(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記収納棚に収納され前記器具が収容された全ての前記トレーについて前記調製作業を完了し、前記容器が収容された全ての前記トレーについて前記収納棚への収納が完了した場合に、前記収納棚を前記収納ゾーンの外部に移動するように前記棚移動装置を制御する第1動作制御部を有するコントローラをさらに有する、
請求項3〜8のいずれか1項に記載の薬液調製システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<1.薬液調製システム>
まず、
図1を用いて、本実施形態に係る薬液調製システムの全体概略構成の一例について説明する。なお、以下では、薬液調製システム等の構造の説明の便宜上、「上」「下」「左」「右」「前」「後」等の方向を
図1〜
図5等の各図に注記する方向に定め、適宜使用する。但し、該方向は薬液調製システム等の設置態様によって変動するものであり、各構成の位置関係を限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、薬液調製システム1は、準備室2と、収納室3と、調製室4とを有する。収納室3は、準備室2と調製室4との間に配置される。
【0015】
準備室2は、ユーザが内部で薬液の調製に必要な器具のセット作業等を行うためのキャビネットである。準備室2は、例えば略直方体形状の筐体20を有する。筐体20の右側の壁部21には、開口部22と、凹部26が形成されている。開口部22には、当該開口部22を開閉可能なシャッタ23が設けられている。シャッタ23は、ユーザが筐体20の外部から当該シャッタ23を介して筐体20の内部を視認可能な程度の透光性を備える材質(例えばガラス等)で形成されている。このシャッタ23は、昇降可能に構成され、下降されることで開口部22を閉め、上昇されることで開口部22を開ける。
【0016】
後述の
図2に示すように、ユーザMは、例えばシャッタ23を上昇させることで開口部22を少し開け、腕をこの開口部22から筐体20の内部へ入れて、作業台24上で上記セット作業等を行う。セット作業は、調製作業に使用される複数の器具のうちの所定の器具を1セットとして、当該1セットごとにトレー5(後述の
図6A等参照)に収容することにより行われる。また、凹部26には、ユーザMが座った状態で作業する際に脚を入れることが可能である。
【0017】
なお、開口部22及び凹部26の位置は筐体20の右側に限定されるものではなく、例えば筐体20の前側に形成されてもよい。
【0018】
収納室3は、トレー5を収納するためのキャビネットである。具体的には、収納室3は、準備室2において調製用の器具が1セットごとに収容された複数のトレー5をそれぞれ収納する。つまり、収納室3には、準備室2でセットされた調製用の器具が、調製室4において調製作業に使用される前に一旦ストックされる。また、収納室3は、調製室4で調製された調製済みの薬液を収容した容器であるバッグ55(後述の
図6B参照。以下適宜「容器55」という。)をそれぞれ収納可能な複数の第1スペースS1(後述の
図4参照)を有する。なお、薬液を収容する容器はバッグ55に限定されるものではなく、例えばボトル56a,56bでもよいし、シリンジ53でもよい(後述の
図6A参照)。詳細は後述するが、この複数の第1スペースS1は、複数のトレー5が載置される収納棚7(後述の
図2及び
図4参照)として構成される。つまり、収納室3には、調製作業に使用される前の器具がストックされると共に、調製後の薬液についても薬液調製システム1の外部に取り出される前に一旦ストックされる。
【0019】
収納室3は、例えば略直方体形状の筐体30を有する。筐体30の前側の壁部31には、開閉可能な扉32が設置されている。扉32には、取っ手33と、窓34が設けられている。詳細は後述するが、ユーザは扉32を開放することにより、上記収納棚7を収納室3の外部に移動させ、調製済みの薬液を収納棚7からまとめて取り出すことができる。また、窓34を介して収納状態等を視認することができる。
【0020】
調製室4は、ロボット100(後述の
図2、
図3参照)が内部で薬液の調製作業等を行うためのキャビネットである。調製室4には、収納室3からトレー5が搬入される。ロボット100は、搬入された1又は複数のトレー5に収容された器具を使用して調製作業を行い、調製済みの薬液が収容された容器55(バッグ55、ボトル56a,56b、シリンジ53等を含む)をトレー5に収容する。容器55が収容されたトレー5は、調製室4から収納室3に搬出され、再び収納棚7に収納される。このようにして、調製後の薬液は、薬液調製システム1の外部に取り出される前に収納室3に一旦ストックされる。
【0021】
調製室4は、例えば略直方体形状の筐体40を有する。筐体40の前側の壁部41には、取っ手49aを備えた扉49が開閉可能に設置されており、この扉49には窓42が設けられている。ユーザは、扉49を開放して、例えばロボット100のグリスアップやアクチュエータ交換等のメンテナンス作業を行うことができる。また、調整作業中には窓42を介してロボット100による作業状態等を視認することができる。
【0022】
準備室2の筐体20、収納室3の筐体30、調製室4の筐体40の天井部には、ファンユニット25,35,43がそれぞれ設置されている。これらファンユニット25,35,43は、例えば筐体20,30,40内に下降気流を形成し、筐体20,30,40の内部を外部に対して負圧(陰圧)に保持する。このとき、収納室3内の圧力を準備室2及び調製室4に対して正圧(陽圧)となるように保持してもよい。この場合、後述のシャッタ7A〜7Dの開放時に準備室2及び調製室4内の有害物質が収納室3内に流入するのを防止できる。そして、筐体20,30,40内の空気を吸気し、その吸気した空気を例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ等で浄化した後に排気ダクト(図示省略)を介して屋外等へ排気する。
【0023】
なお、準備室2、収納室3、調製室4としては、内部で上記セット作業や調製作業等を行うことが可能な部屋であればよく、上記ファンユニットによる、気流・気圧を調整する機能の有無、内部空間を無菌状態に保つ機能の有無、有害物質が漏洩しないようにする機能の有無等は、特に限定されるものではない。また、準備室2、収納室3、調製室4としては、いわゆる安全キャビネットの他、例えばドラフトチャンバやクリーンベンチ、アイソレータ等が使用可能である。
【0024】
なお、上記準備室2は準備ゾーン及び第2ゾーン、収納室3は収納ゾーン及び第3ゾーン、調製室4は調製ゾーン及び第1ゾーンの一例である。本実施形態では、各ゾーンを実質的な閉空間である部屋として区画した場合を一例として説明するが、これに限定されるものではない。各ゾーンは外部に開放されていてもよく、各ゾーンの用途に応じて区画された領域であればよい。
【0025】
また、調製室4はロボットにより薬液の調製作業を行う手段の一例に相当し、収納室3は、調製作業に使用される器具及び調製済みの薬液を収容した容器の少なくとも一方を調製作業単位で区分けしてストックする手段の一例に相当する。
【0026】
<2.搬送装置>
次に、
図2及び
図3を用いて、薬液調製システム1におけるトレー5の搬送装置の一例について説明する。なお、煩雑防止のため、これら
図2及び
図3では収納室3の出し入れ装置等の図示を適宜省略している。
【0027】
図2及び
図3に示すように、搬送装置6は、準備室2内に配置された2つのモータローラ装置61,62と、収納室3内に配置された4つのコンベア装置63,64,65,66と、調製室4内に配置された2つのコンベア装置67,68及びモータローラ装置69とを有する。搬送装置6は、モータローラ装置61,コンベア装置63,64,67、モータローラ装置69、コンベア装置68,65,66,モータローラ装置62の順に、トレー5を搬送する。つまり、準備室2から収納室3を介して調製室4にトレー5を搬入する経路と、調製室4から収納室3を介して準備室2にトレー5を搬出する経路とが、異なる経路となっている。
【0028】
モータローラ装置61は、ユーザMにより載置されたトレー5を左方に向けて搬送してコンベア装置63に渡す。モータローラ装置61は、対向配置された一対のフレーム610と、複数のモータローラ611とを有する。複数のモータローラ611は、一対のフレーム610間に回転自在に設けられ、搬送方向(左右方向)に沿って並列に配置されている。モータローラ装置62は、コンベア装置66から渡されたトレー5を右方に向けて作業台24へ搬送する。モータローラ装置62は、対向配置された一対のフレーム620と、複数のモータローラ621とを有する。複数のモータローラ621は、一対のフレーム620間に回転自在に設けられ、搬送方向(左右方向)に沿って並列に配置されている。モータローラ装置61,62は、準備室2において前後方向に並列に配置されている。また、モータローラ装置61,62は、各モータローラ611,621の上端が作業台24の上面と略同一の高さとなるように配置されている。これにより、作業台24とモータローラ装置61,62との間でトレー5を円滑にスライド移動させることができる。
【0029】
コンベア装置63は、収納棚7の下方において、モータローラ装置61の左方に配置されている。コンベア装置63は、モータローラ装置61から渡されたトレー5を左方に向けて搬送してコンベア装置64に渡す。コンベア装置63は、対向配置された一対のフレーム630(
図3では図示省略)と、ガイド部材631(
図2では図示省略)と、一対の回転軸632と、複数の車輪部材633と、一対のコンベアベルト634と、モータ635(
図3では図示省略)と、ベース部材636とを有する。
【0030】
ガイド部材631は、フレーム630の上方にそれぞれ設けられ、トレー5のつば部51(後述の
図6参照)が載置されてトレー5の搬送方向をガイドする役目を果たす。なお、本実施形態では、一対のガイド部材631のうち後方側のガイド部材631はコンベア装置63に設けられているが、前方側のガイド部材631については、収納棚7に設けられている(後述の
図4、
図5A及び
図5B参照)。なお、一対のガイド部材631の両方をコンベア装置63に設置してもよい。
【0031】
回転軸632は、一対のフレーム630間における搬送方向上流側(
図2及び
図3中右端側)及び下流側(
図2及び
図3中左端側)にそれぞれ回転自在に設けられている。車輪部材633は、回転軸632の各々に一対ずつ設けられている。コンベアベルト634は、対応する車輪部材633,633同士に掛け回されており、この例では一対のコンベアベルト634が前後方向に並列に配置されている。モータ635は、一対の回転軸632のいずれか一方又は両方を回転させることにより、車輪部材633を回転させ、コンベアベルト634を駆動する。ベース部材636は、収納室3の筐体30の床面に固定的に設置されている。
【0032】
コンベア装置64は、コンベア装置63の左方に配置されている。コンベア装置64は、コンベア装置63から渡されたトレー5を左方に向けて搬送してコンベア装置67に渡す。コンベア装置64の基本的な構成はコンベア装置63と同様であり、対向配置された一対のフレーム640(
図3では図示省略)と、一対のガイド部材641(
図2では図示省略)と、一対の回転軸642と、複数の車輪部材643と、一対のコンベアベルト644と、モータ645(
図3では図示省略)と、昇降装置646とを有する。
【0033】
コンベア装置64は、昇降装置646によりコンベアベルト644等を昇降させる機能を有する。昇降装置646の動力源は、例えばサーボモータとすることが可能であるが、これに限定されるものではなく、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等の他の動力源を用いてもよい。コンベア装置64は、下端位置(
図2に実線で示す位置)では、ベルト上端の高さが上流側のコンベア装置63のベルト上端と略同一の高さとなり、上端位置(
図2に二点鎖線で示す位置)では、ベルト上端の高さが調製室4のコンベア装置67(詳細には上昇して上端位置にあるコンベア装置67)のベルト上端と略同一の高さとなる。なお、上端位置にあるコンベア装置64のベルト上端の高さは、例えば収納棚7の下端の高さと略同一である。コンベア装置64は、トレー5をコンベア装置63から渡される際には下端位置となり、トレー5を後述の出し入れ装置8によって収納棚7に対して出し入れする際と、トレー5をコンベア装置67に渡す際には、上端位置となる。
【0034】
なお、上記はコンベア装置64が上端位置と下端位置の2ポジションで昇降する場合を説明したが、これに限定されるものではなく、3ポジション以上で昇降させてもよい。例えば、コンベア装置64は、トレー5をコンベア装置67に渡す際には中間位置、トレー5を出し入れ装置8によって収納棚7に対して出し入れする際には上端位置として、3ポジションで昇降させてもよい。このポジションは、任意に設定することが可能である。本実施形態では、説明の便宜上、2ポジションで昇降する場合を例にとって説明する。
【0035】
なお、コンベア装置64の昇降動作は、コンベアベルト644の駆動を停止した状態で行ってもよいし、コンベアベルト644を駆動しながら行ってもよい。
【0036】
コンベア装置63,64の搬送方向(左右方向)の長さの関係は特に限定されるものではないが、本実施形態では、昇降機能を有するコンベア装置64はコンベア装置63よりも搬送方向の長さが短い。
図2及び
図3に示す例では、例えばコンベア装置63は収納棚7及び棚移動装置9と同程度の搬送方向長さを有しており、例えばコンベア装置64はトレー5と同程度の搬送方向長さを有する。これにより、コンベア装置64の上昇時に収納棚7との干渉を回避でき、収納棚7の設置スペースを確保しつつ収納室3の大型化を抑制できる。
【0037】
コンベア装置65(
図3のみ図示)は、コンベア装置64の後方に配置されている。コンベア装置65は、調製室4のコンベア装置68から渡されたトレー5を右方に向けて搬送してコンベア装置66に渡す。コンベア装置65の構成はコンベア装置64と同様であり、対向配置された一対のフレーム650(図示省略)と、一対のガイド部材651と、一対の回転軸652と、複数の車輪部材653と、一対のコンベアベルト654と、モータ655(図示省略)と、昇降装置(図示省略)とを有する。
【0038】
コンベア装置65の上端位置及び下端位置は、コンベア装置64と略同一の高さである。コンベア装置65は、トレー5を調製室4のコンベア装置68から渡される際と、トレー5を後述の出し入れ装置8によって収納棚7に対して出し入れする際には上端位置となり、トレー5をコンベア装置66に渡す際には下端位置となる。なお、コンベア装置65の昇降動作は、コンベアベルト654の駆動を停止した状態で行ってもよいし、コンベアベルト654を駆動しながら行ってもよい。また、コンベア装置65の搬送方向(左右方向)の長さは、例えばコンベア装置64と略同一である。
【0039】
なお、コンベア装置64と同様に、コンベア装置65についても3ポジション以上で昇降させてもよい。例えば、コンベア装置65は、トレー5をコンベア装置68から渡される際には中間位置、トレー5を出し入れ装置8によって収納棚7に対して出し入れする際には上端位置として、3ポジションで昇降させてもよい。このポジションは、任意に設定することが可能である。本実施形態では、説明の便宜上、2ポジションで昇降する場合を例にとって説明する。
【0040】
コンベア装置66(
図3のみ図示)は、収納棚7の下方において、コンベア装置65の右方且つコンベア装置63の後方に配置されている。コンベア装置66は、コンベア装置65から渡されたトレー5を右方に向けて搬送してモータローラ装置62に渡す。コンベア装置66の基本的な構成はコンベア装置63等と同様であり、対向配置された一対のフレーム660(図示省略)と、一対のガイド部材661と、一対の回転軸662と、複数の車輪部材663と、一対のコンベアベルト664と、モータ665(図示省略)と、並進装置666(図示省略)とを有する。
【0041】
コンベア装置66は、並進装置666によりコンベアベルト664等を搬送方向(左右方向)に往復移動させる並進機能を有する。並進装置666の動力源は、例えばサーボモータとすることが可能であるが、これに限定されるものではなく、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等の他の動力源を用いてもよい。コンベア装置66は、左端位置(
図3に実線で示す位置)に移動した際には上流側のコンベア装置65に近接し、右端位置(
図3に二点鎖線で示す位置)に移動した際には後述のシャッタ7Bに近接する。
【0042】
コンベア装置66は、コンベア装置63よりも搬送方向(左右方向)の長さが短い。その結果、詳細は後述するが、左端位置に移動した際に、搬送経路に棚移動装置9のアーム部材90との干渉を回避するための第2スペースS2を形成する。なお、コンベア装置66の並進動作は、コンベアベルト664を停止(つまりトレー5を停止)させた状態で行ってもよいし、コンベアベルト664を駆動(つまりトレー5を移動)させつつ行ってもよい。なお、コンベア装置66は、搬送装置の一例に相当する。
【0043】
調製室4のコンベア装置67,68及びモータローラ装置69は、テーブル44上に載置されることで、そのコンベアベルトやモータローラが準備室2のモータローラ装置61,62及び収納室3のコンベア装置63〜66よりも高い位置となるように配置されている。これにより、トレー5をロボット100の可動範囲内に搬送することが可能である。また、コンベア装置67,68及びモータローラ装置69は、カバー110によって上方が覆われている。なお、
図3ではカバー110の天板の図示を省略している。これにより、コンベア装置67,68及びモータローラ装置69が収納される空間と、調製室4内の調製作業が行われる空間とが区画されている。なお、カバー110の詳細については後述する。
【0044】
コンベア装置67は、コンベア装置64の左方に配置されている。コンベア装置67は、収納室3のコンベア装置64から渡されたトレー5を左方に向けて搬送して調製室4内に受け入れる。コンベア装置67の基本的な構成はコンベア装置64と同様であり、対向配置された一対のフレーム670(
図3では図示省略)と、ガイド部材671(
図2では図示省略)と、一対の回転軸672と、複数の車輪部材673と、一対のコンベアベルト674と、モータ675(
図3では図示省略)と、昇降装置676とを有する。なお、ガイド部材671は、モータローラ装置69とは反対側の端部にのみ設けられている。
【0045】
コンベア装置67は、昇降装置676によりコンベアベルト674等を昇降させる機能を有する。なお、ガイド部材671は昇降せずに、上端位置にあるコンベア装置64のガイド部材641と略同一の高さに固定配置されている。コンベア装置67の昇降量はコンベア装置64,65と比べて小さく、若干量である。コンベア装置67は、下端位置(
図2に実線で示す位置)では、ベルト上端の高さが隣接するモータローラ装置69のローラ上端よりも低い位置となり、上端位置(
図2に二点鎖線で示す位置)では、ベルト上端の高さがモータローラ装置69のローラ上端よりも高く、且つ、収納室3の上端位置にあるコンベア装置64のベルト上端と略同一の高さとなる。
【0046】
これにより、コンベア装置67は、トレー5をコンベア装置64から渡される際には、上端位置となることで、トレー5の底部が隣接するモータローラ装置69のモータローラ691へ接触するのを防止して円滑にトレー5を受け入れることができる。また、コンベア装置67は、トレー5をモータローラ装置69に渡す際には、下端位置となることで、トレー5をモータローラ691とガイド部材671とで支持してコンベアベルト674から浮かせた状態とし、トレー5の底部がコンベアベルト674と接触するのを防止して円滑にトレー5をモータローラ装置69に受け渡すことができる。
【0047】
コンベア装置68(
図3のみ図示)は、モータローラ装置69の後方に配置されている。コンベア装置68は、モータローラ装置69から渡されたトレー5を右方に向けて搬送して収納室3のコンベア装置65に渡す。コンベア装置68の構成はコンベア装置67と同様であり、対向配置された一対のフレーム680(図示省略)と、ガイド部材681と、一対の回転軸682と、複数の車輪部材683と、一対のコンベアベルト684と、モータ685(図示省略)と、昇降装置686(図示省略)とを有する。なお、ガイド部材681は、モータローラ装置69とは反対側の端部にのみ設けられ、昇降せずに、上端位置にあるコンベア装置65のガイド部材651と略同一の高さに固定配置されている。
【0048】
コンベア装置68の昇降動作は、コンベア装置67と同様である。つまり、コンベア装置68は、トレー5を隣接するモータローラ装置69から渡される際には、下端位置となることで、トレー5の底部がコンベアベルト684と接触するのを防止して円滑にトレー5を受け入れることができる。また、コンベア装置68は、トレー5を収納室3のコンベア装置65に渡す際には、上端位置となることで、トレー5の底部が隣接するモータローラ装置69のモータローラ691へ接触するのを防止して円滑にトレー5をコンベア装置65に受け渡すことができる。
【0049】
モータローラ装置69(
図3のみ図示)は、コンベア装置67,68の間に配置され、コンベア装置67が受け入れたトレー5を後方に向けて搬送してコンベア装置68に渡す。モータローラ装置69は、ローラ上端が、上端位置にあるコンベア装置67,68のベルト上端よりも低く、下端位置にあるコンベア装置67,68のベルト上端よりも高くなるように、配置されている。モータローラ装置69の構成は、準備室2のモータローラ装置61,62と同様であり、対向配置された一対のフレーム690と、複数のモータローラ691とを有する。複数のモータローラ691は、一対のフレーム690間に回転自在に設けられ、搬送方向(前後方向)に沿って並列に配置されている。
【0050】
コンベア装置64,67によって、トレー5は収納室3から調製室4に搬入される。したがって、コンベア装置64,67は搬入装置の一例に相当する。また、コンベア装置68,65によって、トレー5は調製室4から収納室3に搬出される。したがって、コンベア装置68,65は搬出装置の一例に相当する。カバー110は、コンベア装置64,67によるトレー5の搬入位置(すなわちコンベア装置67の位置)と、コンベア装置68,65によるトレー5の搬出位置(すなわちコンベア装置68の位置)とを覆うように設置される。
【0051】
上記構成である搬送装置6による搬送経路上には、複数のシャッタ7A,7B,7C,7Dが設けられている。準備室2の筐体20の左側の壁部27の前方側には、モータローラ装置61とコンベア装置63との間の搬送経路となる開口271が形成されており、シャッタ7Aは開口271を開閉可能に構成されている。また、壁部27の後方側には、コンベア装置66とモータローラ装置62との間の搬送経路となる開口272が形成されており、シャッタ7Bは開口272を開閉可能に構成されている。また、調製室4の筐体40の右側の壁部45の前方側には、コンベア装置64とコンベア装置67との間の搬送経路となる開口451が形成されており、シャッタ7Cは開口451を開閉可能に構成されている。また、壁部45の後方側には、コンベア装置68とコンベア装置65との間の搬送経路となる開口452が形成されており、シャッタ7Dは開口452を開閉可能に構成されている。
【0052】
シャッタ7A〜7Dの動力源は、例えばサーボモータとすることが可能であるが、これに限定されるものではなく、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等の他の動力源を用いてもよい。シャッタ7A〜7Dは、トレー5が通過するときのみ開かれ、それ以外は閉じられている。
【0053】
以上の搬送装置6を構成するモータローラ装置61,コンベア装置63,64,67、モータローラ装置69、コンベア装置68,65,66,モータローラ装置62の駆動は、後述のコントローラ300によって制御される。また、シャッタ7A〜7Dの開閉動作もコントローラ300によって制御される。
【0054】
なお、搬送装置6の構成態様は、上記に限定されるものではない。例えば、準備室2内の搬送装置としてコンベア装置を用いてもよいし、収納室3内の搬送装置としてモータローラ装置を用いてもよい。但し、本実施形態のように準備室2の搬送装置として、コンベア装置よりも高さ方向の寸法が小さいモータローラ装置を使用することにより、
図2に示すように、準備室2の大型化を抑制しつつユーザMの脚を収納するスペース(凹部26)を確保することができる。
【0055】
また例えば、コンベア装置64,65として昇降機能を有しないコンベア装置を使用し、全てのモータローラ装置とコンベア装置を同一の高さとなるように設置してもよい。但し、本実施形態のようにコンベア装置64,65に昇降機能を持たせることにより、調製室4においてトレー5をロボット100の可動範囲内に搬送することを可能としつつ、収納室3においてコンベア装置63,66の配置高さを低くできることにより、収納棚7による収納スペースを拡張することが可能となり、且つ、薬液調製システム1の大型化を抑制できる。
【0056】
また例えば、準備室2から収納室3を介して調製室4にトレー5を搬入する経路と、調製室4から収納室3を介して準備室2にトレー5を搬出する経路とを、同一の経路としてもよい。但し、本実施形態のように搬入経路と搬出経路とを別経路とすることにより、収納室3から調製室4へのトレー5の搬入と調製室4から収納室3へのトレー5の搬出とを同時並行して行うことができるので、調製室4での調製作業と調製作業との間の待ち時間を短縮することが可能となり、連続して調製作業を行う場合に総作業時間を大幅に短縮できる。
【0057】
また、以上説明したモータローラ装置やコンベア装置の構成態様は一例であり、上記に限定されるものではない。例えば、コンベア装置のコンベアベルトを一対でなく幅広の1本のベルト等としてもよい。また、モータローラ装置やコンベア装置以外の搬送装置を使用してもよい。
【0058】
<3.ロボット>
次に、
図2及び
図3を用いて、調製室4に設置されたロボット100の一例について説明する。
【0059】
図2及び
図3に示すように、ロボット100は、基台101と、胴体部102と、2つのアーム103L,103Rとを有する、いわゆる双腕ロボットである。基台101は、調製室4の筐体40の床面に対し、例えばアンカーボルト等により固定されている。なお、基台101は、筐体40における床面以外の面(例えば天井面や側面等)に固定されてもよい。胴体部102は、基台101の上端部に旋回可能に支持されている。
【0060】
アーム103Lは、胴体部102の右方側の側部に回動可能に支持されている。アーム103Lは、例えば7つの関節部を有し、7自由度を有するアームとして構成されている。また、アーム103Rは、胴体部102の左方側の側部に回動可能に支持されている。アーム103Rは、アーム103Lと同様に、例えば7つの関節部を有し、7自由度を有するアームとして構成されている。
【0061】
アーム103Lの先端に取り付けられたハンド120Lは、互いに遠近する方向に動作可能な一対の爪部材130,130を備える。また、アーム103Rの先端に取り付けられたハンド120Rは、互いに遠近する方向に動作可能な一対の爪部材140,140を備える。ロボット100は、ハンド120L,120Rの爪部材130,140を用いてトレー5に収容された各種器具を把持したり、作業台46に配置された各種装置や機器(図示省略)を操作することが可能である。なお、詳細は後述するが、カバー110は後方側が開閉可能に構成されており、ロボット100はコンベア装置68上に搬送されたトレー5に対してアクセスすることが可能となっている。
【0062】
上記ロボット100の動作は、後述のコントローラ300によって制御される。なお、ロボット100は必ずしも双腕ロボットである必要はなく、単一のアームのみ有するロボットとして構成してもよい。また、アームの関節数や自由度は上記7に限定されるものではなく、7以外としたロボットとして構成してもよい。
【0063】
<4.収納棚、出し入れ装置>
次に、
図4を用いて、収納棚及び出し入れ装置の一例について説明する。なお、煩雑防止のため、この
図4では収納室3の筐体30、棚移動装置9、及びトレー5の中身等の図示を省略している。
【0064】
図4に示すように、収納室3は、トレー5を載置可能な載置部70が多段に積み重ねて配置された収納棚7と、トレー5を載置部70に対して出し入れする出し入れ装置8とを有する。収納棚7は、後述する棚移動装置9によってコンベア装置63,66の上方に支持されている。収納棚7は、背板部材71を有しており、複数の載置部70は背板部材71から左方に突出するようにそれぞれ設けられている。各載置部70の上方の空間、すなわちトレー5が載置される空間が、調製済みの薬液を収容した容器55をそれぞれ収納可能な第1スペースS1の一例に相当する。
図4に示す例では、載置部70は上下方向に10段に積み重ねて配置され、且つ、これら積み重ねられた載置部70が前後方向に2列配置されている。なお、載置部70の配置構成は上記に限定されるものではない。
【0065】
各載置部70は、背板部材71に片持ち梁状に固定された一対のフレーム部材72と、フレーム部材72の上面に設けられ、載置されるトレー5を位置決めするための位置決め部材73,74と、一対のフレーム部材72の間に配置される仕切板75とを有する。フレーム部材72の上面には、トレー5の底部が載置される。
【0066】
位置決め部材73は、一対のフレーム部材72のそれぞれの上面にこの例では2箇所ずつ(計4箇所)設けられている。各位置決め部材73は、フレーム部材72の外側寄りに配置されており、その内側にトレー5がはまり込むスペースが形成されている。また、位置決め部材74は、一対のフレーム部材72の先端の上面に架け渡すように設けられている。
図4に示すように、これら複数の位置決め部材73,74の内側にトレー5がはまり込むことにより、トレー5が位置決めされる。なお、位置決め部材の数や配置は上記に限定されるものではない。
【0067】
仕切板75は、平板状の部材であり、各載置部70において載置されたトレー5の鉛直方向下側を覆うように配置されることで、鉛直方向に積み重ねられたトレー5同士が仕切られる。仕切板75は、位置決め部材74の下方において一対のフレーム部材72のそれぞれに形成された溝部721に対して挿抜されることで、載置部70に対して容易に着脱することが可能である。
【0068】
前方側に配置された複数の載置部70のうち、最下段の載置部70の下方には、コンベア装置63のガイド部材631が設けられている。ガイド部材631は、最下段の載置部70のフレーム部材72から下方に突出した一対の棒状の支持部材76を介して吊り下げ支持されている。
【0069】
また、収納棚7の近傍には、2組の光電センサ77が、鉛直方向に積み重ねられた載置部70の各列に対応して配置されている。各光電センサ77は、発光部77A及び受光部77Bをそれぞれ有しており、発光部77Aから載置部70の積み重ね方向(つまり鉛直方向)に光(可視光線や赤外線等)を射出する。このとき、積み重ねられた載置部70のいずれかにおいて、トレー5の載置不良や仕切板75の装着不良等によりトレー5又は仕切板75が収納棚7から左方へ飛び出した場合、受光部77Bにおいて光が受光されなくなる。これにより、トレー5及び仕切板75の収納棚7からの飛び出しを検出することができる。光電センサ77の発光部77Aは例えば収納室3の筐体30の天井面に、受光部77Bは例えば筐体30の床面に設置される。
【0070】
なお、光電センサ77は上記透過型に限定されるものではなく、例えば発光部と受光部とが一体化された反射型を用いてもよい。また、発光部と受光部の位置関係は上記と反対でもよい。
【0071】
出し入れ装置8は、トレー5をX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)からなる互いに直交する3軸方向に移送可能な3軸アクチュエータ装置である。出し入れ装置8は、一対のX軸ガイドレール80と、一対のX軸スライダ81と、Y軸ガイドレール82と、Y軸スライダ83と、Z軸ガイドレール84と、Z軸スライダ85と、トレー5を保持する保持部86とを有する。
【0072】
一対のX軸ガイドレール80は、例えば収納室3の筐体30の前方側の壁部(図示省略)及び後方側の壁部(図示省略)に、互いに略平行となるように設置されている。一対のX軸スライダ81は、X軸ガイドレール80のそれぞれに対し、X軸方向に移動可能且つY軸方向及びZ軸方向の移動を規制されるように嵌合する。X軸スライダ81のいずれか一方は、図示しないサーボモータによりX軸方向に沿って駆動される。なお、一対のX軸ガイドレール80の平行度や装置重量による撓み等を起因とするX軸方向の動作不良を防止するために、例えばサーボモータで駆動される側とは反対側の従動側のX軸ガイドレール80とX軸スライダ81との間に、適宜のクリアランスを設けてもよい。
【0073】
Y軸ガイドレール82は、一対のX軸スライダ81の間に架け渡されて設置されている。Y軸スライダ83は、Y軸ガイドレール82に対し、Y軸方向に移動可能且つX軸方向及びZ軸方向の移動を規制されるように嵌合する。Y軸スライダ83は、図示しないサーボモータによりY軸方向に沿って駆動される。Z軸ガイドレール84は、Y軸スライダ83から下方に向かって延設されている。Z軸スライダ85は、Z軸ガイドレール84に対し、Z軸方向に移動可能且つX軸方向及びY軸方向の移動を規制されるように嵌合する。Z軸スライダ85は、図示しないサーボモータによりZ軸方向に沿って駆動される。
【0074】
保持部86は、Z軸スライダ85の前方側に取付片87を介して設置される。保持部86は、略L字型形状を有しており、四角形状であるトレー5の4辺のつば部51のうち、隣り合う2辺のつば部51を保持する(後述の
図7参照)。
【0075】
上記構成である出し入れ装置8は、トレー5を収納棚7に収納する際には、トレー5を保持した保持部86を所定の載置部70の左側の位置に移動させ、その後右方に移動させて、トレー5を第1スペースS1に挿入する。そして、トレー5の位置が位置決め部材73,74に対応する位置となった際に、保持部86を下方に移動させて、トレー5を載置部70に載置する。その後、保持部86を若干量(後述の保持部86の突起部88をトレー5の突起部58の裏側凹部から引き出し可能な距離)下方に移動させると共に、若干量後方に移動させ、保持部86を第1スペースS1より引き抜く。
【0076】
一方、出し入れ装置8は、トレー5を収納棚7から取り出す際には、保持部86をトレー5が載置された所定の載置部70の左側の位置に移動させ、その後右方に移動させて、保持部86を第1スペースS1に挿入する。そして、若干量前方に移動させることにより、保持部86の位置がトレー5のつば部51の保持位置(後述の保持部86の突起部88をトレー5の突起部58の裏側凹部に差し込み可能な位置)となった際に、保持部86を上方に移動させて、トレー5を保持部86で保持する。その後、保持部86を若干量(トレー5の底部と位置決め部材73,74との接触を回避可能な距離)上方に移動させ、保持部86を第1スペースS1より引き抜く。
【0077】
上記出し入れ装置8の動作は、後述のコントローラ300によって制御される。なお、収納棚7や出し入れ装置8の構成態様は、上記に限定されるものではない。
【0078】
<5.棚移動装置>
次に、
図5A及び
図5Bを用いて、棚移動装置の一例について説明する。なお、煩雑防止のため、この
図5A及び
図5Bでは収納室3の扉32、コンベア装置63のベース部材636、コンベア装置66の並進装置666等の図示を省略している。
【0079】
図5A及び
図5Bに示すように、収納室3は、収納棚7を収納室3の内部と外部とに移動可能な棚移動装置9を有する。棚移動装置9は、アーム部材90と、ウェイト部材91と、モータ92を備えたパワーシリンダ93と、オイルダンパ94とを有する。
【0080】
アーム部材90は、中間部をシャフト95周りに回動可能に支持されている。シャフト95は、前後方向においてコンベア装置63,66の間に位置しており、アーム部材90は上下方向に略沿った状態ではコンベア装置63,66の間に立設された状態となる。アーム部材90の一端部(上端部)には、収納棚7の背板部材71が回転軸96周りに回動可能に連結されている。また、アーム部材90の他端部(下端部)には、ウェイト部材91が回転軸97周りに回動可能に連結されている。ウェイト部材91は、例えば回転軸97に着脱可能な複数のリング状部材から構成されており、リング状部材を増減させることにより重量を調整することが可能である。
【0081】
アーム部材90のシャフト95と回転軸96との間には、パワーシリンダ93の一端部が取付片931を介して回動可能に連結されている。また、パワーシリンダ93の他端部は、収納室3の筐体30に固定された支持部材98により回動可能に支持されている。パワーシリンダ93は、例えばサーボモータにより構成されるモータ92により伸縮駆動し、アーム部材90をシャフト95周りに回動動作させる。一方、アーム部材90のシャフト95と回転軸96との間には、オイルダンパ94の一端部が取付片941を介して回動可能に連結されている。また、オイルダンパ94の他端部は、収納室3の筐体30に固定された支持部材99により回動可能に支持されている。オイルダンパ94は、封入されたオイルにより、アーム部材90に対して縮む方向に力を付与する。これにより、アーム部材90を上下方向から回動させた際のパワーシリンダ93による駆動力が低減され、モータ92の容量を低減することが可能である。なお、オイルダンパの代わりにエアダンパを用いてもよい。
【0082】
図5Aに示すように、収納棚7が収納室3の内部に収容されている状態では、棚移動装置9は収納棚7をコンベア装置63,66の上方に位置するように支持している。このとき、アーム部材90は上下方向に略沿っており、パワーシリンダ93及びオイルダンパ94は縮んだ状態となっている。収納棚7を収納室3の外部に移動させる際には、収納室3の扉32を開けた状態とした上で、棚移動装置9が駆動される。すなわち、
図5Bに示すように、パワーシリンダ93がモータ92により延伸することで、アーム部材90がシャフト95周りに回動し、収納棚7が徐々に収納室3の外部に移動されて、収納棚7の全体が収納室3の外部に露出する。なお、収納棚7の一部のみが収納室3の外部に露出する構成としてもよい。このとき、ウェイト部材91がカウンターウェイトとなって、アーム部材90の回動動作が安定化すると共に、パワーシリンダ93による駆動力が低減され、モータ92の容量を低減できる。また、オイルダンパ94によりアーム部材90の回動動作に伴う振動が吸収されるとともに、上述のようにオイルダンパ94の補助力によってもパワーシリンダ93による駆動力が低減される。
【0083】
なお、本実施形態では、収納室3の小型化を図るために、棚移動装置9とコンベア装置63,66とを近傍に配置している。このため、
図5Bに示すように、アーム部材90のシャフト95よりウェイト部材91側の部分は、上記回動動作によりコンベア装置66の搬送経路上に到達する。したがって、収納棚7を収納室3の外部に移動させる際には、前述のように、コンベア装置66を並進装置666により左端位置に移動させて第2スペースS2を形成することにより、コンベア装置66と棚移動装置9のアーム部材90との干渉を回避することができる。
【0084】
また、本実施形態では、収納棚7の収納スペースを確保するために、収納棚7の上下方向寸法が極力大きくなるように構成されている。このため、コンベア装置63の一対のガイド部材631の両方をコンベア装置63に設けた場合には、アーム部材90が回動する際に、収納棚7の後方側の下端部78がコンベア装置63の前方側のガイド部材631に接触する可能性がある。したがって、前述のように、コンベア装置63の一対のガイド部材631のうち前方側のガイド部材631については、収納棚7の下端部に設けることにより、上記接触を回避することができる。その結果、収納棚7の収納スペースを確保しつつ、棚移動装置9を良好に動作させることが可能となり、且つ、収納室3の小型化を図ることができる。
【0085】
上記棚移動装置9の動作は、後述のコントローラ300によって制御される。なお、棚移動装置9の構成態様は、上記に限定されるものではない。例えば、ウェイト部材91やオイルダンパ94は必ずしも設けなくともよく、棚移動装置9をこれらを有しない装置として構成することも可能である。
【0086】
<6.トレー、保持部>
次に、
図6A、
図6B及び
図7を用いて、トレー及び出し入れ装置の保持部の一例について説明する。なお、
図6Aは、調製作業に使用される前のトレー5の収容物の一例を示しており、
図6Bは、調製作業に使用された後のトレー5の収容物の一例を示している。
【0087】
図6A及び
図6Bに示すように、トレー5は平面視略四角形状の容器であり、本体部50と、つば部51とを有する。本体部50には、複数の仕切板52a,52b,52cが配置されており、これら仕切板52a〜52cにより本体部50の内部が複数の収容エリア50A,50B,50Cに区画されている。例えば、収容エリア50Aはシリンジ53が収容されるエリアであり、収容エリア50Bは複数の薬剤容器54a,54bが収容されるエリアであり、収容エリア50Cはバッグ55や複数のボトル56a,56bが収容されるエリアである。
【0088】
バッグ55は、バッグ本体550と、ポート部材551とを有する。ポート部材551が仕切板52cの図示しない切り欠きに係合することにより、バッグ55は収容エリア50Cにおいて位置決めされている。また、仕切板52aには、複数の切り欠き57aが形成された固定部材57が設けられており、この固定部材57の切り欠き57aに係合することによって、ボトル56a,56bがバッグ55の識別表示部552(例えばバーコード等)が露出されるように位置決めされ、バッグ55の上部に配置される。なお、図示は省略するが、シリンジ53及び薬剤容器54a,54bについても、図示しない位置決め部材により位置決めされている。
【0089】
図6Aに示す例では、調製作業前のトレー5には、調製作業に使用される複数の器具の一例として、2本のシリンジ53、2つの薬剤容器54a及び4つの薬剤容器54b、バッグ55、2つのボトル56a,56bが収容されている。バッグ55には、生理食塩水やブドウ糖液等の輸液が封入されており、ボトル56a,56bには例えばバッグ55と異なる輸液が封入されている。また、薬剤容器54a,54bには、粉末状または液体状の薬剤が封入されている。ロボット100は、これらの器具を使用して1回の調製作業を実行する。つまり、調製作業に使用される器具は、1回の調製作業に使用される所定の器具を1セットとしてそれら1セットの器具ごとに各トレー5に収容されている。
【0090】
なお、1セットの器具は上記に限定されるものではなく、上記器具の一部としてもよいし、上記以外の器具を使用してもよい。また、必ずしも1つのトレー5を用いて1回の調製作業を行う場合に限定されるものではない。例えば、調製する薬液の量が多く、1つのトレー5に収容された器具のみでは輸液や薬剤が不足する場合等には、複数のトレー5に収容された器具を使用して1回の調製作業を実行してもよい。
【0091】
図6Bに示す例では、調製作業後のトレー5には、調製済みの薬液を収容した容器として、バッグ55が収容されている。このバッグ55には、調製済みの薬液が戻されて封入されている。バッグ55以外の器具は、例えば調製室4内の廃棄ボックスに廃棄される。なお、薬液を収容する容器はバッグ55に限定されるものではなく、例えばボトル56a,56bでもよいし、シリンジ53でもよい。
【0092】
トレー5のつば部51の四隅には、例えば略扇形形状の突起部58が形成されている。これら突起部58の裏側は例えば同じ形状の凹部となっている。一方で、
図7Aに示すように、出し入れ装置8の保持部86は略L字型形状を有しており、その両端部に上記トレー5の突起部58の裏側凹部に対応した形状の突起部88が形成されている。保持部86でトレー5を保持する際には、保持部86の突起部88がトレー5のつば部51の対応する位置の突起部58の裏側凹部に嵌合されることで、トレー5が位置決めされる。
【0093】
このとき、トレー5は対角線上の2つの角部において支持されることになるので、トレー5の重心位置によっては、トレー5が上記対角線を中心に横転して引っ繰り返り、トレー5が保持部86から落下する可能性がある。そこで、出し入れ装置8は、エアシリンダ89を有する。エアシリンダ89は、例えばZ軸スライダ85又は取付片87に設置される。
図7Aに示すように、保持部86がトレー5を保持していない状態ではエアシリンダ89はピン89aを引き込んでおり、
図7Bに示すように、保持部86でトレー5を保持した際にはエアシリンダ89はピン89aを突出させて、ピン89aをつば部51に係止させる。これにより、上記横転を防止できる。
【0094】
なお、上記横転防止のための駆動機構や駆動源は、上記エアシリンダに限定されるものではない。例えば、電動シリンダや油圧シリンダ、サーボモータ等、ピンを突出させることが可能な機構であれば、その他の駆動機構や駆動源を用いてもよい。
【0095】
なお、トレー5の構成態様は、上記に限定されるものではない。例えば、平面視において四角形状以外のトレーでもよい。また、本体部50の内部をさらに多数の収容エリアに区画してもよいし、仕切板を設けずに収容エリアを区画しない構成としてもよい。また、保持部86の構成態様も、上記に限定されるものではない。
【0096】
<7.調製室のカバー>
次に、
図8A及び
図8Bを用いて、調製室4に設置されたカバー110の一例について説明する。
【0097】
前述のように、調製室4には、コンベア装置67,68及びモータローラ装置69の上方を覆うカバー110が設けられている。
図8A及び
図8Bに示すように、カバー110は、上側の天板111と、前側及び後側の側板112,113と、右側及び左側の側板114,115とを有しており、下側が開放された略直方体形状のカバーである。側板114には、前述のシャッタ7Cに対応する開口116及びシャッタ7Dに対応する開口117が形成されている。カバー110内の前方側に配置されたコンベア装置67は、収納室3のコンベア装置64から渡されたトレー5を開口116を介してカバー110内に受け入れる。また、カバー110内の後方側に配置されたコンベア装置68は、トレー5を開口117を介して収納室3のコンベア装置65に渡す。
【0098】
カバー110の天板111及び側板114,115の後方側には、ロボット100がトレー5にアクセスするための開口118が形成されている。この開口118は、コンベア装置68の上方に形成されている。また、カバー110は、開口118を開閉可能なシャッタ119を有する。シャッタ119は、例えばサーボモータや油圧シリンダ、エアシリンダ等の動力源を用いて自動で開閉させてもよいし、これらの動力源を用いずに、ロボット100がハンド120L,120Rを用いて開閉する構成としてもよい。
【0099】
コンベア装置67が収納室3のコンベア装置64からトレー5を受け入れる際には、
図8Aに示すように、シャッタ119により開口118は閉じられている。そして、このシャッタ119が閉じた状態において、トレー5はモータローラ装置69によりコンベア装置65からコンベア装置68に搬送される。トレー5がコンベア装置68上に到着したら、その位置で停止され、
図8Bに示すように、シャッタ119が開いて開口118が開放される。これにより、ロボット100はハンド120L,120Rを用いてトレー5に収容された器具を取り出し、薬液の調製作業を行うことが可能となる。この調製作業と並行して、コンベア装置67は収納室3のコンベア装置64から次のトレー5を受け入れ、コンベア装置67上に待機させる。このとき、開口118は開放されているが、コンベア装置67及びモータローラ装置69の上方は天板111によって覆われているので、調製室4内に浮遊する異物(例えば輸液、薬剤、調製済みの薬液、洗浄液、ゴミは埃等)が下降気流に乗って待機中のトレー5に混入することを防止できる。
【0100】
調製作業が終了したら、ロボット100は調製済みの薬液を収容した容器55を開口118を介してトレー5に収容する。そして、シャッタ119が閉じられ、コンベア装置68は、容器55が収容されたトレー5を開口117を介して収納室3のコンベア装置65に渡す。その後、コンベア装置67上に待機されたトレー5がモータローラ装置69によりコンベア装置68に搬送され、シャッタ119が開いて開口118が開放される。これにより、ロボット100は次の薬液の調製作業を行うことが可能となる。
【0101】
このように、カバー110のシャッタ119は、ロボット100により調製作業が実行される場合に開かれる。なお、調製作業の実行中においても、ロボット100がトレー5にアクセスするときのみシャッタ119を開き、トレー5にアクセスしない間(例えば作業台46上で調製作業を行っている間)はシャッタ119を閉じてもよい。
【0102】
なお、カバー110の構成態様は、上記に限定されるものではない。例えば、右側の側板114を設けずに開放し、調製室4の筐体40の壁部45を利用した構成としてもよい。
【0103】
<8.コントローラ>
次に、
図9を参照しつつ、コントローラ300の機能的構成の一例について説明する。
【0104】
薬液調製システム1は、コントローラ300を有する。コントローラ300は、薬液調製システム1に備えられる駆動系200の動作を統括して制御する。駆動系200には、搬送装置6、シャッタ7A〜7D,119、出し入れ装置8、棚移動装置9、及びロボット100等が含まれる。
図9に示すように、コントローラ300は、第1動作制御部301と、第2動作制御部302と、第3動作制御部303とを有する。
【0105】
第1動作制御部301は、収納棚7に収納された、調製作業に使用される器具が収容された全てのトレー5について、調製作業を完了し、調製済みの薬液を収容した容器55が収容された全てのトレー5について収納棚7への収納が完了した場合に、収納棚7を収納室3の外部に移動するように棚移動装置9を制御する。
【0106】
上記第1動作制御部301は、駆動系200の通常時の動作を制御する。この第1動作制御部301による駆動系200の動作の一例を具体的に説明する。
【0107】
まず、準備室2において、ユーザMは、調製作業に使用される複数の器具のうちの所定の器具を1セットとしてトレー5に収容する(セット作業)。このときのトレー5は、例えば
図6Aに示す状態である。所定の1セットの器具が収容されたトレー5は、モータローラ装置61により搬送され、閉じられたシャッタ7Aの手前で停止される。シャッタ7Aが開放されると、トレー5はモータローラ装置61から開口271を介して収納室3のコンベア装置63に渡される。シャッタ7Aは、トレー5の通過後直ちに閉じられる。トレー5は、コンベア装置63により搬送されてコンベア装置64に渡される。このとき、コンベア装置64は下端位置となっている。トレー5は、コンベア装置64上で停止され、コンベア装置64が上昇して上端位置となる。
【0108】
この状態において、出し入れ装置8は、上端位置にあるコンベア装置64上のトレー5に向かって保持部86を移動させ、トレー5を保持する。そして、トレー5を保持した保持部86を所定の載置部70に移動させ、トレー5を載置部70に載置する。以上の動作が繰り返されることにより、調製作業に使用される前のトレー5が収納棚7に順次ストックされていく。ユーザMは、必要数のトレー5をセットする。例えば、収納棚7が満杯になるまでトレー5のセット作業を繰り返してもよい。
【0109】
調製前のトレー5の収納棚7への収納が完了した後は、基本的にユーザMの作業は不要となり、無人運転が可能となる。すなわち、出し入れ装置8は、保持部86をトレー5が載置された所定の載置部70に移動させ、トレー5を保持部86で保持して収納棚7から取り出す。このトレー5の取り出し作業は、例えば予め定められたスケジュールにしたがって実行される。一方、コンベア装置64が上昇して上端位置となり、出し入れ装置8は、収納棚7から取り出したトレー5を上端位置にあるコンベア装置64上に載置する。
【0110】
トレー5は、コンベア装置64上で待機され、閉じられたシャッタ7Cが開放されると、トレー5はコンベア装置64から開口451を介して調製室4のコンベア装置67に渡される。シャッタ7Cは、トレー5の通過後直ちに閉じられる。トレー5は、カバー110内においてモータローラ装置69によりコンベア装置65からコンベア装置68に搬送され、コンベア装置68上で停止される。そして、シャッタ119が開いて開口118が開放される。ロボット100は、ハンド120L,120Rを用いてトレー5に収容された器具を取り出し、薬液の調製作業を行う。なお、連続して調製作業を行う場合には、この調製作業と並行して、次のトレー5が収納棚7から取り出され、コンベア装置64からコンベア装置67に渡されて、コンベア装置67上で待機される。
【0111】
ロボット100は、調製作業を終えると、調製済みの薬液を収容した容器55を開口118を介してトレー5に収容する。このときのトレー5は、例えば
図6Bに示す状態である。そして、シャッタ119が閉じられる。一方、収納室3のコンベア装置65が上昇して上端位置となる。そして、シャッタ7Dが開放されると、コンベア装置68は、容器55が収容されたトレー5を開口452を介して上端位置にあるコンベア装置65に渡す。
【0112】
この状態において、出し入れ装置8は、上端位置にあるコンベア装置65上のトレー5に向かって保持部86を移動させ、トレー5を保持する。そして、トレー5を保持した保持部86を所定の載置部70に移動させ、トレー5を載置部70に載置する。一方で、コンベア装置67上に待機されたトレー5がモータローラ装置69によりコンベア装置68に搬送され、シャッタ119が開いて開口118が開放される。そして、ロボット100はトレー5に収容された器具を用いて次の薬液の調製作業を行う。
【0113】
以上の動作が繰り返されることにより、収納棚7には調製作業後のトレー5が順次ストックされていく。言い換えると、収納棚7においては、調製作業用の器具を収容したトレー5が調製済みの薬液の容器55を収容したトレー5に順次交換されていく。そして、全ての調製作業前のトレー5についての調製作業が完了し、全ての調製作業後のトレー5についての収納棚7への収納が完了するまで、上記動作が繰り返される。なお、ロボット5は、基本的には1つのトレー5に収容された器具を用いて1回の調製作業を実行するが、複数のトレー5を用いて1回の調製作業を行った場合には、複数のトレー5の少なくとも1つに薬液を収容した容器55を収容する。
【0114】
以上が無人運転により実行される。そして、薬液を取り出す際には、ユーザMは例えば操作パネル等を用いて所定の操作を実行する。これにより、シャッタ7A〜7Dの閉塞状態が確認される。そして、ユーザMは、収納室3の扉32を開放する。この状態で、棚移動装置9のパワーシリンダ93がモータ92により延伸し、アーム部材90がシャフト95周りに回動して、収納棚7が収納室3の外部に移動する。これにより、ユーザMは調製済みの薬液を収納棚7からまとめて取り出すことができる。
【0115】
また、第2動作制御部302は、ユーザMの要求に応じ、収納棚7に収納された容器55が収容されたトレー5のうちの特定のトレー5を収納棚7から取り出すように出し入れ装置8を制御する。
【0116】
上記第2動作制御部302は、駆動系200の緊急時の動作を制御する。この第2動作制御部302による駆動系200の動作の一例を具体的に説明する。
【0117】
第2動作制御部302による動作は、調製前のトレー5の収納棚7への収納が完了し、その後、各トレー5について調製作業が実行され、収納棚7に調製作業後のトレー5が順次ストックされていく動作については、上記第1動作制御部301による動作と同じである。ここで、例えば全ての調製作業が完了する前に、収納棚7に収納された薬液のうち特定の薬液を取り出したい等の要求がある場合、ユーザMは例えば操作パネル等を用いて所定の操作を実行する。これにより、出し入れ装置8は、保持部86を取り出したいトレー5が載置された所定の載置部70に移動させ、トレー5を保持部86で保持して収納棚7から取り出す。一方、コンベア装置65が上昇して上端位置となり、出し入れ装置8は、収納棚7から取り出したトレー5を上端位置にあるコンベア装置65上に載置する。
【0118】
次に、コンベア装置65が下降して下端位置となる。そして、トレー5は、コンベア装置65により搬送されてコンベア装置66に渡される。コンベア装置65は、並進動作をしつつトレー5をシャッタ7Bの手前まで搬送する。シャッタ7Bが開放されると、トレー5はコンベア装置66から開口272を介して準備室2のモータローラ装置62に渡される。シャッタ7Bは、トレー5の通過後直ちに閉じられる。トレー5は、モータローラ装置62により搬送されて、ユーザMに渡される。複数の薬液を取り出す場合には、上記動作が繰り返される。これにより、ユーザMは、収納棚7から特定の薬液を取り出すことができる。なお、上記の動作は、全ての調製作業が完了した後に実行させることも可能である。
【0119】
また、第3動作制御部303は、ユーザMの要求に応じ、準備室2で器具がセットされたトレー5を収納室3に収納せずに調製室4に搬送して調製作業を行い、調製された薬液の容器55が収容されたトレー5を収納室3に収納せずに準備室2に搬送するように制御する。
【0120】
上記第3動作制御部303は、駆動系200の上記とは別の緊急時の動作を制御する。この第3動作制御部303による駆動系200の動作の一例を具体的に説明する。
【0121】
例えば、収納棚7に収納されたトレー5についての調製作業とは別の特定の薬液の調製を緊急に行いたい等のユーザMの要求がある場合には、ユーザMは例えば操作パネル等を用いて所定の操作を実行した上で、所定の器具をトレー5にセットする。このトレー5は、上記第1動作制御部301による動作と同様にして、コンベア装置64まで搬送される。そして、トレー5はコンベア装置64上で停止され、コンベア装置64が上昇して上端位置となる。このとき、出し入れ装置8を駆動してトレー5を収納棚7に収納することはせずに、そのまま、トレー5は調製室4のコンベア装置67に渡される。そして、上記第1動作制御部301による動作と同様にして、カバー110内においてコンベア装置68に搬送され、シャッタ119が開いてロボット100が薬液の調製作業を行う。
【0122】
ロボット100が調製作業を終えた後は、上記第1動作制御部301による動作と同様にして、調製された薬液の容器55を収容したトレー5は、コンベア装置68から上端位置にあるコンベア装置65に渡される。このとき、出し入れ装置8を駆動してトレー5を収納棚7に収納することはせずに、コンベア装置65が下降して下端位置となり、トレー5はコンベア装置66に渡される。その後は、上記第2動作制御部302による動作と同様であり、トレー5はコンベア装置66から準備室2のモータローラ装置62に渡され、ユーザMに渡される。複数の薬液の調製を行う場合には、上記動作が繰り返される。これにより、ユーザMは、特定の薬液の調製を緊急に行うことが可能である。
【0123】
なお、上述した各動作制御部301〜303における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、1つの処理部で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、コントローラ300の各機能は、後述するCPU901(
図10参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA907(
図10参照)、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0124】
<9.本実施形態による効果の例>
以上説明したように、本実施形態の薬液調製システム1は、調製室4と収納室3とを有する。収納室3は、調製室4で調製された調製済みの薬液を収容した容器55をそれぞれ収納可能な複数の第1スペースS1を有する。これにより、例えば連続して調製作業を行った場合でも、調製された複数の容器55を収納室3にストックしておくことができるので、ユーザMによる作業(例えば調製作業が行われる度に容器55を取り出す作業等)を低減できる。したがって、薬液調製システム1の自動化を促進できる。また、例えば薬液の種類等と第1スペースS1とを関連づけておくことで、調製後の薬液の管理が容易となる効果もある。
【0125】
また、本実施形態において、収納室3が、容器55が収容されたトレー5を載置可能な載置部70が多段に積み重ねて配置された収納棚7と、トレー5を載置部70に対して出し入れする出し入れ装置8とを有する場合には、例えば連続して調製作業を行った場合でも、複数の容器55を収納棚7にトレー単位でストックしておくことができる。また、出し入れ装置8によりトレー5を収納棚7の任意の載置部70に対して出し入れできるので、自動化をさらに促進できる。また、容器55がトレー単位で収納棚7に収納されるので、調製済みの薬液の取り扱い性を向上できる。
【0126】
また、本実施形態において、収納室3が、収納棚7を収納室3の内部と外部とに移動させる棚移動装置8を有する場合には、例えば全ての調製作業が完了した際に、収納棚7ごと収納室3の外部に移動させることで、調製済みの薬液を収納棚7からまとめて取り出すことが可能となる。したがって、取り出し作業が容易となり、作業時間を短縮できる。
【0127】
また、本実施形態において、出し入れ装置8が、互いに直交する3軸方向に移動可能に支持され、トレー5のつば部51を保持する略L字型の保持部86を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、保持部86の形状を略L字型とすることにより、例えば保持部86をU字型とする場合に比べて、トレー5を載置部70に載置した後に保持部86を載置部70から引き出す際のY軸方向への移動量(逃がし量)を低減することができる。したがって、収納棚7のY軸方向寸法(前後方向寸法)を低減できるので、薬液調製システム1を小型化できる。
【0128】
また、本実施形態において、載置部70が、載置されたトレー5の鉛直方向下側を覆い、載置部70に着脱可能な仕切板75を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、仕切板75により、各載置部70に載置されたトレー5同士が仕切られる。これにより、上段に配置されたトレー5から下段のトレー5に異物(例えば輸液、薬剤、調製済みの薬液、ゴミや埃等)が落下することによるコンタミを防止できる。また、各仕切板75は載置部70に着脱可能に設けられるので、容易に掃除できる。さらに、収納棚7において一部の載置部70について仕切板75を取り外すことで、複数の載置部70の第1スペースS1を用いて1つのトレー5を配置することができる。その結果、載置部70の間隔よりも高さの高い器具を配置したトレー5を収納することが可能となる。
【0129】
また、本実施形態において、薬液調製システム1が、収納棚7の近傍に配置され、載置部70の積み重ね方向に光を射出してトレー5及び仕切板75の収納棚7からの飛び出しを検出する光電センサ77を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、トレー5及び仕切板75の少なくともいずれかが収納棚7に適切に収納若しくは装着されておらず収納棚7から飛び出している場合、収納棚7を移動させる際にトレー5又は仕切板75が落下したり周囲機器との接触を招く可能性がある。本実施形態では、光電センサ77によりトレー5及び仕切板75の収納棚7からの飛び出しを検出するので、上記落下や接触を防止できる。また、載置部70の積み重ね方向に光を射出するように光電センサ77を設けるので、1つのセンサで複数の載置部70における飛び出しを監視することができ、センサ数を節約できる。
【0130】
また、本実施形態において、棚移動装置9が、中間部を回動可能に支持され、一端部に収納棚7が連結されたアーム部材90と、アーム部材90の他端部に連結されたウェイト部材91と、アーム部材90を回動動作させるモータ92とを有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、棚移動装置9は、モータ92によりアーム部材90を回動させることで、一端部に連結された収納棚7を収納室3の内部と外部とに移動させる。このとき、アーム部材90の他端部に連結されたウェイト部材91がカウンターウェイトとなるので、回動動作を安定化できると共に、モータ92のモータ容量を低減できる。
【0131】
また、本実施形態において、薬液調製システム1が、収納室3に配置され、トレー5を搬送するコンベア装置66を有し、このコンベア装置66が搬送方向に往復移動することにより、搬送経路にアーム部材90との干渉を回避する第2スペースS2を形成する場合には、次のような効果を得る。すなわち、棚移動装置9のアーム部材90は回動動作するので、棚移動装置9とコンベア装置66とを近傍に配置する場合には、アーム部材90とコンベア装置66とが干渉する可能性がある。他方、干渉を回避するために棚移動装置9とコンベア装置66とを離間して配置する場合には、薬液調製システム1の大型化を招く。本実施形態では、コンベア装置66が搬送方向に往復移動する。これにより、棚移動装置9とコンベア装置66とを近傍に配置してシステムを小型化しつつ、アーム部材90とコンベア装置66との干渉を回避することができる。
【0132】
また、本実施形態において、収納棚7が、調製作業に使用される複数の器具が所定の器具を1セットとして1セットごとに収容されたトレー5を載置部70に載置する場合には、次のような効果を得る。すなわち、収納棚7には、調製済みの薬液容器55を収容したトレー5だけでなく、調製作業に使用される器具を1セットごとに収容したトレー5についても収納される。これにより、例えば連続して調製作業を行う場合でも、各調製作業に必要な器具を予め収納棚7にストックしておくことができるので、ユーザMによる作業(例えば調製作業ごとに器具をセットする作業等)を低減できる。したがって、薬液調製システム1の自動化を促進できる。また、1セットの器具とこれを用いる調製作業とを1対1に対応させて収納することにより、器具の管理が容易となり、器具の誤りや不足等を低減することが可能となる。さらに、各調製作業に使用される1セットの器具と各載置部70とを関連づけておくことで、調製前の器具の管理が容易となる。
【0133】
また、本実施形態において、ロボット100が、収納棚7に載置された複数のトレー5に収容された器具を使用して1回の調製作業を実行する場合には、例えば調製する薬液の量が多く、1つのトレー5に収容された器具のみでは(例えば輸液や薬剤が)足りない場合であっても、複数のトレー5の器具を用いて対応することができる。
【0134】
また、本実施形態において、薬液調製システム1が、器具が収容されたトレー5を収納室3から調製室4に搬入するコンベア装置64,67と、コンベア装置64,67と異なる経路に配置され、容器55が収容されたトレー5を調製室4から収納室3に搬出するコンベア装置68,65とを有する場合には、次のような効果を得る。仮に、収納室3と調製室4との間のトレー5の搬入経路と搬出経路を同一経路とする場合、調製作業終了後、容器55が収容されたトレー5の調製室4から収納室3への搬出が完了して初めて、器具が収容されたトレー5の調製室4への搬入が可能となる。したがって、ロボット100による調製作業と調製作業との間の待ち時間が長くなる。本実施形態では、搬入経路と搬出経路とが別経路となっている。これにより、調製作業終了後、容器55が収容されたトレー5を調製室4から収納室3に搬出するのと並行して、器具が収容されたトレー5を収納室3から調製室4に搬入することができる。これにより、調製作業と調製作業との間の待ち時間を短縮できるので、連続して調製作業を行う場合に総作業時間を大幅に短縮できる。
【0135】
また、本実施形態において、薬液調製システム1が、調製室4に配置され、コンベア装置64,67によるトレー5の搬入位置と、コンベア装置68,65によるトレー5の搬出位置とを覆うカバー110とをさらに有し、カバー110が、ロボット100がトレー5にアクセスするための開口118と、開口118を開閉するシャッター119とを有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、搬入経路と搬出経路が別経路である場合、調製作業中に次の調製作業のためのトレー5を搬入して調製室4内に待機させておくことが考えられる。この場合、前の調製作業が完了したら直ちに次の調製作業を開始することが可能となり、待ち時間を短縮できる。しかしながら、この場合には調製室4内に存在する異物(例えば輸液、薬剤、調製済みの薬液、洗浄液、ゴミや埃等)が待機されたトレー5内に落下してコンタミを生じるおそれがある。本実施形態では、搬入位置で待機されたトレー5をカバー110により覆うことができるので、上記コンタミを防止できる。また、調製作業を開始する際にはトレー5をカバー110の開口部分に搬送すればロボット100がアクセス可能となるので、速やかに調製作業を開始することができる。
【0136】
また、本実施形態において、薬液調製システム1がコントローラ300を有し、このコントローラ300が、収納棚7に収納され器具が収容された全てのトレー5について調製作業を完了し、容器55が収容された全てのトレー5について収納棚7への収納が完了した場合に、収納棚7を収納室3の外部に移動するように棚移動装置9を制御する第1動作制御部301を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、全てのトレー5についての調製作業が完了した後に収納棚7の外部への移動を行うことで、例えば収納室3の両側のシャッタ7A〜7Dを閉じて調製室4及び準備室2と隔絶させた状態とした上で収納棚7の移動を行うことが可能となるので、安全性を確保できる。
【0137】
また、本実施形態において、コントローラ300が、ユーザMの要求に応じ、収納棚7に収納された容器55が収容されたトレー5のうちの特定のトレー5を収納棚7から取り出すように出し入れ装置8を制御する第2動作制御部302を有する場合には、例えば全ての調製作業が完了する前に特定の調製済みの薬液を取り出したい等のユーザMの要求に応じることが可能となり、緊急対応が可能となる。
【0138】
また、本実施形態において、薬液調製システム1が、収納棚7に収納されるトレー5に1セットの器具がセットされる準備室2をさらに有し、コントローラ300が、ユーザMの要求に応じ、準備室2で器具がセットされたトレー5を収納室3に収納せずに調製室4に搬送して調製作業を行い、調製された薬液の容器55が収容されたトレー5を収納室3に収納せずに準備室2に搬送するように制御する第3動作制御部を有する場合には、例えば収納室3に収納されたトレー5についての調製作業とは別の特定の薬液の調製を緊急に行いたい等のユーザMの要求に応じることが可能となり、緊急対応が可能となる。
【0139】
以上、添付図面を参照しながら一実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されるものではない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
【0140】
例えば、
図11に示すように、調製室4の筐体40の壁部41にパスボックス47を設けてもよい。パスボックス47は、外側の扉47aと図示しない内側の扉とを備えており、調製室4内への物品の出し入れ等に使用される。また、窓42にグローブポート48を設けてもよい。グローブポート48の内側には図示しないグローブが設けられている。ユーザMは、例えば、パスボックス47に清掃用の布を入れておき、上記グローブポート48に手を挿入してグローブを用いてパスボックス47より布を取り出し、調製室4内の清掃等の作業を行うことができる。
【0141】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」という意味である。
【0142】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0143】
<10.コントローラのハードウェア構成例>
次に、
図10を参照しつつ、上記で説明したCPU901が実行するプログラムにより実装された各動作制御部301〜303等による処理を実現するコントローラ300のハードウェア構成例について説明する。
【0144】
図10に示すように、コントローラ300は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、ストレージ装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0145】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、ストレージ装置917等の記録装置に記録しておくことができる。
【0146】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体925に、一時的又は永続的に記録しておくこともできる。このようなリムーバブル記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらのリムーバブル記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
【0147】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
【0148】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
【0149】
そして、CPU901が、上記記録装置に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の各動作制御部301〜303等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置からプログラムを、直接読み出して実行してもよく、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置に記録せずに直接実行してもよい。
【0150】
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0151】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置やリムーバブル記録媒体925に記録させてもよい。