(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636701
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】笠木
(51)【国際特許分類】
E04D 13/15 20060101AFI20200120BHJP
E04F 11/18 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
E04D13/15 301A
E04D13/15 301Z
E04F11/18
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-30166(P2015-30166)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-151159(P2016-151159A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112185
【氏名又は名称】ビニフレーム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】特許業務法人みなみ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】稲沢 衛
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 学
(72)【発明者】
【氏名】安藤 尚
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−203325(JP,U)
【文献】
実開昭55−035120(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0235578(US,A1)
【文献】
実開平02−134233(JP,U)
【文献】
特開2003−003628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/15
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
笠材と、取付金具と、笠材よりも軟質な消音ガイド部材を備えており、取付金具は、笠材を躯体に取り付けるものであり、消音ガイド部材は、笠材の長手方向に延びる本体部と、本体部の両端から笠材の長手方向に直交して延びる挟持部を有しており、取付金具に消音ガイド部材を取り付けてあって、消音ガイド部材の両端の挟持部が笠材の長手方向の両側から取付金具を挟んでおり、笠材と消音ガイド部材の本体部の一方に笠材の長手方向に延びる溝状の被係止部を設けてあり、他方に被係止部に向けて突出する係止部を設けてあり、係止部は笠材の長手方向にのみ摺動可能な状態で被係止部に挟み込まれていて、笠材が取付金具に対して笠材の長手方向にのみ移動可能に保持されていることを特徴とする笠木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おもにバルコニーや通路等に設置される笠木に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般住宅や集合住宅に設置されるバルコニーあるいは、通路等の躯体の立ち上がりの上に、住人や通行人が手をかけるための笠木が取り付けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の笠木の中には、笠材がアルミやスチール製の長尺な金属押出し材から成形されたものがある。このような笠木にあっては、日照等により熱を帯びた笠材が熱伸びし、さらに、上記の熱膨張した笠材が冷えて収縮したとき等に、
図3(a)のように、笠材の弾性復帰に伴って取付金具等と擦れ合って甲高い金属音が発生する。このことから、笠木を設置している建物の住人や、あるいは、設置場所の近隣住人にとっては、上記の金属音が耳障りで不快感を伴う問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、笠材の熱延びと収縮を原因とする不快な金属音の発生を抑えることのできる笠木を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明は、笠材と、取付金具
と、笠材よりも軟質な消音ガイド部材を備えており、取付金具は、笠材を躯体に取り付けるものであり、
消音ガイド部材は、笠材の長手方向に延びる本体部と、本体部の両端から笠材の長手方向に直交して延びる挟持部を有しており、取付金具に消音ガイド部材を取り付けてあって、消音ガイド部材の両端の挟持部が笠材の長手方向の両側から取付金具を挟んでおり、笠材と
消音ガイド部材の本体部の一方に笠材の長手方向に延びる溝状の被係止部を設けてあり、他方に被係止部に向けて突出する係止部を設けてあり、係止部は笠材の長手方向にのみ摺動可能な状態で被係止部に挟み込まれていて、笠材が取付金具に対して笠材の長手方向にのみ移動可能に保持され
ていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平時は、消音ガイド部材で笠材を挟むように保持しているが、日照等で笠材が熱膨張したときに、笠材が消音ガイド部材を挟み込む状態で保持したままで笠材の長手方向への熱伸びのみを許容する。これにより、笠材が弾性復帰したときや、あるいは、笠材が収縮したときに、取付金具と擦れ合うような金属音の発生を抑えられるので、住人や周辺の住民に不快感を与えない笠木を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本実施による笠木の全体を示す縦断面図であり、(b)は、(a)中A―A線断面図である。
【
図2】(a)は、
図1中Bを拡大して示す縦断面図であり、(b)は、消音ガイド部材の取付金具への取付状態を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、従来の笠木の笠材が熱伸びした状態を簡略化して示す縦断面図であり、(b)は、本実施による笠木の笠材が熱伸びしたときの状態を簡略化して示す縦断面図である。
【
図4】本実施による笠木の全体を示す斜視図である。
【
図5】本発明の他の実施形態であり、(a)は、縦断面図であり、(b)は、取付金具と消音ガイド部材の取付状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5中Cを拡大し、笠木の笠材の熱伸び時の作用を示す一部を切欠した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の笠木について、バルコニーの手摺に適用した実施形態を各図面に基づいて説明する。
【0012】
本実施による笠木は、
図1(a)のように、笠材1と、取付金具2と、消音ガイド部材3とから構成されている。
そして、上記の笠木を施工する場所については、本実施では、
図4のように、手摺壁とも呼ばれる、躯体から立ち上がる壁体(躯体)4の上端に設置するものである。
笠材1は、
図1(a)のように、巾広でほぼコ字状をなしており、さらに、上記の笠材1下端部には、笠材1の巾方向に間隔をあけた二箇所に金具取付片5,5が垂下している。また、金具取付片5,5には、それぞれが対面する向きに突出した係止部8,8がそれぞれ設けてある。さらに、上記の係止部8は、笠材1の長手方向に連続して設けてある。
【0013】
取付金具2は、下端部が壁体4の上端に安定して載置できるように扁平である。また、上記の取付金具2の扁平な部位には、上下に貫通する挿通孔10が設けてあり、ネジやビス、釘等の固定具11を挿通して壁体4の上端に対する固定を容易にしている。さらに、上記の取付金具2の両側端部には、ほぼ垂直に起立した笠材取付片6,6がそれぞれ設けてある。また、取付金具2の各笠材取付片6,6の外周部には、それぞれが内向きに窪んだ溝部7を有しており、各溝部7,7には、消音ガイド部材3,3が嵌合される。
【0014】
消音ガイド部材3は、硬質の樹脂で成形されており、取付金具2の笠材取付片6の溝部7に嵌り込むブロック状をなして
いて、笠材1の長手方向に延びる本体部31と、本体部31の両端から笠材1の長手方向に直交して延びる挟持部32を有している。また、消音ガイド部材3の外周部には、笠材1の係止部8と係止する被係止部9が設けてある。消音ガイド部材3は、
本体部31が取付金具2の溝部7に嵌め込まれ
、本体部31の両端の挟持部32が笠材1の長手方向の両側から取付金具2を挟むが、消音ガイド部材3が嵌合したときには、消音ガイド部材3が被係止部9の外周側よりも僅かに張り出した状態で配置される。これにより、消音ガイド部材3の被係止部9が、取付金具2よりも優先して笠材1の係止部8に係止される。
【0015】
上記のように形成した笠木は、笠材1の熱伸びが起きたときに以下のような作用、効果を奏する。
笠材1が熱伸びしたときに、笠材1の係止部8と係止している消音ガイド部材3の被係止部9が硬質な樹脂で成形してあることから、笠材1が熱伸びしたときに、笠材1よりも柔らかい樹脂製の被係止部9による拘束力を上回って被係止部9に沿ってほぼ水平に摺動する。これにより、係止部8と被係止部9との係止状態を保ったまま、笠材1の熱伸びが遮られることなく許容されることで、
図3(b)のように、笠材1の弾性変形が大きくならない。これに対し、従来、取付金具2で強固に固定されていた笠材1では、
図3(a)のように、熱伸びを許容されずに弾性変形して彎曲した笠材1が復帰し、取付金具2と擦れ合って大きな金属音が発生したが、本実施による笠木では、消音ガイド部材3が笠材1と取付金具2との取付箇所に配置されることで、不快な金属音の発生が抑えられる。
【0016】
図5(a)(b)に示すものは、本発明の他の実施形態の笠木である。
本笠木は、取付金具2の両側端部の下端に取り付けた消音ガイド部材13により、笠材1を支持するものである。取付金具2の両側端部12,12が笠材1の内周側に弾性的に嵌合していることで、取付金具2の両側端部12,12の下端に取り付けた消音ガイド部材13は、笠材1の両側端部に設けてある受部14に対して抜け出し不能な状態で係止する。しかしながら、受部14は、笠材1の長手方向に沿って連続して設けてあることから、笠材1と取付金具2は、笠材1の長手方向にのみスライドさせることが可能となる。これにより、
図6のように、笠材1が熱膨張したときに、取付金具2による保持を維持したまま、笠材1の熱伸びは許容され、そのまま笠材1の長手方向に熱伸びする。このことから、笠材1と取付金具2が強く擦れ合わずに大きな金属音を発することがなく、上記の実施形態と同様に、笠材1の周辺に不快な音を発しない構造となる。
尚、符号15は、笠材1と取付金具13との接触箇所を緩衝する緩衝部材である。
【0017】
本発明の笠木は、笠材1の長手方向に沿って取付金具2が笠材1を係止する構造の笠木であれば、笠材1、取付金具2、消音ガイド部材3等の形状や大きさについて上記の各実施形態に限定されない。
このうち、消音ガイド部材3は、上記の実施形態では取付金具2側に嵌合してあるが、笠材1側に設けてあってもよく、笠材1と取付金具2の間に配置してあるとともに、笠材1と取付金具2のそれぞれを取り付けることのできる構造であればよい。さらに、消音ガイド部材3は、上記実施形態では樹脂で成形してあるが、笠材1の熱伸びを許容しつつ、消音ガイド部材3による笠材1と取付金具2との保持状態を維持できるものであればよい。また、本発明による笠木は、上記実施形態ではバルコニーに適用したものについて説明しているが、通路やスロープ、階段、間仕切り等、その適用範囲を限定するものではない。笠材1や取付金具2の材質についても、上記実施形態ではアルミ製のものを使用したがその他の金属が使用されていてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 笠材
2 取付金具
3,13 消音ガイド部材
4 壁体
5 金具取付片
6 笠材取付片
7 溝部
8 係止部
9 被係止部
10 挿通孔
11 固定具
12 両側端部
14 受部