特許第6636412号(P6636412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6636412保守員自動手配システム及び保守員自動手配方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636412
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】保守員自動手配システム及び保守員自動手配方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20200120BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20200120BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20200120BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20200120BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   H04N7/18 D
   H04M11/00 301
   G06Q10/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-236058(P2016-236058)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-90392(P2018-90392A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
(72)【発明者】
【氏名】賀来 靖貴
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057308(JP,A)
【文献】 特開2016−108087(JP,A)
【文献】 特開2010−049299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
G06Q 10/00
H04M 11/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の保守員の各々の作業状態の画像を収集して、収集した前記画像から特定の形状の物体を判別したとき、判別した前記物体の情報から推定される作業状態を判定して記憶する作業状態判定部と、
保守員の派遣要求を受信するオンコール受信部と、
前記オンコール受信部が前記派遣要求を受信したとき、前記作業状態判定部が記憶した各々の前記保守員の作業状態に基づいて、前記派遣要求に対応可能な保守員を選定するオンコール対応保守員選定部と、を備え
前記物体の情報には、保守作業時に前記保守員が扱う特定の部品の形状情報、保守作業時に前記特定の部品がどのように動くのかを示す動きの情報、作業完了報告書、及び、前記保守員の移動を示す物体の形状情報が、含まれる
保守員自動手配システム。
【請求項2】
さらに、各々の前記保守員の位置情報を取得して記憶する保守員位置記憶部を備え、
前記オンコール対応保守員選定部は、各々の前記保守員の作業状態と、各々の前記保守員の位置情報とに基づいて、前記派遣要求に対応可能な保守員を選定するようにした
請求項1に記載の保守員自動手配システム。
【請求項3】
さらに、各々の前記保守員のスキルを記憶する保守員スキル記憶部を備え、
前記オンコール対応保守員選定部は、各々の前記保守員の作業状態と、各々の前記保守員の位置情報と、各々の前記保守員のスキルとに基づいて、前記派遣要求に対応可能な保守員を選定するようにした
請求項2に記載の保守員自動手配システム。
【請求項4】
前記作業状態判定部は、収集した前記画像から、昇降機の前記特定の部品を検出したとき、該当する保守員が作業中と判定し、収集した前記画像から、前記作業完了報告書を検出したとき、該当する保守員が作業完了と判定し、画像の収集ができないとき、該当する作業員が作業をしていない状態と判定し、
前記オンコール対応保守員選定部は、前記保守員の派遣要求があったとき、各々の前記保守員の位置情報から、前記派遣要求があった昇降機の設置場所に派遣可能であり、かつ前記作業状態判定部が判定して記憶した作業状態で決まる優先度から、前記派遣要求があった昇降機に派遣する保守員を選定するようにした
請求項1に記載の保守員自動手配システム。
【請求項5】
前記作業状態判定部は、収集した複数の前記画像から、前記昇降機の前記特定の部品に動きがあることを判別したときに、該当する保守員が作業中と判別するようにした
請求項4に記載の保守員自動手配システム。
【請求項6】
前記作業状態判定部は、収集した前記画像から、前記保守員の移動を示す物体の形状情報として、車両のハンドル、道路上のガードレール、道路上の信号機、及び道路上の交通標識の少なくともいずれか1つを検出したとき、該当する作業員が移動中と判定するようにした
請求項4に記載の保守員自動手配システム。
【請求項7】
前記作業状態判定部が収集する画像は、それぞれの前記保守員が保守作業時に装着するカメラ装置が撮影した画像である
請求項1〜6のいずれか1項に記載の保守員自動手配システム。
【請求項8】
複数の保守員の各々の作業状態の画像を収集して、収集した前記画像から特定の形状の物体を判別したとき、判別した前記物体の情報から推定される作業状態を判定する作業状態判定処理と、
保守員の派遣要求を受信したとき、前記作業状態判定処理により判定した各々の前記保守員の作業状態に基づいて、前記派遣要求に対応可能な保守員を選定するオンコール対応保守員選定処理と、を含み、
前記物体の情報には、保守作業時に前記保守員が扱う特定の部品の形状情報、保守作業時に前記特定の部品がどのように動くのかを示す動きの情報、作業完了報告書、及び、前記保守員の移動を示す物体の形状情報が、含まれる
保守員自動手配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守員自動手配システム及び保守員自動手配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターやエスカレーターなどの昇降機は、保守員により定期的に保守点検が必要である。また、昇降機の状態に応じて、随時、保守作業を行うことがある。例えば、エレベーターなどの昇降機に設置された異常通報装置が、昇降機の何らかの故障の発生を検出したとき、異常通報装置は、昇降機を保守管理する会社の監視センターに保守員の派遣要請を行う。
【0003】
また、昇降機が設置された建物の管理人が、監視センターに電話などで保守員の派遣要請を行う場合もある。例えば、エレベーターの場合には、乗りかごに設置された照明器具の不良、行先階登録釦の不良、乗場の呼び出し釦の不良などが発生したとき、該当するエレベーターが設置された建物の管理者は、エレベーターの監視センターに、保守員の派遣要請を行う。以下の説明では、これらの保守員の派遣要請をオンコールと称する。
【0004】
通常、これらのオンコールを受信した監視センターでは、オペレーターが、該当するエレベーターが設置されたビルの保守担当エリア内に配置された複数の保守員の当日のスケジュールを調べて、派遣できそうな保守員を選定するようにしている。例えば、例えばオンコールがあった建物の近くにいる可能性のある保守員や、現在作業中ではない可能性が高い保守員を選び出し、オペレーターは、選び出した保守員に対して、該当する建物に出動可能か否かの問い合わせを行う。
【0005】
ここで、問い合わせた保守員からすぐに出動可能であるという応答があれば、その保守員にオンコールがあった建物への出動を指示する。また、問い合わせた全ての保守員からの応答が、現在実行中の保守作業を中断すれば対応可能であるという応答の場合には、監視センターのオペレーターは、各保守員の当日の作業内容、保守員のスキルなどを勘案して、最適な保守員を選び出すようにしていた。
【0006】
このようにオペレーターが、多数の保守員の当日のスケジュールを調べて出動可否を問い合わせて候補者を選定する作業は、効率のよい保守員の選定作業とは言えなかった。すなわち、監視センターでは、保守員の作業がスケジュールどおりに進んでいるかどうかを把握できないだけでなく、全ての保守員が作業を実行中である場合には、どの作業員の作業を中断させることが適正であるかを正確に判断することは困難であった。
【0007】
このため、監視センターでのオンコール対応保守員の選定を支援するシステムとして、従来、特許文献1に記載されたものが提案されている。
特許文献1に記載されたシステムでは、各保守員が、現在位置を取得するGPS(Global Positioning System)の受信機付きの通信装置を所持し、その通信装置から送信された各保守員の位置を、監視センター側で地図上に表示するようにしたものである。また、特許文献1には、各保守員が所持する通信装置に、ウェアラブルカメラと称される小型のカメラ装置を接続して、カメラ装置で撮影した画像を監視センターに送り、監視センターで受信した画像をオペレーターが確認する技術が記載されている。
【0008】
このように、各保守員が所持する通信装置から送られた画像をオペレーターが確認することで、監視センターのオペレーターは、保守員が建物内にいて作業中であるか、建物の外で移動中であるか等の状態が分かり、オペレーターが保守員を選ぶ際の目安になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−6574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を適用したとしても、適切な作業員を選ぶのが困難なケースがある。例えば、オンコールが発生した建物の近くに移動中の保守員がおらず、全ての作業員が、建物内で作業中である場合には、どの作業員が作業を中断できるのかを、オペレーターは作業員が作業中の画像から判断しなければならない。しかしエレベーターの保守作業を行う場合、作業中の画像はどれもエレベーターの保守作業の画像であるため、どの画像も類似した画像になってしまう。このため、オペレーターは、類似した多数の作業中の画像から、どの程度作業が進行しているのかを判断する必要があるが、このような判断は容易ではなかった。
【0011】
したがって、単に作業員が所持した通信装置に接続したカメラ装置の画像を監視センターが収集するだけでは、オンコールが発生した際に、常に適切な作業員が選定できているとは言えなかった。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、オンコールが発生した際に、各作業員の状況に応じて、自動的に適切な作業員を選定できる作業員自動手配システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、複数の保守員の各々の作業状態の画像を収集して、収集した画像から特定の形状の物体を判別したとき、判別した物体の情報から推定される作業状態を判定して記憶する作業状態判定部と、保守員の派遣要求を受信するオンコール受信部と、オンコール受信部が派遣要求を受信したとき、作業状態判定部が記憶した各々の前記保守員の作業状態に基づいて、派遣要求に対応可能な保守員を選定するオンコール対応保守員選定部と、を備え、物体の情報には、保守作業時に保守員が扱う特定の部品の形状情報、保守作業時に特定の部品がどのように動くのかを示す動きの情報、作業完了報告書、及び、保守員の移動を示す物体の形状情報が、含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保守員の作業状態を撮影した画像から、保守員の保守作業がどの程度進行しているのかを、画像中の物体に基づいて的確に判別することができるので、保守員の派遣要求があったとき、適切な保守員を自動的に選定できるようになる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態例によるシステム全体の例を示す構成図である。
図2】本発明の一実施の形態例によるシステムをコンピューター装置で構成した場合のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態例による画像から状態を判定する例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態例による保守員選定処理の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施の形態例による保守員選定処理時の一覧の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する。)を、添付図面を参照して説明する。
【0017】
[1.システム構成例]
図1は、本例のシステム全体の構成を示す。
本例は、オンコール時に、エレベーター装置の保守員を選定するオンコール対応作業者自動手配システムとしたものである。
図1には、本例のオンコール対応作業者自動手配システム4が管理する4人の保守員1A,1B,1C,1Dの状態の概要を示す。オンコール対応作業者自動手配システム4は多数の保守員を管理するものであるが、ここでは説明を簡単にするために、4人の保守員1A,1B,1C,1Dを管理して、オンコール対応時に作業者を手配する例を説明する。
【0018】
保守員1Aは、保守対象のエレベーターが設置された建物の中で、エレベーターの巻き上げ機2の保守作業を実施中であり、作業実行状態である。また、保守員1Bは、保守員1Aとは別の建物で、巻き上げ機2の保守作業を終了し、作業完了報告書3の作成中であり、作業終了状態である。また、保守員1Cは、徒歩で移動中の移動状態であり、さらに、保守員1Dは、車で移動中の移動状態である。
【0019】
それぞれの保守員1A〜1Dは、測位用衛星からの信号を受信して現在位置を測位するGPS受信部5が内蔵された通信装置7を所持している。通信装置7としては、例えばスマートフォンやタブレット端末が使用される。
各保守員1A〜1Dが所持する通信装置7には、ウェアラブルカメラ6が接続されている。ウェアラブルカメラ6は、例えば各保守員1A〜1Dが保守作業時に装着するヘルメットに取り付けられ、保守員の視界に入る画像を撮影し、撮影した画像を記録する。ヘルメットにウェアラブルカメラ6を取り付けるのは一例であり、例えば保守員1A〜1Dの上着のポケットにウェアラブルカメラ6を入れたり、眼鏡にウェアラブルカメラ6を取り付けたりする等の様々な装着形態が可能である。
【0020】
通信装置7は、無線電話回線などを介して、エレベーターの監視センター8と通信を行い、GPS受信部5が測位した現在位置の情報や、ウェアラブルカメラ6が撮影した画像情報などを、監視センター8に伝送する。通信装置7から監視センター8への情報の伝送は、常時行う構成としてもよいが、一定時間毎に間欠的に行うようにしてもよい。あるいは、監視センター8側でオンコール対応が必要なときに、監視センター8からの指示で、現在位置の情報や撮影画像の情報を監視センター8に伝送するようにしてもよい。
【0021】
次に、監視センター8の構成について説明する。
図1に示す監視センター8は、オンコール対応作業者自動手配システム4として必要な構成のみを示す。
監視センター8は、オンコール対応作業者自動手配システム4として必要な構成として、保守員位置記憶部9、保守員スキル記憶部10、形状登録部11、作業状態判定部12、オンコール対応保守員選定部13、オンコール受信部21、及び表示部22を備える。
【0022】
監視センター8の保守員位置記憶部9は、各保守員1A〜1Dの通信装置7から伝送された、GPS受信部5が測位した現在位置の情報を収集して、収集した位置情報を記憶する保守員位置記憶処理を行う。この保守員位置記憶部9が、各保守員1A〜1Dの現在位置の情報を収集することで、監視センター8では、オンコールがあった建物の保守担当エリアにいる保守員をリストアップすることが可能となる。例えば保守員位置記憶部9に記憶される位置情報は、地図にリンクした情報であり、監視センター8の表示部22に表示される地図に各保守員1A〜1Dの位置が表示される。
【0023】
保守員スキル記憶部10には、本例のオンコール対応作業者自動手配システム4が管理するそれぞれの保守員がどのような故障対応が可能かを示すスキルが記憶される。例えば、各保守員のスキルを示す情報と、全保守員が所持する通信装置7を識別するIDとを組合せたテーブルが保守員スキル記憶部10に記憶されている。
【0024】
形状登録部11には、保守員がエレベーターの保守作業を行う際に、その保守作業時に保守員が扱う特定の部品の形状情報が予め記憶されている。この場合、形状登録部11に記憶される一部の部品の形状情報は、その部品が保守作業時にどのように動くのかを示す動きの情報も含む。
また、形状登録部11には、部品の形状情報の他に、作業完了報告書3の形状情報や、運転中判別用物体18(図3)の形状情報も記憶される。運転中判別用物体18としては、例えば車両(自動車)のハンドル、道路上のガードレール、道路上の信号機、道路上の交通標識などがある。
【0025】
作業状態判定部12は、各保守員1A〜1Dの作業状態判定処理を行う。すなわち、作業状態判定部12は、各保守員1A〜1Dの通信装置7から伝送された画像情報と、形状登録部11に記憶されている形状情報とを比較し、両者が一致した場合には、保守員が作業状態であるか、あるいは移動状態であるか等の保守員の状態を判定する。作業状態判定部12が判定した各保守員1A〜1Dの状態は、作業状態判定部12に記憶される。なお、具体的は状態の判定例については後述する。
【0026】
オンコール対応保守員選定部13は、オンコール時に、保守員位置記憶部9に記憶された各保守員の位置と、保守員スキル記憶部10に記憶された各保守員のスキルと、作業状態判定部12が判定した保守員の状態とを判断して、オンコールに対応する保守員を選定する。オンコール対応保守員選定部13がオンコールに対応する保守員を選定するオンコール対応保守員選定処理の具体的な例については後述する。
【0027】
オンコール受信部21は、監視センター8が監視中のいずれかのエレベーターから送信された故障情報を受信する。また、オンコール受信部21は、エレベーターが設置された施設の管理者などから電話などで、保守員の派遣要請であるオンコールがある場合に、オンコール情報を受信する。なお、オンコール受信部21でのオンコール情報の受信の中には、監視センター8のオペレーターが電話などで保守員の派遣要請を受ける場合の情報も含まれる。この場合、監視センター8のオペレーターが電話で受けたオンコール情報は、オンコール受信部21に入力される。
【0028】
表示部22には、オンコール対応保守員選定部13が保守員を選定した結果のリストなどが表示され、監視センター8のオペレーターによって、表示部22の表示内容が確認される。
【0029】
[2.監視センターのハードウェア構成例]
図2は、監視センター8のハードウェア構成例を示す。監視センター8は、例えばコンピューター装置Cで構成される。
コンピューター装置Cは、バスC4にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)C1、ROM(Read Only Memory)C2、及びRAM(Random Access Memory)C3を備える。さらに、コンピューター装置Cは、表示部C5、操作部C6、不揮発性ストレージC7、及びインターフェイスC8を備える。
【0030】
CPU C1は、監視センター8が備える各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM C2から読み出して実行する。RAM C3には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。例えば、CPU C1がROM C2に記憶されているプログラムを読み出すことで、オンコール対応保守員選定部13でのオンコール対応保守員選定処理が実行される。
【0031】
不揮発性ストレージC7としては、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージC7には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、コンピューター装置Cを監視センター8として機能させるためのプログラムが記録されている。また、保守員の位置情報及びスキル、部品などの形状情報などの、監視センター8が記憶する情報についても、不揮発性ストレージC7に記録される。
【0032】
インターフェイスC8には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、端子が接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを送受信することが可能である。
表示部C5や操作部C6は、監視センター8のオペレーターが使用する。例えば、オペレーターは、操作部C6の操作で、表示部C5が表示した候補の保守員のリストから、特定の保守員をオンコール対応の保守員を確定させる。
【0033】
[3.保守員の状態及びオンコール対応可否の具体例]
図3は、オンコール対応作業者の自動手配システム4において、監視センター8が、ウェアラブルカメラ6から得た各保守員1A〜1Dの視界の画像から、保守員1A〜1Dの状態を判別してオンコール対応の可否を登録する処理の具体的な例を示す。監視センター8が、各保守員1A〜1Dの視界の画像から保守員1A〜1Dの状態を判別する際には、形状登録部11に予め記憶された昇降機の部品などの形状情報と各保守員1A〜1Dの視界の画像とを比較し、保守員の状態を判定する。
【0034】
例えば図3Aに示すように、保守員1Aは、エレベーターの保守作業において、巻き上げ機2の構成部品の1つであるライニング14を取り外して手に持ち、巻き上げ機2の点検作業をしている。このとき、監視センター8に伝送されるウェアラブルカメラの画像には、ライニング14が含まれる。
作業状態判定部12は、形状登録部11に予め記憶されている昇降機部品の形状情報のデータベースの中から、ライニング14を検索する。そして、検索したライニング14と昇降機部品の形状情報のデータベースの中のものとが一致した場合、保守員1Aは、ライニング14を取り外す作業、つまり巻き上げ機2に関する作業をしていると自動で判定する。これにより作業状態判定部12は、保守員1Aの状態が「作業中」15であると判断し、保守員1Aについての情報として、「作業中」15を記憶する。
【0035】
このように、保守員が所持するウェアラブルカメラ6が撮影した画像の中に、昇降機の機器の部品の形状データがあるか否かを比較判定して照合することで、作業状態判定部12は、保守員が昇降機の作業中であるか否かを判定することができる。
【0036】
さらに、作業状態判定部12において、ライニング14が動いていること、つまりライニング14が保守員1Aによって動かされていることを認識することで、保守員1Aの状態が、「作業中」15であると判定する精度を更に高めることができる。すなわち、作業状態判定部12は、ライニング14などの昇降機の特定の部品を検出し、その検出した部品に動きがあることを撮影画像から判定した場合に、「作業中」15であると判定するようにしてもよい。この動きを検出した場合の「作業中」の情報と、動きを検出しない場合の「作業中」の情報とは、区別した情報としてもよい。例えば、動きを検出した場合の「作業中」は、「作業実行中」とし、動きを検出しない場合には、「作業準備中」のように区別してもよい。動きの判定は、例えば、連続して取得する画像の各々から抽出した部品の向きや大きさが所定の閾値以上に変化している場合や、連続する画像で、所定の部品を認識したりしなかったりする場合、また、抽出した部品と、別の部品との距離が所定の値以上変化する場合、及びこれらの場合の組み合わせに基づいて、部品が動いていると判断すればよい。
【0037】
このようにして、昇降機の構成部品であるライニング14の検出に基づいて、保守員1Aは、巻き上げ機2の保守作業を実施していると判定することができる。形状登録部11は、昇降機の保守作業時に分解や点検などの各種部品の形状情報を登録しておくことで、保守員が作業を実行中か否かを正確に判定できるようになる。この場合、昇降機の各機器について、保守作業の作業難易度、必要な作業時間、作業の中断難易度を予め対応付けて、作業状態判定部12の中で予めテーブルとして備えることで、作業の中断の可否または優先順位付けをすることができる。
【0038】
図3Aの例では、ライニング14の検出から巻き上げ機2の「作業中」を検出した場合、その作業には時間がかかる為、作業状態判定部12は、オンコール対応困難と判断し、その「オンコール対応困難」の情報を、保守員1Aの情報に付加する。
なお、オンコール対応が容易と判断する作業の例としては、例えば、エレベーターのカゴ内の蛍光灯の交換作業中を検出した場合など、比較的短時間に終了する作業がある。
【0039】
次に、図3Bに示す保守員1Bについて説明すると、保守員1Bは、巻き上げ機2の保守作業が完了し、作業完了報告書3を作成中の状態である。
形状登録部11には、作業完了報告書3を形状情報として予め記憶されている。そして、作業状態判定部12は、予め登録した形状情報の中から、形状登録部11に記憶された作業完了報告書3について検索し、一致した場合、保守員1Bが、予定作業を完了して、現在報告書を作成中であると判定することができる。このとき、作業状態判定部12は、保守員1Bの状態として、「作業完了」16であることを判断し、保守員1Bについての情報として、「作業完了」16を記憶する。
また、作業状態判定部12は、「作業完了」16の情報を記憶する際には、オンコール対応「可」の情報を付加する。
【0040】
次に、図3Cに示す保守員1Cについて説明すると、保守員1Cは、保守作業と報告書作成が完了し、移動中の状態を示す。この状態では、保守員1Cは、ウェアラブルカメラ6の電源をオフとしている。
作業状態判定部12は、保守員1Cが装着したウェアラブルカメラ6が撮影した画像が得られない状態である。このとき、作業状態判定部12は、保守員1Cの状態として「移動中」17と判定する。また、作業状態判定部12は、「移動中」17の情報を記憶する際には、オンコール対応「可」の情報を付加する。この場合のオンコール対応「可」は、保守員1Bの場合(作業完了報告書3を作成中)のオンコール対応「可」よりも優先順の高いオンコール対応「可」とする。
【0041】
次に、図3Dに示す保守員1Dについて説明すると、保守員1Dは、自動車を運転して移動中の状態を示す。この状態では、ウェアラブルカメラ6は、自動車のハンドル、道路上のガードレール、道路上の交通信号機、道路上の交通標識などを撮影する。
ここで、形状登録部11には、運転中判別用物体18として、これらのハンドル、ガードレール、交通信号機、交通標識などの形状情報が記憶されており、作業状態判定部12は、撮影画像と運転中判別用物体18とが一致したことを判定する。したがって、作業状態判定部12は、保守員1Dの状態として、「移動中」17であると判定する。また、作業状態判定部12は、「移動中」17の情報を記憶する際には、オンコール対応「可」の情報を付加する。この場合のオンコール対応「可」についても、作業員1Cの場合と同様に優先順位が高いオンコール対応「可」とする。
このように、作業状態判定部12では、ウェラブルカメラ6で撮影した画像と、形状登録部11に記憶された形状情報とを比較することにより、保守員の動静を自動で判定することができるようになる。
【0042】
[4.オンコール対応保守員の選定処理例]
次に、このように各保守員について判定した状態の情報に基づいて、オンコール時に保守員を選定する処理について説明する。
図4は、このオンコール時に保守員を選定する処理の流れを示すフローチャートである。監視センター8のオンコール対応保守員選定部13は、オンコール受信部21でのオンコールの受信により、保守員の選定処理を開始する。
オンコール対応保守員選定部13は、保守員の選定処理を開始すると、保守員位置記憶部9にアクセスして、オンコールがあった建物を含む保守エリアにおける保守員全員の位置情報を収集する(ステップS1)。これにより、オンコール対応保守員選定部13は、オンコールに対応する対象となる保守員を、保守エリア単位で絞込むことができる。
【0043】
次に、オンコール対応保守員選定部13は、保守員スキル記憶部10にアクセスし、ステップS1の手順S1で抽出した保守エリアにいる保守員の中から、さらに、オンコールに対応できるスキルをもった候補の保守員を抽出する(ステップS2)。
さらに、オンコール対応保守員選定部13は、ステップS1及びS2で抽出した保守員について、それぞれの作業状態を把握する(ステップS3)。ここでは、それぞれの保守員ごとに、状態A:「作業中」、状態B:「作業完了」、状態C:「移動中」のいずれかの作業状態の情報を取得する。
【0044】
そして、オンコール対応保守員選定部13は、状態C:「移動中」の保守員がいるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、状態C:「移動中」の保守員が存在する場合(ステップS4の「有」)、オンコール対応保守員選定部13は、状態C:「移動中」の保守員を選定する(ステップS5)。なお、状態C:「移動中」の保守員が複数存在する場合には、オンコール対応保守員選定部13は、オンコールが発生した建物に最も近い位置の保守員を優先的に選定する。
【0045】
また、ステップS4において、状態C:「移動中」の保守員が一人も存在しない場合には(ステップS4の「無」)、オンコール対応保守員選定部13は、状態B:「作業完了」の保守員がいるか否かを判断する(ステップS6)。ここで、状態B:「作業完了」の保守員が存在する場合(ステップS6の「有」)、オンコール対応保守員選定部13は、状態B:「作業完了」の保守員を選定する(ステップS7)。この場合にも、ステップS5と同様に、同じ状態(状態B)の保守員が複数存在する場合には、オンコール対応保守員選定部13は、オンコールが発生した建物に最も近い位置の保守員を優先的に選定する。
【0046】
さらに、ステップS6において、状態B:「作業完了」の保守員が一人も存在しない場合には(ステップS6の「無」)、オンコール対応保守員選定部13は、状態A:「作業中」の保守員の中で、作業の中断が容易な保守員がいるか否かを判断する(ステップS8)。ここで、状態A:「作業中」で作業の中断が容易な保守員が存在する場合(ステップS8の「有」)、オンコール対応保守員選定部13は、該当する保守員を選定する(ステップS9)。この場合にも、ステップS5,S7と同様に、同じ状態(状態Cで中断容易)の保守員が複数存在する場合には、オンコール対応保守員選定部13は、オンコールが発生した建物に最も近い位置の保守員を優先的に選定する。
【0047】
そして、オンコール対応保守員選定部13は、ステップS5,S7又はS9で選択した保守員に対して、オンコールがあった建物に派遣指示を行う(ステップS10)。この派遣指示は、例えばオンコール対応保守員選定部13が、該当する保守員の通信装置に自動的に派遣指示の情報(メールなど)を送信する。あるいは、オンコール対応保守員選定部13で選定した保守員の情報を表示部22が表示し、その表示情報を確認したオペレーターが、該当する保守員に連絡を取るようにしてもよい。
【0048】
また、ステップS8において、全員が状態A:「作業中」で、かつ作業中止が困難な場合(ステップS8の「無」)には、監視センター8は、オンコールの対応に時間を要す旨を、オンコールがあった建物の管理者に連絡する(ステップS11)。この連絡についても、オンコール対応保守員選定部13が自動的に行う場合と、オンコール対応保守員選定部13での選定結果を表示部22での表示から確認したオペレーターが行う場合とがある。
そして、ステップS11の処理の後、該当する建物が存在する保守エリアに近接する別の保守エリアで、ステップS1からの処理で保守員を選定する処理を行う。
【0049】
[5.選定結果の表示例]
図5は、オンコール対応保守員選定部13が選定した結果の表示例を示す。この保守員の選定結果は、例えば表示部22に表示される。
選定結果100として、オンコール内容101と、保守員候補リスト102と、補足説明103とが表示される。
オンコール内容101としては、「蛍光灯切れ」等の保守員派遣要求があった具体的な内容が表示される。
【0050】
保守員候補リスト102としては、例えばオンコールがあった建物を含む保守エリアにおける保守員全員(又は優先順位で上位の所定数までの保守員)が表示される。作業者候補リスト102の欄には、各保守員(作業者)の氏名A〜E、保守員の現在位置の情報、オンコールが発生した現場との距離、作業状態、保守員スキルランク(ランクA〜C)、対応可否、及び優先順位が表示される。補足説明103の欄には、対応可否で「不可」となっている場合の理由が表示される。すなわち、作業中で対応不可や、スキル不足で対応不可などが表示される。
【0051】
図5の例では、A〜Eの5人の保守員が表示され、それぞれの保守員ごとに、オンコールに対する派遣の可否で「可」となった3人の保守員B,D,Eの中で、オンコールが発生した現場との距離が最も近い保守員Bが、優先順位1位に選定された状態を示す。オンコール対応保守員選定部13は、優先順位1位となった保守員に、オンコールがあった建物への派遣指示を行う。あるいは、この図5に示す表示を確認したオペレーターが、優先順位1位となった保守員Bに対して、オンコールがあった建物への派遣の連絡を行う。このように、保守員候補リスト102は、派遣要求に対応可能な保守員の情報を表示する。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態例のオンコール対応作業者自動手配システム4によると、保守員が所持した通信装置7に接続されたウェアラブルカメラ6が撮影した画像から、保守員の状態(作業状態や移動状態など)を正確に判別できるようになる。したがって、エレベーターの保守員のオンコールに対する派遣保守員の選定を、そのときの各保守員の作業状態に応じて、適切な保守員を自動的に選定できるようになる。また、監視センターのオペレーターは、保守員の派遣要求があった際に、派遣する保守員を選ぶ作業が必要なくなり、それだけオペレーターの負担を軽減できるようになる。
【0053】
[6.変形例]
なお、本発明は上記した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上述した実施の形態例では、保守員が所持する通信装置7には、ウェアラブルカメラ6を接続して、そのウェアラブルカメラ6が撮影した画像を監視センター8に伝送するようにした。これに対して、通信装置7として、スマートフォンやタブレット端末などのカメラ部を内蔵した装置を使用して、その通信装置7が内蔵したカメラ部が撮影した画像を、監視センター8に伝送するようにしてもよい。
【0054】
また、保守員が作業中と判断する状態については、形状登録部11が記憶した形状情報との比較で、より細かい作業状態を判断して、登録するようにしてもよい。例えば、図3Aに示す例では、保守員1Aとして、「巻き上げ機のライニング点検作業中」のような情報を登録させて、保守員候補リスト102内に、この登録情報を表示させるようにしてもよい。このようにすることで、作業完了までの時間の推定などが可能になり、保守員を選定する際に、より的確な選定ができるようになる。
【0055】
また、上述した実施の形態例では、測位システムであるGPSを適用して保守員の位置を判断するようにしたが、GPS以外のシステムで保守員の位置を判断するようにしてもよい。あるいは、保守員の位置の位置情報の取得処理とその位置からの距離の判断は省略して、派遣要求があった場所を担当エリアとする全ての保守員の撮影画像から判断した状態(作業状態や移動状態)から、保守員の候補を選定するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態例では、昇降機としてエレベーターを例にして説明したが、本発明は、エスカレーターなどのその他の昇降機の保守員の選定処理に適用してもよい。あるいは、本発明は、昇降機以外の各種設備や機器の保守員の選定処理に適用してもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態例の構成の一部を他の実施の形態例や変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態例の構成に他の実施の形態例や変形例の構成に置き換えることも可能である。また、実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0057】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1A〜1D…保守員、2…巻き上げ機、3…作業完了報告書、4…オンコール対応作業者自動手配システム、5…GPS受信部、6…ウェアラブルカメラ、7…通信装置、8…監視センター、9…保守員位置記憶部、10…保守員スキル記憶部、11…形状登録部、12…作業状態判定部、13…オンコール対応保守員選定部、14…ライニング、15…作業中情報、16…作業完了情報、17…移動中情報、18…運転中判別用物体、21…オンコール受信部、22…表示部、100…選定結果、101…オンコール内容、102…保守員候補リスト、103…補足説明、C…コンピューター装置、C1…中央制御ユニット(CPU)、C2…ROM、C3…RAM、C4…バスライン、C5…表示部、C6…操作部、C7…不揮発性ストレージ、C8…インターフェイス
図1
図2
図3
図4
図5