(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、外部より入力される前記巻線の抵抗値に関する情報を記憶可能であり、記憶された前記巻線の抵抗値に関する情報に基づいて前記抵抗素子部の抵抗値を選択することを特徴とする請求項4に記載のステッピングモータ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リールの停止には、回生ブレーキトルク、リールの慣性、および回転速度といった要素が関係する。しかしながら、これらの要素のうち回生ブレーキトルクに影響を与える巻線抵抗値のバラツキは、量産においてはどうしても発生してしまう。
【0006】
可変表示装置ではリールは複数(例えば3つ)備えられることが一般的である。すなわち、リールを駆動するステッピングモータも複数備えられる。複数のステッピングモータ間において、各相の巻線抵抗値のバラツキが生じる。
【0007】
回生ブレーキトルクは、各相のホールディングトルクの総和である。ステッピングモータは、通電状態で停止しているときに外力が加わっても、ロータとステータの間に発生する吸引力によって停止位置を保とうとする性質がある。この外力に抵抗できるトルクをホールディングトルクと呼ぶ。
【0008】
複数のステッピングモータ間における巻線抵抗値のバラツキの状態によっては、全相励磁のときのロータの回転位置に対する回生ブレーキトルクの位相がステッピングモータ間でずれる。この位相のずれによって、全相励磁後の全相励磁解除(全ての相の励磁を解除)におけるロータの回転停止位置にずれが生じる。すなわち、リールの回転停止位置にずれが生じてしまう。
【0009】
ここで、特許文献1のステッピングモータは、第1〜第4相巻線と、スイッチ素子としての第1〜第4のトランジスタと、第1および第2の抵抗を備える構成としている。第1〜第4相巻線の一端は、それぞれ直流電源に接続され、他端は第1〜第4のトランジスタを通してグランドに接続される。そして、第1の抵抗は第1相巻線の下端と第2相巻線の下端との間、第2の抵抗は第3相巻線の下端と第4相巻線の下端との間にそれぞれ接続される。
【0010】
このような構成のステッピングモータにおいて、例えば第1のトランジスタをオンとして第1相巻線を励磁してロータを停止させる際に、第2相巻線に第1の抵抗で制限された電流が流れる。ステータにおける1相巻線、および第2相巻線のそれぞれ巻かれた各極と、ロータの極との間に吸引力が生じる。これにより、ロータの極の中心線がステータの第1相巻線が巻かれた極の中心線よりも少しずれた位置となるようロータが停止する。従って、ロータの角度位置の制御不可能な範囲(不感帯)が小さくなり、ロータの停止位置のバラツキが小さくなるとされている。
【0011】
しかしながら、特許文献1は、各相の巻線抵抗値のバラツキによって生じる全相励磁の際のロータの停止位置ずれを抑制することを課題とするものではない。
【0012】
上記状況に鑑み、本発明は、各相の巻線抵抗値のバラツキによって生じる全相励磁の際のロータの停止位置ずれを抑制できるステッピングモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の例示的なステッピングモータ装置は、
複数相の各巻線を有するステータと、
前記ステータと空隙を介して内側に配置されたロータと、
前記各巻線に流す電流のオンオフを切替え、前記各巻線に直列接続される各スイッチ素子と、
抵抗素子部を備え、
所定電圧が印加される電圧印加端とグランドの間において、前記各巻線のうち所定の
1つの巻線と前記所定の
1つの巻線に対応する前記スイッチ素子と前記抵抗素子部は順次、直列接続される
ことで、前記所定の1つの巻線と前記抵抗素子部の合成抵抗値を他の前記各巻線の抵抗値より大きくする構成としている。
【0014】
また、本発明の他の例示的なステッピングモータ装置は、
複数相の各巻線を有するステータと、
前記ステータと空隙を介して内側に配置されたロータと、
前記各巻線に流す電流のオンオフを切替え、前記各巻線に直列接続される各スイッチ素子と、を備え、
前記各巻線のうち所定の
1つの巻線は、他の相の巻線に比べて巻き数
を多く、または線径を小さくすることで、前記所定の1つの巻線の抵抗値を前記他の相の巻線より大きくする構成としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の例示的なステッピングモータ装置によれば、各相の巻線抵抗値のバラツキによって生じる全相励磁の際のロータの停止位置ずれを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1.第1実施形態>
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書では、便宜上、回転装置が有するモータの回転軸の軸方向を上下方向として説明するが、これは本発明の回転装置の使用時における姿勢を限定する趣旨ではない。また、本明細書では、回転装置が有するモータの回転軸の方向を単に「軸方向」と呼び、回転装置が有するモータの回転軸を中心とする径方向および周方向を単に「径方向」および「周方向」と呼ぶことにする。また、本明細書において、形状を特定する文言(例えば矩形状等)は、当該文言において特定される形状とほぼ同形状を含む趣旨である。
【0018】
<1.1 回路装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る回転装置1の構成を示す概略斜視図である。回転装置1は、モータ2を有する。本実施形態において、モータ2は、パルス状の電圧または電流に同期して動作するステッピングモータである。モータ2は、円柱形状の外形を含む本体部20を有する。なお、モータ2の形状は一例であり、例えば、モータ2は角型形状の外形を含む本体部を有してもよい。本体部20内には、ステータとロータ(
図1では不図示)が配置される(詳細構成は後述)。モータ2は、本体部20の上面から突出する回転軸21を有する。回転軸21は、本体部20内に配置されるロータに連結される。
【0019】
本体部20の下部には、取付台22が設けられる。回転装置1は、取付台22を介して支持部材(不図示)に取付けられる。軸方向から視たときに、取付台22は、矩形形状である。取付台22の四隅には、第1のネジ孔22aがそれぞれ形成される。本体部20の側面には、電気ケーブル(不図示)を接続する第1のコネクタ部23が設けられる。第1のコネクタ部23を介して、外部からモータ2に対して電力の供給およびパルス信号の入力が行われる。
【0020】
回転装置1は、モータ2の本体部20の上面から突出する回転軸21に固定される回転部3を有する。回転部3は、例えば金属によって形成される。なお、回転部3の材料は、金属以外であってもよい。回転部3は、回転軸21の回転と共に回転する。回転部3は、回転軸21に取付けられる円板部30を有する。円板部30の中心には、回転軸21の外径とほぼ同じ内径を有する貫通孔30aが形成される。貫通孔30aに回転軸21が圧入されることによって、回転部3は回転軸21に固定される。なお、円板部30の上面には、複数の第2のネジ孔30bが形成される。本実施形態では、円板部30の上面に、第2のネジ孔30bが3箇所形成される。第2のネジ孔30bには、リール(不図示)が取付けられる。円板部30の上面には、突起部30cが形成される。突起部30cにより、円板部30に取付けられるリールの位置を位置決めすることができる。
【0021】
回転部3は、円板部30の外周縁に沿って設けられると共にスリット31aが形成される環状部31を有する。すなわち、回転部3は、略円筒状の部材である。環状部31は、円板部30の径方向外側の端部から、軸方向下側に向かって延びる。環状部31は、円板部30と同一部材である。スリット31aは、環状部31の一部が切り欠かれることによって形成される。平面視において、スリット31aの外形は矩形状である。
【0022】
回転装置1は、モータ2の本体部20に固定される取付具4を有する。取付具4は、本体部20の上面に固定される。取付具4は、例えば金属によって形成される。回転装置1は、取付具4に着脱可能に取付けられるセンサ5を有する。センサ5は、回転部3のスリット31aの位置を検出する位置検出センサである。具体的には、センサ5は、透過型のフォトインタラプタである。
【0023】
センサ5は、発光部51と受光部52とを有する。取付具4にセンサ5が取付けられた状態では、環状部31は、発光部51と受光部52との間の径方向の間隙に位置する。モータ2が回転部3を周方向に回転させ、発光部51と受光部52との間にスリット31aが位置する場合に、受光部52は発光部51からの光を検出する。一方、モータ2が回転部3を周方向に回転させ、発光部51と受光部52との間にスリット31aが位置しない場合には、受光部52は発光部51からの光を検出しない。このために、スリット31aを基準として、回転部3の回転位置等を検出することができる。
【0024】
センサ5は、内部に端子ピンを含む第2のコネクタ部53を有する。第2のコネクタ部53を介して、外部からセンサ5の有する回路基板(不図示)に電力の供給が行われ、制御信号等が外部に出力される。
【0025】
図2は、上述した構成の回転装置1を有する遊技機10の概略構成を示す図である。遊技機10は、例えばスロットマシン、パチンコ機である。遊技機10は、第1の回転装置1A、第2の回転装置1B、および第3の回転装置1Cを有する。第1の回転装置1A、第2の回転装置1B、および第3の回転装置1C共に、上述した回転装置1(
図1)の構成を有する。
【0026】
第1の回転装置1Aは、モータ2Aと回転部3Aとを有する。回転部3Aには、第1のリール6Aが固定される。第1の回転装置1Aは、モータ2Aの取付台22(
図1)を介して遊技機10の支持部材(不図示)に取付けられる。
【0027】
第2の回転装置1Bは、モータ2Bと回転部3Bとを有する。回転部3Bには、第2のリール6Bが固定される。第2の回転装置1Bは、モータ2Bの取付台22(
図1)を介して遊技機10の支持部材(不図示)に取付けられる。
【0028】
第3の回転装置1Cは、モータ2Cと回転部3Cとを有する。回転部3Cには、第3のリール6Cが固定される。第3の回転装置1Cは、モータ2Cの取付台22(
図1)を介して遊技機10の支持部材(不図示)に取付けられる。
【0029】
第1のリール6Aにおいては、周方向に複数配列される識別情報61(絵柄)が表示される。第2のリール6Bにおいては、周方向に複数配列される識別情報62が表示される。第3のリール6Cにおいては、周方向に複数配列される識別情報63が表示される。本実施形態では、一例として識別情報61〜63をそれぞれ、1から21までの整数としている。すなわち、第1のリール6A、第2のリール6B、および第3のリール6Cのそれぞれにおいて、21個の識別情報61〜63が周方向に配列される。
【0030】
第1の回転装置1A、第2の回転装置1B、および第3の回転装置1Cによって、第1のリール6A、第2のリール6B、および第3のリール6Cをそれぞれ独立して回転させることができる。遊技機10がスロットマシンの場合は、例えば、ユーザが賭けるチップを決定し、第1のリール6A、第2のリール6B、および第3のリール6Cが回転中に各リールに対応する各ボタン(不図示)を押すと、各リールの回転が停止する。各リールの回転停止によって決定される識別情報61〜63の組合せに応じたチップがユーザに還元される。
【0031】
<1.2 ステッピングモータの構成>
本実施形態では、モータ2は、いわゆるハイブリッド型ステッピングモータで構成される。
図3は、モータ2の本体部20におけるステータ201およびロータ202の構成を示す平面図である。
図3の紙面に垂直方向が軸方向である。
【0032】
モータ2の本体部20は、ステータ201とロータ202とを有する。ステータ201は、ステータコア2011を有する。ステータコア2011は、環状の磁性枠であるバックヨーク部2011Aと、複数(本実施形態では8つ)の主極2011Bとを含む。
【0033】
主極2011Bは、バックヨーク部2011Aから放射状に且つ内方に向けて突出して形成される。主極2011Bの先端には、等ピッチで6個の小歯Thが設けられる。ステータ201の周方向において、順にA相、B相、Aバー相、Bバー相の各主極2011Bが配列されて形成される。同じ相の主極2011B同士は、径方向においてロータ202を介して対向して配置される。ステータ201は、各相の主極2011Bに巻かれる巻線(不図示)を有する。径方向において対向する同じ相の巻線同士は結線される。
【0034】
ロータ202は、ステータ201と空隙を介して内側に配置される。ロータ202は、軸方向に着磁される円筒形の磁石(不図示)と、第1のロータ磁極2021と、第2のロータ磁極2022とを有する。第1のロータ磁極2021と、第2のロータ磁極2022は、上記磁石を軸方向に両側から挟み込むように配置される。第1のロータ磁極2021の外周に等ピッチで複数設けられる小歯と、第2のロータ磁極2022の外周に等ピッチで設けられる小歯とは、軸方向に視たときに周方向に1/2ピッチずれるように配置される。上記磁石、第1のロータ磁極2021、および第2のロータ磁極2022に回転軸21が挿通されて固定される。
【0035】
図4は、モータ2における駆動回路構成を示す回路図である。A相巻線L1の一端は直流電圧VMが印加される電圧印加端25に接続され、他端はトランジスタで構成されるスイッチ素子Q1を介してグランドに接続される。すなわち、電圧印加端25とグランドとの間において、A相巻線L1とスイッチ素子Q1は順次、直列接続される。
【0036】
抵抗素子部R1の一端は電圧印加端25に接続され、他端はAバー相巻線L2、トランジスタで構成されるスイッチ素子Q2を介してグランドに接続される。すなわち、電圧印加端25とグランドとの間において、所定の巻線であるAバー相巻線L2とスイッチ素子Q2と抵抗素子部R1は順次、直列接続される。抵抗素子部R1の抵抗値は固定値である。
【0037】
B相巻線L3の一端は電圧印加端25に接続され、他端はトランジスタで構成されるスイッチ素子Q3を介してグランドに接続される。すなわち、電圧印加端25とグランドとの間において、B相巻線L3とスイッチ素子Q3は順次、直列接続される。Bバー相巻線L4の一端は電圧印加端25に接続され、他端はトランジスタで構成されるスイッチ素子Q4を介してグランドに接続される。すなわち、電圧印加端25とグランドとの間において、Bバー相巻線L4とスイッチ素子Q4は順次、直列接続される。
【0038】
A相巻線L1とスイッチ素子Q1との接続点は、ダイオードD1のアノードが接続される。Aバー相巻線L2とスイッチ素子Q2との接続点は、ダイオードD2のアノードが接続される。B相巻線L3とスイッチ素子Q3との接続点は、ダイオードD3のアノードが接続される。Bバー相巻線L4とスイッチ素子Q4との接続点は、ダイオードD4のアノードが接続される。ダイオードD1〜D4の各カソードには、ツェナーダイオードZDのカソードが接続される。ツェナーダイオードZDのアノードには、電圧印加端25が接続される。
【0039】
スイッチ素子Q1〜Q4をそれぞれオンオフさせることにより、各相の巻線L1〜L4に電流を流して励磁させたり、電流を遮断して励磁を解除することを切替える。1つの相の巻線には一方向の電流のみを流すので、モータ2はいわゆるユニポーラ方式に該当する。制御部24は、外部より入力されるパルス信号Pに応じて、各スイッチ素子Q1〜Q4のオンオフ制御を行い、所定の励磁パターンにて各相の巻線L1〜L4を励磁させる。
【0040】
モータ2においては基本的には、(A,B)→(B,Aバー)→(Aバー,Bバー)→(Bバー,A)の順に、常に2つの巻線から成る組に電流を流して励磁させる2相励磁によってロータ202が回転駆動される。すなわち、4ステップを1周期として駆動される。ここで、リールを回転させるモータ2として望ましい1回転における基本ステップ数は、(リールにおける識別情報の個数)×(4ステップ)×(1以上の整数)で表される。本実施形態では、一例として識別情報の個数は21個、1以上の整数は2として、モータ2の基本ステップ数は、21×4×2=168ステップとしている。
【0041】
図2に示すように本実施形態では、リールをモータ2に直接固定して使用するため、モータ2の挙動が直接、リールの動作に影響を与える。そこで、リールを回転させる際には、2相励磁よりも細かいステップでの1−2相励磁によってモータ2を駆動する。
図5は、1−2相励磁の励磁パターンを示す図である。1−2相励磁では、A→(A,B)→B→(B,Aバー)→Aバー→(Aバー,Bバー)→Bバー→(Bバー,A)の順に、1相励磁、2相励磁を交互に行う。この場合、1回転におけるステップ数は、2相励磁の場合の168ステップの2倍である336ステップとなる。
【0042】
次に、モータ2において抵抗素子部R1を設ける意義について述べる。
図6は、第1のリール6Aを駆動用のモータ2A、第2のリール6Bを駆動用のモータ2B、および第3のリール6Cを駆動用のモータ2Cの各モータにおける各相の巻線抵抗値の測定結果例を示す表である。なお、以下特に断らない限りは、モータ2A〜2Cにおいて抵抗素子部R1は設けていない状態として説明する。
【0043】
第1のリール6Aを駆動用のモータ2Aにおいては、A相巻線L1、Aバー相巻線L2、B相巻線L3、およびBバー相巻線L4の巻線抵抗値の大小関係では、A相巻線L1の巻線抵抗値が最も大きい(
図6の「追加抵抗なし」の欄)。これに対し、第2のリール6Bを駆動用のモータ2B、および第3のリール6Cを駆動用のモータ2Cにおいては、共にAバー相巻線L2の巻線抵抗値が最も大きくなっている。このように、各モータ間において巻線抵抗値のバラツキが生じる。
【0044】
ここで、回転中のリールを停止させる際には、モータ2においては、スイッチ素子Q1〜Q4の全てをオンとして、A相巻線L1、Aバー相巻線L2、B相巻線L3、およびBバー相巻線L4の全てを励磁させる全相励磁を行う。そして、全相励磁によって生じる回生ブレーキトルクを用いてロータ202(すなわちリール)を減速し、所定のタイミングで全ての相の巻線の励磁を解除する全相励磁解除を行ってリールを停止させる。
【0045】
回生ブレーキトルクは、各相のホールディングトルクの総和である。
図7は、
図6で示す巻線抵抗値を有する各モータにおける回転位置に対する回生ブレーキトルクの測定結果を示すグラフである。
図7の横軸は、ロータ202の回転位置を回転角度で示している。また、
図7の測定開始位置は、A相励磁にて各モータ間で合わせている。
【0046】
図6に示したようにモータ2A(第1のリール6Aに対応)と、モータ2B(第2のリール6Bに対応)およびモータ2C(第3のリール6Cに対応)とで各相の巻線抵抗値の大小関係の傾向が異なるために、モータ2Aにおける回生ブレーキトルク(
図7の細破線)は、モータ2Bおよびモータ2Cにおける回生ブレーキトルク(
図7の太破線、一点鎖線)に対して位相が約180°ずれている。
【0047】
このような回生ブレーキトルクの位相ずれによって、全相励磁中の全相励磁解除によって各リールを停止させた際に、第2のリール6Bおよび第3のリール6Cは回転停止位置が一致したが、第1のリール6Aは、第2のリール6Bおよび第3のリール6Cに対して回転停止位置がずれてしまう。
【0048】
また、
図8は、モータ2A(第1のリール6Aに対応)において全相励磁および全相励磁解除を行った際の第1のリール6Aの回転位置の挙動を示すグラフである。ただし、
図8において、各相のグラフはHighレベルが励磁状態を、Lowレベルが無励磁状態を示す。このように、全相励磁解除を行うタイミングt1以降、第1のリール6Aの回転位置は揺動して不安定となった。これは、全相励磁解除時において、回生ブレーキトルクの安定点とモータ2Aのディテントトルクの安定点とが一致していないからである。モータ2では、通電を行っていない状態でもロータ202の磁石の吸引力によって或る程度の保持トルクが生じる。この保持トルクをディテントトルクと呼ぶ。ディテントトルクの安定点は、1回転における基本ステップ数(先述の例では168)の箇所に存在する。
【0049】
そこで、本実施形態では、モータ2Bおよびモータ2CでのAバー相の巻線抵抗値が最も大きいという傾向と一致させるべく、モータ2AにおいてAバー相巻線L2に対して直列に抵抗素子部R1を接続する。具体的には、
図6に示すように、抵抗値4.7Ωの抵抗素子部R1を追加することで、Aバー相巻線L2と抵抗素子部R1との合成抵抗の抵抗値(96Ω)を他の相の巻線抵抗値よりも大きくしている(
図6の「Aバー相抵抗追加」の欄)。
【0050】
このように抵抗素子部R1を追加したモータ2Aにおいて生じる回生ブレーキトルクの測定結果を
図7の実線に示す。抵抗素子部R1の追加によって、モータ2Aの回生ブレーキトルクは、モータ2Bおよびモータ2Cの回生ブレーキトルクに対する位相ずれが抑制されている。このように位相ずれを抑制することで、全相励磁中の全相励磁解除によって各リールを停止させた際に、第1のリール6Aは、第2のリール6Bおよび第3のリール6Cに対して回転停止位置を一致させることができる。
【0051】
また、
図9は、抵抗素子部R1を追加したモータ2Aにおいて全相励磁および全相励磁解除を行った際の第1のリール6Aの回転位置の挙動を示すグラフである。このように、全相励磁解除を行うタイミングt2以降、第1のリール6Aの回転位置は揺動が抑えられている。これは、全相励磁解除時に回生ブレーキトルクの安定点とディテントトルクの安定点とが一致するからである。
【0052】
なお、
図10は、本実施形態のモータ2よりもディテントトルクの大きい従来のモータにおいて全相励磁および全相励磁解除を行った際のリールの回転位置の挙動を示すグラフである。ディテントトルクが大きい場合、
図10に示すように、全相励磁中にリールの回転位置のオーバーシュートとアンダーシュートが大きくなる。しかしながら、全相励磁解除以降、リールの回転位置の揺動は抑えることができる。
【0053】
これに対し、本実施形態のモータ2では、ディテントトルクが小さいので、
図8に示すように全相励磁中におけるリールの回転位置のオーバーシュートとアンダーシュートを抑えることはできるが、全相励磁解除以降の回転位置の揺動が生じる。そこで、抵抗素子部R1を追加することで
図9に示すように全相励磁解除以降の回転位置の揺動を抑制している。すなわち、抵抗素子部の追加は、ディテントトルクの比較的小さなモータにおいて特に有効である。
【0054】
また、モータ2の内部に設けられる内部基板にスイッチ素子Q1〜Q4、ダイオードD1〜D4、ツェナーダイオードZD、および制御部24を実装する場合、抵抗素子部R1も当該内部基板に実装してもよい。または、当該内部基板の外部で抵抗素子部R1を巻線に直結してもよい。
【0055】
または、モータ2に接続する電気ケーブルの配線中に抵抗素子部R1を設けてもよい。さらには、モータ2の外部に設けられる外部基板に抵抗素子部R1を実装してもよい。すなわち、本発明に係るステッピングモータ装置とは、モータ自体のみならず、モータと電気ケーブルのセット、またはモータと外部基板のセット等を含む概念である。
【0056】
また、複数のリールに対応した複数の回転装置1の製造工程において、複数の各モータ2の各相の巻線抵抗値を作業者が測定することが可能な場合は、例えば
図6のような巻線抵抗値のバラツキが予め分かるので、所定のリールに対応するモータのみ(例えばモータ6Aのみ)に抵抗素子部R1を追加するといった対応が可能である。
【0057】
ただし、巻線抵抗値の測定を行うことは量産工程において作業効率の低下を招くので、複数のモータ2の全てにおいて一律に同じ相に抵抗素子部R1を追加する作業を行うようにしてもよい。これにより、例えば
図6の例であれば、第2のリール6Bに対応するモータ2B、および第3のリール6Cに対応するモータ2CにもAバー相に抵抗素子部R1が追加されることとなるが、Aバー相の抵抗値が最大になるという抵抗値の傾向はモータ2A〜2Cで一致させることができる。すなわち、回生ブレーキトルクの位相のずれは抑制できる。
【0058】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図11は、本実施形態に係るモータ2における駆動回路構成を示す回路図である。
図11は、先述した
図4に対応する。
【0059】
第1実施形態では抵抗素子部R1の抵抗値は固定であったが、本実施形態では抵抗素子部VR1として、手動で抵抗値を調整可能な可変抵抗器を用いる。抵抗素子部VR1は、例えば回動するつまみにより抵抗値を調整可能である。
【0060】
このような構成によれば、作業者が各相の巻線抵抗値を予め測定し、抵抗値のバラツキ状態を把握できる場合に、作業者が抵抗素子部VR1を手動で調整することにより、Aバー相に適切な抵抗値を付与することが可能となる。すなわち、複数のモータ2ごとにAバー相に適切な抵抗値を付与することができる。先述した
図6におけるモータ2B、2Cのように抵抗素子部を追加する必要が無い場合、抵抗素子部VR1の抵抗値をほぼゼロに調整することも可能である。
【0061】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図12は、本実施形態に係るモータ2における駆動回路構成を示す回路図である。
図12は、先述した
図4に対応する。
【0062】
第1実施形態では抵抗素子部R1の抵抗値は固定であったが、本実施形態では可変抵抗としての抵抗素子部VR2を用いる。抵抗素子部VR2は、直列に接続されたスイッチSWと抵抗素子R11の組を複数並列接続して構成される。制御部24によってスイッチSWをオンオフさせることで抵抗素子部VR2の抵抗値を調整可能である。すなわち、抵抗素子部VR2は複数の抵抗素子R11を有しており、制御部24は、複数の抵抗素子R11の有効または無効の組合せを切替えることにより抵抗素子部VR2の抵抗値を可変とする。
【0063】
また、制御部24は、外部より入力される各相の巻線抵抗値に関する情報IRを記憶可能である。情報IRは、例えば回転装置1の製造工程において作業者によって入力される。制御部24は、記憶された情報IRに基づいてスイッチSWのオンオフを行い、抵抗素子部VR2の抵抗値を選択する。
【0064】
このような構成によれば、各相の巻線抵抗値のバラツキ状態に応じて、Aバー相の抵抗値を適切な値に調整できる。
【0065】
なお、抵抗素子部VR2の構成は
図12に示すものに限らず、例えば巻線と電圧印加端25との間をつなぐラインにスイッチのみを設けたものを抵抗素子部VR2に含めてもよい。これにより、当該スイッチをオンとすることで、抵抗素子部VR2の抵抗値をゼロに調整することも可能となる。
【0066】
<4.第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、例えば、第1実施形態での
図4の構成において、抵抗素子部R1は設けずに、Aバー相巻線L2を他のA相巻線L1、B相巻線L3、およびBバー相巻線L4に比べて巻き数を多くする。
【0067】
これにより、各相の巻線抵抗値にバラツキが生じたとしても、Aバー相の巻線抵抗値を他の相の巻線抵抗値よりも大きくすることが可能となる。複数のリールに対応した複数の各モータにおいて同様に巻き数を設定すればよいので、作業者の作業効率が低下することもなく、各モータの巻線抵抗値の傾向を一致させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、例えば第1実施形態での
図4の構成において、抵抗素子部R1は設けずに、Aバー相巻線L2を他の相の巻線に比べて線径を小さくしてもよい。このようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
【0070】
上記実施形態では、ディテントトルクの波形により無励磁状態におけるロータ安定点を把握すると共に、全相励磁状態のホールディングトルクの波形によりロータ安定点を把握し、両者が最も近くなる励磁相としてA相で停止させるようにしている。そこで、上記実施形態では、A相励磁ポイントで停止させるため、Aバー相の抵抗値を高くし、A相に流れる電流値を大きくすることで、A相成分のホールディングトルクを高くしている。しかしながら、モータ構造によりどの相で停止させるかの違いが発生するので、別の相の抵抗値を調整してもよい。また、上記実施形態のように1相だけでなく、2相励磁ポイントで停止させるようにするため、複数相の抵抗値を調整するようにしてもよい。
【0071】
また、本発明は、上記実施形態のようなハイブリッド型ステッピングモータに限ることは無く、例えばPM(パーマネント・マグネット)型ステッピングモータに適用してもよい。