特許第6636655号(P6636655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6636655作業ロボット、及び作業ロボットを備える繊維機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636655
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】作業ロボット、及び作業ロボットを備える繊維機械
(51)【国際特許分類】
   B65H 51/16 20060101AFI20200120BHJP
   B65H 51/08 20060101ALI20200120BHJP
   B65H 57/16 20060101ALI20200120BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20200120BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20200120BHJP
   B25J 19/00 20060101ALN20200120BHJP
【FI】
   B65H51/16
   B65H51/08 C
   B65H57/16
   D01D7/00 Z
   H05F3/02 Z
   !B25J19/00 Z
【請求項の数】19
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-561068(P2018-561068)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2018012789
(87)【国際公開番号】WO2018193803
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2018年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-82782(P2017-82782)
(32)【優先日】2017年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 研志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 典子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−069543(JP,U)
【文献】 国際公開第2015/198698(WO,A1)
【文献】 特開平04−362660(JP,A)
【文献】 実開昭62−016929(JP,U)
【文献】 実公昭47−011565(JP,Y1)
【文献】 特開2007−007673(JP,A)
【文献】 特開2010−182923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/16
B65H 51/08
B65H 57/00 − 57/28
B65H 67/08
D01D 7/00
H05F 1/00 − 7/00
B25J 19/00 − 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う作業ロボットであって、
ロボット本体と、
前記ロボット本体に連結されたアーム部と、
前記アーム部に取り付けられ、糸を保持する保持部と、
制御部と、
接地された第1接地部材に接触する第1端子と、を備え、
前記保持部から、前記制御部を経由せずに前記第1端子まで延び、前記保持部と前記第1端子とを導通させる導電経路が形成されており、
前記保持部は、前記導電経路と前記第1端子とを介して前記第1接地部材と接続されて接地され、
複数の前記糸処理装置の配列方向に延びる案内レールに沿って前記ロボット本体を走行させる走行部を備え、
前記第1端子は、前記走行部に設けられ、
前記走行部は、少なくとも前記案内レールとの接触面において絶縁性を有する車輪を有し、
前記車輪とは別の場所に前記第1端子が設けられていることを特徴とする作業ロボット。
【請求項2】
前記導電経路は、前記保持部から延びる配線を含み、
前記配線は、前記制御部と絶縁されていることを特徴とする請求項1に記載の作業ロボット。
【請求項3】
前記配線の少なくとも一部は、前記ロボット本体に設けられ、
前記配線と前記制御部とが絶縁体で絶縁されていることを特徴とする請求項2に記載の作業ロボット。
【請求項4】
前記絶縁体は、前記配線に沿って延び、且つ、前記配線を覆う絶縁被覆であることを特徴とする請求項3に記載の作業ロボット。
【請求項5】
前記保持部は、前記制御部の接地経路とは異なる接地経路で接地されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項6】
前記第1接地部材とは異なる、接地された第2接地部材に接触する第2端子を備え、
前記ロボット本体は、導電性のフレームを有し、
前記制御部のグランドが、前記フレームを介して前記第2端子と導通していることを特徴とする請求項5に記載の作業ロボット。
【請求項7】
前記保持部及び前記制御部のいずれもが、前記第1端子と導通しており、前記第1接地部材と接続されて接地されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項8】
前記案内レールに沿って前記第1接地部材が設けられており、前記走行部に設けられた前記第1端子が、前記第1接地部材と接触することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項9】
前記案内レールは、前記ロボット本体の移動空間上方に配置されたものであり、
前記ロボット本体は、前記案内レールから吊り下げられた状態で走行することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項10】
前記第1接地部材は、導電性部材で形成された前記案内レールであり、
前記走行部に設けられた前記第1端子が、前記案内レールと接触することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項11】
前記保持部から前記第1接地部材に向かって延びる延在部材を備え、
前記導電経路は、前記保持部から延びる配線を含み、
前記配線の少なくとも一部は、前記延在部材に沿って配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項12】
前記延在部材及び前記配線の少なくとも一部は、前記アーム部の内部を通っており、
前記配線と前記制御部とが、絶縁体で絶縁されていることを特徴とする請求項11に記載の作業ロボット。
【請求項13】
前記保持部は、糸を吸引する吸引部を有し、
前記延在部材は、前記吸引部に接続されたホースであることを特徴とする請求項11又は12に記載の作業ロボット。
【請求項14】
前記ホースは、固定的に配置された流体配管と接続されるものであり、
前記ホースの、前記吸引部とは反対側の端部に、前記第1端子が設けられたホース側継手が取り付けられており、
前記流体配管の、前記ホース側継手と接続される配管側継手に、前記第1接地部材が設けられていることを特徴とする請求項13に記載の作業ロボット。
【請求項15】
糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う作業ロボットであって、
ロボット本体と、
前記ロボット本体に連結されたアーム部と、
前記アーム部に取り付けられ、糸を保持する保持部と、
制御部と、
接地された第1接地部材に接触する第1端子と、を備え、
前記保持部から、前記制御部を経由せずに前記第1端子まで延び、前記保持部と前記第1端子とを導通させる導電経路が形成されており、
前記保持部は、前記導電経路と前記第1端子とを介して前記第1接地部材と接続されて接地され、
複数の前記糸処理装置の配列方向に延びる案内レールに沿って前記ロボット本体を走行させる走行部を備え、
前記走行部は、少なくとも前記案内レールとの接触面において絶縁性を有する車輪を有し、
前記車輪とは別の場所に前記第1端子が設けられ、
前記保持部から前記第1接地部材に向かって延びる延在部材を備え、
前記導電経路は、前記保持部から延びる配線を含み、
前記配線の少なくとも一部は、前記延在部材に沿って配置され、
前記保持部は、糸を吸引する吸引部を有し、
前記延在部材は、前記吸引部に接続されたホースであり、
前記ホースは、固定的に配置された流体配管と接続されるものであり、
前記ホースの、前記吸引部とは反対側の端部に、前記第1端子が設けられたホース側継手が取り付けられており、
前記流体配管の、前記ホース側継手と接続される配管側継手に、前記第1接地部材が設けられていることを特徴とする作業ロボット。
【請求項16】
前記導電経路は、前記保持部から延びる配線を含み、
前記配線は、可撓性を有し、又は可撓性を有する部材に設けられていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項17】
前記糸処理装置は、紡糸装置の紡糸部から紡出された糸を引き取る引取部を有するものであり、
前記制御部は、前記保持部が前記紡糸部から紡出されてくる糸を連続的に吸引捕捉している状態で、前記保持部に前記所定の作業を行わせることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項18】
前記所定の作業は、前記保持部によって保持された糸を前記糸処理装置に掛ける糸掛け作業であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の作業ロボット。
【請求項19】
糸処理装置と、
前記糸処理装置に設けられ、接地された接地部材と、
前記糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う作業ロボットと、を備え、
前記作業ロボットは、
ロボット本体と、
前記ロボット本体に連結されたアーム部と、
前記アーム部に取り付けられ、糸を保持する保持部と、
制御部と、
前記接地部材に接触する端子と、を備え、
前記保持部から、前記制御部を経由せずに前記端子まで延び、前記保持部と前記端子とを導通させる導電経路が形成されており、
前記保持部は、前記導電経路と前記端子とを介して前記接地部材と接続されて接地され、
複数の前記糸処理装置の配列方向に延びる案内レールに沿って前記ロボット本体を走行させる走行部を備え、
記端子は、前記走行部に設けられ、
前記走行部は、少なくとも前記案内レールとの接触面において絶縁性を有する車輪を有し、
前記車輪とは別の場所に前記端子が設けられていることを特徴とする繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う作業ロボット、及び作業ロボットを備える繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
糸処理装置の一例として、特許文献1に、紡糸機から紡出された複数の糸を複数のボビンに巻き取ってパッケージを形成する紡糸引取装置が開示されている。詳細には、紡糸引取装置は、第1、第2ゴデットローラと、複数の振支点ガイドと、複数のトラバースガイド等を備える。複数の糸は、第1、第2ゴデットローラに巻き掛けられ、さらに、各振支点ガイドに掛けられる。振支点ガイドに掛けられた糸は、トラバースガイドに綾振りされつつボビンに巻き取られる。
【0003】
特許文献1においては、紡出される複数の糸を紡糸引取装置に掛ける糸掛け作業を、オペレータが行う。具体的には、サクションガンを用いて複数の糸を吸引保持しつつ、第1、第2ゴデットローラに複数の糸を巻き掛ける。さらに、複数の糸のそれぞれを、複数の振支点ガイドにそれぞれ掛けていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−78455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、本発明の出願人は、生産効率向上やコスト削減等の観点から、糸に関する上記のような作業を、オペレータの代わりに行う糸掛けロボットを設けることを検討している。例えば、糸掛けロボットは、糸を吸引する保持部が設けられたアームを有し、このアームを自由自在に動かすことでゴデットローラ等に糸を掛ける。
【0006】
ところで、上記のような糸掛けロボットにおいては、保持部と糸が接触することにより、保持部が帯電して静電気が発生することが考えられる。特に、特許文献1のような紡糸引取装置においては、上記保持部は紡糸装置から連続的に出される糸を吸引するため、保持部に大量の電荷が蓄積されやすい。この電荷がロボットの制御系へ流れると、制御系に悪影響が生じるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、保持部に発生した静電気を速やかに除去しつつ、この静電気の制御部への影響を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の作業ロボットは、糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う作業ロボットであって、ロボット本体と、前記ロボット本体に連結されたアーム部と、前記アーム部に取り付けられ、糸を保持する保持部と、制御部と、接地された第1接地部材に接触する第1端子と、を備え、前記保持部から、前記制御部を経由せずに前記第1端子まで延び、前記保持部と前記第1端子とを導通させる導電経路が形成されており、前記保持部は、前記導電経路と前記第1端子とを介して前記第1接地部材と接続されて接地されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う作業ロボットにおいて、糸を保持する保持部から、制御部を経由せずに第1端子まで延び、保持部と第1端子とを導通させる導電経路が形成されている。つまり、保持部と制御部は、少なくとも直列接続されていない。保持部は、この導電経路と第1端子とを介して第1接地部材と接続されて接地される。したがって、糸との接触によって保持部に発生した静電気を速やかに除去しつつ、電荷が制御部へ流れて悪影響を生じさせることを抑制できる。
【0010】
第2の発明の作業ロボットは、前記第1の発明において、前記導電経路は、前記保持部から延びる配線を含み、前記配線は、前記制御部と絶縁されていることを特徴とするものである。
【0011】
導電経路に含まれる配線が保持部から延びており、配線と制御部とが絶縁されているため、保持部に発生した電荷が配線から直ちに制御部へ流れ込むことを防ぐことができる。
【0012】
第3の発明の作業ロボットは、前記第2の発明において、前記配線の少なくとも一部は、前記ロボット本体に設けられ、前記配線と前記制御部とが、絶縁体で絶縁されていることを特徴とするものである。
【0013】
保持部の接地経路として、配線の一部がロボット本体に設けられている場合でも、配線と、ロボット本体内の制御部とが絶縁体で絶縁されているため、保持部に発生した電荷が制御部へ流れることを抑制することができる。
【0014】
第4の発明の作業ロボットは、前記第3の発明において、前記絶縁体は、前記配線に沿って延び、且つ、前記配線を覆う絶縁被覆であることを特徴とするものである。
【0015】
配線に沿って延びた絶縁被覆が配線を覆っているため、保持部の接地経路の少なくとも一部である配線と、制御部の接地経路とを確実に絶縁することができる。
【0016】
第5の発明の作業ロボットは、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記保持部は、前記制御部の接地経路とは異なる接地経路で接地されることを特徴とするものである。
【0017】
本発明では、保持部が制御部の接地経路とは異なる接地経路で接地されるため、保持部に発生した電荷が制御部へ流れることを確実に防止することができる。
【0018】
第6の発明の作業ロボットは、前記第5の発明において、前記第1接地部材とは異なる、接地された第2接地部材に接触する第2端子を備え、前記ロボット本体は、導電性のフレームを有し、前記制御部のグランドが、前記フレームを介して前記第2端子と導通していることを特徴とするものである。
【0019】
制御部のグランドが、ロボット本体の導電性のフレームを介して第2端子と導通して接地される一方で、保持部は、フレームとは別の導電経路を介して接地される。したがって、保持部に発生した電荷が制御部へ流れることを確実に防止することができる。
【0020】
第7の発明の作業ロボットは、前記第1〜第4のいずれかの発明において、前記保持部及び前記制御部のいずれもが、前記第1端子と導通しており、前記第1接地部材と接続されて接地されることを特徴とするものである。
【0021】
保持部と制御部の両方が第1接地部材と接続されて接地される場合でも、保持部と第1端子とを導通させる導電経路は制御部を経由していないため、保持部に発生した電荷がそのまま制御部に流れ込むことを抑制することができる。
【0022】
第8の発明の作業ロボットは、前記第1〜第7のいずれかの発明において、複数の前記糸処理装置の配列方向に延びる案内レールに沿って前記ロボット本体を走行させる走行部を備え、前記第1端子は、前記走行部に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の作業ロボットは、複数の糸処理装置の間を案内レールに沿って走行し、作業対象の糸処理装置の前で停止して作業を行う。この構成において、案内レールに接触する走行部に第1端子が設けられているため、案内レール又はその近辺に第1接地部材を設けることにより、保持部の接地経路を容易に確保することができる。
【0024】
第9の発明の作業ロボットは、前記第8の発明において、前記案内レールに沿って前記第1接地部材が設けられており、前記走行部に設けられた前記第1端子が、前記第1接地部材と接触することを特徴とするものである。
【0025】
本発明では、第1接地部材が、案内レールに沿って設けられているため、第1端子を第1接地部材に常時接触させることができ、保持部に発生した電荷を確実に逃がすことができる。
【0026】
第10の発明の作業ロボットは、前記第8又は第9の発明において、前記走行部は、少なくとも前記案内レールとの接触面において絶縁性を有する車輪を有し、前記車輪とは別の場所に第1端子が設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
走行部の車輪の、案内レールとの接触面が絶縁性を有している場合、保持部に発生した電荷を、車輪を介して案内レールへ逃がすことはできない。このような場合であっても、本発明によれば、第1端子が、走行部の車輪とは別の場所に設けられているため、保持部に発生した電荷を、第1端子を介して第1接地部材へ逃がすことができる。
【0028】
第11の発明の作業ロボットは、前記第10の発明において、前記案内レールは、前記ロボット本体の移動空間上方に配置されたものであり、前記ロボット本体は、前記案内レールから吊り下げられた状態で走行することを特徴とするものである。
【0029】
車輪が絶縁性を有しており、且つ、ロボット本体が案内レールから吊り下げられる構成である場合、地上を走行する場合と比べて接地が難しくなる。このような場合であっても、本発明によれば、保持部が、導電経路及び第1端子を介して第1接地部材に接続されるため、接地経路を確保することができる。
【0030】
第12の発明の作業ロボットは、前記第8の発明において、前記第1接地部材は、導電性部材で形成された前記案内レールであり、前記走行部に設けられた前記第1端子が、前記案内レールと接触することを特徴とするものである。
【0031】
本発明では、導電性部材で形成された案内レールが第1接地部材であり、案内レールに第1端子が接触する構成であるので、保持部に発生した電荷を確実に逃がすことができる。
【0032】
第13の発明の作業ロボットは、前記第12の発明において、前記走行部は、導体で形成された車輪を有し、前記第1端子は、前記車輪であることを特徴とするものである。
【0033】
車輪が導体で形成されている場合は、この車輪と導電経路とを介して、保持部に発生した電荷を車輪から案内レールへ逃がすことができる。
【0034】
第14の発明の作業ロボットは、前記第1の発明において、前記保持部から前記第1接地部材に向かって延びる延在部材を備え、前記導電経路は、前記保持部から延びる配線を含み、前記配線の少なくとも一部は、前記延在部材に沿って配置されていることを特徴とするものである。
【0035】
本発明では、保持部から第1接地部材に向かって延びる延在部材に沿って配線が配置されているため、制御部が設けられたロボット本体から離れたルートで保持部の接地経路を確保することができる。
【0036】
第15の発明の作業ロボットは、前記第14の発明において、前記延在部材及び前記配線の少なくとも一部は、前記アーム部の内部を通っており、前記配線と前記制御部とが、絶縁体で絶縁されていることを特徴とするものである。
【0037】
本発明では、延在部材及び配線がアーム部の内側を通っており、且つ、配線と制御部とが絶縁体で絶縁されている。このため、保持部に発生した電荷の制御部への流れ込みを抑制しつつ、これらの部材とアーム部との干渉を防止でき、アーム部の動作の自由度が高くなる。
【0038】
第16の発明の作業ロボットは、前記第14又は第15の発明において、前記保持部は、糸を吸引する吸引部を有し、前記延在部材は、前記吸引部に接続されたホースであることを特徴とするものである。
【0039】
本発明では、吸引部から第1接地部材に向かってホースが延びているので、このホースに沿って第1接地部材へ延びるように配線を配置することで、配線をロボット本体に対して迂回させることができる。したがって、保持部の接地経路を、ロボット本体内の制御部の接地経路から確実に離すことができる。
【0040】
第17の発明の作業ロボットは、前記第16の発明において、前記ホースは、固定的に配置された流体配管と接続されるものであり、前記ホースの、前記吸引部とは反対側の端部に、前記第1端子が設けられたホース側継手が取り付けられており、前記流体配管の、前記ホース側継手と接続される配管側継手に、前記第1接地部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0041】
本発明によれば、配管側継手にホース側継手を装着させたときに、同時に保持部の接地経路が確保されるので、接地経路確保の手間や時間を省くことができる。また、接地経路確保のための構造が単純になる。
【0042】
第18の発明の作業ロボットは、前記第1〜第17のいずれかの発明において、前記導電経路は、前記保持部から延びる配線を含み、前記配線は、可撓性を有し、又は可撓性を有する部材に設けられていることを特徴とするものである。
【0043】
配線が可撓性を有している、又は、配線が可撓性を有する部材に設けられていると、ロボットの作業中に保持部が動く際に、配線が保持部の動きに追従できる。
【0044】
第19の発明の作業ロボットは、前記第1〜第18のいずれかの発明において、前記糸処理装置は、紡糸装置の紡糸部から紡出された糸を引き取る引取部を有するものであり、
前記制御部は、前記保持部が前記紡糸部から紡出されてくる糸を連続的に吸引捕捉している状態で、前記保持部に前記所定の作業を行わせることを特徴とするものである。
【0045】
糸処理装置が、紡糸装置から紡出される糸を引き取る引取部を有する場合、紡糸装置からは糸が連続的に紡出されるため、制御部が保持部に所定の作業を行わせている間、保持部が糸と連続的に擦過することによって、保持部の帯電量が大きくなりやすい。このような場合でも、本発明では、保持部と制御部は、少なくとも直列接続されていないため、保持部に発生した静電気を速やかに除去しつつ、電荷が制御部へ流れて悪影響を生じさせることを防止できる。
【0046】
第20の発明の作業ロボットは、前記第1〜第19のいずれかの発明において、前記所定の作業は、前記保持部によって保持された糸を前記糸処理装置に掛ける糸掛け作業であることを特徴とするものである。
【0047】
本発明の作業ロボットは、糸処理装置への糸掛け作業を行う糸掛けロボットである。糸掛けの際には、保持部で糸を保持しながら糸を移動させる必要があるため、保持部には糸との接触によって電荷が発生しやすい。したがって、特に、このような構成において、保持部と制御部を少なくとも直列接続させず、保持部に発生した静電気を速やかに除去可能とすることは、制御部の保護の観点から有用である。
【0048】
第21の発明の繊維機械は、糸処理装置と、前記糸処理装置に設けられ、接地された接地部材と、前記糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う作業ロボットと、を備え、前記作業ロボットは、ロボット本体と、前記ロボット本体に連結されたアーム部と、前記アーム部に取り付けられ、糸を保持する保持部と、制御部と、前記接地部材に接触する端子と、を備え、前記保持部から、前記制御部を経由せずに前記端子まで延び、前記保持部と前記端子とを導通させる導電経路が形成されており、前記保持部は、前記導電経路と前記端子とを介して前記接地部材と接続されて接地されることを特徴とするものである。
【0049】
糸処理装置と、接地部材と、作業ロボットとを備える繊維機械において、作業ロボットの保持部が、制御部を経由せずに接地されるため、保持部に発生した静電気を速やかに除去しつつ、電荷が制御部へ流れて悪影響を生じさせることを抑制できる。したがって、繊維機械の安定稼働を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本実施形態に係る紡糸引取設備の概略構成図である。
図2】紡糸引取設備の電気的構成を示すブロック図である。
図3】引取装置及び糸掛けロボットの正面図である。
図4】引取装置及び糸掛けロボットの側面図である。
図5】糸掛けロボットの正面図である。
図6】糸掛けロボットのサクションの断面図である。
図7】糸掛けロボットの走行部及びその周辺の構成を示す図である。
図8】糸掛けロボットの走行部の拡大図である。
図9】サクションの接地経路及びロボット制御装置の接地経路の概略的な説明図である。
図10】糸掛け作業に関する一連の処理を示すフローチャートである。
図11】変形例に係る糸掛けロボットの正面図である。
図12】別の変形例に係る糸掛けロボットの側面図である。
図13】さらに別の変形例に係る糸掛けロボットの側面図である。
図14】さらに別の変形例に係る糸掛けロボットの走行部の拡大図である。
図15】サクションの接地経路及びロボット制御装置の接地経路の概略的な説明図である。
図16】さらに別の変形例に係る糸掛けロボットの走行部の拡大図である。
図17】さらに別の変形例に係る引取装置及び糸掛けロボットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、本発明の実施の形態について、図1図10を参照しながら説明する。
【0052】
(紡糸引取設備の概略構成)
図1は、本実施形態に係る紡糸引取設備1(本発明の繊維機械)を正面からみた概略図である。紡糸引取設備1は、引取装置2(本発明の糸処理装置)と、糸掛けロボット3(本発明の作業ロボット)と、集中制御装置4等を備える。以下、図1に示すように、複数の引取装置2が配列された方向を左右方向とする。また、図1において紙面に垂直な方向を前後方向とし、左右方向及び前後方向と直交する方向を上下方向とする。
【0053】
複数の引取装置2は、左右方向に並べられ、各々が、上方に配置された紡糸装置の紡糸部5から紡出されてくる糸Yを引き取り、複数の巻取ボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。糸掛けロボット3は、複数の引取装置2の前方に配置され、左右方向に移動して、引取装置2に対して糸掛け作業(本発明の所定の作業)を行う。集中制御装置4は、後述する引取装置2の巻取制御装置101及び糸掛けロボット3のロボット制御装置102(本発明の制御部)と電気的に接続されており(図2参照)、これらの制御装置との通信を行う。
【0054】
(紡糸引取設備の電気的構成)
次に、紡糸引取設備1の電気的構成について、図2を用いて説明する。図2は、紡糸引取設備1の電気的構成を示すブロック図である。紡糸引取設備1は、設備全体の制御を行うための集中制御装置4を有する。各引取装置2には巻取制御装置101が設けられており、巻取制御装置101が、引取装置2に設けられた各駆動部の動作を制御する。また、糸掛けロボット3にはロボット制御装置102が設けられており、ロボット制御装置102が、糸掛けロボット3に設けられた各駆動部の動作を制御する。集中制御装置4は、各巻取制御装置101及びロボット制御装置102と、無線又は有線によって通信可能に接続されている。
【0055】
(引取装置)
次に、引取装置2の構成について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、引取装置2及び糸掛けロボット3の正面図である。図4は、引取装置2及び糸掛けロボット3の側面図である。
【0056】
図3及び図4に示すように、引取装置2は、紡糸装置の紡糸部5(図1参照)から紡出されてくる糸Yを引き取るための引取部10と、引き取られた糸Yを複数の巻取ボビンBに巻き取ってパッケージPを形成するための巻取ユニット13とを備える。
【0057】
引取部10は、第1ゴデットローラ11と、第2ゴデットローラ12と、アスピレータ15と、糸規制ガイド16とを有する。
【0058】
第1ゴデットローラ11は、軸方向が左右方向と略平行なローラであり、巻取ユニット13の前端部の上方に配置されている。第1ゴデットローラ11は、第1ゴデットモータ111(図2参照)によって回転駆動される。第2ゴデットローラ12は、軸方向が左右方向と略平行なローラであり、第1ゴデットローラ11よりも上方且つ後方に配置されている。第2ゴデットローラ12は、第2ゴデットモータ112(図2参照)によって回転駆動される。
【0059】
第2ゴデットローラ12は、ガイドレール14に移動可能に支持されている。ガイドレール14は、上方且つ後方に向かって斜めに延びている。第2ゴデットローラ12は、シリンダ(不図示)によって、ガイドレール14に沿って移動可能に構成されている。これにより、第2ゴデットローラ12は、糸Yの巻取りを行うときの巻取位置と、第1ゴデットローラ11に近接して配置される、糸掛け作業を行うときの糸掛け位置との間で移動可能となっている。図4において、巻取位置にあるときの第2ゴデットローラ12は実線で表されており、糸掛け位置にあるときの第2ゴデットローラ12は一点鎖線で表されている。
【0060】
アスピレータ15は、糸掛けロボット3による糸掛け作業の前に、紡糸装置から紡出されてくる複数の糸Yを予め吸引保持するためのものである。アスピレータ15は、第1ゴデットローラ11の上方に配置されている。
【0061】
糸規制ガイド16は、上下方向において第1ゴデットローラ11とアスピレータ15との間に配置されている。糸規制ガイド16は、例えば、公知の櫛歯状の糸ガイドであって、複数の糸Yが掛けられたときに、隣接する糸Y同士の間隔を所定の値に規定するためのものである。糸規制ガイド16は、シリンダ(不図示)によって、左右方向に移動可能に構成されている。これにより、糸規制ガイド16は、左右方向において、第1ゴデットローラ11の先端部よりも突出した突出位置と、第1ゴデットローラ11が配置されている範囲内に収まった退避位置との間で移動可能となっている。
【0062】
巻取ユニット13は、複数の支点ガイド21と、複数のトラバースガイド22と、ターレット23と、2本のボビンホルダ24と、コンタクトローラ25とを有する。
【0063】
複数の支点ガイド21は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に配列されている。複数のトラバースガイド22は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に配列されている。複数のトラバースガイド22は、共通のトラバースモータ116(図2参照)によって駆動され、前後方向に往復移動する。これにより、トラバースガイド22に掛けられた糸Yが、支点ガイド21を中心にトラバースされる。
【0064】
ターレット23は、軸方向が前後方向と略平行な円板状の部材である。ターレット23は、ターレットモータ117(図2参照)によって回転駆動される。2本のボビンホルダ24は、それぞれ、軸方向が前後方向と略平行であり、ターレット23の上端部及び下端部に回転自在に支持されている。各ボビンホルダ24には、複数の糸Yに対して個別に設けられた複数の巻取ボビンBが、前後方向に並んで装着されている。また、2つのボビンホルダ24は、それぞれ、個別の巻取モータ118(図2参照)によって回転駆動される。
【0065】
コンタクトローラ25は、軸方向が前後方向と略平行なローラであり、上側のボビンホルダ24のすぐ上方に配置されている。コンタクトローラ25は、上側のボビンホルダ24に支持された複数のパッケージPの表面に接触することで、巻取中のパッケージPの表面に接圧を付与して、パッケージPの形状を整える。
【0066】
以上のような構成を有する巻取ユニット13において、上側のボビンホルダ24が回転駆動させられると、トラバースガイド22によってトラバースされた糸Yが巻取ボビンBに巻き取られて、パッケージPが形成される。また、パッケージPが満巻きになった場合、ターレット23が回転させられることにより、2本のボビンホルダ24の上下の位置が入れ換わる。これにより、下側に位置していたボビンホルダ24が上側に移動し、このボビンホルダ24に装着された巻取ボビンBに糸Yを巻き取ってパッケージPを形成することができる。また、満巻きになったパッケージPが装着されたボビンホルダ24が下側に移動し、図示しないパッケージ回収装置によってパッケージPが回収される。
【0067】
(糸掛けロボット)
次に、糸掛けロボット3の構成について、図5図8を用いて説明する。図5は、糸掛けロボット3の正面図の拡大図である。図6は、後述するサクション37(本発明の保持部)の断面図である。図7は、後述する走行部34及びその周辺の構成を示す図である。図8は、走行部34の拡大図である。
【0068】
糸掛けロボット3は、複数の引取装置2に対して糸掛け作業を行うためのものである。まず、複数の引取装置2の前方且つ上方には、引取装置2の配列方向に沿って延びる2本のレール35(本発明の案内レール)が配置されている(図1参照)。2本のレール35は、支柱40によって天井から支持されている(図1参照)。糸掛けロボット3は、2本のレール35から吊り下げられ、2本のレール35に沿って走行可能な構成になっている。糸掛けロボット3は、ある引取装置2から糸掛け要求の信号が発せられると、その引取装置2の前方まで移動し、その引取装置2の引取部10及び巻取ユニット13に対して糸掛け作業を行う。
【0069】
図5に示すように、糸掛けロボット3は、ロボット本体31と、ロボット本体31の下部に取り付けられたロボットアーム32(本発明のアーム部)と、ロボットアーム32の先端部に取り付けられた糸掛けユニット33と、ロボット本体の上部に設けられた走行部34と、を主に備える。ロボット本体31は、略直方体形状の部材であり、金属製のフレーム41と、フレーム41を収容するケース42等を有する。ロボット本体31の内部には、ロボットアーム32や糸掛けユニット33の動作を制御するためのロボット制御装置102等が搭載されている。ロボット制御装置102は、後述する糸掛けユニット33、移動モータ121、アームモータ122等を制御するためのものである。
【0070】
ロボットアーム32は、糸掛けユニット33を三次元的に動かすためのものであり、ロボット本体31の下部に取り付けられている。ロボットアーム32は、複数のアーム32aと、アーム32a同士を連結する複数の関節部32bとを有する。各関節部32bにはアームモータ122(図2参照)が内蔵されており、アームモータ122が駆動されると、アーム32aが関節部32bを中心に回動する。これにより、ロボットアーム32は三次元的に動作可能になっている。
【0071】
糸掛けユニット33は、糸掛け作業時に糸Yを保持等するためのものであり、ロボットアーム32の先端部に取り付けられている。糸掛けユニット33は、糸Yを吸引捕捉するためのサクション37と、糸Yを切断するためのカッター38と、を有する。
【0072】
サクション37は、図6に示すように、直線的に延びる吸引管37aと、吸引管37aの途中部分に一体的に接続された圧空管37bと、を有する。吸引管37aの一端部には、糸Yを吸引するための吸引口37c(本発明の吸引部)が形成されており、吸引管37aの他端部には、廃糸用ホース82(本発明の延在部材及びホース)が接続されている。また、圧空管37bの一端部は、連通孔37dを介して吸引管37aと連通しており、圧空管37bの他端部には、圧空用ホース72が接続されている。廃糸用ホース82及び圧空用ホース72は、可撓性を有しており、サクション37の動きに追従して動くことができる。連通孔37dは、吸引管37aに対して斜めに形成されており、吸引管37aに近づくほど吸引管37aの他端側に位置するようになっている。
【0073】
また、吸引管37aの先端部には、サクション37と導通する導線63(本発明の配線)が設けられている。導線63は、可撓性を有する導電性部材であり、導線63に沿って延びた絶縁被覆64(本発明の絶縁体)に覆われている。絶縁被覆64は、例えばPVC等からなる絶縁性部材である。導線63の詳細については、後述する。
【0074】
圧空用ホース72及び廃糸用ホース82は、図5及び図7(a)に示すように、ロボット本体31の外側をロボットアーム32とは別方向に延び、ロボット本体31の上部の走行部34の近辺に至る。図7(a)に示すように、圧空用ホース72の、吸引口37cと反対側の端部には、カプラ73が設けられている。同様に、廃糸用ホース82の、吸引口37cと反対側の端部には、カプラ83(本発明のホース側継手)が設けられている。カプラ73、83は、支持部材75によって下から支持されており、支持部材75は、例えばシリンダ(不図示)によって下から支持されている。シリンダは、上下方向に駆動可能な構成になっている。また、カプラ73、83の上方には、圧空用配管71及び廃糸用配管81(本発明の流体配管)が固定的に配置されており、圧空用配管71にはカプラ74が、廃糸用配管81にはカプラ84(本発明の配管側継手)が、それぞれ設けられている。カプラ74、84は、2本のレール35の間に配置されたベース70に支持されている。カプラ73は、カプラ74に着脱可能な構成になっており、カプラ83は、カプラ84に着脱可能な構成になっている。このような構成により、シリンダが駆動することで支持部材75が上方に移動し、カプラ73、83がそれぞれカプラ74、84に装着されるようになっている。
【0075】
圧空用ホース72を通じてサクション37に供給される圧縮空気は、図6において実線の矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮空気は、圧空管37bから吸引管37aに流れ込む際、吸引管37aの一端側から他端側に向かって流れる。この圧縮空気の流れによって、吸引口37cに負圧が生じて吸引力が発生し(図6の破線の矢印参照)、紡糸装置から紡出された糸Yが吸引口37cから連続的に吸引される。吸引口37cから吸引された糸Yは、吸引管37a内における空気の流れにより、廃糸用ホース82へと排出される。
【0076】
走行部34は、2本のレール35に沿ってロボット本体31を走行させるためのものである。走行部34は、図5において二点鎖線で示されるように、ロボット本体31の上部に設けられている。図7(a)、(b)に示すように、走行部34は、例えばゴム等で形成された、絶縁性を有する4つの車輪36を有する。4つの車輪36のうち2つずつが、各レール35の上面に接するように配置されており、ロボット本体31は、4つの車輪36によって2本のレール35から吊り下げられている。言い換えると、2本のレールは、ロボット本体31の移動空間上方に配置されている。また、4つの車輪36は、移動モータ121(図2参照)によって回転駆動される。4つの車輪36が回転駆動されることで、ロボット本体31が、2本のレール35に沿って左右方向に走行する。
【0077】
また、図8に示すように、走行部34には、レール35に沿って設けられた2本のトロリー線51、52及び接地線53(本発明の第2接地部材)、接地線54(本発明の第1接地部材)にそれぞれ接触する、4つの端子55が設けられている。各端子55は、それぞれ対応するトロリー線51、52又は接地線53、54に接触するブラシ56と、ブラシ56を付勢するバネ57とを有する。端子55a、55bが給電用の端子であり、それぞれトロリー線51、52に接触する。これにより、糸掛けロボット3に電力が供給される。接地線53、54及び端子55c、55dの詳細については、後述する。
【0078】
(サクションに発生する静電気について)
以上のような構成により、糸掛けロボット3は複数の引取装置2間を走行し、複数の引取装置2の引取部10及び巻取ユニット13に対して糸掛け作業を行うことが可能である。ここで、糸掛け作業中、吸引口37cから糸Yが吸引されることで、吸引口37cと糸Yとの擦過により、サクション37が帯電して静電気が発生する。糸Yは、紡糸部5から連続的に紡出されてくるため、糸掛け作業中に糸Yが連続的に吸引され、サクション37の帯電量が時間の経過とともに増加して大量の電荷が蓄積されやすく、電荷がロボット制御装置102へ流れて誤動作等の悪影響を生じさせるおそれがある。そこで、本実施形態において、糸掛けロボット3は、サクション37に発生した静電気を除去しつつ、電荷がロボット制御装置102へ流れて悪影響を生じさせないように、サクション37を接地するための構成を備えている。以下、サクション37の接地経路及びロボット制御装置102の接地経路について説明する。
【0079】
(ロボット制御装置の接地経路)
まず、ロボット制御装置102の接地経路について説明する。図9は、サクション37の接地経路及びロボット制御装置102の接地経路の概略的な説明図である。図9においては、接地経路に関する構成を実線で示し、それ以外の構成を二点鎖線で示している。
【0080】
図9に示すように、ロボット制御装置102は、ロボット制御装置102に設けられたグランド線62(本発明のグランド)と、ロボット本体31のフレーム41と、走行部34(図8等参照)に設けられた端子55c(本発明の第2端子)と、接地線53によって接地される。グランド線62は、ロボット本体31のフレーム41と導通している。また、図8に示すように、フレーム41は、ロボット本体31の上部まで延びており、ロボット本体31の上部付近に配置された端子55cと導通している。端子55cは、接地線53に接触しており、接地線53は、レール35及び支柱40等に沿って地面まで延び、接地されている。このようにして、ロボット制御装置102の接地経路が確保される。
【0081】
(サクションの接地経路)
次に、サクション37の接地経路について説明する。図9に示すように、サクション37は、導線63と、走行部34(図8等参照)に設けられた端子55d(本発明の第1端子及び端子)と、接地線54と、によって接地される。サクション37から端子55dまでは、ロボット制御装置102を経由せずに、サクション37と端子55dとを導通させる導電経路60が形成されている。本実施形態では、導電経路60は、導線63からなる。前述したように、導線63は、可撓性を有する導電性部材であり、絶縁被覆64に覆われている。図5及び図9に示すように、導線63は、サクション37から延び、廃糸用ホース82に沿って配置され、途中で廃糸用ホース82から分かれてロボット本体31の内部に入り、ロボット本体31の内部を通って走行部34に至る。すなわち、導線63の一部はロボット本体31に設けられている。ここで、導線63は絶縁被覆64に覆われているため(図6参照)、導線63はロボット本体31及びロボット制御装置102と絶縁される。また、図8及び図9に示すように、導線63は、端子55dと接続されており、端子55dは、接地線54に接触している。接地線54は、レール35及び支柱40等に沿って地面まで延び、接地されている。このようにして、サクション37は、導線63及び端子55dを介して接地線54に接続されて、ロボット制御装置の接地経路とは異なる接地経路で接地される。
【0082】
(糸掛け作業に関する一連の処理)
次に、ロボット制御装置102が行う、糸掛け作業に関する一連の処理について、図10を用いて説明する。ある引取装置2において糸掛けが必要になると、この引取装置2の巻取制御装置101から集中制御装置4に、糸掛け要求の信号が送られる。集中制御装置4は、ロボット制御装置102に対し、この引取装置2に対する糸掛け作業を行うように信号を送る。
【0083】
まず、ロボット制御装置102は、集中制御装置4から糸掛け要求の信号を受け取ると、移動モータ121を駆動して、糸掛け作業が必要な引取装置2の前方まで糸掛けロボット3を移動させる(S201)。次に、ロボット制御装置102は、シリンダを駆動し、支持部材75とともにカプラ73、83を上昇させ、カプラ74、84とそれぞれ接続させる(S202)。
【0084】
次に、ロボット制御装置102は、サクション37が紡糸装置から紡出されてくる糸Yを連続的に吸引捕捉している状態で、糸掛けユニット33やアームモータ122を適宜駆動して、サクション37をロボット本体31に対して移動させ、所定の引取装置2の引取部10及び巻取ユニット13に対する糸掛け作業を行う(S203)。糸掛け作業が終わると、ロボット制御装置102は、シリンダを駆動し、支持部材75とともにカプラ73、83を下降させ、カプラ74、84との接続を解除する(S204)。最後に、ロボット制御装置102は、糸掛け処理の完了の信号を集中制御装置4に送る。その後、集中制御装置4が巻取制御装置101に糸巻取再開の信号を送ることで、引取装置2による糸Yの巻き取りが再開される(S205)。
【0085】
以上のように、引取装置2に対して糸掛け作業を行う糸掛けロボット3において、糸Yを保持するサクション37が、ロボット制御装置102を経由せずに導線63及び端子55dを介して接地線54に接続されて接地される。また、導線63とロボット制御装置102が絶縁被覆64によって絶縁される。このため、糸Yとの接触によってサクション37に発生した静電気を速やかに除去しつつ、電荷がロボット制御装置102へ流れて悪影響を生じさせることを抑制できる。
【0086】
また、サクション37から延びる導線63とロボット制御装置102の接地経路とが絶縁されているため、サクション37に発生した電荷が導線63から直ちにロボット制御装置102へ流れることを防ぐことができる。特に、サクション37の接地経路としての導線63がロボット本体31に設けられている場合でも、導線63に沿って延びた絶縁被覆64が導線63を覆っているため、導線63と、ロボット制御装置102の接地経路とを確実に絶縁させることができる。
【0087】
また、サクション37が、ロボット制御装置102の接地経路と異なる接地経路で接地されるため、サクション37に発生した電荷がロボット制御装置102へ流れることを確実に防止することができる。
【0088】
また、ロボット制御装置102のグランド線62が、ロボット本体31の導電性のフレーム41を介して端子55cと導通して設置される一方で、サクション37は、フレーム41とは別の導線63を介して接地される。したがって、サクション37に発生した電荷がロボット制御装置102へ流れることを確実に防止することができる。
【0089】
また、糸掛けロボット3は、複数の引取装置2の間をレール35に沿って走行し、糸掛け作業の対象の引取装置2の前方で停止して糸掛け作業を行う。この構成において、レール35に接触する走行部34に端子55dが設けられているため、レール35又はその近辺に接地用の部材を設けることにより、サクション37の接地経路を容易に確保することができる。
【0090】
また、接地線54がレール35に沿って設けられているため、端子55dを接地線54に常時接触させることができ、サクション37に発生した電荷を確実に逃がすことができる。
【0091】
また、車輪36の、レール35との接触面が絶縁性を有しているので、サクション37に発生した電荷を、車輪36を介してレール35へ逃がすことはできない。このような場合であっても、導線63と導通する端子55dが、車輪36とは別の場所に設けられているため、サクション37に発生した電荷を、端子55dを介して接地線54へ逃がすことができる。
【0092】
また、車輪36が絶縁性を有しており、且つ、ロボット本体31がレール35から吊り下げられる構成であるため、地上を走行する場合と比べて接地が難しくなる。このような場合であっても、サクション37が、導線63及び端子55dを介して接地線54に接続されるため、接地経路を確保することができる。
【0093】
また、導線63が可撓性を有するため、導線63がサクション37の動きに追従できる。糸掛け作業時には、サクション37で糸Yを保持しながら糸Yを移動させる必要があるため、導線63がサクション37の動きに追従できる構成は有用である。
【0094】
また、紡糸装置の紡糸部5からは糸Yが連続的に紡出されるため、サクション37が糸Yと連続的に擦過することによって、サクションの帯電量が大きくなりやすい。そのような場合でも、サクション37に発生した静電気を速やかに除去しつつ、電荷がロボット制御装置102へ流れて悪影響を生じさせることを防止できる。
【0095】
また、糸掛け作業の際には、サクション37で糸Yを保持しながら糸Yを移動させる必要があるため、サクション37には糸との接触によって電荷が発生しやすい。したがって、特に、このような構成において、サクション37に発生した電荷を速やかに逃がすことは、ロボット制御装置102の保護の観点から有用である。
【0096】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0097】
(1)前記実施形態においては、ロボット制御装置102がロボット本体31のフレーム41を介して接地されているものとしたが、被覆された導線等が端子55cまで延びていることでロボット制御装置102が接地されるような構成でも良い。
【0098】
(2)前記までの実施形態においては、接地線54が地面まで延びているものとしたが、レール35及び支柱40が導電性を有する場合において、サクション37に蓄積された電荷が逃げやすくなるように、支柱40又は支柱40に連結されたその他の部材が接地されており、且つ、接地線54がレール35と導通していても良い。また、接地線53がレール35と導通していても良い。
【0099】
(3)導線63は、ロボット本体31の内側でなく、外側に沿って設けられていても良い。例えば、ケース42がプラスチック等の絶縁物で形成されており、図11に示すように、糸掛けロボット3aにおいて、導線63がケース42に沿って配置されていても良い。なお、この変形例においては、導線63が絶縁被覆されていなくても良い。この場合、ケース42が本発明の絶縁体に相当する。
【0100】
(4)導線63が、ロボット本体31に沿って設けられていなくても良い。例えば、図12に示すように、糸掛けロボット3bにおいて、導線63は、廃糸用ホース82に沿って配置され、カプラ83まで延びている。カプラ83の先端部には、導電性の端子85が設けられており、導線63と導通している。この場合、端子85が本発明の第1端子に相当する。また、カプラ84の近傍には、例えば廃糸用配管81に沿って接地された接地線86が設けられている。この場合、接地線86が本発明の第1接地部材に相当する。以上の構成において、カプラ83がカプラ84に装着される(前述したステップS202)と同時に、端子85と接地線86が導通し、サクション37の接地経路が確保される。このように、接地線86に向かって延びる廃糸用ホース82に沿って導線63が配置されているため、ロボット制御装置102が設けられたロボット本体31から離れたルートでサクション37の接地経路を確保することができる。すなわち、導線63をロボット本体31に対して迂回するように配置することができ、サクション37の接地経路をロボット制御装置102の接地経路と確実に離すことができる。また、カプラ83がカプラ84に装着されると同時にサクション37の接地経路が確保されるので、接地経路確保の手間や時間を省くことができる。また、接地経路確保のための構造が単純になる。なお、この変形例では、導線63が廃糸用ホース82に沿って配置されているものとしたが、導線63が圧空用ホース72に沿って配置され、カプラ73に端子85が設けられ、カプラ74の近傍に接地線86が設けられていても良い。
【0101】
(5)上記(4)のさらなる変形例として、図13に示すように、糸掛けロボット3cにおいて、導線63及び廃糸用ホース82がロボットアーム32の内部を通るように構成されていても良い。なお、導線63は、本実施形態と同様、絶縁被覆64(図6参照)に覆われている。この場合、導線63とロボット制御装置102を絶縁しつつ、導線63及び廃糸用ホース82と、ロボットアーム32又は引取装置2との干渉を防止でき、ロボットアーム32の動作の自由度が高くなる。
【0102】
(6)前記までの実施形態においては、サクション37とロボット制御装置102とが異なる接地経路で接地されるものとしたが、これには限られない。すなわち、導線63が、ロボット制御装置102の接地経路の途中部分に接続されることで、サクション37の接地経路とロボット制御装置102の接地経路が途中で合流しても良い。具体的には、図14及び図15に示すように、糸掛けロボット3dにおいて、導線63がロボット本体31のフレーム41に電気的に接続されている。フレーム41は、端子55cと電気的に接続されており、端子55cと接地線53が接触する。すなわち、この変形例では、導線63と、フレーム41の一部によって、ロボット制御装置102を経由せずにサクション37と端子55cとを導通させる導電経路60aが形成されている。これにより、サクション37とロボット制御装置102の両方が、共に端子55cと導通し、端子55cを介して接地線53と接続されて接地される。この場合でも、導電経路60aはロボット制御装置102を経由していないため、サクション37に発生した電荷がそのままロボット制御装置102に流れ込むことを抑制することができる。なお、この変形例では、端子55cが、本発明の「第1端子」に相当する。接地線53が、本発明の「第1接地部材」に相当する。
【0103】
(7)車輪が導性を有することにより、サクション37の接地経路の一部となっても良い。例えば、図16に示すように、糸掛けロボット3eにおいて、車輪90が金属等の導体で形成されており、且つ、導線63と導通していても良い。この場合、レール35は支柱40を介して接地されており、且つ、車輪90と導通している。すなわち、この変形例においては、車輪90が本発明の第1端子に相当し、レール35が本発明の第1接地部材に相当する。したがって、サクション37を確実に接地することができ、サクション37に発生した電荷を車輪90からレール35へ逃がすことができる。
【0104】
(8)引取装置2が接地部材を有していても良い。例えば、図17においては、引取装置2の巻取ユニット13の外側に接地部材92が取り付けられている。糸掛けロボット3fは、導線63と導通する端子91を有し、端子91が接地部材92に接触する構成になっている。このように、糸掛けロボット3fの移動先でサクション37を都度接地するようにしても良い。なお、接地部材92は必ずしも引取装置2に取り付けられていなくても良く、端子91が接触できる場所に設けられていれば良い。この変形例を含め、前述までのようなサクション37の接地経路が確保されることで、紡糸引取設備1の安定稼働を図ることができる。
【0105】
(9)導線63以外の部材によって、サクション37の接地経路を確保しても良い。例えば、前述した(4)の変形例において、廃糸用ホース82に沿って形成された導通用の配線パターンが、カプラ83まで延びているような構成でも良い。この場合も、廃糸用ホース82がサクション37の動きに追従できる。
【0106】
(10)糸掛けロボット3は、必ずしも走行部34を有していなくても良く、例えば一箇所に固定された状態でロボットアーム32を駆動し、1つの、或いは複数の引取装置2に対して糸掛け作業を行うような構成になっていても良い。
【0107】
(11)以上の実施形態においては、引取装置2の引取部10及び巻取ユニット13に対して糸掛け作業を行う糸掛けロボット3について説明したが、本発明は、これに限らず、糸処理装置に対して糸に関する所定の作業を行う様々な作業ロボットに適用可能である。すなわち、糸掛けロボットが、紡糸を引き取る引取装置以外の装置に対して糸掛け作業を行っても良い。或いは、作業ロボットの作業内容が前述の糸掛け作業以外のものでも良い。例えば、糸を仮撚加工する仮撚加工機の巻取装置に対して、巻取管への糸掛けを行う自動糸掛け装置に、本発明を適用しても良い(特開2013−23385号公報参照)。詳細には、自動糸掛け装置は、サクションマウスと、カッターと、糸配置アームと、糸押し付けアームと、糸保持アーム等を備える。サクションマウスは、仮撚加工錘のフレームに取り付けられ、巻取管に向けて送られる糸の途中部分を保持する。カッターは、サクションマウスによって保持された糸を切断する。糸配置アームは、カッターによって切断された糸を巻取管と対向するように配置させる。糸押し付けアームは、巻取管と対向する糸を巻取管に押し付けて密着させる。糸保持アームは、糸配置アームに取り付けられており、糸を糸押し付けアームとの間で挟んで保持する。糸配置アーム等は、モータ等によって駆動される。上記の自動糸掛け装置は、糸押し付けアームと糸保持アームとの間で糸を挟んで保持しながら、糸押し付けアームで糸を巻取管に密着させる。この状態で巻取管が回転することで、巻取管への糸掛けが行われる。糸を保持している間、糸との接触帯電により糸保持アーム等には電荷が蓄積されうる。この自動糸掛け装置は、制御部を備えていてもよく、制御部を迂回して電荷を逃がす経路を設けることは有効である。なお、巻取装置が、本発明の糸処理装置に相当する。自動糸掛け装置が、本発明の作業ロボットに相当する。糸保持アームが、本発明の保持部に相当する。糸配置アームが、本発明のアーム部に相当する。巻取管への糸掛けが、本発明の所定の作業に相当する。
【0108】
(12)或いは、紡績糸をボビンに巻き取る巻取装置に対して新しいボビンの供給等を行う玉揚装置に、本発明を適用しても良い(特開2015−147674号公報参照)。詳細には、玉揚装置は、紡績糸を保持するサクションパイプを有するボビン供給機構と、制御部とを備える。制御部は、ボビン供給機構を制御して、新しいボビンを巻取装置に供給した後、サクションパイプで紡績糸を捕捉し、紡績糸を巻取装置まで案内して、紡績糸をボビンの周囲に巻き付ける「バンチ巻き」を行う。サクションパイプには、紡績糸を捕捉している間に静電気により電荷が蓄積されるため、制御部を迂回して電荷を逃がす経路を設けることは有効である。なお、巻取装置が、本発明の糸処理装置に相当する。玉揚装置が、本発明の作業ロボットに相当する。サクションパイプが、本発明の保持部及びアーム部に相当する。バンチ巻きが、本発明の所定の作業に相当する。
【0109】
(13)或いは、紡績糸を生成して巻き取る紡績ユニットに対して糸継動作を行う糸継台車に、本発明を適用しても良い(特開2015−199559号公報参照)。詳細には、糸継台車は、糸継ぎを行う糸継装置と、糸継ぎされる2本の糸の一方を保持するサクションパイプと、他方を保持するサクションマウスと、制御部とを備える。制御部は、糸が切断された紡績ユニットにおいて、糸継装置を制御し、サクションパイプ及びサクションマウスによって保持された2本の糸を撚り合わせて糸継動作と行う。この糸継台車においても、制御部を迂回して電荷を逃がす経路を設けることは有効である。なお、紡績ユニットが、本発明の糸処理装置に相当する。糸継台車が、本発明の作業ロボットに相当する。サクションパイプが、本発明の保持部及びアーム部に相当する。サクションマウスについても同様である。糸継動作が、本発明の所定の作業に相当する。
【符号の説明】
【0110】
1 紡糸引取設備
2 引取装置
3 糸掛けロボット
5 紡糸部
10 引取部
31 ロボット本体
32 ロボットアーム
34 走行部
35 レール
36 車輪
37 サクション
37c 吸引口
41 フレーム
42 ケース
53 接地線
54 接地線
55c 端子
55d 端子
60 導電経路
62 グランド線
63 導線
64 絶縁被覆
72 圧空用ホース
73 カプラ
74 カプラ
82 廃糸用ホース
83 カプラ
84 カプラ
85 端子
86 接地線
90 車輪
91 端子
92 接地部材
102 ロボット制御装置
Y 糸
図1
図2
図3
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図17