(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636621
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】配管の漏れを検出するための装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/16 20060101AFI20200120BHJP
F16L 59/147 20060101ALI20200120BHJP
F17D 5/06 20060101ALI20200120BHJP
G01M 3/18 20060101ALI20200120BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
G01M3/16 F
F16L59/147
F17D5/06
G01M3/18
F16L55/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-515756(P2018-515756)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公表番号】特表2018-523136(P2018-523136A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】RU2016000316
(87)【国際公開番号】WO2016195539
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年2月13日
(31)【優先権主張番号】2015121328
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】516233088
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー アトムエネルゴプロエクト
【氏名又は名称原語表記】JOINT STOCK COMPANY ATOMENERGOPROEKT
(73)【特許権者】
【識別番号】517423567
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“サイエンス アンド イノヴェーションズ”
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポストニコフ ボリス アレクセーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】カザチコヴァ ジナイーダ セミオノヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ミーシン エフゲニー ボリソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ニキーチナ エレナ アレクサンドロヴナ
【審査官】
岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭48−050790(JP,A)
【文献】
特開昭56−012531(JP,A)
【文献】
米国特許第4332170(US,A)
【文献】
特開昭58−221143(JP,A)
【文献】
実開昭50−019484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
F17D 1/00−5/08
F16L 55/00
F16L 59/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の漏れを検出するための装置であって、
金属製のパイプに同軸に、径方向の隙間を空けて取り付けられた金属製の保護ケーシングと、
前記保護ケーシング上の複数の電気接点と、
前記パイプと前記複数の電気接点とに接続された複数の導電体を含み、前記径方向の隙間における電気抵抗を測定するための測定器と
を備え、
前記保護ケーシングは、
それぞれが前記パイプの横方向に曲がった別々の区画を成すアーチ形の金属シートを複数枚含み、
各シートの直線状の端は互いに誘電体製のワッシャーでつながれており、
各シートのアーチ形の端は互いに誘電体製のリングでつながれており、
前記リングは側面に、各シートのアーチ形の端を中に固定するための環状の溝を含み、
前記リングの外周面には各電気接点が取り付けられ、電気コネクタで各シートのアーチ形の端に接続されており、
漏れの位置を正確に特定することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ワッシャーとリングとは断面がH字形であることを特徴する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パイプと前記保護ケーシングとの径方向の隙間には断熱材が充填されていることを特徴する請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記シートのアーチ形の端は輪郭が曲がっていることを特徴する請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温水の供給に利用される配管技術に関し、特に原子力発電所の配管の監視を電気的に制御して冷却水の漏れを検出する装置に関する。本発明は、保護ケーシングを備えた断熱管の操作に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
道路または鉄路と交差する配管については現在、金属製の配管とそれを囲む金属製の保護ケーシングとの隙間の電圧を恒久的に制御する電気的な検出システムが知られている(特許文献1参照)。このケーシングは陰極防食装置に接続されている。配管−保護ケーシング対間の電圧が所定の閾値を超えた場合、その電圧の保護ケーシングに沿った勾配が更に測定され、保護ケーシングの空間配置の中での電圧の最高点が、配管と保護ケーシングとの間の電気的な接点として検出される。この技術は、配管と保護ケーシングとの間の電気接点の位置を特定する可能性を与える。
【0003】
本願が提案する発明に最も近い配管漏れ検出装置は、金属製のパイプに同軸に、径方向の隙間を空けて設置された金属製の保護ケーシング、その保護ケーシングに取り付けられた電気接点、および、パイプと保護ケーシング上の電気接点とに接続された導電体を含み、パイプと保護ケーシングとの径方向の隙間における電気抵抗を測定するための測定器を備えている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ロシア特許第2317479号明細書
【特許文献2】ロシア特許第2264578号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の電気システムは、金属製の配管とそれを覆う金属製の保護ケーシングとの間の接触を正しく検出し、配管に望ましくない機械的な影響が及ぶ危険を警告する。しかし、この電気システムは、配管と保護ケーシングの全体との間の電圧の変化しか測定しないので、同時に漏れが生じた場合、危険な漏れの位置の特定には役立たない。
【0006】
特許文献2に開示の装置は、パイプの長手方向の区画の1つに漏れが存在することしか検出できず、しかも、導電体である熱媒体がパイプと保護ケーシングとの隙間を埋めてケーシングとパイプとの間を電気的に接続する場合にしか作動しない。ケーシング内の漏れの位置を特定はしない。漏れが比較的少ない場合、または熱媒体が高温ですぐに蒸発する場合、パイプとケーシングとの隙間に漏れた熱媒体がその隙間を埋めるには不十分な量でしかなければ、このシステムは漏れには反応しない。後者の場合は、冷却材の温度が摂氏350度にまで達しうる原子力発電所の配管に典型的である。この配管では更に大口径のパイプが使用されるので、欠陥の修理が困難である。特にパイプが断熱材で覆われている場合、漏れを検出するには、パイプを囲む保護ケーシングのかなりの部分を取り外し、その部分の下から断熱材をすべて剥がす必要がある。それ故、漏れの位置を十分に正確に特定可能であること、すなわち、パイプの径方向だけでなく長手方向においても漏れを制御して、ケーシングの限られた区画でのみ、その下から断熱材を剥がせばすむことが非常に望まれる。パイプの漏れが小さい(すなわち、冷却材の漏れの流量が小さい)場合、冷却材は断熱材の中を径方向にも長手方向にも、すべての方向に均一に広がり始めるので、冷却材の広がりの先端は断熱材の中で球面を成す。パイプの温度は摂氏350度に達しうるので、冷却材そのものではなくその蒸気が断熱材に沿って広がり、表面温度が摂氏60度以下のケーシングまたはその近傍で凝縮する。より詳細に言えば、断熱材は、径方向において冷却材に浸された後、パイプに沿って浸され始めるので、断熱材の全体が湿る前に穴がごく初期段階で検知され、穴の発見が早いほど漏れの検出が正確であることが、とても望まれる。
【0007】
本発明の目的は、保護ケーシングを複数の区画に分けることにより、それで覆われた断熱管の漏れを更に正確に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、以下に述べる、配管の漏れを検出するための装置によって果たされる。この装置は、金属製のパイプに同軸に、径方向の隙間を空けて取り付けられた金属製の保護ケーシングと、この保護ケーシング上の複数の電気接点と、パイプとこれらの電気接点とに接続された複数の導電体を含み、径方向の隙間における電気抵抗を測定するための測定器とを備えている。この保護ケーシングの新規な設計は、それぞれがパイプの横方向に曲がった別々の区画を成すアーチ形の金属シートを複数枚含む。各シートの直線状の端は互いに誘電体製のワッシャーでつながれており、各シートのアーチ形の端は互いに誘電体製のリングでつながれている。リングは側面に、各シートのアーチ形の端を中に固定するための環状の溝を含み、リングの外周面には各電気接点が取り付けられ、電気コネクタで各シートのアーチ形の端に接続されている。
【0009】
ワッシャーとリングとは断面がH字形であってもよい。パイプと保護ケーシングとの径方向の隙間には断熱材が充填されていてもよい。シートのアーチ形の端は輪郭が曲がっていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
保護ケーシングが、パイプの横方向に曲がったアーチ形の金属シートをつなげた設計であることにより、検出されたパイプの穴に径方向において最も近い保護ケーシングの区画とその下の断熱材とを取り外すだけで、その穴の生じたパイプの側面部分からすぐに漏れの箇所を扱うことができる。
【0011】
保護ケーシングでは、パイプの横方向に曲がったアーチ形の金属シートの直線状の端が互いに誘電体製のワッシャーでつながれ、アーチ形の端が互いに誘電体製のリングでつながれているので、金属シートは電気的には互いに絶縁されている。
【0012】
リングの側面の環状の溝に各シートのアーチ形の端が取り付けられることにより、保護ケーシングの円筒形状がアーチ形の金属シートから構成される。その溝の中に電気コネクタが設置されて各シートのアーチ形の端を横断していることにより、そのアーチ形の端が機械的にも電気的にも固定される。
【0013】
金属製の保護ケーシングの電気接点がリングの外面に取り付けられ、それらが別々に電気コネクタに接続されていることにより、アーチ形金属シートのそれぞれが測定器に電気的に接続される。誘電体製のワッシャーとリングとがH字形の断面であることにより、アーチ形金属シートの端が確実に固定される。
【0014】
パイプと保護ケーシングとの径方向の隙間の全体に断熱材が充填されていることにより、穴のために断熱材が熱媒体で浸された後にその電気抵抗の変化が検出可能であるので、穴の位置が正確に特定される。アーチ形金属シートの端の輪郭が曲がっているので、電気コネクタとの接続の信頼性が更に高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】測定器に接続された配管の制御対象区画の縦断面図である。
【
図3】保護ケーシングの1つの区画を示す図である。
【
図4】保護ケーシングの金属シートの直線状の端と誘電体ワッシャーとの間の取り外し可能な接続部を示す図である。
【
図5】保護ケーシングの金属シートのアーチ形の端と誘電体リングとの間の着脱可能な接続部を示す図である。
【
図6】保護ケーシングの円筒形状部分を示す図である。
【
図7】保護ケーシングの誘電体リングにおける導電体ホルダー付き電気コネクタの設計図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
配管の漏れの検出を目的とする数多くの装置構成のうちの1つについて、以下に説明する。この装置構成は、特許請求の範囲で表現されている発明の概念全体に従ったものである。しかし、以下の説明および添付の図面は発明の例示に過ぎず、発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。発明が包括的に理解されることを意図して、具体的な詳細が様々に記載されている。しかし、場合によっては、説明の明確さを保つ目的で、周知の部分または伝統的に使用されている部分についての説明を省く。特に示さない限り、この明細書では技術用語および科学用語はすべて、発明が属する技術分野に従事する専門家の間で広く受け入れられている意味で使用される。
【0017】
発明は、部分的には、原子炉施設において、圧力と温度とが海面上での大気圧および気温の標準値を超え得る冷却水または蒸気を伝える配管の設計に関する。以下に提案される技術は、熱電変換工学、給水工学、化学工業、および航空宇宙産業において、特に配管その他の工業設備の漏れの検出に利用可能である。
【0018】
配管漏れ検出装置は、主管である金属パイプ2に同軸に、径方向の隙間1を空けて取り付けられた金属製の保護ケーシングを含む。金属パイプ2と保護ケーシングとの隙間1には断熱材3が充填されている。保護ケーシングは、パイプ2の横方向に曲がったアーチ形の金属シート4を複数枚つなぎ合わせたものから成る。この実施形態では、パイプ2は4枚のアーチ形金属シート4に縁取られている。これらのシートは別々に弧を成し、保護ケーシングの4つの区画を構成している。これらのシート4の直線状の端5とアーチ形の端6とは折れ曲がり、または丸まって、その輪郭が曲がっている。直線状の端7は、パイプ2に沿って取り付けられた状態では、直線形状である誘電体製のワッシャー8によって互いにつながれている。アーチ形の端9は、パイプ2に同軸に取り付けられた誘電体製のリング10によって互いにつながれている。互いにつながれた保護ケーシングの4つの区画は、パイプ2を囲む円筒部分の1つを含む。これらの円筒部分がアーチ形の端9とリング10とによって連続して互いにつながれて、パイプ2のまわりで保護ケーシングの本体を成す。ワッシャー8の側壁11、12には直線状の溝13、14があり、これらの溝13、14の中にシート2の直線状の端の折れ曲がった部分5が取り付けられている。リング10の側面15、16には環状の溝17、18があり、これらの溝17、18の中にシート4のアーチ形の端の折れ曲がった部分6が取り付けられている。ワッシャー8の直線状の溝13、14とリング10の溝17、18とは断面がH字形である。環状の溝17、18にはそれぞれ、シート2のアーチ形の端9を横切る方向に電気コネクタがあり、シート2のアーチ形の端の折れ曲がった部分6を固定している。これらのコネクタは、環状の溝17、18の平行な内壁に広がる薄膜21であり、U字形に曲がった板である。薄膜21にはリング10の外面22の側にパイプナット23が取り付けられ、その中にスタッドボルト24がねじ込まれている。スタッドボルト24の反対側25にはナット26がワッシャー27を間に挟んでねじ込まれ、スタッドボルト24をリング10の外面22に押し付けている。さらに、2つのロックナット28、29が電気端子30を間に挟んでスタッドボルト24にねじ込まれている。この実施形態の場合、保護ケーシングには4つの区画がつなぎ合わされているので、リング10の外周面22には周方向において等間隔に4対の電気端子30がアーチ形シートに取り付けられている。リング10の電気端子30とパイプ2の端子31とはすべて、電線32によって測定器33に接続されている。
【0019】
この配管漏れ検出装置は次のように動作する。測定器33は常にオン状態にあり、すべてのシート4とパイプ2との間に低い電圧、例えば3ボルトを印加する。パイプ2の端子31は測定器33の電源の陰極に接続され、シート4の端子30は測定器33の電源の陽極に接続されている。配管が漏れなく正常に機能している状態では冷却水の温度が環境温度よりも高いので、断熱材3から余分な水分が除去される。パイプ2を通した冷却水の供給が開始されると程なく、断熱材3の含水率は一定値になり、以後変化しない。断熱材3の電気抵抗値はその含水率とシステム、すなわち「金属シート4−断熱材3−パイプ2」の電気容量とに依存するので、それもまた、配管の動作温度に対応する一定値に達する。測定器33は、パイプ2とそのまわりのアーチ形シート4との間の電気抵抗と電気容量とが最小であることを示す。
【0020】
パイプ2の金属の腐食または溶接の欠陥に伴う漏れは、可能性は低くとも生じうる。この場合、冷却水はパイプ2から断熱材3の中へ広がり始める。断熱材3は気密であるので、冷却水は断熱材3に染み込み、または十分な高温下では自身の蒸気との間で飽和状態に達する。これにより、漏れの箇所では断熱材3の電気伝導率が著しく上昇する。パイプ2−断熱材3−金属シート4のループが閉回路を構成し、電気的な信号をパイプ2から金属シート4の最も近い部分へ最短の経路、すなわち断熱材3のうち電気抵抗が最も低い部分を通して伝える。この信号はその後、電線32を通って測定器33へ到達する。保護ケーシングの金属シートはすべて、互いには電気的に絶縁されており、別々の電線で測定器33に接続されているので、測定器33は特定のシートの下に漏れがあることを正確に検出する。
【0021】
明らかに、パイプ2の漏れの検出精度は、配管の保護ケーシングを構成する金属シート4それぞれの寸法で決まる。金属シート4の面積が小さいほど、漏れの検出精度は高い。
【0022】
したがって、保護ケーシングは完全に区分けされるように設計されていなければならない。
【0023】
複数枚の金属シート4のつなぎ合わせという提案による保護ケーシングの設計は、パイプ2の漏れの箇所が確実に取扱いやすいので、その修理を容易にする。このことは留意されなければならない。金属シート4および誘電体製のワッシャー8とリング10とには弾性があるので、各シート4は近隣のシートから容易に引き離すことが可能である。それには、各シート4を内側から少し摘み上げて、その直線状の端の折れ曲がった部分5をワッシャー8の直線状の溝13、14から外し、アーチ形の端の折れ曲がった部分6をリング10の環状の溝17、18から外すだけで十分である。パイプ2を修理するには、断熱材3をすべて剥がす必要はなく、径方向において濡れた部分のみが除去されればよい。この発明は、断熱材を含む直径の大きいパイプ2の修理には特に重要である。
【0024】
保護ケーシングは次のように組み立てられる。アーチ形金属シート4の直線状の端7を内側から摘まみ上げてその折れ曲がった部分5をワッシャー8の直線状の溝13、14に挿入すると共に、アーチ形の端の折れ曲がった部分6をリング10の環状の溝17、18に挿入する。その間に、アーチ形の端の折れ曲がった部分6を正確に連続してリング10の環状の溝17、18に固定すると共に、電気コネクタである薄膜21に導通させることが必要である。金属シート4の端の折れ曲がった部分5、6をワッシャー8の直線状の溝13、14の内壁とリング10の環状の溝17、18の内壁とで固定することにより、金属シート4をワッシャー8とリング10とにつなぎ合わせる。
【0025】
発明の技術的および経済的効果は、保護ケーシングで覆われた断熱配管のメンテナンスが簡単化されることにある。