特許第6636664号(P6636664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6636664マスクブランク、転写用マスク及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636664
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】マスクブランク、転写用マスク及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/58 20120101AFI20200120BHJP
   G03F 1/50 20120101ALI20200120BHJP
   G03F 1/42 20120101ALI20200120BHJP
   G03F 1/30 20120101ALI20200120BHJP
   G03F 1/34 20120101ALI20200120BHJP
【FI】
   G03F1/58
   G03F1/50
   G03F1/42
   G03F1/30
   G03F1/34
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-37473(P2019-37473)
(22)【出願日】2019年3月1日
(62)【分割の表示】特願2018-24781(P2018-24781)の分割
【原出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2019-105858(P2019-105858A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-165550(P2016-165550)
(32)【優先日】2016年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 博明
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−078441(JP,A)
【文献】 特開2012−008607(JP,A)
【文献】 特開2012−032823(JP,A)
【文献】 特開2016−020950(JP,A)
【文献】 特開平08−115912(JP,A)
【文献】 特開2014−059575(JP,A)
【文献】 特開2015−200883(JP,A)
【文献】 特開2015−191218(JP,A)
【文献】 特開平11−184067(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0119958(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0082718(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0044123(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、遮光膜を備えたマスクブランクであって、
前記遮光膜は、前記透光性基板側から下層と上層が順に積層した構造を有し、
前記下層は、ケイ素と窒素を含有する材料で形成され、
前記上層は、ケイ素と酸素を含有する材料で形成され、
前記遮光膜のArF露光光に対する光学濃度は、2.5以上であり、
前記遮光膜のArF露光光に対する表面反射率は、30%以下であり、
前記遮光膜のArF露光光に対する裏面反射率は、40%以下であり、
前記遮光膜の900nmの波長の光に対する透過率が50%以下であり、
前記遮光膜の下層における900nmの波長の光に対する消衰係数kが0.04以上であり、
前記遮光膜の厚さが60nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記遮光膜の下層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記遮光膜の上層は、ケイ素及び酸素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記遮光膜の下層は、700nmの波長の光に対する消衰係数kが0.10以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記遮光膜の下層は、900nmの波長の光に対する屈折率nが3.5以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記遮光膜の下層は、700nmの波長の光に対する屈折率nが3.8以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記遮光膜の下層は、ArF露光光に対する屈折率nが1.6以上2.1以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記遮光膜の下層は、ArF露光光に対する消衰係数kが1.6以上2.1以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項9】
前記遮光膜上にクロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項10】
透光性基板上に、転写パターンを有する遮光膜を備えた転写用マスクであって、
前記遮光膜は、前記透光性基板側から下層と上層が順に積層した構造を有し、
前記下層は、ケイ素と窒素を含有する材料で形成され、
前記上層は、ケイ素と酸素を含有する材料で形成され、
前記遮光膜のArF露光光に対する光学濃度は、2.5以上であり、
前記遮光膜のArF露光光に対する表面反射率は、30%以下であり、
前記遮光膜のArF露光光に対する裏面反射率は、40%以下であり、
前記遮光膜の900nmの波長の光に対する透過率が50%以下であり、
前記遮光膜の下層における900nmの波長の光に対する消衰係数kが0.04以上であり、
前記遮光膜の厚さが60nm以下である
ことを特徴とする転写用マスク。
【請求項11】
前記遮光膜の下層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項10記載の転写用マスク。
【請求項12】
前記遮光膜の上層は、ケイ素及び酸素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の転写用マスク。
【請求項13】
前記遮光膜の下層は、700nmの波長の光に対する消衰係数kが0.10以上であることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項14】
前記遮光膜の下層は、900nmの波長の光に対する屈折率nが3.5以下であることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項15】
前記遮光膜の下層は、700nmの波長の光に対する屈折率nが3.8以下であることを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項16】
前記遮光膜の下層は、ArF露光光に対する屈折率nが1.6以上2.1以下であることを特徴とする請求項10から15のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項17】
前記遮光膜の下層は、ArF露光光に対する消衰係数kが1.6以上2.1以下であることを特徴とする請求項10から16のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項18】
請求項10から17のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いて製造された転写用マスクに関するものである。また、本発明は、前記の転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。近年、半導体装置を製造する際の露光光源にArFエキシマレーザー(波長193nm)が適用されることが増えてきている。
【0003】
転写用マスクの一種にバイナリマスクがある。バイナリマスクは、たとえば、特許文献1に記載されているように、透光性基板上に露光光を遮光する遮光膜パターンが形成された転写用マスクであり、その遮光膜としては、クロム(Cr)またはモリブデンシリサイド(MoSi)系の材料が広く用いられてきた。
【0004】
遮光膜がクロム系材料からなる場合、その膜をドライエッチングする際に用いられる塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスはラジカル性が高いので、十分な異方性で遮光膜をドライエッチングすることが難しく、微細な遮光膜パターンを十分な精度で形成することが困難になってきた。
【0005】
遮光膜材料としてモリブデンシリサイド(MoSi)系の材料を用いた場合は、前記ドライエッチングの問題が少なく微細な遮光膜パターンを高精度に形成しやすいという特徴がある。その一方で、MoSi系膜は、ArFエキシマレーザーの露光光(ArF露光光)に対する耐性(いわゆるArF耐光性)が低いということが近年判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−33470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケイ素と窒素を含有する材料を位相シフト膜に用いた場合、高いArF耐光性を有することが確認されている。このことから、バイナリマスクの遮光膜としてケイ素と窒素を含有する材料の薄膜(SiNx膜)を適用することで高いArF耐光性が得られる可能性を見出し、研究を行った。しかし、遮光膜を単層構造のSiNx膜で形成する場合、以下の問題があることがわかった。
【0008】
一般に、バイナリマスクにおいて、転写パターンが形成された遮光膜には、露光装置から照射されるArFエキシマレーザーの露光光(以下、ArF露光光という。)に対して所定以上の光学濃度(たとえば2.5以上。)を有することが求められている。さらに、遮光膜には、透光性基板に接する側の表面に入射するArF露光光に対して所定以下の反射率(裏面反射率。たとえば40%以下。)であることが求められ、同時に透光性基板側とは反対側の表面に入射するArF露光光に対して所定以下の反射率(表面反射率。たとえば40%以下。)であることが求められている。遮光膜に求められる光学濃度の観点では、SiNx膜に含有させる窒素は少ないほど好ましい。しかし、遮光膜に求められる表面反射率と裏面反射率の観点では、SiNx膜には窒素をある程度含有させる必要がある。
【0009】
露光装置によっては、波長が800nm以上900nm以下の長波長光を用いてアライメントマーク検出を行ってから露光に係る動作を行うものがある。ここで、この長波長光を長波長検出光LWと呼ぶことにする。遮光膜が単層構造のSiNx膜からなるバイナリマスクを、長波長検出光LWを用いる露光装置にセットして露光を行おうとすると、アライメントマーク検出の検出感度が不足して露光動作に入れないという問題がしばしば発生した。
【0010】
遮光膜を構成するSiNx膜の窒素含有量を大幅に少なくすれば、長波長光の透過率を低下させることができ、アライメントマークの検出感度不足の問題は解消する。しかし、そのような遮光膜は、ArF露光光に対する表面反射率及び裏面反射率がともに高くなるため、バイナリマスクとしての転写性能が大きく低下するという問題が新たに生じてしまう。
【0011】
本発明は、遮光膜に求められるArF露光光に対する各種の光学特性を満たしながらも、波長が800nm以上900nm以下の長波長光を用いてマーク検出を行う際の感度が不足するという課題を解決した、単層構造のSiNx膜からなる遮光膜を有するマスクブランクを提供することを目的としている。また、本発明は、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクを提供することを目的としている。さらに、本発明は、この転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板上に、遮光膜を備えたマスクブランクであって、
前記遮光膜は、ケイ素と窒素を含有する材料で形成された単層膜であり、
前記遮光膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が2.5以上であり、
前記遮光膜は、前記露光光に対する表面反射率が40%以下であり、
前記遮光膜は、前記露光光に対する裏面反射率が40%以下であり、
前記遮光膜は、900nmの波長の光に対する透過率が50%以下であり、
前記遮光膜は、900nmの波長の光に対する消衰係数kが0.04以上であり、
前記遮光膜は、厚さが60nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【0013】
(構成2)
前記遮光膜は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
【0014】
(構成3)
前記遮光膜は、その表層に透光性基板側とは反対側の表面に向かって酸素含有量が増加していく組成傾斜部を有し、前記表層以外の遮光膜は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
【0015】
(構成4)
前記遮光膜上にクロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【0016】
(構成5)
透光性基板上に、転写パターンを有する遮光膜を備えた転写用マスクであって、
前記遮光膜は、ケイ素と窒素を含有する材料で形成された単層膜であり、
前記遮光膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が2.5以上であり、
前記遮光膜は、前記露光光に対する表面反射率が40%以下であり、
前記遮光膜は、前記露光光に対する裏面反射率が40%以下であり、
前記遮光膜は、900nmの波長の光に対する透過率が50%以下であり、
前記遮光膜は、900nmの波長の光に対する消衰係数kが0.04以上であり、
前記遮光膜は、厚さが60nm以下である
ことを特徴とする転写用マスク。
【0017】
(構成6)
前記遮光膜は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成5記載の転写用マスク。
【0018】
(構成7)
前記遮光膜は、その表層に透光性基板側とは反対側の表面に向かって酸素含有量が増加していく組成傾斜部を有し、前記表層以外の遮光膜は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成5または6に記載の転写用マスク。
【0019】
(構成8)
構成5から7のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のマスクブランクの遮光膜は、ケイ素及び窒素を含有する材料で形成され、且つ900nmの波長の光に対する透過率が50%以下で、消衰係数kが0.04以上である。ケイ素及び窒素を含有する材料は、ArF耐光性が高いことに加え、波長800nm以上900nm以下の光に対して波長が長くなるほど透過率が高くなり、消衰係数kは小さくなる特性を有する。この光学的特性により、900nmの波長の光に対する透過率が50%以下、消衰係数が0.04以上であると長波長検出光LWを十分に減光できる。このため、長波長検出光LWを使って、このマスクブランクを用いて製造された転写用マスクに形成されたアライメントマークを十分なコントラストで検出することが可能になり、アライメントマーク検出感度不足により露光を行うことができないという問題を解決することができる。
【0021】
また、本発明のマスクブランクの遮光膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が2.5以上、表面反射率が40%以下、裏面反射率が40%以下であるので、パターン露光光に対して、光学的に十分な露光転写特性を有する。
さらに、遮光膜の膜厚が60nm以下であるため、マスクパターンの電磁界効果に係るバイアス(EMFバイアス)及びマスクパターン立体構造起因のシャドーイング効果を許容範囲に収めることが可能になる。また、薄膜であるので、微細な遮光膜パターンを形成しやすい。
加えて、遮光膜が単層であるため、遮光膜を製造するときの工程数が少なく、欠陥を含む製造品質管理が容易になる。
【0022】
また、本発明の転写用マスクは、転写パターンを有する遮光膜が本発明の前記マスクブランクの遮光膜と同じ特性を有する。このような転写用マスクとすることにより、転写パターンを有する遮光膜のArF耐光性が高いことに加え、アライメントマーク検出感度不足により露光を行うことができないという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態における遮光膜の透過率の波長依存性を示す特性図である。
図3】本発明の実施形態における遮光膜の光学係数の波長依存性を示す特性図である。
図4】本発明の実施形態における転写用マスクの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の完成に至った経緯を述べる。本発明者らは、長波長検出光LWを用いたアライメントマークの検出感度不足の原因を鋭意研究した。その結果、アライメントマーク検出感度不足は光学コントラスト不足によるものであり、これは、遮光膜が長波長検出光LWを十分に減光することができないことに起因していることを突き止めた。
そこで、長波長検出光LWを十分に減光することができる遮光膜の研究を行った。ここで、長波長検出光LWの波長が露光装置によって異なっていても適用できることを念頭に置いて研究を行った。
【0025】
高いArF耐光性をもつケイ素と窒素を含有する材料は、800nm以上900nm以下の波長の光に対して波長が長いほど透過率が高まる。言い換えれば、波長が長いほど消衰係数kが小さくなる分光特性を有する。そこで、波長900nmにおける遮光膜の透過率を規定することにより、遮光膜が長波長検出光LWに対する十分な減光性を得るようにする。以上のことを鑑み、遮光膜をケイ素と窒素を含有する材料で形成し、且つ遮光膜の透過率を波長900nmで規定することにより、高いArF耐光性を確保しつつ、アライメントマーク検出不良の問題を解決できると考えた。
【0026】
また、微細なパターンの転写が可能なように、遮光膜のArF露光光に対する光学濃度、露光光に対する表面と裏面の各反射率、及び膜厚を規定した。
遮光膜について、さらに検討を行った結果、工程数が少なく、欠陥品質管理や製造工程管理が容易になる単層膜で前記規定を満たす膜ができることを見出し、本発明に至った。
【0027】
[マスクブランク]
次に、本発明の各実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るマスクブランク100の構成を示す断面図である。図1に示すマスクブランク100は、透光性基板1上に、遮光膜2及びハードマスク膜3がこの順に積層した構造を有する。
【0028】
[[透光性基板]]
透光性基板1は、合成石英ガラスのほか、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)などで形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArF露光光(波長193nm)に対する透過率が高く、マスクブランクの透光性基板を形成する材料として特に好ましい。
【0029】
[[遮光膜]]
遮光膜2は、ケイ素と窒素を含有する材料で形成される単層膜であって、好ましくは、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成される単層膜である。
遮光膜2には、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る遷移金属は含有しない。また、遮光膜2には、遷移金属を除く金属元素についても、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る可能性を否定できないため、含有させないことが望ましい。
遮光膜2は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
【0030】
遮光膜2は、窒素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。ここで、本発明における非金属元素は、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン)、ハロゲン及び貴ガスを含むものをいう。この非金属元素の中でも、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。遮光膜2は、後述の表層の領域を除き、酸素の含有量を5原子%以下に抑えることが好ましく、3原子%以下とすることがより好ましく、積極的に酸素を含有させることをしない(XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)等による組成分析を行ったときに検出下限値以下。)ことがさらに好ましい。窒化ケイ素系材料膜に酸素を含有させると、消衰係数kの値が小さくなって、十分な遮光性が得られにくくなるためである。
【0031】
透光性基板1は、合成石英ガラス等のSiOを主成分とする材料が好んで用いられる。遮光膜2が酸素を含有すると、遮光膜2の組成と透光性基板1の組成との差が小さくなり、遮光膜2にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングにおいて、透光性基板1とのエッチング選択性が得られにくくなるという問題も生じる。
【0032】
遮光膜2は、貴ガスを含有してもよい。貴ガスは、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。この貴ガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突することでターゲットからターゲット構成粒子が飛び出し、途中、反応性ガスを取りこみつつ、透光性基板1上に積層されて薄膜が形成される。このターゲット構成粒子がターゲットから飛び出し、透光性基板1に付着するまでの間に成膜室中の貴ガスがわずかに取り込まれる。この反応性スパッタリングで必要とされる貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、薄膜の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを薄膜に積極的に取りこませることができる。
【0033】
遮光膜2の窒素含有量は、50原子%以下であることが好ましく、45原子%以下であることがより好ましい。これは、窒素の含有量が50原子%を超えるとArF露光光及び長波長検出光LWに対する消衰係数が小さくなって、十分な遮光や減光を行うことが困難になるためである。また、遮光膜2の窒素含有量は、25原子%以上であることが好ましく、30原子%以上であることがより好ましい。これは、窒素の含有量が25原子%未満であると洗浄耐性が不足しやすく、また酸化が起こりやすく、膜の経時安定性が損なわれやすいからである。
また、遮光膜2のケイ素の含有量は、50原子%以上であることが好ましく、好ましくは55原子%以上であることがより好ましい。これは、ケイ素の含有量が50原子%未満であるとArF露光光及び長波長検出光LWに対する消衰係数が小さくなって、十分な遮光や減光を行うことが困難になるためである。また、遮光膜2のケイ素の含有量は、75原子%以下であることが好ましく、65原子%以下であることがより好ましい。これは、窒素の含有量が75原子%を超えると洗浄耐性が不足しやすく、また酸化が起こりやすく、膜の経時安定性が損なわれやすいからである。
【0034】
遮光膜2は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成することが好ましい。なお、貴ガスは、薄膜に対してRBS(Rutherford Back−Scattering Spectrometry)やXPSのような組成分析を行っても検出することが困難な元素である。しかしながら、上述のように、反応性スパッタリングで遮光膜2を形成する際に、貴ガスがわずかに取り込まれる。このため、前記のケイ素及び窒素からなる材料には、貴ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
【0035】
遮光膜2は、厚さが60nm以下であることが求められる。遮光膜2の厚さを60nm以下とすることで、マスクパターンの電磁界効果に係るバイアス(EMFバイアス)及びマスクパターン立体構造起因のシャドーイング効果を許容範囲に収めることが可能になる。また、比較的薄膜であるので、微細な遮光膜パターンを形成しやすくなる。遮光膜2の厚さは58nm以下であるとより好ましい。
一方、遮光膜2は、厚さが40nm以上であることが好ましく、45nm以上であることがより好ましい。遮光膜2の厚さが40nm未満であると、ArF露光光に対して下記の光学濃度を確保することが困難になり、また、長波長検出光LWに対しても十分な減光性を得ることが困難になる。
【0036】
遮光膜2は、ArF露光光に対する光学濃度(OD値)が2.5以上であることが求められ、2.8以上であることが好ましい。光学濃度が2.5未満であるとArF露光光に対する遮光性が不足して、このマスクブランクを使用した転写用マスクを用いて露光を行ったとき、その投影光学像(転写像)のコントラストが不足しやすいという問題が生じる。一方、遮光膜2の薄膜化のため、遮光膜2の光学濃度は4.0以下であると好ましい。
【0037】
遮光膜2は、ArF露光光に対する表面反射率(透光性基板1側とは反対側の表面の反射率)が40%以下であることが求められ、38%以下であることが好ましい。ArF露光光に対する表面反射率が40%を超えると露光光の反射が大きくなりすぎて転写露光の際の投影光学像が劣化するという問題が生じる。
また、遮光膜2は、ArF露光光に対する表面反射率が20%以上であることが好ましい。ArF露光光に対する表面反射率が20%未満であると、波長193nmまたはその近傍の波長の光を用いてマスクパターン検査を行うときのパターン検査感度が低下するためである。
【0038】
遮光膜2は、ArF露光光に対する裏面反射率(透光性基板1側の面の反射率)が40%以下であることが求められ、35%以下であることが好ましい。ArF露光光に対する裏面反射率が40%を超えると露光光の反射が大きくなりすぎて転写露光の際の投影光学像が劣化するという問題が生じる。
【0039】
遮光膜2のArF露光光に対する光学濃度、表面反射率及び裏面反射率を前記の値の範囲にするため、遮光膜2は、ArF露光光に対する屈折率nが1.6以上かつ2.1以下であることが好ましく、1.7以上かつ2.0以下であることがより好ましい。また、ArF露光光に対する消衰係数kが1.6以上かつ2.1以下であることが好ましく、1.7以上かつ2.0以下であることがより好ましい。
【0040】
遮光膜2は、波長900nmの光に対する透過率が50%以下であることが求められ、48%以下であることが好ましい。遮光膜2は、波長900nmの光に対する消衰係数kが0.04以上であることが求められ、0.045以上であることが好ましい。また、遮光膜2の波長900nmの光に対する消衰係数kは0.1以下であることが好ましい。遮光膜2は、波長900nmの光に対する屈折率nが2.5以上であることが好ましく、2.7以上であることがより好ましい。また、遮光膜2の波長900nmの光に対する屈折率nは3.5以下であることが好ましい。
【0041】
ケイ素と窒素を含有する材料からなる遮光膜2は、前述のように、波長800nm以上900nm以下の光に対して波長が長くなるほど透過率が高くなり、屈折率nおよび消衰係数kはともに小さくなる特性を有する。この分光特性により、900nmの波長の光に対する透過率が50%以下で、消衰係数kが0.04以上であると、遮光膜2により波長が800nm以上900nm以下の範囲にある長波長検出光LWを十分に減光できるので、長波長検出光LWを使って、このマスクブランクを用いて製造された転写用マスクに形成されたアライメントマークを十分なコントラストで検出することが可能になる。このことにより、アライメントマーク検出感度不足により露光が行えないという問題を解決することができる。
【0042】
一方、遮光膜2は、波長700nmの光に対する透過率が45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。遮光膜2は、波長700nmの光に対する消衰係数kが0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。また、遮光膜2の波長900nmの光に対する消衰係数kは0.5以下であることが好ましい。また、遮光膜2は、波長700nmの光に対する屈折率nが2.8以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。また、遮光膜2の波長700nmの光に対する屈折率nは3.8以下であることが好ましい。
【0043】
露光装置によっては、転写用マスクに形成されたバーコード等の識別マークを800nmよりも短い波長(例えば、600nm〜700nmの範囲の波長。)の検出光を用いて読み取ることが行われる。上記のような波長700nmの光に対する光学特性を有する遮光膜2を有するマスクブランクを用いて製造された転写用マスクは、上記の800nmよりも短い波長の検出光で識別コードを確実に読み取ることができる。
【0044】
薄膜の屈折率n及び消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度及び結晶状態なども、屈折率n及び消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで遮光膜2を成膜するときの諸条件を調整して、遮光膜2が所望の屈折率n及び消衰係数kとなって、ArF露光光に対する光学濃度(OD値)、裏面反射率、表面反射率、及び波長900nmの光に対する消衰係数kが規定の値に収まるように成膜する。遮光膜2を、上記の屈折率n及び消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガスの混合ガスの比率を調整することだけに限られない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、ターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板との間の距離等の位置関係など多岐にわたる。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される遮光膜2が所望の屈折率n及び消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
【0045】
遮光膜2は、自然酸化が起こる表層を除いて層の厚さ方向でその組成が均一な膜、または膜組成傾斜した膜からなる単層膜とする。単層膜とすることにより、製造工程数が少なくなって生産効率が高くなるとともに欠陥を含む製造品質管理が容易になる。
【0046】
酸素を積極的に含有させず、かつケイ素と窒素を含有する膜は、ArF露光光に対する耐光性は高いが、酸素を積極的に含有させたケイ素と窒素を含有する膜に比べて耐薬性が低い傾向にある。また、遮光膜2の透光性基板1側とは反対側の表層として、酸素を積極的に含有させない遮光膜2を用いたマスクブランク100の場合、そのマスクブランク100から作製した転写用マスク200に対してマスク洗浄や大気中での保管を行うことによって、遮光膜2の表層が酸化していくことを回避するのは難しい。遮光膜2の表層が酸化すると遮光膜2のArF露光光に対する表面反射率が変化し、転写用マスク200の露光転写特性が変わるという問題が生じる。
【0047】
これらのことから、遮光膜2の透光性基板1側とは反対側の表層は積極的に酸素を含有させることが好ましいが、一方で遮光膜2の全体に酸素が含まれていると、前述のように、ArF露光光の遮光性や長波長検出光LWに対する減光性が低下するという問題が生じる。
このため、遮光膜2は、その表層に透光性基板1側とは反対側の表面に向かって酸素含有量が増加していく組成傾斜部を有し、遮光膜2における表層以外の部分(遮光膜2のバルク部)はケイ素及び窒素からなる材料で形成されていることが望ましい。ここで、遮光膜2のバルク部を構成するケイ素及び窒素からなる材料とは、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料のことである。なお、この場合の遮光膜2のArF露光光に対する屈折率n及び消衰係数kは、いずれも表層を含む遮光膜2の全体での値であり、その波長900nmの光に対する消衰係数kも、表層を含む遮光膜2の全体での値である。
【0048】
遮光膜2は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリング及びイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
【0049】
マスクブランク100を製造する方法としては、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと貴ガスを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、透光性基板1上に遮光膜2を形成する方法が好ましい。
【0050】
遮光膜形成工程で用いられる窒素系ガスは、窒素を含有するガスであればいずれのガスも適用可能である。上記の通り、遮光膜2は、その表層を除いて酸素含有量を低く抑えることが好ましいため、酸素を含有しない窒素系ガスを適用することが好ましく、窒素ガス(Nガス)を適用することがより好ましい。また、遮光膜2の形成工程で用いられる貴ガスは、いずれの貴ガスも適用可能である。この貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、薄膜の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを薄膜に積極的に取りこませることができる。
【0051】
透光性基板1側とは反対側の表面に向かって酸素含有量が増加していく組成傾斜部を有する遮光膜2の形成方法としては、遮光膜2をスパッタリングで成膜している最終段階で徐々に雰囲気ガスとして酸素ガスを添加する方法のほか、遮光膜2をスパッタリングにより成膜した後で、大気中などの酸素を含有する気体中における加熱処理、大気中などの酸素を含有する気体中でのフラッシュランプ等の光照射処理、オゾンや酸素プラズマを遮光膜の表面に接触させる処理などの後処理を追加する方法が挙げられる。
【0052】
一方、遮光膜のArF露光光に対する表面反射率をより低くする(例えば30%以下)ことが好ましい場合、上記の単層構造の遮光膜でそれを実現しようとすると、窒素をより多く含有させることが必要となる。この場合、遮光膜の単位膜厚当たりの光学濃度が低下し、所定の遮光性能を確保するためには、遮光膜の膜厚を厚くする必要が生じる。このような低い表面反射率が求められる場合は、遮光膜を透光性基板側から下層と上層の積層構造とし、下層を上記実施の形態の単層構造の遮光膜の材料を適用し、上層をケイ素と酸素を含有する材料で形成することが好ましい。
【0053】
すなわち、この別の形態のマスクブランクは、透光性基板上に遮光膜を備え、遮光膜が透光性基板側から下層と上層が順に積層した構造を有し、下層がケイ素と窒素を含有する材料で形成され、上層がケイ素と酸素を含有する材料で形成され、遮光膜のArF露光光に対する光学濃度が2.5以上であり、遮光膜のArF露光光に対する表面反射率が30%以下であり、遮光膜のArF露光光に対する裏面反射率が40%以下であり、遮光膜の900nmの波長の光に対する透過率が50%以下であり、遮光膜の下層における900nmの波長の光に対する消衰係数kが0.04以上であり、遮光膜の厚さが60nm以下であることを特徴とするものである。
【0054】
また、この別の形態のマスクブランクにおいて、遮光膜の下層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることが好ましい。さらに、この別の形態のマスクブランクにおいて、遮光膜の上層は、ケイ素及び酸素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることが好ましい。この遮光膜の下層の具体的な構成については、上記実施の形態の単層構造の遮光膜の場合と同様である。
【0055】
この上層は、波長が800nm以上900nm以下の光に対する消衰係数kがほぼゼロであり、上層はこれらの波長の光を遮光することに対してほとんど寄与できない。このため、遮光膜の下層のみで波長が800nm以上900nm以下の光に対する遮光性能を確保することが好ましい。また、この上層は、表面反射率を低減させる機能を有する必要があることから、ArF露光光に対する遮光性能が低い。このため、遮光膜の下層のみでArF露光光に対する所定の光学濃度を確保することが好ましい。
【0056】
この別の形態の転写用マスクは、透光性基板上に転写パターンを有する遮光膜を備え、遮光膜が透光性基板側から下層と上層が順に積層した構造を有し、下層がケイ素と窒素を含有する材料で形成され、上層がケイ素と酸素を含有する材料で形成され、遮光膜のArF露光光に対する光学濃度が2.5以上であり、遮光膜のArF露光光に対する表面反射率が30%以下であり、遮光膜のArF露光光に対する裏面反射率が40%以下であり、遮光膜の900nmの波長の光に対する透過率が50%以下であり、遮光膜の下層における900nmの波長の光に対する消衰係数kが0.04以上であり、遮光膜の厚さが60nm以下であることを特徴とするものである。なお、この別の形態のマスクブランクおよび転写用マスクに係るその他の事項(透光性基板、ハードマスク膜に関する事項等)については、上記実施の形態のマスクブランクおよび転写用マスクと同様である。
【0057】
[[ハードマスク膜]]
前記遮光膜2を備えるマスクブランク100において、遮光膜2をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成されたハードマスク膜3を遮光膜2の上にさらに積層させた構成とするとより好ましい。遮光膜2は、所定の光学濃度を確保する必要があるため、その厚さを低減するには限界がある。ハードマスク膜3は、その直下の遮光膜2にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学特性の制限を受けない。このため、ハードマスク膜3の厚さは遮光膜2の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜3にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分であるので、従来よりも大幅にレジスト膜の厚さを薄くすることができ、レジストパターン倒れなどの問題を抑制することができる。
【0058】
ハードマスク膜3は、クロム(Cr)を含有する材料で形成されていることが好ましい。クロムを含有する材料は、SFなどのフッ素系ガスを用いたドライエッチングに対して特に高いドライエッチング耐性を有している。
クロムを含有する材料を遮光膜2に用いた場合は、遮光膜2の膜厚が相対的に厚いので、遮光膜2のドライエッチングの際にサイドエッチングの問題が生じるが、ハードマスク膜3としてクロムを含有する材料を用いた場合は、ハードマスク膜3の膜厚が相対的に薄いので、サイドエッチングに起因する問題は生じにくい。
【0059】
クロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素及びフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料、たとえばCrN、CrC、CrON、CrCO、CrCONなどが挙げられる。クロム金属にこれらの元素が添加されるとその膜はアモルファス構造の膜になりやすく、その膜の表面ラフネス及び遮光膜2をドライエッチングしたときのラインエッジラフネスが抑えられるので好ましい。
【0060】
また、ハードマスク膜3のドライエッチングの観点からも、ハードマスク膜3を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素及びフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を用いることが好ましい。
クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素及びフッ素から選ばれる1以上の元素を含有させることによって、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高めることが可能になる。また、ハードマスク膜3を形成するクロムを含有する材料に、インジウム、モリブデン及びスズのうち1以上の元素を含有させてもよい。インジウム、モリブデン及びスズのうち1以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスに対するエッチングレートをより高くすることができる。
【0061】
クロムを含有する材料以外でハードマスク膜3を形成する材料としては、タンタル(Ta)やタングステン(W)などの金属のほか、タンタルなどの金属を含有する材料も適用可能である。たとえば、この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、ホウ素及び炭素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。その具体例としては、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。
【0062】
マスクブランク100において、ハードマスク膜3の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜3に形成すべき転写パターンに、線幅が40nmのSRAF(Sub-Resolution Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比が1:2.5と低くすることができるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊することや脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜は、膜厚が80nm以下であることがより好ましい。
【0063】
マスクブランク100においてハードマスク膜3を設けず遮光膜2に接してレジスト膜を直接形成することも可能である。この場合は、構造が簡単で、転写用マスクを製造するときもハードマスク膜3のドライエッチングが不要になるため、製造工程数を削減することが可能になる。なお、この場合、遮光膜2に対してHMDS(hexamethyldisilazane)等の表面処理を行ってからレジスト膜を形成することが好ましい。
【0064】
また、本発明のマスクブランクは、下記に記載するように、バイナリマスク用途に適するマスクブランクであるが、バイナリマスク用に限るものではなく、レベンソン型位相シフトマスク用のマスクブランク、あるいはCPL(Chromeless Phase Lithography)マスク用のマスクブランクとしても使用できる。
【0065】
[転写用マスク]
図4に、本発明の実施形態であるマスクブランク100から転写用マスク(バイナリマスク)200を製造する工程の断面模式図を示す。
【0066】
本発明の実施の形態の転写用マスク200は、透光性基板1上に、転写パターンを有する遮光膜2(遮光膜パターン2a)を備えたバイナリマスクであって、遮光膜は、ケイ素と窒素を含有する材料で形成された単層膜であり、ArFエキシマレーザーの露光光に対する光学濃度が2.5以上、表面反射率が40%以下、裏面反射率が40%以下であり、900nmの波長の光に対する透過率が50%以下、消衰係数が0.04以上であり、厚さが60nm以下であることを特徴とするものである。
転写用マスク200における透光性基板1、遮光膜2に関する事項については、マスクブランク100と同様であり、転写用マスク200は、マスクブランク100と同様の技術的特徴を有している。
【0067】
また、本発明の転写用マスク200の製造方法は、上記のマスクブランク100を用いるものであって、ドライエッチングによりハードマスク膜3に転写パターン及びアライメントマークなどを含むパターンを形成する工程と、これらのパターンを有するハードマスク膜3(ハードマスクパターン3a)をマスクとするドライエッチングにより遮光膜2に転写パターン及びアライメントマークなどを含むパターンを形成する工程と、ハードマスクパターン3aを除去する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0068】
このような転写用マスク200は、長波長検出光LWを用いてアライメントを行う露光装置を用いる場合においても、十分なコントラストでアライメントマークの検出を行うことができるので、マスクアライメント動作がエラーを起こすことなく実行することができる。
その上で、転写用マスク200は、ArF耐光性が高く、ArFエキシマレーザーの露光光を積算照射された後のものであっても、遮光膜パターン2aのCD(Critical Dimension)変化(太り)を小さい範囲に抑制できる。
【0069】
これらのことから、長波長検出光LWを用いてアライメントを行うArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに転写用マスク200をセットし、レジスト膜に遮光膜パターン2aを露光転写する際も、マスクアライメント動作を伴って半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。
【0070】
以下、図4に示す製造工程にしたがって、転写用マスク200の製造方法の一例を説明する。なお、この例では、遮光膜2にはケイ素と窒素を含有する材料を適用し、ハードマスク膜3にはクロムを含有する材料を適用している。
【0071】
まず、マスクブランク100(図4(a)参照)を準備し、ハードマスク膜3に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、遮光膜2に対して形成すべきパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、レジストパターン4aを形成する(図4(b)参照)。なお、電子線描画したパターンには、転写パターンのほかアライメントマークなどが含まれている。
【0072】
続いて、レジストパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガスなどの塩素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜3にパターン(ハードマスクパターン3a)を形成する(図4(c)参照)。塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はなく、たとえば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、BCl等を挙げることができる。塩素と酸素との混合ガスを用いる場合は、たとえば、そのガス流量比をCl:O=4:1にするとよい。
次に、アッシングやレジスト剥離液を用いてレジストパターン4aを除去する(図4(d)参照)。
【0073】
続いて、ハードマスクパターン3aをマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜2にパターン(遮光膜パターン2a)を形成する(図4(e)参照)。フッ素系ガスとしては、Fを含むものであれば用いることができるが、SFが好適である。SFの他としては、たとえば、CHF、CF、C、C等を挙げることができるが、Cを含むフッ素系ガスは、ガラス材料の透光性基板1に対するエッチングレートが比較的高い。SFは透光性基板1へのダメージが小さいので好ましい。なお、SFにHeなどを加えるとさらによい。
【0074】
その後、クロムエッチング液を用いてハードマスクパターン3aを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク200を得る(図4(f)参照)。なお、このハードマスクパターン3aの除去工程は、塩素と酸素との混合ガスを用いたドライエッチングで行ってもよい。ここで、クロムエッチング液としては、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含む混合物を挙げることができる。
【0075】
なお、ここでは転写用マスク200がバイナリマスクの場合を説明したが、本発明の転写用マスクはバイナリマスクに限らず、レベンソン型位相シフトマスク及びCPLマスクに対しても適用することができる。すなわち、レベンソン型位相シフトマスクの場合は、その遮光膜に本発明の遮光膜を用いることができる。また、CPLマスクの場合は、主に外周の遮光帯を含む領域に本発明の遮光膜を用いることができる。そして、バイナリマスクの場合と同様に、レベンソン型位相シフトマスク及びCPLマスクの場合においても長波長検出光LWにより十分なコントラストでアライメントマーク検出を行うことができる。
【0076】
さらに、本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記の転写用マスク200または前記のマスクブランク100を用いて製造された転写用マスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜にパターンを露光転写することを特徴としている。
本発明の転写用マスク200やマスクブランク100は、上記の通りの効果を有するため、本発明の転写用マスクを用いて半導体ウェハ上に形成されたレジスト膜に対して露光を行う際に、十分な感度でアライメントマーク検出を行うことができる。このため、アライメントマーク検出感度不足にともなう露光動作停止を起こすことなく、且つ高いArF耐光性を有して半導体デバイスを製造することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面及び主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理及び乾燥処理を施されたものであった。
【0078】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)及び窒素(N)の混合ガス(流量比 Kr:He:N=10:100:1、圧力=0.1Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素及び窒素からなる遮光膜2(Si:N=50原子%:50原子%)を57nmの厚さで形成した。ここで、遮光膜2の組成は、X線光電子分光法(XPS)による測定によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても膜組成の測定方法は同様である。
【0079】
次に、膜の応力調整を目的に、この遮光膜2が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の遮光膜2の分光透過率を分光光度計(Agilent Technologies社製、Cary4000)を用いて測定した結果を図2に示す。波長800nm以上900nm以下の長波長の光に対する透過率は波長が長くなるとともに単調に増加し、波長800nm、波長850nm、890nm及び900nmの透過率はそれぞれ42.8%、44.9%、46.7%及び47.0%であった。また、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する光学濃度(OD値)は2.96であった。
【0080】
また、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの遮光膜2の屈折率nと消衰係数kを測定した。その分光特性、すなわち各波長に対する屈折率nと消衰係数kの測定結果を図3に示す。波長193nmにおける屈折率nは1.830、消衰係数kは1.785、波長800nmにおける屈折率nは3.172、消衰係数kは0.093、波長850nmにおける屈折率nは3.137、消衰係数kは0.066、波長890nmにおける屈折率nは3.112、消衰係数kは0.050、波長900nmにおける屈折率nは3.106、消衰係数kは0.047であった。
【0081】
波長193nmにおける遮光膜2の表面反射率及び裏面反射率を分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)を用いて測定したところ、その値は各々37.1%、30.0%であった。
【0082】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に加熱処理後の遮光膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行い、膜厚5nmのCrN膜からなるハードマスク膜3を成膜した。XPSで測定したこの膜の膜組成比は、Crが75原子%、Nが25原子%であった。そして、遮光膜2で行った加熱処理より低い温度(280℃)で熱処理を行い、ハードマスク膜3の応力調整を行った。
以上の手順により、透光性基板1上に、遮光膜2及びハードマスク膜3が積層した構造を備えるマスクブランク100を製造した。
【0083】
[転写用マスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の転写用マスク(バイナリマスク)200を作製した。
まず、実施例1のマスクブランク100(図4(a)参照)を準備し、ハードマスク膜3の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、遮光膜2に形成すべきパターンを電子線描画し、所定の現像処理及び洗浄処理を行い、レジストパターン4aを形成した(図4(b)参照)。なお、電子線描画したパターンには、転写パターンのほかアライメントマークなどが含まれている。
【0084】
次に、レジストパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜3にパターン(ハードマスクパターン3a)を形成した(図4(c)参照)。
【0085】
次に、レジストパターン4aを除去した(図4(d)参照)。続いて、ハードマスクパターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SFとHeの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜2にパターン(遮光膜パターン2a)を形成した(図4(e)参照)。
【0086】
その後、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むクロムエッチング液を用いてハードマスクパターン3aを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク200を得た(図4(f)参照)。
【0087】
製造した実施例1の転写用マスク200を長波長検出光LWを用いる露光装置にセットしてアライメントマークの検出を行ったところ十分なコントラストでマーク検出を行うことができた。そして、マスクアライメント動作を1回もエラーを起こすことなく実行することができた。
【0088】
次に、この転写用マスク200に対して、ArFエキシマレーザー光を積算照射量40kJ/cmで間欠照射する処理を行った。この照射処理の前後における遮光膜パターン2aのCD変化量は、1.2nm以下であり、遮光膜パターン2aとして使用可能な範囲のCD変化量であった。このことから、遮光膜パターン2aは実用上十分なArF耐性を有していることがわかった。
【0089】
実施例1の転写用マスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写を行った結果、マスクアライメント不良を起こすことなく、回路パターンを高精度に形成することができた。
【0090】
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、遮光膜を下記のようにした以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で製造された。
【0091】
比較例1の遮光膜の形成方法は以下の通りである。
枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)及び窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素及び窒素からなる遮光膜(Si:N=48原子%:52原子%)を100nmの厚さで形成した。
【0092】
次に、膜の応力調整を目的に、この遮光膜が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の遮光膜の分光透過率を分光光度計(Agilent Technologies社製、Cary4000)を用いて測定した結果、波長800nm、波長850nm、890nm及び900nmの透過率はそれぞれ74.2%、74.2%、73.9%及び73.9%であった。また、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する光学濃度(OD値)は2.9であった。
【0093】
また、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの遮光膜の屈折率nと消衰係数kを測定した。波長193nmにおける屈折率nは2.4、消衰係数kは1.0、波長800nmにおける屈折率nは2.3、消衰係数kは0、波長850nmにおける屈折率nは2.3、消衰係数kは0、波長890nmにおける屈折率nは2.3、消衰係数kは0、波長900nmにおける屈折率nは2.3、消衰係数kは0であった。
【0094】
波長193nmにおける遮光膜の表面反射率及び裏面反射率を分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)を用いて測定したところ、その値はそれぞれ21%、15%であった。
【0095】
[転写用マスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の転写用マスク(バイナリマスク)を製造した。
【0096】
製造した比較例1の転写用マスクを長波長検出光LWを用いる露光装置にセットしてアライメントマークの検出を行ったところ十分なコントラストでマーク検出を行うことはできなかった。そして、マスクアライメントエラーをしばしば起こした。
【0097】
次に、この比較例1の転写用マスクに対して、ArFエキシマレーザー光を積算照射量40kJ/cmで間欠照射する処理を行った。この照射処理の前後における遮光膜パターンのCD変化量は、1.2nm以下であり、遮光膜パターンとして使用可能な範囲のCD変化量であり遮光膜パターンは実用上十分なArF耐性を有していた。
【0098】
比較例1の転写用マスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写を行ったところ、マスクアライメント不良をしばしば起こし、安定して半導体デバイス製造用の露光を行うことはできなかった。
【符号の説明】
【0099】
1 透光性基板
2 遮光膜
2a 遮光膜パターン
3 ハードマスク膜
3a ハードマスクパターン
4a レジストパターン
100 マスクブランク
200 転写用マスク(バイナリマスク)
図1
図2
図3
図4