特許第6636732号(P6636732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シマノの特許一覧

<>
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000002
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000003
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000004
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000005
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000006
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000007
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000008
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000009
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000010
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000011
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000012
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000013
  • 特許6636732-自転車の制御システム 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636732
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】自転車の制御システム
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20200120BHJP
   B62M 25/08 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   B62M6/45
   B62M25/08
【請求項の数】18
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-131899(P2015-131899)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-13624(P2017-13624A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年6月9日
【審判番号】不服2018-17286(P2018-17286/J1)
【審判請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】臼井 真
(72)【発明者】
【氏名】米虫 崇
(72)【発明者】
【氏名】西原 大平
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 藤井 昇
【審判官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−120803(JP,A)
【文献】 特開2008−74118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の走行状態に関するパラメータおよび閾値に基づいて自転車用コンポーネントが所定の動作を実行するように前記自転車用コンポーネントを制御する制御部を備える自転車の制御システムであって、
前記制御部は、操作部が操作されたとき、前記操作部の前記操作に基づいて前記自転車用コンポーネントに前記所定の動作を実行させるとともに前記閾値を変更し、
前記操作部が操作されたときの前記閾値の変化量は、前記操作部の操作状態に基づいて決定される、自転車の制御システム。
【請求項2】
前記操作部は、第1の操作部および第2の操作部を含み、
前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき前記閾値を小さくし、前記第2の操作部が操作されたとき前記閾値を大きくする、請求項1に記載の自転車の制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が操作されてから、前記第1の操作部および前記第2の操作部の他方が操作されるまで、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が操作された回数をカウントアップする、請求項2に記載の自転車の制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が入力された後に前記第1の操作部および前記第2の操作部の他方が操作されたとき、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が操作された回数を初期化する、請求項3に記載の自転車の制御システム。
【請求項5】
前記閾値の変化量は、前記操作部の操作回数、前記操作部の操作時間、および、前記操作部の操作量の少なくとも1つに基づいて決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自転車の制御システム。
【請求項6】
前記閾値の変化量は、前記操作部の操作回数に基づいて決定され、
前記制御部は、連続して前記第1の操作部が操作されたとき、前記第1の操作部が入力された回数が多くなるほど、前記閾値の変化量の絶対値を大きくし、連続して前記第2の操作部が操作されたとき、前記第2の操作部が操作された回数が多くなるほど、前記閾値の変化量の絶対値を大きくする、請求項2を直接的または間接的に引用する請求項5に記載の自転車の制御システム。
【請求項7】
前記閾値は、第1の値および前記第1の値よりも小さい第2の値を含み、
前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき、前記第1の値および前記第2の値の少なくとも一方を小さくし、前記第2の操作部が操作されたとき、前記第1の値および前記第2の値の少なくとも一方を大きくする、請求項2、または、請求項2を直接的または間接的に引用する請求項3〜6のいずれか一項に記載の自転車の制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき、前記第1の値の変化量および前記第2の値の変化量が等しくなるように前記第1の値および前記第2の値を変更し、
前記第2の操作部が操作されたとき、前記第1の値の変化量および前記第2の値の変化量が等しくなるように前記第1の値および前記第2の値を変更する、請求項7に記載の自転車の制御システム。
【請求項9】
前記自転車用コンポーネントは、前記自転車の変速比を変更する電動変速機である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自転車の制御システム。
【請求項10】
前記自転車の走行状態に関するパラメータは、前記自転車の車速であり、
前記制御部は、前記自転車の車速が前記第1の値以上のとき前記自転車の変速比が大きくなるように前記電動変速機を制御し、前記自転車の車速が前記第2の値以下のとき前記自転車の変速比が小さくなるように前記電動変速機を制御する、請求項7を直接的または間接的に引用する請求項9に記載の自転車の制御システム。
【請求項11】
前記自転車の走行状態に関するパラメータは、前記自転車のクランクの回転数であり、
前記制御部は、前記自転車のクランクの回転数が前記第1の値以上のとき前記自転車の変速比が大きくなるように前記電動変速機を制御し、前記自転車のクランクの回転数が前記第2の値以下のとき前記自転車の変速比が小さくなるように前記電動変速機を制御する、請求項7を直接的または間接的に引用する請求項9に記載の自転車の制御システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき、前記自転車の変速比が大きくなるように前記電動変速機を制御し、
前記第2の操作部が操作されたとき、前記自転車の変速比が小さくなるように前記電動変速機を制御する、請求項10または11に記載の自転車の制御システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記電動変速機を動作させて前記変速比を変更してから所定の期間が経過するまで、前記電動変速機を動作させない、請求項9〜12のいずれか一項に記載の自転車の制御システム。
【請求項14】
前記自転車には、前記自転車に入力される人力駆動力をアシストするアシストモータがさらに設けられ、
前記制御部は、前記人力駆動力に対する前記アシストモータのトルクの大きさが異なる複数の制御モードを備え、前記制御モードを変更するとき、前記制御モードに応じて前記第1の値および前記第2の値を補正する、請求項7を直接的または間接的に引用する請求項9〜13のいずれか一項に記載の自転車の制御システム。
【請求項15】
前記第1の値および前記第2の値は、前記人力駆動力に対する前記アシストモータのトルクが大きい前記制御モードほど小さくなるように補正される、請求項14に記載の自転車の制御システム。
【請求項16】
前記自転車用コンポーネントは、前記自転車に入力される人力駆動力をアシストするアシストモータである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自転車の制御システム。
【請求項17】
前記自転車の走行状態に関するパラメータは、前記自転車の走行負荷であり、
前記制御部は、前記自転車の走行負荷が前記第1の値よりも大きいとき、前記アシストモータのトルクが大きくなるように前記アシストモータを制御し、前記制御部は、前記自転車の走行負荷が前記第2の値よりも小さいとき、前記アシストモータのトルクが小さくなるように前記アシストモータを制御する、請求項7を直接的または間接的に引用する請求項16に記載の自転車の制御システム。
【請求項18】
前記制御部は、前記自転車の走行負荷が前記第1の値から前記第2の値までの範囲内にあるときに前記第1の操作部が操作されたとき、前記アシストモータのトルクが大きくなるように前記アシストモータを制御し、前記自転車の走行負荷が前記第1の値から前記第2の値までの範囲内にあるときに前記第2の操作部が操作されたとき、前記アシストモータのトルクが小さくなるように前記アシストモータを制御する、請求項17に記載の自転車の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自転車の走行状態に関するパラメータを用いて自転車の自転車用コンポーネントを制御する制御部を備える自転車の制御システムが知られている。例えば、特許文献1の自転車の制御システムは、クランクの回転数と閾値とを比較して、クランクの回転数が所定の範囲内に維持されるように自転車用コンポーネントである電動変速機を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平10−511621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者によって好ましいクランクの回転数は異なる。しかし、上記自転車の制御システムでは閾値が一定であり、クランクの回転数が常に一定の所定の範囲に維持されるため、ユーザビリティに改善の余地がある。なお、電動変速機に限らず、自転車の走行状態に関するパラメータと予め設定された閾値に基づいて動作する自転車用コンポーネントにおいても同様の問題が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、運転者に適した閾値を用いて自転車用コンポーネントを制御できる自転車の制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本発明の一形態に従う自転車の制御システムは、自転車の走行状態に関するパラメータおよび閾値に基づいて自転車用コンポーネントを制御する制御部を備える自転車の制御システムであって、前記制御部は、操作部が操作されたとき、前記閾値を変更し、前記操作部が操作されたときの前記閾値の変化量は、前記操作部の操作状態に基づいて決定される。
【0007】
〔2〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記操作部は、第1の操作部および第2の操作部を含み、前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき前記閾値を小さくし、前記第2の操作部が操作されたとき前記閾値を大きくする。
【0008】
〔3〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記制御部は、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が操作されてから、前記第1の操作部および前記第2の操作部の他方が操作されるまで、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が操作された回数をカウントアップする。
【0009】
〔4〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記制御部は、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が入力された後に前記第1の操作部および前記第2の操作部の他方が操作されたとき、前記第1の操作部および前記第2の操作部の一方が操作された回数を初期化する。
【0010】
〔5〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記閾値の変化量は、前記操作部の操作回数、前記操作部の操作時間、および、前記操作部の操作量の少なくとも1つに基づいて決定される。
【0011】
〔6〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記閾値の変化量は、前記操作部の操作回数に基づいて決定され、前記制御部は、連続して前記第1の操作部が操作されたとき、前記第1の操作部が入力された回数が多くなるほど、前記閾値の変化量の絶対値を大きくし、連続して前記第2の操作部が操作されたとき、前記第2の操作部が操作された回数が多くなるほど、前記閾値の変化量の絶対値を大きくする。
【0012】
〔7〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記閾値は、第1の値および前記第1の値よりも小さい第2の値を含み、前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき、前記第1の値および前記第2の値の少なくとも一方を小さくし、前記第2の操作部が操作されたとき、前記第1の値および前記第2の値の少なくとも一方を大きくする。
【0013】
〔8〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき、前記第1の値の変化量および前記第2の値の変化量が等しくなるように前記第1の値および前記第2の値を変更し、前記第2の操作部が操作されたとき、前記第1の値の変化量および前記第2の値の変化量が等しくなるように前記第1の値および前記第2の値を変更する。
【0014】
〔9〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記自転車用コンポーネントは、前記自転車の変速比を変更する電動変速機である。
〔10〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記自転車の走行状態に関するパラメータは、前記自転車の車速であり、前記制御部は、前記自転車の車速が前記第1の値以上のとき前記自転車の変速比が大きくなるように前記電動変速機を制御し、前記自転車の車速が前記第2の値以下のとき前記自転車の変速比が小さくなるように前記電動変速機を制御する。
【0015】
〔11〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記自転車の走行状態に関するパラメータは、前記自転車のクランクの回転数であり、前記制御部は、前記自転車のクランクの回転数が前記第1の値以上のとき前記自転車の変速比が大きくなるように前記電動変速機を制御し、前記自転車のクランクの回転数が前記第2の値以下のとき前記自転車の変速比が小さくなるように前記電動変速機を制御する。
【0016】
〔12〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記制御部は、前記第1の操作部が操作されたとき、前記自転車の変速比が大きくなるように前記電動変速機を制御し、前記第2の操作部が操作されたとき、前記自転車の変速比が小さくなるように前記電動変速機を制御する。
【0017】
〔13〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記制御部は、前記電動変速機を動作させて前記変速比を変更してから所定の期間が経過するまで、前記電動変速機を動作させない。
【0018】
〔14〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記自転車には、前記自転車に入力される人力駆動力をアシストするアシストモータがさらに設けられ、前記制御部は、前記人力駆動力に対する前記アシストモータのトルクの大きさが異なる複数の制御モードを備え、前記制御モードを変更するとき、前記制御モードに応じて前記第1の値および前記第2の値を補正する。
【0019】
〔15〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記第1の値および前記第2の値は、前記人力駆動力に対する前記アシストモータのトルクが大きい前記制御モードほど小さくなるように補正される。
【0020】
〔16〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記自転車用コンポーネントは、前記自転車に入力される人力駆動力をアシストするアシストモータである。
〔17〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記自転車の走行状態に関するパラメータは、前記自転車の走行負荷であり、前記制御部は、前記自転車の走行負荷が前記第1の値よりも大きいとき、前記アシストモータのトルクが大きくなるように前記アシストモータを制御し、前記制御部は、前記自転車の走行負荷が前記第2の値よりも小さいとき、前記アシストモータのトルクが小さくなるように前記アシストモータを制御する。
【0021】
〔18〕前記自転車の制御システムの一形態によれば、前記制御部は、前記自転車の走行負荷が前記第1の値から前記第2の値までの範囲内にあるときに前記第1の操作部が操作されたとき、前記アシストモータのトルクが小さくなるように前記アシストモータを制御し、前記自転車の走行負荷が前記第1の値から前記第2の値までの範囲内にあるときに前記第2の操作部が操作されたとき、前記アシストモータのトルクが大きくなるように前記アシストモータを制御する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自転車の制御システムは、運転者に適した閾値を用いて自転車用コンポーネントを制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の自転車の側面図。
図2図1の自転車に搭載される自転車の制御システムのブロック図。
図3図2の制御部により実行される変速処理のフローチャート。
図4図2の制御部により実行される閾値の変更処理のフローチャート。
図5図3の閾値の変更処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
図6図2の制御部により実行される制御モードの切替処理のフローチャート。
図7】第2実施形態の制御システムの記憶部に記憶される閾値と変速段の関係を示すグラフ。
図8】第2実施形態の閾値の変更処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
図9】第2実施形態の制御システムの制御部により実行される制御モードの変更処理のフローチャート。
図10】第2実施形態の制御システムの制御部により実行される閾値の変更処理のフローチャート。
図11】第1の変形例の変速処理のフローチャート。
図12】第2の変形例の変速処理のフローチャート。
図13】第3の変形例の閾値の変更処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
図1を参照して、自転車の制御システムを搭載する自転車の構成について説明する。
自転車10は、前輪12、後輪14、車体16、駆動機構18、アシスト機構20、バッテリユニット22、電動変速機24、トルクセンサ26(図2参照)、変速操作部28、アシスト操作部30、および、自転車の制御システム70を備えている。電動変速機24は、自転車用コンポーネントである。
【0025】
車体16は、フレーム32、フレーム32に着脱可能に接続されるハンドルバー34、および、フレーム32に接続されるフロントフォーク16Aを備えている。フロントフォーク16Aは、フレーム32に支持されて、ハンドルバー34と前輪12の車軸12Aとを接続する。
【0026】
駆動機構18は、クランクアセンブリ36、左右のペダル38、ペダル軸40、リアスプロケット42、および、チェーン44を含む。
クランクアセンブリ36は、フレーム32に回転可能に支持されるクランク軸46、左右のクランクアーム48、および、クランク軸46と接続されるフロントスプロケット50を備えている。左右のクランクアーム48は、クランク軸46に取り付けられている。左右のペダル38は、ペダル軸40まわりに回転可能にクランクアーム48に取り付けられている。
【0027】
フロントスプロケット50は、クランク軸46に連結されている。フロントスプロケット50は、クランク軸46と同軸に設けられる。フロントスプロケット50は、クランク軸46と相対回転しないように連結されてもよいし、クランク軸46が前転するときには、フロントスプロケット50も前転するようにワンウェイクラッチ(図示略)を介して連結されてもよい。
【0028】
リアスプロケット42は、後輪14の車軸14Aまわりに回転可能に、後輪14に取り付けられている。リアスプロケット42は、ワンウェイクラッチ(図示略)を介して後輪14に連結される。チェーン44は、フロントスプロケット50とリアスプロケット42とに巻き掛けられている。ペダル38に加えられる人力駆動力によりクランク軸46が回転するとき、フロントスプロケット50、チェーン44、および、リアスプロケット42によって、後輪14が回転する。
【0029】
アシスト機構20は、自転車10に入力される人力駆動力をアシストするアシストモータ52および駆動回路54(図2参照)を備えている。
アシスト機構20は、アシストモータ52の駆動により、フロントスプロケット50を回転させる人力駆動動力をアシストする。アシスト機構20は、トルクセンサ26(図2参照)により検出される人力駆動力に応じてアシストモータ52を駆動する。アシストモータ52は、電気モータである。アシストモータ52の回転は、図示しない減速機を介してフロントスプロケット50に伝達される。アシストモータ52とフロントスプロケット50との間には、クランクアーム48が前転したときに人力駆動力によってアシストモータ52が回転することを防止するためにワンウェイクラッチ(図示略)が設けられてもよい。
【0030】
バッテリユニット22は、バッテリ56、および、バッテリ56をフレーム32に着脱可能に取り付けるためのバッテリホルダ56Aを備えている。バッテリ56は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリ56は、充電池によって構成される。バッテリ56は、アシストモータ52に電気的に接続されて、アシストモータ52に電力を供給する。
【0031】
電動変速機24は、リアスプロケット42に入力された回転を変速して後輪14に伝達する。電動変速機24は、自転車10の変速比γを変更する。電動変速機24は、後輪14の車軸14Aのハブと一体化された内装変速機である。電動変速機24は、アクチュエータ58(図2参照)および内部に遊星歯車機構を備えている。電動変速機24は、アクチュエータ58(図2参照)が駆動されて電動変速機24の内部の遊星歯車機構を構成する歯車の連結状態が変更されることにより、自転車10の変速比γを段階的に変更する。
【0032】
変速操作部28は、ハンドルバー34に取り付けられている。図2に示すように、変速操作部28は、第1の変速操作部28Aおよび第2の変速操作部28Bを含む。変速操作部28は、操作部である。第1の変速操作部28Aは、第1の操作部である。第2の変速操作部28Bは、第2の操作部である。変速操作部28は、制御システム70の制御部72とケーブルにより電気的に接続されている。運転者により第1の変速操作部28Aが操作されるとき、変速操作部28はシフトアップ信号を制御部72に送信する。なお、シフトアップは変速比γが大きくなる方向への変速である。運転者により第2の変速操作部28Bが操作されるとき、変速操作部28はシフトダウン信号を制御部72に送信する。シフトダウンは変速比γが小さくなる方向への変速である。なお、変速操作部28と制御部72とを無線通信により通信可能に接続することもできる。
【0033】
図1に示すように、アシスト操作部30は、ハンドルバー34に取り付けられている。図2に示すように、アシスト操作部30は、第1のアシスト操作部30Aおよび第2のアシスト操作部30Bを含む。アシスト操作部30は、制御システム70の制御部72(図2参照)とケーブルにより電気的に接続されている。運転者によりアシスト操作部30が操作されるとき、アシスト操作部30はアシストアップ信号またはアシストダウン信号を制御部72(図2参照)に送信する。なお、アシスト操作部30と制御部72(図2参照)とを無線通信により通信可能に接続することもできる。
【0034】
図1に示す車速検出装置60は、前輪12の回転を検出する。車速検出装置60は、前輪12のスポーク12Bに取り付けられる磁石62、および、フロントフォーク16Aに取り付けられる車速センサ64を備えている。車速検出装置60は、ボルトおよびナット、またはバンドなどによって車体16に固定される。なお、車速検出装置60は後輪14の回転を検出するようにしてもよい。この場合、車速センサ64は、フレーム32のチェーンステイまたはアシスト機構20のハウジングに固定される。
【0035】
車速センサ64は、ケーブルにより制御部72(図2参照)と電気的に接続されている。車速センサ64は、磁石62との相対位置の変化に応じた値を出力する素子(図示略)を備えている。素子は、たとえばリードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子などである。車速センサ64は、素子(図示略)の出力を制御部72に出力する。すなわち、車速センサ64は、自転車10の車速Vを反映した信号を出力する。制御部72は、予め記憶されている前輪12の周長に基づいて演算される単位時間あたりの走行距離(以下、「車速V」)を演算する。
【0036】
図3に示すように、制御システム70は、各種演算を行う制御部72を含む。制御システム70は、好ましくはおよび記憶部74を備えている。制御部72は、アシスト機構20(図1参照)のハウジングに設けられる。制御部72は、車速センサ64の出力に基づいてクランク軸46の単位時間当たりの回転数(以下、「クランク回転数N」)を演算する。クランク回転数Nは、自転車10の走行状態を表すパラメータである。
【0037】
制御部72は、自転車10のクランク回転数Nおよび閾値に基づいて電動変速機24を制御する。閾値は、第1の値NXおよび第1の値NXよりも小さい第2の値NYを含む。第1の値NXおよび第2の値NYは記憶部74に記憶される。制御部72は、クランク回転数Nと第1の値NXおよび第2の値NYとの比較結果に基づいて変速比γを大きくするシフトアップ制御、または、変速比γを小さくするシフトダウン制御を実行する。
【0038】
図3を参照して制御部72により実行される変速処理について説明する。なお、本処理は制御部72に電力が供給されている間において、所定周期ごとに繰り返し実行される。なお、制御部72は、マニュアル変速モードおよびオート変速モードを切り替え可能にしてもよい。オート変速モードが設定されているとき、制御部72は自動で電動変速機24を制御可能である。マニュアル変速モードが設定されているとき、制御部72は操作部28からの操作信号のみに基づいて電動変速機24を制御する。すなわち、マニュアル変速モードにおいて制御部72は、運転者の操作に基づいてのみ電動変速機24を制御する。本処理は、制御部72がオート変速モードのときにのみ実行されてもよい。この場合、アシスト操作部30の第1のアシスト操作部30A、第2のアシスト操作部30Bまたはモード変更スイッチを操作することによって、オート変速モードを設定することができる。
【0039】
制御部72は、ステップS11において、電動変速機24を動作させて変速比γを変更してから所定の期間TXが経過したか否かを判定する。制御部72は、所定の期間TXが経過しているとき、ステップS12に進む。制御部72は、所定の期間TXが経過していないとき、本処理を終了する。すなわち、制御部72は、電動変速機24を動作させて変速比γを変更してから所定の期間TXが経過するまで、電動変速機24を動作させない。
【0040】
制御部72は、ステップS12において、クランク回転数Nが第1の値NX以上か否かを判定する。制御部72は、クランク回転数Nが第1の値NX以上のとき、ステップS13に移る。制御部72は、ステップS13において、シフトアップが可能か否かを判定し、シフトアップが可能であると判定すると、ステップS14において変速比γが大きくなるように電動変速機24を制御するシフトアップ制御を実行し、本処理を終了する。制御部72は、現在の変速比が、電動変速機24が実現できる最大の変速比γではないときに、シフトアップ可能であると判定する。ステップS13において、制御部72はシフトアップが可能ではないと判定すると、本処理を終了する。
【0041】
制御部72は、クランク回転数Nが第1の値NX未満のとき、ステップS15においてクランク回転数Nが第2の値NY以下か否かを判定する。制御部72は、クランク回転数Nが第2の値NY以下のとき、ステップS16に移る。制御部72は、ステップS16において、シフダウンが可能か否かを判定し、シフトダウンが可能であると判定すると、ステップS17において変速比γが小さくなるように電動変速機24を制御するシフトダウン制御を実行し、本処理を終了する。制御部72は、現在の変速比γが電動変速機24が実現できる最小の変速比γではないときに、シフトダウン可能であると判定する。ステップS16において、制御部72はシフトダウンが可能ではないと判定すると、本処理を終了する。
【0042】
制御部72は、ステップS14においてクランク回転数Nが第2の値NYより大きいとき、すなわち、クランク回転数Nが第1の値NXから第2の値NYまでの範囲内にあるとき、シフトアップ制御およびシフトダウン制御を行わずに本処理を終了する。
【0043】
制御部72は、第1の変速操作部28Aが操作されたとき、変速比γが大きくなるように電動変速機24を制御する。制御部72は、第2の変速操作部28Bが操作されたとき、変速比γが大きくなるように電動変速機24を制御する。
【0044】
制御部72は、変速操作部28が操作されたとき、閾値を変更する。より具体的には、制御部72は、第1の変速操作部28Aが操作されたとき、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくし、第2の変速操作部28Bが操作されたとき、第1の値NXおよび第2の値NYを大きくする。制御部72は、第1の変速操作部28Aが操作されたとき、第1の値NXの変化量Dおよび第2の値NYの変化量Dが等しくなるように第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。制御部72は、第2の変速操作部28Bが操作されたとき、第1の値NXの変化量Dおよび第2の値NYの変化量Dが等しくなるように第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。
【0045】
制御部72の具体的な閾値の変更方向について説明する。記憶部74には、基準となるクランク回転数NAが記憶されている。基準となるクランク回転数NAは、例えば60rpmである。制御部72は、基準となるクランク回転数NAを含む所定の回転数の範囲(NA−NM〜NA+NMrpmの範囲)を維持するように変速機24を制御する。「NM」は、例えば「10」である。したがって、初期の状態では制御部72は、第1の値NXを「NA+NM」とし、第2の値NYを「NA−NM」とする。「NM」は、操作部28,30または外部の機器によって設定可能に構成されてもよい。制御部72は、基準となるクランク回転数NAを変化量Dに応じて変更することによって、第1の値NXと、第2の値NYとを変更する。
【0046】
また、閾値の変化量Dは、変速操作部28A,28Bの操作状態に基づいて決定される。本実施の形態において変速操作部28A,28Bの操作状態は変速操作部28A,28Bの操作回数である。このため、変速操作部28A,28Bが操作されたときの閾値の変化量Dは、変速操作部28A,28Bの操作回数に基づいて決定される。すなわち、制御部72は、変速操作部28A,28Bが操作されたとき、変速操作部28A,28Bが操作された回数に基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。具体的には、制御部72は、連続して第1の変速操作部28Aが操作されたとき、第1の変速操作部28Aが入力された回数が多くなるほど、第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dの絶対値を大きくする。制御部72は、連続して第2の変速操作部28Bが操作されたとき、第2の変速操作部28Bが入力された回数が多くなるほど、第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dの絶対値を大きくする。
【0047】
制御部72は、第1の変速操作部28Aおよび第2の変速操作部28Bの一方が操作されてから、第1の変速操作部28Aおよび第2の変速操作部28Bの他方が操作されるまで、第1の変速操作部28Aおよび第2の変速操作部28Bの一方が操作された回数をカウントアップする。そして、制御部72は、第1の変速操作部28Aおよび第2の変速操作部28Bの一方が入力された後に第1の変速操作部28Aおよび第2の変速操作部28Bの他方が操作されたとき、第1の変速操作部28Aおよび第2の変速操作部28Bの一方が操作された回数を初期化する。
【0048】
図4を参照して閾値の変更処理について説明する。
制御部72は、ステップS21において変速操作部28(図2参照)からシフトアップ信号が入力されたか否かを判定する。制御部72は、シフトアップ信号が入力されたとき、ステップS22においてシフトアップ制御を実行する。なお、制御部72は、現在の変速比が、電動変速機24が実現できる最大の変速比γのとき、ステップS22において現在の変速比γを維持する。
【0049】
制御部72は、ステップS23においてシフトアップ信号が入力された回数をカウントアップする。制御部72は、ステップS24においてシフトダウン信号が入力された回数のカウントを初期化する。制御部72は、ステップS25においてシフトアップ信号が入力された回数のカウントに基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように変更する。第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dは、例えばカウントが「1」増えるごとに2倍になるように設定されている。第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dは、例えばカウントが「1」のとき「−0.5rpm」であり、「2」のとき「−1rpm」であり、「3」のとき「−2rpm」であり、「4」のとき「−4rpm」である。
【0050】
制御部72は、ステップS21においてシフトアップ信号が入力されていないと判定したとき、ステップS26において変速操作部28(図2参照)からシフトダウン信号が入力されたか否かを判定する。制御部72は、ステップS26においてシフトダウン信号が入力されていないと判定したとき、本処理を終了する。
【0051】
制御部72は、シフトダウン信号が入力されたとき、ステップS27においてシフトダウン制御を実行する。なお、制御部72は、現在の変速比が、電動変速機24が実現できる最小の変速比γのとき、ステップS27において現在の変速比γを維持する。
【0052】
制御部72は、ステップS28においてシフトダウン信号が入力された回数をカウントアップする。制御部72は、ステップS29においてシフトアップ信号が入力された回数のカウントをクリアする。制御部72は、ステップS30においてシフトダウン信号が入力された回数のカウントに基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを大きくなるように変更する。第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dは、例えばカウントが「1」増えるごとに2倍になるように設定されている。第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dは、例えばカウントが「1」のとき「+0.5rpm」であり、「2」のとき「+1rpm」であり、「3」のとき「+2rpm」であり、「4」のとき「+4rpm」である。
【0053】
制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dを累積して記憶する。すなわち第1の値NXおよび第2の値NYを変化量D1だけ小さくなるように変更した後、変更した第1の値NXおよび第2の値NYを変化量D2だけ大きくなるように変更した場合、制御部72は、「D1+D2」を変化量Dとして記憶部74に記憶する。
【0054】
図5を参照して変更処理の実行態様の一例について説明する。
時刻t11は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「1」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように変更する。
【0055】
時刻t12は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「2」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように変更する。時刻t12における第1の値NXおよび第2の値NYの変化量DBは、時刻t11における変化量DAよりも大きい。
【0056】
時刻t13は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「3」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように変更する。時刻t13における第1の値NXおよび第2の値NYの変化量DCは、時刻t12における変化量DBよりも大きい。
【0057】
時刻t14は、制御部72にシフトダウン信号が入力されてシフトダウン信号が入力された回数のカウントが「1」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階小さくする。また、制御部72は、シフトアップ信号が入力された回数のカウントを初期化して「0」にする。また、制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYを大きくなるように変更する。時刻t14における第1の値NXおよび第2の値NYの変化量DDは、時刻t11における変化量DAと等しい。
【0058】
時刻t15は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「1」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、シフトダウン信号が入力された回数のカウントを初期化して「0」にする。このとき、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように変更する。時刻t15における第1の値NXおよび第2の値NYの変化量DEは、時刻t11における変化量DAと等しい。
【0059】
制御部72は、人力駆動力に対するアシストモータ52のトルクτの大きさが異なる複数の制御モードを備えている。複数のモードは、第1のモード、第1のモードよりも人力駆動力に対するトルクτが大きい第2のモード、および、第2のモードよりも人力駆動力に対するトルクτが大きい第3のモードを含む。また、複数の制御モードには、アシストモータ52によってアシストしない制御モードがさらに含まれる。制御部72は、変速操作部28からのアシストアップ信号およびアシストダウン信号に基づいて制御モードを切り替える。制御部72は、制御モードを変更するとき、制御モードに応じて第1の値NXおよび第2の値NYを補正する。第1の値NXおよび第2の値NYは、人力駆動力に対するトルクτが大きい制御モードほど小さくなるように補正される。
【0060】
図6を参照して、アシスト機構20の制御モードの切替処理について説明する。
制御部72は、ステップS41においてアシストアップ信号が入力されたか否かを判定する。制御部72は、アシストアップ信号が入力されたとき、ステップS42において人力駆動力に対するトルクτの大きい制御モードに変更し、ステップS43に進む。例えば、第1のモードが設定されているときにアシストアップ信号が入力された場合、制御モードを第2のモードに変更する。なお、制御部72は、ステップS42において人力駆動力に対するトルクτが最も大きい制御モードに設定されているときは、人力駆動力に対するトルクτが最も大きい制御モードを維持する。制御部72は、ステップS43において、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように補正する。
【0061】
制御部72の具体的な閾値の補正方向について説明する。制御部72は、制御モードに応じて、基準となるクランク回転数NAを変更する。記憶部74には、各制御モードに対応する閾値の変化量Eが記憶されている。たとえば第3モードを基準とした場合、第3モードにおける閾値の変化量Eは、「0」であり、第2モードにおける閾値の変化量Eは、「−E2」であり、第1モードにおける閾値の変化量Eは、「−E1」であり、アシストモータ52によってアシストしない制御モードの閾値の変化量Eは「−E0」である。E0,E1,E2は、正の値で、E0>E1>E2の関係に選ばれる。E0,E1,E2は、操作部28,30または外部の機器によって設定可能に構成されてもよい。E2は例えば「2」、E1は例えば「4」、E0は例えば「6」に選ばれる。したがって、第1モードにおいて基準となるクランク回転数NAは「NA−E1」となり、第2モードにおいて基準となるクランク回転数NAは「NA−E2」となり、第3モードにおいて基準となるクランク回転数NAは「NA」となり、アシストしないモードの基準となるクランク回転数NAは「NA−E0」となる。
【0062】
制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYに「1」未満の値を乗算、または、第1の値NXおよび第2の値NYから所定値を減算することにより、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように補正してもよい。
【0063】
制御部72は、ステップS41においてアシストアップ信号が入力されていないとき、ステップS44に進み、制御部72は、アシストダウン信号が入力されたか否かを判定する。制御部72は、アシストダウン信号が入力されたとき、ステップS45において人力駆動力に対するトルクτの小さい制御モードに変更し、ステップS46に進む。例えば、第3のモードが設定されているときにアシストダウン信号が入力された場合、制御モードを第2のモードに変更する。なお、制御部72は、ステップS45において人力駆動力に対するトルクτが最も小さい制御モードに設定されているときは、人力駆動力に対するトルクτが最も小さい制御モードを維持してもよく、アシストモータ52によってアシストしない制御モードに変更してもよい。アシストモータ52によってアシストしない制御モードが設定されているときには、アシストモータ52によってアシストしない制御モードを維持する。制御部72は、ステップS46において、第1の値NXおよび第2の値NYを大きくなるように補正する。具体的には、制御部72は、基準となるクランク回転数NAを「NA−E2」に補正して、第1の値NXを「NA−E2+NM」とし、第2の値NYを「NA−E2−NM」とすることにより、第1の値NXおよび第2の値NYを大きくなるように補正する。
【0064】
制御部72は、ステップS44においてアシストダウン信号が入力されていないとき、すなわち、アシストアップ信号およびアシストダウン信号のいずれも入力されていないとき、本処理を終了する。
【0065】
制御部72は以下の作用および効果を奏する。
(1)制御システム70は、変速操作部28が操作されたとき、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。このため、運転者に適した閾値を用いて電動変速機24を制御できる。
【0066】
(2)変速操作部28A,28Bに手が当たる等して運転者が意図しないときにシフトアップ信号またはシフトダウン信号が出力されることがある。変速操作部28が操作されたときの第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dは、変速操作部28の操作回数に基づいて決定される。変速操作部28が操作されたときの第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dは、変速操作部28の操作回数が少ないときほど小さい。このため、運転者が意図しないときにシフトアップ信号またはシフトダウン信号が出力されたとき、閾値が大きく変化することを抑制できる。このため、閾値が運転者の望まない値になることを抑制できる。
【0067】
(3)制御部72は、連続して第1の変速操作部28Aが操作されたとき、第1の変速操作部28Aが操作された回数が多くなるほど、閾値の変化量Dの絶対値を大きくする。制御部72は、連続して第2の変速操作部28Bが操作されたとき、第2の変速操作部28Bが操作された回数が多くなるほど、閾値の変化量Dの絶対値を大きくする。運転者が閾値を大きくしたいとき、連続して同一の変速操作部28A,28Bを操作することにより、閾値の変化量Dが大きくなるため、素早く閾値を大きくなるように変更することができる。このため、ユーザビリティの向上に貢献できる。
【0068】
(4)運転者が維持したいクランク回転数Nの範囲をクランク回転数Nが小さくなる方向にシフトしたいとき、第1の変速操作部28Aを操作することにより、第1の値NXおよび第2の値NYを小さくすることができる。このため、第1の変速操作部28Aが操作される前よりもクランク回転数Nが小さい値に維持されるようになる。
【0069】
(5)運転者が維持したいクランク回転数Nの範囲をクランク回転数Nが大きくなる方向にシフトしたいとき、第2の変速操作部28Bを操作することにより、第1の値NXおよび第2の値NYが大きくできる。このため、第2の変速操作部28Bが操作される前よりもクランク回転数Nが大きい値に維持されるようになる。
【0070】
(6)制御部72は、電動変速機24を動作させて変速比γを変更してから所定の期間TXが経過するまで、電動変速機24を動作させない。このため、短期間にシフトアップおよびシフトダウンが繰り返されることを抑制できる。
【0071】
(7)制御モードに応じて適切なクランク回転数Nは異なる。例えば、運転者が第3のモードのときに適切と感じていたクランク回転数Nが維持された状態で制御モードを第2のモードまたは第1のモードに変更したとき、ペダル38を重く感じる等の違和感を覚えることがある。制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYを、制御モードごとに設定しているため、制御モードを変更したときに運転者が違和感を覚えにくくすることができる。
【0072】
(8)制御部72は、第1の値NXおよび第2の値NYを、人力駆動力に対するアシストモータ52のトルクτが大きい制御モードほど小さくなるように補正する。このため、制御モードをトルクτの小さいモードに変更したときに、モード変更前では変速しないクランク回転数Nの範囲であっても、モード変更後は変速するようにすることができ、運転者がペダル38を重く感じることを抑制できる。
【0073】
(第2実施形態)
図6図8を参照して、自転車の制御装置の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する部分は同一の符号を付し、説明を省略する。
【0074】
図7に示されるように、第1の値NXおよび第2の値NYは、変速段ごとに設定されている。第1の値NXおよび第2の値NYは、変速段が大きくなるほど、すなわち、変速比γが大きくなるほど大きくなるように設定されている。
【0075】
記憶部74には、各変速段に対応する閾値の変化量Fが記憶されている。隣り合う変速段における閾値の変化量Fの差を差Gとする。差Gは、操作部28,30または外部の機器によって設定可能に構成されてもよい。差Gは、例えば5に選ばれる。この場合、例えば1段から8段の変速段を有する変速機24において、最大の変速比γとなる8段の閾値の変化量Fを基準としたとき、8段の閾値の変化量Fは「0」、7段の閾値の変化量Fは「−5」、6段の閾値の変化量Fは「−10」、5段の閾値の変化量Fは「−15」、4段の閾値の変化量Fは「−20」、3段の閾値の変化量Fは「−25」、2段の閾値の変化量Fは「−30」、1段の閾値の変化量Fは「−35」になる。したがって、例えば8段のときの基準となるクランク回転数NAは、「NA」となり、1段のときの基準となるクランク回転数NAは、「NA−35」になる。この場合制御部72は、1段に対応する基準となるクランク回転数NAを「NA−35」に補正して、第1の値NXを「NA−35+NM」とし、第2の値NYを「NA−35−NM」とする。変速段に対応して予め設定される第1の値NXおよび第2の値NYは、基準となるクランク回転数NAと、各変速段に対応する閾値の変化量Fと、所定の回転数の範囲(±NM)とによって決まる値である。
【0076】
図8を参照して変更処理の実行態様の一例について説明する。図8(d)および図8(e)において、二点鎖線は、変速段に対応して予め設定される第1の値NXおよび第2の値NYを示し、実線は、シフトアップ信号が入力された回数に応じて補正された後の第1の値NXおよび第2の値NYを示す。図8では、制御モードは変化させず、例えば第3モードに固定されたままの変速処理の実行態様を示す。
【0077】
時刻t21は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「1」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、変速段に対応する閾値の変化量Fと、予め定めるクランク回転数NAと、所定の回転数の範囲(±NM)と、シフト回数に基づく変化量Dとに基づいて、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。シフト回数に基づく変化量Dは、シフトアップ信号が入力された回数に対応する閾値の変化量と、シフトダウン信号が入力された回数に対応する閾値の変化量とを累積した値である。図8の時刻t21より以前の時刻では、シフト回数に基づく変化量Dが「0」であることにしている。
【0078】
時刻t22は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「2」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、変速段に対応する閾値の変化量Fと、予め定めるクランク回転数NAと、所定の回転数の範囲(±NM)と、変化量Dとに基づいて、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。時刻t21および時刻t22において連続してシフトアップしているので、時刻t22におけるシフト回数に応じた変化量DGの絶対値は、時刻t21におけるシフト回数に応じた変化量DFの絶対値よりも大きい。
【0079】
時刻t23は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「3」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、変速段に対応する閾値の変化量Fと、予め定めるクランク回転数NAと、所定の回転数の範囲(±NM)と、変化量Dとに基づいて、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。時刻t21、時刻t22、および、時刻t23において連続してシフトアップしているので、時刻t23におけるシフト回数に基づく変化量DHの絶対値は、時刻t22におけるシフト回数に基づく変化量DGの絶対値よりも大きい。
【0080】
時刻t24は、制御部72にシフトダウン信号が入力されてシフトダウン信号が入力された回数のカウントが「1」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、変速段を1段階小さくする。また、制御部72は、シフトアップ信号が入力された回数のカウントを初期化して「0」にする。また、制御部72は、変速段に対応する閾値の変化量Fと、予め定めるクランク回転数NAと、所定の回転数の範囲(±NM)と、シフト回数に基づく変化量Dとに基づいて、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。時刻t24におけるシフト回数に応じた変化量DIの絶対値は、時刻t23におけるシフト回数に応じた変化量DHよりも小さく、時刻t22におけるシフト回数に基づく変化量DGの絶対値よりも大きい。
【0081】
時刻t25は、制御部72にシフトアップ信号が入力されてシフトアップ信号が入力された回数のカウントが「1」になった時刻を示す。このとき、制御部72は、シフトダウン信号が入力された回数のカウントを初期化して「0」にする。また、制御部72は、変速段を1段階大きくする。また、制御部72は、変速段に対応する閾値の変化量Fと、予め定めるクランク回転数NAと、所定の回転数の範囲(±NM)と、シフト回数に基づく変化量Dとに基づいて、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。時刻t25におけるシフト回数に基づく変化量DJの絶対値は、時刻t23におけるシフト回数に基づく変化量DHの絶対値と等しい。
【0082】
本実施形態の制御部72は、図6に示すアシスト機構20の制御モードの切替処理のステップS43において、変速段に対応する閾値の変化量Fと、シフト回数に基づく閾値の変化量Dとに基づいて、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。この結果、例えば、ステップS42において制御モードが第1のモードから第2のモードに変更されたとき、図7に示すように各変速段に対応する第1の値NXが第1の値NXAから第1の値NXBに補正され、各変速段に対応する第2の値NYが第2の値NYAから第2の値NYBに補正される。また、例えば、ステップS42において制御モードが第2のモードから第3のモードに変更されたとき、各変速段に対応する第1の値NXおよび第2の値NYが第1の値NXBから第1の値NXCに補正され、各変速段に対応する第2の値NYが第2の値NYBから第2の値NYCに補正される。
【0083】
制御部72は、図6に示すアシスト機構20の制御モードの切替処理のステップS45において、変速段に対応する閾値の変化量Fと、シフト回数に基づく閾値の変化量Dとに基づいて、第1の値NXおよび第2の値NYを変更する。この結果、例えば、ステップS44において制御モードが第3のモードから第2のモードに変更されたとき、図7に示すように各変速段に対応する第1の値NXおよび第2の値NYが第1の値NXCから第1の値NXBに補正され、各変速段に対応する第2の値NYが第2の値NYCから第2の値NYBに補正される。また、例えば、ステップS45において制御モードが第2のモードから第1のモードに変更されたとき、各変速段に対応する第1の値NXおよび第2の値NYが第1の値NXBから第1の値NXAに補正され、各変速段に対応する第2の値NYが第2の値NYBから第2の値NYAに補正される。
【0084】
(第3実施形態)
図9および図10を参照して、自転車の制御装置の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する部分は同一の符号を付し、説明を省略する。なお、本実施の形態においてアシストモータ52は自転車用コンポーネントである。また、走行負荷Rは、自転車10の走行状態を表すパラメータである。また、アシスト操作部30は、操作部であり、第1のアシスト操作部30Aは、第1の操作部であり、第2のアシスト操作部30Bは、第2の操作部である。
【0085】
制御部72は、走行負荷Rおよび閾値に基づいて電動変速機24を制御する。閾値は、第1の値RXおよび第1の値RXよりも小さい第2の値RYを含む。制御部72は、走行負荷Rと第1の値RXおよび第1の値RXとの比較結果に基づいてアシスト機構20の制御モードを変更する。走行負荷Rは、入力されるエネルギから出力されるエネルギを減算することによって求められる。入力されるエネルギは、トルクセンサ26とクランク軸46の回転を検出するケイデンスセンサの値から演算することができる。出力されるエネルギは、自転車10および運転者の重量と、車速センサ64の値から演算することができる。自転車10および運転者の重量は、予め所定の重量が設定されていてもよく、表示部(図示略)に表示させて運転者が選択または入力することができるようにしてもよい。
【0086】
図9を参照して制御部72により実行される制御モード変更処理について説明する。なお、本処理は人力駆動力をアシストするアシスト制御が実行されている間において、所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0087】
制御部72は、ステップS51において、走行負荷Rが第1の値RX以上か否かを判定する。制御部72は、走行負荷Rが第1の値RX以上のとき、ステップS52に移る。制御部72は、ステップS52において、アシストアップが可能か否かを判定し、アシストアップが可能であると判定すると、ステップS53において人力駆動力に対するトルクτの大きい制御モードに変更するアシストアップ制御を実行し、本処理を終了する。制御部72は、走行負荷Rが第1の値RX以上のとき、アシストモータ52のトルクτが大きくなるようにアシストモータ52を制御する。ステップS52において、制御部72はアシストアップが可能ではないと判定すると、本処理を終了する。例えば、人力駆動力に対するトルクτが最も大きい制御モード以外が設定されているとき、制御部72はアシストアップが可能であると判定する。
【0088】
制御部72は、走行負荷Rが第1の値RX未満のとき、ステップS54において走行負荷Rが第2の値RY以下か否かを判定する。制御部72は、走行負荷Rが第2の値RY以下のとき、ステップS55に移る。制御部72は、ステップS55において、アシストダウンが可能か否かを判定し、アシストダウンが可能であると判定すると、ステップS56において制御モードを人力駆動力に対するトルクτの小さい制御モードに変更するアシストダウン制御を実行し、本処理を終了する。制御部72は、走行負荷Rが第2の値RY以下のとき、アシストモータ52のトルクτが小さくなるようにアシストモータ52を制御する。例えば、アシストモータ52によってアシストしない制御モード以外が設定されているとき、制御部72はアシストダウンが可能であると判定する。
【0089】
制御部72は、ステップS54において走行負荷Rが第2の値RYより大きいとき、すなわち、走行負荷Rが第1の値RXから第2の値RYまでの範囲内にあるとき、制御モードを変更せずに本処理を終了する。
【0090】
制御部72は、走行負荷Rが第1の値RXから第2の値RYまでの範囲内にあるときに第1のアシスト操作部30Aが操作されたとき、トルクτが大きくなるようにアシストモータ52を制御する。制御部72は、走行負荷Rが第1の値RXから第2の値RYまでの範囲内にあるときに第2のアシスト操作部30Bが操作されたとき、トルクτが小さくなるようにアシストモータ52を制御する。
【0091】
制御部72は、アシスト操作部30が操作されたとき、閾値を変更する。より具体的には、制御部72は、第1のアシスト操作部30Aが操作されたとき、第1の値RXおよび第2の値RYを小さくし、第2のアシスト操作部30Bが操作されたとき、第1の値RXおよび第2の値RYを大きくする。制御部72は、第1のアシスト操作部30Aが操作されたとき、第1の値RXの変化量Dおよび第2の値RYの変化量Dが等しくなるように第1の値RXおよび第2の値RYを変更する。制御部72は、第2のアシスト操作部30Bが操作されたとき、第1の値RXの変化量Dおよび第2の値RYの変化量Dが等しくなるように第1の値RXおよび第2の値RYを変更する。
【0092】
また、閾値の変化量Dは、アシスト操作部30A,30Bの操作状態に基づいて決定される。本実施の形態においてアシスト操作部30A,30Bの操作状態はアシスト操作部30A,30Bの操作回数である。より具体的には、アシスト操作部30A,30Bが操作されたときの閾値の変化量Dは、アシスト操作部30A,30Bの操作回数に基づいて決定される。すなわち、制御部72は、アシスト操作部30A,30Bが操作されたとき、アシスト操作部30A,30Bが操作された回数に基づいて第1の値RXおよび第2の値RYを変更する。具体的には、制御部72は、連続して第1のアシスト操作部30Aが操作されたとき、第1のアシスト操作部30Aが入力された回数が多くなるほど、第1の値RXおよび第2の値RYの変化量Dの絶対値を大きくする。制御部72は、連続して第2のアシスト操作部30Bが操作されたとき、第2のアシスト操作部30Bが入力された回数が多くなるほど、第1の値RXおよび第2の値RYの変化量Dの絶対値を大きくする。
【0093】
制御部72は、第1のアシスト操作部30Aおよび第2のアシスト操作部30Bの一方が操作されてから、第1のアシスト操作部30Aおよび第2のアシスト操作部30Bの他方が操作されるまで、第1のアシスト操作部30Aおよび第2のアシスト操作部30Bの一方が操作された回数をカウントアップする。そして、制御部72は、第1のアシスト操作部30Aおよび第2のアシスト操作部30Bの一方が入力された後に第1のアシスト操作部30Aおよび第2のアシスト操作部30Bの他方が操作されたとき、第1のアシスト操作部30Aおよび第2のアシスト操作部30Bの一方が操作された回数を初期化する。
【0094】
図10を参照して閾値の変更処理について説明する。
制御部72は、ステップS61において第1のアシスト操作部30A(図2参照)からアシストアップ信号が入力されたか否かを判定する。制御部72は、アシストアップ信号が入力されたとき、ステップS62においてアシストアップ制御を実行する。なお、制御部72は、ステップS62において人力駆動力に対するトルクτが最も大きい制御モードに設定されているときは、人力駆動力に対するトルクτが最も大きい制御モードを維持する。制御部72は、ステップS63においてアシストアップ信号が入力された回数をカウントアップする。制御部72は、ステップS64においてアシストダウン信号が入力された回数のカウントを初期化する。制御部72は、ステップS65においてアシストアップ信号が入力された回数のカウントに基づいて第1の値RXおよび第2の値RYを小さくなるように変更する。第1の値RXおよび第2の値RYの変化量Dは、例えばカウントが「1」増えるごとに2倍になるように設定されている。
【0095】
制御部72は、ステップS61においてアシストアップ信号が入力されていないと判定したとき、ステップS66において第2のアシスト操作部30B(図2参照)からアシストダウン信号が入力されたか否かを判定する。制御部72は、ステップS66においてアシストダウン信号が入力されていないと判定したとき、本処理を終了する。
【0096】
制御部72は、アシストダウン信号が入力されたとき、ステップS67においてアシストダウン制御を実行する。なお、制御部72は、ステップS67において人力駆動力に対するトルクτが最も小さい制御モードに設定されているときは、人力駆動力に対するトルクτが最も小さい制御モードを維持してもよく、アシストモータ52によってアシストしない制御モードに変更してもよい。アシストモータ52によってアシストしない制御モードが設定されているときには、アシストモータ52によってアシストしない制御モードを維持する。制御部72は、ステップS68においてアシストダウン信号が入力された回数をカウントアップする。制御部72は、ステップS69においてアシストアップ信号が入力された回数のカウントをクリアする。制御部72は、ステップS70においてアシストダウン信号が入力された回数のカウントに基づいて第1の値RXおよび第2の値RYを大きくなるように変更する。第1の値RXおよび第2の値RYの変化量Dは、例えばカウントが「1」増えるごとに2倍になるように設定されている。制御部72は、第1の値RXおよび第2の値RYの変化量Dを累積して記憶する。すなわち第1の値RXおよび第2の値RYを変化量D3だけ小さくなるように変更した後、変更した第1の値RXおよび第2の値RYを変化量D4だけ大きくなるように変更した場合、制御部72は、D3+D4を、変化量Dとして記憶部74に記憶する。第3実施形態の制御システム70によれば、第1実施形態の制御システム70に準じた効果を奏することができる。
【0097】
本自転車の制御システムが取り得る具体的な形態は、上記各実施形態に例示された形態に限定されない。本自転車の制御システムは、上記各実施形態とは異なる各種の形態を取り得る。以下に示される上記各実施形態の変形例は、本変自転車の制御システムが取り得る各種の形態の一例である。
【0098】
・第1実施形態の閾値の変更処理において、シフトアップ信号またはシフトダウン信号が入力されたとき、シフトアップ制御およびシフトダウン制御を実行せずに、第1の値NXおよび第2の値NYの変更のみを行うようにすることもできる。
【0099】
・第3実施形態の閾値の変更処理において、アシストアップ信号またはアシストダウン信号が入力されたとき、アシストアップ制御およびアシストダウン制御を実行せずに、第1の値RXおよび第2の値RYの変更のみを行うようにすることもできる。
【0100】
・第3実施形態において、自転車10に傾斜センサを設け、走行負荷Rを傾斜センサの出力に基づいて演算することもできる。自転車10が勾配の大きな上り坂を走行しているとき、傾斜センサの出力に基づいて演算される自転車10のピッチ角度が大きくなる。このため、制御部72は、ピッチ角度が第1の所定角度よりも大きいとき、走行負荷Rが第1の値RX以上と判定し、ピッチ角度が第2の所定角度よりも小さいとき、走行負荷Rが第2の値RY以下と判定する。
【0101】
・各実施形態の閾値の変更処理において、操作部28A,28B,30A,30Bの操作時間に基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを変更することもできる。この場合、操作時間は操作部の制御状態である。例えば、制御部72は、図4に示すステップS23〜S25に代えて、図11に示すステップS81の処理を実行する。制御部72は、ステップS81において変速操作部28Aの操作時間に基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように変更する。この場合、操作部28は、第1の変速操作部28Aが操作されている間、シフトアップ信号を継続して制御部72に出力する。または、操作部28は、第1の変速操作部28Aが操作された時間に基づいた情報を、シフトアップ信号とともに制御部72に出力する。制御部72は、例えば、操作時間が長いほど第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dを大きくする。
【0102】
また、制御部72は、図4に示すステップS28〜S30に代えて、図11に示すステップS82の処理を実行する。制御部72は、ステップS82において変速操作部28Bの操作時間に基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを大きくなるように変更する。この場合、操作部28は、第2の変速操作部28Bが操作されている間、シフトダウン信号を継続して制御部72に出力する。または、操作部28は、第2の変速操作部28Bが操作された時間に基づいた情報を、シフトダウン信号とともに制御部72に出力する。制御部72は、例えば、操作時間が長いほど第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dを大きくする。
【0103】
・各実施形態の閾値の変更処理において、操作部28A,28B,30A,30Bの操作量に基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを変更することもできる。この場合、操作量は操作部の制御状態である。操作部28A,28B,30A,30Bは、例えばレバーにより構成され、レバーの操作量に応じた信号を制御部72に出力可能である。例えば、制御部72は、図4に示すステップS23〜S25に代えて、図12に示すステップS91の処理を実行する。制御部72は、ステップS91において変速操作部28Aの操作量に基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを小さくなるように変更する。制御部72は、例えば、操作量が大きいほど第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dを大きくする。
【0104】
また、制御部72は、図4に示すステップS28〜S30に代えて、図12に示すステップS92の処理を実行する。制御部72は、ステップS92において変速操作部28Bの操作量に基づいて第1の値NXおよび第2の値NYを大きくなるように変更する。制御部72は、例えば、操作量が大きいほど第1の値NXおよび第2の値NYの変化量Dを大きくする。
【0105】
・変速処理において、クランク回転数Nに代えて車速Vを用いることもできる。この場合、自転車10の走行状態に関するパラメータは車速Vである。記憶部74には、車速Vに関する第1の値VXおよび第2の値VYが記憶されている。図13に示す変速処理の変形例を用いて車速Vを用いた処理を説明する。制御部72は、ステップS101において、車速Vが第1の値VX以上か否かを判定する。制御部72は、車速Vが第1の値VX以上のとき、ステップS13においてシフトアップ制御を実行する。すなわち、制御部72は、車速Vが、第1の値VX以上のとき、変速比γが大きくなるように電動変速機24を制御する。制御部72は、車速Vが第1の値VX未満のとき、ステップS102において車速Vが第2の値VY以下か否かを判定する。制御部72は、車速Vが第2の値VY以下のとき、ステップS66においてシフトダウン制御を実行する。すなわち、制御部72は、車速Vが、第2の値VY以下のとき、変速比γが小さくなるように電動変速機24を制御する。制御部72は、ステップS102において車速Vが第2の値VYよりも大きいとき、すなわち、車速Vが第1の値VXから第2の値VYまでの範囲内にあるとき、シフトアップ制御およびシフトダウン制御を行わない。
【0106】
・車速検出装置60をGPS(Global Positioning System)受信機として構成することもできる。この場合、車速Vは、位置情報と移動時間とに基づいて算出される。
・車速検出装置60を、車速Vを反映したクランク軸46の回転速度に応じた信号を出力するケイデンスセンサに変更することもできる。この場合、ケイデンスセンサの出力に基づいてクランク回転数Nが演算される。ケイデンスセンサは、図1に示すクランク軸46またはクランクアーム48付近に設けられる。ケイデンスセンサは、クランク軸46またはクランクアーム48に設けられる磁石との相対位置の変化に応じた値を出力する素子を備え、クランク軸46またはクランクアーム48の回転速度に応じた信号を出力する。制御部72は、ケイデンスセンサの出力する信号に基づいて、クランク軸46の単位時間あたりの回転数(クランクの回転数N)を演算する。
【0107】
この場合、車速検出装置60は、車速Vに基づいてクランク軸46の回転速度を演算し、かつケイデンスセンサの出力に基づいてクランク回転数Nが演算してもよい。特にコースティングのときには、車速Vが「0」よりも大きいが、ケイデンスセンサが検出したクランク回転数Nが「0」になるため、車速Vに基づいてクランク回転数Nを演算することが好ましい。すなわち、ケイデンスセンサで検出される実際のクランク回転数Nが、車速Vに対応するクランク回転数Nよりも小さいときには、制御部72は、車速Vに対応するクランク回転数Nを用いてもよい。
【0108】
・電動変速機24を、クランク軸46まわりに設けられる内装型の電動変速機24に変更することもできる。また、電動変速機24を、複数のリアスプロケット42のうちの1つのリアスプロケット42から他にチェーン44を掛け替える外装型の変速機に変更することもできる。また、電動変速機24を、複数のフロントスプロケット50のうちの1つのフロントスプロケット50から他にチェーン44を掛け替える外装型の変速機に変更することもできる。
【0109】
(付記1)
自転車の走行状態に関するパラメータおよび閾値に基づいて電動変速機を制御する制御部を備える自転車の制御システムであって、
前記閾値は変速比に応じて設定され、
前記制御部は、操作部が操作されたとき、前記変速比を変更し、かつ、前記閾値を前記変速比に応じて設定されている閾値から変更し、
前記操作部が操作されたときの前記設定されている前記閾値からの変化量は、前記操作部の操作状態に基づいて決定される、自転車の制御システム。
【符号の説明】
【0110】
10 自転車
24 電動変速機(自転車用コンポーネント)
28 操作部
28A 第1の操作部
28B 第2の操作部
52 アシストモータ
70 自転車の制御システム
72 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13