(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中央連結部は、前記周辺連結部を形成する材料の電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有する材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電容量式センサ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施形態に係る静電容量式センサを表す平面図である。
図2は、本実施形態に係る静電容量式センサを模式的に表した断面図である。
図3は、本実施形態の基材に設けられた電極の構成を表す平面図である。
図4は、
図3に表した切断面C1−C1における断面図である。
図5は、
図3に表した切断面C2−C2における断面図である。
なお、透明電極は透明なので本来は視認できないが、
図1および
図3では理解を容易にするため透明電極の外形を示している。
【0020】
本願明細書において「透明」および「透光性」とは、可視光線透過率が50%以上(好ましくは80%以上)の状態を指す。更に、ヘイズ値が6%以下であることが好適である。本願明細書において「遮光」および「遮光性」とは、可視光線透過率が50%未満(好ましくは20%未満)の状態を指す。
【0021】
図1および
図2に表したように、本実施形態に係る静電容量式センサ1は、基材2と、光学透明粘着層30と、パネル3と、を備える。
図2に表したように、基材2、光学透明粘着層30およびパネル3は、この順に積層されている。すなわち、光学透明粘着層30は、基材2とパネル3との間に設けられている。静電容量式センサ1の製造工程において、基材2およびパネル3のそれぞれの外側の主面は、例えば保護シート43などにより覆われている。
【0022】
基材2は、透光性を有し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の透明基材やガラス基材等で形成される。基材2の一方の主面には、透明電極などが設けられている。この詳細については、後述する。パネル3は、透光性を有する。パネル3の材料は、特には限定されない。パネル3の材料としては、ガラス基材やプラスチック基材が好ましく適用される。パネル3は、基材2とパネル3との間に設けられた光学透明粘着層(OCA;Optical Clear Adhesive)30を介して基材2と接合されている。光学透明粘着層(OCA)30は、アクリル系粘着剤や両面粘着テープ等からなる。
【0023】
図1に表したように、静電容量式センサ1は、パネル3側の面の法線に沿った方向(Z1−Z2方向)からみて、検出領域11と非検出領域25とからなる。検出領域11は、指Fなどの操作体により操作を行うことができる領域であり、非検出領域25は、検出領域11の外周側に位置する額縁状の領域である。非検出領域25は、パネル3の主面に設けられた加飾層14(
図2参照)によって遮光され、静電容量式センサ1におけるパネル3側の面から基材2側の面への光(外光が例示される。)および基材2側の面からパネル3側の面への光(静電容量式センサ1と組み合わせて使用される表示装置のバックライトからの光が例示される。)は、非検出領域25を透過しにくくなっている。
【0024】
図1、
図3、
図4(
図3に表した切断面C1−C1における断面図)および
図5(
図3に表した切断面C2−C2における断面図)に表したように、基材2の一方の主面には、第1の電極連結体8と、第2の電極連結体12と、が設けられている。第1の電極連結体8は、検出領域11に配置され、複数の第1の透明電極4を有する。
図3を参照しつつ
図5に示すように、複数の第1の透明電極4は、基材2におけるZ1−Z2方向に沿った方向を法線とする主面のうちZ1側に位置する主面(以下、「おもて面」と略記する場合がある。)2aに設けられている。各第1の透明電極4は、細長い第1の連結部7を介してY1−Y2方向(第1の方向)に連結されている。そして、Y1−Y2方向に連結された複数の第1の透明電極4を有する第1の電極連結体8が、X1−X2方向に間隔を空けて配列されている。第1の連結部7は、第1の透明電極4に一体として形成されている。
【0025】
第1の透明電極4および第1の連結部7は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性材料でスパッタや蒸着等により形成される。透明導電性材料としては、ITOの他に、銀ナノワイヤに代表される金属ナノワイヤ、メッシュ状に形成された薄い金属、あるいは導電性ポリマーなどが挙げられる。これは、後述する透明導電性材料においても同じである。
【0026】
第2の電極連結体12は、検出領域11に配置され、複数の第2の透明電極5を有する。
図3を参照しつつ
図4に示すように、複数の第2の透明電極5は、基材2のおもて面2aに設けられている。このように、第2の透明電極5は、第1の透明電極4と同じ面(基材2のおもて面2a)に設けられている。
図4および
図5に示すように、各第2の透明電極5は、細長い第2の連結部10を介してX1−X2方向(第2の方向)に連結されている。そして、X1−X2方向に連結された複数の第2の透明電極5を有する第2の電極連結体12が、Y1−Y2方向に間隔を空けて配列されている。第2の連結部10は、第2の透明電極5とは別体として形成されている。なお、X1−X2方向は、Y1−Y2方向と交差している。例えば、X1−X2方向は、Y1−Y2方向と垂直に交わっている。
【0027】
第2の透明電極5は、ITO等の透明導電性材料でスパッタや蒸着等により形成される。第2の連結部10は、ITO等の透明導電性材料で形成される。あるいは、第2の連結部10は、ITO等の透明導電性材料を含む第1層と、第1層よりも低抵抗で透明な金属からなる第2層と、を有していてもよい。第2の連結部10が第1層と第2層との積層構造を有する場合には、第2層は、Au、Au合金、CuNiおよびNiよりなる群から選択されたいずれかにより形成されることが好適である。この中でも、Auを選択することがより好適である。第2層がAuにより形成された場合には、第2の連結部10は、良好な耐環境性(耐湿性、耐熱性)を得ることができる。
【0028】
図4および
図5に示すように、各第1の透明電極4間を連結する第1の連結部7の表面には、絶縁層20が設けられている。
図4に示すように、絶縁層20は、第1の連結部7と第2の透明電極5との間の空間を埋め、第2の透明電極5の表面にも多少乗り上げている。絶縁層20としては、例えばノボラック樹脂(レジスト)が用いられる。
【0029】
図4および
図5に示すように、第2の連結部10は、絶縁層20の表面20aから絶縁層20のX1−X2方向の両側に位置する各第2の透明電極5の表面にかけて設けられている。第2の連結部10は、各第2の透明電極5間を電気的に接続している。
【0030】
図4および
図5に示すように、各第1の透明電極4間を接続する第1の連結部7の表面には絶縁層20が設けられており、絶縁層20の表面に各第2の透明電極5間を接続する第2の連結部10が設けられている。このように、第1の連結部7と第2の連結部10との間には絶縁層20が介在し、第1の透明電極4と第2の透明電極5とは電気的に絶縁された状態となっている。本実施形態では、第1の透明電極4と第2の透明電極5とが同じ面(基材2のおもて面2a)に設けられているため、静電容量式センサ1の薄型化を実現できる。
【0031】
図3、
図4および
図5に表した各連結部の配置例では、第1の連結部7が第1の透明電極4に一体として形成され、第2の連結部10が第1の連結部7を覆う絶縁層20の表面20aに第2の透明電極5とは別体として形成されている。すなわち、第2の連結部10は、ブリッジ配線として設けられている。但し、各連結部の配置形態は、これだけには限定されない。例えば、第1連結部7が絶縁層20の表面20aに第1の透明電極4とは別体として形成され、第2の連結部10が第2の透明電極5に一体として形成されていてもよい。すなわち、第1の連結部7がブリッジ配線として設けられていてもよい。本実施形態に係る静電容量式センサ1の説明では、第2の連結部10がブリッジ配線として設けられた場合を例に挙げる。
【0032】
図3および
図4に表したように、第1の連結部10は、中央連結部10aと、周辺連結部10bと、を有する。中央連結部10aは、第2の電極連結体12が延びたX1−X2方向において検出領域11の中央部に配置された複数の第2の透明電極5を電気的に接続している。周辺連結部10bは、第2の電極連結体12が延びたX1−X2方向において検出領域11の中央部以外(例えば端部)に配置された複数の第2の透明電極5を電気的に接続している。
【0033】
なお、第1の連結部7、第2の連結部10および絶縁層20は、いずれも検出領域11内に位置するものであり、第1の透明電極4および第2の透明電極5と同様に透光性を有する。
【0034】
図1および
図2に示すように、非検出領域25には、第1の配線部61、第2の配線部62および第3の配線部63が形成されている。第1の配線部61および第2の配線部62は、第2の電極連結体12の両側の端部から引き出されている。具体的には、第1の配線部61は、第2の電極連結体12の一方の端部(X1側の端部)から一方の非検出領域(X1側の非検出領域)25に引き出されて延びている。第1の配線部61は、第2の電極連結体12の一方の端部に電気的に接続されている。第2の配線部62は、第2の電極連結体12の他方の端部(X2側の端部)から他方の非検出領域(X2側の非検出領域)25に引き出されて延びている。第2の配線部62は、第2の電極連結体12の他方の端部に電気的に接続されている。
【0035】
第3の配線部63は、第1の電極連結体8の一方の端部から引き出されている。具体的には、第3の配線部63は、第1の電極連結体8の一方の端部(Y2側の端部)から一方の非検出領域(Y2側の非検出領域)25に引き出されて延びている。第3の配線部63は、第1の電極連結体8の一方の端部に電気的に接続されている。
【0036】
図1に表したように、第2の電極連結体12は、接続配線16を介して第1の配線部61および第2の配線部62に電気的に接続されている。第1の配線部61および第2の配線部62は、非検出領域25に設けられた接点部17において互いに電気的に接続されているとともに、フレキシブルプリント基板29と電気的に接続される外部接続部27に接続されている。すなわち、第1の配線部61および第2の配線部62は、互いに電気的に接続されているとともに、第2の電極連結体12と、外部接続部27と、を電気的に接続している。
【0037】
第1の電極連結体8は、接続配線15を介して第3の配線部63に電気的に接続されている。第3の配線部63は、フレキシブルプリント基板29と電気的に接続される外部接続部27に接続されている。すなわち、第3の配線部63は、第1の電極連結体8と、外部接続部27と、を電気的に接続している。外部接続部27は、例えば導電ペーストを介して、フレキシブルプリント基板29と電気的に接続されている。
【0038】
第1の配線部61と第3の配線部63との間には、絶縁層19が設けられている。例えば、絶縁層19は、第3の配線部63の表面に形成されている。このように、絶縁層19が第1の配線部61と第3の配線部63との間に介在するため、第1の配線部61および第2の配線部62と、第3の配線部63と、は互いに電気的に絶縁された状態となっている。
【0039】
各配線部61、62、63は、Cu、Cu合金、CuNi合金、Ni、Ag、Au等の金属を有する材料により形成される。各接続配線15、16は、ITO等の透明導電性材料で形成され、検出領域11から非検出領域25に延出している。第1の配線部61および第2の配線部62は、接続配線16の上に非検出領域25内で積層され、接続配線16と電気的に接続されている。第3の配線部63は、接続配線15の上に非検出領域25内で積層され、接続配線15と電気的に接続されている。
【0040】
各配線部61、62、63は、基材2のおもて面2aにおける非検出領域25に位置する部分に設けられている。外部接続部27も、各配線部61、62、63と同様に、基材2のおもて面2aにおける非検出領域25に位置する部分に設けられている。
【0041】
図1では、理解を容易にするために各配線部61、62、63や外部接続部27が視認されるように表示しているが、実際には、
図2、
図4および
図5に示すように、基材2のおもて面2aに対向するようにパネル3が設けられている。パネル3におけるZ1−Z2方向に沿った方向を法線とする主面のうちZ1側に位置する主面(基材2のおもて面2aに対向する主面3bとは反対側の主面)3aは、静電容量式センサ1を操作する側の面となるため、本明細書において「操作面」ともいう。
【0042】
パネル3は、積層構造を有していてもよい。積層構造の具体例として、有機系材料からなるフィルム上に無機系材料からなるハードコート層が形成されている積層構造体が挙げられる。パネル3の形状は平板状であってもよいし、他の形状であってもよい。例えば、パネル3の操作面3aは曲面であってもよく、パネル3の操作面3aの面形状と、パネル3におけるZ1−Z2方向に沿った方向を法線とする主面のうちZ2側に位置する主面(換言すれば、操作面3aとは反対側の主面であって、以下、「裏面」と略記する場合がある。)3bの面形状と、が異なっていてもよい。
【0043】
パネル3の裏面3bにおける非検出領域25に位置する部分には、
図2に示すように、遮光性を有する加飾層14が設けられている。本実施形態に係る静電容量式センサ1では、パネル3の裏面3bにおける非検出領域25に位置する部分全体に加飾層14が設けられている。このため、静電容量式センサ1をパネル3の操作面3a側からみると、各配線部61、62、63および外部接続部27は加飾層14によって隠蔽され、視認されない。加飾層14を構成する材料は、遮光性を有する限り任意である。加飾層14は絶縁性を有していてもよい。
【0044】
図1に示す静電容量式センサ1では、
図4に示すようにパネル3の操作面3a上に操作体の一例として指Fを接触させると、指Fと指Fに近い第1の透明電極4との間、および指Fと指Fに近い第2の透明電極5との間で静電容量が生じる。静電容量式センサ1は、このときの静電容量変化に基づいて、指Fの接触位置を算出することが可能である。静電容量式センサ1は、指Fと第1の電極連結体8との間の静電容量変化に基づいて指Fの位置のX座標を検知し、指Fと第2の電極連結体12との間の静電容量変化に基づいて指Fの位置のY座標を検知する(自己容量検出型)。
【0045】
あるいは、静電容量式センサ1は、相互容量検出型であってもよい。すなわち、静電容量式センサ1は、第1の電極連結体8および第2の電極連結体12のいずれか一方の電極の一列に駆動電圧を印加し、第1の電極連結体8および第2の電極連結体12のいずれか他方の電極と指Fとの間の静電容量の変化を検知してもよい。これにより、静電容量式センサ1は、他方の電極により指Fの位置のY座標を検知し、一方の電極により指Fの位置のX座標を検知する。
【0046】
前述したように、本実施形態に係る静電容量式センサ1では、第1の配線部61および第2の配線部62は、第2の電極連結体12の両側の端部から引き出されてフレキシブルプリント基板29に接続されている。これにより、第2の電極連結体12の電気抵抗値を低減でき、電荷のチャージ時間を早めることができる。そのため、座標入力やジェスチャ操作に対して良好な応答性を得ることができる。すなわち、静電容量式センサ1の時定数をより小さい値に抑えることができる。
【0047】
なお、
図1および
図3に表した第1の透明電極4および第2の透明電極5の配置は、一例であり、これだけには限定されない。静電容量式センサ1は、指Fなどの操作体と透明電極との間の静電容量の変化を検知し、操作体の操作面3aへの接触位置を算出できればよい。例えば、第1の透明電極4と第2の透明電極5とは基材2の異なる主面に設けられていてもよい。
【0048】
図6は、本実施形態の中央連結部が断線した場合を例示する平面図である。
図7は、本実施形態の周辺連結部が断線した場合を例示する平面図である。
図8は、第2の透明電極の時定数を表すグラフである。
図9は、比較例の周辺連結部が断線した場合を例示する平面図である。
なお、
図6および
図7では、説明の便宜上、1つの第2の電極連結体12を表している。また、
図8に表したグラフの横軸に記載した符号5a〜5fは、
図7に表した第2の透明電極5a〜5fに対応している。
【0049】
例えば、製造工程などにおいて、保護シート43(
図2参照)を剥がすときにESD(Electro Static Discharge:静電気放電)が発生することがある。この際、
図9に示す比較例の第2の電極連結体112にESDが発生すると、ESDにより生じた電気が第2の連結部110に流れることがある。すると、局所的な熱膨張および熱収縮の少なくともいずれかが第2の連結部110に生じ、断線に至る破壊が第2の連結部110に生ずることがある。ここで、
図9に表した第2の連結部110は中央連結部110aと周辺連結部110bとを有し、中央連結部110aおよび周辺連結部110bは、同じ幅、同じ厚さ、および同じ材料(電気抵抗率)を互いに有する。すなわち、
図9に示す比較例の第2の電極連結体112では第2の連結部110は全て(中央連結部110aおよび周辺連結部110bの区別なく)電気的に等しい。そして、第1の配線部161および第2の配線部162は、第2の電極連結体112の両側の端部から引き出され、接点部17において互いに電気的に接続されている。このため、第2の電極連結体112にESDが発生して、ESDにより生じた電気が第2の連結部110に流れると、第2の連結部110を構成する中央連結部110aおよび周辺連結部110bのいずれにおいても断線が生じる可能性が同等にある。
図9に示す比較例の第2の電極連結体112では、中央連結部110aが1つであるのに対し周辺連結部110bは4つあるため、確率的には、周辺連結部110bにおいて断線が生じる可能性が中央連結部110aにおいて断線が生じる可能性よりも高くなる。
【0050】
入力領域の中央連結部110a以外の第2の連結部110(周辺連結部110b)が断線すると、第2の連結部110の断線が静電容量式センサの検出動作に影響を与えることがある。この点について、以下、
図9に示すように、X1−X2方向に並ぶ5つの第2の連結部110のうち、X2側から2つ目の第2の連結部110(第2の透明電極115dと第2の透明電極115eとの間に位置する周辺連結部110b)が断線した場合を具体例として説明する。
【0051】
X2側から2番目の周辺連結部110bが断線する前の状態では、この周辺連結部110bは第1の配線部161よりも第2の配線部162の近くに位置するため、この周辺連結部110bの両端に接続されている2つの第2の透明電極115dおよび第2の透明電極115eへの電荷のチャージは、第2の配線部162側から行われることが支配的である。すなわち、X2側から2番目の周辺連結部110bのX2側に接続されている第2の透明電極115eへの電荷のチャージを経て、この周辺連結部110bのX1側に接続されている第2の透明電極115dへの電荷のチャージが行われる。その結果、X2側から2番目の周辺連結部110bの両端に接続されている第2の透明電極115dおよび第2の透明電極115eでは、電荷のチャージ時間のずれが生じる。通常、この電荷のチャージ時間のずれは静電容量式センサの制御装置(図示せず。)によって個別に補正されるため、静電容量式センサの滑らかな操作感が実現されている。
【0052】
ところが、X2側から2番目の周辺連結部110bが断線すると、断線した周辺連結部110bのX1側に接続されていた第2の透明電極115dには第1の配線部161側から電荷がチャージされる。このため、この第2の透明電極115dへの電荷のチャージは、この第2の透明電極115dよりもX1側に位置する3つの第2の透明電極115a〜115cへの電荷のチャージを経て行われることになる。一方、断線した周辺連結部110bのX2側に接続されていた第2の透明電極115eには、第2の配線部162側から電荷がチャージされる。このため、この第2の透明電極115eへの電荷のチャージは、この第2の透明電極115eよりもX2側に位置する1つの第2の透明電極115fへの電荷のチャージを経て行われることになる。それゆえ、断線した周辺連結部110bの両側に接続されていた2つの第2の透明電極115dおよび第2の透明電極115eにおける電荷のチャージ時間のずれは、周辺連結部110bが断線する前の状態における電荷のチャージ時間のずれと大きく異なってしまう。
【0053】
このように隣り合って配置された2つの第2の透明電極115(
図9に示す具体例では、第2の透明電極115dおよび第2の透明電極115e)における電荷のチャージ時間のずれが、2つの第2の透明電極115の間に位置していた周辺連結部110bの断線によって変化すると、静電容量式センサの応答性すなわち時定数の相違として顕在化する場合がある。具体的には、指Fなどの操作体によって静電容量式センサを操作した時に、周辺連結部110bの断線によって時定数の相違が顕在化した部分では局所的に応答性が変化し、静電容量式センサの滑らかな操作感が失われてしまう場合がある。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る静電容量式センサ1では、中央連結部10aの電気抵抗値は、周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高い。具体的には、
図3に表したように、中央連結部10aの幅W1は、周辺連結部10bの幅W2よりも細い。そのため、中央連結部10aの電気抵抗値は、周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くなる。
【0055】
これにより、ESDにより中央連結部10aに生ずる電圧降下量は、ESDにより周辺連結部10bに生ずる電圧降下量よりも大きい。そのため、ESDにより中央連結部10aに生ずる熱量は、ESDにより周辺連結部10bに生ずる熱量よりも大きい。そのため、
図6に表したように、ESDが発生すると、周辺連結部10bに比べて、中央連結部10aが優先的に断線しやすい。すなわち、
図9に表した第2の電極連結体112とは異なり、
図6に示す第2の電極連結体12では、ESDに起因して断線が生じる第2の連結部10を中央連結部10aに集中させることができる。
【0056】
中央連結部10aは、第1の配線部61および第2の配線部62の双方から遠位に位置する。また、中央連結部10aは、他の第2の連結部10、すなわち、周辺連結部10bに比べて電荷が流れにくい。このため、中央連結部10aが断線されていない状態であっても、中央連結部10aのX1端に接続されている第2の透明電極5cへの電荷のチャージは第1の配線部61側から行われることが支配的であり、中央連結部10aのX2端に接続されている第2の透明電極5dへの電荷のチャージは第2の配線部62側から行われることが支配的である。
【0057】
ここで、
図6に示す第2の電極連結体12においてESDが生じた場合には、前述のように、中央連結部10aが優先的に断線する。中央連結部10aが断線した状態において、中央連結部10aのX1端に接続されていた第2の透明電極5cへの電荷のチャージは第1の配線部61側から行われ、中央連結部10aのX2端に接続されていた第2の透明電極5dへの電荷のチャージは第2の配線部62側から行われる。
【0058】
それゆえ、ESDが生じて中央連結部10aが断線しても、中央連結部10aの両端に接続されている2つの第2の透明電極5aおよび第2の透明電極5fへの電荷のチャージのプロセス(第1の配線部61側から行われるか第2の配線部62側から行われるか)には大きな変化は生じない。これを換言すれば、中央連結部10aの両端に接続されている2つの第2の透明電極5aおよび第2の透明電極115fにおける時定数は、中央連結部10aが断線していなくても断線していても大差がない。したがって、
図6に表したように、ESDに起因する断線が中央連結部10aに集中するような構造とすることにより、ESDが静電容量式センサ1の検出動作に与える影響を抑えることができる。
【0059】
また、
図7に表したように、ESDに起因する断線が中央連結部10aに集中するような構造において、何らかの原因によって周辺連結部10bが断線した場合には、断線した周辺連結部10bに接続されていた第2の透明電極5の時定数が、他の第2の透明電極5の時定数よりも特に高くなる。
図7に表した例では、X1側の端部に設けられた第2の透明電極5aからX2側へ向かって4番目に設けられた第2の透明電極5dと、X2側の端部に設けられた第2の透明電極5fからX1側へ向かって2番目に設けられた第2の透明電極5eと、の間の周辺連結部10bが破断している。この場合には、
図8に表したように、断線した周辺連結部10bに接続されていた第2の透明電極5のうち、第2の透明電極5aからX2側へ向かって4番目に設けられた第2の透明電極5dの時定数が、他の第2の透明電極5a、5b、5c、5e、5fのそれぞれの時定数よりも高くなる。すなわち、断線した周辺連結部10bに接続されていた第2の透明電極5dの時定数が特異点になる。そのため、例えば製造工程においてESDによる周辺連結部10bの断線が生じた場合であっても、周辺連結部10bの断線を製造工程において容易に検出することができる。
【0060】
また、中央連結部10aの幅W1が周辺連結部10bの幅W2よりも細いため、中央連結部10aおよび周辺連結部10bを形成する工程において、比較的容易に、中央連結部10aの電気抵抗値を周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くすることができる。そのため、ESDによる第2の連結部10の断線が静電容量式センサ1の検出動作に与える影響を比較的容易に抑えることができる。
【0061】
図10は、他の実施形態の第2の連結部を説明する断面図である。
図10は、
図3に表した切断面C1−C1における断面図に相当する。
【0062】
図10に表した例では、中央連結部10aの厚さt1は、周辺連結部10bの厚さt2よりも薄い。そのため、中央連結部10aの電気抵抗値は、周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くなる。これにより、
図6〜
図9に関して前述したように、ESDに起因して生じる断線を中央連結部10aに集中させることができる。そのため、ESDによる第2の連結部10の断線が静電容量式センサ1の検出動作に与える影響を抑えることができる。
【0063】
中央連結部10aの厚さt1が周辺連結部10bの厚さt2よりも薄いため、中央連結部10aおよび周辺連結部10bを形成する工程において、比較的容易に、中央連結部10aの電気抵抗値を周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くすることができる。そのため、ESDによる第2の連結部10の断線が静電容量式センサ1の検出動作に与える影響を比較的容易に抑えることができる。
【0064】
図6〜
図8および
図10に関する説明では、中央連結部10aの形状を周辺連結部10bの形状とは異ならせることで、中央連結部10aの電気抵抗値を、周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くしている。一方で、中央連結部10aを形成する材料を、周辺連結部10bを形成する材料とは異ならせることで、中央連結部10aの電気抵抗値を、周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くしてもよい。
【0065】
すなわち、中央連結部10aは、周辺連結部10bを形成する材料の電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有する材料を含んでもよい。中央連結部10aおよび周辺連結部10bの材料としては、
図1〜
図5に関して前述した第2の連結部10の材料と同じ材料が挙げられる。この場合には、中央連結部10aおよび周辺連結部10bの形状ではなく、中央連結部10aおよび周辺連結部10bを形成する材料により、中央連結部10aの電気抵抗値を周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くすることができる。そのため、ESDによる第2の連結部10の断線が静電容量式センサ1の検出動作に与える影響をより確実に抑えることができる。
【0066】
あるいは、中央連結部10aおよび周辺連結部10bの形状を互いに異ならせるとともに、中央連結部10aおよび周辺連結部10bを形成する材料を互いに異ならせてもよい。これによれば、中央連結部10aおよび周辺連結部10bの形状、および中央連結部10aおよび周辺連結部10bを形成する材料の両方により、中央連結部10aの電気抵抗値を周辺連結部10bの電気抵抗値よりも高くすることができる。そのため、ESDによる第2の連結部10の断線が静電容量式センサ1の検出動作に与える影響をさらに確実に抑えることができる。
【0067】
なお、本実施形態の説明では、断線に至る破壊が第2の連結部に生ずる場合を例に挙げた。
図6〜
図10に関する説明は、第1の連結部においても同様に適用可能である。すなわち、
図1に表した二点鎖線の第4の配線部64のように、非検出領域25には、第4の配線部64がさらに形成されていてもよい。この場合には、第3の配線部63および第4の配線部64は、第1の電極連結体8の両側の端部から引き出される。
【0068】
具体的には、第3の配線部63は、第1の電極連結体8の一方の端部(Y2側の端部)から一方の非検出領域(Y2側の非検出領域)25に引き出されて延びる。第3の配線部63は、第1の電極連結体8の一方の端部に電気的に接続される。第4の配線部64は、第1の電極連結体8の他方の端部(Y1側の端部)から他方の非検出領域(Y1側の非検出領域)25に引き出されて延びる。第4の配線部64は、第1の電極連結体8の他方の端部に電気的に接続される。第3の配線部63および第4の配線部64は、非検出領域25において互いに電気的に接続される。
【0069】
そして、第1の電極連結体8が延びるY1−Y2方向において検出領域11の中央部に配置された複数の第1の透明電極4を電気的に接続する中央連結部の電気抵抗値は、Y1−Y2方向において検出領域11の中央部以外(例えば端部)に配置された複数の第1の透明電極4を電気的に接続する周辺連結部の電気抵抗値よりも高い。これにより、ESDによる第1の連結部7の断線が静電容量式センサ1の検出動作に与える影響を抑えることができる。
【0070】
以上、本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。