(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6636680
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】放射性溶液取り扱いの方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/16 20060101AFI20200120BHJP
G21F 9/14 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
G21F9/16 531A
G21F9/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-538194(P2019-538194)
(86)(22)【出願日】2018年1月16日
(86)【国際出願番号】RU2018000010
(87)【国際公開番号】WO2018132041
(87)【国際公開日】20180719
【審査請求日】2019年8月26日
(31)【優先権主張番号】2017101380
(32)【優先日】2017年1月16日
(33)【優先権主張国】RU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516219347
【氏名又は名称】ステート・アトミック・エナジー・コーポレーション・ロスアトム・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ロシアン・フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】STATE ATOMIC ENERGY CORPORATION ‘ROSATOM’ ON BEHALF OF THE RUSSIAN FEDERATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】リジン、アンドレイ・アナトリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】トミリン、セルゲイ・バシリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ポグリアド、セルゲイ・ステパノビッチ
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3-95500(JP,A)
【文献】
特表2003-514240(JP,A)
【文献】
ロシア特許発明明細書第2315381号,2008年 1月20日,(RU 2315381 C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/06
G21F 9/14
G21F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護具の表面の除染の後の放射性溶液を取り扱うための方法であって、
前記方法は、固形残留物にするため、水酸化ナトリウム、過マンガン酸カリウム、シュウ酸、及び硝酸を含有するアルカリ性溶液と酸性溶液とを共に蒸発させ、その後、か焼し、このか焼物を、特定の割合のチタニウム、カルシウム、鉄(III)、及びアルミニウムの酸化物を含有する融解混合物の成分と混合し、セラミックマトリックスを生成するために全ての成分を共に溶融することを含み、
酸化ジルコニウム及び酸化マンガン(IV)が、前記か焼物と、チタニウム、カルシウム、鉄(III)、及びアルミニウムの酸化物との混合物に、以下の成分割合の重量%:
高レベル廃棄物のか焼物 10.0〜20.0
TiO2 53.0〜57.0
CaO 9.0〜11.0
Fе2O3 4.5〜5.5
Al2O3 4.5〜5.5
ZrO2 4.5〜5.5
でさらに導入され、
かつ前記混合物中のMnO2の総含有量は、10重量%を超えない
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
除染溶液の前記蒸発から得られる前記固形残留物は、硝酸塩及び炭酸塩を十分に分解するために750〜800℃でか焼されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記か焼物は、モノリシック融解セラミック材料を生成するために、1時間の間1350℃以上で融解することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境保護の分野に関し、より具体的には、放射性廃棄物処理の分野に関し、また、ボックス及びチャンバの保護具を除染した結果として形成された様々な活動レベルの多量の放射性廃液の安全かつ効率的な取り扱いのために使用されることができ、それを固形化しかつセラミックマトリックスにそれを取り込むことによって、蓄積された廃棄物の量を減少させることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
放射性核種U、Th、Am、Cm、Pu、及びNp、並びに、放射性希土類元素Zr、Mo、Ru、Cs、Pd、Sr、Ba、及びRbを含有する放射性廃棄物が熱的濃縮にさらされ、この濃縮物が、以下の成分割合の重量%:(酸化物に関する)放射性廃棄物濃縮液―15〜30;TiO
2―50〜60;CaO―5〜10;ZrO
2―5〜20;Al
2O
3―3〜5;BaO―3〜10で酸化物と混合され、結果として得られる融解混合物が次いで、その融解混合物全体の重量の3〜10重量%の量で取り込まれる炭素含有物質と混合され、その結果として得られる炭素含有融解混合物の水分が5〜20重量%に達することから成る、セラミック物質に放射性廃棄物を取り込むための方法(RU特許第2153717号、G21F9/16)が知られている。5〜20重量%の水分を有する炭素含有融解混合物は次いで、1400〜1500℃の使用温度を有する融解セラミック物質の表面に供給され、その炭素含有融解混合物と融解セラミック物質との混合は、均質化された溶融物が形成されるまで行われ、ここで、融解セラミック物質の使用温度は、炭素含有融解混合物を供給しそれを維持している間、それを常時熱することによって維持され、その後、均質化された溶融物は、その中に含まれる放射性廃棄物を有するモノリシックセラミック物質(シンロック)を形成するために冷却され(最終生成物)、それは、長期の貯留に適したものであり、また、セラミック物質への放射性廃棄物の取り込みの処理全体は、気圧よりも低い圧力で実行される。熱的濃縮は、常に水分を含んでいる、放射性廃棄物の不完全脱水(蒸発及び乾燥)によって実行され、ここで、か焼(calcinate)する代わりに不完全脱水された放射性廃棄物の使用は、融解混合物準備の段階でのダスト形成を防止し、実施されるような方法の安全性を上昇させる。熱的に濃縮された放射性廃棄物は、結果として得られるシンロックセラミック物質に取り込まれるだけでなく、その一部分である、ペロブスカイト、ジルコノライト、及びホランダイトを合成するための出発成分のうちの1つである。
【0003】
この提示された方法の欠点は、以下の通りである。
―高いエネルギ消費
―物質に関して1400〜1500℃の範囲内で一定の溶融温度を維持するために、融解混合物が炭素含有物質と継続的に混合されなければならず、さらなるバッチャの使用を必要とする
―処理が気圧よりも低い圧力で実行され、真空にするためのさらなる機器の使用を必要とする
―誘導溶融炉で処理を実施することは、誘導溶融装置(高周波数放射線生成器、高い供給電流、及びいくつかのケースでは、水冷システム)を必要とする。
【0004】
セラミックマトリックスにおいて高レベル廃棄物を固化するための方法(2006年5月22日付のRU特許第2315381号「Method for immobilizing high-level waste in a ceramic matrix」、G21F 9/16)は、最も近いものであり、本願に記載された発明と共通の多くの重要な特徴を有している。
【0005】
前記方法は、高レベル廃棄物をか焼すること(脱硝すること)と、それを(高レベル廃棄物のか焼物―10〜20重量%;TiO
2―50〜60重量%;CaO―7.5〜12.5重量%;MnO―7.5〜12.5重量%;Fe
2O
3―2.5〜7.5重量%、Аl
2O
3―2.5〜7.5重量%の割合で)酸化物と混合することと、結果として得られる混合物を、気圧よりも低い圧力で、2000℃の最大使用温度まで熱することと、使用温度を保持することと、モノリシック物質が形成されるまで冷却することと、を備える。
【0006】
前記方法は、高い含有量のアクチニド及び希土類元素を有する高レベル廃棄物を取り込むように設計され、使用済み核燃料の処理中に形成された放射性廃棄物のアクチニド及び希土類元素画分の固化及び長期地中貯留を目的とする。この提示された方法は、保護具を除染するために使用された酸性及びアルカリ性溶液の成分を含有するものを含む、多量のアルカリ性金属カチオンを含有する高塩廃棄物を取り込む可能性を説明していない。
【0007】
この処理は、多くのエネルギを消費する。
【発明の概要】
【0008】
本願の技術的解法の目的は、長期地中貯留に適したモノリシック物質を生成するために、未処理の廃棄物を固化するための信頼性が高くシンプルな方法を生み出すことである。
【0009】
この目的を達成するために、保護具の表面の除染後の放射性溶液を取り扱うための方法が提示され、その方法は、アルカリ性溶液と酸性溶液とを共に蒸発させ、その後、か焼し、このか焼物を、特定の割合のチタニウム、カルシウム、鉄(III)、及びアルミニウムの酸化物を含有する融解混合物の成分と混合し、熱処理し、セラミックマトリックスを生成するために全ての成分を共に溶融することを含み、酸化ジルコニウム及び酸化マンガン(IV)が、前記か焼物と、チタニウム、カルシウム、鉄(III)、及びアルミニウムの酸化物との混合物に、以下の成分割合の重量%:
高レベル廃棄物のか焼物 10.0〜20.0
TiO
2 53.0〜57.0
CaO 9.0〜11.0
Fе
2O
3 4.5〜5.5
Al
2O
3 4.5〜5.5
ZrO
2 4.5〜5.5
でさらに導入され、かつ前記混合物中のMnO
2の総含有量は、10重量%を超えないことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
除染溶液の蒸発から得られる固形残留物は、硝酸塩及び炭酸塩を十分に分解するために750〜800℃でか焼される。
【0011】
このか焼物は、モノリシック融解セラミック材料を生成するために、1時間の間1350℃以上で融解混合物と融解される。
【0012】
融解混合物中の二酸化ジルコニウム及び二酸化マンガンの存在は、セラミック溶融温度を低下させ、その処理のエネルギ消費を少なくする。
【0013】
融解混合物の酸化マンガン含有量は、マンガンに関して除染の後の処理溶液中の過マンガン酸カリウムの実際の含有量に応じて変わる。
【0014】
融解混合物中の二酸化マンガンの含有量が10%を超えることは、混合物の溶融温度が上昇するため、適切でない。
【0015】
二酸化ジルコニウム含有量が下限値よりも低い場合、セラミック物質の相組成は変化し得る。
【0016】
融解混合物中の二酸化ジルコニウムの含有量が5.5%を超えて上昇することは、適切でない。
【0017】
前記処理操作が実施されると、除染後の溶液は蒸発して塩となり、酸化物を形成するためのその熱処理の後、塩はセラミック物質を生成するための融解混合物の成分と混合され得、それはまた、放射性廃棄物の長期地中貯留に適したモノリシック物質を形成するための全ての成分を融解することによって得られ得る。
【0018】
(5%のHNO
3、0.5%のH
2C
2O
4、及び0.5%のEDTAを含む)酸性と、(0.5%のKMnO
4、及び5%のNaOHを含む)アルカリ性の、2つの組成の除染溶液が同量の割合で混合された。結果として得た溶液を95℃で蒸発させ、水分が蒸発した後、その温度を350度まで上昇させた。結果として生じた残留物は、結果として得られるセラミック物質の組成が、表1に記載される成分割合に適合するような方法で、チタニウム、マンガン(IV)、アルミニウム、鉄(III)、カルシウム、及びジルコニウムの酸化物を含有するセラミック融解混合物の成分と混合された。除染溶液(融点:323℃)の蒸発に由来する残留物中の吸湿性水酸化ナトリウムの存在によって、その生成物は350℃での熱処理及び蒸発の後も完全には乾燥せず、ダスト形成を避けるために十分に湿った生成物のさらなる導入を必要としない。このことは、生成物が融解混合物と混合されたときにエアロゾルの排出を低減し、目的のセラミック物質を溶融するための処理条件を単純化する。
【0019】
酸化マンガン含有量は、マンガンに関して除染の後の処理溶液中の過マンガン酸カリウムの実際の含有量に応じて調整され得る。酸性及びアルカリ性溶液が均一に混合されない場合、そして、放射性溶液の処理中に過マンガン酸カリウム画分が増加及び減少した場合、表1に示される組成は、最初の融解混合物中のMnO
2含有量を減少又は増加させることによって調整されることができる。
【0020】
固形化された溶液を融解混合物成分と混合した後、組成物全体が、硝酸塩と炭酸塩とを分解するために800℃で加熱処理され、結果として得られる組成物は次いで、1時間の間、1350℃で溶融される。X線の相解析データによると、室温まで冷却した後に得られる溶融物質は、(立方晶系格子パラメータa=14.63±0.01 Aを有する)ムラタイト構造を有する主相と、ペロブスカイト構造を有する副相とによって形成される。物質が加熱再蒸留水中に90℃で溶出したとき(3日目、7日目、14日目にサンプルがとられる)、マトリックスの主成分(カチオン)の溶出率は、24時間当たり10
−6〜10
−7g/cm
2の範囲内にある。
【要約】
本発明は、環境保護の分野に関し、より具体的には、放射性廃棄物処理の分野に関し、また、ボックス及びチャンバの保護具を除染した結果として生成された様々な活動レベルの多量の放射性廃液の安全かつ効率的な取り扱いのために使用され、それを固形化しかつセラミックマトリックスにそれを取り込むことによって、蓄積された廃棄物の量を減少させることを可能にする。この目的のために、保護具の表面の除染後の放射性溶液は、固形残留物を形成しかつか焼されるまで、水酸化ナトリウム、過マンガン酸カリウム、シュウ酸、及び硝酸を含有する、アルカリ性及び酸性溶液として蒸発され、このか焼物は、指定された比率で、チタニウム、カルシウム、鉄(III)、ジルコニウム、及びマンガン(IV)、及びアルミニウムの酸化物を含む融解混合物の成分と混合され、融解される。