて製作されている場合には、PCa部材10が一部を柱2の内部に進入させ、残りの部分が耐震壁5の端部を構成するように配置されてもよい。
【0042】
次に、
図3〜
図6を参照して、RC建物1の構築方法について説明する。ここでは、RC建物1のうち、N階の構築手順を説明する。
図1に示されるPCa部材10は、予め工場やヤードでの製作によって用意しておく。
【0043】
図3(A)に示されるように、N階の柱2の鉄筋(柱主筋21及びフープ筋22)を組み立てる。N階においては、N−1階で組み立てた柱主筋21や壁縦筋51が、N階の床面と同じ高さまで構築されたN−1階の柱2や梁4の上面から上方に突出している。N階の柱主筋21は、適宜な継手を介してN−1階の柱主筋21に接続する。
【0044】
次に、
図3(B)に示されるように、PCa部材10を搬入する。上記のように梁4の上面からはN−1階で組み立てた壁縦筋51が突出しており、そのままではPCa部材10を
図1に示される所定の位置に配置することができない。そこで、
図3(B2)に示されるように、梁4の上面から突出する壁縦筋51を左右に倒しておき、図示しないクレーンで吊り上げたPCa部材10を、第1端面10aから突出する梁主筋41及び壁横筋52が柱2の鉄筋に干渉しない位置で吊り下ろし、梁主筋41及び壁横筋52が所定の位置に進入するように横にスライドさせる。
【0045】
壁横筋52を所定の高さに配置した状態でのPCa部材10の横スライドは、PCa部材10が壁縦筋51のピッチP51よりも小さな延在方向長さL1を有し、壁縦筋51を含んでいないこと、即ちPCa部材10の下面から壁縦筋51が突出していないことにより可能になっている。つまり、仮にPCa部材10が壁縦筋51のピッチP51よりも以上の長さを有し、壁縦筋51を内部に含むような一般的な構成とされている場合には、壁縦筋51をN−1階の壁縦筋51に接続するための継手(機械式継手等)が必要になる。従って、PCa部材10を横スライドさせた後に壁縦筋51を接続することは出来ない、或いは非常に困難である。本実施形態では、壁縦筋51を内部に含まないように、PCa部材10の延在方向長さL1が壁縦筋51のピッチP51よりも小さくされていることにより、壁縦筋51の継手が不要になっている。
【0046】
このようにして、
図4(C)に示されるように、PCa部材10を壁縦筋51やスターラップ42に重ならない所定の位置に配置する。なお、柱2のフープ筋22を組み立てる前にPCa部材10を所定の位置に直接吊り下ろして配置してもよい。
【0047】
その後、
図4(D)に示されるように、耐震壁5の壁縦筋51及び壁横筋52を組み立てると共に、梁4の梁主筋41及びスターラップ42を組み立てる。壁横筋52は、PCa部材10に一体に設けられて突出する壁横筋52に重ね継手を介して接続する。梁主筋41は、追加的に配置した梁主筋41に適宜な継手(図示例では重ね継手)を介して接続する。つまり、耐震壁5の壁縦筋51及び壁横筋52を、PCa部材10の壁横筋52及び梁主筋41を含めて組み立てる。これにより、PCa部材10が所定の位置で固定される。なお、PCa部材10が予め組み立てられた壁横筋52及び梁主筋41の全てを含むように構成されている場合には、壁縦筋51の下端部を、N階の上面から突出する壁縦筋51に重ね継手により接続するだけでよい。また、床を同時に構築する場合には、図示省略する床の鉄筋も組み立てる。
【0048】
鉄筋(51、52、41、42)の組み立て完了後、
図5(E)に示されるように、柱型枠7及び壁・梁型枠8を、柱2の輪郭並びに耐震壁5及び梁4の輪郭に沿って組み立てる。壁・梁型枠8は、PCa部材10の位置に関わりのない大きさにするとよく、PCa部材10を壁厚方向から挟み込み且つ柱型枠7に結合するように組み立てる。床を同時に構築する場合には、図示しない床の型枠・支保工を組み立てる。N階では、PCa部材10が柱2側の第1端面10aを柱2の外面に一致させる位置に配置され、主に壁横筋52及び壁縦筋51により固定されており、PCa部材10が柱2と耐震壁5及び梁4との境界部に設けられたコンクリート止めとして機能する。
【0049】
型枠(7、8)の組み立て完了後、
図5(F)に示されるように、第1コンクリートを柱型枠7内に打設してN階の柱2を構築する。図には、柱型枠7における第1コンクリートが打設された部分をドットで示している。その後、
図6(G)に示されるように、第2コンクリートを壁・梁型枠8内に打設してN階の耐震壁5及び梁4を構築する。図には、壁・梁型枠8における第2コンクリートが打設された部分をドットで示している。なお、床を同時に構築する場合には、図示しない床の型枠上に第2コンクリート又は第3コンクリートを打設する。床を同時に構築しない場合には、先に第2コンクリートを用いて耐震壁5及び梁4を構築し、後から第1コンクリートを用いて柱2を構築してもよい。
【0050】
コンクリートの硬化後、柱型枠7及び壁・梁型枠8を取り外すことにより、
図6(H)に示されるように、第1コンクリートにより構築された柱2と、第2コンクリートにより構築され、柱2に接合された耐震壁5及び梁4が完成する。N+1階の構築は、上記手順を繰り返すことによって行われる。
【0051】
このように、構築されるRC建物1では、
図1及び
図2に示されるように、PCa部材10が、壁縦筋51のピッチP51よりも小さな延在方向長さL1を有すると共に少なくとも定着長さL2分を突出させる態様で壁横筋52が一体に形成されるため、PCa部材10を壁縦筋51に重ならない位置に設け、コンクリート止めとして機能させることができる。そのため、施工現場においてコンクリート止めを設けることなくコンクリートの打ち分けを行い、第1コンクリートにより構築された柱2と、第2コンクリートにより構築された耐震壁5や梁4と、耐震壁5や梁4の一部を構成するPCa部材10とを備えたRC建物1を、作業を煩雑にすることなく、また、材料費が高い第1コンクリートを必要以上に多く用いることなく構築することができる。これにより、コスト及び施工手間を抑制することができる。また、PCa部材10は延在方向長さL1が小さく軽量であるため、施工現場に大型の揚重機が必要になることもない。
【0052】
RC建物1のN階、N+2階、・・・では、PCa部材10が柱2と耐震壁5及び梁4との接合部に設けられている。そのため、PCa部材10により構成される部分を除く耐震壁5の全体が第2コンクリートにより構築される。また、本実施形態では、PCa部材10が、柱2に突入しないように耐震壁5の端部に配置されると共に、第2コンクリートを用いて製作されているため、柱2の全体のみが第1コンクリートにより構築され、耐震壁5の全体及び梁4の全体が第2コンクリートにより構築される。
【0053】
N+1階、N+3階、・・・では、
図1に示されるようにPCa部材10が柱2の外面から離間した位置、即ち耐震壁5の延在方向の中間部に設けられるため、柱2並びに、耐震壁5及び梁4における柱2との接合部(離間寸法分)が第1コンクリートにより構築され、耐震壁5及び梁4の残りの部分が第2コンクリートにより構築される。これにより、耐震壁5のPCa部材10よりも柱2側の端部が第1コンクリートにより構築されることになるが、施工の容易性を考慮して所望の位置にPCa部材10を設けることができる。また、工区境が耐震壁5の中間部にある場合等には、耐震壁5の延在方向の一部分だけを構築することもできる。
【0054】
なお、本実施形態では、これらの理由によりPCa部材10を耐震壁5の延在方向の中間部に設ける必要はないが、
図1に示されるようにPCa部材10が設けられる壁延在方向の位置が階ごとに異なっていることにより、連層耐震壁6を全体として見た際に、第1コンクリートや第2コンクリートがPCa部材10の下方や上方に突出するよう形成され、この凹凸が大きなせん断コッターとして機能する。そのため、各PCa部材10に設けたシアコッター13を省略することも可能である。
【0055】
≪第2実施形態≫
次に、
図7〜
図10を参照して第2実施形態に係るRC建物1について説明する。なお、第1実施形態と形態又は機能が同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0056】
本実施形態のRC建物1は、第1実施形態の梁4よりも梁幅が大きな梁4を有しており、梁4における柱2との接合部近傍の一部が
図7に示されるPCa部分梁12により構築され、それ以外の大部分が現場打ちのコンクリートによって構築される。梁4の下方又は上方には、第1実施形態と同様の耐震壁5や、耐震性能を有しない壁等の図示しない壁が設けられる。本実施形態では梁4の上方に壁が設けられるものとして説明する。
【0057】
図7に示されるように、PCa部分梁12は、コンクリート部が梁4と同断面を有し、且つ上階の壁縦筋51(
図8参照)のピッチP51及びスターラップ42のピッチP42よりも小さな延在方向長さL1を有する構成とされている。PCa部分梁12は、比較的低強度の第2コンクリートを用いて工場やRC建物1の敷地内のヤードで製作される。スターラップ42のピッチP42は、壁縦筋51(
図8参照)のピッチP51よりも小さくなっている。PCa部分梁12の柱2側の第1端面12a及びこれに相反する側(梁4側)の第2端面12bには、図示しない複数のシアコッター13(
図2参照)が形成されているとよい。
【0058】
PCa部分梁12は、梁主筋41及びスターラップ42を組み立てた状態で梁主筋41のみを内部に含むように構成されている。梁主筋41は、一対の柱2間の全体を構成する長さとされる必要はなく、少なくともPCa部分梁12の製作時や運搬時に鉄筋籠として形状を維持できる長さとされていればよい。具体的には、水平方向にそれぞれ複数列に並べられた上端筋41U及び下端筋41Lが、PCa部分梁12の柱2側の第1端面12aから、少なくとも柱2内に所定の定着長さL2をもって進入する長さだけ突出し、且つ梁4側の第2端面12bから、少なくとも所定の形状維持長さだけ突出するように設けられている。
【0059】
本実施形態のPCa部分梁12は、最も端に配置されるスターラップ42や壁縦筋51の外側(壁端側)に配置される。つまり、PCa部分梁12は、内部にスターラップ42及び壁縦筋51が設けられない構成とされている。この実施形態では、PCa部分梁12は、柱2側の第1端面12aが柱2の外面に一致する位置に配置され、梁4の端部を構成する。他の実施形態では、PCa部分梁12は、内部にスターラップ42が設けられる一方、内部に壁縦筋51が設けられず且つ壁縦筋51に重ならない位置に配置される構成とされてもよい。このような構成では、スターラップ42によりPCa部分梁12のコンクリート部が補強される。更に他の実施形態では、互いに隣接する一対のスターラップ42の間にPCa部分梁12が配置されてもよい。この場合には、PCa部分梁12は、柱2の外面から離間した位置に配置され、梁4の延在方向の中間部を構成する。
【0060】
PCa部分梁12が柱2と同じ第1コンクリート又はそれよりも高強度のコンクリートを用いて製作されている場合には、PCa部分梁12が一部を柱2の内部に進入させ、残りの部分が耐震壁5の端部を構成するように配置されてもよい。
【0061】
次に、
図8〜
図10を参照して、RC建物1の構築方法について説明する。ここでは、RC建物1のうち、N階の構築手順を説明する。
図1に示されるPCa部分梁12は、予め工場やヤードでの製作によって用意しておく。
【0062】
図8(A)に示されるように、N階の柱2の鉄筋(柱主筋21及びフープ筋22)を、N+1階の床面まで組み立てた後、図示しないクレーンで吊り上げたPCa部分梁12を、第1端面12aから突出する梁主筋41が柱2の鉄筋に干渉しない位置で吊り下ろし、梁主筋41が所定の位置に進入するように横にスライドさせる。これにより、
図8(B)に示されるように、PCa部分梁12を、柱2側の第1端面12aが柱2の外面に一致する所定の位置に配置する。
【0063】
その後、一対の柱2に架け渡されるように梁4の梁主筋41、スターラップ42及び上階の壁縦筋51を組み立てて固定すると共に、
図8(C)に示されるように、柱2の輪郭並びに壁及び梁4の輪郭に沿って柱型枠7及び梁型枠9を組み立てる。スターラップ42及び上階の壁縦筋51は、予めPCa部分梁12に組み立てられていてもよい。梁型枠9は、PCa部分梁12の位置に関わりのない大きさにして柱型枠7に結合するとよく、PCa部分梁12を下方及び両側方から挟み込むように組み立てる。これにより、PCa部分梁12が柱2と梁4との境界部に設けられたコンクリート止めとして機能する。
【0064】
型枠の組み立て完了後、
図9(D)に示されるように、第1コンクリートを柱型枠7内に打設してN階の柱2を構築する。その後、
図9(E)に示されるように、第2コンクリートを梁型枠9内に打設してN階の梁4を構築する。なお、先に第2コンクリートを用いて梁4を構築し、後から第1コンクリートを用いて柱2を構築してもよい。
【0065】
コンクリートの硬化後、柱型枠7及び梁型枠9を取り外すことにより、
図9(F)に示されるように、第1コンクリートにより構築された柱2と、第2コンクリートにより構築され、柱2に接合された梁4が完成する。N+1階の構築は、上記手順を繰り返すことによって行われる。
【0066】
このように構築されるRC建物1では、
図7及び
図8(A)、(B)に示されるように、PCa部分梁12が、壁縦筋51のピッチP51よりも小さな延在方向長さL1を有すると共に少なくとも定着長さL2分を突出させる態様で梁主筋41が一体に形成されるため、PCa部分梁12を壁縦筋51に重ならない位置に設け、コンクリート止めとして機能させることができる。そのため、施工現場においてコンクリート止めを設けることなくコンクリートの打ち分けを行い、第1コンクリートにより構築された柱2と、第2コンクリートにより構築された梁4と、梁4の一部を構成するPCa部分梁12とを備えたRC建物1を、作業を煩雑にすることなく、また、材料費が高い第1コンクリートを必要以上に多く用いることなく構築することができる。これにより、コスト及び施工手間を抑制することができる。また、PCa部分梁12は延在方向長さL1が小さく軽量であるため、施工現場に大型の揚重機が必要になることもない。
【0067】
RC建物1では、
図9(F)に示されるように、PCa部分梁12が柱2と梁4との接合部に設けられている。そのため、PCa部分梁12により構成される部分を除く梁4の全体が第2コンクリートにより構築される。また、本実施形態では、PCa部分梁12が、柱2に突入しないように梁4の端部に配置されると共に、第2コンクリートを用いて製作されているため、柱2の全体のみが第1コンクリートにより構築され、梁4の全体が第2コンクリートにより構築される。
【0068】
PCa部分梁12が柱2の外面から離間した位置、即ち梁4の延在方向の中間部に設けられる場合には、柱2並びに、梁4における柱2との接合部(離間寸法分)が第1コンクリートにより構築され、梁4の残りの部分が第2コンクリートにより構築される。これにより、梁4のPCa部分梁12よりも柱2側の端部が第1コンクリートにより構築されることになるが、施工の容易性を考慮して所望の位置にPCa部分梁12を設けることができる。また、工区境が梁4の中間部にある場合等には、梁4の延在方向の一部分だけを構築することもできる。
【0069】
図10は、第2実施形態に係るRC建物1の変形例を示している。
図10(A)に示されるように、本変形例では、N階に設けられる壁の壁縦筋51が梁4の下方に且つ梁4の内部に進入するように組み立てられている。このような場合、
図8(A)に示されたようにPCa部分梁12を横方向にスライドさせることができない。そこで、このような場合には、N階の柱2のフープ筋22を、N+1階の床面まで組み立てずに、梁4の内部に配置されるフープ筋22をPCa部分梁12の下端筋41Lと上端筋41Uとの間に仮置きしておき、PCa部分梁12を吊り下ろすだけで所定の位置に配置する。
【0070】
これにより、
図10(B)に示されるように、仮置きされたフープ筋22が柱主筋21を取り囲むように配置される。その後、仮置きされたフープ筋22を所定の位置に配置して柱主筋21に結束することにより、
図10(C)に示されるように、PCa部分梁12が、柱2側の第1端面12aを柱2の外面に一致させた所定の位置に配置されると共に、柱2の柱主筋21及びフープ筋22がN+1階の床面まで組み立てられた状態(
図8(B)と同じ状態)にすることができる。以降の手順は
図8(C)〜
図9(F)と同じであるため、図示及び説明を省略する。このような手順でRC建物1を構築しても、第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、RC建物1がRC構造の柱2と耐震壁5やその他の壁とにより構成されているが、一部の階層等がSRC構造やS構造等の他の構造とされていてもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。