特許第6636747号(P6636747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6636747
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】建物の制振構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20200120BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   E04H9/02 301
   E04H9/02 311
   F16F15/02 L
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-162507(P2015-162507)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-40102(P2017-40102A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠磨
(72)【発明者】
【氏名】井出 豊
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−031988(JP,A)
【文献】 特開2001−073469(JP,A)
【文献】 特開2008−057121(JP,A)
【文献】 特開2002−227449(JP,A)
【文献】 特開平09−235890(JP,A)
【文献】 米国特許第06247275(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に沿って複数設けられた柱、前記第1方向に配置され前記柱間に架設された第1梁、前記第2方向に配置され前記柱間に架設された第2梁、前記第1梁と前記柱により上下方向に複数構成された第1架構面、及び前記第2梁と前記柱により上下方向に複数構成された第2架構面を有する建物と、
前記建物の最上階以外の何れかの階に一部の前記柱を設けないことにより前記第2方向に構成されると共に前記第2梁と前記柱で構成された低剛性架構面と、
前記低剛性架構面又は前記低剛性架構面の上階の前記第2架構面に設けられ、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁の上下振動を吸収する減衰手段と、
を有する建物の制振構造。
【請求項2】
第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に沿って複数設けられた柱、前記第1方向に配置され前記柱間に架設された第1梁、前記第2方向に配置され前記柱間に架設された第2梁、前記第1梁と前記柱により上下方向に複数構成された第1架構面、及び前記第2梁と前記柱により上下方向に複数構成された第2架構面を有する建物と、
前記建物の最上階以外の何れかの階に前記柱を設けないことにより前記第2方向に構成された低剛性架構面と、
前記低剛性架構面又は前記低剛性架構面の上階の前記第2架構面に設けられ、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁の上下振動を吸収する減衰手段と、を有し、
前記減衰手段は、前記低剛性架構面を構成する前記柱、又は該柱の延長線上に配置され前記第2架構面を構成する前記柱に一端部が連結され、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁に他端部が連結されて、斜めに配置されたダンパーであ建物の制振構造。
【請求項3】
第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に沿って複数設けられた柱、前記第1方向に配置され前記柱間に架設された第1梁、前記第2方向に配置され前記柱間に架設された第2梁、前記第1梁と前記柱により上下方向に複数構成された第1架構面、及び前記第2梁と前記柱により上下方向に複数構成された第2架構面を有する建物と、
前記建物の最上階以外の何れかの階に前記柱を設けないことにより前記第2方向に構成された低剛性架構面と、
前記低剛性架構面又は前記低剛性架構面の上階の前記第2架構面に設けられ、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁の上下振動を吸収する減衰手段と、を有し、
前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁に接合され直下に柱部材が設けられていない前記柱は、長方形鋼管又はH形鋼により構成され、前記第1方向を回転軸とする曲げに対して弱軸配置となるように配置されてい建物の制振構造。
【請求項4】
前記第1梁の間に格子梁が架設されている請求項1〜3の何れか1項に記載の建物の制振構造。
【請求項5】
前記低剛性架構面の左の前記柱と右の前記柱の間の前記建物の部分を鉄骨造、この部分の両側を鉄筋コンクリート造とする請求項1〜4の何れか1項に記載の建物の制振構造。
【請求項6】
前記減衰手段の一端が、仕口部に接合されている請求項1〜5の何れか1項に記載の建物の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の揺れを低減する建物の制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の柱梁架構の架構面にダンパー等の減衰手段を設けて、建物の揺れを低減する技術がある。例えば、特許文献1には、ブレースと減衰器を直列に接続して構成された減衰装置を柱梁架構内の対角線上に配設し、この減衰装置の両端を球面軸受又はピンを介して柱梁架構に結合して、構造物の揺れを低減する制振装置が開示されている。
【0003】
しかし、建物の所定方向(梁間方向又は桁行き方向)に配置された柱梁架構の架構面に減衰手段を設けることができない場合、この所定方向に対する建物の揺れを低減することができない。例えば、平面形状が長細い長方形となる建物においては、窓や動線を確保する等の理由で、建物の短辺方向に配置された柱梁架構の架構面に減衰手段を設けるのが困難なことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−54677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、建物の所定方向に配置された柱梁架構の架構面に減衰手段を設けずに、この所定方向に対する建物の揺れを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の発明は、第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に沿って複数設けられた柱、前記第1方向に配置され前記柱間に架設された第1梁、前記第2方向に配置され前記柱間に架設された第2梁、前記第1梁と前記柱により上下方向に複数構成された第1架構面、及び前記第2梁と前記柱により上下方向に複数構成された第2架構面を有する建物と、前記建物の最上階以外の何れかの階に一部の前記柱を設けないことにより前記第2方向に構成されると共に前記第2梁と前記柱で構成された低剛性架構面と、前記低剛性架構面又は前記低剛性架構面の上階の前記第2架構面に設けられ、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁の上下振動を吸収する減衰手段と、を有する建物の制振構造である。
【0007】
第1態様の発明では、地震により建物が第1方向に揺れると、柱には上向きの力と下向きの力が繰り返し作用する。このとき、低剛性架構面の上部に配置された第2梁が、この上向きの力と下向きの力を受けて上下に振動する。すなわち、第1方向に対する建物の揺れが、第2梁の上下振動に変換される。そして、第2梁の上下振動を減衰手段によって吸収し、これにより、第1方向に対する建物の揺れを低減することができる。すなわち、建物の所定方向(第1方向)に配置された柱梁架構の架構面に減衰手段を設けずに、この所定方向(第1方向)に対する建物の揺れを低減することができる。
【0008】
第2態様の発明は、第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に沿って複数設けられた柱、前記第1方向に配置され前記柱間に架設された第1梁、前記第2方向に配置され前記柱間に架設された第2梁、前記第1梁と前記柱により上下方向に複数構成された第1架構面、及び前記第2梁と前記柱により上下方向に複数構成された第2架構面を有する建物と、前記建物の最上階以外の何れかの階に前記柱を設けないことにより前記第2方向に構成された低剛性架構面と、前記低剛性架構面又は前記低剛性架構面の上階の前記第2架構面に設けられ、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁の上下振動を吸収する減衰手段と、を有し、前記減衰手段は、前記低剛性架構面を構成する前記柱、又は該柱の延長線上に配置され前記第2架構面を構成する前記柱に一端部が連結され、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁に他端部が連結されて、斜めに配置されたダンパーである。
【0009】
第2態様の発明では、ダンパーにより、低剛性架構面の上部に配置された第2梁の上下振動を吸収して第1方向に対する建物の揺れを低減するとともに、第2方向に対する建物の揺れを低減することができる。
【0010】
第3態様の発明は、第1方向と前記第1方向と交差する第2方向に沿って複数設けられた柱、前記第1方向に配置され前記柱間に架設された第1梁、前記第2方向に配置され前記柱間に架設された第2梁、前記第1梁と前記柱により上下方向に複数構成された第1架構面、及び前記第2梁と前記柱により上下方向に複数構成された第2架構面を有する建物と、前記建物の最上階以外の何れかの階に前記柱を設けないことにより前記第2方向に構成された低剛性架構面と、前記低剛性架構面又は前記低剛性架構面の上階の前記第2架構面に設けられ、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁の上下振動を吸収する減衰手段と、を有し、前記低剛性架構面の上部に配置された前記第2梁に接合され直下に柱部材が設けられていない前記柱は、長方形鋼管又はH形鋼により構成され、前記第1方向を回転軸とする曲げに対して弱軸配置となるように配置されている。
【0011】
第3態様の発明では、低剛性架構面の上部に配置された第2梁に接合され直下に柱部材が設けられていない柱(以下、「丘立ち柱」とする)を、長方形鋼管又はH形鋼により構成するとともに、第1方向を回転軸とする曲げに対して弱軸配置となるように配置することにより、丘立ち柱に接合された第2梁の端部にヒンジが発生することを抑制して、この第2梁を確実に上下振動させ、この第2梁の上下振動を減衰手段により吸収することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成としたので、建物の所定方向に配置された柱梁架構の架構面に減衰手段を設けずに、この所定方向に対する建物の揺れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る建物の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る建物の側面図である。
図3図1のA−A断面図である。
図4図1のB−B断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る地震時の建物の挙動を示す正面図である。
図6】本発明の実施形態に係る減衰手段の配置バリエーションを示す正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る減衰手段の配置バリエーションを示す正面図である。
図8図8(a)は、第1梁の間に格子梁を架設していない場合における第3梁の長期荷重の負担面積を示す平面図であり、図8(b)は、第1梁の間に格子梁を架設した場合における第3梁の長期荷重の負担面積を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る建物の制振構造について説明する。
【0015】
図1の正面図、及び図2の側面図には、地盤10上に建てられた鉄骨造の建物12が示されている。図1のA−A断面図である図3に示すように、建物12は、細長い長方形の平面形状を有し、短辺方向が第1方向としての梁間方向14となっており、短辺方向と直交する長辺方向が第2方向としての桁行方向16となっている。
【0016】
本実施形態の建物の制振構造18は、建物12、低剛性架構面20、及び減衰手段としてのオイルダンパー22を有して構成されている。また、建物12は、柱24、第1梁26、第2梁28、第1架構面30、及び第2架構面32を有して構成されている。柱24は、角形鋼管からなる鉄骨柱であり、後に説明する丘立ち柱24Aは、長方形鋼管からなり、丘立ち柱24A以外の柱24は、正方形鋼管からなる。また、第1梁26及び第2梁28は、H形鋼からなる鉄骨梁である。なお、柱24は、正方形、長方形、丸形などの鋼管やH形鋼等のさまざまな断面形状の鉄骨柱であってもよい。また、第1梁26及び第2梁28は、正方形、長方形、丸形などの鋼管やH形鋼等のさまざまな断面形状の鉄骨梁であってもよい。
【0017】
図3に示すように、柱24は、桁行方向16に沿って複数設けられている。また、図2に示すように、第1梁26は、梁間方向14に配置されるとともに、隣り合う柱24と柱24の間に架設されており、第1架構面30は、第1梁26と柱24により上下方向に複数構成されている。さらに、図1に示すように、第2梁28は、桁行方向16に配置されるとともに、隣り合う柱24と柱24の間に架設されており、第2架構面32は、第2梁28と柱24により上下方向に複数構成されている。
【0018】
図1、及び図1のB−B断面図である図4に示すように、低剛性架構面20は、建物12の1階において梁間方向14の左右両側に柱24を設けないことにより、桁行方向16に構成されている。説明の都合上、図4にはオイルダンパー22が省略されている。
【0019】
図1、及び図3に示すように、低剛性架構面20の上部に配置された2つの第2梁28に仕口部34を介して接合され、直下に柱部材が設けられていない柱24(以下、「丘立ち柱24A」とする)は、長方形鋼管からなり、梁間方向14を回転軸とする曲げに対して弱軸配置となるように配置されている。低剛性架構面20の上部に配置された2つの第2梁28は、丘立ち柱24Aの仕口部34を介して接合されて第3梁36を構成している。
【0020】
オイルダンパー22は、丘立ち柱24Aの仕口部34に一端部が接合されるとともに、地盤10に設けられた基礎部38に他端部が接合され、上下方向へ伸縮して振動を吸収するように略鉛直に配置されている。すなわち、オイルダンパー22は、低剛性架構面20に設けられ、低剛性架構面20の上部に配置された第3梁36(2つの第2梁28)の上下振動を吸収する。
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る建物の制振構造の作用と効果について説明する。
【0022】
本実施形態の建物の制振構造18では、図2に示すように、地震により建物12が梁間方向14に揺れる(矢印40)と、柱24には上向きの力と下向きの力が繰り返し作用する。このとき、図5の正面図に示すように、低剛性架構面20の上部に配置された第3梁36が、この上向きの力と下向きの力を受けて上下に繰り返し撓んで上下振動する(矢印42)。すなわち、梁間方向14に対する建物12の揺れ(矢印40)が、第3梁36の上下振動(矢印42)に変換される。
【0023】
そして、第3梁36の上下振動(振動エネルギー)をオイルダンパー22により吸収し、これにより、梁間方向14に対する建物12の揺れを低減することができる。すなわち、建物12の所定方向(梁間方向14)に配置された柱梁架構の架構面に減衰手段を設けずに、この所定方向(梁間方向14)に対する建物12の揺れを低減することができる。
【0024】
また、本実施形態の建物の制振構造18は、図1及び図4に示すように、建物12の低層階(本例では、1階)の柱24を減らして、この階の水平剛性を小さくして意図的に水平変形させ、この変形エネルギーを減衰手段(本例では、オイルダンパー22)で吸収する、所謂、ソフトファーストストーリー制振構造とすることにより、建物12の揺れを効率的に低減することができる。
【0025】
さらに、本実施形態の建物の制振構造18は、図1に示すように、丘立ち柱24Aの仕口部34に一端部を接合してオイルダンパー22を略鉛直に配置することにより、オイルダンパー22の左右に広いスペースを確保することができる。
【0026】
また、本実施形態の建物の制振構造18は、図3に示すように、梁間方向14を回転軸とする曲げに対して弱軸配置となるように丘立ち柱24Aを配置することにより、丘立ち柱24Aの仕口部34に接合された第2梁28の端部にヒンジが発生することを抑制して、第2梁28の鉛直支持力を保つことができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0028】
なお、本実施形態では、図1及び図4に示すように、建物12の1階において梁間方向14の左右両側に柱24を設けないことにより、桁行方向16に低剛性架構面20を構成した例を示したが、低剛性架構面は、建物12の最上階以外の何れかの階において一部の柱を設けないことにより桁行方向16に構成すればよい。建物12の下層階には、地震により建物12が梁間方向14に揺れるときに大きな上向きの力と下向きの力が作用するので、建物12の下層階において一部の柱を設けないようにして低剛性架構面を構成するのが好ましい。
【0029】
例えば、桁行方向16に対し連続して複数の柱を設けないようにすることにより低剛性架構面を構成するようにしてもよい。桁行方向16に対し連続して2つ以上の柱を設けないようにすることにより低剛性架構面を構成すれば、この低剛性架構面の上部に配置された3つ以上の第2梁が上下振動するようになる。
【0030】
また、例えば、建物12のコーナー部に柱を設けないようにすることにより低剛性架構面を構成するようにしてもよい。この場合には、左右一方に配置された柱24と、上方に配置された第2梁28とが正面視にてL字状に配置される、又は左右一方に配置された柱24と上方に配置された第2梁28と、下方に配置された第2梁28が正面視にてコの字状に配置されることになるが、このようにL字状又はコの字状に配置された部材により囲まれた面も「低剛性架構面」となり、この低剛性架構面の上部に配置された1つ以上の第2梁28が上下振動するようになる。
【0031】
また、本実施形態では、図1に示すように、桁行方向16に低剛性架構面20を構成することにより梁間方向14に対する建物12の揺れを低減する例を示したが、桁行方向16に低剛性架構面20を構成するとともに、梁間方向14に低剛性架構面を構成して、梁間方向14と桁行方向16に対する建物12の揺れを低減するようにしてもよい。
【0032】
さらに、本実施形態では、図1に示すように、減衰手段をオイルダンパー22とした例を示したが、減衰手段は、第3梁36(低剛性架構面20の上部に配置された第2梁28)の上下振動を低減できるものであればよく、オイルダンパー以外の機構のダンパーであってもよい。例えば、減衰手段を鋼材ダンパーとしてもよい。このようにすれば、鋼材ダンパーが塑性化するまでは、建物12の梁間方向14の剛性を確保し、鋼材ダンパーが塑性化した後にこの鋼材ダンパーによって振動エネルギーを吸収するので、建物12に作用する風揺れを低減することができる。
【0033】
また、本実施形態では、図1に示すように、丘立ち柱24Aの仕口部34に一端部を接合し、地盤10に設けられた基礎部38に他端部を接合して、上下方向へ伸縮して振動を吸収するように、略鉛直に減衰手段としてのオイルダンパー22を配置した例を示したが、減衰手段は、図6の正面図に示すように、低剛性架構面20にブレース状に配置してもよい。
【0034】
図6では、減衰手段としてのオイルダンパー22が、低剛性架構面20を構成する柱24に一端部が連結され、低剛性架構面20の上部に配置された第2梁28に他端部が連結されて、斜めに配置されている。そして、この斜めの方向へオイルダンパー22が伸縮して、第3梁36の上下振動(振動エネルギー)を吸収する。
【0035】
このようにすれば、オイルダンパー22により、第3梁36の上下振動(振動エネルギー)を吸収して梁間方向14に対する建物12の揺れを低減するとともに、桁行方向16に対する建物12の揺れを低減することができる。なお、図6では、2つのオイルダンパー22が設けられているが、左右一方のオイルダンパー22のみを設けるようにしてもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、図1に示すように、低剛性架構面20に減衰手段としてのオイルダンパー22を設けた例を示したが、減衰手段は、図7の正面図に示すように、低剛性架構面20の上階の第2架構面32に設けてもよい。
【0037】
図7では、減衰手段としてのオイルダンパー22が、低剛性架構面20を構成する柱24の延長線上に配置され第2架構面32を構成する柱24に一端部が連結され、低剛性架構面20の上部に配置された第2梁28に他端部が連結されて、斜めに配置されている。そして、この斜めの方向へオイルダンパー22が伸縮して、第3梁36の上下振動(振動エネルギー)を吸収する。
【0038】
このようにすれば、オイルダンパー22により、第3梁36の上下振動(振動エネルギー)を吸収して梁間方向14に対する建物12の揺れを低減するとともに、桁行方向16に対する建物12の揺れを低減することができる。また、低剛性架構面20に減衰手段を設けなくてよいので、第3梁36下に広いスペースを確保することができる。なお、図7では、2つのオイルダンパー22が設けられているが、左右一方のオイルダンパー22のみを設けるようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、図1に示すように、第3梁36の上下振動をオイルダンパー22により吸収し、これにより、梁間方向14に対する建物12の揺れを低減する例を示したが、第3梁36の端部(第3梁36を構成する第2梁28における丘立ち柱24Aの仕口部34に接合されていない側の端部)を柱24にピン接合するようにしてもよい。このようにすれば、第3梁36の中央部(丘立ち柱24Aの仕口部34)の撓み量を大きくして、オイルダンパー22により吸収する振動エネルギー量を多くすることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、梁間方向14を回転軸とする曲げに対して弱軸配置となるように丘立ち柱24Aを配置することにより、丘立ち柱24Aの仕口部34に接合された第2梁28の端部にヒンジが発生することを抑制した例を示したが、他の方法によって、丘立ち柱24Aの仕口部34に接合された第2梁28の端部にヒンジが発生することを抑制するようにしてもよい。
【0041】
例えば、低剛性架構面20の上部に配置される第2梁28を高強度鋼により形成するようにしてもよい。このようにすれば、第2梁28の撓みを保ったまま、丘立ち柱24Aの仕口部34に接合された第2梁28の端部にヒンジが発生するのを抑制することができる。
【0042】
また、例えば、図8(b)の平面図に示すように、第1梁26の間に格子梁44を架設し、第3梁36(第2梁28)に作用する長期荷重(鉛直荷重)を第1梁26に伝達して、第3梁36(第2梁28)の負担する長期荷重(鉛直荷重)を低減するようにしてもよい。図8(a)の平面図には、第1梁26の間に格子梁44を架設していない場合における第3梁36(第2梁28)の長期荷重(鉛直荷重)の負担面積46が示されており、図8(b)には、第1梁26の間に格子梁44を架設した場合における第3梁36(第2梁28)の長期荷重(鉛直荷重)の負担面積48が示されている。
【0043】
また、本実施形態の建物の制振構造18は、新築建物に対して適用してもよいし、耐震改修建物に適用してもよい。
【0044】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、建物12の平面形状を細長い長方形とした例を示したが、建物の平面形状は、正方形等の他の形状であってもよい。
【0045】
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように、建物12を鉄骨造とした例を示したが、地震により建物12が梁間方向14に揺れたときに、低剛性架構面20の上部に配置された第2梁28が上下振動するものであれば、建物12は、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造のものであってもよい。
【0046】
例えば、図1において、左から2番目の柱24と、右から2番目の柱24との間の建物12の部分を鉄骨造とし、この部分の両側を鉄筋コンクリート造とすれば、第3梁36の中央部(丘立ち柱24Aの仕口部34)の撓み量を大きくして、減衰手段により吸収する振動エネルギー量を多くすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
12 建物
14 梁間方向(第1方向)
16 桁行方向(第2方向)
18 建物の制振構造
20 低剛性架構面
22 オイルダンパー(減衰手段)
24 柱
24A 丘立ち柱(柱)
26 第1梁
28 第2梁
30 第1架構面
32 第2架構面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8