(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図13は、引用文献1に記載のバッフル駆動機構の輪列に採用可能な欠歯歯車と扇形歯車の斜視図および平面図である。
図13では、欠歯歯車38は歯部51に周方向で隣り合う位置に歯部51の歯先円51aと同径で同心の外周面52aを有する円弧状外周部52を備える。扇形歯車39は、周方向の一方の端に位置する歯(第1歯68)が、欠歯歯車38の円弧状外周部52の外周面52aに対向する部分に切り欠きを備える。
【0007】
図13に示す状態はバッフルが閉位置に配置されて欠歯歯車が停止した状態である。この状態では、扇形歯車39の第1歯68が、円弧状外周部52の端面52bにおける欠歯歯車38の回転中心軸線L1方向の一方側で歯先円51aの内周側に進入している。また、扇形歯車39の第2歯69が、円弧状外周部52の外周面52aに当接している。これにより、扇形歯車39が第1回転方向B1(バッフルを開く回転方向)へ回転することが阻止されている。
【0008】
閉位置にあるバッフルを開位置に移動させる際には、ステッピングモータの駆動によって欠歯歯車38が第1回転方向A1に回転する。従って、欠歯歯車38が回転を開始すると、欠歯歯車38において最も円弧状外周部52の側に位置する歯53(第1回転方向A1の前端の歯)は、円弧状外周部52の外周面52aに当接している扇形歯車の第2歯69を越えて、第1歯68と第2歯69の間に噛合することになる。
【0009】
ここで、
図13に示すように、扇形歯車39にバッフルの側から作用する力や部品公差などに起因して扇形歯車39の回転中心軸線L2が傾斜していると、円弧状外周部52の外周面52aに当接した状態の扇形歯車39の第2歯69の軸線L1方向の一方側の端69cが、円弧状外周部52の端面52bにおける軸線L1方向の一方側で欠歯歯車38の歯先円51aの内周側に進入することがある。この場合には、欠歯歯車38の歯53が、扇形歯車の第2歯69を越えようとするときに、欠歯歯車38の歯53と第2歯69が干渉して、異音を発生させる。
【0010】
本発明の課題は、かかる点に鑑みて、扇形歯車と欠歯歯車が噛合を開始する際に、扇形歯車の回転中心軸線が傾斜している場合でも、扇形歯車と欠歯歯車が干渉して異音が発生することを防止或いは抑制できるダンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のダンパ装置は、開口部を開閉するためのバッフルと、モータと、前記モータの回転を前記バッフルに伝達する輪列と、を有し、前記輪列は、欠歯歯車と、前記欠歯歯車に噛合して当該欠歯歯車に従動する扇形歯車と、を備え、前記欠歯歯車は、その歯部に周方向で隣り合う位置に当該歯部の歯先円に沿った円弧の外周面を備える外周部を備え、前記外周部は、軸線方向の長さが前記歯部の歯幅よりも短く、前記軸線方向における前記歯部の途中の位置に当該軸線方向の一方側を向く端面を備え、
前記扇形歯車は、前記外周面に対向する部分が切り欠かれており前記端面における前記軸線方向の一方側で前記歯先円の内周側に進入可能な第1歯と、前記第1歯の隣に位置して当該第1歯が前記歯先円の内周側に進入したときに前記外周面に当接可能な第2歯と、を備え、前記第2歯は、前記軸線方向の一方側の端から他方側に向かって歯先の側から切り欠かれて
おり、前記歯部における最も前記外周部側の歯は、前記外周部とは反対側の第1歯面の曲率が当該外周部側の第2歯面の曲率より小さいことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、扇形歯車の第1歯が欠歯歯車の外周部の端面における軸線方向の一方側で歯先円の内周側に進入すると、扇形歯車の第2歯が外周部の外周面に当接して扇形歯車の回転が規制される。従って、例えば、バッフルが開口部を閉じる閉位置に配置されたときに第1歯が欠歯歯車の歯先円の内周側に進入して第2歯が外周部の外周面に当接する状態となるようにすれば、扇形歯車がバッフルを開く開方向へ回転することを阻止できる。
また、このようにすれば、回転規制状態の扇形歯車に、当該扇形歯車を回転が規制されている方向に回転させる力が付与されている場合などに、第2歯が第1歯面を摺接して扇形歯車が急速に回転すること防止できる。従って、輪列を構成する部材同士が急激に接触して、異音を発生させることを防止或いは抑制できる。
【0013】
ここで、扇形歯車の第2歯は、軸線方向の一方側の端から他方側に向かって歯先の側から切り欠かれている。従って、扇形歯車の回転中心軸線が傾斜した場合でも、外周部の外周面に当接した状態の第2歯の軸線方向の一方の端部分が、弧状外周部の端面における軸線方向の一方側で歯先円の内周側に進入することを防止或いは抑制できる。従って、欠歯歯車が回転を開始して欠歯歯車の最も外周部側に位置する歯が扇形歯車の第1歯と第2歯の間に噛合する際に、欠歯歯車の歯と第2歯とが干渉して異音を発生させることを防止或いは抑制できる。
【0014】
本発明において、前記第2歯における前記軸線方向の一方側の歯端面は、前記端面と同一平面上か、または、前記端面よりも前記軸線方向の他方側に位置することが望ましい。このようにすれば、扇形歯車の第2歯は欠歯歯車の外周部の端面よりも軸線方向の一方側に突出する部分を有さない。従って、扇形歯車の回転中心軸線が傾いた場合でも、第2歯が外周部の端面における軸線方向の一方側で歯先円の内周側に進入することがない。よって、欠歯歯車と扇形歯車が噛合を開始する際に欠歯歯車の歯と第2歯が干渉して異音を発生させることを防止できる。
【0016】
この場合において、前記歯部における最も前記外周部側の歯の歯面は、前記第1歯面の側から前記第2歯面まで連続した湾曲面になっていることが望ましい。このようにすれば、回転規制状態の扇形歯車に、当該扇形歯車を回転が規制されている方向に回転させる力が付与されている場合などに、第2歯が湾曲面から第1歯面を摺接して扇形歯車が急速に回転すること防止できる。
【0017】
本発明において、前記バッフルが前記開口部を閉じる閉位置に配置されたときに、前記第1歯が前記外周部の前記端面における前記軸線方向の一方側で前記歯先円の内周側に進入し前記第2歯が前記外周面に当接して前記扇形歯車が前記バッフルを開く方向に回転することが阻止されるものとすることができる。このようにすれば、開位置に配置されたバッフルが流体圧を受けてばたつくことを抑制できる。ここで、モータとしてステッピングモータが用いられる際には、バッフルによって開口部を確実に閉鎖するために、バッフルが閉位置に配置された後にも更にモータを複数ステップ駆動することがある。このような場合には、ステッピングモータで発生する脱調に起因してバッフルがばたつきやすくなる。かかる問題に対して、バッフルが閉位置に配置されたときに扇形歯車がバッフルを開く方向に回転することを阻止すれば、このばたつきを抑制できる。
【0018】
本発明において、前記開口部を備えるフレームを有し、前記バッフルは、前記開口部を封鎖可能な弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記バッフルが前記閉位置に配置されたときに、前記フレームにおける前記開口部の開口縁に当接して弾性変形するものとすることができる。このようにすれば、バッフルによって開口部を確実に閉鎖できる。ここで、弾性変形した弾性部材の形状復帰力は、バッフルを開く方向に扇形歯車を回転させる力として作用するが、バッフルが閉位置に配置されたときに扇形歯車はバッフルを開く方向に回転することが阻止されている。従って、弾性部材の形状復帰力によってバッフルが閉位置から開口部を開く方向に移動することがない。
【0019】
本発明において、前記扇形歯車は、前記バッフルに連結された出力歯車とすることができる。
【0020】
本発明において、前記第1歯は、前記欠歯歯車と噛合する複数枚の歯のうちの1枚であることが望ましい。すなわち、扇形歯車は、第1歯を複数枚備えることが可能であるが、第1歯を1枚とすれば、扇形歯車を周方向でコンパクトにすることができる。
【0021】
本発明において、前記モータを収容するケースを有し、前記ケースは、前記扇形歯車を回転可能に支持する筒部を備え、前記扇形歯車は、軸部、前記軸部よりも大径で当該軸部と同軸に延びる大径軸部、前記軸部と前記大径軸部との間で前記軸部の側を向く環状面、前記欠歯歯車と噛合可能な複数枚の歯を外周面に備える円弧部、および、前記大径軸部から外周側に突出して当該大径軸部と前記円弧部とを接続する連結部を備え、前記複数枚の歯には、前記第1歯および前記第2歯が含まれ、前記軸部は、当該軸部の径寸法よりも当該軸部の軸線方向の高さ寸法の方が長く、前記筒部には、前記軸部が挿入されて回転可能に嵌合し、前記筒部の開口縁には、前記環状面が当接していることが望ましい。このようにすれば、筒部に支持される軸部の長さ寸法を確保できるので、筒部によって扇形歯車を支持したときに、扇形歯車が傾斜することを防止あるいは抑制できる。
【0022】
ここで、筒部に支持される軸部の長さ寸法を長くすれば、扇形歯車の傾斜を防止することが容易になる。しかし、軸部の長さ寸法を長くした場合には、扇形歯車に対して軸線と交差する方向から力が加わったときに、筒部に支持されている軸部の先端に応力が集中して軸部の破損を招く可能性がある。このような事態を回避するためには、前記軸部の高さ寸法は、当該軸部の径寸法の2倍以下であることが望ましい。
【0023】
本発明において、前記ケースは、前記筒部において前記軸部が挿入される側とは反対側の開口を封鎖する封鎖部を備え、前記扇形歯車は、一方の端が前記軸部の先端面に開口し、他方の端が前記大径軸部の外周面に開口する空気流路を備えることが望ましい。ケースが筒部の開口を封鎖する封鎖部を備えれば、扇形歯車の軸受として機能する筒部の剛性が向上する。従って、扇形歯車に対して軸線と交差する方向から力が加わった場合でも、筒部により扇形歯車を傾斜させることなく支持することができる。ここで、封鎖部により底が設けられた筒部に扇形歯車の軸部を挿入して回転可能に嵌合させると、筒部と封鎖部によって区画された空間内の空気が当該空間から外に逃げることができず、扇形歯車はその環状端面が筒部の開口縁から浮き上がった状態となる場合がある。これに対して、扇形歯車は軸部の先端面と大径軸部の外周面を連通させる空気流路を備え、この空気流路は、筒部に扇形歯車の軸部が挿入される際に、筒部と封鎖部によって区画された空間と外部とを連通させる。従って、扇形歯車の軸部を筒部に挿入する際に、筒部と封鎖部によって区画された空間内の空気は空気流路を介して外に逃げる。よって、扇形歯車は筒部によって確実に支持される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、扇形歯車の第1歯が欠歯歯車の外周部の端面における軸線方向の一方側で歯先円の内周側に進入すると、扇形歯車の第2歯が外周部の外周面に当接して扇形歯車の回転が規制される。また、第2歯は、軸線方向の一方側の端から他方側に向かって歯先の側から切り欠かれている。従って、扇形歯車の回転中心軸線が傾斜した場合でも、外周部の外周面に当接した状態の第2歯の軸線方向の一方の端部分が、弧状外周部の端面における軸線方向の一方側で歯先円の内周側に進入することを防止或いは抑制できる。よって、欠歯歯車が回転を開始して欠歯歯車の最も外周部側に位置する歯が扇形歯車の第1歯と第2歯の間に噛合する際に、欠歯歯車の歯と第2歯とが干渉して異音を発生させることを防止或いは抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を適用した冷蔵庫用のダンパ装置について説明する。
【0027】
(全体構成)
図1は本発明を適用したダンパ装置をバッフルが配置されている側からみた斜視図である。
図1(a)は開口部が開いている状態であり、
図1(b)は開口部が閉じている状態である。
図2は
図1のダンパ装置の分解斜視図である。以下の説明では、ダンパ装置1におけるバッフル2の回転中心軸線をL0とし、回転中心軸線L0に沿う方向をX方向とし、X方向と直交してバッフル2により開閉される開口部3が向いている方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とする。また、X方向の一方側をX1とし、X方向の他方側をX2とし、Y方向の一方側をY1とし、Y方向の他方側をY2とし、Z方向の一方側をZ1とし、Z方向の他方側をZ2とする。
【0028】
図1(a)に示すように、ダンパ装置1は、Z方向に開口する矩形の開口部3を備えるフレーム5と、フレーム5の開口部3を開閉するバッフル2を備える。また、ダンパ装置1は、
図2に示すように、バッフル2を駆動するバッフル駆動機構6を備える。バッフル駆動機構6は、フレーム5のX方向の一方側X1にフレーム5と一体に設けられた蓋7と、蓋7にX方向の一方側X1から被せられたケース8により区画された駆動室9に収納されている。ケース8、蓋7およびバッフル駆動機構6はギヤードモータ10を構成している。フレーム5、蓋7およびケース8は樹脂製である。
【0029】
フレーム5は、
図1(a)に示すように、開口部3が形成された矩形の端板部12と、端板部12の外縁からZ方向の他方側Z2に突出した角筒状の胴部13を有する。蓋7は、胴部13のX方向の他方側X2に胴部13と一体に設けられている。端板部12における開口部3の縁には、バッフル2が位置する側に向けて突出した角筒状のシール板部14が設けられている。
【0030】
ここで、バッフル2が開口部3を開く開位置2Aに配置された状態は、
図1(a)に示す状態であり、バッフル2は端板部12と直交する姿勢となる。バッフル2が開口部3を閉じる閉位置2Bに配置された状態は、
図1(b)に示す状態であり、バッフル2は端板部12と平行に延びる姿勢となる。バッフル2は閉位置2Bと開位置2Aとの間を90°の角度範囲で回動する。
【0031】
バッフル2は、Z方向の他方側Z2からシール板部14に当接して開口部3を閉状態とする。端板部12におけるバッフル2が位置する側の面には、開口部3(シール板部14)を囲む状態にヒータ15が取り付けられている。
【0032】
バッフル2は、開口部3よりも大きい矩形の大きな平板部18を備える開閉板19と、平板部18の開口部3の側の面に貼り付けられ矩形の弾性部材20を有する。弾性部材20は、シート状であり、発泡ポリウレタン等からなる。弾性部材20は、バッフル2が閉位置2Bに配置されたときに、シール板部14に当接して弾性変形する。
【0033】
また、バッフル2は、Y方向の一方側Y1の端部分におけるX方向の他方側X2の端部分に、バッフル駆動機構6の出力軸6a(
図2参照)が挿入された第1軸部21を備える。さらに、バッフル2は、Y方向の一方側Y1の端部分におけるX方向の一方側X1の端部分に、胴部13に回転可能に支持された第2軸部22を備える。バッフル駆動機構6が駆動されると、バッフル2は、第1軸部21および第2軸部22と同軸の回転中心軸線L0回りに回転して開口部3を開閉する。
【0034】
ダンパ装置1は、冷蔵庫の冷気通路を構成するダクトの内側に配置される。冷気は、開口部3に対してバッフル2が配置されている側とは反対から開口部3を通って流れる。あるいは、開口部3に対してバッフル2が配置されている側から開口部3を通って流れる。
【0035】
(ギヤードモータ)
図3は蓋7を取り除いたギヤードモータ10の説明図である。
図3(a)はギヤードモータ10をX方向の一方側X1から見た場合の平面図であり、
図3(b)はギヤードモータ10の分解斜視図である。ギヤードモータ10のケース8はY方向およびZ方向に広がる底板部25と、底板部25から蓋7の側(X方向の一方側X1)に突出した角筒状のケース胴部26を有する。
【0036】
バッフル駆動機構6はケース8に収納されている。バッフル駆動機構6は、モータ31と、モータ31の回転をバッフル2に伝達する輪列32を備える。モータ31はステッピングモータであり、その出力軸31aがX方向の一方側X1に向く姿勢とされている。モータ31の出力軸31aにはピニオン33が取り付けられている。
【0037】
輪列32は、ピニオン33と、ピニオン33に噛合する大径歯車を備える1番車34と、1番車34の小径歯車(不図示)に噛合する大径歯車を備える2番車35と、2番車35の小径歯車に噛合する駆動歯車36を有する。輪列32において、1番車34、2番車35および駆動歯車36は減速輪列を構成している。駆動歯車36は、2番車35の小径歯車に噛合する大径歯車37と、大径歯車37のX方向の一方側X1に大径歯車37と一体で同心に設けられた欠歯歯車38を備える。
【0038】
また、輪列32は、駆動歯車36の欠歯歯車38と噛合して駆動歯車36に従動する扇形歯車39を有する。扇形歯車39は、輪列32の最終段に位置する最終歯車(出力歯車)であり、バッフル2に連結される出力軸6aを備える。1番車34、2番車35、駆動歯車36および扇形歯車39は、それぞれ回転中心軸線をX方向に向けてケース8の底板部25に回転可能に支持されている。
【0039】
(駆動歯車)
図4(a)は駆動歯車36および扇形歯車39を駆動歯車36の欠歯歯車38の側から見た斜視図であり、
図4(b)は駆動歯車36および扇形歯車39を駆動歯車36の大径歯車37の側から見た斜視図であり、
図4(c)は駆動歯車36および扇形歯車39を欠歯歯車38の側から見た平面図である。
図5(a)は駆動歯車36の斜視図であり、
図5(b)は扇形歯車39の斜視図である。
図6(a)は欠歯歯車38の歯の歯面形状の説明図であり、
図6(b)は、一般的な欠歯歯車の歯の形状を示す参考図である。
図4、
図6に示す状態はバッフル2が閉位置2Bに配置されている状態である。
【0040】
図4および
図5(a)に示すように、駆動歯車36は、X方向の他方側X2から一方側X1に向って、平歯車からなる大径歯車37と、大径歯車37よりも小径の欠歯歯車38をこの順番に備える。また、駆動歯車36は大径歯車37と欠歯歯車38を貫通して延びる軸孔43を備える。軸孔43にはケース8の底板部25からX方向の一方側X1に突出する支軸44(
図3(b)参照)が挿入される。これにより駆動歯車36は支軸44の軸線L1回り(軸孔43の軸線L1回り)に回転可能となる。支軸44の軸線L1は駆動歯車36の回転中心軸線L1である。
【0041】
図4(b)に示すように、大径歯車37において底板部25と対向するX方向の他方側X2の端面37aには、軸孔43の回りに軸孔43と同心で所定の角度範囲に渡る一定幅の円弧溝45が形成されている。円弧溝45には、ケース8の底板部25において支軸44と同心に形成されてX方向の一方側X1に突出する円弧形状突部46(
図3(b)参照)が挿入される。これにより、駆動歯車36は、円弧形状突部46が、円弧溝45の内周面における周方向の一方の内周端面45aに当接する位置から他方の内周端面45bに当接する位置までの間でその回転が許容される。すなわち、大径歯車37の円弧溝45とケース8の円弧形状突部46は駆動歯車36の回転角度範囲を規制する回転角度範囲規制機構47を構成する。
【0042】
ここで、
図4に矢印A1で示す駆動歯車36の第1回転方向A1は、バッフル2を開く方向に回転させる回転方向である。駆動歯車36に従動する扇形歯車39は、駆動歯車36が第1回転方向A1に回転する際に、
図4に矢印B1で示す第1回転方向B1に回転する。一方、
図4において矢印A2で示す駆動歯車36の第2回転方向A2は、バッフル2を閉じる方向に回転させる回転方向である。駆動歯車36に従動する扇形歯車39は、駆動歯車36が第1回転方向A1に回転する際に、
図4に矢印B2で示す第2回転方向B2に回転する。バッフル2が閉位置2Bに配置された状態では、
図4(c)に示すように、大径歯車37の円弧溝45の一方側の内周端面45aとケース8の円弧形状突部46が当接する。従って、回転角度範囲規制機構47により、駆動歯車36が第2回転方向A2(バッフルを閉じる回転方向)にそれ以上回転することが規制される。
【0043】
欠歯歯車38は、
図4(c)および
図5(a)に示すように、180°よりも狭い所定の角度範囲に渡って歯部51を備える。また、欠歯歯車38は、歯部51に周方向で隣り合う位置に歯部51の歯先円51aに沿った円弧の外周面52aを有する円弧状外周部(外周部)52を備える。円弧状外周部52は、歯部51の歯先円51aと同径かつ同心に形成されており、大径歯車37のX方向の一方側X1の端面から駆動歯車36の回転中心軸線L1に沿ってX方向に沿って突出している。円弧状外周部52の外周面52aは回転中心軸線L1方向から見た場合に歯部51の歯先円51aと重なっている。また、円弧状外周部52は、X方向の長さが歯部51の歯幅(歯部51のX方向の長さ)よりも短く、X方向における歯部51の途中の位置にX方向の一方側X1(回転中心軸線L1方向の一方側)を向く端面52bを備える。
【0044】
ここで、欠歯歯車38の歯部51を構成する複数の歯のうち、最も円弧状外周部52の側の歯53は、
図6(a)に示すように、円弧状外周部52の側とは反対側の第1歯面53aの曲率が円弧状外周部52の側の第2歯面53bの曲率より小さい。また、歯53の歯面は、最も外周側に位置する外周部分53cが第1歯面53aと連続した曲面を構成しており、外周部分53cと第2歯面53bとの間のみに変曲部が存在する。従って、歯部51における最も円弧状外周部52の側の歯53は、第1歯面53aの側から第2歯面53bまで連続した湾曲面53dを備える。なお、歯53の歯面の形状として、一般的な歯車における歯面の形状を採用した場合には、
図6(b)に示すように、円弧状外周部52の側とは反対側の第1歯面53aの曲率と、円弧状外周部52の側の第2歯面53bの曲率は等しく、最も外周側に位置する外周部分53cと第1歯面53aとの間、および外周部分53cと第2歯面53bとの間に変曲部が存在する。
【0045】
(扇形歯車)
図4および
図5(b)に示すように、扇形歯車39は、軸部61と出力軸6aと、軸部61と出力部の間に設けられた円柱部(大径軸部)62を有する。軸部61は扇形歯車39のX方向の他方側X2の端に位置する。ケース8の底板部25にはX方向の一方側X1に突出する筒部63が設けられており(
図3(b)参照)、軸部61はこの筒部63に挿入される。これにより、扇形歯車39は、筒部63の軸線L2回り(軸部61の軸線L2回り)に回転可能となる。筒部63の軸線L2は扇形歯車39の回転中心軸線L2である。
【0046】
出力軸6aは、バッフル駆動機構6の出力軸6aである。出力軸6aの外周面には回転中心軸線L2を挟んだ両側に平行な平坦部64が設けられている。バッフル2の第1軸部21には、X方向の他方側X2の端面に出力軸6aに嵌合する凹部が形成されており、出力軸6aを凹部に嵌め込むことにより出力軸6aの回転がバッフル2に伝達可能となる。円柱部62は、軸部61および出力軸6aと同軸であり、その外径は軸部61の外径および出力軸6aの外径よりも大きい。
【0047】
また、扇形歯車39は、円柱部62の外周側に、その外周面に沿って複数の歯を備える円弧部65を備える。円柱部62と円弧部65の間には、これらを連続させる連結部66が設けられている。
【0048】
扇形歯車39の周方向で並ぶ複数の歯のうち、第1回転方向B1(バッフルを開く回転方向)の前端に位置する第1歯68は、
図5(b)に示すように、欠歯歯車38の円弧状外周部52の外周面52aに対向する部分が切り欠かれている。これにより第1歯68は、
図4(a)および
図4(c)に示すように、円弧状外周部52の端面52bにおけるX方向の一方側X1(端面52bにおける回転中心軸線L1方向の一方側)で欠歯歯車38の歯先円51aの内周側に進入可能となっている。また、第1歯68の隣に位置する第2歯69は、
図4(a)および
図5に示すように、X方向の一方側X1から他方側X2(扇形歯車39の回転中心軸線L2方向の一方側から他方側)に向かって切り欠かれている。第2歯69におけるX方向の一方側X1の歯端面69aは、円弧状外周部52の端面52bと同一平面上に位置する。
【0049】
ここで、
図4に示すように、扇形歯車39の第1歯68が欠歯歯車38の円弧状外周部52の端面52bにおけるX方向の他方側X2で歯先円51aの内周側に進入すると、扇形歯車39の第2歯69が円弧状外周部52の外周面52aに当接して扇形歯車39の回転が規制される。すなわち、欠歯歯車38の円弧状外周部52、扇形歯車39の第1歯68および第2歯69は、扇形歯車39の特定方向への回転を規制する回転規制機構70を構成する。本例では、駆動歯車36がバッフル2を閉じる第2回転方向A2に回転した後に回転角度範囲規制機構47によって第2回転方向A2の回転が規制される規制位置で停止すると、扇形歯車39の第1歯68が円弧状外周部52におけるX方向の一方側X1で歯先円51aの内周側に進入する。これにより、扇形歯車39の第2歯69が円弧状外周部52の外周面52aに当接して、扇形歯車39がバッフル2を開く第1回転方向B1に回転することが規制される。
【0050】
(ダンパ装置による開口部の開閉動作)
図7はダンパ装置1による開口部3の開閉動作の説明図である。
図7(a)の左側の図はバッフル2が開位置2Aにある場合の欠歯歯車38と扇形歯車39の噛合状態を示すバッフル駆動機構6の部分平面図であり、
図7(a)の右側の図はバッフル2が開位置2Aにある場合のフレーム5およびバッフル2の断面図である。
図7(b)の左側の図はバッフル2が閉位置2Bにある場合の欠歯歯車38と扇形歯車39の噛合状態を示すバッフル駆動機構6の部分平面図であり、
図7(b)の右側の図はバッフル2が閉位置2Bにある場合のフレーム5およびバッフル2の断面図である。
【0051】
開口部3が開いている状態では、
図1(a)および
図7(a)に示すように、バッフル2は開位置2Aに配置されている。駆動歯車36は、回転角度範囲規制機構47によって第1回転方向A1(バッフル2を開く回転方向)への更なる回転が規制される規制位置で停止している。すなわち、ケース8の円弧形状突部46は駆動歯車36の円弧溝45の他方の内周端面45bに当接して、駆動歯車36の第1回転方向A1への回転を規制している。欠歯歯車38の歯部51には、扇形歯車39の複数の歯のうちの周方向で第1歯68とは反対側の端部分に位置する2枚の歯72が噛合している。
【0052】
開口部3を閉じる際には、ダンパ装置1はモータ31を所定のステップ数だけ所定の回転方向に駆動する。これにより、駆動歯車36は第2回転方向A2に回転する。従って、扇形歯車39は第2回転方向B2に回転する。扇形歯車39が第2回転方向B2に回転すると、扇形歯車39の出力軸6aに連結されたバッフル2は、開位置2Aから閉位置2Bに向う閉方向Cに回転する。
【0053】
モータ31が所定のステップ数だけ駆動されると、駆動歯車36は、
図7(b)に示すように、回転角度範囲規制機構47によって第2回転方向A2(バッフル2を閉じる回転方向)の回転が規制される規制位置で停止する。すなわち、ケース8の円弧形状突部46は駆動歯車36の円弧溝45の一方の内周端面45aに当接して、駆動歯車36の第2回転方向A2への更なる回転を規制する。この状態では、扇形歯車39の第1歯68が欠歯歯車38の円弧状外周部52の端面52bにおけるX方向の一方側X1で歯先円51aの内周側に進入する。また、扇形歯車39の第2歯69が円弧状外周部52の外周面52aに当接する。バッフル2は、閉位置2Bに配置され、弾性部材20はフレーム5のシール板部14に当接して弾性変形する。従って、開口部3はバッフル2によって確実に閉鎖される。
【0054】
なお、モータ31が駆動される所定のステップ数は、開位置2Aに配置されているバッフル2を閉位置2Bに到達させる規定のステップ数に複数ステップを加えた値とされている。従って、バッフル2が閉位置2Bに配置された後にモータ31は更に複数ステップ駆動される。この結果、バッフル2は閉位置2Bから更にシール板部14に接近する方向に押し付けられ、弾性部材20をより変形させる。従って、開口部3の閉鎖がより確実なものとなる。ここで、バッフル2が閉位置2Bに配置された後にモータ31が更に複数ステップ駆動されると、モータ31で脱調が発生するので、脱調に起因してバッフル2がばたつきやすくなる。このような問題に対して、本例では、バッフル2が閉位置2Bに配置された状態では、扇形歯車39の第2歯69が円弧状外周部52の外周面52aに当接し、扇形歯車39がバッフル2を開く第1回転方向B1に回転することが阻止されている。従って、モータ31で発生する脱調に起因してバッフル2がばたつくことを抑制できる。
【0055】
また、バッフル2が閉位置2Bに配置されることによって弾性変形した弾性部材20の形状復帰力は、バッフル2を開く方向に扇形歯車39を回転させる力として作用する。すなわち、弾性部材20の形状復帰力は扇形歯車39を第1回転方向B1に回転させる力として作用する。これに対して、本例では、バッフル2が閉位置2Bに配置された状態では、扇形歯車39の第2歯69が円弧状外周部52の外周面52aに当接し、扇形歯車39がバッフル2を開く第1回転方向B1に回転することが阻止されている。従って、本例のダンパ装置1では、弾性部材20の形状復帰力によってバッフル2が閉位置2Bから開口部3を開く方向に移動することがない。さらに、扇形歯車39がバッフル2を開く第2回転方向に回転することが阻止されているので、開位置2Aに配置されたバッフル2が流体圧を受けてばたつくことが抑制される。
【0056】
次に、開口部3を開く際には、ダンパ装置1はモータ31を規定のステップ数だけ、開口部3を閉じる際とは反対の回転方向に駆動する。規定のステップ数は、閉位置2Bに配置されているバッフル2を開位置2Aに到達させるステップ数である。これにより、駆動歯車36は第1回転方向A1に回転する。
【0057】
駆動歯車36が回転を開始すると、欠歯歯車38において最も円弧状外周部52の側に位置する歯53(第1回転方向A1の前端の歯)は、扇形歯車39の第2歯69を越えて、第1歯68と第2歯69の間に噛合する。これにより、扇形歯車39は第1回転方向B1への回転を開始する。扇形歯車39が第1回転方向B1に回転すると、扇形歯車39の出力軸6aに連結されたバッフル2は、閉位置2Bから開位置2Aに向う開方向Oに回転する。
【0058】
ここで、バッフル2の側から扇形歯車39に作用する力や部品公差などに起因して、扇形歯車39の回転中心軸線が傾斜することがある。このような場合に、扇形歯車39の第2歯69を第1歯68とは反対側に位置する歯と同一の歯幅を備えるものとしていると、
図9に示すように、円弧状外周部52の外周面52aに当接した状態の第2歯69のX方向の他方側X2の端69cが、円弧状外周部52の端面52bにおけるX方向の他方側X2で欠歯歯車38の歯先円51aの内周側に進入することがある。この場合には、欠歯歯車38の最も円弧状外周部52の側に位置する歯53が扇形歯車39の第2歯69を越えようとするときに、第2歯69と干渉して、異音を発生させる。
【0059】
これに対して、本例では、
図4(a)に示すように、第2歯69におけるX方向の一方側X1の歯端面69aは、端面52bと同一平面上に位置する。従って、扇形歯車39の回転中心軸線L2が傾斜したときに、扇形歯車39の第2歯69は欠歯歯車38の円弧状外周部52の端面52bよりもX方向の他方側X2に突出する部分を有さない。よって、欠歯歯車38と扇形歯車39が噛合を開始する際に、欠歯歯車38の歯53と第2歯69が干渉して、異音を発生させることがない。
【0060】
また、本例では、バッフル2が閉位置2Bに配置されたときに、回転規制状態の扇形歯車39には、バッフル2の弾性部材20の形状復帰力が扇形歯車39を第1回転方向B1(バッフル2を開く回転方向)に回転させる力として作用している。従って、欠歯歯車38の最も円弧状外周部52の側に位置する歯53が、
図6(b)に示す参考例のように一般的な形状を備えるものである場合には、歯53が扇形歯車39の第2歯69を越えて第1歯68と第2歯69の間に噛合する際に、歯53が扇形歯車39の第2歯69に断続的に衝突し、扇形歯車39が急速に回転する。そして、扇形歯車39が急速に回転する間、
図8に点線G2で示すように、欠歯歯車38の歯53と扇形歯車39の第2歯69の共通法線は、急激に向きを変えることになる。従って、歯53と第2歯69の衝突や、輪列32を構成する他の部材同士の衝突によって異音が発生する。
【0061】
これに対して、本例では、
図6(a)に示すように、欠歯歯車38の最も円弧状外周部52の側に位置する歯53は、円弧状外周部52の側とは反対側の第1歯面53aの曲率が円弧状外周部52の側の第2歯面53bの曲率より小さい。また、この歯53の歯面は、最も外周側に位置する外周部分53cが第1歯面53aと連続した曲面を構成しており、外周部分53cと第2歯面53bとの間のみに変曲部が存在している。これにより、第1歯面53aの側から第2歯面53bまで連続した湾曲面53dになっている。従って、欠歯歯車38の最も円弧状外周部52の側に位置する歯53が、扇形歯車39の第2歯69を越える際に、第2歯69が歯53の湾曲面53dと曲率の小さい第1歯面53aを摺動し続ける。この結果、
図8に実線G1で示すように、欠歯歯車38の歯53と扇形歯車39の第2歯69の共通法線は、急激に向きを変えることがない。よって、歯53と第2歯69の衝突や、輪列32を構成する他の部材同士の衝突によって異音が発生することを抑制できる。
【0062】
(その他の実施の形態)
上記の例では、扇形歯車39の第2歯69の歯幅を短くして、その歯端面69aが円弧状外周部52の端面52bと同一平面上としているが、第2歯69の歯幅を更に短くして、その歯端面69aが円弧状外周部52の端面52bよりもX方向の他方側X2(欠歯歯車38の回転中心軸線L1方向の他方側)に位置するものとしてもよい。このようにしても、扇形歯車39の回転中心軸線L2が傾斜したときに、扇形歯車39の第2歯69は欠歯歯車38の円弧状外周部52の端面52bよりもX方向の他方側X2に突出する部分を有さない。よって、欠歯歯車38と扇形歯車39が噛合を開始する際に、欠歯歯車38の歯53と第2歯69が干渉して、異音を発生させることがない。
【0063】
また、第2歯69の歯幅を上記の例よりも長くして、その歯端面69aを、円弧状外周部52の端面52bよりもX方向の一方側X1に位置するものとしてもよい。この場合でも、歯端面69aが欠歯歯車38の歯部51の端面(X方向の一方側X1の端面)よりもX方向の他方側X2に位置すれば、第2歯69が欠歯歯車38の円弧状外周部52の端面52bよりもX方向の他方側X2で歯先円51aの内周側に進入することを抑制できるので、扇形歯車39と欠歯歯車38の干渉を抑制できる。
【0064】
さらに、第2歯69の歯先部分を、X方向の一方側X1の端から他方側X2に向かって歯先の側から部分的に切り欠いてもよい。この場合でも、第2歯69が欠歯歯車38の円弧状外周部52の端面52bよりもX方向の一方側X1で歯先円51aの内周側に進入することを抑制できるので、扇形歯車39と欠歯歯車38の干渉を抑制できる。
【0065】
図9は、第2歯69の歯先部分を、X方向の一方側X1の端から他方側X2に向かって歯先の側から部分的に切り欠いた扇形歯車39´である。本例では、第2歯69は、欠歯歯車38の円弧状外周部52のX方向の長さと同一の歯幅を備えた歯本体80と、歯本体80の一方側X1に連続して設けられた補強部81を備える。補強部81は、歯本体80の歯先からX方向の一方側X1に向かって当該第2歯69の歯底の側に傾斜して歯底に達する傾斜面81aを備える。傾斜面81aにおけるX方向の一方側X1の端は、第1歯68の一方側X1の歯端面と同じ高さ位置にある。傾斜面81aをX方向から見た場合の輪郭形状は、歯本体80をX方向から見た場合の輪郭形状と一致する。本例の扇形歯車39´は、第2歯69が欠歯歯車38の円弧状外周部52の端面よりも上方に延設された補強部81部分を備えるので、第2歯69の強度を確保できる。
【0066】
なお、バッフル2が開位置2Aに配置されたときに扇形歯車39の周方向で第1歯68とは反対側の端に位置する歯が欠歯歯車38の歯先円51aの内周側に進入して、その隣の歯が円弧状外周部52の外周面52aに当接するようにしてもよい。すなわち、扇形歯車39の複数の歯のうち、周方向で第1歯68および第2歯69とは反対側の端部分に第1歯68および第2歯69と対応する構成の歯を設けてもよい。このようにすれば、バッフル2が開位置2Aに配置されたときに、扇形歯車39がバッフル2を閉じる第2回転方向B2へ回転することを阻止できる。
【0067】
ここで、扇形歯車39の複数の歯のうち、周方向で第1歯68および第2歯69とは反対の他方側の端部分に第1歯68および第2歯69と対応する構成の歯を設ける場合には、上記の扇形歯車39のように扇形歯車39の周方向の一方側の端部分のみに第1歯68および第2歯69を設ける場合と比較して、扇形歯車39の歯の枚数の制約などが増える。
【0068】
例えば、本例のダンパ装置1のように扇形歯車39を所定の角度範囲(90°)だけ回転させることによってバッフル2を所定の角度範囲で回転させる場合には、周方向の一方側に設けた第2歯69が欠歯歯車38の円弧状外周部52の当接する扇形歯車39の第1回転角度位置と、周方向の他方側に設けた第2歯69が欠歯歯車38の円弧状外周部52の当接する扇形歯車39の第2回転角度位置との間を所定の角度範囲とするとともに、扇形歯車39が第1回転角度位置と第2回転角度位置との間を回転する間に扇形歯車39と欠歯歯車38とが噛み合うように周方向の一方側に設けた第2歯69と他方側に設けた第2歯69の間の歯数や扇形歯車39のピッチ円を設定しなければならない。従って、扇形歯車39の設計の自由度が低下する。これに対して、上記の例のように、扇形歯車39の周方向の一方の端部分のみに第1歯68および第2歯69を設けた場合には、周方向の他方側については、第2歯69が欠歯歯車38の円弧状外周部52の当接する扇形歯車39の回転角度位置(第2回転角度位置)を考慮する必要がないので、扇形歯車39の設計の自由度が高い。
【0069】
また、上記の例では、扇形歯車39の周方向で並ぶ複数の歯のうち、第1回転方向B1(バッフルを開く回転方向)の前端に位置する一枚の歯について、欠歯歯車38の円弧状外周部52の外周面52aに対向する部分を切り欠いて第1歯68としているが、複数枚の歯について欠歯歯車38の円弧状外周部52の外周面52aに対向する部分を切り欠いて歯幅を短くしてもよい。この場合には、切り欠いた複数枚の歯の隣に位置する歯を第2歯として、X方向の一方側X1から切り欠けば、欠歯歯車38と扇形歯車39が噛合を開始する際に、欠歯歯車38の歯53と第2歯69が干渉して、異音を発生させることを防止できる。
【0070】
ここで、扇形歯車39の複数の歯のうち、第1回転方向B1の前側部分に位置する複数枚の歯を切り欠いて第1歯68とする場合には、第1歯68の枚数が増える分だけ、扇形歯車39は周方向に大型化する。換言すれば、上記の扇形歯車39のように、複数の歯のうちの1枚の歯を第1歯68とすれば、扇形歯車39を周方向でコンパクトにできる。
【0071】
(実施例2)
次に、
図10ないし
図12を参照して実施例2のダンパ装置1Aを説明する。
図10は実施例2のダンパ装置1Aにおけるギヤードモータ10の説明図である。
図10(a)は蓋7を取り除いた実施ギヤードモータ10をX方向の一方側X1から見た場合の平面図であり、
図10(b)はギヤードモータ10の分解斜視図である。
図11は輪列32の展開図である。
図11では、
図10(a)のW−W線に沿って輪列32を展開している。
図12は実施例2のダンパ装置1Aにおける扇形歯車39Aの説明図である。
図12(a)は扇形歯車39AをX方向の一方側X1の側から見た場合の斜視図であり、
図12(b)は扇形歯車39AをX方向の他方側X2の側から見た場合の斜視図であり、
図12(c)は扇形歯車39Aをその回転中心軸線L2に沿って切断した断面図である。
【0072】
実施例2のダンパ装置1Aは、実施例1のダンパ装置1と対応する構成を備える。従って、対応する部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、本例のダンパ装置1Aは、
図11に示すように、扇形歯車39Aの軸部61の長さ寸法N1が、上記のダンパ装置1の扇形歯車39Aの軸部61の長さ寸法よりも長い。また、本例のダンパ装置1Aは、ケース8の底板部25からX方向の一方側X1に突出する筒部63Aの突出寸法が扇形歯車39Aの軸部61の長さ寸法N1に対応する長さとなっており、上記のダンパ装置1の筒部63の突出寸法よりも長い。
【0073】
(扇形歯車)
図10および
図12に示すように、扇形歯車39Aは、出力軸6aと軸部61と、出力軸6aと軸部61の間に設けられた円柱部(大径軸部)62と、円柱部62と出力軸6aとの間に設けられた円盤部90を備える。軸部61、円柱部62、円盤部90および出力軸6aは同軸である。
図12(b)に示すように、軸部61と円柱部62との間には軸部61の側を向く環状面91が設けられている。環状面91は扇形歯車39Aの回転中心軸線L2と直交する。また、扇形歯車39Aは、欠歯歯車38と噛合可能な複数枚の歯を外周面に備える円弧部65と、円柱部62から外周側に突出して当該円柱部62と円弧部65とを接続する連結部66を備える。
【0074】
出力軸6aは、バッフル駆動機構6の出力軸6aである。出力軸6aの先端側には回転中心軸線L2を挟んだ両側に平行な平坦部64が設けられている。バッフル2の第1軸部21には、X方向の他方側X2の端面に出力軸6aに嵌合する凹部が形成されており、出力軸6aを凹部に嵌め込むことにより出力軸6aの回転がバッフル2に伝達可能となる。
【0075】
軸部61は扇形歯車39AのX方向の他方側X2の端に位置する。
図11および
図12(c)に示すように、軸部61は、その回転中心軸線L2方向の高さ寸法N1が、当該軸部61の径寸法N2よりも長い。本例では、軸部61の高さ寸法N1は径寸法N2の1.6倍〜1.7倍となっている。
【0076】
また、扇形歯車39Aは、軸部61の先端面61aの中央に、回転中心軸線L2に沿って窪む凹部93を備える。凹部93は軸部61、円柱部62を貫通して円盤部90に達する。ここで、扇形歯車39Aは樹脂成型品であり、凹部93は、樹脂成型時における樹脂の収縮により発生するヒケ(変形)に起因して軸部61、円柱部62、円盤部90が変形することを防止するための肉盗みである。
【0077】
また、扇形歯車39Aは、
図12(b)および
図12(c)に示すように、円柱部62の外周面から回転中心軸線L2と直交する方向に延びて凹部93に連通する貫通孔94を備える。凹部93および貫通孔94は、
図12(c)に示すように、一方の端が軸部61の先端面61aに開口し、他方の端が円柱部62の外周面に開口する空気流路95を構成する。
【0078】
次に、ケース8の底板部25には、
図10(b)および
図11に示すように、X方向の一方側X1に突出する筒部63Aが設けられている。ケース8の底板部25は、筒部63AのX方向の他方側X2の開口を封鎖している。すなわち、底板部25は筒部63Aの他方側X2の開口を封鎖する封鎖部分(封鎖部)96を備える。
【0079】
扇形歯車39Aは筒部63Aに回転可能に支持される。すなわち、
図11に示すように、扇形歯車39Aは、その軸部61が筒部63Aに挿入されて回転可能に嵌合するとともに、環状面91が筒部63AのX方向の一方側X1の開口縁97に当接する。従って、筒部63Aは、その内径寸法が軸部61の径寸法N2に対応する寸法であり、X方向における高さ寸法が軸部61を収容可能な高さ寸法である。筒部63Aの環状の内周面にはグリスが塗布されている。
【0080】
本例では、筒部63Aに支持される軸部61の長さ寸法N1が、当該軸部61の径寸法N2よりも長い。従って、筒部63Aによって扇形歯車39Aを支持したときに、扇形歯車39Aが傾斜することを防止あるいは抑制できる。
【0081】
また、筒部63AのX方向の他方側X2の開口は封鎖部分96により封鎖されている。従って、扇形歯車39Aの軸受として機能する筒部63Aの剛性が向上する。よって、扇形歯車39Aに対して回転中心軸線L2と交差する方向から力が加わった場合でも、筒部63Aにより扇形歯車39Aを傾斜させることなく支持できる。
【0082】
ここで、封鎖部分96により底が設けられた筒部63Aに扇形歯車39Aの軸部61を挿入して回転可能に嵌合させると、筒部63Aと封鎖部分96によって区画された空間S(
図10(b)参照)内の空気が当該空間Sから外に逃げることができず、扇形歯車39Aは、軸部61と円柱部62の間の環状面91が筒部63Aの開口縁97から浮き上がった状態となる場合がある。これに対して、本例の扇形歯車39Aは空気流路95を備えており、この空気流路95は、筒部63Aに扇形歯車39Aの軸部61が挿入される際に、筒部63Aと封鎖部分96によって区画された空間Sと外部とを連通させる。従って、扇形歯車39Aの軸部61を筒部63Aに挿入する際に、筒部63Aと封鎖部分96によって区画された空間S内の空気は空気流路95を介して外に逃げる。よって、扇形歯車39Aは筒部63Aによって確実に支持される。
【0083】
また、筒部63Aに支持される軸部61の長さ寸法N1を長くすれば、扇形歯車39Aの傾斜を防止することが容易になる。しかし、軸部61の長さ寸法N1を長くした場合には、扇形歯車39Aに対して回転中心軸線L2と交差する方向から力が加わったときに、筒部63Aに支持されている軸部61の先端に応力が集中して軸部61の破損を招く可能性がある。これに対して、本例では、軸部61の高さ寸法N1は、当該軸部61の径寸法N2の2倍以下としている。従って、このような事態を回避できる。
【0084】
なお、
図11に示すように、蓋7には、扇形歯車39Aの出力軸6aを外部に露出させる円形の開口部98が設けられている。蓋7における開口部98の縁は、扇形歯車39Aの円盤部90を回転可能に支持する軸受として機能する。