【実施例】
【0031】
1.インフルエンザウイルス検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
1−1.合成
1−1−1.シロール骨格の合成
1−1−1−1.ジメチルビス(フェニルエチニル)シランの合成
アルゴン風船、同圧滴下漏斗、セプタムを装着した2口ナス型フラスコの系内をアルゴン置換した。フェニルアセチレン(1.48 mL, 13.6 mmol)を入れ、Dry-ジエチルエーテル20 mLに溶解した。氷浴下、ブチルリチウム(8.75 mL, 13.6 mmol)を滴下し、1時間攪拌した。さらに、氷浴下でDry-ジエチルエーテル10 mLに溶解したジクロロジメチルシラン(0.654 mL, 5.42 mmol)を滴下し、室温で16.5時間攪拌した。1規定塩酸8.0 mLと水8.0 mLを氷浴下で滴下することにより反応を終了させた。酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、エタノールを用いた再結晶によって精製し、目的化合物(1)を白色針状結晶として収率78%で1.38 g得た。
【化12】
1−1−1−2.3-ブロモベンジルアジドの合成
アルゴン風船、蛇管、セプタムを装着した2口ナス型フラスコに3-ブロモベンジルブロマイド(2.0 g, 8.0 mmol)とアジ化ナトリウム(2.1 g, 32 mmol)を入れて系内をアルゴン置換した。DMSO 32 mLを加えた後、70で17.5時間加熱還流し、水40 mL加えることによって反応を終了させた。ジクロロメタンで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 9:1)を用いて精製することによって、目的化合物(2)を透明液体として収率87%で1.48 g得た。
【化13】
【0032】
1−1−1−3.シロール環形成反応 [TPS(2,5)-N
3]
アルゴン風船、セプタムを装着したナス型フラスコにナフタレン(984 mg, 7.68 mmol)を入れて系内をアルゴン置換した。細かく切ったリチウム(53 mg, 7.68 mmol)を加えて再度アルゴン置換した後、Dry-THF 8.0 mLを加えて1.5分間超音波処理した。室温で3時間攪拌した後、アルゴン風船、同圧滴下ロート、セプタムを装着した3口ナス型フラスコに移した。そこにDry-THF 5.0 mLに溶解した化合物(1)(500 mg, 1.92 mmol)を滴下し、室温で1時間攪拌した。氷浴下、Dry-THF 25 mLとTMEDA亜鉛錯体(1.94 g, 7.68 mmol)を加えて室温まで自然昇温させた後、1時間攪拌した。塩化パラジウム触媒(67 mg, 0.10 mmol)とDry-THF 25 mLに溶解した化合物(2) (855 mg, 4.0 mmol)を滴下し、65で14.5時間加熱還流した。氷浴下で1規定塩酸 90 mLを加えることによって反応を終了させた。ジクロロメタンで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 10:1)で粗精製し、得られた結晶をヘキサンで洗浄することによって、目的化合物(3)を黄色結晶として収率55%で558 mg得た。
【化14】
【0033】
1−1−2.ヘマグルチニン(HA)結合性ペプチド誘導体の合成
s2ペプチド保護体(配列番号1のペプチドの保護体)を以下に示す経路で合成した(スキーム3)
【化15】
Fmoc固相合成法を用いて、s2ペプチド保護体(Fmoc-Ala-Arg(Pmc)-Leu-Pro-Arg(Pmc)-OH)(4)の合成を実施した。
【0034】
初めに、樹脂への第1アミノ酸の導入を行なった。2-クロロトリチルクロリド樹脂(125 mg, 0.15 mmol)をPD-10カラムに入れた。このカラムを3本用意した。Dry-DCM 3 mLを加えて1時間静置し、樹脂を膨潤させた。そのDry-DCMを吸引した後、直ちに次の操作を行った。Fmoc-Arg(Pmc)-OH (150 mg, 0.225 mmol)とDIEA (131, 0.75 mmol)のDry-DCM 1.25 mL溶液をカラムに加え、室温で2時間軽く揺らしながら反応させ、DCM 3 mLで3回洗浄した。樹脂の未反応残基をつぶすために、DCM : MeOH : DIEA (17:2:1 (v/v/v) 5 mL)で3回洗浄した後、DCM 5 mL, DMF 5 mL, DCM 5 mL, tBuOMe 5 mL, DCM 5 mLを用いて順次3回ずつ洗浄した。その後、真空乾燥させることによってArg残基の導入率(56%)を算出した。
【0035】
次に、伸長反応を行なった。カラム中のFmoc-Arg(Pmc)-resinをDry-DCM 3 mLで10分間静置し、樹脂を膨潤させた。そのDCMを吸引して、さらにDry-DMF 3 mLで洗浄した。Fmoc基の脱保護を行なうため、20% PIP/DMF溶液 3 mLを加え1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/ DMF溶液 3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、Dry-DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Pro-OH (152 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のdry-DMF 4.5 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、未反応アミノ基の有無を確認するためにKaiser testを行なった。Kaiser testは、ニンヒドリン-エタノール溶液、フェノール-エタノール溶液、シアン化カリウム-ピリジン溶液をそれぞれ20ずつガラスチューブに入れ、微量の樹脂を加えてドライヤーを用いて約1分間加熱した。溶液が濃赤-濃青色に変化した場合は、もう一度縮合反応を行い、溶液の色が変化しない場合は次のアミノ酸の伸長反応を行った。
なお、この操作を残り3つのアミノ酸で繰り返した。
【0036】
Kaiser test後、20% PIP/DMF溶液3 mLを加え1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/ DMF溶液3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Leu-OH (160 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のDry-DMF 4.5 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、Kaiser testを行なった。
Kaiser test後、20% PIP/DMF溶液3 mLで1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/DMF溶液3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Arg(Pmc)-OH (300 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のDry-DMF 5.0 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、Kaiser testを行なった。
Kaiser test後、20% PIP/DMF溶液3 mLで1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/DMF溶液3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Ala-OH (141 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のDry-DMF 4.0 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、Kaiser testを行なった。
【0037】
次に、樹脂からのペプチド切り出しを行なった。ペプチドが連結した樹脂1本のカラムにまとめ、DCM 5 mLで3回洗浄した。10% Pyridine/MeOH 1 mLを加えた試験管を10本用意した。1% TFA/DCM 5 mLをカラムに加えて1分間静置した後、試験管内に流して中和した。この操作を10回繰り返した。
10本のフラクションをナス型フラスコに回収し、溶媒を留去した。ピリジンを除くために酢酸エチルと水を加えて有機層を分取した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた。溶媒を留去し、HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(4)を白色粉末として収率98%で343 mg得た。
【0038】
1−1−3.アルキンリンカー保護体の合成
s2ペプチドとシロール骨格を連結するためのHuisgen反応を行うにあたって、s2ペプチドにアルキン官能基を有するリンカーを修飾した。
【化16】
アルゴン風船、セプタムを装着した2口ナス型フラスコにBoc-Ahx-OH (350 mg, 1.51 mmol), HBTU (857 mg, 2.26 mmol), HOBt (346 mg, 2.26 mmol)を入れ、系内をアルゴンで置換した。Dry-DMF 40 mLを加えてしばらく攪拌した後、DIEA (0.78 mL, 4.53 mmol), プロパルギルアミン(145L, 2.26 mmol)を加えて室温で2日間攪拌した。冷水を加えることによって反応を終了させ、析出物を濾取した。そのまま真空乾燥させることにより、目的化合物(5)(BOC-Ahx-propargy)を白色固体として収率98%で397 mg得た。
【0039】
1−1−4.アルキンリンカーの脱保護
次に、化合物(5)のN末端Boc保護基の除去操作を実施した。
【化17】
ナス型フラスコに化合物(5)(300 mg, 1.12 mmol)を入れ、TFA (1.6 mL, 20 mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を留去した後、氷浴下でジエチルエーテル50 mLを加えて析出物を濾取することによって目的化合物(6)を白色粉末として収率98%で311 mg得た。
【0040】
1−1−5.s2ペプチド保護体へのリンカー導入
合成したs2ペプチド保護体(4)に対してアルキンリンカー(6)を縮合反応させることにより、反応生成物を得た。
【化18】
アルゴン風船、セプタムを装着したナス型フラスコに化合物(4)(430 mg, 0.315 mmol)と化合物(6)(133 mg, 0.472 mmol)を入れて系内をアルゴン置換した。Dry-DMF 25 mLに溶解させたHBTU (179 mg, 0.472 mmol), HOBt (72 mg, 0.472 mmol), DIEA (244L, 1.42 mmol)を氷浴下で加えて、室温で3日間攪拌した。冷水100 mLを加えることにより反応を終了させ、析出物を濾取した。凍結乾燥した後、HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(7)(Fmoc-Ala-Arg(Pmc)-Leu-Pro-Arg(Pmc)-Ahx-propargyl)を白色粉末として収率89%で423 mg得た。
【0041】
1−1−6.アルキンリンカー含有s2ペプチドの脱保護 [s2 peptide-Ahx-propargyl]
化合物(7)のN末端Fmoc基を除去するためにピペリジンを作用させた。
【化19】
ナス型フラスコに化合物(7)(418 mg, 0.276 mmol)を入れ、20% PIP/DMF 10 mL加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を留去した後、脱保護カクテル7 mLを加えてさらに室温で6時間攪拌した。溶媒を留去し、凍結乾燥した後、冷ジエチルエーテル60 mLを加えて析出物を濾取した。HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(8)を白色粉末として収率89%で272 mg得た。
【0042】
1−1−7.シロール骨格へのペプチド導入 [TPS(2,5)-s2]
シロール誘導体(3)のアジド基とs2ペプチド誘導体(8)のアルキン官能基をHuisgen反応させることによって、s2ペプチド修飾型シロール誘導体(9)の合成を行った。
【化20】
アルゴン風船、蛇管、セプタムを装着した2口ナス型フラスコに化合物(3)(20 mg, 38.1 mol)と化合物(8)(93 mg, 84 mol)を入れDMF 12 mLに溶解させた。水12 mLに溶解した硫酸銅五水和物(9.5 mg, 38.1 mol)とアスコルビン酸ナトリウム(17 mg, 84 mol)を加えて40-45 で45時間攪拌した。溶媒を留去し、凍結乾燥させた後、HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(9)を黄色粉末として収率58%で60 mg得た。
【0043】
1−2.検出試験
1−1で合成した化合物(9)を用いて、異なる複数のインフルエンザウイルス株(H1N1、H3N2、H5N1、H7N7)のHAタンパク質との接着による蛍光強度の変化
化合物(9)に対して、HA(H1N1、H3N2、H5N1またはH7N7)タンパク質溶液を加えて、室温にて5分間静置させた後、PBS buffer を用いて計100μLまで希釈したサンプルをPL(フォトルミネッセンス)測定(励起波長:365nm)を行った。
図1は、インフルエンザウイルスH1N1株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)2.5μLに、5.0μMのHAタンパク質を1.0、3.25、7.5、15、30、60μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
図2は、インフルエンザウイルスH3N2株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)5.0μLに、5.0μMのHAタンパク質を3.0、6.25、12.5、25、50μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
図3は、インフルエンザウイルスH5N1株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)5.0μLに、5.0μMのHAタンパク質を1.0、3.75、7.5、15、30、60μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
図4は、インフルエンザウイルスH7N7株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)5.0μLに、5.0μMのHAタンパク質を1.0、3.75、7.5、15、30、60μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
【0044】
いずれの株のHAを加えた場合においても、HAの量が増加するにつれて、蛍光強度が強くなることが確認された。
すなわち、インフルエンザウイルスのHAと特異的に結合するペプチド(配列番号1)を有する化合物(9)は、インフルエンザウイルスHAと結合することで、蛍光を発し、HAの量が増加するにつれて、その蛍光強度が増大することが明かとなった。
【0045】
この検出試験は、インフルエンザウイルスのHAに特異的なペプチドを有する式( I )の化合物を用いたが、ペプチド部分を、種々のウイルスまたは微生物が有するタンパク質等に特異的に結合するペプチド、あるいは、糖鎖を使用することで、式( I )の化合物により、対象のウイルスまたは微生物を検出することが可能であることを示すものである。
検出対象の量依存的に蛍光が増大することから、定量的にウイルスまたは微生物を検出することも可能である。
【0046】
2.デングウイルス検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
2−1.合成
シロール骨格の合成については、上記「1−1−1.シロール骨格の合成」を参照のこと。
【0047】
2−1−1.デングウイルスンのエンベロープタンパク質に結合するペプチド誘導体の合成
EFペプチド(デングウイルスエンベロープタンパク質結合性ペプチド)(Glu−Phe)誘導体を以下に示す経路で合成した(スキーム4)。
【化21】
s2ペプチド誘導体の合成法と同様に、Fmoc固相合成法を利用してEFペプチド誘導体(10)の合成を実施した。
2-chlorotritylchloride resinに対して第1アミノ酸であるFmoc-Phe-OHを導入し、Fmoc基を除去した。その後、第2アミノ酸であるFmoc-Glu(OtBu)-OHをカップリングさせ、Fmoc基を除去した。続いて、アルキンリンカーである5-Hexynoic acidをカップリングさせた後、脱樹脂反応を行った。得られた生成物を抽出して凍結乾燥し、HPLCを用いて分析、精製することによって、収率95%で目的化合物(10)を白色粉末として得た(スキーム4)。
【0048】
次に、Glu側鎖のtBuエステル基の脱保護反応を実施した。得られたEFペプチド保護体(10)に対して、TFAを作用させることにより、tBu基を除去し、収率78%で目的化合物(11)を白色粉末として得た。
【化22】
【0049】
2−1−2.シロール骨格へのペプチド導入 [TPS(2,5)-EF]
シロール誘導体(3)とEFペプチド誘導体(11)をDMF/H
2O混合溶媒に溶解し、別途調製した触媒水溶液を加えて反応を開始させた。室温で4時間撹拌した後、反応溶液を凍結乾燥して得られた生成物をHPLCにより分析、精製することによって収率96%で目的化合物(12)を薄黄色粉末として得た。
【化23】
【0050】
3.腐性ブドウ球菌検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
3−1.合成
3−1−1.シロール骨格の合成
1−ブロモ−3,5−ビス(ブロモメチル)ベンゼンに対して、アジ化ナトリウムをDMSO中70℃で14時間作用させることで反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的化合物(23)を収率97%で得た。
【化24】
【0051】
次に、2,5-位にアジド基を2つ有するテトラフェニルシロール誘導体の合成を実施した。
化合物(1)に対してリチウムナフタレニドを作用させることによりシロール環を形成させた後、塩化亜鉛を加えることにより2,5-位亜鉛体のシロール誘導体とした。そこに、塩化パラジウム触媒存在下、化合物(23)を作用させることによって反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーと再結晶によって精製し、目的化合物(24)を収率44%で得た。
【化25】
【0052】
3−1−2.腐性ブドウ球菌に結合する糖鎖(N-アセチルラクトサミン誘導体)の合成
腐性ブドウ球菌に結合する糖鎖(N-アセチルラクトサミン誘導体)を8段階の反応を経て合成した。まず、ラクトース完全アセチル体(13)を臭化水素 (30% 酢酸溶液) を作用させ、残渣にジエチルエーテルを加えて、不純物を溶解させることで精製し、目的化合物(14)を収率 91 % で得た。
【化26】
次に、 亜鉛、酢酸ナトリウム、硫酸銅五水和物を水中で懸濁し、その系中に化合物(14)の酢酸溶液を滴下した。3時間撹拌した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し目的化合物(15)を収率53 %で得た。
【化27】
【0053】
化合物(15)にCAN(硝酸セリウムアンモニウム)とアジ化ナトリウムを作用させることで反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(16)を収率67%で得た。
【化28】
【0054】
化合物(16)に塩化テトラエチルアンモニウムを作用させ、反応生成物を得た。残渣にジエチルエーテルを加えて、不純物を溶解させることで目的化合物(17)を収率 79 % で得た。
【化29】
【0055】
化合物(17)をチオ酢酸と作用させ、反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(18)を収率63 %で得た。
【化30】
【0056】
化合物(18)にN -ヨードスクシンイミド とトリフルオロメタンスルホン酸を作用させて反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(19)を収率80 %で得た。
【化31】
【0057】
化合物(19)にプロパルギルアルコールとCSA を作用させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(20)を収率 73 % で得た。
【化32】
【0058】
化合物(20)をメタノール中で、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム水溶液と作させ反応生成物を得た。陽イオン交換樹脂でろ過し、凍結乾燥して目的化合物(21)を収率89% で得た。
【化33】
【0059】
3−1−3.シロール骨格への糖鎖導入
シロール誘導体(24)のアジド基とN -アセチルラクトサミン誘導体(21)のアルキン官能基をHuisgen反応させることによって、LacNAc修飾型シロール誘導体(25)の合成を行った。
シロール誘導体(24)と 化合物(21)をDMSO、水の混合溶媒に溶解し、しばらく撹拌した。硫酸銅五水和物、アスコルビン酸ナトリウムを溶解させた水を加えて50℃で19時間反応させた。TLCにおいて出発物である化合物(24)由来のスポットがほとんど消失したことを確認して溶媒を留去した後、凍結乾燥させた。HPLCを用いて精製することにより収率7%で目的化合物を得た。
【化34】
【0060】
4.ノロウイルス検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
4−1.合成
シロール骨格の合成については、上記「3−1−1.シロール骨格の合成」を参照のこと。
【0061】
4−1−1.ノロウイルスの3Cプロテアーゼに結合するペプチド誘導体の合成
Fmoc固相合成法を用いて、ノロウイルスの3Cプロテアーゼに特異的に接着するEFQLQペプチド(配列番号6)の保護体(26)の合成を行った(スキーム5)。詳細については、「1−1−2.ヘマグルチニン(HA)結合性ペプチド誘導体の合成」を参照のこと。
【化35】
【0062】
次に、保護ペプチド(26)にTFAとTISを加え、室温下で1時間反応させた。Dry-ジエチルエーテルで複数回洗浄して凍結乾燥した後、HPLCを用いて精製することによって目的化合物(27)を収率60%で得た。
【化36】
【0063】
4−1−2.シロール骨格へのペプチド導入
シロール誘導体(24)のアジド基とEFQLQペプチド誘導体(27)のアルキン官能基をHuisgen反応させることによって、s2ペプチド修飾型シロール誘導体(28)の合成を行った。
【化37】
シロール誘導体(24)とペプチド誘導体(27)をDMFに溶解させたのち、硫酸銅五水和物、アスコルビン酸ナトリウムを溶解させた水を加えて40で4時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を一晩凍結乾燥させた。HLPCを用いて精製することによって目的化合物(28)収率36%で得た。