【文献】
MICHAEL J HACKETT,A DICARBOXYLIC FATTY ACID DERIVATIVE OF PACLITAXEL FOR ALBUMIN-ASSISTED DRUG DELIVERY,JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,米国,AMERICAN PHARMACEUTICAL ASSOCIATION,2012年 6月 6日,VOL:101, NR:9,,PAGE(S):3292 - 3304,URL,http://dx.doi.org/10.1002/jps.23213
【文献】
LEFORT D,FREE-RADICAL ADDITION OF ALCOHOLS AND ACIDS TO 10-UNDECENOIC ESTERS, 10-UNDECEN-1-OL, AND 以下備考,BULLETIN OF THE ACADEMY OF SCIENCES OF THE USSR, DIVISION OF CHEMICAL SCIENCES,米国,SPRINGER NEW YORK LLC,1967年,VOL:16, NR:3,,PAGE(S):623 - 627,10-UNDECENYL ACETATE,URL,http://dx.doi.org/10.1007/BF00906006
【文献】
OLOF CEDER,PIMARICIN. II. HIGH PRESSURE---HIGH TEMPERATURE HYDROGENATION STUDIES,ACTA CHIMICA SCANDINAVICA,1964年,V18,P83-97,URL,http://actachemscand.org/pdf/acta_vol_18_p0083-0097.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リンカーが、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、1つまたは複数の天然もしくは天然でないアミノ酸、またはこれらの組合せを含み、前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、および/または天然もしくは天然でないアミノ酸はそれぞれ、場合により互いに合体および連結しており、または前記生体分子および/もしくは前記脂肪酸部分に、−C(O)O−、−OC(O)−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−OC(O)NH−、−NHC(O)−O−、=NH−O−、=NH−NH−、もしくは=NH−N(アルキル)−から選択される化学基を介して連結している、請求項1、2、または3に記載のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩。
前記リンカーが、ヒスチジン、メチオニン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、およびグリシンから独立して選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩。
前記生体分子が、MH(199−308)hGDF15、MHA(200−308)hGDF15、AHA(200−308)hGDF15、AH(199−308)GDF15、MHHHHHHM−hGDF15、もしくはMHHHHHH−hGDF15またはその二量体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩。
代謝性障害または疾患、糖尿病、2型真性糖尿病、肥満、膵炎、異脂肪血症、アルコール性および非アルコール性脂肪性肝疾患/脂肪性肝炎、および他の進行性肝疾患、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック症候群、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈心疾患、糖尿病合併症(限定はしないが慢性腎臓病を含む)、ニューロパシー、胃不全麻痺、ならびに他の代謝性障害の治療または予防において使用するための、前記生体分子が、ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態である、請求項1から8、10、11、14または15のいずれか一項に記載のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩、または請求項9、12または13に記載のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩の混合物を含む、医薬組成物。
前記共薬剤が、インスリン、インスリン誘導体および模倣物;インスリン分泌促進物;グリブリド、Amaryl;インスリン分泌性スルホニル尿素受容体リガンド;チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン(netoglitazone)、トログリタゾン、エングリタゾン、シグリタゾン、アダグリタゾン(adaglitazone)、ダルグリタゾン、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害薬、GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ3)阻害薬;RXRリガンド;ナトリウム依存的グルコース共輸送体阻害薬;グリコーゲンホスホリラーゼA阻害薬;ビグアナイド;α−グルコシダーゼ阻害薬、GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、GLP−1類似体、GLP−1模倣物;DPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害薬、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル補酵素A(HMG−CoA)還元酵素阻害薬;スクアレンシンターゼ阻害薬;FXR(ファルネソイドX受容体)、LXR(肝臓X受容体)リガンド;コレスチラミン;フィブラート;ニコチン酸、アスピリン;オーリスタットまたはリモナバント;ループ利尿薬、フロセミド、トルセミド;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬;Na−K−ATPアーゼ膜ポンプの阻害薬;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害薬;ACE/NEP阻害薬;アンジオテンシンIIアンタゴニスト;レニン阻害薬;β−アドレナリン受容体遮断薬;強心薬、ドブタミン、ミルリノン;カルシウムチャネル遮断薬;アルドステロン受容体アンタゴニスト;アルドステロンシンターゼ阻害薬;フェノフィブレート、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、テサグリタザル、BMS−298585、およびL−796449から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例24が、参考例3より効果的に血漿APOC3レベルを低下させたことを示す図である。
【0026】
詳細な記述
定義:
本明細書を解釈する目的では、別段指定しない限り、以下の定義が適用され、適切な場合は必ず、単数で使用された用語は複数も包含し、逆もまたそうなる。
【0027】
本明細書で使用するとき、また添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」が、文脈によって明らかにそうでなく規定されない限り、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。したがって、たとえば、「the conjugate」への言及は、1つまたは複数のコンジュゲートへの言及を包含し、「the polypeptide」への言及は、1つまたは複数のポリペプチドへの言及を包含する、などである。
【0028】
用語アルキルとは、1〜30個の炭素原子を含む、完全飽和の分枝状もしくは非分枝状(または直鎖もしくは線状)炭化水素部分を指す。アルキルは、5〜20個の炭素原子、より好ましくは10〜15個の炭素原子を含むことが好ましい。C
10〜15アルキルとは、10〜15個の炭素を含むアルキル鎖を指す。用語「アルキレン」とは、二価の、上で定義したとおりのアルキルを指す。
【0029】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する分枝状または非分枝状炭化水素を指す。用語「C
2〜30−アルキニル」とは、2個〜7個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素三重を含む炭化水素を指す。
【0030】
用語「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する分枝状または非分枝状炭化水素を指す。用語「C
2〜30−アルキニル」とは、2個〜7個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む炭化水素を指す。
【0031】
用語アリールとは、環部分に6〜10個の炭素原子を有する、単環式または二環式の芳香族炭化水素基を指す。アリールの代表例は、フェニルまたはナフチルである。
【0032】
用語ヘテロアリールは、炭素原子と1〜5個のヘテロ原子とから選択される5〜10個の環員を含んでおり、各ヘテロ原子は、O、N、またはSから独立して選択され、SおよびNは、種々の酸化状態に酸化されていてもよい、単環式または二環式ヘテロアリールを包含する。二環式ヘテロアリール系については、系は完全に芳香族である(すなわち、すべての環が芳香族である)。
【0033】
用語シクロアルキルとは、3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜8個、または3〜7個の炭素原子の、飽和または不飽和であるが非芳香族の単環式、二環式、または三環式炭化水素基を指す。二環式および三環式のシクロアルキル系については、すべての環が非芳香族である。たとえば、シクロアルキルは、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルを包含する。用語「シクロアルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、3〜12個の炭素原子の二環式または三環式炭化水素基を指す。用語「シクロアルキニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、3〜12個の炭素原子の二環式または三環式炭化水素基を指す。
【0034】
用語ヘテロシクリルとは、O、S、およびNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでおり、NおよびSは、場合により種々の酸化状態に酸化されていてもよい、飽和または不飽和の非芳香族(部分的不飽和であるが非芳香族の)単環式、二環式、または三環式環系を指す。一実施形態では、ヘテロシクリル部分は、5〜7個の環原子と、O、S、またはNから選択されるさらなるヘテロ原子とを場合により含んでいる、飽和した単環に相当する。このヘテロ環は、アルキル、ハロ、オキソ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシで置換されていてもよい。他の実施形態では、ヘテロシクリルは、二環式または三環式である。多環式の系については、一部の環が芳香族で、飽和または部分的に飽和した1つまたは複数の環に縮合していてもよい。全体的に縮合した系は、完全には芳香族でない。たとえば、ヘテロ環系は、芳香族ヘテロアリール環が飽和または部分的に飽和したシクロアルキル環系と縮合したものである場合もある。
【0035】
用語「コンジュゲート」とは、生体分子と脂肪酸部分とをリンカーを介して共有結合させた結果として生成されたエンティティを指すものである。用語「コンジュゲーション」とは、生体分子と脂肪酸部分との共有結合をもたらす化学反応を指す。
【0036】
生体分子:
本明細書で使用するとき、生体分子という用語は、限定はしないが、抗体(たとえば、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ナノボディ、およびその断片など)、コレステロール、ホルモン、ペプチド、タンパク質、化学療法薬および他のタイプの抗悪性腫瘍薬、低分子量薬物、ビタミン、補因子、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、酵素性核酸、アンチセンス核酸、三重鎖形成性オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAまたはRNA組成物、キメラDNA:RNA組成物、アロザイム、アプタマー、リボザイム、デコイおよびその類似体、プラスミドおよび他のタイプの発現ベクター、小核酸分子、RNAi剤、短鎖干渉性核酸(siNA)、伝令リボ核酸(伝令RNA、mRNA)、短鎖干渉性RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)分子、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸ボヌクレオチド(LNA)、モルホリノヌクレオチド、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、sisiRNA(低分子内部グメント化干渉性RNA)、aiRNA(非対称干渉性RNA)、ならびに細胞培養物、対象、または生物中などの該当する細胞および/または組織に対して、センス鎖とアンチセンス鎖間のミスマッチを1、2、またはそれ以上有するsiRNAを包含する。このような化合物は、精製または部分的に精製されたものでよく、自然に存在するものでも合成品でもよく、化学修飾されていてもよい。
【0037】
一実施形態では、生体分子は、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、またはRNAi剤、短鎖干渉性核酸(siNA)、短鎖干渉性RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)分子である。
【0038】
他の実施形態では、生体分子は、ポリペプチド(もしくはタンパク質)、またはペプチドである。ポリペプチドまたはペプチドの例は、APJアゴニストペプチド、オキシトシンペプチド、セレラキシン、NPFF、PIPペプチド、FGF23ペプチド、AgRPペプチド、およびGDF15ペプチドである。好ましい実施形態では、生体分子は、GDF15ポリペプチド、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態である。
【0039】
「リボ核酸」(RNA)とは、各ヌクレオチドがリボースまたはその修飾物を糖成分として含んでいる、ホスホジエステル結合で連結されたヌクレオチドのポリマーである。各ヌクレオチドは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)、またはこれらの修飾物を塩基として含んでいる。mRNA分子の中の遺伝情報は、mRNA分子のヌクレオチド塩基の配列にコードされており、塩基は、取り合わされて、それぞれ3つのヌクレオチド塩基からなるコドンをなしている。翻訳(タンパク質合成)を終結させる終止コドンを除き、各コドンは、ポリペプチドの特定のアミノ酸をコードする。生細胞内では、mRNAは、タンパク質合成の場であるリボソームに輸送され、そこで、タンパク質合成(翻訳)のための遺伝情報を提供する。これ以上の記述については、Alberts B et al. (2007) Molecular Biology of the Cell, Fifth Edition, Garland Scienceを参照されたい。
【0040】
本明細書で使用する用語「RNAi剤」、「短鎖干渉性RNA」、「siRNA」、「短鎖干渉性核酸」、「siNA」などは、配列特異的なRNA干渉(RNAi)または遺伝子サイレンシングを介して遺伝子発現またはウイルス複製を阻害または下向き調節することのできる、いずれかの核酸分子を指す。この用語は、短鎖干渉性RNA(siRNA)、短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖干渉性オリゴヌクレオチド、化学修飾された短鎖干渉性核酸分子、sisiRNA(低分子内部セグメント化干渉性RNA)、aiRNA(非対称干渉性RNA)、該当する細胞および/または組織に対して、センス鎖とアンチセンス鎖間のミスマッチを1、2、またはそれ以上有するsiRNA、センス鎖とアンチセンス鎖間のミスマッチが1つまたは複数存在するRNAi剤、センス鎖がアンチセンス鎖に比べて非常に短い、かつ/または1つもしくは複数の一本鎖ニックを有する、RNAi剤、またはRNA干渉を仲介しうる他のいずれかの分子を包含する。RNAi剤は、リボヌクレオチドを含むものでもよいし、または1つもしくは複数の糖、塩基、および/もしくはリン酸において修飾または置換されていてもよい。非限定的な例として、RNAi剤は、2’位において修飾される場合があり、2’−修飾は、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)、および2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)からなる群から選択される。一実施形態では、すべてのピリミジン(ウリジンおよびシチジン)が、2’−O−メチル修飾されたヌクレオシドである。種々の実施形態において、1つまたは複数のリン酸は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート、ボラノホスホノエート、およびアミドリンカーから選択される、修飾されたヌクレオシド間リンカーで置換されていてよい。種々の実施形態において、1つまたは複数のヌクレオチドは、DNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノヌクレオチド、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、アラビノース核酸(ANA)、2’−フルオロアラビノース核酸(FANA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、アンロックド核酸(UNA)で修飾または置換されていてよい。RNAi剤の種々の修飾および置換は、当業界で知られており、本開示の状況で使用することができる。siRNAは、動物および植物において、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの過程であるRNA干渉を担う。siRNAは、発現停止された遺伝子ターゲットと相同である、またはそれに特異的である、より長い二本鎖RNA(dsRNA)から、リボヌクレアーゼIII切断によって自然に生じ、人工RNAi剤は、当業界で知られているいずれかの方法によって製造することができる。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「ポリペプチド」とは、自然に産生されようが合成によって生成されようが、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマーを指す。約10アミノ酸残基未満のポリペプチドは、「ペプチド」と呼ぶのが普通である。用語「ペプチド」とは、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸の配列を示すものであり、前記アミノ酸は、天然でも天然でなくてもよい。この用語は、たとえばシステイン架橋などの共有結合性相互作用、または非共有結合相互作用によってまとまった2つ以上のペプチドからなるものでよい、用語ポリペプチドおよびタンパク質を包含する。当業界で受け入れられている3文字または1文字略語を使用して、本発明のペプチドおよびポリペプチドを構成するアミノ酸残基を表す。「D」が前に付く場合を除き、アミノ酸は、L−アミノ酸である。1文字略語が大文字であるとき、略語は、D−アミノ酸を指す。1文字略語が小文字であるとき、略語は、L−アミノ酸を指す。集まりまたは連なりまたはアミノ酸略語を使用して、ペプチドを表す。ペプチドは、N末端を左側にして示し、配列は、N末端からC末端に向かって記す。
【0042】
本発明のペプチドは、非天然アミノ酸(すなわち、自然界では発生しない化合物)を含んでおり、当業界で知られているような他のアミノ酸類似体をその代わりとして用いてもよい。
【0043】
ある特定の非天然アミノ酸は、Deiters et al., J Am Chem Soc 125:11782-11783, 2003、Wang and Schultz, Science 301:964-967, 2003、Wang et al., Science 292:498-500, 2001、Zhang et al., Science 303:371-373, 2004、または米国特許第7,083,970号明細書に記載の技術によって導入することができる。簡潔に述べると、こうした発現系の一部には、部位特異的突然変異誘発が関与して、本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームに、アンバーTAGなどのナンセンスコドンが導入される。次いで、このような発現ベクターは、導入されたナンセンスコドンに特異的なtRNAを利用することのできる宿主に導入され、選択された非天然アミノ酸を積み込んでいる。本発明のポリペプチドに諸部分をコンジュゲートさせる目的で有益な特定の非天然アミノ酸として、アセチレン側鎖およびアジド側鎖を有するものが挙げられる。
【0044】
「タンパク質」とは、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。こうしたポリペプチド鎖はそれぞれ、式A1、A2、またはA3の脂肪酸分子とコンジュゲートさせることができる。タンパク質は、炭水化物基などの非ペプチド成分も含んでよい。炭水化物および他の非ペプチド置換基は、タンパク質が産生されるところの細胞によってタンパク質に付加される場合があり、細胞の種類によって様々となる。タンパク質は、本明細書では、そのアミノ酸主鎖構造に関して定義しており、炭水化物基などの置換基は一般に指定してないが、それにもかかわらず存在してよい。非宿主DNA分子によってコードされたタンパク質またはポリペプチドは、「異種」タンパク質またはポリペプチドである。
【0045】
「単離ポリペプチドまたは単離タンパク質」とは、本来はポリペプチドに随伴する炭水化物、脂質、または他のタンパク質性不純物などの細胞成分を本質的に含まないポリペプチドまたはタンパク質(たとえば、GDF15)である。通常、単離ポリペプチドまたはタンパク質の調製物は、高度に精製された形、すなわち、純度少なくとも約80%、純度少なくとも約90%、純度少なくとも約95%、純度95%超、たとえば、96%、97%、98%、もしくはこれより高い純度、または純度99%超のポリペプチドまたはタンパク質を含有する。特定のタンパク質調製物が単離ポリペプチドまたはタンパク質を含有することを示す1つの手段は、タンパク質調製物をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、ゲルをCoomassie Brilliant Blue染色した後の単一バンドの出現によるものである。しかし、用語「単離」は、二量体などの別の物理的形態、または別法としてグリコシル化もしくは誘導体化された形態の同じポリペプチドまたはタンパク質の存在を除外しない。単離ポリペプチドは、その治療、診断、予防、または研究用途の妨げとなる、その自然環境において見出される他のいかなる混入ポリペプチドまたは他の混入物も、実質的に含まないことが好ましい。
【0046】
当業者なら、本明細書に記載のポリペプチドまたはタンパク質のいずれかの配列において、その活性を必然的に低下させることなく、種々のアミノ酸置換、たとえば、保存的アミノ酸置換がなされてもよいことは理解されよう。本明細書で使用するとき、「その置換基として一般に使用されるアミノ酸」は、保存的置換(すなわち、化学的特徴が同等であるアミノ酸での置換)を包含する。保存的置換の目的で、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。極性(親水性)天然アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正電荷を有する(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシン、およびヒスチジンが挙げられる。負電荷を有する(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。アミノ酸置換の例としては、その対応するD−アミノ酸の代わりにL−アミノ酸を用いるもの、ホモシステインもしくは含チオール側鎖を有する他の非天然アミノ酸の代わりにシステインを用いるもの、ホモリシン、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、もしくは含アミノ側鎖を有する他の非天然アミノ酸の代わりにリシンを用いるもの、またはノルバリンの代わりにアラニンを用いるものなどが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用する用語「アミノ酸」とは、その構造でそうした立体異性体型が可能である場合、すべて、そのDおよびL立体異性体の、自然に存在するアミノ酸、天然でないアミノ酸、アミノ酸類似体、および、自然に存在するアミノ酸と同様にして機能するアミノ酸模倣物を指す。アミノ酸は、本明細書では、その名称、一般に知られているその3文字記号、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字記号のいずれかで呼ぶ。
【0048】
用語「自然に存在する」とは、自然界で見出され、人の手で操作されていない材料を指す。同様に、「自然に存在しない」や「自然でない」などは、本明細書で使用するとき、自然界で見出されない、または人の手で構造が改変されもしくは合成されている材料を指す。アミノ酸に関連して使用するとき、用語「自然に存在する」とは、20種の通常のアミノ酸(すなわち、アラニン(AまたはAla)、システイン(CまたはCys)、アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu)、フェニルアラニン(FまたはPhe)、グリシン(GまたはGly)、ヒスチジン(HまたはHis)、イソロイシン(IまたはIle)、リシン(KまたはLys)、ロイシン(LまたはLeu)、メチオニン(MまたはMet)、アスパラギン(NまたはAsn)、プロリン(PまたはPro)、グルタミン(QまたはGln)、アルギニン(RまたはArg)、セリン(SまたはSer)、トレオニン(TまたはThr)、バリン(VまたはVal)、トリプトファン(WまたはTrp)、およびチロシン(YまたはTyr)を指す。
【0049】
本明細書で使用する用語「非天然アミノ酸」および「天然でないアミノ酸」は、同じであろうと異なっていようと、任意の生物中で、任意の生物からの未改変または改変遺伝子を使用して、生合成によって生成することのできないアミノ酸構造を、互換的に表すものである。これら用語は、自然に存在する(野生型)タンパク質配列または本発明の配列中に存在しないアミノ酸残基を指す。これらの用語は、限定はしないが、20種の自然に存在するアミノ酸の1つ、セレノシステイン、ピロリシン(Pyl)、またはピロリン−カルボキシ−リシン(Pcl、たとえば、PCT特許公開第2010/48582号に記載のとおり)でない、改変アミノ酸および/またはアミノ酸類似体を包含する。このような非天然アミノ酸残基は、自然に存在するアミノ酸の置換によって、および/または自然に存在する(野生型)タンパク質配列もしくは本発明の配列への非天然アミノ酸の挿入によって導入することができる。非天然アミノ酸残基は、分子に所望の機能性、たとえば、機能性部分(たとえば、PEG)を連結する能力が付与されるように組み込むこともできる。アミノ酸に関連して使用するとき、記号「U」は、本明細書で使用される「非天然アミノ酸」および「天然でないアミノ酸」を意味するものとする。
【0050】
ポリペプチドまたはタンパク質について本明細書で使用する用語「類似体」とは、ペプチド/タンパク質の1つまたは複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置き換えられている、かつ/または1つまたは複数のアミノ酸残基がペプチド/タンパク質から欠失している、かつ/または1つまたは複数のアミノ酸残基がペプチド/タンパク質に付加されている、修飾されたペプチドまたはタンパク質を意味する。アミノ酸残基のこのような付加または欠失は、ペプチドのN末端および/またはペプチドのC末端で起こりうる。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「コンジュゲートのエステル」とは、カルボン酸基のエステル誘導体が存在する(たとえば、C末端の−CO
2Hが−COORに変換されている)ペプチドまたはポリペプチドを含むコンジュゲートを指し、エステルのRは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC
1〜6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC
3〜8シクロアルキル基、フェニル、α−ナフチルなどのC
6〜10アリール基、C
6〜10アリールC
1〜6アルキル基、たとえば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリルなどのフェニルC
1〜2アルキル基、およびα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C
1〜2アルキル基などを指す。コンジュゲートのペプチドまたはポリペプチド部分が、C末端以外の位置に追加のカルボキシル基またはカルボキシレート基を有するとき、こうした基がアミド化またはエステル化されているポリペプチドも、本発明のポリペプチドの範疇に入る。そうした場合において、エステルは、たとえば、上述のC末端エステルと同じ種類のエステルでよい。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「コンジュゲートのアミド」とは、カルボン酸基のアミド誘導体が存在する(たとえば、−CO
2Hが−CO(NR’R’に変換されている)ペプチドまたはポリペプチドを含むコンジュゲートを指し、R’は、HまたはRであり、Rは、上で規定している。用語「コンジュゲートのアミド」は、アミノ基のアミド誘導体が存在する(すなわち、脂肪酸にコンジュゲートしているアミノ基以外)(たとえば、−NH
2が−NH−C(O)Rに変換されている)ペプチドまたはポリペプチドを含むコンジュゲートも指し、Rは、上で規定している。好ましい実施形態では、「コンジュゲートのアミド」は、C末端のカルボキシル基がアミド化されている(たとえば、−CO
2Hが−C(O)NH
2、−C(O)NH−C
1〜6アルキル、−C(O)NH−C1〜2アルキルフェニル、または−C(O)N(C
1〜6アルキル)
2に変換されている)ペプチドまたはポリペプチドを含むコンジュゲートである。
【0053】
用語「APJ」(「アペリン受容体」、「アンジオテンシン様1受容体」、「アンジオテンシンII様1受容体」などとも呼ばれる)とは、380残基、7回膜貫通ドメインのGi共役型受容体を指し、その遺伝子は、ヒトの11番染色体の長腕上に位置する(NCBI参照配列:NP_005152.1、NCBI参照配列:NM_005161によってコードされる)。APJは、1993年に、変性オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ヒトゲノムDNAから初めてクローン化され(O’Dowd et al. Gene, 136:355-60、1993)、1型アンジオテンシンII受容体と有意に相同的である。しかし、この相同性にもかかわらず、アンジオテンシンIIは、APJを結合しない。この内因性リガンドは、長年の間オーファンであったが、単離され、アペリンと命名された(Tatemoto et al., Biochem Biophys Res Commun 251, 471-6 (1998))。
【0054】
用語「APJアゴニスト」はアペリンポリペプチドを含む:アペリンは、77残基のプレタンパク質(NCBI参照配列:NP_0059109.3、NCBI参照配列:NM_017413.3によってコードされる)を指し、これがプロセシングを受けて、生物学的活性型のアペリンペプチド、たとえば、アペリン−36、アペリン−17、アペリン−16、アペリン−13、アペリン−12になる。「アペリン−36」と呼ばれる全長成熟ペプチドは、36アミノ酸を含むが、最も強力なアイソフォームは、「Pyr−1−アペリン−13またはPyr
1−アペリン−13」と呼ばれる、ピログルタミン酸化型のアペリン13量体(アペリン−13)である。種々のアペリン型は、たとえば、米国特許第6,492,324B1号明細書に記載されている。アペリンペプチドアゴニストは、参照により本明細書に援用される、特許出願国際公開第2013/111110号パンフレット、米国特許出願公開第14/082771号明細書、ならびに米国仮特許出願公開第61/858263号明細書、米国仮特許出願公開第61/858280号明細書、および米国仮特許出願公開第61/858290号明細書にも記載されている。
【0055】
用語「オキシトシン受容体アゴニストペプチド」または「オキシトシンペプチド」は、互換的に使用され、オキシトシンおよびその類似体を包含する。オキシトシンは、1位と6位の間にジスルフィド架橋を形成する2つのシステイン残基を有する、9アミノ酸の環状ペプチドホルモンである。ヒトオキシトシンは、配列Cys−Tyr−Ile−Gln−Asn−Cys−Pro−Leu−Glyを含む。用語「オキシトシン受容体アゴニストペプチド」は、生物活性を保持するオキシトシンの類似体も包含する。そのような類似体分子は、オキシトシン受容体を結合することを含めて、内因性オキシトシンと似たようにして作用しうる。特に重要なオキシトシンの類似体は、PCT出願番号、国際公開第2014/095773号パンフレット(詳細には実施例13)で開示されているもの、米国特許出願公開第US2011/044905号明細書(詳細には実施例49)で開示されているもの、ならびにKazimierz Wisniewski et al., Journal of Medicinal Chemistry 2014, 57, 5306-5317およびZbigniew Grzonka et al., Journal of Medicinal Chemistry 1983, 26, 1786-1787で開示されているものであり、これら文献は、すべて参照により本明細書に援用される。
【0056】
「PIP」または「プロラクチン誘導ペプチド」とは、多様な生物学的過程において役割を示す、GenBank受託番号がNP_002643であるタンパク質を意味する。PIPは、当業界において、巨大な嚢胞性疾患流体タンパク質(gross cystic disease fluid protein)15(GCDFP−15)、分泌性アクチン結合性タンパク質(SABP)、耳下腺外糖タンパク質(EP−GP)、および17kDa CD4結合性タンパク質(GP17)としても知られている。PIPは、外分泌臓器ならびに良性および悪性のヒト乳腺腫瘍において発現される。成熟分泌PIPタンパク質は、分子質量が13kDaであり、SDS−PAGEでは17〜20kDaのポリペプチドとして移動し、グリコシル化事象が示唆される。PIPは、ヒトの体液に寄与するほとんどの臓器において発現され、PIPの発現は、唾液腺に続いて、涙腺、前立腺、筋肉、気管線、および乳腺で最も高い。PIP遺伝子は、PIPポリペプチドをコードする。
【0057】
本明細書で使用する「PIPペプチド」とは、ヒトPIP、またはヒトPIPの少なくとも1つの活性を保持するその相同体、変異体、断片、もしくは修飾形態を意味する。
【0058】
ヒトPIPの非限定的な例の配列は、配列番号11で示される。
1 MRLLQLLFRA SPATLLLVLC LQLGANKAQD NTRKIIIKNF DIPKSVRPND EVTAVLAVQT
61 ELKECMVVKT YLISSIPLQG AFNYKYTACL CDDNPKTFYW DFYTNRTVQI AAVVDVIREL
121 GICPDDAAVI PIKNNRFYTI EILKVE(配列番号11)
【0059】
配列番号11は、機能にとって必要とならないシグナルペプチド(アミノ酸1〜28)を含む全長ヒト野生型PIPに相当する。
【0060】
本明細書で使用する用語「PIP」の別の非限定的な例は、それゆえシグナルペプチド(アミノ酸1〜28)を欠いている配列番号11のアミノ酸(aa)29〜146であり、以下に配列番号12として示す。
1 QDNTRKIIIK NFDIPKSVRP NDEVTAVLAV QTELKECMVV KTYLISSIPL QGAFNYKYTA
61 CLCDDNPKTF YWDFYTNRTV QIAAVVDVIR ELGICPDDAA VIPIKNNRFY TIEILKVE
(配列番号12)
【0061】
PIPなどの「相同体」、「変異体」、「断片」、または「修飾形態」とは、ヒトPIPに類似しているが同一でないものの、ヒトPIPの少なくとも1つの活性を保持する、ポリペプチドを意味する。そのようなポリペプチドは、ヒトPIPの配列(たとえば、配列番号12)と同一でない配列を有する場合もあれば、またはヒトPIPの配列(たとえば、配列番号12)と同一の配列を有するが、他のいくつかの様態(たとえば、翻訳後修飾)が異なっている場合もある。そうしたポリペプチドは、たとえば、配列番号12に対する配列同一性が、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%でよく、または、たとえば、配列番号12のアミノ酸配列とに、最大で5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50アミノ酸の相違(たとえば、置換、欠失、および/もしくは付加)を有していてよい。一部の実施形態では、そのPIP相同体、変異体、断片、または修飾形態は、少なくとも90%の配列同一性を保持し、または配列番号12とに最大で25アミノ酸の相違を有する。PIP相同体、変異体、断片、または修飾形態は、ヒトPIPの少なくとも1つの活性を保持する。
【0062】
「FGF23」または「線維芽細胞増殖因子23」とは、FGF−23、ADHR;FGFN;HPDR2;HYPF;PHPTC;外部ID:OMIM:605380 MGI:1891427 HomoloGene:10771 GeneCards:FGF23Gene;種:ヒト;Entrez8074;Ensembl ENSG00000118972;UniProt:Q9GZV9;RefSeq(mRNA):NM_020638;RefSeq(タンパク質):NP_065689;所在(UCSC):Chr12:4.48〜4.49Mb;種:マウス;Entrez:64654;Ensembl:ENSMUSG00000000182;UniProt:Q9EPC2;RefSeq(mRNA):NM_022657;RefSeq(タンパク質):NP_073148;所在(UCSC):Chr6:127.07〜127.08Mbとしても知られているポリペプチドを意味する。FGF23遺伝子は、FGF23ポリペプチドをコードする。
【0063】
本明細書で使用する「FGF23ペプチド」とは、ヒトFGF23、またはヒトFGF23の少なくとも1つの活性を保持するその相同体、変異体、断片、もしくは修飾形態を意味する。
【0064】
シグナルペプチドを含むヒトFGF23の非限定的な例の配列は、配列番号9で示される。
10 20 30 40 50
MLGARLRLWV CALCSVCSMS VLRAYPNASP LLGSSWGGLI HLYTATARNS
60 70 80 90 100
YHLQIHKNGH VDGAPHQTIY SALMIRSEDA GFVVITGVMS RRYLCMDFRG
110 120 130 140 150
NIFGSHYFDP ENCRFQHQTL ENGYDVYHSP QYHFLVSLGR AKRAFLPGMN
160 170 180 190 200
PPPYSQFLSR RNEIPLIHFN TPIPRRHTRS AEDDSERDPL NVLKPRARMT
210 220 230 240 250
PAPASCSQEL PSAEDNSPMA SDPLGVVRGG RVNTHAGGTG PEGCRPFAKF
260
I(配列番号9)
【0065】
配列番号9は、機能にとって必要とならないシグナルペプチド(アミノ酸1〜24)を含む全長ヒト野生型FGF23に相当する。Yamashita et al. 2000 Biochem. Biophys. Res. Comm. 277: 494-498、Shimada et al. 2001 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 6500-6505、およびZhang et al. 2004 Protein Sci. 13: 2819-2824。
【0066】
本明細書で使用する用語「FGF23」の非限定的な例は、それゆえシグナルペプチド(アミノ酸1〜24)を欠いている配列番号9のアミノ酸(aa)25〜251であり、以下に配列番号8として示す。
10 20 30 40 50
YPNASP LLGSSWGGLI HLYTATARNS
60 70 80 90 100
YHLQIHKNGH VDGAPHQTIY SALMIRSEDA GFVVITGVMS RRYLCMDFRG
110 120 130 140 150
NIFGSHYFDP ENCRFQHQTL ENGYDVYHSP QYHFLVSLGR AKRAFLPGMN
160 170 180 190 200
PPPYSQFLSR RNEIPLIHFN TPIPRRHTRS AEDDSERDPL NVLKPRARMT
210 220 230 240 250
PAPASCSQEL PSAEDNSPMA SDPLGVVRGG RVNTHAGGTG PEGCRPFAKF
260
I(配列番号8)
【0067】
FGF23などの「相同体」、「変異体」、「断片」、または「修飾形態」とは、ヒトFGF23(たとえば、配列番号8)に類似しているが同一でないものの、ヒトFGF23の少なくとも1つの活性を保持する、ポリペプチドを意味する。そうしたポリペプチドは、たとえば、配列番号8に対する配列同一性が、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%でよく、または、たとえば、配列番号8のアミノ酸配列とに、最大で5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50アミノ酸の相違(たとえば、置換、欠失、および/もしくは付加)を有していてよい。一部の実施形態では、そのFGF23相同体、変異体、断片、または修飾形態は、少なくとも90%の配列同一性を保持し、または配列番号8とに最大で25アミノ酸の相違を有する。そのFGF23相同体、変異体、断片、または修飾形態は、ヒトFGF23の少なくとも1つの活性を保持する。そのような活性(または機能)には、非限定的な例として、FGF23受容体への結合、Klothoタンパク質との相互作用、細胞の増殖、および細胞シグナル伝達における役割;Egr−1−ルシフェラーゼアッセイを始めとする、FGF23活性の種々のin vitroアッセイにおける活性、ならびに、FGF23関連疾患、たとえば、(サルコペニア、皮膚萎縮、筋消耗、脳萎縮、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、肺気腫、骨粗鬆症、骨関節炎、免疫不適格、高血圧、認知症、ハンチントン病、アルツハイマー病、白内障、加齢黄斑変性、前立腺がん、卒中、平均余命の短縮、記憶喪失、しわ、腎臓機能の障害、および加齢性失聴からなる群から選択される)加齢性状態、(II型糖尿病、メタボリック症候群、高血糖、および肥満からなる群から選択される)代謝性障害、高リン血症(腫瘤様石灰沈着症、高リン血性骨化過剰症候群)、慢性腎疾患、慢性腎不全、がん、乳がん、および/または筋萎縮に関連した活性を含めて、ヒトFGF23について知られているものが含まれる。Yamashita et al. 2000 Biochem. Biophys. Res. Comm. 277: 494-498、Shimada et al. 2001 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 6500-6505、Urakawa et al. 2006 Nature 444: 770-774、Zhang et al. 2004 Protein Sci. 13: 2819-2824、国際公開第2013/027191号パンフレット、国際公開第2011/092234号パンフレット、および国際公開第2009/095372号パンフレット。一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の脂肪酸と、FGF23ペプチドとを含み、FGF23ペプチドは、FGF23の少なくとも1つの活性を保持する、コンジュゲートを提供し、一部の実施形態では、保持されるFGF23の活性は、in vitro Egr−1−ルシフェラーゼアッセイにおける機能である。
【0068】
FGF23の「相同体」とは、ヒトFGF23に相当するが、哺乳動物、たとえば、マウス、ラット、カニクイザル、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌなどの異なる供給源由来であり、それでもなおヒトFGF23の少なくとも1つの機能を保持する、ポリペプチドを意味する。
【0069】
FGF23の「変異体」とは、たとえば配列番号8に対して1つまたは複数の突然変異(たとえば、欠失、置換、または付加)を含むが、それでもなおヒトFGF23の少なくとも1つの機能を保持するFGF23を意味する。FGF23の突然変異としては、Y154、Q156、R176、R179、C206、およびC244位における突然変異が挙げられる。このような突然変異は、以前に記載されている。R179における突然変異によって、FGF23に耐タンパク質分解性が付与され、ADHRでは、176RXXR179部位の突然変異によって、FGF23の切断および不活性化が妨げられる。White et al. 2000 Nat. Genet. 26: 345-348、Liu et al. 2003 J. Biol. Chem. 278: 37419-37426。Y154における突然変異によって、分解が減少し、Q156における突然変異によって、切断部位が消去され、C206およびC244における突然変異によって、二量体化および凝集が減少する。国際公開第2013/027191号パンフレットおよび国際公開第2011/092234号パンフレット。FGF23相同体、変異体、または修飾形態は、(野生型ヒトFGF23には通常見られない)1つまたは複数の追加のアミノ酸をさらに含んでもよい。
【0070】
FGF23変異体の非限定的な例をここに示す。
10 20 30 40 50
MYPNASP LLGSSWGGLI HLYTATARNS
60 70 80 90 100
YHLQIHKNGH VDGAPHQTIY SALMIRSEDA GFVVITGVMS RRYLCMDFRG
110 120 130 140 150
NIFGSHYFDP ENCRFQHQTL ENGYDVYHSP QYHFLVSLGR AKRAFLPGMN
160 170 180 190 200
PPPYSQFLSR RNEIPLIHFN TPIPRRHTQS AEDDSERDPL NVLKPRARMT
110 220 230 240 250
PAPASCSQEL PSAEDNSPMA SDPLGVVRGG RVNTHAGGTG PEGCRPFAKF
260
I(配列番号10)
【0071】
配列番号10は、シグナルペプチド(aa1〜24)が欠失しているが、1位における最初のMが再導入されており、R179に対応するアミノ酸がQに突然変異している、FGF23の変異体を示す。配列番号10は、「hFGF23 R179Q」、「FGF23 R179」、「hFGF23(R179Q)」などとも呼ばれ、実施例28Cで使用されるFGF23変異体に相当する。
【0072】
追加のFGF23変異体には、非限定的な例として、配列番号8または配列番号10の配列を有するが、Y154、Q156、R176、R179、C206、およびC244のうちの1箇所以上にも突然変異を有するものが含まれる。追加のFGF23変異体には、非限定的な例として、配列番号8または配列番号10の配列を有するが、Y154、Q156、R176、R179、C206、およびC244のうちの1箇所以上にも突然変異を有し、(野生型ヒトFGF23には通常見られない)1つまたは複数の追加のアミノ酸をさらに含むものが含まれる。
【0073】
FGF23の「断片」とは、たとえば配列番号8に対して1つまたは複数の欠失したアミノ酸を含むが、それでもなおヒトFGF23の少なくとも1つの機能を保持するFGF23を意味する。FGF23の機能しうる断片は、配列番号8のアミノ酸180〜251を含む。Goetz et al. 2010 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107: 407-412。FGF23断片は、たとえば、Y154、Q156、R176、R179、C206、およびC244位のいずれか1つまたは複数において、1つまたは複数の突然変異を有する場合もあるが、ヒトFGF23の少なくとも1つの活性を保持しうる。
【0074】
FGF23の「修飾形態」とは、FGF23の配列、たとえば配列番号8と同様または同一の配列を含むが、1つまたは複数の修飾を含み、ヒトFGF23の少なくとも1つの活性を保持するFGF23を意味する。このような修飾には、非限定的な例として、翻訳後修飾(リン酸化、メチル化、もしくは炭水化物の付加)、またはFGF23でない第2の部分へのコンジュゲーションを含めることができる。そのような第2の部分は、非限定的な例として、シグナルペプチド、αもしくはβKlothoもしくはその断片(たとえば、可溶性KlothoもしくはsKlotho)、Fc(たとえば、FcLALA)、または他の修飾でよい。国際公開第2011/092234号パンフレットおよび国際公開第2009/095372号パンフレット。
【0075】
本明細書で使用するとき、用語「AgRPペプチドまたはポリペプチド」などとは、アグーチ関連ペプチド、すなわち、翻訳後プロセシングを受けてその活性または成熟形態であるAgRP(83〜132)になる、32アミノ酸で構成されたシグナル伝達分子を指し、10のシステイン残基を含んでおり、5つのジスルフィド結合の網状組織を形成する。AgRPは、メラノコルチン受容体MC3RおよびMC4Rの逆アゴニストとしての役割を果たす。用語「AgRPペプチド」は、すべての例において、その塩を包含する。一部の実施形態では、AgRPは、たとえば、C末端−CO2Hがアミド化されてC(O)−NH2を形成することによる、アミドの形でよい。他の実施形態では、AgRPは、酸の形でよい。
【0076】
用語「AgRPペプチド」は、AgRPの、生物学的に活性のあるより短い断片も包含する。断片とは、配列が同一であるが、親配列より長さがより短く、生物学的活性(すなわち、逆アゴニズム)を保持する、親配列の一部分である。AgRPポリペプチドの断片ならびにその変異体は、参照により本明細書に援用される、Jackson, P. J. et al., Biochemistry 41, 7565-757にも記載されている。たとえば、AgRP(87〜120)およびAgRP(87〜132)は、AgRP(83〜132)とほぼ同じMC3RおよびMC4R親和性を有し、同等の逆アゴニズムを示す。AgRPポリペプチドのその他の断片は、参照により本明細書に援用される、Christine G. Joseph et al., Peptides 24 (2003), 263-270に記載されている。断片の例は、AgRP(86〜132)および単環AgRP(109〜118)、ならびにNおよび/またはC末端におけるこれらの伸長である。
【0077】
用語「AgRPポリペプチド」は、自然に存在するAgRPポリペプチド配列が修飾を受けたAgRPポリペプチドである、「AgRP突然変異体ポリペプチド」も包含する。そのような修飾は、参照により本明細書に援用される、PCT出願番号、国際公開第2013/006656号パンフレットに記載されている。
【0078】
用語「GDF15ペプチド」、「GDF15ポリペプチド」および「GDF15タンパク質」は、互換的に使用され、ヒトやマウスなどの哺乳動物において発現される、自然に存在する野生型ポリペプチドを意味する。この開示の目的では、用語「GDF15タンパク質」は、29アミノ酸のシグナルペプチド(アミノ酸1〜29)、167アミノ酸のプロドメイン(アミノ酸30〜196)、およびプロドメインからフューリン様プロテアーゼによって切除される112アミノ酸(アミノ酸197〜308)の成熟ドメインを含んでいる、308アミノ酸残基からなるいずれかの全長GDF15ポリペプチド(NCI参考配列NP_004855.2)を指すのに互換的に使用してよい。308アミノ酸のGDF15ポリペプチドを「全長」GDF15ポリペプチドと呼び、112アミノ酸のGDF15ポリペプチド(たとえば、アミノ酸197〜308)を「成熟」GDF15ポリペプチドと呼ぶ。成熟GDF15ペプチドは、TGF〜スーパーファミリーの仲間に典型的である、(3つの鎖内ジスルフィド結合を有する)システインノットモチーフおよび単一の鎖間ジスルフィド結合の形成に必要となる7つの保存されたシステイン残基を含んでいる。成熟GDF15ペプチドは、4番目の鎖内ジスルフィド結合を形成する2つの追加のシステイン残基も含んでいる。したがって、生物学的に活性のあるGDF15は、1つの鎖間ジスルフィド結合によって共有結合連結されている、成熟ペプチドのホモ二量体である。したがって、GDF15タンパク質またはポリペプチドには、このタンパク質の多量体、より詳細には二量体も含まれる。ホモ二量体GDF15を構成する各モノマー単位を、式A1、A2、またはA3の脂肪酸に連結することができる。
【0079】
本明細書で使用する「GDF15」または「GDF15タンパク質」はまた、ヒトGDF15、またはヒトGDF15の少なくとも1つの活性を保持するその相同体、変異体、突然変異体、断片、もしくは修飾形態も意味する。
【0080】
用語「GDF15突然変異体ポリペプチド」または「GDF15変異体ポリペプチド」は、自然に存在するGDF15ポリペプチド配列が修飾されたものである、GDF15ポリペプチドを包含する。そのような修飾には、限定はしないが、自然に存在しないアミノ酸、自然に存在しないアミノ酸類似体、およびアミノ酸模倣物での置換を含めた、1つまたは複数のアミノ酸置換が含まれる。
【0081】
一態様では、用語「GDF15突然変異体タンパク質」または「GDF15変異体ポリペプチド」は、未変性GDF15ポリペプチドの所与の位置に通常見られる少なくとも1つの残基が欠失し、または未変性GDF15配列中のその位置に通常は見られない残基で置き換えられたものである、GDF15タンパク質配列を指す。一部の場合では、未変性GDF15ポリペプチドの所与の位置に通常見られる単一の残基を、その位置に通常は見られない2つ以上の残基で置き換えることが望ましくなり、さらに他の場合では、未変性GDF15ポリペプチド配列を保持し、タンパク質中の所与の位置に1つまたは複数の残基を挿入することが望ましい場合もあり、さらに他の場合では、所与の残基を完全に欠失させることが望ましい場合もあり、これらの構築物はすべて、用語「GDF15突然変異体タンパク質」または「GDF15変異体タンパク質」に包含される。本発明の一態様では、GDF15突然変異体タンパク質または「GDF15変異体タンパク質」は、配列番号1〜配列番号7のいずれか1つから選択される配列を有する。本発明はまた、このようなGDF15突然変異体ポリペプチド配列またはGDF15変異体ポリペプチド配列をコードする核酸分子も包含する。
【0082】
GDF15などの「相同体」、「変異体」、「断片」、または「修飾形態」とは、ヒトGDF15に類似しているが同一でないものの、ヒトGDF15の少なくとも1つの活性を保持する、ポリペプチドを意味する。
【0083】
GDF15の「修飾形態」とは、GDF15の配列と同様または同一の配列を含むが、1つまたは複数の修飾を含み、ヒトGDF15の少なくとも1つの活性を保持するGDF15を意味する。このような修飾には、非限定的な例として、翻訳後修飾(リン酸化、メチル化、もしくは炭水化物の付加)を含めることができる。
【0084】
GDF15の「相同体」とは、ヒトGDF15に相当するが、哺乳動物、たとえば、カニクイザル、マウス、ラットなどの異なる供給源由来であり、それでもなおヒトGDF15の少なくとも1つの機能を保持する、ポリペプチドを意味する。一部の例では、GDF15相同体は、対象において代謝障害を治療し、または改善させるのに、対象と同じ種由来である、成熟型のGDF15突然変異体ポリペプチドとして使用することができる。
【0085】
種々の実施形態において、GDF15ポリペプチド、その相同体、変異体、突然変異体、断片、または修飾形態は、自然に存在するGDF15タンパク質に対する同一性が少なくとも約85パーセントであるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、GDF15ポリペプチドは、自然に存在するGDF15ポリペプチドアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも約90パーセント、または約95、96、97、98、もしくは99パーセントであるアミノ酸配列を含む。このようなGDF15ポリペプチド、その相同体、変異体、突然変異体、断片、または修飾形態は、血中グルコース、インスリン、トリグリセリド、もしくはコレステロールレベルを低下させる能力;体重を減少させる能力;または耐糖能、エネルギー消費、もしくはインスリン感受性を改善する能力などの、野生型GDF15突然変異体ポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持する。
【0086】
種々のそれぞれの実施形態において、GDF15ポリペプチド、またはその相同体、変異体、突然変異体、断片、もしくは修飾形態は、自然に存在する形態の成熟GDF15タンパク質の生物学的活性と同等である、それを超える、またはそれ未満である生物学的活性を有する。生物学的活性の例としては、血中グルコース、インスリン、トリグリセリド、もしくはコレステロールレベルを低下させる能力;体重を減少させる能力;または耐糖能、脂質耐性、もしくはインスリン感受性を改善する能力;尿中グルコースおよびタンパク質排出を減少させる能力が挙げられる。
【0087】
ポリペプチドまたはタンパク質の構造に関連して本明細書で使用するとき、用語「N末端」(または「アミノ末端」)および「C末端」(または「カルボキシル末端」)とは、それぞれ、ポリペプチドの最も端のアミノ末端およびカルボキシル末端を指す。
【0088】
本明細書で使用する用語「治療用ポリペプチド」または「治療用タンパク質」とは、治療に使用するために開発されている、または治療に使用するために開発されたポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0089】
リンカーは、生体分子と、脂肪酸部分とを隔てる。リンカーは、主としてスペーサーとして働くので、その化学構造は肝要でない。
【0090】
リンカーは、一方が生体分子、他方が脂肪酸部分と反応しうる、2つの反応性基/官能基を含んでいる化学的部分である。リンカーの2つの反応性基/官能基は、連結部分またはスペーサーを介して連結され、連結部分またはスペーサーの構造は、リンカーの、生体分子、および式A1、A2、またはA3の脂肪酸部分とのリンカーの結合の妨げとならない限り、肝要でない。
【0091】
リンカーは、ペプチド結合によって互いに連結しているアミノ酸で構成されたものでよい。本発明の一部の実施形態では、リンカーは、ペプチド結合によって連結された1〜20個のアミノ酸で構成され、アミノ酸は、20種の自然に存在するアミノ酸から選択される。種々の実施形態において、1〜20個のアミノ酸は、アミノ酸のグリシン、セリン、アラニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、およびリシンから選択される。一部の実施形態では、リンカーは、グリシンやアラニンなどの、立体障害のない大多数のアミノ酸で構成される。一部の実施形態では、リンカーは、ポリグリシン、ポリアラニン、グリシンとアラニンの組合せ(ポリ(Gly−Ala)など)、またはグリシンとセリンの組合せ(ポリ(Gly−Ser)など)である。一部の実施形態では、リンカーは、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン、アスパラギン、およびグリシンから選択されるアミノ酸で大多数が構成されている。一部の実施形態では、リンカーは、ポリヒスチジン部分を含んでいる。
【0092】
一部の実施形態では、リンカーは、非天然アミノ酸から選択される1〜20のアミノ酸を含む。脂肪酸部分とのコンジュゲーションには、1〜10アミノ酸残基のリンカーが好ましいが、本発明は、いずれの長さまたは組成のリンカーも企図する。非天然アミノ酸リンカーの一例は、次式:
【0093】
【化2】
[この文献は図面を表示できません]
を有する8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸またはその反復単位である。
【0094】
本明細書に記載のリンカーは、例示的なものであり、はるかに長い、また他の残基を含むリンカーが、本発明によって企図される。非ペプチドリンカーも、本発明によって企図される。
【0095】
他の実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、ポリエチレングリコール、および/または1つまたは複数の天然もしくは天然でないアミノ酸、またはこれらの組合せを含み、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、および/または天然もしくは天然でないアミノ酸はそれぞれ、場合により合体および連結し合っており、または生体分子および/もしくは脂肪酸部分に、−C(O)O−、−OC(O)−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−OC(O)NH−、−NHC(O)−O−、=NH−O−、=NH−NH−、もしくは=NH−N(アルキル)−から選択される化学基を介して連結している。
【0096】
アルキルスペーサーを含んでいるリンカーは、たとえば、−NH−(CH
2)
z−C(O)−または−S−(CH
2)
z−C(O)−または−O−(CH
2)
z−C(O)−、−NH−(CH
2)
z−NH、−O−C(O)−(CH2)
z−C(O)−O−、−C(O)−(CH
2)
z−O−、−NHC(O)−(CH
2)
z−C(O)−NH−などであり、zは、2〜20である。こうしたアルキルリンカーは、限定はしないが、低級アルキル(たとえば、C
1〜C
6)、低級アシル、ハロゲン(たとえば、Cl、Br)、CN、NH2、またはフェニルを含めた、いずれかの非立体障害性基でさらに置換されていてもよい。
【0097】
リンカーは、ポリマーの性質のものでもよい。リンカーは、生物学的に安定または生分解性であるポリマー鎖または単位を含んでよい。連結が繰り返されているポリマーは、結合不安定性に応じて、生理的条件下で様々な程度の安定性を備えうる。ポリマーは、ポリカルボネート(−O−C(O)−O−)、ポリエステル(−C(O)−O−)、ポリウレタン(−NH−C(O)−O−)、ポリアミド(−C(O)−NH−)などの結合を含んでいてよい。こうした結合は、例として示しており、本発明のポリマー鎖またはリンカーにおいて用いることのできる結合のタイプを限定するものではない。適切なポリマーとしては、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテルマレイン酸無水物、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖、セルロースおよびセルロース誘導体、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体のコポリマー、ポリビニルエチルエーテルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。ポリマーリンカーは、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)である。PEGリンカーは、線状または分枝状である場合がある。本発明におけるPEGリンカーの分子量は、特定のいずれかの大きさに限定されないが、ある特定の実施形態は、100〜5000ダルトン、たとえば、500〜1500ダルトンの間の分子量を有する。
【0098】
リンカーは、ペプチドまたはポリペプチド/タンパク質のアミノ基と脂肪酸部分上の官能基/反応性基(たとえば、式A1、A2、およびA3の脂肪酸部分のカルボン酸官能基)との間に架橋を形成する適切な官能基−反応性基を、両方の末端に含んでいる。
【0099】
リンカーは、性質の異なるいくつかの連結部分(またはスペーサー)(たとえば、アミノ酸、ヘテロシクリル部分、PEG、および/またはアルキル部分の組合せ)を含んでもよい。この例において、各連結部分は、ペプチドまたはポリペプチド/タンパク質のアミノ基と、性質の異なる次の連結部分との間に架橋を形成する適切な官能基反応性基を両方の末端に含んでおり、かつ/または性質の異なる前の連結部分と脂肪酸部分との間に架橋を形成する適切な官能基−反応性基を含んでいる。
【0100】
修飾されたペプチドもしくはポリペプチドおよび/またはペプチド−ポリペプチド部分構築物(すなわち、部分的なリンカーに付着しているペプチド/ポリペプチド)は、脂肪酸部分(または修飾された脂肪酸部分、すなわち、部分的なリンカーにすでに付着しているもの)上の利用可能な反応性官能基と反応して共有結合を形成しうる反応性基を含む。反応性基は、共有結合を形成しうる化学基である。反応性基は、コンジュゲーションの一方の部位に配置され、一般に、それによってコンジュゲーションの他方の部位にあるアミノ基、ヒドロキシル基、アルケン基、ヒドラジン基、ヒドロキシルアミン基、アジド基、またはチオール基のような官能基と共有結合を形成することのできる、カルボキシ、ホスホリル、アシル基、エステルまたは混合無水物、マレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、テトラジン、アルキン、イミデート、ピリジン−2−イル−ジスルファニルでよい。
【0101】
生体分子または修飾された生体分子をリンカーにコンジュゲートさせる、および/またはリンカーを脂肪酸部分にコンジュゲートさせる、および/または性質の異なる種々の連結部分を互いにコンジュゲートさせるための、特に重要な反応性基は、N−ヒドロキシスクシンイミド、アルキン(より詳細にはシクロオクチン)である。
【0102】
官能基としては、1.マレイミド、トシルスルホン、またはピリジン−2−イルジスルファニルと反応させるためのチオール基;2.カルボン酸もしくは活性化型カルボン酸(たとえば、N−ヒドロキシスクシンアミド化学によるアミド結合形成)、ホスホリル基、アシル基、または混合無水物に結合させるためのアミノ基(たとえば、アミノ酸のアミノ官能基);3.末端アルキン、より詳細にはシクロオクチンとのHuisgen付加環化(より一般的にはクリックケミストリーとして知られる)にかけるためのアジド;4.ヒドロキシルアミンまたはヒドラジンと反応させて、それぞれオキシムまたはヒドラジンを生成するためのカルボニル基;5.アザ[4+2]付加においてテトラジンと反応させるためのアルケン、より詳細には歪みアルケンが挙げられる。リンカーおよび官能基/反応性基のいくつかの例を本明細書で述べてはいるが、本発明は、リンカーまたはいずれの長さおよび組成を企図する。
【0103】
実施形態
本発明の種々の実施形態をここに記載する。各実施形態で明細に述べられた特色は、明細に述べられた他の特色と組み合わせて、さらなる実施形態を実現してもよいと認識される。
【0104】
実施形態1において、本発明は、リンカーを介して脂肪酸部分に連結している生体分子を含み、前記脂肪酸部分は、次式A1、A2、またはA3:
【0105】
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
[R
1は、CO
2H、Hであり、
R
2、R
3、およびR
4は、互いに独立して、H、OH、CO
2H、−CH=CH
2、または−C≡CHであり、
Akは、分枝状C
6〜C
30アルキレンであり、
n、m、およびpは、互いに独立して、6〜30の間の整数である]
である、コンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩に関する。
【0106】
実施形態1のさらなる態様では、実施形態1に従うコンジュゲートは、上述のとおりの式A1、A2、またはA3の脂肪酸をさらに含んでもよい。選択的なコンジュゲーションおよび/または脂肪酸の生体分子への一価コンジュゲーションを実現することの難しさを考慮して、本発明のコンジュゲートは、式A1、A2、またはA3の1つまたは複数の脂肪酸部分に連結している生体分子を含んでもよい。加えて、一部のタンパク質の多重結合性の性質を考慮すると、多量体タンパク質を構成する各モノマー単位が脂肪酸部分に連結しうるが、モノマー単位の少なくとも1つが脂肪酸部分に連結している限り、必ずしもすべてのモノマー単位が脂肪酸部分に連結する必要はない。さらなる態様では、本発明は、本発明のコンジュゲートの混合物に関する。たとえば、混合物は、式A1、A2、またはA3の1つの脂肪酸部分に連結している生体分子、たとえば、多量体生体分子、たとえば二量体生体分子と、式A1、A2、またはA3の2つ以上の脂肪酸部分に連結している生体分子、たとえば、多量体生体分子、たとえば二量体生体分子とを含む場合がある。以下の本発明の実施例では、脂肪酸のタンパク質またはポリペプチドへの選択的または非選択的な多重コンジュゲーションに関するこの態様をさらに強調する。
【0107】
実施形態1Aにおいて、本発明は、前記脂肪酸部分が式A1である、実施形態1に従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の態様では、前記コンジュゲートは、nおよびmが、独立して、8〜20、好ましくは10〜16である、式A1の脂肪酸部分を含む。この実施形態の別の態様では、本発明は、前記脂肪酸部分が式A1であり、R
2およびR
3の少なくとも一方がCO
2Hである、実施形態1または1Aに従うコンジュゲートに関する。
【0108】
実施形態2において、本発明は、前記脂肪酸部分が次式:
【0109】
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、Ak
3、Ak
4、Ak
5、Ak
6、およびAk
7は、独立して、(C
8〜20)アルキレンであり、R
5およびR
6は、独立して、(C
8〜20)アルキルである]から選択される、実施形態1または1Aに従うコンジュゲートに関する。
【0110】
実施形態3において、本発明は、前記脂肪酸部分が次式:
【0111】
【化5】
[この文献は図面を表示できません]
から選択される、実施形態1、1A、または2に従うコンジュゲートに関する。
【0112】
実施形態3Aにおいて、本発明は、前記脂肪酸部分が次式:
【0113】
【化6】
[この文献は図面を表示できません]
から選択される、実施形態1、1A、または2に従うコンジュゲートに関する。
【0114】
実施形態3Bにおいて、本発明は、前記脂肪酸部分が式A2またはA3である、実施形態1に従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の態様では、前記コンジュゲートは、pが8〜20である式A2の脂肪酸部分、またはAkがC
8〜20アルキレンである式A3の脂肪酸部分を含む。
【0115】
実施形態3Cにおいて、本発明は、前記脂肪酸部分が次式:
【0116】
【化7】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、Ak
2は、C
8〜20アルキレンである]から選択される、実施形態1または3Bに従うコンジュゲートに関する。
【0117】
実施形態4において、本発明は、前記リンカーが、1つまたは複数のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、ポリエチレングリコール、1つまたは複数の天然もしくは天然でないアミノ酸、またはこれらの組合せを含み、前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ポリエチレングリコール、および/または天然もしくは天然でないアミノ酸はそれぞれ、場合により互いに合体および連結しており、または前記生体分子および/もしくは前記脂肪酸部分に、−C(O)O−、−OC(O)−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、−OC(O)NH−、−NHC(O)−O−、=NH−O−、=NH−NH−、もしくは=NH−N(アルキル)−から選択される化学基を介して連結している、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0118】
実施形態5において、本発明は、前記リンカーが、式:
【0119】
【化8】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、yは、0〜34である]の非分枝状オリゴエチレングリコール部分を含む、前述の実施形態のいずれかに従うコンジュゲートに関する。
【0120】
実施形態6において、本発明は、前記リンカーが、次式:
【0121】
【化9】
[この文献は図面を表示できません]
から選択されるヘテロ環部分を含む(またはさらに含む)、前述の実施形態のいずれかに従うコンジュゲートに関する。
【0122】
このようなヘテロシクリルを含んだリンカーは、たとえば、より一般的にはクリックケミストリーとして知られる、アジド−アルキンHuisgen付加環化によって得られる。より詳細には、上で示したヘテロシクリルのいくつかは、シクロアルキンを含アジド部分と反応させた結果として得られる。
【0123】
シクロアルキンは、市販品供給元から容易に入手可能であり、したがって、アジド官能基を含んでいる部分(たとえば、末端アジド官能基を含んでいるリンカー)との付加環化によって機能付与することができる。タンパク質標識における環状アルキンクリックケミストリーの使用の例は、参照により本明細書に援用される米国特許第2009/0068738号明細書に記載されている。
【0124】
Huisgen付加環化において使用することのできるシクロアルキン剤の非限定的な例は、
【0125】
【化10-1】
[この文献は図面を表示できません]
【0126】
【化10-2】
[この文献は図面を表示できません]
である。
【0127】
実施形態6Aにおいて、本発明は、前記リンカーが、次式:
【0128】
【化11】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、rは、0〜2の整数であり、sは、0〜3の整数である]から選択されるヘテロシクリルを含む(またはさらに含む)、実施形態1〜5のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0129】
このようなヘテロ環式リンカーは、アルケン、または好ましくは歪みアルケン、たとえばシクロアルカンの、次の部分:
【0130】
【化12】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、Rfは、たとえば、−CH
2NH
2、−OH、−CH
2−CO
2H、−S−CH
2−CO
2H、−(O−CH
2)
4−6−C(O)−OH、または
【0131】
【化13】
[この文献は図面を表示できません]
である]とのアザ[4+2]付加環化によって得ることができる。
【0132】
このようなテトラジン部分は、市販品供給元から容易に入手可能であり、アルケンを含んでいる部分、たとえば、末端アルケン官能基を含んでいるリンカーと反応させることができる。
【0133】
実施形態6Bにおいて、本発明は、前記リンカーが、次式:
【0134】
【化14】
[この文献は図面を表示できません]
のヘテロシクリルを含む(またはさらに含む)、実施形態1〜5のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0135】
このようなヘテロ環部分は、マレイミドを、チオールを含んでいる部分、たとえば、末端チオール官能基を含んでいるリンカーと反応させることにより取得できる。
【0136】
容易に入手可能である、および/または市販品として入手可能である、こうした試薬は、直接、または上述のとおりのリンカーを介して、対象となるペプチドまたはポリペプチドに付着させる。アルキン、マレイミド、またはテトラジン反応性基は、脂肪酸部分またはリンカー−脂肪酸構築物(たとえば、PEG−脂肪酸構築)上に存在する官能基(それぞれ、アジド、チオール、およびアルケン)と反応する。
【0137】
実施形態7において、本発明は、前記リンカーが、ヒスチジン、メチオニン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、およびグリシンから独立して選択される1つまたは複数のアミノ酸を含むまたはさらに含む、前述の実施形態のいずれかに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の一態様では、前記リンカーは、ヒスチジン、アラニン、およびメチオニンから選択される1〜6つのアミノ酸を含む。
【0138】
実施形態8において、本発明は、前記生体分子がペプチドまたはポリペプチドである、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。実施形態8の特定の一態様では、本発明は、前記ペプチドまたはポリペプチドが、1)ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態、2)APJアゴニストペプチド、3)オキシトシン受容体アゴニストペプチド、4)セレラキシン、5)NPFF、6)PIPペプチド、7)FGF23ペプチド 8)AgRPペプチド、または9)siRNAである、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0139】
実施形態8Aにおいて、本発明は、前記生体分子が、ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態、またはこれらの二量体である、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の一態様では、前記生体分子は、ヒト増殖分化因子15(GDF15)突然変異体または変異体である。好ましい実施形態では、前記生体分子は、GDF15またはその変異体もしくは突然変異体の二量体である。GDF15ポリペプチドまたはその突然変異体もしくは変異体のホモ二量体の性質を考慮すると、ホモ二量体を構成する2本のポリペプチド鎖(すなわち、各モノマー単位)のそれぞれが、式A1、A2、またはA3の脂肪酸分子にリンカーを介して連結しうる。したがって、GDF15ホモ二量体は、1つまたは2つの脂肪酸にリンカーを介して連結される場合もある。リンカーを介して脂肪酸部分に連結しているGDF15の構造は、以下のように表すことができる。
【0140】
【化15】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、FAは、脂肪酸部分、Lは、リンカーを表し、GDF15モノマー単位1およびモノマー単位2は、両方とも、リンカーを介して脂肪酸部分に連結している]または
【0141】
【化16】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、FAは、脂肪酸部分、Lは、リンカーであり、モノマー単位の一方だけが、リンカーを介して脂肪酸部分に連結しており、2つのモノマー単位間の線は、ジスルフィド結合を表す]。さらに、本発明はまた、構造Aのコンジュゲートと構造Bのコンジュゲートとを含む混合物に関する。
【0142】
実施形態8Bにおいて、本発明は、前記ヒトGDF15突然変異体が、成熟ポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基を別の残基で置き換えることにより得たものである、実施形態8Aに従うコンジュゲートを企図する。この実施形態の特定の一態様では、ヒトGDF15のN末端における最後の2つのアミノ酸残基(すなわち、アルギニン198およびアラニン197)が、アミノ酸配列XH−[Hは、ヒスチジンであり、Xは、メチオニン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、およびグリシンから選択されるアミノ酸である]で置き換えられている。この実施形態の好ましい態様では、前記hGDF15突然変異体は、MH(199−308)hGDF15またはAH(199−308)hGDF15である。
【0143】
実施形態8Cでは、ヒトGDF15のN末端における最後の3つのアミノ酸残基(すなわち、アスパラギン199、アルギニン198、およびアラニン197)が、アミノ酸配列XHX’−[Hは、ヒスチジンであり、X’およびXは、メチオニン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、およびグリシンから独立して選択されるアミノ酸である]で置き換えられている。この実施形態の別の態様では、ヒトGDF15のN末端における最後の3つのアミノ酸残基(すなわち、アスパラギン199、アルギニン198、およびアラニン197)が、アミノ酸配列AHX’−[Hは、ヒスチジンであり、X’は、メチオニン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、およびグリシンから独立して選択されるアミノ酸である]で置き換えられている。この実施形態の好ましい態様では、修飾GDF15タンパク質は、MHA(200−308)hGDF15またはAHA(200−308)hGDF15である。
【0144】
未変性GDF15タンパク質に比べて、GDF15突然変異体では、タンパク質のN末端における選択的な標識(すなわち、GDF15の好ましいN末端における脂肪酸のコンジュゲーション)が可能になる。ペプチドおよびタンパク質の選択的な標識については、同時出願された米国特許出願公開第62/015,858号明細書(代理人案件整理PAT056275−US−PSP)および米国特許出願公開第62/082,337号明細書(代理人案件整理番号PAT056275−US−PSP02)にさらに詳細に記載されている。
【0145】
実施形態8Dにおいて、本発明は、前記生体分子がAPJアゴニストペプチドである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の態様では、前記APJアゴニストペプチドは、参照により本明細書に援用される、PCT特許出願番号、国際公開第2013/111110号パンフレット、国際公開第2014/081702号パンフレット、国際公開第2015/013168号パンフレット、国際公開第2015/013165号パンフレット、国際公開第2015/013167号パンフレット、および国際公開第2015/013169号パンフレットに記載されているペプチドある。
【0146】
実施形態8Eにおいて、本発明は、前記生体分子がオキシトシン受容体アゴニストペプチドである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の態様では、前記オキシトシン受容体アゴニストペプチドは、参照により本明細書に援用される、PCT特許出願番号、国際公開第2009/122285号パンフレット(Ferring B.V.)および国際公開第2014/095773号パンフレット(Hoffman−La Roche)に記載されているペプチドである。
【0147】
実施形態8Fにおいて、本発明は、前記生体分子がAgRPペプチドである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の態様では、前記AgRPペプチドは、C末端が遊離−CO
2Hまたはそのアミド(たとえば、−C(O)NH
2)の形である、AgRP(83−132)である。
【0148】
実施形態8Gにおいて、本発明は、前記生体分子がFGF23ペプチドである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の態様では、前記FGF23ペプチドは、R179における突然変異と、場合によりY154、Q156、R176、R179、C206、およびC244における1つまたは複数の追加の突然変異とを有する配列番号8であるFGF23変異体である。この実施形態の別の特定の態様では、FGF23ペプチドは、R179、Q156、C206、およびC244における突然変異を有する配列番号8であるFGF23変異体である。
【0149】
実施形態8Hにおいて、本発明は、前記生体分子がセレラキシンである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0150】
実施形態8Iにおいて、本発明は、前記生体分子がNPFFペプチドである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0151】
実施形態8Jにおいて、本発明は、前記生体分子がPIPペプチドである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の特定の態様では、前記PIPペプチドは、hisでタグ付けされたタンパク質MHHHHHHH−PIPであり、PIPは、配列番号12のものである。
【0152】
実施形態8Kにおいて、本発明は、前記生体分子がsiRNAである、実施形態1〜8のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0153】
実施形態8Lにおいて、本発明は、前記生体分子にリンカーを介して連結された第2の脂肪酸部分をさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。2つの脂肪酸−リンカー部分は、同じ構造のものであることが好ましい。
【0154】
実施形態9において、本発明は、次の構造:
【0155】
【化17】
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を有する、実施形態1、2、8、8A、8B、または8Cに従うコンジュゲートに関する。式中、hGDF15*は、N末端にある2または3つのアミノ酸がアミノ酸配列XH−またはXHX’−[Hは、ヒスチジンであり、XおよびX’は、MおよびAから独立して選択される]でそれぞれ置き換えられているhGDF15またはその二量体であり、
his−hGDF15は、1〜6つのヒスチジンアミノ酸と、場合により1または2つのメチオニンアミノ酸とを含むタグがそのN末端に付加されているhGDF15またはその二量体であり、
sは、20〜30の間の整数である。
【0156】
この実施形態の一態様では、前記タグは、ヒスチジンアミノ酸と、1つまたは2つの近接しないメチオニンアミノ酸とを含む。この実施形態の別の態様では、ヒスチジンおよびメチオニンアミノ酸の取り合わせは、N末端アミノ酸に近接する位置にあるアミノ酸がヒスチジンになるようになっている。この実施形態のさらなる態様では、前記タグは、MHHHHHHM−およびMHHHHHH−から選択されたものである。
【0157】
実施形態9の特定の態様では、hGDF15*およびhis−hGDF15のホモ二量体の性質を考慮すると、ホモ二量体を構成する1または2本のポリペプチド鎖(モノマー単位)が、脂肪酸分子にリンカーを介して連結しうる。結果として、ホモ二量体は、N末端において、1つまたは2つの脂肪酸分子にリンカーを介して連結する場合がある。このような実施形態は、以下の式を有する、脂肪酸にリンカーを介して連結しているGDF15生体分子によって表すことができる。
【0158】
【化18】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、his−hGDF15またはhGDF15*(上で規定したとおり)の両方のモノマー単位は、両方のN末端において、リンカーを介して脂肪酸部分に連結されている]、または
【0159】
【化19】
[この文献は図面を表示できません]
[式中、his−hGDF15またはhGDF15*(上で規定したとおり)のモノマー単位の一方だけが、N末端において、リンカーを介して脂肪酸部分に連結されている]。さらに、本発明はまた、本発明のコンジュゲートの混合物、たとえば、式Cのコンジュゲートと式Eのコンジュゲートとを含む混合物、または式Dのコンジュゲートと式Fのコンジュゲートとを含む混合物も企図する。
【0160】
実施形態10において、本発明は、式Cのコンジュゲートと式Eのコンジュゲートの混合物を含む組成物に関する。実施形態10Aにおいて、本発明は、式Dのコンジュゲートと式Fのコンジュゲートの混合物を含む組成物に関する。
【0161】
したがって、実施形態10Bにおいて、本発明は、
1.N末端にある2または3つのアミノ酸がアミノ酸配列XH−またはXHX’−[Hは、ヒスチジンであり、XおよびX’は、MおよびAから独立して選択される]でそれぞれ置き換えられている、ホモ二量体hGDF15の変異体、または
1〜6つのヒスチジンアミノ酸と、場合により1または2つのメチオニンアミノ酸とを含むタグがそのN末端に付加されているホモ二量体hGDF15と、
2.式:
【0162】
【化20】
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の1または2つの脂肪酸と
を含み、前記脂肪酸は、前記ポリペプチド鎖のN末端にリンカーを介して連結している、請求項1、2、9、または10に従うコンジュゲート、またはコンジュゲートの混合物に関する。
【0163】
実施形態10Cにおいて、本発明は、
hGDF15*が、N末端にある2または3つのアミノ酸がアミノ酸配列XH−またはXHX’−[Hは、ヒスチジンであり、XおよびX’は、MおよびAから独立して選択される]でそれぞれ置き換えられているhGDF15またはその二量体であり、
his−hGDF15が、4〜6つのヒスチジンアミノ酸と、1または2つのメチオニンアミノ酸とを含むタグがそのN末端に付加されているhGDF15またはその二量体であり、
sが、22〜28の間の整数である、実施形態9、10、10A、または10Bのコンジュゲートに関する。この実施形態の一態様では、前記タグは、ヒスチジンアミノ酸と、1つまたは2つの近接しないメチオニンアミノ酸とを含む。この実施形態の別の態様では、ヒスチジンおよびメチオニンアミノ酸の取り合わせは、N末端アミノ酸に近接する位置にあるアミノ酸がヒスチジンになるようになっている。この実施形態のさらなる態様では、前記タグは、MHHHHHHM−およびMHHHHHH−から選択されたものである。
【0164】
実施形態11において、本発明は、前記生体分子が、M−(His)6−hGDF15(配列番号1)、M−(his)6−M−hGDF15(配列番号2)、MH(199−308)hGDF15(配列番号4)、MHA(200−308)hGDF15(配列番号6)、AHA(200−308)hGDF15(配列番号7)、およびAH(199−308)GDF15(配列番号5)、またはこれらの二量体から選択されたものである、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0165】
実施形態11Aにおいて、本発明は、前記生体分子が、MH(199−308)hGDF15(配列番号4)、MHA(200−308)hGDF15(配列番号6)、AHA(200−308)hGDF15(配列番号7)、およびAH(199−308)GDF15(配列番号5)、またはこれらの二量体から選択されたものである、実施形態11に従うコンジュゲートに関する。
【0166】
実施形態11Bにおいて、本発明は、前記生体分子がAHA(200−308)hGDF15(配列番号7)またはその二量体から選択されたものである、実施形態11に従うコンジュゲートに関する。
【0167】
実施形態12において、本発明は、前記脂肪酸にリンカーを介して連結している前記生体分子が、式Gまたは式Hのものである、実施形態11Bに従うコンジュゲートに関する。
【0168】
【化21】
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式中、AHA−hGDF15は、配列番号7であり、脂肪酸は、2つのモノマー単位の一方または両方のN末端において連結している。さらに、本発明は、式Gのコンジュゲートと式Hのコンジュゲートとを含む混合物を企図する。
【0169】
実施形態13において、本発明は、式Gを有する実施形態12に従うコンジュゲートと、式Hを有する実施形態12に従うコンジュゲートの混合物を含む組成物に関する。この実施形態の特定の態様では、前記混合物は、1:1のモル比の式Gのコンジュゲートと式Hのコンジュゲートである。
【0170】
AHA−(200−308)−hGDF15(配列番号7)は、未変性タンパク質内に認められるクリッピング部位、ならびに潜在的なメチオニン(M1)ホルミル化部位およびN−199アミド分解部位が除去されるように設計した。AHAの優れた質および均一性は、hGDF15未変性配列内に認められたクリッピング、アミド分解、またはメチオニン酸化が、材料品質検査によって示されなかったことにより確認された。
【0171】
【表1】
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【0172】
実施形態14において、本発明は、前記脂肪酸残基が、前記ペプチドまたはタンパク質のN末端にリンカーを介して付着している、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。実施形態15において、本発明は、血漿安定性半減期が5時間を超える、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。この実施形態の一態様では、前記コンジュゲートは、10時間を超える血漿安定性半減期を有する。この実施形態の別の態様では、前記コンジュゲートは、20時間を超えるまたは30時間を超える血漿安定性半減期を有する。この実施形態のさらに別の態様では、前記コンジュゲートは、40時間を超えるまたは50時間を超える血漿安定性半減期を有する。
【0173】
実施形態16において、本発明は、コンジュゲートしていない生体分子と比べた血漿安定性半減期の向上が、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、または75倍である、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートに関する。
【0174】
別の実施形態では、前記生体分子、前記リンカー、および前記脂肪酸部分(R
1〜R
4、n、m p、およびAk)は、以下の実施例の部において定めるものである。
【0175】
一実施形態では、本発明は、式:
【0176】
【化22】
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[R
1は、CO
2HまたはHであり、
R
2およびR
3は、互いに独立して、H、OH、CO
2H、−CH=CH
2、または−C≡CHであり、但し、R
2およびR
3は、同一でなく、
R
4は、CO
2Hであり、
nおよびmは、互いに独立して、6〜30の間の整数である]の化合物、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩に関する。この実施形態の別の態様では、本発明は、R
2およびR
3の少なくとも一方がCO
2Hである、式A1の化合物に関する。この実施形態のさらに別の態様では、本発明は、
【0177】
【化23】
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からなる群から選択される化合物に関する。
【0178】
ペプチド/ポリペプチドおよび/またはその修飾形態の合成
本発明のペプチドまたはポリペプチドは、合成化学的方法もしくは組換え法のいずれかによって、または両方の方法を組み合わせて生成することができる。ペプチドまたはポリペプチド/タンパク質構築物は、全長として生成してもよいし、または全長でない断片として合成し、つないでもよい。本発明のペプチドおよびポリペプチドは、ペプチド合成のための、それ自体が知られている手順によって生成することができる。ペプチド合成の方法は、固相合成および液相合成のいずれかのものでよい。すなわち、問題のペプチドおよびポリペプチドは、タンパク質を構成しうる部分的なペプチドまたはアミノ酸をその残部と縮合させ、生成物が保護基を有するとき、保護基を外し、その後、所望のペプチドを製造することができる。縮合および脱保護の既知の方法としては、以下の文献(1)〜(5)に記載の手順が挙げられる。
(1)M. Bodanszky and M. A. Ondetti, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York, 1966、
(2)Schroeder and Luebke, The Peptide, Academic Press, New York, 1965、
(3)Nobuo Izumiya et al. Fundamentals and Experiments in Peptide Synthesis, Maruzen, 1975、
(4)Haruaki Yajima and Shumpei Sakakibara, Biochemical Experiment Series 1, Protein Chemistry IV, 205, 1977、および
(5)Haruaki Yajima (ed.), Development of Drugs-Continued, 14, Peptide Synthesis, Hirokawa Shoten
【0179】
反応後、ペプチドまたはポリペプチドは、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、サイズ排斥クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶などの従来の精製技術を組み合わせて、精製および単離することができる。上述のように単離したペプチドが遊離化合物である場合、既知の方法によってペプチドを適切な塩に変換することができる。逆に、単離された生成物が塩である場合、既知の方法によってペプチドを遊離ペプチドに変換することができる。
【0180】
ポリペプチドのアミドは、アミド化に適した、ペプチド合成用の樹脂を使用して得ることができる。樹脂としては、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)フェノキシ樹脂、塩化2−クロロトリチル樹脂などが挙げられる。このような樹脂を使用して、α−アミノ基および側鎖の官能基が適切に保護されているアミノ酸を、目的のペプチドの配列に従い、それ自体が知られている種々の縮合技術によって樹脂上で縮合させる。一連の反応の終盤に、ペプチドまたは保護されたペプチドを樹脂から外し、必要に応じて保護基を除去し、ジスルフィド結合を形成させて、目的のポリペプチドを得る。
【0181】
上述の保護されたアミノ酸の縮合には、HATU、HCTU、またはたとえばカルボジイミドなどの、ペプチド合成用の様々な活性化試薬を使用することができる。カルボジイミドとしては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、およびN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドが挙げられる。このような試薬を用いた活性化には、ラセミ化防止添加剤、たとえば、HOBtまたはOxyma Pureを使用することができる。保護されたアミノ酸は、活性化試薬およびラセミ化防止剤と共に、樹脂にそのまま加えてもよいし、または対称酸無水物、HOBtエステル、またはHOOBtエステルとして予め活性化し、次いで樹脂に加えてもよい。保護されたアミノ酸の活性化または樹脂との縮合のための溶媒は、ペプチド縮合反応に有用であることがわかっている溶媒の中から適正に選択することができる。たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、クロロホルム、トリフルオロエタノール、ジメチルスルホキシド、DMF、ピリジン、ジオキサン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、またはこれらの適切な混合物を挙げることができる。反応温度は、ペプチド結合形成に有用であることがこれまでにわかっている範囲から選択することができ、普通は、約−20℃〜50℃の範囲から選択する。活性化型アミノ酸誘導体は、一般に、1.5〜4倍過剰の割合で使用する。ニンヒドリン反応を利用した試験によって、縮合が不十分であるとわかったなら、十分な縮合を実現するために、保護基を除去せずに、縮合反応を繰り返すことができる。繰り返した縮合によって、それでも十分な程度の縮合がなされない場合、未反応のアミノ基を、無水酢酸またはアセチルイミダゾールでアセチル化することができる。
【0182】
出発材料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、Z、Boc、第三級アミルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、CI−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタリル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、またはFmocが挙げられる。使用することのできるカルボキシ保護基としては、限定はしないが、上述のC
1〜6アルキル、C
3〜8シクロアルキル、およびC
6〜10アリール−C
1〜2アルキル、ならびに2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド、第三級ブトキシカルボニルヒドラジド、およびトリチルヒドラジドが挙げられる。
【0183】
セリンおよびトレオニンのヒドロキシ基は、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。前記エステル化に適した基としては、炭素から導かれる基、たとえば、低級アルカノイル基、たとえばアセチルなど、アロイル基、たとえばベンゾイルなど、ベンジルオキシカルボニル、およびエトキシカルボニルが挙げられる。前記エーテル化に適した基としては、ベンジル、テトラヒドロピラニル、および第三級ブチルが挙げられる。チロシンのフェノール性ヒドロキシル基の保護基としては、Bzl、Cl
2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、および第三級ブチルが挙げられる。
【0184】
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリエチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、およびFmocが挙げられる。
【0185】
出発アミノ酸の活性化型カルボキシル基には、対応する酸無水物、アジ化物、および活性エステル、たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、p−ニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBtなどのアルコールとのエステルなどが含まれる。出発アミノ酸の活性化型アミノ基には、対応するホスホルアミドが挙げられる。
【0186】
保護基の脱離方法としては、パラジウムブラックやパラジウム炭素などの触媒の存在下で水素ガスを使用する触媒還元、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、またはこうした酸の混合物での酸処理、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンでの塩基処理、液体アンモニア中でのナトリウム金属による還元が挙げられる。上述の酸処理による脱離反応は、一般に、−20℃〜40℃の温度で実施され、アニソール、フェノール、チオアニソール、m−クレゾール、p−クレゾール、硫化ジメチル、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのカチオンアクセプターを加えて、有利に行うことができる。ヒスチジンのイミダゾール基の保護に使用した2,4−ジニトロフェニル基は、チオフェノールでの処理によって脱離させることができ、トリプトファンのインドール基の保護に使用したホルミル基は、希水酸化ナトリウム溶液または希アンモニア水溶液でのアルカリ処理、ならびに1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール存在下での上述の酸処理によって脱離させることができる。
【0187】
出発材料の反応に関与すべきでない官能基の保護方法、使用することのできる保護基、保護基の除去方法、および反応に関与すべき官能基を活性化する方法は、すべて、既知の基および方法の中から公正に選択することができる。
【0188】
アミド型のポリペプチドを得る別の方法は、C末端アミノ酸の−カルボキシル基を最初にアミド化するステップと、次いでペプチド鎖を所望の鎖長までN側に伸長し、次いで、C末端ペプチドのα−アミノ基、および目的ポリペプチドの残部を形成することになるアミノ酸またはペプチドのα−カルボキシ基を選択的に脱保護するステップと、α−アミノ基および側鎖官能基が上述の適切な保護基で保護されている2つの断片を、上で挙げたものなどの混合溶媒中で縮合させるステップとを含む。この縮合反応のパラメータは、上述したのと同じものでよい。縮合によって得られた保護ペプチドから、上述の方法によってすべての保護基を除去して、その結果、所望の粗製ペプチドが得られる。この粗製ペプチドを、既知の精製手順によって精製し、主画分を凍結乾燥して、目的のアミド化ポリペプチドを得ることができる。ポリペプチドのエステルを得るには、C末端アミノ酸のa−カルボキシル基を所望のアルコールと縮合させて、アミノ酸エステルを得、次いで、アミド生成について上述した手順に従う。
【0189】
別法として、組換え発現法が特に有用である。宿主細胞(ペプチドの配列をコードする核酸を含むように人工的に操作されており、転写および翻訳を行い、場合によりペプチドを細胞成長培地に分泌する細胞)を使用する組換えタンパク質発現は、当業界で日常的に使用される。組換え生成法については、通常、ペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸が、従来の方法によって合成され、発現ベクターに組み込まれることになる。このような方法は、追加のペプチド配列または他のタンパク質もしくはタンパク質断片もしくはドメインに融合したペプチドを含むポリペプチド組成物の製造に特に好ましい。宿主細胞は、場合により、大腸菌(E.Coli)、COS−1、COS−7、HEK293、BHT21、CHO、BSC−1、Hep G2、653、SP2/0、293、heLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫、もしくは植物細胞、またはこれらのいずれかの派生、不死化、もしくは形質転換細胞から選択される少なくとも1種でよい。
【0190】
本発明はまた、RNAの形でも、またはcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含めたDNAの形でもよい、上述の変異体をコードするポリヌクレオチドも包含する。DNAは、二本鎖でも一本鎖でもよい。本発明の組成物をコードするコード配列は、遺伝暗号の冗長性または縮重の結果として様々となりうる。
【0191】
本発明の組成物をコードするポリヌクレオチドには、次のもの、すなわち、変異体のコード配列のみ;変異体のコード配列と、機能ポリペプチドやリーダーもしくは分泌配列またはプロタンパク質配列などの追加のコード配列;変異体のコード配列と、変異体のコード配列の5’および/または3’側のイントロンや非コード配列などの非コード配列を含めることができる。したがって、用語「変異体をコードするポリヌクレオチド」は、変異体のコード配列だけでなく、追加のコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドも含みうる、ポリヌクレオチドを包含する。
【0192】
本発明はさらに、示された置換を含んでいる、ポリペプチドの断片、類似体、および誘導体をコードする、記載のポリヌクレオチドの変異体に関する。ポリヌクレオチドの変異体は、上述のとおり、ヒトGDF15配列の自然に存在するアレル変異体、自然に存在しない変異体、または切断型変異体でよい。したがって、本発明は、上述の変異体をコードするポリヌクレオチド、ならびに開示された変異体の断片、誘導体、または類似体をコードする、そのようなポリヌクレオチドの変異体も包含する。このようなヌクレオチド変異体には、第1または第2の実施形態の、示されたアミノ酸置換の少なくとも1つが存在しさえすれば、欠失変異体、置換変異体、切断型変異体、および付加または挿入変異体が含まれる。
【0193】
本発明のポリヌクレオチドは、配列を発現制御配列に作動可能に連結(すなわち、それが確実に機能するように配置)した後、宿主中で発現させることができる。こうした発現ベクターは、通常、宿主生物中で、エピソームとして、または宿主染色体DNAの一体部分として複製可能である。一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にするために、選択マーカー、たとえば、テトラサイクリン、ネオマイシン、およびジヒドロ葉酸還元酵素を含む。GDF15変異体は、哺乳動物細胞、昆虫、酵母、細菌細胞、または他の細胞において、適切なプロモーターの制御下で発現させることができる。本発明のDNA構築物から得られたRNAを使用する、無細胞翻訳系を用いて、このようなタンパク質を生成することもできる。
【0194】
大腸菌(Escherichia Coli)(E. coli)は、特に本発明のポリヌクレオチドのクローン化に有用な、原核生物宿主である。使用に適する他の微生物宿主として、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびにセラチア属(Serratia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、連鎖球菌属(Streptococcus)、およびブドウ球菌属(Staphylococcus)の種々の種が挙げられるが、選択できるものとして、他の微生物宿主を用いてもよい。こうした原核生物宿主では、宿主細胞と適合しうる発現制御配列(たとえば、複製開始点)を通常含んでいる発現ベクターも作製することができる。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(Trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージλもしくはT7からのプロモーター系などの、よく知られたいくつかのプロモーターのいずれかが存在してもよい。プロモーターは通常、転写および翻訳を開始し、完了するために、場合によりオペレーター配列と共に発現を制御し、リボソーム結合部位配列などを備えている。
【0195】
タンパク質発現の分野の技術者なら、大腸菌(E. coli)中での発現については、成熟配列のN末端に、メチオニンまたはメチオニン−アルギニン配列が導入される場合があり、本発明の文脈の範囲内で予期されることを認識されよう。したがって、別段注釈を加えない限り、大腸菌(E. coli)中で発現させた本発明の組成物は、N末端に導入されたメチオニン配列を有する。
【0196】
酵母や真菌などの他の微生物も、発現に使用してよい。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)が、好ましい酵母宿主の例であり、適切なベクターは、望み通りに、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素を始めとするプロモーターや複製開始点などの発現制御配列、停止配列などを有する。クロコウジカビ(Aspergillus niger)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、およびスエヒロタケ(Schizophyllum commune)が真菌宿主の例ではあるが、選択できるものとして、他の真菌宿主も用いてよい。
【0197】
哺乳動物組織細胞培養も、本発明のポリペプチドの発現および生成に使用することができる。無傷の変異体を分泌しうるいくつかの適切な宿主細胞系が当業界で開発されており、CHO細胞系、種々のCOS細胞系、NSO細胞、シリアンハムスター卵巣細胞系、HeLa細胞、またはヒト胎児由来腎臓細胞系(すなわち、HEK293、HEK293EBNA)が挙げられる。
【0198】
哺乳動物細胞用の発現ベクターは、複製開始点、プロモーター、エンハンサーなどの発現制御配列、およびリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要なプロセシング情報部位、および転写停止配列を含む場合がある。好ましい発現制御配列は、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス、ラウス肉腫ウイルスなどに由来するプロモーターである。好ましいポリアデニル化部位としては、SV40およびウシ成長ホルモン由来の配列が挙げられる。
【0199】
対象となる(たとえば、本発明の組成物および発現制御配列をコードする)ポリヌクレオチドを含んでいるベクターは、細胞宿主の種類に応じて様々となる、よく知られた方法によって、宿主細胞にトランスフェクトすることができる。たとえば、原核細胞には、塩化カルシウムトランスフェクションがよく利用されるのに対し、他の細胞宿主には、リン酸カルシウム処理または電気穿孔法を使用することができる。
【0200】
種々のタンパク質精製法を用いることができ、そのような方法は、当業界で知られており、たとえば、Deutscher, Methods in Enzymology 182: 83-9 (1990)およびScopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, NY (1982)に記載されている。選択される精製ステップは、たとえば、本発明の組成物に使用された生成方法の性質に応じて決まる。
【0201】
ポリペプチドは、(たとえば、他のポリペプチドを含まない)実質的に純粋または単離された形で調製することができる。ポリペプチドは、存在しうる他の成分(たとえば、他のポリペプチドまたは他の宿主細胞成分)に比べてポリペプチドが富化されている組成物として存在する場合もある。たとえば、他の発現タンパク質を実質的に含まない、たとえば、他の発現タンパク質が組成物の90%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満しか占めていない組成物としてポリペプチドが存在するような、精製ポリペプチドを提供することができる。
【0202】
脂肪酸部分の合成
スキーム1に、式A2の脂肪酸部分の合成について記載する。
【0203】
【化24】
[この文献は図面を表示できません]
式中、P
1およびP
2は、カルボン酸保護基、たとえば、メチル、エチル、tert−ブチル、メトキシベンジル、ベンジル、ベンジルオキシ、メトキシメチル、メチルチオメチル、テトラヒドロピラニル、フェナシル、N−フタルイミド、シンナミル、トリフェニルメチル、9−アントリルメチル、ピペロニル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、または2−アルキル1,3オキサゾリンであり、LGは、脱離基、たとえば、ハロ(たとえば、Br、Cl、I)またはトリフルオロメタンスルホニルオキシであり、R
4およびpは、実施形態1に記載のとおりである。
【0204】
DMF、THF、ジメチルアセトアミドなどの溶媒中にて、塩基(たとえば、水素化ナトリウム、炭酸カリウムもしくは炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムテトラメチルピペリジド、1,8−ジアアザシクロウンデカ−7−エン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、または2,6−ジt−ブチルプトリジン)の存在下、保護されたマロン酸(1A)をアルキル化剤(1B)でアルキル化すると、保護された脂肪酸部分(1C)が生成される。R
4がOHまたはCO
2Hであるとき、アルキル化ステップの前に、これらの官能基の保護が必要となる場合もある。ヒドロキシルのための保護基は、当業界で知られており、たとえば、1.メチルエーテル、メトキシメチルエーテル(MOM)、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、t−ブチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル、t−ブチルジメチルシリルエーテル、t−ブチルジフェニルシリルエーテル、トリベンジルシリルエーテル、イソプロピルジメチルシリルエーテル、トリフェニルメチルエーテル、ニトロベンジルエーテルなどの、エーテル、2.酢酸エステル、ギ酸エステル、トリクロロ酢酸エステル、フェノキシ酢酸エステル、ピバル酸エステル、安息香酸エステル、メチルカーボネート、ベンジルカーボネート、アリルカーボネート、硝酸エステル、アダマン酸エステル(adamanoate ester)、ニトロフェニルカーボネートなどの、エステルおよびカーボネートである。
【0205】
式A2の脂肪酸部分は、適切な脱保護法を使用して脱保護することにより得られる。限定はしないが、NaOH、KOH、もしくはLiOHから選択される塩基、または限定はしないが、TFA、HCl、もしくはBCl
3から選択される酸を使用する、中間体(1C)の加水分解には、標準の方法を適用することができる。P
1またはP
2が、ベンジルまたはメトキシベンジルであるとき、好ましい脱保護方法は、限定はしないがパラジウム炭素などの、触媒存在下での水素化である。
【0206】
スキーム2に、R
1がC(O)
2Hである式A
1の脂肪酸部分の合成を図示する。
【0207】
【化25】
[この文献は図面を表示できません]
式中、P
1およびP
2、LGは、上で規定したとおりであり、R
2、R
3、n、およびmは、実施形態1で規定したとおりである。
【0208】
保護されたマロン酸(1A)は、スキーム1において上述した適切な方法を使用する脱保護の前に、アルキル化剤(2A)および(2C)による2つのアルキル化に続けてかけられるが、この順序は逆にすることもできる。R
2およびR
3がOHまたはCO
2Hであるとき、アルキル化ステップの前に、これらの官能基の保護が必要となる場合もある。
【0209】
R
1がHである式A
1の脂肪酸部分は、R1がCO2Hである、対応する式A
1の脂肪酸部分の脱炭酸によって調製することができる。塩基性条件(たとえば、水酸化アンモニウム)下での脱炭酸などの脱炭酸条件が、当業界でよく知られている。
【0210】
生体分子−リンカー構築物の合成
【0211】
【化26】
[この文献は図面を表示できません]
式中、Bは、生体分子またはその修飾形態であり、Z
1は、C
1〜C
20アルキレンリンカーであり、アルキレン鎖は、オキソ(=O)で場合により置換されており、1つまたは複数の炭素は、OまたはNHで置き換えられており、C1は、フッ素で場合により置換されている、単環式、二環式、もしくは三環式の炭素環またはヘテロ環系である。
【0212】
標準のアミドカップリング法を使用して、シクロアルキン(3B)を、生体分子(3A)のアミノ残基(たとえば、N末端またはリシン側鎖のアミノ官能基)に、そのカルボン酸反応性基を介して付着させる。限定はしないが、中間体(3B)をその活性化型に変換[たとえば、(標準のN−ヒドロスクシンイミド化学を使用して)対応するピロリジン−2,5−ジオンに変換、トリホスゲン、カルボニルジイミダゾール、クロロギ酸4−ニトロフェニル、またはジスクシンイミジルカーボネートなどの試薬を使用して酸(3B)を変換、塩化チオニルや塩化オキサリルなどの試薬を使用して酸(3B)を対応する酸ハロゲン化物に変換、またはClC(O)O−イソブチル、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド、プロピルホスホン酸無水物環状三量体(T3P)などの試薬を使用して酸(3B)を対応する混合無水物に変換した後、オキサゾリジン2,5−ジオン、酸ハロゲン化物、または混合無水物を]、第三級アミン(たとえば、トリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミン)やK
2CO
3などの塩基の存在下または非存在下で生体分子(3A)と反応させることを含めて、既知のカップリング方法を適用することができる。別法として、限定はしないが、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC HCl)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、またはベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)を始めとするペプチド縮合試薬を、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、ジメチルアミノピリジンなどの試薬の存在下または非存在下で使用して、生体分子3Aを酸3Bと結合させることもできる。シクロアルキン/酸中間体(3B)は、NHS化学を使用してその活性化型に変換してから、生体分子上のアミノ官能基と反応させることが好ましい。
【0213】
生体分子のN末端にあるアミノ官能基の選択的なアシル化は、同時出願された米国特許出願公開第62/015,858号明細書(代理人案件整理PAT056275−US−PSP)および国特許出願公開第62/082,337号明細書(代理人案件整理番号PAT056275−US−PSP02)において、開発および報告がなされている。
【0214】
選択的なアシル化は、NHSによって活性化されたシクロオクチン類似体((3B)のNHS誘導体)を、N末端アミノ酸に近接するヒスチジンアミノ酸を含むようにN末端が修飾されている生体分子と反応させるものである。反応は、pH4で実施すると、ヒスチジンアミノ酸の隣接効果の存在によって、N末端にあるアミノ官能基に高度に選択的になる。
【0215】
脂肪酸残基リンカー構築物の合成
クリックケミストリーのための脂肪酸−リンカー構築物
スキーム4に、末端アジド官能基を用いた脂肪酸PEGリンカー構築物の合成を記載する。
【0216】
【化27】
[この文献は図面を表示できません]
式中、yは、0〜34であり、FAは、そのカルボン酸官能基の1つを介してPEGリンカーに付着している、式A1、A2、またはA3に記載のとおりの脂肪酸部分であり、FAは、次式を有する。
【0217】
【化28】
[この文献は図面を表示できません]
【0218】
アミドカップリング反応によって、脂肪酸部分(4B)を、PEGを含んでいるリンカー(4A)に付着させる。既知のカップリング法については、上でスキーム3において詳述している。脂肪酸部分上の酸官能基は、NHS化学を使用して活性化させることが好ましい。
【0219】
R
1がCO
2Hであり、R
2、R
3、およびR
4が、CO
2HまたはOHである場合、反応性部位を制御するために、カップリング反応の前に、保護基を導入する必要があることもある。カルボン酸およびヒドロキシ基のための保護基は、上でスキーム1に記載している。別法として、カルボン酸の選択的な活性化は、NHS化学を使用して実現することもできる。
【0220】
対象となる生体分子に直接付着させるための脂肪酸−リンカー
スキーム5に、末端CO2H官能基を用いた脂肪酸PEGリンカー構築物の合成を記載する。
【0221】
【化29】
[この文献は図面を表示できません]
式中、FAは、上でスキーム4において規定したとおりであり、yは、0〜34である。
【0222】
上述のアミドカップリングを使用して、脂肪酸(4B)を、PEGを含んでいるリンカー(5A)に付着させることができる。
【0223】
対象となる生体分子に、トランスグルタミナーゼ酵素を使用して付着させるための脂肪酸−リンカー構築物
スキーム5Aに、トランスグルタミナーゼ酵素を使用するとリシンの部位選択的修飾が可能になる、グルタミン酸アミノ酸を含んでいる脂肪酸−リンカー構築物の調製を記載する。
【0224】
【化30】
[この文献は図面を表示できません]
式中、yおよびFAは、予め規定したとおりである。このような構築物では、リシン側鎖上のアミノ基の選択的な部位修飾が可能になる。タンパク質のこのトランスグルタミナーゼ選択的部位修飾は、2013年7月11日出願の米国特許出願公開第61/845,273号明細書(代理人案件整理番号PAT055641−US−PSP)に記載されている。
【0225】
本発明のコンジュゲートの合成
クリックケミストリーを使用するコンジュゲーション
【0226】
【化31】
[この文献は図面を表示できません]
式中、Bは、対象となる生体分子またはその修飾形態(たとえば、突然変異体、またはヒスチジンタグを含んでいる生体分子)であり、y、C1、Z
1、FA、およびyは、上で規定している。
【0227】
シクロアルキン構築物(3C)は、一般的にはクリックケミストリーとして知られている、脂肪酸−リンカー構築物(4C)の末端アジドとのHuisgen付加環化を経る。クリックケミストリーの例は、US2009/0068738に記載されている。
【0228】
カップリング条件を使用して直接付着させることによるコンジュゲーション
【0229】
【化32】
[この文献は図面を表示できません]
式中、Bは、対象となる生体分子またはその修飾形態(たとえば、突然変異体、および/またはヒスチジンタグを含んでいる生体分子)であり、脂肪酸−リンカー構築物は、生体分子のN末端に付着している。
【0230】
標準のアミドカップリング法を使用して、脂肪酸−リンカー構築物(5B)を、生体分子(3A)のアミノ残基(たとえば、N末端またはリシン側鎖のアミノ官能基)に、そのカルボン酸反応性基を介して付着させる。既知のカップリング法については、上でスキーム3において詳述している。脂肪酸−リンカー構築物上の酸官能基は、NHS化学を使用して活性化させることが好ましい。
【0231】
生体分子のN末端にあるアミノ官能基の選択的なアシル化は、同時出願された米国特許出願公開第62/015,858号明細書(代理人案件整理PAT056275−US−PSP)および米国特許出願公開第62/082,337号明細書(代理人案件整理番号PAT056275−US−PSP02)において、開発および報告がなされている。選択的なアシル化は、NHSによって活性化された化合物((5B)のNHS誘導体)を、N末端アミノ酸に近接するヒスチジンアミノ酸を含むようにN末端が修飾されている生体分子と反応させるものである。反応は、pH4で実施すると、ヒスチジンアミノ酸の隣接効果の存在によって、N末端にあるアミノ官能基に高度に選択的になる。
【0232】
トランスグルタミナーゼ酵素を使用するコンジュゲーション
【0233】
【化33】
[この文献は図面を表示できません]
生体分子のそのリシン側鎖における選択的な修飾は、トランスグルタミナーゼ酵素を使用して実現することができる。このような修飾は、2013年7月11日出願の米国特許出願公開第61/845,273号明細書(代理人案件整理番号PAT055641−US−PSP)または国際公開第2015/006728号パンフレット(この出願の実施例25)で報告されている。
【0234】
医薬組成物
本発明のコンジュゲートは、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、吸入、鼻腔内、経口などを始めとする様々な手段のいずれかにおいて投与することができる。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは塩の連続的な静脈内投与を用いる。本発明におけるコンジュゲートは、ボーラスとして、または一定期間にわたる連続注入として投与することができる。移植可能なポンプを使用してもよい。本発明のある特定の実施形態では、断続的または連続的なコンジュゲート投与を、1日〜数日間(たとえば、2〜3日間以上)またはより長期間、たとえば、数週間、数か月、もしくは数年間継続する。一部の実施形態では、断続的または連続的なコンジュゲート投与を少なくとも約3日間、好ましくは少なくとも約6日間施す。別の実施形態では、断続的または連続的なコンジュゲート投与を少なくとも約1週間施す。他の実施形態では、断続的または連続的なコンジュゲート投与を少なくとも約2週間施す。投与中または複数回の投与の合間に、特定の閾値を上回る平均血漿コンジュゲート濃度を維持することが望ましい場合もある。望ましい濃度は、たとえば、対象の生理的状態、疾患重症度などに基づき決定することができる。そのような望ましい値(複数可)は、標準の臨床試験を実施して割り出すことができる。代わりに、ペプチドおよびそのコンジュゲートは、FcRn機序によって、経口的に送達することができるはずである(Nat Rev Immunol. 7(9), 715-25, 2007、Nat Commun. 3;3:610, 2012、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 304: G262-G270, 2013)。
【0235】
別の態様では、本発明は、本発明のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは塩と、1種または複数の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、経口投与、皮下投与、非経口投与、直腸投与などの特定の投与経路用に製剤化することができる。加えて、本発明の医薬組成物は、固体形態(限定はせず、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒、凍結乾燥剤、粉末、または坐剤を含める)、または液体形態(限定はせず、溶液、懸濁液、または乳濁液を含める)に仕立てることができる。医薬組成物は、無菌製造、滅菌などの従来の製薬業務にかけることができ、かつ/または、従来の不活性希釈剤、膜形成剤、等張化剤、滑沢剤、または緩衝剤、ならびに保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液などの佐剤を含有してよい。
【0236】
注射用途に適する医薬組成物は、通常、滅菌注射溶液または分散液を即座に調製するための、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液と滅菌粉末を含む。
【0237】
静脈内の投与については、適切な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、ニュージャージー州Parsippany)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は、滅菌とすべきであり、容易な注射適用性(syringability)が存在する程度に流動的にすべきである。好ましい医薬製剤は、製造および貯蔵の条件下で安定しており、細菌や真菌などの微生物による汚染作用に対抗して保存しなければならない。一般に、妥当な担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒でよい。適正な流動度は、たとえば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合では必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物による作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現することができる。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖、マンニトールなどのポリアルコール、アミノ酸、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅らせる薬剤、たとえば、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを組成物に含めることにより実現できる。一部の実施形態では、コンジュゲート生成物の分解または凝集に対する安定化を促進し、可溶性を改善し、投与および活性化合物の放出を支援するために、組換えアルブミンなどの多機能賦形剤を製剤工程に織り込んでもよい(BioPharm International, 2012, Vol 23, Issue 3, pp 40-44)。
【0238】
ある特定の注射用組成物は、水性の等張性溶液または懸濁液であり、坐剤は、脂肪質の乳濁液または懸濁液から調製することが有利である。前記組成物は、滅菌され、かつ/または保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、溶解促進剤(solution promoter)、浸透圧調節用の塩、および/または緩衝液などの佐剤を含有するものでよい。加えて、前記組成物は、治療上価値のある他の物質も含有してよい。前記組成物は、従来の混合、造粒、またはコーティング法に従って調製され、それぞれ、約0.1〜75%、または約1〜50%の活性成分を含有する。
【0239】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、上で列挙した成分の1つまたは組合せを含有する適切な溶媒に、必要な量の活性化合物を混ぜた後、濾過滅菌することにより調製できる。分散液は、一般に、基礎の分散媒、および上で列挙したものからの他の必要な成分を含有する滅菌ビヒクルに、活性化合物を混ぜることにより調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であるが、この方法では、活性成分の粉末と、所望の任意の追加成分が、予め滅菌濾過されたその溶液から得られる。
【0240】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または可食担体を含む。治療的経口投与の目的では、活性化合物は、賦形剤と混ぜ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、たとえばゼラチンカプセル剤の形で使用することができる。経口組成物は、含嗽液として使用するために流動性担体を使用して調製することもできる。薬学的に適合する結合剤、および/または佐剤材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、次の成分、すなわち、微結晶性セルロース、トラガカントゴム、ゼラチンなどの結合剤、デンプンやラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、コーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムやSterotesなどの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースやサッカリンなどの甘味剤、またはハッカ、サリチル酸メチル、オレンジ香料などの着香剤のいずれか、または同様の性質の化合物を含有してよい。経口送達用の製剤は、消化管内での安定性を向上させ、かつ/または吸収を強化するための薬剤が組み込まれていると有利な場合もある。
【0241】
吸入による投与について、発明治療薬は、適切な噴射剤、たとえば、二酸化炭素などの気体を含有する加圧容器もしくは計量分配装置、またはネブライザーから、エアロゾルスプレーの形で送達することが好ましい。治療薬の全身送達のために、肺が広い表面積を備えていることは注目される。
【0242】
薬剤は、たとえば、米国特許出願公開第2004/0096403号明細書に記載のものなどのポリマー系微小粒子に、または当業界で知られている他の広範な薬物送達ビヒクルのいずれかと共同して、カプセル封入することができる。本発明の他の実施形態では、たとえば、米国特許出願公開第2004/0062718号明細書に記載されているように、薬剤を荷電脂質と共同して送達する。後者の系は、治療用ポリペプチドであるインスリンの投与に使用されており、ペプチド剤の投与についてこの系の実益を示していることが注目される。
【0243】
全身投与は、経粘膜的または経皮的手段によるものでもよい。
【0244】
経皮的適用に適する組成物は、有効量の本発明のコンジュゲートを適切な担体と共に含む。経皮送達に適する担体として、ホストの皮膚を介した透過を手助けする薬理学的に許容される被吸収性溶媒が挙げられる。経皮的デバイスは、たとえば、裏部材と、化合物を場合により担体と共に含有するレザバーと、場合により、ホストの皮膚の化合物を、長期間にわたって、制御され、予め決められた速度で送達するための速度制御バリアと、デバイスを皮膚に固定するための手段とを備えた絆創膏の形態である。
【0245】
たとえば皮膚および眼への局所適用に適する組成物には、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲル、または、たとえばエアロゾルなどによる送達のためのスプレー製剤が含まれる。このような局所送達系は、特に、皮膚への適用に相応しくなる。すなわち、こうした局所送達系は、当業界でよく知られている美容製剤を含めた局所的使用に特に適する。このような組成物は、可溶化剤、安定剤、張性増強剤(tonicity enhancing agent)、緩衝剤、および保存剤を含有してもよい。
【0246】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、皮下投与用である。ポリペプチド治療薬(たとえば、抗体、融合タンパク質など)の皮下投与に適する製剤成分および方法は、当業界で知られている。たとえば、米国特許出願公開第2011/0044977号明細書、米国特許第8,465,739号明細書、および米国特許第8,476,239号明細書を参照されたい。通常、皮下投与用の医薬組成物は、適切な安定剤(たとえば、メチオニンなどのアミノ酸、およびまたはスクロースなどの糖)、緩衝剤、および等張化剤(tonicifying agent)を含有する。
【0247】
本明細書で使用するとき、局所適用は、吸入または鼻腔内適用にも関連することがある。こうした適用は、乾燥粉末吸入器から乾燥粉末(単独、混合物、たとえばラクトースとの乾燥ブレンドとして、またはたとえばリン脂質との混合型要素粒子としてのいずれか)の形で、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、もしくはネブライザーからエアロゾルスプレー体裁の形で、適切な噴射剤を使用しまたは使用せずに、好都合に送達することができる。
【0248】
本発明はさらに、活性成分としての本発明の化合物が分解する速度を減速する1種または複数の薬剤を含む医薬組成物および剤形を提供する。本明細書では「安定剤」と呼ぶ、そのような薬剤として、限定はしないが、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝液、または塩緩衝液、組換えアルブミンが挙げられる。
【0249】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される塩」とは、本発明のコンジュゲートの生物学的有効性および特性を保持し、通常は生物学的または別な意味で望ましい塩を指す。多くの場合、本発明のコンジュゲートは、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれと同様の基が存在するおかげで、酸および/または塩基の塩を形成することができる。
【0250】
薬学的に許容される酸付加塩、たとえば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物/臭化水素酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、塩化物/塩酸塩、クロルテオフィリン酸塩(chlortheophyllonate)、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩は、無機酸および有機酸に対して生成することができる。
【0251】
塩を導くことのできる無機酸としては、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
塩を導くことのできる有機酸としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基に対して生成することができる。
【0252】
塩を導くことのできる無機塩基としては、たとえば、アンモニウム塩、および周期表のI〜XII列の金属が挙げられる。ある特定の実施形態では、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛、および銅から導かれ、特に適切な塩として、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウム塩が挙げられる。
【0253】
塩を導くことのできる有機塩基としては、たとえば、第一級、第二級、および第三級アミン、自然に存在する置換アミンを始めとする置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂などが挙げられる。ある特定の有機アミンとして、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート(cholinate)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リシン、メグルミン、ピペラジン、およびトロメタミンが挙げられる。
【0254】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、親化合物、塩基性または酸性部分から合成することができる。一般に、そのような塩は、遊離酸形態のこうした化合物を化学量論量の相応しい塩基(Na、Ca、Mg、またはKの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩など)と反応させる、または遊離塩基形態のこうした化合物を化学量論量の相応しい酸と反応させることにより調製できる。こうした反応は通常、水もしくは有機溶媒中または二者の混合物中で実施される。一般に、実用可能な場合、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒質の使用が望ましい。追加の適切な塩の一覧は、たとえば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., (1985)ならびにStahlおよびWermuthによる“Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use” (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)で見ることができる。
【0255】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される担体」は、当業者に知られているであろうが、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(たとえば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着香剤、色素、組換えアルブミンなどの多機能賦形剤など、およびこれらの組合せを包含する(たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照されたい)。従来のいかなる担体も、活性成分と相容れない範囲にあるものを除き、治療組成物または医薬組成物におけるその使用を企図する。
【0256】
本発明の方法
GDF15循環レベルは、いくつもの病的および生理的状態において、最も顕著な例としては、妊娠(Moore AG 2000. J Clin Endocrinol Metab 85: 4781-4788)、β−サラセミア(Tanno T 2007, Nat Med 13:1096-101)(Zimmermann MB, 2008 Am J Clin Nutr 88:1026-31)、および先天性赤血球異形成貧血(Tamary H 2008, Blood. 112:5241-4)において、上昇することが報告されている。GDF15は、文献の報告において、いくつもの生物学的活性と関連付けられている。GDF15ノックアウトおよびトランスジェニックマウスの研究では、GDF15が、虚血/再潅流または過負荷によって誘発された心臓損傷に対しては保護的に(Kempf T, 2006, Circ Res.98:351-60)(Xu J, 2006, Circ Res. 98:342-50)、加齢と関連する運動ニューロンおよび感覚ニューロン減少に対しては保護的に(Strelau J, 2009, J Neurosci. 29 : 13640-8)、腎臓における代謝性アシドーシスに対しては穏やかに保護的になる場合があり、がん患者においては悪液質を引き起こす場合がある(Johnen H 2007 Nat Med. 11: 1333-40)ことが示唆された。多くのグループによって、細胞アポトーシスおよび増殖におけるGDF15の役割も研究されており、異なる細胞培養および異種移植片モデルが使用されて、議論を呼ぶ結果が報告された。トランスジェニックマウスでの研究では、GDF15が、発癌物質またはApe突然変異によって誘発された、腸および肺における新形成に対して保護的であることが示された(Baek SJ 2006, Gastroenterology. 131: 1553-60、Cekanova M 2009, Cancer Prev Res 2:450-8)。
【0257】
GDF15は、炎症、がん、および代謝においても役割を果たすことが報告されている(Samule Breit et al. Growth Factors, October 2011; 29(5): 187-195)。GDF15はさらに、生理的食欲および体重の調節との関連も示唆されている(Vicky Wang-Wei Tsai et al. Public Library of Science: PLOS ONE 2013, Vol. 8, Issue 2, e55174)。
【0258】
本発明は、代謝性障害または疾患、すなわち、糖尿病、2型真性糖尿病、肥満、膵炎、異脂肪血症、アルコール性および非アルコール性脂肪性肝疾患/脂肪性肝炎、および他の進行性肝疾患、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック症候群、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈心疾患、糖尿病合併症(限定はしないが慢性腎臓病を含める)、ニューロパシー、胃不全麻痺、ならびに他の代謝性障害を、それを必要とする対象において治療または予防する方法であって、治療有効量の本発明のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは塩、またはコンジュゲートの混合物を前記対象に投与することを含み、前記生体分子が、ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態である、方法を提供する。
【0259】
このような方法は、たとえば、投与頻度を減らすなどの有利な効果をもたらす場合もある。
【0260】
したがって、さらなる実施形態として、本発明は、代謝性障害または疾患、すなわち、2型真性糖尿病、肥満、膵炎、異脂肪血症、アルコール性および非アルコール性脂肪性肝疾患/脂肪性肝炎、および他の進行性肝疾患、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック症候群、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈心疾患、糖尿病合併症(限定はしないが慢性腎臓病を含める)、ニューロパシー、胃不全麻痺、ならびに他の代謝性障害を治療するための、前記生体分子が、ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態である、本明細書に記載のとおりのコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩、または本明細書に記載のコンジュゲートの混合物の使用を提供する。
【0261】
したがって、さらなる実施形態として、本発明は、コンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは薬学的に許容される塩、またはコンジュゲートの混合物の、治療における使用を提供する。
【0262】
治療に用いる本発明の医薬組成物または併用品の有効量は、たとえば、治療の状況および目的に応じて決まる。当業者なら、治療に適した投与量レベルは、したがって、ある程度、得られた分子、コンジュゲートを使用する適応症、投与経路、ならびに患者の大きさ(体重、体表面、または臓器サイズ)および状態(年齢および総体的な健康)に応じて様々となることは理解されよう。それに応じて、臨床家は、最適な治療効果が得られるように、投与量を漸増し、投与経路を修正することができる。典型的な投与量は、上で言及した要素に応じて、約0.1μg/kgから約100mg/kgまで、またはそれ以上の範囲となりうる。他の実施形態では、投与量は、0.1μg/kgから約100mg/kgまで、または1μg/kgから約100mg/kgまでの範囲となりうる。この実施形態のさらなる態様では、投与量は、5μg/kg〜25μg/kgの範囲となりうる。この実施形態のさらに別の態様では、投与量は、10μg/kg〜20μg/kgの範囲となりうる。
【0263】
投与の頻度は、使用される製剤中の二重機能タンパク質の薬動学パラメーターに応じて決まる。通常、臨床家は、組成物を、所望の効果が実現される投与量に達するまで投与する。したがって、組成物は、一用量として、(所望の分子を同じ量含有する場合もあれば、そうでない場合もある)2回分以上の用量として徐々に、または埋め込み装置もしくはカテーテルによる継続的な注入として、投与される場合がある。適切な投与量のさらなる改善は、当業者によって型通りになされ、当業者が日常行う職務の範囲内である。適切な投与量は、適切な用量−反応データを使用して突き止めることができる。
【0264】
本明細書で使用する用語「治療有効用量」および「治療有効量」とは、研究者、医師、または他の臨床家の探究の対象である組織系、動物、またはヒトにおいて、治療される疾患または障害の症状の緩和または改善を含む生物学的または薬用反応を誘発するコンジュゲートの量、すなわち、1つまたは複数の所望の生物学的または薬用反応、たとえば、血糖、インスリン、トリグリセリド、またはコレステロールレベルを低下させる、体重を減少させる、食物摂取を減らす、または耐糖能、エネルギー消費、もしくはインスリン感受性を改善することを観察可能なレベルで支持する、GDF15(またはGDF15突然変異体)ポリペプチドコンジュゲートの量を意味する。
【0265】
用語「患者」または「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物(たとえば哺乳動物)を指すのに、互換的に使用される。
【0266】
本明細書で使用するとき、いずれかの疾患または障害の「治療(treat、treating、またはtreatment)」という用語は、一実施形態では、疾患または障害を改善する(すなわち、疾患またはその臨床症状の少なくとも1つの進展を緩慢にし、阻止し、または軽減する)ことを指す。別の実施形態では、「治療(treat、treating、またはtreatment)」とは、患者によって認識可能でなくてよいものを含めて、少なくとも1つの身体的パラメーターを緩和または改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療(treat、treating、またはtreatment)」は、疾患または障害を、身体的に(たとえば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(たとえば、身体的パラメーターの安定化)、または両方において、調節することを指す。したがって、治療は、活動性の疾患を(たとえば、GDF15コンジュゲートの場合では、体重が減少するように、食物摂取を減らすために、血流中のインスリンおよび/もしくはグルコースのレベルを低下させるために、耐糖能を向上させるためにグルコースレベルの変動が最小限に抑えられるように、かつ/またはグルコース恒常性の混乱によって引き起こされる疾患から保護されるように)抑制する(すなわち、疾患、障害、もしくは状態、またはそれに伴う臨床症状の発症またはそれ以上の進展を阻止する)ことを包含する。
【0267】
さらに別の実施形態では、「治療(treat、treating、またはtreatment)」は、疾患または障害の発症、進展、または進行を予防するまたは遅らせることを指す。
【0268】
本明細書で使用する用語「治療を必要とする」とは、医師または他の医療従事者(caregiver)によってなされる、対象にとって治療が必要であるまたは恩恵となるかどうかの判断を指す。この判断は、医師または医療従事者の専門知識の範囲内にある様々な要素に基づいてなされる。
【0269】
用語「予防(prevent、preventing、prevention)」などは、(たとえば、臨床症状の存在によって明らかにされるような)対象が疾患、障害、状態などになるリスクを一時的もしくは永続的に予防、抑制、抑止、もしくは低減し、または、一般に、特定の疾患、障害、もしくは状態になる素因のある対象に関して、その発症を遅らせるような形で(たとえば、疾患、障害、状態、またはその症状の発症の前に)開始される、(本発明のコンジュゲートまたはコンジュゲートを含む医薬組成物を投与するなどの)行動の過程を指す。ある特定の例では、この用語は、疾患、障害、もしくは状態の進行を緩慢にする、またはそれが有害もしくは別な形で望ましくない状態へと進行するのを阻止することも指す。
【0270】
用語「代謝性疾患または障害」とは、限定はしないが、高インスリン血症、異常な耐糖能、肥満、腹部または上部身体区画への脂肪の再分布、高血圧;高トリグリセリド、低い高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール、および高い低密度リポタンパク質(LDL)粒子を特徴とする異脂肪血症を含む、関連性のある体質群を指す。代謝性疾患または障害を有する対象は、2型糖尿病、および、たとえばアテローム性動脈硬化症になるリスクがある。
【0271】
語句「グルコース代謝障害」は、対象において、グルコースレベルおよび/またはインスリンレベルが健康な個体に比べて上昇していることと関連する臨床症状または臨床症状の組合せを特徴とする、いずれかの障害を包含する。グルコースおよび/またはインスリンレベルの上昇は、特に、次の疾患、障害、および状態、すなわち、高血糖、II型糖尿病、妊娠糖尿病、I型糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能の障害、高インスリン血症、グルコース代謝障害、糖尿病前症、代謝性障害(シンドロームXとも呼ばれる代謝性疾患または障害など)、および肥満において現れる場合がある。本開示のGDF15コンジュゲート、およびその組成物を使用すると、たとえば、グルコース恒常性を実現および/または維持して、たとえば、血流中のグルコースレベルを低下させ、かつ/または健康な対象において見られる範囲までインスリンレベルを低下させることができる。
【0272】
本明細書で使用する用語「インスリン抵抗性」とは、正常な量のインスリンによって、正常な生理学的反応または分子反応を引き起こすことができない状態を指す。一部の場合では、内因的に産生または外因的に投与される生理学的超過量のインスリンによって、全体または一部においてインスリン抵抗性を克服し、生体反応を引き起こすことができる。
【0273】
本明細書で使用する語句「耐糖能」とは、グルコース摂取が変動するときに血漿グルコースおよび/または血漿インスリンのレベルを制御しうる対象の能力を指す。たとえば、耐糖能は、約120分以内に、血漿グルコースのレベルを低下させてグルコース摂取前に求められたレベルに戻す、対象の能力を包含する。
【0274】
用語「耐糖能障害」または耐糖能の障害(IGT)は、心血管病態のリスクの増大と関連付けられる、前糖尿病性の血糖異常(dysglycemia)の状態である。前糖尿病性の状態によって、対象が、グルコースを細胞に効率よく移動させ、それを効率的な燃料源として利用することができなくなる結果、血糖レベルが上昇し、ある程度のインスリン抵抗性が生じる。
【0275】
用語「2型真性糖尿病」とは、過剰なグルコース産生と、グルコースクリアランスが不十分であり、膵臓が十分なインスリンを産生できない結果として過度に高いままとなる循環グルコースレベルとを特徴とする状態である。
【0276】
本明細書で使用する用語「高血糖」とは、対象の血漿中を循環するグルコースの量が健康な個体に比べて増加している状態を指す。高血糖は、本明細書に記載するとおりの空腹時血糖レベルの測定を始めとする、当業界で知られている方法を使用して診断することができる。
【0277】
用語「低血糖(Hypoglycemia)」は、低血糖(low blood sugar)とも呼ばれ、血糖レベルが下がりすぎるあまり、身体活動に十分なエネルギーが提供されないときに起こる。
【0278】
本明細書で使用する用語「高インスリン血症」とは、循環インスリンのレベルが上昇しており、同時に、血糖レベルが上昇しているまたは正常である状態を指す。高インスリン血症は、高トリグリセリド、高コレステロール、高い低密度リポタンパク質(LDL)、低い高密度リポタンパク質(HDL)などの異脂肪血症、高い尿酸レベル、多嚢胞性卵巣症候群、II型糖尿病、および肥満と関連するインスリン抵抗性によって引き起こされる場合がある。高インスリン血症は、血漿インスリンレベルが約2pU/mLより高いときに診断することができる。
【0279】
用語「膵炎」とは、膵臓の炎症である。
【0280】
用語「異脂肪血症」とは、リポタンパク質過剰産生または欠乏を含めた、リポタンパク質代謝の障害である。異脂肪血症は、血液中の、総コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、およびトリグリセリド濃度の上昇と、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度の低下とによって顕在化しうる。
【0281】
用語「脂肪性肝疾患(FLD)」は、脂肪肝としても知られ、トリグリセリド脂肪の大きな液胞が、脂肪症(すなわち、細胞内における脂質の異常滞留)の過程を経て、肝臓細胞に蓄積する状態である。原因が多岐にわたるにもかかわらず、脂肪肝は、世界中で過度のアルコール摂取および(インスリン抵抗性の影響を伴うまたは伴わない)肥満のある者に起こる、単一疾患とみなすことができる。この脂肪代謝過程が混乱すると、脂肪が過剰な量で肝臓に蓄積し、その結果、脂肪肝になる場合がある。脂肪の蓄積には、脂肪性肝炎と呼ばれる、肝臓の進行性の炎症(肝炎)が伴うこともある。アルコールの寄与を考慮に入れることにより、脂肪肝は、アルコール性脂肪症または非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、より重症の形態を、アルコール性脂肪性肝炎および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と称することもできる。
【0282】
用語「脂肪性肝炎」とは、小葉内の炎症および線維症を伴った肝細胞の脂肪化を特徴とするタイプの肝疾患である。過度のアルコール摂取との関連がないとき、脂肪性肝炎は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれる。
【0283】
用語「進行性肝疾患」とは、肝脂肪症のような比較的良性の状態から、肝炎、線維症、硬変、および肝細胞癌を始めとするより重症の状態へと進行する、広範囲の肝臓病理によって引き起こされる肝疾患である。PNPLA3は、NAFLD/NASH、AFLD/ASH、ウイルス性肝炎、ウィルソン病、遺伝性ヘモクロマトーシス、原発性硬化性胆管炎などの進行性肝疾患と明確に関連付けられている(Paola Dongiovanni et al. World Journal of Gastroenterology, 2013, 19(41), 6969-6978)。
【0284】
用語「肥満」とは、ヒト対象に関して、体型指数(BMI)が30以上の成人であると定義することができる(疾病管理センター)。
【0285】
「メタボリック症候群」は、心疾患、および糖尿病や卒中のような他の疾患のリスクを高める危険因子群であると定義することができる。こうした危険因子には、高血糖(絶食後に1デシリットルあたり少なくとも110ミリグラム(mg/dl))、高トリグリセリド(血流中に少なくとも150mg/dL)、低HDL(40mg/dl未満)、および130/85mmHg以上の血圧が含まれる(世界保健機関)。
【0286】
用語「心血管疾患」とは、心臓および血管に関係した疾患である。
【0287】
用語「アテローム性動脈硬化症」とは、太い動脈および中型サイズの動脈の内膜に不規則に分布した脂質沈着を特徴とする血管疾患であり、時として動脈の管腔を狭小化させ、最終的には線維化および石灰化へと進行する。病変は、普通は限局的であり、ゆっくりかつ断続的に進行する。血流の制限が、大部分の臨床症状発現の原因であるが、病変の分布および重症度によっていろいろである。
【0288】
冠動脈疾患とも呼ばれる用語「冠動脈心疾患」とは、心臓に血液および酸素を供給する細い血管の狭小化である。
【0289】
「糖尿病合併症」とは、高い血糖レベルによって引き起こされる、腎臓、神経(ニューロパシー)、足(足部潰瘍および循環不良)、眼(たとえば、網膜症)などの、他の身体機能の問題である。糖尿病は、心疾患ならびに骨および関節障害のリスクも高める。他の長期的な糖尿病合併症としては、皮膚の問題、消化の問題、性機能不全、ならびに歯と歯肉の問題が挙げられる。
【0290】
本明細書で使用するとき、語句「体重障害」とは、体重過多および/または食欲亢進と関連する状態を指す。対象の年齢、身長、性別、および健康状態を含めた、種々のパラメーターを使用して、対象が、基準の健康な個体に比べて過体重であるかどうかが判定される。たとえば、対象の体重(キログラム)を対象の身長(平方メートル)で割ることにより算出される、対象の体型指数(BMI)を評価することで、対象を過体重または肥満であるとみなすことができる。BMIが−18.5〜−24.9kg/mの範囲にある成人は、正常な体重であるとみなされ、BMIが−25kg/m〜−29.9kg/mの間である成人は、過体重(肥満予備軍)とみなすことができ、BMIが−30kg/m以上である成人は、肥満であるとみなすことができる。食欲亢進は、往々にして体重過多の一因となる。たとえば、多くの場合不眠を伴う朝の食欲不振と晩の多食を特徴とするが、視床下部の傷害と関係がない場合もある、夜間食行動異常症候群を始めとして、食欲亢進と関連するいくつかの状態が存在する。
【0291】
本明細書に記載するすべての方法は、本明細書において別段指摘しない限り、または文脈からそうでないと否定されない限り、適切などの順序で実施してもよい。本明細書で示される、ありとあらゆる例の使用、または例示的な言い回し(たとえば、「など(such as)」)は、単に本発明をよりよく理解させるためのものであり、別途請求項に記載する本発明の範囲に限定を設けてはいない。
【0292】
本発明によるコンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次の方法によって評価することができる。
【0293】
アッセイおよびデータ
本発明に従う実施例1および19BのGDF15コンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitroおよびin vivo法によって評価することができる。
【0294】
動物研究の方法
本文書に記載するすべての動物研究は、地域および連邦政府の規制および指針に従うNovartis Institutes for Biomedical Research Animal Care and Use Committeeによって承認されている。食餌性肥満の雄のマウス(C57BL/6NTac)をTaconicから購入し、6週齢以後は60%脂肪食(Research Diets D12492i)を与えた。到着後、マウスは、12時間:12時間の逆の明−暗サイクル下で、1ケージあたり1匹の動物として収容した。動物はすべて、いかなる使用の前にも、最低1週間は順化させた。通常、月齢3〜4か月の間のマウスを研究対象とした。研究の1日前に、各群が同様の平均体重を有するように、マウスを体重に基づきランダム化した。研究当日、マウスを新たなケージに入れ、古い食物を取り除いた。およそ1時間後、暗サイクルの直前に、マウスに、媒体(30mMの酢酸ナトリウム、pH4)または脂質にコンジュゲートさせたGDF15類似体(0.5mg/kg)いずれかの一用量を皮下投与した。すべての注射が完了した後、マウスの体重を計り直し、定められた量の食物を戻した(マウス1匹あたり約50g)。約2週間にわたり、図に示した時点の食物摂取および体重を測定した。上述のとおりに処置した代理動物において、示した時点で血漿を採取し、ELISAによって、製造者の指示通りにGDF15レベルを測定した(R&D Systems Quantikine Human GDF15 Immunoassay、DGD150)。
【0295】
DIOマウス0.5mg/kg皮下一用量
本発明のコンジュゲートの活性および半減期を上述のアッセイにおいて試験した。
【0296】
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0297】
表1のデータは、本発明のコンジュゲートが、コンジュゲートしていないhGDF15および/またはpeg化hGDF15に比べて有意に長い作用持続時間を有することを示している。
【0298】
固形飼料を与えたイヌにおけるGDF15−コンジュゲートの有効性:GDF15−脂肪酸コンジュゲート
研究目的:0.05mg/kgの本発明によるGDF15−脂肪酸部分コンジュゲートまたは媒体対照の皮下投与が食物摂取に与える効果を、ビーグル犬において、急性の設定(6時間)および96時間の期間で評価すること。この化合物のPKプロファイルを評価するために、投与後14日間にかけての異なる時点で、血漿サンプルを採取した。研究の間終始体重を測定した。
【0299】
動物:ベースライン体重および処置
【0300】
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
【0301】
投与手順:ベースライン体重および血液サンプルを収集した後に、媒体またはGDF15の投与を行った。GDF15−脂肪酸部分コンジュゲートを0.97mg/mlの溶液として供給し、希釈せずに皮下注射によって0.05mg/kgで投与した。媒体動物には、等体積の30mmol/lの酢酸ナトリウムpH4媒体(52μl/kg)を皮下注射によって与えた。
【0302】
採血:橈側皮静脈または頚静脈から血液サンプルを採取し(EDTAおよびプロテアーゼ阻害剤のDiprotin Aおよびアプロチニンを含有する管に3ml)、4℃で20分間3,000rpmで遠心分離するまで氷上に置いた。血漿を等分に分配し、分析まで−70℃で保管した。0、6.75、24.75、48.75、72.75、および96.75時間の時点で採取した。7、10、および14日目に追加のサンプルを採取した。
【0303】
食物摂取測定:制約なしの食物摂取の測定を、投与から45分後に始めた。この食物摂取測定は、急性測定(0〜6時間)と亜慢性測定(0〜96時間)の2つの相からなる。
【0304】
0〜2時間に、イヌに500gの通常固形飼料(Hill’s J/D食)を与えた。2時間の時点で、残っている食物を取り除き、重量を計り、2〜4時間にかけて別の500gの固形飼料を与えておいた。4時間の時点で、残っている食物を取り除き、重量を計り、4〜6時間にかけて別の300gの固形飼料を与えておいた。6時間の時点で、残っている食物を取り除き、重量を計った。この時点(6.75時間)で血液サンプルを採取した。次いで、イヌに、500gの固形飼料を一晩与えておいた。1〜4日目の朝に、残っている食物を取り除き、重量を計り、各動物から血液サンプルを採取した。1〜3日目には、次いでイヌに500gの固形飼料を24時間にかけて与えておいた。4日目に、イヌをその通常の固形飼料割当て(260g)に戻した。
【0305】
追加の食物摂取測定:7、14、および28日目に、研究動物に6時間を与えてその日用固形飼料(260g)を消費させた。この期間の終わりに、残っている食物を集め、重量を計った。
【0306】
体重測定:ベースライン時ならびに2、4、7、10、14、18、および28日目に、体重を測定した。ベースライン体重は、絶食状態で収集した。2および4日目に収集した体重は、絶食後のものでなかった。媒体処置動物については、他のすべての体重を絶食状態で収集した。GDF15処置動物について、7〜28日目に求められた体重は、食欲を刺激し、重量を回復するために動物に食物が継続的に与えられていたので、絶食後のものでなかった。
【0307】
固形飼料を与えたイヌにおける本発明のGDF15−脂肪酸アッセイコンジュゲートの有効性
研究目的:媒体対照および0.015mg/kgまたは0.005mg/kgの本発明のGDF15−脂肪酸部分コンジュゲートの皮下投与が食物摂取に与える効果を、ビーグル犬において、急性の設定(6時間)および96時間の期間で評価すること(この研究では、すべてのイヌにおいて、媒体群が処置群より前に実施される)。この化合物のPKプロファイルを評価するために、投与後14日間にかけての異なる時点で、血漿サンプルを採取する。研究の間終始体重を測定した。
【0308】
動物:ベースライン体重および処置
【0309】
【表4】
[この文献は図面を表示できません]
【0310】
投与手順:ベースライン体重および血液サンプルを収集した後に、媒体の投与を行った。媒体動物に、52μl/kgの30mmol/l酢酸ナトリウムpH4媒体(52μl/kg)を皮下注射によって与えた。ベースライン体重および血液サンプルを収集した後に、GDF15の投与を行った。GDF15−脂肪酸部分コンジュゲートを1.20mg/mlの溶液として供給し、希釈後に皮下注射によって0.015mg/kgおよび0.005mg/kgで投与した。GDF15保存液は、先行する研究で送達された52μl/kgを維持するために希釈した。
【0311】
採血:研究の媒体群および処置群について血液サンプルを採取した。橈側皮静脈または頚静脈からサンプルを採取し(EDTAおよびプロテアーゼ阻害剤のDiprotin Aおよびアプロチニンを含有する管に3ml)、4℃で20分間3,000rpmで遠心分離するまで氷上に置いた。血漿を等分に分配し、分析まで−70℃で保管した。0、6.75、24.75、48.75、72.75、および96.75時間の時点で採取した。7、10、および14日目に追加のサンプルを採取した。
【0312】
食物摂取測定:研究の媒体群および処置群両方について、食物摂取を測定した。制約なしの食物摂取の測定を、投与から45分後に始めた。この食物摂取測定は、急性測定(0〜6時間)と亜慢性測定(0〜96時間)の2つの相からなる。
【0313】
0〜2時間に、イヌに500gの通常固形飼料(Hill’s J/D食)を与えた。2時間の時点で、残っている食物を取り除き、重量を計り、2〜4時間にかけて別の500gの固形飼料を与えておいた。4時間の時点で、残っている食物を取り除き、重量を計り、4〜6時間にかけて別の300gの固形飼料を与えておいた。6時間の時点で、残っている食物を取り除き、重量を計った。この時点(6.75時間)で血液サンプルを採取した。次いで、イヌに、500gの固形飼料を一晩与えておいた。1〜4日目の朝に、残っている食物を取り除き、重量を計り、各動物から血液サンプルを採取した。1〜3日目には、次いでイヌに500gの固形飼料を24時間にかけて与えておいた。4日目に、イヌをその通常の固形飼料割当て(260g)に戻した。
【0314】
追加の食物摂取測定:媒体群では7日目〜14日目の間、処置群では7日目〜28日目の間の異なる日々に、研究動物に6時間を与えてその日用固形飼料(260g)を消費させた。この期間の終わりに、残っている食物を集め、重量を計った。1週間に1回、定期的に食物消費を測定した。給餌から1、2、4、および6時間後に225gの固形飼料の消費を測定して、各イヌの摂食パターンが正常に戻っているかどうかを判定した。
【0315】
体重測定:研究の媒体群および処置群両方について、体重を測定した。媒体群については、ベースライン時ならびに2、4、7、10、および14日目に体重を測定した。処置群については、ベースライン時ならびに2、4、7、10、14、17、21、24、および28日目に体重を測定した。2および4日目に収集した体重は、絶食後のものでなかった。他のすべての体重は、絶食状態で求めた。
【0316】
実施例2のコンジュゲートを上記アッセイにおいて試験した。
【0317】
【表5】
[この文献は図面を表示できません]
【0318】
GDF15−コンジュゲートは、肥満マウスにおける糖尿病および脂肪性肝疾患を含めた代謝性疾患の測定値を改善する
食餌性肥満マウスに、媒体または実施例19Bm(0.5mg/kg/皮下)を1週間に1回4週間投与した。最初の投与から2週間後に非絶食後グルコースおよびインスリンを測定し、最初の投与から4週間後に、終夜絶食後の血中グルコースおよびインスリンを測定した。実施例19Bmは、非絶食後グルコースを23%低下させた(媒体処置の207.1mg/dlに対して実施例19Bmは160.4mg/dl、p<0.05)。実施例19Bmは、非絶食後インスリンレベルを媒体処置マウスに比べて75%低下させた(2.1対8.7ng/ml、p<0.05)。初回投与から4週間後に、実施例19Bmは、空腹時血中グルコースを28%(142.7対199.5mg/dl、p<0.05)、空腹時インスリンを78%(0.77対3.5ng/ml、p<0.05)低下させた。脂肪性肝疾患のマーカーも、実施例19Bmを1週間に1回、4回投与することにより改善された。実施例19Bmは、肝脂肪症を57.5%(肝臓脂肪11.36対26.73%、p<0.05)減少させ、肝細胞損傷のマーカーであるアラニンアミノ基転移酵素(ALT)の血漿レベルを58%(46.2対110.5U/L、p<0.05)低下させた。加えて、実施例19Bmは、進行性肝疾患の原因遺伝子であるPNPLA3の肝臓での発現を77%(p<0.05)低減させた。
【0319】
本発明に従う実施例20および21のAPJアゴニストコンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitroおよびin vivo法によって評価することができる。
【0320】
hAPJカルシウムフラックスアッセイ:
Chem−5 APJ安定細胞(Millipore#HTS068C)を、25ulの増殖培地中に10,000細胞/ウェルで384ウェルフォーマットに播き、次いで、37℃の組織培養インキュベーターにおいて24時間増殖させた。アッセイの1時間前に、2.5mMのプロベネシドを含有する25ul/ウェルのFLIPR Calcium 4色素(Molecular Devices R8142)を加え、37℃の組織培養インキュベーターにおいて細胞を1時間インキュベートした。ペプチドを、HBSS、0.1%BSA添加HEPES緩衝液に可溶化し、50uMから5pMへと、三通りに10倍連続希釈した。FLIPR Tetraを使用して、色素を含んだ細胞にペプチドを加えた(1:5、10uM〜1pMの範囲の最終ペプチド濃度とする)。細胞内部にあるFLIPR色素は、カルシウムに結合後に蛍光を発したが、細胞の外側からの蛍光は遮蔽された。FLIPR Tetraにおいて470〜495の励起波長および515〜575の発光波長を使用して、蛍光を測定した。読み取りは、ペプチドを加える10秒前に開始して合計3分間行った。最大−最小値を算出し、各ペプチド濃度に対してプロットし、GraphPad prismソフトウェアを使用して、ペプチドによるカルシウムフラックス刺激について、曲線変曲点におけるEC
50値を算出した。
【0321】
in vivoアッセイ:
コンジュゲートをPBS(リン酸緩衝食塩水)に溶解させて濃度を1mg/mlとして、投与溶液を生成した。投与溶液は、雄のSprague−Dawleyラットに、1mg/kgの用量に相当する1ml/体重kgの体積で、側方尾静脈から静脈内投与した。投与後の定められた時間に頚静脈カテーテルから静脈血サンプルを取得し、直ちに氷上に置いた。こうしたサンプルを4Cで遠心分離し、上清の血漿を分析用の新たな管に移した。
【0322】
生体分析:
検量線の作製:ペプチドコンジュゲートを水に溶解させて1mg/mlとすることにより、保存溶液を調製した。10uLの保存液を990uLのラット血漿と混合して、血漿中に10,000ng/mlの作業保存液を生成した。これを血漿中に連続希釈して、5000、1000、500、100、50、10、5、および1ng/mlの標準とした。
【0323】
サンプルおよび標準物質の調製:25uLの血漿サンプルまたは標準物質を清浄なプレートに移した。内部標準としての100ng/mlのグリブリドを含有する150uLのアセトニトリル:MeOH(1:1)を各バイアルに加え、プレートをボルテックス撹拌して中身を混合した。プレートを4Cにて4000rpmで遠心分離した。125uLの上清を清浄なプレートに移し、50uLの水と混合し、LC/MSによって分析した。
【0324】
LC/MS分析:
HPLC:オートサンプラーを備えたAgilent 1290 HPLC
カラム:MAC−MOD ACE C18、3μm、30mm×内径2.1mm
移動相A:0.1%のアセトニトリル中ギ酸
移動相B:0.1%の水中ギ酸
勾配プログラム:
【0325】
【表6】
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質量分析計:AB Sciex 6500
MS条件:Q1(m/z+)809.3;Q3(m/z+)923.7;DP:60;CE:25
データ解析:MSデータを取り込み、WatsonLIMS v7.4ソフトウェアを使用して解析した。
【0326】
上述のアッセイを使用しての本発明のAPJアゴニスト−コンジュゲートの活性および安定性
【0327】
【表7】
[この文献は図面を表示できません]
【0328】
本発明に従う実施例26Aおよび26Bのオキシトシンコンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitroおよびin vivo法によって評価することができる。
【0329】
in vitroアッセイの説明:
材料および方法
化合物プレートの調製
調達した化合物をDMSO中に調製し、最終的にはEurofins Discovery Services GPCRProfiler(登録商標)Assay Buffer中に調製して、最終アッセイ濃度の3倍の濃度とした。同様に、媒体対照および陽性対照を調製して、すべてのアッセイが確実に適正に対照されるようにした。
【0330】
【表8】
[この文献は図面を表示できません]
【0331】
ウェルはすべて、Eurofins Discovery Services GPCRProfiler(登録商標)Assay Bufferを使用して調製した。GPCRProfiler(登録商標)Assay Bufferは、20mMのHEPESおよび2.5mMのプロベネシドを含有するようにHBSSが補足されている、pH7.4の改良されたハンクス平衡塩類溶液(HBSS)であった。
【0332】
カルシウムフラックスアッセイ
アゴニストアッセイ
調達した化合物を、分析する各濃度について二通りにプレーティングした。参考アゴニストであるオキシトシンも同様にして調製して、アッセイ対照として利用した。参考アゴニストであるオキシトシンは、(参考アゴニストが最大の反応を誘発した濃度)で含めた。
【0333】
アゴニストアッセイは、FLIPRTETRA機器において行い、そこで、蛍光/発光ベースラインが確立された後、試験化合物、媒体対照、および参考アゴニストをアッセイプレートに加えた。アゴニストアッセイは、合計180秒とし、これを使用して、分析する各GPCRを活性化させる各化合物の能力を評価した。3分のアゴニストアッセイが終了した後、アッセイプレートを25℃でさらに7分間インキュベートした。
【0334】
データ処理
すべてのプレートについて、適正なベースライン補正を行った。ベースライン補正の処理がなされたなら、最大蛍光/発光値をエクスポートし、データを処理して、活性化百分率および阻害百分率を計算した。0〜−30%のマイナスの値は、生物学的な変動性の結果である場合もある。データ処理計算は、次のとおりである:((最大RLU)−(ベースライン平均))/((陽性平均)−(ベースライン平均))
【0335】
In vivoアッセイの説明:
コンジュゲートをPBS(リン酸緩衝食塩水)に溶解させて濃度を3mg/mlとして、投与溶液を生成した。投与溶液は、雄のSprague−Dawleyラットに、3mg/kgの用量に相当する1ml/体重kgの体積で、側方尾静脈から静脈内投与した。投与後の定められた時間に頚静脈カテーテルから静脈血サンプルを取得し、直ちに氷上に置いた。こうしたサンプルを4Cで遠心分離し、上清の血漿を分析用の新たな管に移した。
【0336】
生体分析:
検量線の作製:ペプチドコンジュゲートおよびペプチドを、別個の2本のバイアルにおいて、ジメチルスルホキシドに溶解させて1mg/mlとすることにより、保存溶液を調製した。10uLの各保存液を980uLのラット血漿と混合して、血漿中に10,000ng/mlの作業保存液を生成した。これを血漿中に連続希釈して、5000、1000、500、100、50、10、5、1、0.5、および0.1ng/mlの標準とした。
【0337】
サンプルおよび標準物質調製:25uLの血漿サンプルまたは標準物質を清浄なプレートに移した。内部標準としての100ng/mlのグリブリドを含有する150uLのアセトニトリルを各バイアルに加え、プレートをボルテックス撹拌して中身を混合した。プレートを4Cにて4000rpmで遠心分離した。125uLの上清を清浄なプレートに移し、150uLの水と混合し、LC/MSによって分析した。
【0338】
LC/MS分析:
HPLC:オートサンプラーを備えたAgilent 1290 HPLC
カラム:MAC−MOD ACE C18、3μm、30mm×内径2.1mm
移動相A:0.1%のアセトニトリル中ギ酸
移動相B:0.1%の水中ギ酸
勾配プログラム:
【0339】
【表9】
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質量分析計:AB Sciex 6500
ペプチドMS条件:Q1(m/z+)945.20;Q3(m/z+)687.27;DP:140;CE:39
ペプチドコンジュゲートMS条件:Q1(m/z+)1270.85;Q3(m/z+)468.30;DP:140;CE:77
データ解析:MSデータを取り込み、WatsonLIMS v7.4ソフトウェアを使用して解析した。
【0340】
上述のアッセイに従う、本発明のオキシトシン脂肪酸コンジュゲートの活性および安定性
【0341】
【表10】
[この文献は図面を表示できません]
【0342】
国際公開第2014/095773号パンフレットの実施例13を以下に示す。
【0343】
【化34】
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本発明のオキシトシン−脂肪酸コンジュゲートは、コンジュゲートしていないオキシトシン類似体に比べて、半減期の75倍の延長を示した。
【0344】
本発明に従う実施例27Aおよび27BのAgRPコンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitroおよびin vivo法によって評価することができる。
【0345】
A)HTRF cAMPアッセイプロトコール:
HEK293/MC4R細胞の継代
細胞:HEK293/MC4R安定細胞系
完全培地:DMEM/F12 1:1(Gibco、カタログ番号11039、アッセイ用、無フェノールレッド培地 カタログ番号21041)
10%FBS(熱不活化されたもの、Gibco、カタログ番号10082)
200μg/mLのGeneticin(Gibco、カタログ番号10131)
15mMのHepes(GIBCO、カタログ番号15630)
2mMのL−グルタミン(GIBCO、カタログ番号25030)
フラスコ:150cm
2の組織培養処理されたフラスコ(Corning、カタログ番号430825)
− 条件培地を吸引する。
− 25mLのDPBS(Gibco、カタログ番号14190)で洗浄し、次いでそれを吸引する。
*FBSによって、トリプシン−EDTA処理が抑制される
− 2.5mLの0.05%トリプシン−EDTA(Gibco、カタログ番号25300)を加える。
− 数分放置し、次いでフラスコを数回軽く叩いて、細胞を引き離す。
− 25mLの完全培地を加えて、トリプシン−EDTA処理を停止させる。
*アッセイ用の細胞調製物、無フェノールレッド完全培地を使用する必要がある。
− 数回の穏やかなピペット操作によって、凝集した細胞を再懸濁する。
− 懸濁液を50mLの遠心管に移す。
− 1200rpmで3分間遠心沈殿する。
− 上清を吸引する。
− 底をやさしく叩くことにより細胞を分散させる。
− 5〜10mLの完全培地を加え、次いで穏やかなピペット操作によって再懸濁する。
*アッセイ用の細胞調製物、無フェノールレッド完全培地を使用する必要がある。
− 0.5mLの懸濁液をVi−cell用のサンプルバイアルに移す。
− Vi−cellを使用して細胞数をカウントする。*細胞密度および生存度を毎回記録する。
− 1〜3×10
6個の細胞を新しい150cmフラスコに移す。
3日間:3×10
6細胞/フラスコ
4日間:1×10
6細胞/フラスコ
− 37C、5%CO
2でインキュベートする。
【0346】
HTRF cAMPアッセイに向けた細胞播種(アッセイの1日前)
・ 継代の部にあるとおりに細胞懸濁液を調製する。
・ 懸濁液を2.34×105細胞/mLに希釈する。
*1枚の384ウェルプレートに対して13mLで十分である。
・ 30μLの細胞懸濁液を、Poly−D−Lysine BIOCOAT 384ウェル透明プレート(Becton Dickinson、カタログ番号354660)の各ウェルに分注する:7000細胞/ウェル
*ポリ−D−リシンでコーティングされたプレートは、このアッセイにおいて不可欠である。
*cAMP標準物質のウェルについては細胞なし
・ 37C、5%CO
2で終夜インキュベートする。
【0347】
HTRF cAMPアッセイ
1.試薬の調製
・ 1M IBMX
IBMX(MW222.25g/mol、ACROS カタログ番号228420010) 111mg
DMSO(Sigma Aldrich、カタログ番号D2650) 500uL
4℃で保管する。
・ 40mg/mLのBSA溶液
ウシ血清アルブミン(Sigma A7030−50G) 200mg
dH
2O 5mL
4℃で保管する。
・ 1mg/mL(176uM)のAgRPマスター溶液(HBSS/2mg/mLのBSA中)
R&DヒトAgRP C末端(カタログ番号3726−AG−100) 100ug/バイアル
1×ハンクス液(HBSS)(Gibco、カタログ番号14065、CaおよびMg含有) 95uL
40mg/mLのBSA溶液 5uL
4℃で保管する。
・ 2mMのNDP−aMSHマスター溶液
NDP−aMSH(MW1646.9、Bachem、カタログ番号H1100) 1mg/バイアル
dH
2O 304uL
*溶解させたなら、10uLずつのアリコートを200uLの管に分注し、次いで−20Cで保管した。
・ アッセイ緩衝液1
HBSS 10mL
1M Hepes(Gibco、カタログ番号15630) 0.2mL
1M IBMX 20uL
*IBMXの沈殿を回避するために、完全に溶解するまで緩衝液をボルテックス撹拌してください。
・ アッセイ緩衝液2
HBSS 20mL
1M Hepes(Gibco、カタログ番号15630) 0.4mL
1M IBMX 40uL
40mg/mLのBSA溶液 0.25mL
*IBMXの沈殿を回避するために、完全に溶解するまで緩衝液をボルテックス撹拌してください。
・ IgG滴定およびAgRP滴定のための6nMのNDP−aMSH
2uMのNDP−aMSH(マスター溶液の1000倍希釈液) 10.8uL
アッセイ緩衝液1 3600uL
*1回の384ウェルアッセイについての例
・ IgG滴定のための120nMのAgRP
10倍希釈したマスター溶液(17.6uM) 26uL
アッセイ緩衝液2 3800uL
*1枚の384ウェルプレートについての例
・ 滴定用のNDP−aMSH作業溶液(試薬を参照のこと)
・ 滴定用のAgRP作業溶液(試薬を参照のこと)
・ 滴定用のIgG作業溶液(試薬を参照のこと)
・ cAMP標準溶液(試薬を参照のこと)
【0348】
2.アッセイ(2ステッププロトコール)
アッセイキット:Cisbio cAMP HiRange HTRFキット(カタログ番号62AM6PEB)
− IgG/AgRP混合物(1:1)の調製
・ 15uLのIgG作業溶液と15uLの120nM AgRPを混合し、次いで周囲温度で1時間インキュベートする。
− アッセイプレートの調製
・ 細胞を含有する384ウェルアッセイプレートをWipeallの上で逆さにして培地を捨て、次いで軽く叩いて培地を取り除いた。
・ 各ウェルに100μLのDPBSを加え、同じようにして捨てた。
*PBSを捨てたなら、できる限りすぐに次に進んで、乾き切らないようにする。
・ 次の試薬10μLを、使用者のサンプルの並べ方に従って各ウェルに移す。
cAMP標準:cAMP標準物質
cAMP滴定についての陰性対照:HTRFキットの中の希釈剤
陽性対照:HTRFキットの中のcAMP陽性対照
MSH滴定:アッセイ緩衝液2
AgRP滴定:AgRP作業溶液
IgG滴定:IgG/AgRP混合物
細胞アッセイ用の陰性対照:アッセイ緩衝液2
− 384ウェルプレートを1200RPMでフラッシュ遠心沈殿する。
− 細胞を周囲温度で15分間インキュベートする。
− 次の試薬10μLを、使用者のサンプルの並べ方に従って各ウェルに加える。
cAMP標準:アッセイ緩衝液1
cAMP滴定についての陰性対照:アッセイ緩衝液1
陽性対照:アッセイ緩衝液1
MSH滴定:MSH作業溶液
AgRP滴定:6nM MSH溶液
IgG滴定:6nM MSH溶液
細胞アッセイ用の陰性対照:アッセイ緩衝液1
− 384ウェルプレートを1200RPMでフラッシュ遠心沈殿する。
− 細胞を周囲温度でさらに30分間インキュベートする。
*このインキュベート時間はそれほど厳格でない。アッセイ開発データによれば、+/−5分は可となるはずである。
− 10μLのcAMP−d2(キットの中に支給されている溶解緩衝液に1:4希釈したもの)を加える。
*重要!! 陰性対照については、cAMP−d2でなく、溶解緩衝液だけとする。
− 10μLの抗cAMPクリプテート(キットの中に支給されている溶解緩衝液に1:4希釈したもの)を加える。
− 1200RPMでフラッシュ遠心沈殿する。
− アッセイプレートを周囲温度で45〜60分間インキュベートする。
− 各サンプル30μLを、組織培養処理された384ウェル白色ポリスチレンアッセイプレート(Corning、カタログ番号3572)に移す。
− 1200RPMでフラッシュ遠心沈殿する。
− 次の設定のMolecular device M5またはM5eを用いて蛍光を測定する。
Molecular device M5/M5eの設定
【0349】
【表11】
[この文献は図面を表示できません]
【0350】
B)MC3 cAMPアッセイ
材料:
細胞:HEK293/MC3R安定細胞系
完全培地:DMEM/F12 1:1(Gibco、カタログ番号11039)
10%FBS(熱不活化されたもの、Gibco、カタログ番号10082)×
200μg/mLのGeneticin(Gibco、カタログ番号10131)
2mMのL−グルタミン(GIBCO、カタログ番号25030)
フラスコ:150cm
2の組織培養処理されたフラスコ(Corning、カタログ番号430825)
アッセイ緩衝液
HBSS(Gibco−14175−095) 10mL
1M Hepes(Fisher、カタログ番号BP299−1) 0.2mL
500mM IBMX(MW222.25g/mol、ACROS カタログ番号228420010) 40ul
BSA 0.25%
プレート
384ウェルべた底、Greiner bio−one(カタログ番号−781080)
【0351】
アッセイプロトコール(アンタゴニストプロトコール):
I.条件培地を吸引する。
II. 2.5mLのDPBS(Gibco、カタログ番号14190)で洗浄する
III. 2mLの0.25%トリプシン−EDTA(Gibco、カタログ番号25200−056)を加える。
IV.フラスコをインキュベーターに入れて数分間放置し、フラスコを数回軽く叩いて、細胞を引き離す。
V. 10mLの完全培地を加えて、トリプシン−EDTA処理を停止させ、数回の穏やかなピペット操作によってこれをよく混合して、凝集した細胞を再懸濁する。
VI. 1.5mlの細胞を、20mlの完全培地を含有する新しい150cmのフラスコに移す。
VII.残りの懸濁液を50mLの遠心管に移す。
VIII. 1200rpmで4分間遠心沈殿する。上清を吸引する。
IX. 6mLのアッセイ緩衝液を管に加え、穏やかなピペット操作によって細胞を再懸濁する。
X. 0.5mLの懸濁液をVi−cell用のサンプルバイアルに移し、別の0.5mlのPBSを加える。
XI. Vi−cellを使用して細胞数をカウントする。*細胞密度および生存度を毎回記録する。
i. IBMXを含有する10ul/ウェルのアッセイ緩衝液に、4K/ウェルで細胞を播く。
ii.プレートをインキュベーターに入れて約30分間放置した後、浮遊細胞に対してアッセイを開始する。
【0352】
cAMP定量については、2ステップcAMPプロトコールに従う。
手順
I.アンタゴニストウェルに対してのみ、10ul/ウェルの細胞に、アッセイ緩衝液中に3倍に調製された5ulのAgRPを加える。
II.陽性対照ウェル(NDP−α−MSHを含有することになるウェル)には、5ulの緩衝剤を加える。
III.プレートを37℃で約20分間インキュベートする。
IV. AgRP DRCを含有するウェルに、5ul/ウェルの、4倍に調製されたアゴニストEC80(NDP−α−MSH)を加える。
V. NDP−α−MSH EC50を算出するために、5ul/ウェルの、4倍に調製されたアゴニスト(NDP−α−MSH)DRC(プレートにおける最終最高濃度は100nMである)を加える。
VI.陰性対照だけに緩衝液を加える。
VII. 384ウェルプレートをパルス回転させ、細胞をインキュベーターにおいて30分間インキュベートする。
VIII.次の試薬10μLを各ウェルに加える。
a. 10μLのcAMP−d2
b. *重要!! 陰性対照については、cAMP−d2を加えず、溶解緩衝液および10ul/ウェルのTb−クリプテートだけを加える。
c. 10μLの抗cAMPクリプテート
d.プレートをパルス回転させ、室温で60分間インキュベートする。
【0353】
C.in vivoアッセイの説明:
10ナノモルのコンジュゲートを300μLのPBS(リン酸緩衝食塩水)に溶解させて、投与溶液を生成した。投与溶液(300μM)を、雄のSprague−Dawleyラットに側方尾静脈から静脈内投与した(ラット1匹あたり10ナノモルの用量に相当する)。投与後の定められた時間に、尾の断片から血液を採取し、直ちに氷上に置いた。こうしたサンプルを4Cで遠心分離し、上清の血漿を分析用の新たな管に移した。
【0354】
生体分析:
検量線の作製:実施例27Aおよび27Bの2種の脂肪酸コンジュゲートならびに1種の成熟ヒトAgRPペプチドを使用して標準物質を作製した。保存標識ペプチドを、カゼインを含有するELISAサンプル希釈剤に希釈して100ug/mlとすることにより、各AgRPの中間保存溶液を調製した。アッセイに向けて、中間液を、ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するELISAサンプル希釈剤に希釈して2500pg/mLの先頭標準濃度とし、次いで2倍連続希釈して、ゼロ用量標準を含めた16段階とした。
【0355】
サンプル希釈:血漿サンプルを、BSAを含有するELISAサンプル希釈剤に10倍希釈し、次いで、31,250倍まで5倍連続希釈した。
【0356】
5B1ヒトAgRP ELISA法:384ウェルのマイクロプレートを、室温(RT)において、1×PBS中に30uL/ウェルの抗ヒトAgRPクローン5B1で終夜コーティングした。プレートを吸引し、室温において90uL/ウェルの乳系遮断剤で2時間ブロックした。これ以降のインキュベートはすべて、30uL/ウェルで実施した。プレートを再び吸引し、サンプルおよび標準物質を室温で2時間ウェルに加えておいた。次いで、プレートを、tween−20を含有するリン酸系洗浄緩衝液で3回洗浄し、ビオチン標識ヤギ抗ヒトAgRPポリクローナル抗体をウェルに加えて、結合したAgRPを室温で2時間かけて検出した。プレートを再び洗浄し、HRP標識ストレプトアビジン試薬を室温で30分間ウェルに加えておいた。プレートを最後にもう1回洗浄し、化学発光基質をすべてのウェルに加え、プレートの光出力をSpectramx M5で直ちに読み取った。
【0357】
データ解析:生データを整理し、基礎PKパラメーターについて分析した。
【0358】
上述のアッセイに従う、本発明のAgRP脂肪酸コンジュゲートの活性および安定性:
【0359】
【表12】
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【0360】
実施例28A、28B、および28CのFGF23コンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitro法によって評価することができる。
【0361】
in vitro活性アッセイ
Egr−1−ルシフェラーゼ:精製hFGF23−FAコンジュゲートの生物学的活性を、Egr−1−ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて試験した。hFGF23−FAコンジュゲートがFGF23受容体に結合した結果、Egr−1の下流が活性化され、Egr−1プロモーターによって調節されるルシフェラーゼレポーターが発現された。Egr−1−ルシフェラーゼレポーター遺伝子は、Urakawa et al. (Nature, 2006, Vol 444, 770-774)が報告したことに基づき構築した。48ウェルポリ−D−リシンプレートに播いたHEK293T細胞に、Egr−1−ルシフェラーゼレポーター遺伝子、全長膜貫通型のKlotho、およびトランスフェクション正常化レポーター遺伝子(ウミシイタケルシフェラーゼ)をトランスフェクトした。トランスフェクションから5時間後、トランスフェクション混合物を、段階的な濃度の試験タンパク質を含有する3mlの1%FBS添加DMEMと差し替えた。20時間後に細胞をpassive lysis buffer(Promega、カタログ番号E194A)に溶解させ、Dual−Glo Luciferase Assay System(Promega、カタログ番号E2940)を使用して、ルシフェラーゼ活性を求めた。
【0362】
【表13】
[この文献は図面を表示できません]
【0363】
本発明に従う実施例29Aおよび29Bのセレラキシン脂肪酸コンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitroおよびin vivo法によって評価することができる。
【0364】
in vitro活性アッセイ#1:
材料:
DMEM: F12培地(Gibco、カタログ番号11320)
IBMX(Sigma、カタログ番号I5879)
384べた底白色プレート(Greiner bio−one、カタログ番号781945)
20,000 dynamic−2 cAMPキット(Cisbio、カタログ番号62AM4PEC)
アデノシン3’,5’−環状一リン酸(Sigma、カタログ番号A9501)
Matrix−plate mate plus(5μlのアッセイ試薬を加えるのに使用した)
PBS−Gibco(カタログ番号10010−023)
【0365】
【表14】
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【0366】
プロトコール:
1日目:べた底PDLコーティッド白色プレートにおいて、10μlのDMEM:F12培地に、RXFP1−HEK293/親HEK293細胞を8000個播いた。
2日目:化合物を用いてアッセイを実施した。
【0367】
アゴニストモード(概要):
・ 37℃で終夜10μlのDMEM:F12培地中に細胞
・ 細胞に2000μM(4x)のIBMX 5μlを37℃で30分間
・ 上記に5μlの4x化合物/セレラキシンを37℃で30分間
(ステップ3の化合物希釈400nMから−最終は先頭100nM)
・ 10μlのcAMP−d2コンジュゲート
・ 10μlの抗cAMPクリプテートコンジュゲート
・ 室温で1時間インキュベートする。
・ FRETシグナルを読む−Envision 665nm/620nm
【0368】
化合物の調製
セレラキシン:
1)保存液を、15μlの化合物を30μl(最終は40μM)に変えることによりPBSに3倍希釈した、683.3μM、すなわち、188.3のPBS pH7.4中11.7μlに、手作業で希釈した。
2)1:10、すなわち、6μlの上記を54μlのDMEM:F12(最終は4μM)に、手作業で希釈した。
3)1:10、すなわち、10μlの上記を90μlのDMEM:F12(最終は400nM)に、手作業で希釈した。
セレラキシン−FAコンジュゲート
1)保存液を、15μlの化合物を30μに変えることによりPBSに3倍希釈した、PBS pH7.4中40μMに希釈した。
2)1:10、すなわち、6μlの上記を54μlのDMEM:F12に、手作業で希釈した。
3)1:10、すなわち、10μlの上記を90μlのDMEM:F12(1:100希釈)に、手作業で希釈した。
脂肪酸
1)保存液を、15μlの化合物を30μに変えることによりPBSに3倍希釈した、PBS pH7.4中40μMに希釈した。
2)1:10、すなわち、6μlの上記を54μlのDMEM:F12に、手作業で希釈した。
3)1:10、すなわち、10μlの上記を90μlのDMEM:F12(1:100希釈)に、手作業で希釈した。
【0369】
cAMP検量線希釈:
1. DMEM:F12培地に希釈した150μlのcAMP標準を最初の列に(2800nM)。
2. 100μlのDMEM:F12培地をその後の10までの列に(1〜11)
3. 50μlを100μlに変えることによる3倍希釈
4.ステップ3からの20μlを検量線プレートの適切なウェルに
5. 10μlの抗d2および抗cAMPクリプテートコンジュゲート
6.室温で1時間インキュベートする。
7. FRETシグナルを読む−Envision 665nm/620nm
【0370】
分析:
Graph pad prismを使用して、cAMPのnM濃度をLog(x)変換した。
4パラメーター非線形回帰を使用して、検量線からcAMP量を内挿した。
内挿された値を、10^Y変換を使用してnMに変換した。
計算されたcAMP量を、4パラメーター非線形回帰を使用して、化合物濃度に対してプロットした。
【0371】
【表15】
[この文献は図面を表示できません]
【0372】
ウシ血清アルブミンおよびヒト血清存在下でのin vitro活性#2:
材料:
DMEM:F12培地(Gibco、カタログ番号11320)
IBMX(Sigma、カタログ番号I5879)
384べた底白色プレート(Greiner bio−one、カタログ番号781945)
20,000 dynamic−2 cAMPキット(Cisbio、カタログ番号62AM4PEC)
アデノシン3’,5’−環状一リン酸(Sigma、カタログ番号A9501)
Matrix−plate mate plus(5μlのアッセイ試薬を加えるのに使用した)
PBS−Gibco(カタログ番号10010−023)
1M HEPES Gibco(カタログ−15630−080)
1×HBSS Gibco(カタログ−14175−095)
アッセイ緩衝液−1×HBSS+10mM HEPES
ウシ血清アルブミン カタログ番号A2153(Sigma−Aldrich)
Sigma Aldrich−H4522(ヒト血清)
【0373】
条件:
・ 600μMのBSA
・ 4%のヒト血清
・ 10%のヒト血清(Sigma aldrich−H4522)
・ アッセイ緩衝液
【0374】
試験する化合物:
・ セレラキシン
・ セレラキシン−FA(実施例29A)
【0375】
化合物の取扱い:
セレラキシン−:保存液は(796.57uM)、すなわち4.75mg/ml MWは5963ダルトンである。
セレラキシン10ul保存液を190ulのPBSに溶解させ、最終濃度を40μMとし、これを30ulを60ulのアッセイ緩衝液に変えることにより3倍希釈し、11点曲線(A2〜A12)12番目を0とする。
セレラキシン−FAコンジュゲート:保存液は(287.79uM)、すなわち2.61mg/ml MWは9069ダルトンである。
セレラキシン27.798ul保存液を172.2ulのPBSに溶解させ、最終濃度を40μMとし、これを30ulを60ulのアッセイ緩衝液に変えることにより3倍希釈し、11点曲線(A2〜A12)12番目を0とする。
【0376】
BSA保存溶液の調製:
666.66uMのBSAについて:アッセイ緩衝液30mlを、1.32グラムのBSAを溶解させることにより作製した。
600uMのBSAについて:アッセイ緩衝液30mlを、1.18グラムのBSAを溶解させることにより作製した。
BSAなしは、アッセイ緩衝液だけを含有する。
【0377】
ヒト血清
4.44%のHSについて:28.66mlのアッセイ緩衝液中1.34ml
4%のHSについて:28.8mlのアッセイ緩衝液中1.2ml
11.11%のHSについて:26.67mlのアッセイ緩衝液中3.33ml
10%のHSについて:27mlのアッセイ緩衝液中3ml
【0378】
手順:
1日目:8,000細胞/ウェルのRXFP1−HEK293およびHEK293(親)細胞を、ベタ底プレート上の基本DMEM:F12培地に、10μl/ウェルの体積で播く。細胞を37℃/5%CO
2で終夜インキュベートする。
【0379】
2日目:
1.細胞を50ulのアッセイ緩衝液で2回洗浄し、1回目および2回目の洗浄後に、ペーパータオルの上でやさしく叩いて、アッセイ緩衝液を取り除いた。
2.IBMX(666.66uM)を含有するそれぞれの培地(600uMのBSA、4%のBSA、10%のヒト血清、およびアッセイ緩衝液単独)である15ulの培地で、細胞を37℃で30分間前処理した。
3.化合物を3倍連続希釈する、11点曲線−先のウェルから15ulの化合物を30ulのPBSを含有する後続のウェルに移す、ウェル11はPBSのみ
4.ステップ3からのアッセイ緩衝液に(1:10)希釈する(すなわち、10ulから90ulのアッセイ緩衝液)。
5.ステップ4からそれぞれの培地(666.66μMのBSA、4.44%および11.11%のヒト血清、アッセイ緩衝液)に再び希釈(1:10)し、BSAの最終濃度を600μM、ヒト血清を4%および10%とする。
6.(*化合物をそのそれぞれの培地において室温で1時間インキュベートした後、細胞に加える)
7.ステップ6からの5ul、すなわち、4×セレラキシン/セレラキシン−FAを15ulの細胞に、37℃で30分以上(セレラキシンの先頭濃度は100nMである)
8. 10ulのcAMP d2コンジュゲートを加える。
9. 10ulの抗cAMP−クリプテートを加える。
10.室温で1時間インキュベートする。
11. EnvisionでFRETを読む。
12.そのそれぞれの培地においてcAMP検量線を作成した。
【0380】
cAMP検量線希釈:
cAMP標準物質の最初の保存液は、1120000nMとする。
1. 20ulのcAMP保存液を60ulのアッセイ緩衝液に溶解させることにより、最初の保存液を希釈する(1:4)。
2.ステップ1のアッセイ緩衝液への(1:10)希釈(すなわち、180ulのアッセイ緩衝液中20ulである)
3.ステップ2の、それぞれの濃度の4.44%および11.11%のHS、666.66uMのBSA、またはBSAなしへの(1:10)希釈。最終濃度は、最終的に4%、10%のHS、および600μMのBSAとなる。
【0381】
cAMP検量線
1.それぞれのcAMP標準150μlを最初の列に加える(2800nM)。
2.それぞれの濃度のアッセイ緩衝液600uMのBSA、4%および10%のHS、0%)100μlを後続の11列、すなわち(2〜12)に加える。
3. 50μlを後続のウェルの100μlに変えることによる3倍希釈、12番目のウェルはcAMPなしの0である。
4.ステップ3からの20μlを検量線プレートの適切なウェルに
5. 10μlのd2コンジュゲートを加える。
6.室温で1時間インキュベートする。
7. HTRF− Envisionで読む。
【0382】
分析:
Graph pad prismを使用して、cAMPのnM濃度をLog(x)変換する。
4パラメーター非線形回帰を使用して、検量線からcAMP量を内挿した。
内挿された値を、10^Y変換を使用してnMに変換した。
計算されたcAMP量を、4パラメーター非線形回帰を使用して、化合物濃度に対してプロットした。
【0383】
結果:
【0384】
【表16】
[この文献は図面を表示できません]
【0385】
in vivoアッセイ:
化合物(セレラキシンおよびセレラキシンコンジュゲート)を種々のげっ歯動物モデルにおいて試験して、短期および長期の心血管反応を評価することができる。
【0386】
短期モデル−マウス(いずれの系統でもよいがDBA/2が好ましい)またはラット(いずれの系統でもよいがSprague−Dawleyが好ましい)を、イソフルランを吸入させて麻酔し、100%の酸素中約2%のイソフルランによって、安定した外科的水準の麻酔を維持し、直腸温度を正常レベルに保つ。頚動脈および頚静脈(マウス)または大腿動脈および静脈(ラット)を、覆っている皮膚を切開することで露出させ、血管にカテーテルを入れる。動脈圧を継続的に測定し、心拍を呼び起こすために、動脈カテーテルを圧変換器に接続し、シグナルをデジタルデータ取得システム(たとえば、Ponemah)に向ける。別法としては、皮下に挿入した針電極を通して記録された心電図シグナルによって心拍を呼び起こす。動脈圧および心拍を安定させた後、自律神経遮断剤カクテル(たとえば、2mg/kgずつのアトロピンおよびプロプラノロール)を約3〜4分かけて静脈内投与する。新血管パラメーターが再び安定したとき、セレラキシンまたはセレラキシンコンジュゲートを静脈内ボーラスとして約3秒かけて注射する。リラキシンは、特徴的な遅い開始(約6分でピーク反応)を伴う心拍の上昇および作用時間の持続(時間)を誘発する。動物を同じく準備して、連続した心エコー画像を集め、それをオフラインで分析することにより、心室の心機能(たとえば、駆出率、左室径短縮率、心拍出量)を測定する。
【0387】
長期モデル−マウス(いずれの系統でもよいがDBA/2が好ましい)またはラット(いずれの系統でもよいがSprague−Dawleyが好ましい)を、イソフルランを吸入させて麻酔し、100%の酸素中約2%のイソフルランによって、安定した外科的水準の麻酔を維持する。手術前後および手術後に鎮痛剤を投与する。動脈および静脈に上述のとおりにカニューレを挿入するが、但し、カテーテルを背側皮膚領域で外面化し、ヘパリン化食塩水でフラッシュし、ステンレス鋼製のピンで栓をする。マウスでは、皮下カテーテルを皮下に埋め、同様にして外面化してもよい可能性がある。ラットでは、ばねテザー/スイベルシステムによってカテーテルを振り向ける。研究当日、動脈カテーテルを圧変換器に接続し、上述のとおりに自律神経遮断を実現するが、但し、マウスでは皮下カテーテルから遮断剤を投与してもよく、どちらの種の遮断も、その後は、自律神経剤の継続的な静脈内または皮下注入によって維持する。動脈圧および心拍を、デジタルデータ取得システムで継続的にモニターする。動脈圧および心拍を安定させた後、自律神経遮断剤を約3〜4分かけて静脈内または皮下投与する。新血管パラメーターが再び安定したとき、セレラキシンまたはセレラキシンコンジュゲートを静脈内ボーラスとして約3秒かけて注射する。マウスまたはラットにおいて数週間かけて心室の心機能および心拍を評価するために、セレラキシンコンジュゲートを1週間に1〜3回皮下注射し、ベースライン時に、その後は毎週、連続した心エコー画像を収集する。
【0388】
セレラキシン供給源:
セレラキシン(組換え1本鎖ヒトリラキシン)
Connetics corporation、ロット番号00L605
20nMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中1.0mg/mL(5mLバイアル)
各用量に所望される濃度のセレラキシンとするための、保存溶液の媒体への希釈
【0389】
実施例30のPIPコンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitroおよびin vivo法によって評価することができる。
【0390】
グルコース刺激によるインスリン分泌(GSIS)アッセイ:
GSIS試験は、高脂肪食誘発肥満(DIO)マウスにおける組換えヒトプロラクチン誘導タンパク質(hPIP)後の、in vivoでの膵臓β細胞機能の測定として実施した。簡潔に述べると、マウス(m=5−7/群)を終夜(5:00PM〜8:00AM)絶食させ、試験日に、ベースライン時点として示した、体重および血糖(BG、Embraceグルコース計量器で測定したもの)。次に、マウスに、hPIP(未変性PIPおよびFAにコンジュゲートさせたPIP、PBS溶液、4ml/体重kgで投与)または媒体対照(PBS)を1回静脈内(IV)投与した。hPIP投与から45分後、すべてのマウスに、経口グルコース(3g/kgのデキストロース、PBS溶液、4ml/体重kgで投与)を投与した。グルコース負荷の直前(0分時点として示す)、ならびにグルコースから15分および30分後に、血糖を測定した。グルコースから0分、15分、および30分後に、血液サンプルを採取して血漿を単離し、血漿インスリンの測定を行った。
【0391】
薬動学(PK)アッセイ:
hPIPの血漿暴露を、単回静脈内投与後にDIOマウスにおいて測定した。簡潔に述べると、制約なく給餌されたDIOマウス(n=2)に、hPIP(未変性PIPおよびFAにコンジュゲートさせたPIP、PBS溶液、4ml/体重kgで投与)を1回静脈内(IV)投与した。投与から0.25、0.5、1、3、7、24、および48時間後に、血液サンプルを採取し、血漿を単離し、社内ELISAアッセイによる(以下に示すプロトコール)。
【0392】
アッセイでは、次のステップによって測定を行った。
・ 30ulのhPIP抗体(PIP−8−ABとして示す、社内で産生したたもの、NBCクローン番号87.19G9A11、PBS中8ug/ml)で、プレートを終夜室温でコーティングした。
・ 吸引した後、100ulのブロッキング用試薬で2時間ブロックした。
・ 吸引し、30ulのサンプルを加えて、2時間インキュベートし、サンプルおよび標準物質を、カゼイン緩衝液(1%のカゼイン、1.7mMのリン酸二水素ナトリウム、8.1mMのリン酸水素ナトリウム七水和物、0.15Mの塩化ナトリウム、0.7%のTriton X−100、および0.1%のアジ化ナトリウム)に希釈する。
・ プレートを100ulのTeknova洗浄緩衝液(0.05%のPBS中Tween)で3回洗浄した。
・ 30ulのビオチン標識PIP抗体(PIP−6Abとして示す、社内で産生したもの、MBCクローン番号87.8C6B3、カゼイン緩衝液中10ug/ml)、1時間インキュベートする。
・ 上記のとおりに洗浄した。
・ 30ulのストレプトアビジン−HRP(Pierceカタログ番号21140、HRP緩衝液中0.4ug/ml)をHRP緩衝液(0.4%のカゼイン、1.7mMのリン酸二水素ナトリウム、8.1mMのリン酸水素ナトリウム七水和物、0.15Mの塩化ナトリウム、および0.1%のクロロアセトアミド)に加え、30分インキュベートした。
・ 上記のとおりに洗浄した。
・ 30フェムトの化学発光基質(Thermoカタログ番号34096)を加え、直ちに読み取る。
【0393】
上述のアッセイに従う、本発明のPIP脂肪酸コンジュゲートの活性および安定性
【0394】
【表17】
[この文献は図面を表示できません]
【0395】
本発明のPIP脂肪酸コンジュゲートは、暴露期間が延長されており、その結果、有効性が向上している。
【0396】
実施例31のNPFFコンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vitro法によって評価することができる。
【0397】
Cisbio cAMPキットを用いたcAMPアッセイプロトコール
本発明のNPFF−FAコンジュゲートを、以下に記載するアッセイにおいて、ホルスコリンの存在下で試験した。
【0398】
【表18】
[この文献は図面を表示できません]
【0399】
1日目:「継代培養プロトコール」に従って細胞を384ウェルプレートに播く。
1.抗生物質なしで増殖培地を作製する(必要に応じて)。
2. 70%のエタノールを吹き付けた後、37℃の水浴中で、抗生物質なしの増殖培地ボトルを平衡化する。
3. Versene(T.75フラスコあたり3ml)で細胞を引き離す。
4. 17mlの増殖培地を含有する50mlのFalcon管に移す。
5. 150gで4分遠心分離する。
6.細胞ペレットを10mlの刺激緩衝液に再懸濁する。細胞を数える。
7.抗生物質を含有する増殖培地に5’000細胞/50ulで細胞懸濁液を調製する。
8. Viaflow 384−125ulピペットを使用して、50ulの細胞懸濁液を播く。
9.プレートを15分間TCフード下に置く。
10. 37℃、5%CO
2、および湿度90%でインキュベートする。
【0400】
2日目:
試薬溶液の調製
1.アッセイ緩衝液:
500mlのHBSS+10mlのHEPES。室温で保管する。
アッセイ緩衝液:250mlのHBSS/HEPES+250ulのIBMX 1000倍溶液+0.1%BSA(825ul)。毎日新たに作製する。
【0401】
2.ホルスコリン2倍溶液:アッセイにおける最終1uM:
化合物希釈用:40ulのFSK/100mlのアッセイ緩衝液
NPFF希釈用:10ulのDMSO/10mlの2倍FSK
【0402】
3. NPFF希釈:保存溶液 dH
2O中1mM−アッセイにおける最終1uM
a. 5ulの保存液/625ulのFSK 2倍/DMSO
b. 100ulの溶液a+300ulのFSK 2倍/DMSO。アッセイにおける最終1uM
c. 10の1/4希釈ステップを行う:FSK 2倍/DMSO中100ul+300ul
【0403】
4.化合物希釈:保存溶液 DMSO中10mM−アッセイにおける最終40uM
a. 5ulの保存液/625ulのFSK 2倍
b. 11の1/4希釈ステップを行う: 100ul+300ul FSK 2倍
【0404】
5. cAMP標準:
a. 10ulのcAMP標準保存液(1.12mM)+90ulのアッセイ緩衝液
b. 10ulの希釈物a+90ulの刺激緩衝液
c. 20ulの希釈物b+428ulの刺激緩衝液:500nM
d. 希釈物cから出発して11の1/2希釈を行う:100ulの希釈物c+100ulの刺激緩衝液
【0405】
6. cAMP検出試薬:
a. d2−cAMP:1000Ul/20mlの溶解緩衝液(1枚の384ウェルプレートについて250ul/5ml)
b. クリプテートコンジュゲート:1000Ul/20mlの溶解緩衝液(1枚の384ウェルプレートについて250ul/5ml)
【0406】
アッセイ手順
ステップ1:
1.刺激緩衝液を調製する。
2.Cisbio溶解緩衝液を室温に置く。
3.WellMateを準備する(70%のアルコールに続いてdH
20およびHBSS/HEPESで洗浄する)。
4.ホルスコリンおよび化合物希釈物を調製する。
【0407】
ステップ2:ホルスコリンでの刺激
1.細胞を50ulの刺激緩衝液で洗浄する:
a.プレートをやさしく叩いてO/N培地を除去する。
b.プレートの上部に白色のペーパータオルをあてがい、プレートを逆さにして、VWR Symphony4417遠心機を使用して、300RPMで20秒間遠心する。
c. WellMateを使用して50ulの刺激緩衝液を加える。
d.プレートをやさしく叩いてO/N培地を除去する。
e.プレートの上部に白色のペーパータオルをあてがい、プレートを逆さにして、VWR Symphony4417遠心機を使用して、300RPMで20秒間遠心する。
f.顕微鏡で細胞を調べる。
2. Viaflow384を使用して、IBMXを含有する10ulの刺激緩衝液を加える。
3. Viaflow384を使用して、化合物を含有する10ulの2倍ホルスコリン溶液を加える(7番目の床に対して)。溶液を混合した後で細胞に加える。
4.室温で30分間インキュベートする(温度変化を避けるためにプレートを引き出しに入れる)。
5. cAMP検量線を準備し、cAMP検出試薬を調製する。
6. 20ul/ウェルのcAMP検量線を検量線プレート(アッセイプレートと同じプレート)に加える。
【0408】
ステップ3:LANCE cAMPアッセイ
1. Combi384を使用して、10ulのd2 cAMP/ウェルをアッセイプレートに加える。
2. 10ul/ウェルのクリプテートコンジュゲートをアッセイプレートに手作業で加える。
3.プレートにシールをする。
4.室温で最低1時間インキュベートする(プレートは、24時間以内に読み取ってよい)。
5.プレートの底にテープを貼る。
6. Envisionの「Cisbio384 full plate」プログラムで読み取る。
7.生データがアクセサリファイルに入っているのを確かめる。
8. GraphPadでデータを解析する(アクセサリファイルの中のファイルを参照する)。
【0409】
【表19】
[この文献は図面を表示できません]
【0410】
生体分子がsiRNAである本発明によるコンジュゲートの活性および血漿安定性は、以下に記載する次のin vivo法によって評価することができる。
【0411】
方法
実施例24のコンジュゲートは、APOC3 siRNAがGalNAc(参考例3)および脂肪酸とコンジュゲートした化合物である。ヒトAPOC3トランスジェニックマウス(B6;CBA−Tg(APOC3)3707Bres/J)をJackson Laboratory(メイン州バーハーバー)から購入した。マウスには、12時間の明/暗サイクル下で、標準のげっ歯動物固形飼料および水を制約なく与えた。この条件下で、APOC3トランスジェニックマウスは、高トリグリセリド血症を自然に発症し、血漿TG含有量が著しく増加する(Aalto-Setala K, J Clin Invest 1992)。各群の4匹のマウスに、参考例3(APOC3 siRNA−GalNAc)または実施例24のコンジュゲートのいずれかを、25mg/体重Kgの用量で皮下注射した。注射直前のベースライン時、ならびに注射してから2、4、7、および14日後に、血液を採取した。血漿を使用して、CisbioのHTRFアッセイでヒトAPOC3タンパク質レベルを測定した。一方向ANOVAを使用して、群間の統計学的差異を比較した。
【0412】
結果
ベースライン血漿APOC3レベルは、参考例3およびコンジュゲート24群において、それぞれ、176±21mg/dLおよび178±9mg/dLであった。参考例3は、時間依存的に、投与から5日後に、血漿APOC3レベルをベースラインに対して56%低下させた。比較すると、実施例24のコンジュゲートは、血漿APOC3をより効果的に低下させ、投与から5日後で80%の低下であった(
図1)。作用持続時間は、
図1に示されるとおり、参考例3と実施例24とで似通っている。
【0413】
本発明のコンジュゲートは、血漿安定性が少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも20時間、少なくとも30時間、少なくとも40時間、または少なくとも50時間である。一実施形態では、コンジュゲートしていない生体分子と比べた血漿安定性の向上は、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、または75倍である。
【0414】
併用療法
本発明のコンジュゲートは、1種または複数の他の治療薬と同時またはその前もしく後に投与することができる。本発明のコンジュゲートは、他の薬剤と同じもしくは異なる投与経路で別々に投与してもよいし、または同じ医薬組成物にして一緒に投与してもよい。
【0415】
一実施形態では、本発明は、療法において同時に、別々に、または順次使用される併用型調製物として、前述の実施形態のいずれか1つのコンジュゲートまたは実施形態10および13に記載のとおりのコンジュゲートの混合物と、少なくとも1種の他の治療薬とを含む製品を提供する。一実施形態では、前記療法は、それを必要とする対象における、代謝性障害または疾患、2型真性糖尿病、肥満、異脂肪血症、グルコースレベルの上昇、インスリンレベルの上昇、および糖尿病性腎症の治療であって、治療有効量の本発明のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは塩を前記対象に投与することを含み、前記生体分子が、ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態である、治療である。
【0416】
併用型調製物として提供される製品には、前述の実施形態のいずれか1つのコンジュゲートと他の治療薬とを同じ医薬組成物中に一緒に含む組成物、または別個の形態の前述の実施形態のいずれか1つのコンジュゲートと他の治療薬とを、たとえばキットの形にしたものがある。
【0417】
一実施形態では、本発明は、前述の実施形態のいずれか1つのコンジュゲートまたは実施形態10もしくは13に従うコンジュゲートの混合物と、別の治療薬とを含む医薬組成物を提供する。場合により、医薬組成物は、上述のとおりの、薬学的に許容される医薬添加剤を含んでもよい。
【0418】
一実施形態では、本発明は、2種以上の別個の医薬組成物を含み、その少なくとも1種が、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートを含有する、キットを提供する。一実施形態では、キットは、容器、分割ボトル、分割ホイル包などの、前記組成物を別々に保持する手段を含む。そのようなキットの一例は、錠剤、カプセル剤などの包装に一般に使用されているような、ブリスターパックである。
【0419】
本発明のキットを使用すると、たとえば経口と皮下と非経口という異なる剤形を投与する、別個の組成物を異なる投与間隔で投与する、または別個の組成物の用量を互いに合わせて漸増することができる。服薬遵守を支援するために、本発明のキットは通常、投与の説明書を含む。本発明の併用療法では、本発明のコンジュゲートと他の治療薬は、同じまたは異なる製造業者によって製造および/または製剤されたものでよい。さらに本発明のコンジュゲートと他の治療薬は、(i)(たとえば、本発明のコンジュゲートと他の治療薬を含むキットの場合において)併用製品が医師に発売される前に、(ii)投与のすぐ前に医師自らによって(または医師の指導のもとで)、(iii)たとえば本発明のコンジュゲートと他の治療薬を順次投与する際に患者自らで、一緒にされて併用療法になる場合もある。
【0420】
本発明はまた、本明細書に記載する疾患または状態を治療するための、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートの使用であって、患者が別の治療薬による治療を前もって(たとえば24時間以内に)受けている、使用を提供する。本発明はまた、本明細書に記載する疾患または状態を治療するための、別の治療薬の使用であって、患者が前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートによる治療を前もって(たとえば24時間以内に)受けている、使用を提供する。
【0421】
第2の薬剤または治療と「組み合わせて」という用語は、本発明のコンジュゲート(たとえば、前述の実施形態のいずれか1つに従うコンジュゲートまたは本明細書に別な形で記載するコンジュゲート)の第2の薬剤または治療との共投与、最初の本発明の化合物に続いての第2の薬剤または治療の投与、および最初の第2の薬剤または治療に続いての本発明のコンジュゲートの投与を包含する。
【0422】
用語「第2の薬剤」および「共薬剤」は、互換的に使用され、本明細書に記載する疾患または障害、たとえば、代謝性障害または疾患、すなわち、2型真性糖尿病、肥満、膵炎、異脂肪血症、アルコール性および非アルコール性脂肪性肝疾患/脂肪性肝炎、および他の進行性肝疾患、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック症候群、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈心疾患、糖尿病合併症(限定はしないが、慢性腎臓病を含める)、ニューロパシー、胃不全麻痺、および他の代謝障害から選択される障害または疾患の症状を治療、予防、または軽減することが当分野で知られているいずれかの薬剤を包含する。
【0423】
一実施形態では、前記療法は、代謝性障害または疾患、すなわち、2型真性糖尿病、肥満、膵炎、異脂肪血症、アルコール性および非アルコール性脂肪性肝疾患/脂肪性肝炎、および他の進行性肝疾患、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック症候群、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈心疾患、糖尿病合併症(限定はしないが慢性腎臓病を含める)、ニューロパシー、胃不全麻痺、ならびに他の代謝性障害の、それを必要とする対象における治療であって、治療有効量の本発明のコンジュゲート、またはそのアミド、エステル、もしくは塩を前記対象に投与することを含み、前記生体分子が、ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態である、治療である。
【0424】
前記生体分子が、ヒト増殖分化因子15(GDF15)、その相同体、変異体、突然変異体、断片、および他の修飾形態である本発明のコンジュゲートと組み合わせる第2の薬剤の例としては、次のものが挙げられる。
1.抗糖尿病薬、たとえば、インスリン、インスリン誘導体および模倣物;スルホニル尿素(たとえば、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、トルブタミド、グリブリド、グリメピリド、グリピジド)などのインスリン分泌促進物質;グリブリドおよびAmaryl;メグリチニド、たとえばナテグリニドやレパグリニドなどの、インスリン分泌性スルホニル尿素受容体リガンド;(たとえばインスリン感作によって)インスリン作用を強化し、したがって末梢組織におけるグルコース利用を促進する、チアゾリジンジオン(たとえば、ロシグリタゾン(AVANDIA)、トログリタゾン(REZULIN)、ピオグリタゾン(ACTOS)、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン(netoglitazone)、トログリタゾン、エングリタゾン、シグリタゾン、アダグリタゾン(adaglitazone)、ダルグリタゾン;PTP−112などの、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害薬;トルセトラピブなどの、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害薬;SB−517955、SB−4195052、SB−216763、NN−57−05441、NN−57−05445などの、GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ3)阻害薬;GW−0791やAGN−194204などのRXRリガンド;T−1095などの、ナトリウム依存的グルコース共輸送体阻害薬;BAY R3401などのグリコーゲンホスホリラーゼA阻害薬;ビグアナイド、たとえば、メトホルミン、およびグルコース利用を促進し、肝臓のグルコース産生を低下させ、および/または腸管からのグルコース出力を低減する他の薬剤;α−グルコシダーゼ阻害薬、たとえば、アカルボース、ミギイトイ(migiitoi)、および炭水化物消化、したがって、腸からの吸収を緩慢にし、食後高血糖を減らす他の薬剤;GLP−1(グルカゴン様ペプチド1)、エキセンディン4などのGLP−1類似体およびGLP−1模倣物;ならびにビルダグリプチンなどのDPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害薬、
2.脂質低下薬、たとえば、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル補酵素A(HMG−CoA)還元酵素阻害薬、たとえば、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、およびリバスタチン(rivastatin);スクアレンシンターゼ阻害薬;FXR(ファルネソイドX受容体)およびLXR(肝臓X受容体)リガンド;コレスチラミンやコレセベラムなどの胆汁酸捕捉剤;フィブラート;ニコチン酸およびアスピリン、
3.抗肥満薬、たとえば、オーリスタットまたはリモナバント、フェンテルミン、トピラメート、クネキサ(qunexa)、ロカセリン(locaserin)、
4.降圧薬、たとえば、エタクリン酸、フロセミド、トルセミドなどのループ利尿薬;ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬;ジゴキシンなどの、Na−K−ATPアーゼ膜ポンプの阻害薬;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害薬;オマパトリラート、サンパトリラート(sampatrilat)、ファシドトリルなどのACE/NEP阻害薬;カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、バルサルタンなどのアンジオテンシンIIアンタゴニスト、特にバルサルタン;ジテキレン(ditekiren)、ザンキレン(zankiren)、テルラキレン(terlakiren)、アリスキレン、RO66−1132、Ro−66−1168などのレニン阻害薬;アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロールなどのβ−アドレナリン受容体遮断薬;ジゴキシン、ドブタミン、ミルリノンなどの強心薬(inotropic agent);アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬;アルドステロン受容体アンタゴニスト;ならびにアルドステロンシンターゼ阻害薬、
5.ペルオキシソーム増殖因子−活性化因子受容体のアゴニスト、たとえば、フェノフィブレート、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、テサグリタザル、BMS−298585、L−796449、特許出願国際公開第2004/103995号パンフレットに詳細に記載されている化合物、すなわち、実施例1〜35の化合物もしくは請求項21に詳細に挙げられている化合物、または特許出願国際公開第03/043985号パンフレットに詳細に記載されている化合物、すなわち、実施例1〜7の化合物もしくは請求項19に詳細に挙げられている化合物、特に、(R)−1−{4−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−オキサゾール−4−イルメトキシ]−ベンゼンスルホニル}−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸もしくはその塩、ならびに
6.Expert Opin Investig Drugs 2003, 12(4): 623-633、
図1〜7に記載されている詳細な抗糖尿病性化合物。
【0425】
さらに、本開示は、代謝を刺激するまたは食欲を低下させる薬剤、減量を促進するための改良された食事および/または運動レジメンなどの、減量を促進する薬剤および方法との併用療法を企図する。
【0426】
本発明の実施例
略語
ACN アセトニトリル
BEH エチレン架橋型ハイブリッド
BOC tert−ブチルオキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
DCM ジクロロメタン
DCC N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIC N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA N,N’−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP ジメチルアミノピリジン
DMF N,N’−ジメチルホルムアミド
DTT ジチオトレイトール
DOT 3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ESI エレクトロスプレーイオン化
FFA 蛍光フォーカスアッセイ
Fmoc フルオレニルメチルオキシカルボニルクロリド
HCTU: O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルホロホスフェート
HEP ヘプタン
HFIP ヘキサフルオロイソプロパノール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HRMS 高分解能質量分析
HOBT ヒドロキシベンゾトリアゾール
HS ヒト血清
LC/MS 液体クロマトグラフィー/質量分析
MS 質量分析
MW 分子量
MRT 平均滞留時間
NHS N−ヒドロキシスクシンイミド
NMM N−メチルモルホリン
NMR 核磁気共鳴
PEG ポリエチレングリコール
pE ピログルタミン酸
pbf 2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
PG: 保護基
PK 薬物動態
Pol ポリマー担体
QTOF: 四重極飛行時間質量分析計
Rt: 保持時間
RtまたはRT: 室温
Rpm: 1分当たりの回転数
Sc 皮下の
SFC 超臨界流体
SPPS 固相ペプチド合成
TBME メチルtert−ブチルエーテル
Trt トリチル
THF テトラヒドロフラン
TEA トリメチルアミン
TIS トリエチルシラン
t、s、quin、br、m、d(三重項、一重項、五重項、ブロード、多重項)
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
【0427】
合成:
【0428】
【表20-1】
[この文献は図面を表示できません]
【0429】
【表20-2】
[この文献は図面を表示できません]
【0430】
HPLC−分析方法F
− カラム:XBridge BEH300 C18(100×4.6分)、3μm;Part n°:186003612
− 溶離液A:水中0.1%TFA/溶離液B:ACN中0.1%TFA
− 流れ:1.0ml/分
− 温度:40℃
− 勾配:
【0431】
【表21】
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【0432】
UPLC−HRMS−分析方法G
− Waters Acquity UPLC(登録商標) BEH C18、1.7μm、2.1×50mm;Part n°:186002350
− 溶離液A:水中0.05%FA+3.75mMの酢酸アンモニウム;溶離液B:ACN中0.04%FA
− 流れ:1.0ml/分
− 温度:50℃
− 勾配:4.4分で2〜98%
【0433】
方法H:LC−MS法
− HPLC:移動相A:2%HFIP+0.1%TEA;移動相B:メタノール;
− 勾配:0分間95%のA、4分間:75%のA、8分間10%のA、8.1分間95%のA、10分間95%のA;
− 流量:250μl/分;
− カラム:Acquity UPLC BEH C18、1.7um、2.1×50mm(waters);
− カラム温度:75℃
− MS:QTOF(waters)ネガティブモード;
− ESI:2.9kv;昇温キャピラリー350℃;スプレーガス:600ml/分;電源温度:150℃
【0434】
方法I:LC−MS法:
− 移動相A:水+0.1%ギ酸
− 移動相B:アセトニトリル+0.1%ギ酸
− 勾配:0分間98%のA、0.06分間98%のA、1.76分間2%のA、2.06分間2%のA、2.16分間98%;流量:1ml/分;
− カラム:ACQUITY UPLC BEH C18、130Å、1.7μm、2.1mm×50mm;
− カラム温度:50℃
− 検出器:UV/Vis/CAD(荷電したエアロゾル検出器)
【0435】
UPLC HRMS方法J:
− カラム:Acquity BEH300 C4 1.7μm、2.1×50mm
− 溶離液A:水(0.1%TFA)
− 溶離液B:ACN(0.1%TFA)
− 流れ:0.5mL/分
− 温度:40℃
− 勾配:20%で0.5分保持、10分で80%ACNまでの勾配
【0436】
方法K:
− カラム:Waters Protein BEH C4カラム、300オングストローム、3.5um、4.6×100mm
− 移動相:A:水(0.05%TFA)B:ACN(0.05%TFA)
− 流れ:2mL/分
− 温度:40℃
− 勾配:1分間25%のBを保持、10分に25〜60%のACNの勾配、10.50分に95%のBまでの勾配および2分間の保持、次いで25%で2分間の平衡化。通算稼働時間は15分である。
− 質量分析計:Waters ZQ mass spec
− UPLC:カラム:BEH C4、300オングストローム、1.7um、2.1×50mm
【0437】
方法L:
− カラム:Proswift Monolith 4.6×50mm
− 移動相:A:水(0.1%ギ酸)B:ACN(0.1%ギ酸)
− 流れ:1mL/分
− 温度:50℃
− 勾配:0分間3%のB;2分で3〜80%のB;2.1分間10%のB;2.8分間95%のB;2.9分間3%のB
− 質量分析計:Qtof ESI 走査範囲100〜1900;Mass LynxソフトウェアパッケージのMax Ent 1によりデコンボリューションした
− UPLC:Waters Acquity
【0438】
【表22-1】
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【0439】
【表22-2】
[この文献は図面を表示できません]
【0440】
【表22-3】
[この文献は図面を表示できません]
【0441】
分析方法S:
− Xbridge C18カラム、3.5μM、3.0×3.0mm
− 溶離液:A:水+5mMの水酸化アンモニウム B:ACN
− 流量:2mL/分
− 勾配:0.0分間2%のB;1.70分で2%〜95%のB;2.00分間95%のB;2.10分間5%のB;
− 質量分析計:Single Quadrupole ESI
− HPLC:Agilent 1100シリーズ
− 温度:40C
【0442】
分析方法T:
【0443】
【表23】
[この文献は図面を表示できません]
【0444】
中間体1:ベンジル11−ブロモウンデカノエート
【0445】
【化35】
[この文献は図面を表示できません]
11−ブロモウンデカン酸(4g、15.08mmol)、ベンジルアルコール(1.875mL、18.10mmol)、およびDMAP(92mg、0.754mmol)を、N
2中にて、室温でDCMに溶解させた。EDC−HCl(4.34g、22.63mmol)を加え、反応液を17時間撹拌した。反応液を濃縮し、続いてEt
2O(150mL)で希釈した。混合物を水(30mL)で抽出し、水性相をEt
2O(150mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をフラッシュカラム(シリカ120g、0〜10%のEt
2O/石油エーテル)で精製して、中間体1を無色の液体(6.75g、定量的)として得た:LCMS法 方法A Rt=1.79分、M+H 355.2;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.18 - 1.36 (m, 10 H) 1.37 - 1.47 (m, 2 H) 1.64 (五重線, J=7.33 Hz, 2 H) 1.85 (dt, J=14.56, 7.06 Hz, 2 H) 2.35 (t, J=7.58 Hz, 2 H) 3.40 (t, J=6.88 Hz, 2 H) 5.11 (s, 2 H) 7.28 - 7.45 (m, 5 H).
【0446】
中間体2:トリベンジルウンデカン−1,1,11−トリカルボキシレート
【0447】
【化36】
[この文献は図面を表示できません]
NaH(113mg、2.83mmol)を、N2中にて、0℃で、DMF(6mL)に懸濁させた。マロン酸ジベンジル(0.704mL、2.82mmol)を、撹拌中の懸濁液に30分かけてゆっくり加えた。DMF(3mL)に溶解させた中間体1(903mg、2.54mmol)を加え、反応液を0℃で2.75時間撹拌させた後、室温に温め、終夜撹拌した。反応物をEt
2O(75mL)で希釈し、水(20mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出し、合わせた有機物をブライン(30mL)で洗浄した。有機物を、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。濃縮物をフラッシュカラム(シリカ80g、0〜10%のEtOAc/HEP)で精製して、70%の純度の無色の油状物(770mg、1.38mmol、34%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.41分、M+H 559.6。
【0448】
中間体3:トリベンジルドコサン−1,11,11−トリカルボキシレート
【0449】
【化37】
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DMF(2mL)中NaH(66.1mg、1.65mmol)の懸濁液に、0℃で、N2中にて、DMF(4mL)中中間体2(770mg、1.38mmol)を加えた。35分後に、DMF(2mL)中1−ブロモウンデカン(0.338mL、1.52mmol)の溶液を反応液に加え、これを25分間撹拌した後に室温に温めた。反応液を2日間撹拌した。反応液をEt
2O(75mL)で希釈し、10%LiCl(25mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残渣のフラッシュカラム(シリカ80g、0〜10%のEtOAc/HEP)による精製によって、中間体3を無色の油状物(590mg、0.827mmol、33%)として得た:LCMS法 方法B Rt=1.89分、M+Na 735.5;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.87 - 0.95 (m, 3 H) 1.07 (br. s., 4 H) 1.14 - 1.36 (m, 28 H) 1.66 (五重線, J=7.43 Hz, 2 H) 1.85 - 1.95 (m, 4 H) 2.37 (t, J=7.58 Hz, 2 H) 5.12 (s, 4 H) 5.14 (s, 2 H) 7.27 (d, J=2.32 Hz, 1 H) 7.28 - 7.43 (m, 14 H).
【0450】
中間体4:ドコサン−1,11,11−トリカルボン酸
【0451】
【化38】
[この文献は図面を表示できません]
THF(12mL)に溶解させた中間体3(590mg、0.827mmol)を、THF(8mL)中10%の炭素担持Pdの懸濁液と合わせた。懸濁液を撹拌し、バルーンにより水素雰囲気下に置いた。1時間後、反応液をメンブレンフィルターに通し、固体をEtOAcですすいだ。濾液を蒸発させ、表題化合物を無色の油状物(353mg、0.798mmol、96%)として得た:LCMS法 方法B Rt=1.16分、M+H 443.5;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.77 - 0.84 (m, 3 H) 1.06 - 1.33 (m, 32 H) 1.59 (五重線, J=7.18 Hz, 2 H) 1.83 - 1.92 (m, 4 H) 2.32 (t, J=7.03 Hz, 2 H).
【0452】
中間体5:2−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)−2−ウンデシルトリデカン二酸
【0453】
【化39】
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DCM(1.57mL)中DCC(126mg、0.610mmol)の溶液を、N
2中にて、DCM(5mL)およびTHF(5mL)中中間体4およびN−ヒドロキシスクシンイミドの溶液に加えた。3.5時間後、溶媒を蒸発させ、残渣を超臨界流体クロマトグラフィー(SFC;Princeton 2−エチル−ピリジン、20×150mm、20〜30%のMeOH/CO
2)によって精製して、表題化合物を無色の油状物(138mg、0.256mmol、50%)として得た:LCMS法 B Rt=1.21分、M+H 540.5;
1H NMR (600 MHz, アセトニトリル-d3) δ ppm 0.91 (t, J=7.20 Hz, 3 H) 1.22 - 1.42 (m, 34 H) 1.57 (五重線, J=7.34 Hz, 2 H) 1.93 - 1.96 (m, 2 H) 2.28 (t, J=7.47 Hz, 2 H) 2.79 (br. d, J=6.30 Hz, 4 H).
【0454】
中間体6および6A:2−(アジド−PEG23−カルバモイル)−2−ウンデシルトリデカン二酸構築物(6)および12−(アジド−PEG23−カルバモイル)トリコサノン酸構築物(6A)
【0455】
【化40】
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中間体5(36mg、0.066mmol)およびアジド−dPEG23−NH
2(Quanta Biodesign:73mg、0.066mmol)をTHF(1.5mL)中で合わせ、シェーカープレート上で15分間混合した後、DIPEA(17μL、0.10mmol)を加えた。反応液をシェーカープレート上に終夜放置した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm、55〜80%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、中間体6(39mg、0.025mmol、38%)および中間体6a(20mg、0.013mmol、20%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.11分、[M+2H]
+2 763.4;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.86 - 0.93 (m, 3 H) 1.10 - 1.19 (m, 2 H) 1.20 - 1.29 (m, 23 H) 1.32 (br. s., 7 H) 1.58 - 1.69 (m, 2 H) 1.69 - 1.79 (m, 2 H) 1.96 - 2.10 (m, 2 H) 2.35 (t, J=7.15 Hz, 2 H) 3.41 (t, J=5.07 Hz, 2 H) 3.51 - 3.57 (m, 2 H) 3.58 - 3.62 (m, 2 H) 3.62 - 3.73 (m, 90 H) 7.46 (br. s., 1 H);
LCMS 方法B Rt=1.23分、[M+2]
+2 740.9;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.83 - 0.96 (m, 3 H) 1.27 (br. s., 25 H) 1.29 - 1.37 (m, 7 H) 1.37 - 1.46 (m, 2 H) 1.53 - 1.73 (m, 4 H) 2.34 (t, J=7.21 Hz, 2 H) 3.41 (t, J=5.07 Hz, 2 H) 3.44 - 3.52 (m, 2 H) 3.55 - 3.60 (m, 2 H) 3.60 - 3.74 (m, 90 H) 6.19 - 6.30 (m, 1 H).
【0456】
あるいは、構築物6Aは、以下の手順に従って得られる:THF(1mL)中中間体5(48mg、0.042mmol)の溶液を、アジド−PEG23−アミン(Quanta Biodesign カタログ番号10525)(46mg、0.042mmol)を入れたバイアルに加えた。反応液を20分間撹拌した後、DIPEA(11μL、0.063mmol)を加え、次いで終夜維持した。アジド−PEG23−アミン(23mg、0.021mmol)およびDIPEA(5μL、0.029mmol)を加え、反応液をもう1日撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Xbridge C18 30×50mm、10〜30%のACN/5mMのNH4OH)によって精製した。画分の凍結乾燥により、生成物の混合物が得られた。材料を、HPLC(Sunfire C18 30×50mm、45〜70%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、中間体6A(30mg、0.020mmol、48%)を得た:LCMS法 B Rt=0.81分、[M+H+H
3O]
+2 764.5;
1H NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3)δ ppm 1.30 (br. s., 28 H) 1.40 - 1.50 (m, 2 H) 1.50 - 1.62 (m, 6 H) 2.14 (t, J=7.52 Hz, 2 H) 2.23 - 2.35 (m, 3 H) 3.32 (q, J=5.58 Hz, 2 H) 3.37 - 3.43 (m, 2 H) 3.47 - 3.52 (m, 2 H) 3.53 - 3.68 (m, 90 H) 6.54 (br. s., 1 H).
【0457】
中間体7:(((11−ブロモウンデシル)オキシ)メタントリイル)トリベンゼン
【0458】
【化41】
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トリチルクロリド(2.49g、8.92mmol)、11−ブロモウンデカン−1−オール(2.00g、7.96mmol)、およびDMAP(10mg、0.080mmol)を、N
2中にて、DCM(16mL)に溶解させた。撹拌しながら、DIPEA(1.39mL、7.96mmol)を加え、反応液を7日間維持した。反応液を、DCM(20mL)と水(10mL)の間に分配した。有機相を水(20mL)で抽出し、MgSO
4で乾燥させ、濃縮した。濃縮物を、フラッシュカラム(シリカ 120g、0〜6%のEtOAc/HEP)によって精製して、中間体7(2.50g、5.07mmol、64%)を無色の油状物として得た:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.19 - 1.49 (m, 14 H) 1.58 - 1.69 (m, 2 H) 1.79 (dt, J=14.50, 7.00 Hz, 1 H) 1.87 (dt, J=14.55, 7.03 Hz, 1 H) 3.07 (t, J=6.66 Hz, 2 H) 3.43 (t, J=6.85 Hz, 1 H) 3.55 (t, J=6.79 Hz, 1 H) 7.18 - 7.36 (m, 10 H) 7.42 - 7.52 (m, 5 H).
【0459】
中間体8:ジベンジル2−(11−(トリチルオキシ)ウンデシル)マロネート
【0460】
【化42】
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NaH(113mg、2.83mmol)を、0℃で、N2中にて、DMF(6mL)に懸濁させた。マロン酸ジベンジルを、撹拌した懸濁液にゆっくり加えた。30分後、DMF(3mL)中中間体7(1.26g、2.54mmol)の溶液を加えた。撹拌の15分後、得られた混合物を室温に温めた。3日後、反応液をEt
2O(75mL)で希釈し、水(40mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、濃縮した。濃縮物をフラッシュカラム(シリカ80g、0〜10%のEtOAc/HEP)によって精製して、表題化合物を無色の油状物(815mg、1.17mmol、41%)として得た:HPLC 方法B Rt=1.68分;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.16 - 1.40 (m, 16 H) 1.58 - 1.69 (m, 2 H) 1.94 (q, J=7.38 Hz, 2 H) 3.06 (t, J=6.66 Hz, 2 H) 3.45 (t, J=7.52 Hz, 1 H) 5.16 (s, 4 H) 7.21 - 7.28 (m, 3 H) 7.28 - 7.39 (m, 16 H) 7.42 - 7.51 (m, 6 H).
【0461】
中間体9:トリベンジル22−(トリチルオキシ)ドコサン−1,11,11−トリカルボキシレート
【0462】
【化43】
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DMF(2mL)中中間体8(815mg、1.17mmol)の溶液に、N
2中にて、0℃で、DMF(2mL)中NaH(56mg、1.40mmol)の懸濁液を加えた。混合物を1時間撹拌した。DMF(2mL)中ベンジル11−ブロモウンデカン酸(457mg、1.29mmol)を反応液に加えた。添加の20分後に、反応液を室温に温め、終夜撹拌した。反応液をEt
2O(75mL)で希釈し、水(25mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出し、有機物を合わせた。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、蒸発させた。残渣をフラッシュカラム(シリカ 40g、0〜10%のEtOAc/HEP)によって精製して、表題化合物を無色の油状物(780mg、0.803mmol、69%)として得た:
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.99 - 1.14 (m, 4 H) 1.15 - 1.41 (m, 26 H) 1.58 - 1.71 (m, 4 H) 1.82 - 1.96 (m, 4 H) 2.37 (t, J=7.52 Hz, 2 H) 3.06 (t, J=6.66 Hz, 2 H) 5.12 (s, 4 H) 5.14 (s, 2 H) 7.28 (s, 24 H) 7.42 - 7.52 (m, 6 H).
【0463】
中間体10:22−(トリチルオキシ)ドコサン−1,11,11−トリカルボン酸
【0464】
【化44】
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THF(2.5mL)中10%の炭素担持Pd(11mg、0.010mmol)の懸濁液を、THF(2.5mL)中中間体9(200mg、0.206mmol)の溶液に加えた。撹拌した懸濁液を、バルーンにより水素中に置いた。2.25時間後、反応液をメンブレンフィルターに通し、固体をEtOAcですすいだ。濾液を蒸発させ、中間体10(150mg、定量的)を得た:
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.04 - 1.33 (m, 30 H) 1.45 - 1.62 (m, 4 H) 1.76 - 1.91 (m, 4 H) 2.21 - 2.36 (m, 2 H) 2.97 (t, J=6.60 Hz, 2 H) 7.06 - 7.18 (m, 4 H) 7.19 - 7.24 (m, 5 H) 7.33 - 7.50 (m, 6 H).
【0465】
中間体11:2−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)−2−(11−トリチルオキシ)ウンデシル)トリデカン二酸(11)。
【0466】
【化45】
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中間体10(150mg、0.214mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(25mg、0.214mmol)をDCM(4mL)中で合わせた。DCM(0.61mL)に溶解させたDCC(49mg、0.235mmol)を加え、反応液を室温で7時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm;65〜95%のACN/水+0.1%TFA)により、続いてSFC(Princeton 2−エチルピリジンカラム 20×100mm、25〜35%のMeOH/CO2)によって精製して、中間体11(34mg、0.043mmol、20%)を無色の油状物として得た:LCMS 方法B Rt=1.47分、M−CO
2H 752.7;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.13 - 1.42 (m, 30 H) 1.56 - 1.73 (m, 4 H) 1.94 - 2.14 (m, 4 H) 2.37 (t, J=7.21 Hz, 2 H) 2.83 (br. s., 4 H) 3.06 (t, J=6.66 Hz, 2 H) 7.15 - 7.28 (m, 3 H) 7.29 - 7.36 (m, 6 H) 7.41 - 7.50 (m, 6 H).
【0467】
中間体12:2−((アジド−PEG23)カルバモイル)−2−(11−ヒドロキシウンデシル)トリデカン二酸構築物
【0468】
【化46】
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THF(1.5mL)中アジド−dPEG23−アミン(Quanta Biodesign)42mg、0.038mmol)を、N
2中にて、中間体11(34mg、0.043mmol)と合わせた。反応液をシェーカープレート上に置き、20分間撹拌した。DIPEA(7.44μL、0.043mmol)を加え、反応液を2時間撹拌した。DIPEA(4μL、0.023mmol)を加え、反応液を終夜維持した。溶媒を蒸発させ、残渣をDCM(3mL)およびTFA(0.5mL)中に溶かした。溶液を1時間撹拌し、この時点で、溶媒を取り除いた。残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm、45〜70%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、中間体12(4mg、1.8μmol、4.2%)を得た:LCMS 方法B Rt=0.75分、[M+2H]
+2 771.4;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.05 - 1.39 (m, 30 H) 1.52 - 1.82 (m, 6 H) 1.97 - 2.09 (m, 2 H) 2.35 (t, J=7.21 Hz, 2 H) 3.41 (t, J=5.07 Hz, 2 H) 3.51 - 3.63 (m, 6 H) 3.63 - 3.75 (m, 90 H) 4.36 (t, J=6.72 Hz, 1 H) 7.49 - 7.65 (m, 1 H).
【0469】
中間体13:13−(ベンジルオキシ)−12−((ベンジルオキシ)カルボニル)−13−オキソトリデカン酸
【0470】
【化47】
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DMF(3mL)中マロン酸ジベンジル(0.88mL、3.52mmol)を、N
2中にて、0℃で、NaH(274mg、6.86mmol)の懸濁液にゆっくり加えた。混合物を1.5時間撹拌した後、室温に温めた。DMF(3mL)中11−ブロモウンデカン酸(933mg、3.52mmol)を加え、反応を終夜行わせた。反応液を3時間で80℃まで加熱した後、冷却した。反応液をEtOAc(50mL)およびEt
2O(50mL)で希釈し、1MのHCl(25mL)で抽出した。水性相をEtOAc/Et
2O(100mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残渣をフラッシュカラム(C18 50g 30〜100%のACN/水+0.1TFA)によって精製して、中間体13(315mg、0.672mmol、19%)を白色の粉末として得た:LCMS 方法B Rt=1.05分、M+H 469.5。
【0471】
中間体14:23−(ベンジルオキシ)−12,12−ビス((ベンジルオキシ)カルボニル)−23−オキソトリコサン酸
【0472】
【化48】
[この文献は図面を表示できません]
NaH(54mg、1.34mmol)を、0℃で、N
2中にて、DMF(1mL)に懸濁した。混合物に、DMF(3mL)中中間体13(315mg、0.672mmol)を液滴方式で加えた。反応液を1時間撹拌した後、DMF(1mL)中中間体1(239mg、0.672mmol)を加えた。反応液を、0℃で、さらに45分間維持した後、室温に温めた。反応液を終夜撹拌した。反応液を1:1のEt
2OとEtOAc(75mL)で希釈し、1MのHCl(20mL)で抽出した。水性相を1:1のEt
2OとEtOAc(75mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、蒸発させた。得られた残渣のHPLC(Xbridge C18 30×50mm、45〜70%のACN/水+5mMのNH4OH)による精製により、表題化合物(132mg、0.178mmol、26%)を得た:LCMS法 B;Rt=1.53分、M−H 741.8。
【0473】
中間体15:1,11,11−トリベンジル21−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ヘニコサン−1,11,11,21−テトラカルボキシレート
【0474】
【化49】
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DCM(1mL)中DCC(44mg、0.213mmol)を、DCM(2.5mL)中中間体14(132mg、0.178mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(20mg、0.178mmol)の溶液に加えた。反応液を、シェーカープレート上で、17時間撹拌した。反応液を濾過し、固体をDCMですすいだ。濾液を濃縮し、フラッシュカラム(シリカ 12g、0〜40%のEtOAc/HEP)によって精製して、中間体15(107mg、0.127mmol、72%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.53分、M+Na 862.8。
【0475】
中間体16:22−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)−22−オキソドコサン−1,11,11−トリカルボン酸
【0476】
【化50】
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THF(2.5mL)中中間体15(107mg、0.127mmol)の溶液に、THF(2.5mL)中10%の炭素担持Pdの懸濁液を加えた。混合物を、水素雰囲気下に1.5時間置いた。反応液をメンブレンフィルターに通し、固体をDCMおよびTHFで洗浄した。濾液を蒸発させて、表題化合物を含有する無色の油状物(95mg、定量的)を得た:LCMS 方法B Rt=0.65分、M+H 570.5。
【0477】
中間体17:2−(11−(アジド−PEG23−アミノ)−11−オキソウンデシル)トリデカン二酸構築物
【0478】
【化51】
[この文献は図面を表示できません]
THF(1mL)中中間体16(48mg、0.042mmol)の溶液を、アジド−dPEG23−アミン(Quanta Biodesign:46mg、0.042mmol)を入れたバイアルに加えた。反応液を20分間撹拌した後、DIPEA(11μL、0.063mmol)を加え、次いで、終夜維持した。アジド−PEG23−アミン(23mg、0.021mmol)およびDIPEA(5μL、0.029mmol)を加え、反応液をもう1日撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Xbridge C18 30×50mm、10〜30%のACN/5mMのNH4OH)によって精製した。画分の凍結乾燥により、生成物の混合物が得られた。材料を、HPLC(Sunfire C18 30×50mm、45〜70%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、表題の中間体17(30mg、0.020mmol、48%)を得た:LCMS SQ4 Rt=0.81分、[M+H+H
3O]
+2 764.5;
1H NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3) δ ppm 1.30 (br. s., 28 H) 1.40 - 1.50 (m, 2 H) 1.50 - 1.62 (m, 6 H) 2.14 (t, J=7.52 Hz, 2 H) 2.23 - 2.35 (m, 3 H) 3.32 (q, J=5.58 Hz, 2 H) 3.37 - 3.43 (m, 2 H) 3.47 - 3.52 (m, 2 H) 3.53 - 3.68 (m, 90 H) 6.54 (br. s., 1 H).
【0479】
中間体18:テトラベンジルヘニコサン−1,11,11,21−テトラカルボキシレート
【0480】
【化52】
[この文献は図面を表示できません]
DMF(2mL)中NaH(48mg、1.21mmol)の懸濁液に、0℃で、N
2中にて、DMF(2mL)中中間体2(337mg、0.603mmol)をゆっくり加えた。混合物を15分間撹拌した後、DMF(2mL)中中間体1(429mg、1.21mmol)を加えた。反応液を0℃で20分間撹拌した後、室温に温めた。反応液を、室温で、撹拌しながら、3日間維持した。反応液をEt
2O(75mL)で希釈し、水(20mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、蒸発させた。残渣をフラッシュカラム(シリカ 24g、0〜15%のEtOAc/HEP)によって精製して、表題化合物(315mg、0.378mmol、63%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.70分、M+Na 855.8;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.95 - 1.13 (m, 4 H) 1.13 - 1.40 (m, 24 H) 1.59 - 1.72 (m, 4 H) 1.82 - 1.95 (m, 4 H) 2.37 (t, J=7.52 Hz, 4 H) 5.12 (s, 4 H) 5.14 (s, 4 H) 7.14 - 7.44 (m, 20 H).
【0481】
中間体19:ヘニコサン−1,11,11,21−テトラカルボン酸
【0482】
【化53】
[この文献は図面を表示できません]
THF(4mL)中10%の炭素担持Pd(20mg、0.019mmol)の懸濁液を、THF(6mL)中中間体18(315mg、0.378mmol)の溶液に加え、反応液を水素雰囲気下に2時間置いた。メンブレンフィルターを使用して固体を取り出し、EtOAcで洗浄した。濾液を蒸発させて、中間体19(179mg、定量的)を白色の固体として得た:LCMS 方法A Rt=1.24分、M+H 473.4;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.99 - 1.15 (m, 4 H) 1.24 (br. s., 24 H) 1.48 (五重線, J=6.94 Hz, 4 H) 1.62 - 1.76 (m, 4 H) 2.18 (t, J=7.34 Hz, 4 H) 12.23 (br. s, 4 H).
【0483】
中間体20:11−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)ヘニコサン−1,11,21−トリカルボン酸
【0484】
【化54】
[この文献は図面を表示できません]
N−ヒドロキシスクシンイミド(20mg、0.170mmol)および中間体19(90mg、0.190mmol)を、DCM(3mL)およびTHF(0.3mL)に溶解させた。DCM(0.5mL)中DCC(39mg、0.190mmol)の溶液を加え、反応液を終夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm;35〜60%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、表題化合物を白色の粉末(21mg、0.037mmol、19%)として得た:LCMS(方法C Rt=1.01分、M+H 570.3。
【0485】
中間体21および21a:11−((アジド−PEG23)カルバモイル)ヘニコサン−1,11,21−トリカルボン酸(21)および12−((アジド−PEG23)カルバモイル)トリコサン二酸(21a)
【0486】
【化55】
[この文献は図面を表示できません]
アジド−PEG23−アミン(41mg、0.037mmol)および中間体20(21mg、0.037mmol)をTHF(1mL)中で合わせ、10分間撹拌した。DIPEA(9.66μL、0.055mmol)を加え、反応液を終夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm、35〜60%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、中間体21(22mg、0.014mmol、38%)および21a(4mg、2.6μmol、7%)を得た:LCMS 方法B Rt=0.69分、M+H 1555.3;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.27 (br. s., 19 H) 1.29 - 1.41 (m, 9 H) 1.65 (五重線, J=7.12 Hz, 4 H) 1.78 (td, J=12.13, 4.22 Hz, 2 H) 1.95 - 2.08 (m, 2 H) 2.35 (t, J=7.21 Hz, 4 H) 3.41 (t, J=5.07 Hz, 2 H) 3.54 (q, J=5.05 Hz, 2 H) 3.58 - 3.77 (m, 92 H) 7.60 (t, J=4.95 Hz, 1 H);
LCMS 方法B Rt=0.78分、M−H 1509.3;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.18 (br. s., 19 H) 1.21 - 1.38 (m, 11 H) 1.43 - 1.63 (m, 6 H) 1.91 - 2.04 (m, 1 H) 2.26 (t, J=7.15 Hz, 4 H) 3.31 (t, J=5.07 Hz, 2 H) 3.40 (q, J=5.14 Hz, 2 H) 3.46 - 3.50 (m, 2 H) 3.51 - 3.69 (m, 90 H) 6.23 (t, J=5.01 Hz, 1 H).
【0487】
中間体22:ジベンジル2−ウンデシルマロネート
【0488】
【化56】
[この文献は図面を表示できません]
DMF(1.5mL)中マロン酸ジベンジル(0.88mL、3.52mmol)を、N2中にて、0℃で、DMF(6mL)中NaH(155mg、3.87mmol)の懸濁液に滴下添加した。混合物を30分間撹拌した後、DMF(1.5mL)中1−ブロモウンデカン(0.785mL、3.52mmol)を反応液に加えた。反応液を室温に温め、5日間撹拌した。反応液をEt
2O(75mL)で希釈し、水(20mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、蒸発させた。残渣をフラッシュカラム(シリカ 80g、0〜10%のEtOAc/HEP)によって精製して、表題化合物(974mg、2.22mmol、63%)を無色の油状物として得た:LCMS 方法B Rt=1.55分、M+H 439.5。
【0489】
中間体23:2−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)−2−ウンデシルトリデカン酸
【0490】
【化57】
[この文献は図面を表示できません]
DMF(1mL)中ジベンジル2−ウンデシルマロネート(中間体22:400mg、0.912mmol)を、N2中にて、0℃で、DMF(2mL)中NaH(44mg、1.09mmol)の懸濁液に滴下添加した。混合物を45分間撹拌した後、DMF(1mL)中1−ブロモウンデカン(0.285mL、1.28mmol)を反応液に加えた。反応液を室温に温め、1日撹拌した。反応液をEt
2O(75mL)で希釈し、水(20mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、蒸発させた。残渣をフラッシュカラム(シリカ 40g、0〜5%のEtOAc/HEP)によって精製して、無色の油状物(412mg)を得た。油状物をTHF/MeOHに溶解させ、10%Pd/Cカートリッジを備えたThales Nano H−Cube(1mL/分、2バール H2、22C)を通した。流出物を集め、蒸発させて、ワックス状の固体(272mg)を得た。ワックス状の固体を3:1のDCM/THFに溶解させ、油状物に濃縮した。油状物を、N
2中にて、DCM(6mL)に再度溶解させ、N−ヒドロキシスクシンイミド(68mg)、続いてDCM(3mL)中DCC(136mg)を加えた。反応物を終日撹拌した。反応液を濾過し、濾液を濃縮した。濃縮物をフラッシュカラム(C18 12g、25〜100%のACN/水+0.1%ギ酸)によって精製した。得られた材料を、超臨界流体クロマトグラフィー(Princeton 2−エチルピリジン 20×150mm;5〜15%のMeOH/CO2)によってさらに精製して、中間体23(37mg、0.073mmol、8%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.67分、M+NH
4 527.6;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.80 - 0.94 (m, 6 H) 1.18 - 1.42 (m, 36 H) 1.97 - 2.14 (m, 4 H) 2.87 (br. s., 4 H).
【0491】
中間体24:2−((アジド−PEG23)カルバモイル)−2−ウンデシルトリデカン酸
【0492】
【化58】
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THF(1mL)中中間体23(37mg、0.073mmol)の溶液を、アジド−dPEG23−アミン(Quanta Biodesign:80mg、0.073mmol)を入れたバイアルに加えた。溶液をシェーカープレート上で撹拌し、DIPEA(11μL、0.065mmol)を加えた。反応液を終夜撹拌した後、DIPEAの追加分(12μL、0.071mmol)を加え、反応を終夜行わせた。溶媒を蒸発させ、残渣を超臨界流体クロマトグラフィー(Princeton Amino 21×150mm;20〜30%のMeOH/CO2)によって精製して、表題化合物(45mg、0.030mmol、41%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.50分、[M+2H]
+2 748.1;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) σ ppm 0.90 (t, J=6.85 Hz, 6 H) 1.09 - 1.38 (m, 30 H) 1.58 (br. s., 12 H) 1.64 - 1.76 (m, 2 H) 1.98 - 2.16 (m, 2 H) 3.41 (t, J=5.14 Hz, 2 H) 3.46 - 3.64 (m, 5 H) 3.64 - 3.91 (m, 83 H).
【0493】
中間体25:ジ−tert−ブチル2−ウンデシルマロネート
【0494】
【化59】
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DMF(2mL)中ジ−tert−ブチルマロネート(1.0g、4.62mmol)を、N
2中にて、0℃で、DMF(5mL)中NaH(213mg、5.32mmol)の懸濁液に加えた。反応液を30分間撹拌した後、DMF(2mL)中1−ブロモウンデカンを加えた。加えた後、反応液を室温に温め、2日間撹拌した。反応液をEt
2O(75mL)で希釈し、水(25mL)で抽出した。水性相をEt
2O(75mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。濃縮物を、フラッシュカラム(シリカ 120g、0〜40%のEt
2O/石油エーテル)によって精製して、中間体25(0.998g、2.69mmol、58%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.64分、M+Na 393.5;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.85 - 0.94 (m, 3 H) 1.24 - 1.36 (m, 18 H) 1.41 - 1.52 (m, 18 H) 1.74 - 1.86 (m, 2 H) 3.13 (t, J=7.58 Hz, 1 H).
【0495】
中間体26:1−ベンジル11,11−ジ−tert−ブチルドコサン−1,11,11−トリカルボキシレート
【0496】
【化60】
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表題化合物を、出発材料として中間体25を使用して、中間体9と同様の方法で合成し、無色の油状物(980mg、1.52mmol、66%)を得た:
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.89 (t, J=6.91 Hz, 3 H) 1.06 - 1.20 (m, 4 H) 1.20 - 1.35 (m, 28 H) 1.45 (s, 18 H) 1.58 - 1.70 (m, 2 H) 1.72 - 1.83 (m, 4 H) 2.36 (t, J=7.52 Hz, 2 H) 5.12 (s, 2 H) 7.30 - 7.45 (m, 5 H).
【0497】
中間体27:12,12−ビス(tert−ブトキシカルボニル)トリコサン酸
【0498】
【化61】
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中間体26を使用して、表題化合物(472mg、0.851mmol、100%)を、中間体19と同様の方法で合成した:LCMS 方法B Rt=1.76分、M−H 553.6;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.84 - 0.95 (m, 3 H) 1.07 - 1.21 (m, 4 H) 1.21 - 1.40 (m, 28 H) 1.46 (s, 18 H) 1.58 - 1.70 (m, 2 H) 1.72 - 1.84 (m, 4 H) 2.37 (t, J=7.46 Hz, 2 H).
【0499】
中間体28:11,11−ジ−tert−ブチル1−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ドコサン−1,11,11−トリカルボキシレート
【0500】
【化62】
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中間体27(200mg、0.360mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(42mg、0.360mmol)をDCM(3mL)に溶解させた。DCM(1.6mL)中DCC(89mg、0.433mmol)の溶液を加え、反応液を4.5時間撹拌した。反応液を濾過し、濾液を濃縮した。濃縮物をフラッシュカラム(シリカ 24g、0〜40%のEtOAc/HEP)によって精製して、表題化合物を無色の油状物(70mg、0.107mmol、30%)として得た:LCMS 方法B Rt=1.74分、M+Na 674.7。
【0501】
中間体29および29A:2−(11−((アジド−PEG23)−アミノ)−11−オキソウンデシル)−2−ウンデシルマロン酸(29)および13−((アジド−PEG23)−アミノ)−13−オキソ−2−ウンデシルトリデカン酸(29A)
【0502】
【化63】
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THF(1mL)中中間体28(35mg、0.054mmol)の溶液を、アジド−PEG23−アミン(59mg、0.054mmol)を入れたバイアルに加えた。DIPEA(14μL、0.081mmol)を加え、反応液を終夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をDCM(1mL)およびTFA(0.2mL)に再度溶解させた。反応液を1.25時間撹拌した後、溶媒を蒸発させた。残渣を、HPLC(Sunfire 30×50mm C18、55〜80%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、得られた材料をDCM(4mL)およびTFA(2mL)中に再度溶解させ、1.5時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を、HPLC(Sunfire 30×50mm C18、55〜80%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、中間体29(28mg、0.016mmol、29%)および中間体29A(1mg、0.6μmol、1%)を得た:LCMS 方法B Rt=1.08分、[M+H+H
3O]
+2 771.5;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) σ ppm 0.90 (t, J=6.72 Hz, 3 H) 1.26 (br. s., 24 H) 1.32 - 1.41 (m, 8 H) 1.62 (五重線, J=7.64 Hz, 2 H) 1.88 - 2.01 (m, 4 H) 2.31 (t, J=7.70 Hz, 2 H) 3.41 (t, J=5.07 Hz, 2 H) 3.46 - 3.56 (m, 3 H) 3.57 - 3.90 (m, 91 H);
LCMS 方法B Rt=1.29分、[M+2H]
+2 741.1。
【0503】
中間体30:22−((アジド−PEG23)アミノ)−22−オキソドコサン−1,11,11−トリカルボン酸
【0504】
【化64】
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THF(1mL)中中間体16(58mg、0.063mmol)の溶液を、アジド−PEG23−アミン(70mg、0.063mmol)を入れたバイアルに加えた。DIPEA(17μL、0.095mmol)を加え、反応液をシェーカープレート上で終夜撹拌した。反応液を濃縮し、HPLC(Sunfire C18 30×50mm、35〜60%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、中間体30(57mg、0.036mmol、57%)をワックス状の白色の固体として得た:LCMS 方法B Rt=0.62分、M+H 1555.4;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.28 (br. s., 18 H) 1.30 - 1.40 (m, 10 H) 1.63 (m, J=7.10, 7.10, 7.10, 7.10, 7.10 Hz, 4 H) 1.88 - 2.02 (m, 4 H) 2.28 (t, J=8.10 Hz, 2 H) 2.35 (t, J=7.40 Hz, 2 H) 3.41 (t, J=5.07 Hz, 2 H) 3.50 (dt, J=9.20, 4.39 Hz, 2 H) 3.57 - 3.63 (m, 2 H) 3.63 - 3.73 (m, 90 H)
【0505】
中間体31:1−ベンジル3−tert−ブチル2ウンデシルマロネート
【0506】
【化65】
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0℃で、N
2中にて、DMF(8mL)中NaH(160mg、4.0mmol)の懸濁液に、DMF(2mL)中ベンジルtert−ブチルマロネート(1.0g、4.0mmol)を加えた。混合物を50分間撹拌し、その後、DMF(2mL)中1−ブロモウンデカンを加えた。さらに1時間撹拌した後、反応液を室温に温めた。反応液を終夜維持した。Et
2O(100mL)および水(20mL)を反応液に分配して加えた。水性相をEt
2O(100mL)で抽出し、合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、残渣をフラッシュカラム(C18 12g、40〜100%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、表題化合物を無色の油状物(1.14g、2.82mmol、71%)として得た:LCMS方法A Rt=1.58分、M+Na 427.4;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.84 - 0.96 (m, 3 H) 1.28 (br. s, 12 H) 1.31 (m, J=3.90 Hz, 6 H) 1.41 (s, 9 H) 1.88 (q, J=7.38 Hz, 2 H) 3.29 (t, J=7.58 Hz, 1 H) 5.19 (q, J=12.27 Hz, 2 H) 7.30 - 7.42 (m, 5 H).
【0507】
あるいは、DMF中炭酸カリウム(2当量)の存在下で、1−ヨードウンデカン(1.2当量)を使用して、マロン酸tert−ブチルのアルキル化を実行させることができる。
【0508】
中間体32:1,11−ジベンジル11−tert−ブチルドコサン−1,11,11−トリカルボキシレート
【0509】
【化66】
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出発材料として中間体31(650mg、1.61mmol)を使用して、表題化合物を、中間体9と同様の方法で合成し、無色の油状物(823mg、1.21mmol、75%)を得た:
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.84 - 0.94 (m, 3 H) 1.12 (m, J=6.60 Hz, 4 H) 1.19 - 1.33 (m, 28 H) 1.35 (s, 9 H) 1.66 (五重線, J=7.40 Hz, 2 H) 1.85 (t, J=8.44 Hz, 4 H) 2.37 (t, J=7.52 Hz, 2 H) 5.14 (s, 2 H) 5.16 (s, 2 H) 7.30 - 7.42 (m, 10 H).
【0510】
中間体33:13−(ベンジルオキシ)−2−((ベンジルオキシ)カルボニル)−13−オキソ−2−ウンデシルトリデカン酸
【0511】
【化67】
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DCM(3mL)中中間体32(200mg、0.295mmol)の溶液に、TFA(0.6mL)を加え、反応液を室温で3時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をフラッシュカラム(シリカ 12g、0〜15%のEtOAc/HEP)によって精製して、表題化合物(177mg、0.284mmol、96%)を得た:
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.87 - 0.94 (m, 3 H) 0.94 - 1.05 (m, 2 H) 1.19 (br. s., 14 H) 1.23 - 1.37 (m, 16 H) 1.65 (五重線, J=7.40 Hz, 2 H) 1.78 - 1.91 (m, 2 H) 1.93 - 2.05 (m, 2 H) 2.37 (t, J=7.52 Hz, 2 H) 5.14 (s, 2 H) 5.27 (s, 2 H) 7.31 - 7.44 (m, 10 H).
【0512】
中間体34:1,11−ジベンジル11−(2,5−ジオキソシクロペンチル)ドコサン−1,11,11−トリカルボキシレート
【0513】
【化68】
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出発材料として中間体33(177mg、0.284mmol)を使用して、表題化合物を、中間体15と同様の方法で合成し、無色の油状物(153mg、0.213mmol、75%)を得た:
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.86 - 0.93 (m, 3 H) 1.12 - 1.21 (m, 2 H) 1.21 - 1.37 (m, 30 H) 1.66 (五重線, J=7.40 Hz, 2 H) 1.89 - 2.07 (m, 4 H) 2.37 (t, J=7.58 Hz, 2 H) 2.84 (br. s., 4 H) 5.13 (s, 2 H) 5.25 (s, 2 H) 7.30 - 7.47 (m, 10 H).
【0514】
中間体35:
【0515】
【化69】
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THF(1.5mL)およびDCM(1.5mL)中中間体34(145mg、0.201mmol)の溶液を、アミノ−PEG24−酸を入れたバイアルに加えた。DIPEA(88μL、0.504mmol)を加え、反応液をシェーカープレート上で15時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を超臨界流体クロマトグラフィー(Waters HILIC 20×150mm、15〜25%のMeOH/CO2)によって精製して、中間体35(151mg、0.086mmol、43%)を得た:LCMS方法D Rt=1.30分、[M+2H]+2 876.4;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.86 - 0.93 (m, 3 H) 0.93 - 1.04 (m, 2 H) 1.19 (br. s., 15 H) 1.23 - 1.37 (m, 15 H) 1.61 - 1.68 (m, 2 H) 1.78 (td, J=12.44, 4.34 Hz, 2 H) 1.92 - 2.05 (m, 2 H) 2.37 (t, J=7.58 Hz, 2 H) 2.62 (t, J=6.05 Hz, 2 H) 3.49 (dd, J=6.72, 2.32 Hz, 2 H) 3.52 - 3.59 (m, 2 H) 3.59 - 3.73 (m, 92 H) 3.80 (t, J=6.05 Hz, 2 H) 5.13 (s, 2 H) 5.18 (s, 2 H) 7.31 - 7.42 (m, 10 H) 8.09 (t, J=5.26 Hz, 1 H).
【0516】
中間体36:
【0517】
【化70】
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DCM(0.265mL)中DCC(22mg、0.103mmol)を、DCM(1.5mL)中中間体35(150mg、0.086mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミドの溶液に加えた。反応液を1.5時間撹拌した。さらなるTHF(0.5mL)中N−ヒドロキシスクシンイミド(10mg)およびDCM(0.265mL)中DCC(22mg)を加え、反応液を終夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をフラッシュカラム(シリカ 12、0〜5%のMeOH/DCM)によって精製して、中間体36(159mg、定量)を白色の固体として得た:LCMS方法B Rt=1.55分、[M+H
3O+H]
+2 933.9。
【0518】
中間体37:
【0519】
【化71】
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THF(5mL)中中間体36(159mg、0.086mmol)の溶液に、THF(1mL)中10%の炭素担持Pd(4.6mg、4.3μmol)の懸濁液を加えた。反応液を水素中に置き、40分間撹拌した。さらに炭素担持Pd(7mg、6.5μmol)を加え、水素中にてもう1時間撹拌した。反応液をメンブレンフィルターに通し、濾液を蒸発させた。残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm、45〜70% ACN/水+0.1%TFA)によって精製して、表題化合物(83mg、0.047mmol、54%)を得た:LCMS方法B Rt=1.03分、[M+2H]+2 835.2;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.84 - 0.94 (m, 3 H) 1.17 (br. s., 2 H) 1.21 - 1.39 (m, 30 H) 1.57 - 1.68 (m, 2 H) 1.69 - 1.80 (m, 2 H) 1.97 - 2.10 (m, 2 H) 2.34 (t, J=7.21 Hz, 2 H) 2.86 (s, 4 H) 2.92 (t, J=6.48 Hz, 2 H) 3.51 - 3.73 (m, 96 H) 3.87 (t, J=6.48 Hz, 2 H) 7.45 (t, J=4.46 Hz, 1 H)
【0520】
中間体38:11−ブロモウンデカ−1−イン
【0521】
【化72】
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DCM(10mL)中10−ウンデシン−1−オール(2.29mL、11.9mmol)および四臭化炭素(4.34g、13.1mmol)の溶液に、N2中にて、0℃で、トリフェニルホスフィン(3.43g、13.1mmol)を30分かけて滴下添加した。添加が完了したら、反応液を室温に温めた。1.5時間後、反応液を、撹拌中のシクロヘキサン(75mL)に注ぎ、沈殿を集めた。固体をシクロヘキサンで洗浄し、合わせた濾液を蒸発させた。残渣をフラッシュカラム(シリカ 80g、0〜10%のEtOAc/HEP)で精製して、表題化合物(1.75g、7.57mmol、64%)を得た:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.21 - 1.35 (m, 6 H) 1.35 - 1.48 (m, 4 H) 1.48 - 1.59 (m, 2 H) 1.80 - 1.91 (m, 2 H) 1.94 (t, J=2.63 Hz, 1 H) 2.19 (td, J=7.09, 2.69 Hz, 2 H) 3.41 (t, J=6.85 Hz, 2 H).
【0522】
中間体39:ジ−tert−ブチル2−(ウンデカ−10−イン−1−イル)マロネート
【0523】
【化73】
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マロン酸ジ−tert−ブチル(800mg、3.70mmol)を、0℃で、N
2中にて、DMF(9mL)に溶解させ、NaH(148mg、3.70mmol)を加えた。反応液を0℃で30分撹拌し、中間体38(770mg、3.33mmol)をゆっくり滴下添加し、黄色の溶液を得た。反応液を0℃で2時間撹拌し、次いで室温に温め、16時間撹拌した。混合物をEtOAc(75mL)に溶かし、H
2O(25mL)で洗浄した。水性層をEtOAc(75mL)で抽出し、合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過して、濃縮した。混合物を、フラッシュカラム(12gのシリカカートリッジ、0〜20%のEtOAc/ヘプタン)により2回精製して、画分を濃縮し、162.1mgの所望の生成物を無色の油状物(12%)として得た。LCMS(Waters Acquity UPLC BEH C18、130Å、1.7μm、2.1mm×50mm、50℃、溶媒名A:水+0.1%ギ酸、溶媒名B:アセトニトリル+0.1%ギ酸、2.20分かけて98%のB):R
t:1.37分、MS[M+H]実測値:366.0、計算値:366.535。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.29 (s, 10 H) 1.47 (s, 18 H) 1.52 (dd, J=14.78, 7.20 Hz, 3 H) 1.48 (d, J=1.26 Hz, 1 H) 1.75 - 1.83 (m, 2 H) 1.94 (t, J=2.65 Hz, 1 H) 2.18 (td, J=7.14, 2.65 Hz, 2 H) 3.11 (t, J=7.58 Hz, 1 H).
【0524】
中間体40:11,11−ジ−tert−ブチル1−エチルドコサ−21−イン−1,11,11−トリカルボキシレート
【0525】
【化74】
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中間体39(162.1mg、0.442mmol)を、0℃で、DMF(2mL)に溶解させ、NaH(21.23mg、0.531mmol)を加えた。反応液を0℃で15分間撹拌し、11−ブロモウンデカン酸エチル(143mg、0.486mmol)をゆっくり滴下添加した。反応液を室温に温め、16時間撹拌した。混合物をEtOAc(40mL)で希釈し、H
2O(20mL)で1回洗浄した。水性層をEtOAc(40mL)で1回抽出し、有機層を合わせ、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、透明の黄色の油状物を得た。サンプルを1mLのDCMに溶解させ、フラッシュカラム(12g シリカカラム、0〜20%のEtOAc/ヘプタン、15分)によって精製した。画分を合わせ、濃縮して、90.1mgの所望の生成物(35%)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.28 (br. s., 24 H) 1.45 (s, 18 H) 1.48 (s, 3 H) 1.53 (d, J=7.58 Hz, 3 H) 1.51 (s, 1 H) 1.64 (br. s., 1 H) 1.61 (d, J=7.33 Hz, 1 H) 1.77 (d, J=16.93 Hz, 2 H) 1.74 - 1.80 (m, 2 H) 1.94 (t, J=2.65 Hz, 1 H) 2.18 (td, J=7.07, 2.53 Hz, 2 H) 2.29 (t, J=7.58 Hz, 2 H) 4.13 (q, J=7.24 Hz, 2 H).
【0526】
中間体41:12,12−ビス(tert−ブトキシカルボニル)トリコス−22−イン酸
【0527】
【化75】
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tBuOH(1mL)中中間体40(21.7mg、0.037mmol)の溶液に、30℃で、N
2中にて、
tBuOH(2mL)中KOtBu(114mg、1.012mmol)の溶液を加えた。混合物を室温で撹拌し、TLC(1:1のEtOAc/ヘキサン、KMnO
4、還流)によってモニターした。3時間後に、出発材料を消費し、反応混合物を1MのHCl(20mL)で失活させ、EtOAc(25mL)で2回抽出した。有機層を合わせ、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、透明無色の油状物(18mg、87%)とした。材料を、さらに精製することなく次のステップに持ち越した。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.27 (br. s., 22 H) 1.44 (br. s., 18 H) 1.48 (s, 3 H) 1.52 (s, 3 H) 1.62 (br. s., 2 H) 1.77 (br. s., 4 H) 1.94 (br. s., 1 H) 2.18 (s, 2 H) 2.35 (s, 2 H).
【0528】
中間体42:ドコサ−21−イン−1,11,11−トリカルボン酸
【0529】
【化76】
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TFA(2mL)を中間体41(12mg、0.022mmol)に加え、反応液を室温で1時間撹拌した。混合物をDCM(10mL)で希釈し、2倍に濃縮し、褐色の油状物を得た。材料をEtOAc(10mL)に溶かし、H
2O(20mL)で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物とした。未精製材料を1mLのMeOHに溶解させ、MS起動式HPLC(Sunfire 30×50mm 5umカラム 0.1%TFA含有ACN/H2O 75ml/分、1.5ml注入、3.5分かけて45〜70%のACN)によって精製した:R
t=3.42分;MS[M+H+Na]実測値:461.00、計算値:461.597。画分をプールし、凍結乾燥して、5.3mgの表題化合物を56%の収率で得た。
【0530】
中間体43:2−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)−2−(ウンデカ−10−イン−1−イル)トリデカン二酸
【0531】
【化77】
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THF(0.5mL)中中間体42(5.3mg、0.012mmol)の溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミド(1.53mg、0.013mmol)を加えた。THF(0.5mL)中DCC(2.493mg、0.012mmol)の溶液を加え、混合物を、室温で、N
2中にて、4時間撹拌した。出発材料の変換が完了したことが、LCMSによって観察された。混合物を濃縮し、さらに精製することなく次のステップに移行した。LCMS(Sunfire C18 3.5μm 3.0mm×30mm、40℃、酸性溶離液A:水+0.05%のトリフルオロ酢酸、塩基性溶離液A:水+5mMの水酸化アンモニウム、溶離液B:ACN、2分かけて5〜95%):R
t=1.72分、MS[M+H+Na]実測値:558.0、計算値:558.67。
【0532】
中間体44:
【0533】
【化78】
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DCM(0.5mL)中中間体43(3.2mg、5.97μmol)の溶液に、DCM(0.5mL)およびDIPEA(2.09μL、0.012mmol)中アジド−dPEG23−アミン(Quanta Biodesign、7.88mg、7.17μmol)の溶液を加え、混合物を室温で16時間撹拌し、この時点で出発材料の変換がLCMSによって観察された。反応混合物を濃縮し、1mLのMeOHに溶解させ、MS起動式HPLC(Sunfire 30×50mm 5umカラム 0.1%TFA含有ACN/H2O 75ml/分、1.5ml注入、5分で55〜80%のACNの勾配、R
t=1.92分)によって精製し、画分をプールし、凍結乾燥して、1.7mgの表題化合物を19%の収率で得た。LCMS(Acquity BEH 1.7μm 2.1×50mm −50℃、溶媒名A:水+0.1%ギ酸、溶媒名B:アセトニトリル+0.1%ギ酸、2.20分かけて98%のB):R
t=1.89分、MS[M+H/2]実測値:760.0、計算値:759.5。
【0534】
中間体45:ドコサ−21−エン−1,11,11−トリカルボン酸
【0535】
【化79】
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11−ブロモ−デカ−1−インの代わりに11−ブロモ−デカ−1−エンを用いて、中間体39〜42の手順に従って、中間体45を調製する。
【0536】
中間体46:2−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)−2−(ウンデカ−10−エン−1−イル)トリデカン二酸
【0537】
【化80】
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DCM(2mL)中DCC(187mg、0.908mmol)を、DCM(7mL)およびTHF(0.7mL)中N−ヒドロキシスクシンイミド(99mg、0.862mmol)およびドコサ−21−エン−1,11,11−トリカルボン酸(中間体45:400mg、0.908mmol)の溶液に加えた。反応液を終夜撹拌した後、溶媒を蒸発させた。残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm;55〜80%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、表題化合物(155mg、0.288mmol、32%)を得た:LCMSによる 方法C Rt=1.51分、M+H 538.3;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 1.16 - 1.46 (m, 28 H) 1.60 - 1.87 (m, 3 H) 1.91 - 2.17 (m, 5 H) 2.38 (t, J=7.03 Hz, 2 H) 2.86 (br. s., 4 H) 3.68 (dd, J=11.25, 7.34 Hz, 1 H) 3.78 (dd, J=11.31, 5.20 Hz, 1 H) 3.99 - 4.10 (m, 1 H).
【0538】
中間体47および47A:
【0539】
【化81】
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アジド−dPEG23−アミン(Quanta Biodesign:164mg、0.149mmol)および中間体46(80mg、0.149mmol)をTHF(2.5mL)に溶解させた。DIPEA(39μL、0.233mmol)を加え、反応液を終夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm;45〜70%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、化合物47(97mg、0.061mmol、41%)および47A(32mg、0.021mmol、14%)を得た:LCMS 方法C Rt=1.35分、[M+2H]
+2 761.9;
1H NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3) δ ppm 1.05 - 1.18 (m, 3 H) 1.19 - 1.32 (m, 20 H) 1.36 (t, J=7.15 Hz, 1 H) 1.48 - 1.59 (m, 2 H) 1.65 - 1.75 (m, 2 H) 2.01 - 2.06 (m, 2 H) 2.25 (t, J=7.46 Hz, 2 H) 3.33 - 3.39 (m, 2 H) 3.39 - 3.44 (m, 2 H) 3.50 - 3.67 (m, 98 H) 4.84 - 4.95 (m, 1 H) 4.95 - 5.06 (m, 1 H) 5.83 (ddt, J=17.07, 10.29, 6.68, 6.68 Hz, 1 H) 7.31 (t, J=5.44 Hz, 1 H);
LCMS 方法C Rt=1.50分、[M+2H]
+2 739.9;
1H NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3) δ ppm 1.16 - 1.42 (m, 30 H) 1.42 - 1.63 (m, 5 H) 2.00 - 2.07 (m, 2 H) 2.22 - 2.28 (m, 2 H) 2.40 - 2.52 (m, 2 H) 3.25 - 3.33 (m, 2 H) 3.33 - 3.42 (m, 2 H) 3.42 - 3.50 (m, 2 H) 3.50 - 3.68 (m, 88 H) 4.86 - 5.06 (m, 2 H) 5.83 (ddt, J=17.04, 10.26, 6.71, 6.71 Hz, 1 H) 6.40 - 6.74 (m, 1 H).
【0540】
中間体48:2−ウンデシルマロン酸
【0541】
【化82】
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中間体22(290mg、0.661mmol)を使用して、表題化合物(185mg、定量的)を、中間体19と同様の方法で合成した:LCMS 方法B LCMS Rt=0.82分、M−H 257.3。
【0542】
中間体49:2−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)トリデカン酸
【0543】
【化83】
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DCC(122mg、0.592mmol)を、DCM(6mL)およびTHF(0.5mL)中中間体48(170mg、0.658mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(68mg、0.592mmol)の溶液に加えた。反応液を16時間撹拌した後、DCM(0.5mL)中DCC(30mg、0.145mmol)をさらに加えた。反応液をさらに2日間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をHPLC(Sunfire C18 30×50mm、45〜70%のACN/水+0.1%TFA)によって精製して、表題化合物を白色の粉末(46mg、0.129mg、20%)を得た:LCMS 方法B Rt=0.94分、M+H 356.3;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.89 (t, J=7.00 Hz, 3 H) 1.20 - 1.40 (m, 16 H) 1.43 - 1.55 (m, 2 H) 1.99 - 2.14 (m, 2 H) 2.86 (s, 4 H) 3.71 (t, J=7.46 Hz, 1 H).
【0544】
中間体50および50A:
【0545】
【化84】
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表題化合物を、中間体49(30mg、0.084mmol)から、50および50Aと同様の方法で合成し、中間体50(18mg、0.013mmol、16%)および中間体50A(5mg、4μmol、5%)を得た:LCMS 方法B Rt=0.85分、M+H 1340.3;
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 0.82 - 0.98 (m, 3 H) 1.20 - 1.36 (m, 16 H) 1.36 - 1.51 (m, 2 H) 1.83 - 2.02 (m, 1 H) 2.11 - 2.27 (m, 1 H) 2.33 (dd, J=11.80, 4.22 Hz, 1 H) 3.41 (t, J=5.14 Hz, 3 H) 3.49 (d, J=5.01 Hz, 1 H) 3.56 - 3.79 (m, 92 H);
LCMS 方法B Rt=0.96分、M+H 1296.3。
【0546】
中間体51〜57:GDF15タンパク質の変異体。
大腸菌(E.coli)細胞中でのヒトGDF−15タンパク質の発現
大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)Gold(Stratagene)およびRosetta(DE3)pLysS細胞(Novagen)を、それぞれ51〜56の構築物および構築物MAHA−(200−308)−hGDF15で形質転換し、pET26bベクターにクローニングした。形質転換した細胞を、OD600が1.5に到達するまで、最初は3ml、次いで50mlのLuria Broth(Bacto−Tryptone 10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 5/L、グルコース6g/L)中で抗生物質選択下で増殖させた。予備培養物を使用して、Terrific Broth培地(NH4SO4 1.2g/L、H2PO4 0.041g/L、K2HPO4 0.052g/L、Bacto−Tryptone 12g/L、酵母エキス 24g/L)で満たした2つの1L発酵槽に接種した。pHが7.1を超えて上昇したときに、1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の自動添加によって、培養物を誘導した。他の発酵パラメータは以下であった:温度=37℃;2NのNaOH/H2SO4の添加によってpH7.0+/−0.2に調整された;撹拌機の速度のカスケードでpO2>30%、空気流および酸素添加。誘導の5時間後、培養物を10℃に冷却し、細胞を遠心分離によって回収した。
【0547】
GDF15変異体の精製およびリフォールディング
a)封入体
目的のタンパク質を発現する組換え大腸菌(coli)のペレットを、50mMのNaH
2PO
4/150mMのNaCl/5mMのベンズアミジンHCl/5mMのDTT、pH8.0、4℃に再懸濁させ(5%w/v)、ホモジナイズし、Frenchプレス(800および80バール)を2回通して溶解させた。封入体(IB)を、4℃にて12,000rpmで60分間遠心分離することによって単離した。
【0548】
b)フォールディングされていない粗製タンパク質の精製
IBを、6Mのグアニジン/100mMのNaH
2PO
4/10mMのTris/20mMのβ−メルカプトエタノール pH8.0中に可溶化し(5%w/v)、室温で2時間撹拌した。デブリを12,000rpmでの遠心分離によって除去した。可溶化したIBをNi−NTA−Superflowでさらに精製した(Hisタグを有さない構築物は、高いヒスチジン含有量によりこの樹脂に同様に結合する)。6Mのグアニジン/100mMのNaH
2PO
4/10mMのTris/5mMのβ−メルカプトエタノール pH8.0でのベースライン洗浄後、結合した材料を、pH4.5に調整した同じ緩衝液で溶出させた。溶出液をpH8.0に調整し、100mMのDTTを加え、溶液を4℃で終夜撹拌した。次いで、トリフルオロ酢酸(TFA、水中10%の保存溶液)の添加によって、pHを2に調整し、水中0.1%のTFAで、溶液を1:1にさらに希釈した。粗製のタンパク質溶液を、50分で0〜50%のアセトニトリルの勾配を使用して、RP−HPLC(Poros)によりさらに精製した。画分を含有するGDF−15を、プールし、凍結乾燥させた。
【0549】
c)タンパク質のフォールディング
方法1:凍結乾燥した材料を100mMの酢酸中に2mg/mlで溶解させ、フォールディング緩衝液(100mMのCHES/1MのNaCl/30mMのCHAPS/5mMのGSH/0.5mMのGSSG/20%のDMSO、pH9.5、4℃)中で15〜20倍に希釈し、溶液を4℃で3日間穏やかに撹拌した。3日後に、3体積の100mM 酢酸を加え、溶液を限外濾過(5kDaカットオフ)によって約100〜200mlまで濃縮し、100mMの酢酸で10倍に希釈し、再濃縮した。リフォールディングされた材料を、50℃で作動する、Vydac C4カラムでの分取RP−HPLC(緩衝液A:水中0.1%のTFA、緩衝液B:アセトニトリル中0.05%のTFA)によってさらに精製した。ローディング後、カラムを15%の緩衝液Bで洗浄し、50分で15%のB〜65%のBの勾配で溶出した。目的のタンパク質を含有する集めた画分を、等体積の緩衝液Aで希釈し、凍結乾燥した。リフォールディング収率は、両方のタンパク質に対して約25%であった。
【0550】
方法2:フォールディング緩衝液:100mMのCHES、pH9.4、0.9Mのアルギニン、0.5MのNaCl、1mMのEDTA、2.5mMのGSH、1mMのGSSG(最終濃度)を用いた方法1に従うプロトコール。
【0551】
以下のGDF−15変異体を、上記手順に従って調製した。
【0552】
中間体51:M−(His)
6−hGDF15
MHHHH HHAR NGDHC PLGPG RCCRL HTVRA SLEDL GWADW VLSPR EVQVT MCIGA CPSQF RAANM HAQIK TSLHR LKPDT VPAPC CVPAS YNPMV LIQKT DTGVS LQTYD DLLAK DCHCI (配列番号1)。
LCMS:計算質量値:26462 実測質量値:26464
【0553】
中間体52:M−(His)
6−M−hGDF15
MHHHHHHMARNGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI (配列番号2)。
LCMS:計算質量値:26724 実測質量値:26725
【0554】
中間体53:His−dGDF15:
MHHHHHHAHARDGCPLGEGRCCRLQSLRASLQDLGWANWVVAPRELDVRMCVGACPSQFRSANTHAQMQARLHGLNPDAAPAPCCVPASYEPVVLMHQDSDGRVSLTPFDDLVAKDCHCV (配列番号3)。
LCMS:計算質量値(二量体):26368 実測質量値:26363
【0555】
中間体54:MH−(199−308)−hGDF15
MHNGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI (配列番号4)
LCMS:計算質量値:24636 実測質量値:24638
【0556】
中間体55:AH−(199−308)−hGDF15
AHNGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI (配列番号5)
ステップ1:構築物M−His
6−TEV(ENLYFQ/A)−H−hsGDF15 aa199−308の調製
構築物M−His6−TEV(ENLYFQ/A)−H−hsGDF15 aa199−308は、上記手順(ステップa、bおよびc)に従って調製した。
ステップ2:ステップ1からのタンパク質のTEV切断
凍結乾燥したタンパク質を水中に可溶化させて、最終濃度1.75mg/mlとした。タンパク質を、6MのGuan/50mM Tris、pH8.0+50mMのDTT中で1:1に希釈することによって再度アンフォールディングさせ、室温で1時間撹拌した。材料を、Vydac C4カラムでの分取RP−HPLCによって再精製し、凍結乾燥した。26mgの凍結乾燥物を、26mlの50mM Tris/3M UREA、pH7,5+3000ユニットのAcTEVプロテアーゼ(Invitrogen、12575−023)中に可溶化させ、4日間インキュベートした。次いで、トリフルオロ酢酸(TFA、水中10%の保存溶液)の添加によって、pHをpH2.0に調整し、溶液を、水中0.1%のTFAで150mlまでさらに希釈した。0.22umの膜を介した濾過の後、材料を、Vydac C4カラムでの分取RP−HPLCによって再度精製して、上手く切断されたタンパク質を単離した。画分を手動で集め、標的タンパク質を含有する画分を単離し、凍結乾燥した。次いで、切断されたGDF15タンパク質をリフォールディングさせ、リフォールディングしたタンパク質を上述のように精製した。
LCMS:計算質量値(二量体):24516 実測質量値:24518
【0557】
以下のGDF15変異体を、上記手順に従って調製することができる。
【0558】
中間体56:MHA−(200−308)−hGDF15
MHAGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI (配列番号6)
LCMS:計算質量値(二量体):24752
【0559】
以下のGDF15変異体を、上記手順に従って調製した。
【0560】
中間体57:AHA−(200−308)−hGDF15
AHAGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI (配列番号7)
LCMS:計算質量値(二量体):24430;実測質量値(二量体):24432
【0561】
中間体58:His−hGDF15BCNコンジュゲート
【0562】
【化85】
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His−hGDF15
配列:MHHHHHHMARNGDHCPLGPGRCCRLHTVRASLEDLGWADWVLSPREVQVTMCIGACPSQFRAANMHAQIKTSLHRLKPDTVPAPCCVPASYNPMVLIQKTDTGVSLQTYDDLLAKDCHCI
【0563】
His−hGDF15(中間体52:0.6mL、4.8mg/mL)の保存溶液を、30mMのNaOAc pH4.5緩衝液(5.2mL)で0.5mg/mLまで希釈した。DMSO(251μL)中(1R,8S,9s)−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメチル(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)カーボネート(NHS−BCN)の10mg/mL保存溶液をゆっくり加え、反応液を24℃で21時間シェーカープレートに置いた。反応液を、30mMのNaOAc pH4.5緩衝液で30mLまで希釈し、10kDa MWCOアミコン遠心濾過器を使用して(4回繰り返す)、2mLまで濃縮して、2.5mLの濃縮物を得た。A
280(ε=29090M
−1cm
−1、26730g/mol)に基づくと、濃度は0.93mg/mL(2.33mg、80%)であった:LCMS QT2_15−60kDa_15分_極性(方法E)。得られた溶液をMALDIによって分析し、主要なコンジュゲーションが+1および+2であることを示した(単量体および二量体のN−末端標識化)。
【0564】
【表24】
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【0565】
His−hGDF15+1BCN(ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イニル)は、GDF15ホモ二量体の1分子におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0566】
His−hGDF15+2BCNは、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0567】
His−hGDF15+3BCNは、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0568】
中間体59:His−hGDF15BCNコンジュゲート
【0569】
【化86】
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His−hGDF15配列:
MHHHH HHAR NGDHC PLGPG RCCRL HTVRA SLEDL GWADW VLSPR EVQVT MCIGA CPSQF RAANM HAQIK TSLHR LKPDT VPAPC CVPAS YNPMV LIQKT DTGVS LQTYD DLLAK DCHCI
【0570】
His−hGDF15(中間体51:7.04mL、1.42mg/mL)の保存溶液を、30mMのNaOAc pH4.5緩衝液(12.95mL)で0.5mg/mLまで希釈した。DMSO(0.88mL)中(1R,8S,9s)−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメチル(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)カーボネート(NHS−BCN)の10mg/mL保存溶液をゆっくり加え、反応液を24℃で21時間シェーカープレートに置いた。さらに一部のNHS−BCN保存溶液(176μL)を加え、反応液を24℃で24時間維持した。反応液を、30mMのNaOAc pH4.5緩衝液で60mLまで希釈し、10kDa MWCO限外濾過カートリッジを使用して4mLまで濃縮して(4回繰り返す)、4.1mLの濃縮物を得た。A
280(ε=29090M
−1cm
−1、26700g/mol)に基づくと、濃度は2.19mg/mL(8.98mg、89%)であった:LCMS QT2_15−60kDa_15分_極性(方法E)
【0571】
【表25】
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【0572】
His−hGDF15+1BCN(ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イニル)は、GDF15ホモ二量体の1分子におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0573】
His−hGDF15+2BCNは、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0574】
His−hGDF15+3BCNは、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0575】
中間体60:His−dog−GDF15−BCN
【0576】
【化87】
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100uLのHis−dGDF15(0.68mg/mL)、100uLのpH4.5の緩衝液、4uLの10mg/mLのBCN−NHS溶液を合わせて、室温で2日間インキュベートした。得られた混合物を、Amicon 10kで4回洗浄し、200uLの溶液を得て、これを次のステップで使用した。生成物を、コンジュゲートにさらに変換させるために、粗生成物として持ち越した。
【0577】
本発明の実施例
His−hGDF15+脂肪酸−PEG−N
3クリックのための一般手順。BCN標識されたGDF15を、30mMのNaOAc緩衝液(pH4.5)中で0.5mg/mLに希釈し、一方、水中FA−PEG−N
3(脂肪酸−PEG23−アジド)の10mg/mL溶液を調製した。GDF15溶液に、10当量のFA−PEG−N
3を加え、反応液を、シェーカープレート上に、24℃で、終夜置いた。反応をLCMS(QTOF法 15〜60kDa_15分_極性)によりモニターし、未反応のBCN標識されたGDF15が観察されなくなるまで、追加のFA−PEG−N
3を必要に応じて50当量まで加えた。次いで、反応液を、30mMのNaOAc緩衝液(pH4)を用いて5〜10倍希釈し、10kDaのMWCO限外濾過カートリッジを使用して、緩衝液を新しい緩衝液と交換した(濃縮とそれに続く希釈を4サイクル)。サンプルをA
280で測定して、約1mg/mLまで濃縮し、定量された回収率は34%まで定量的であった。最終のコンジュゲートは、LCMS(QTOF法 15〜60kDa_15分_極性)またはMaldiにより分析した。
【0578】
実施例1:中間体21にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−59):
【0579】
【化88】
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【0580】
【表26】
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【0581】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0582】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0583】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0584】
実施例2:中間体44にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−59):
【0585】
【化89】
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【0586】
【表27】
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【0587】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0588】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0589】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0590】
実施例3:中間体29AにコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−59):
【0591】
【化90】
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【0592】
【表28】
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【0593】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0594】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0595】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0596】
実施例4:中間体24にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(中間体58):
【0597】
【化91】
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【0598】
【表29】
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【0599】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0600】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0601】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0602】
実施例5:中間体29にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−58):
【0603】
【化92】
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【0604】
【表30】
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【0605】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0606】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0607】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0608】
実施例6:中間体55にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−58):
【0609】
【化93】
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【0610】
【表31】
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【0611】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0612】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0613】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0614】
実施例7:中間体6AにコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−58):
【0615】
【化94】
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【0616】
【表32】
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【0617】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0618】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の単量体単位におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0619】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0620】
実施例9:中間体30にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−58):
【0621】
【化95】
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【0622】
【表33】
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【0623】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0624】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の分子(単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0625】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0626】
実施例10:中間体12にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−58):
【0627】
【化96】
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【0628】
【表34】
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【0629】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0630】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の分子(単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0631】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0632】
実施例13:中間体6にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−59):
【0633】
【化97】
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【0634】
【表35】
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【0635】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0636】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の分子(両方の単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0637】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0638】
実施例14:中間体17にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−58):
【0639】
【化98】
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【0640】
【表36】
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【0641】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0642】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の分子(両方の単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0643】
His−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0644】
実施例15:
ステップ1:
【0645】
【化99】
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THF(5mL)中2,2,13,13−テトラメチルテトラデカン二酸(Aldrich CPR、注文番号PH002322)(100mg、0.318mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(40.3mg、0.35mmol)の溶液に、THF(5mL)中DCC(65.6mg、0.318mmol)の溶液を加え、混合物を室温で終夜撹拌した。LC−MS分析によって、所望の生成物への部分的な変換が観察された。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をDCM(40mL)に再度溶解させ、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ヘプタン/EtOAc/DCC(10:1:1)で溶出するシリカクロマトグラフィーによって精製して、混合物を得た。混合物を、MS起動式酸HPLC[(55〜80%のACN 3.5分の勾配):室温=2.48分、計算質量値:314.46 実測質量値:314.00]によってさらに精製して、クリーンな生成物(50mg、38.2%の収率)を得、出発材料を回収した。
【0646】
ステップ2:
【0647】
【化100】
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DCM(3mL)中NHS−2,2,13,13−テトラメチルテトラデカン二酸(10mg、0.024mmol)の溶液に、アジド−dPEG23−アミン(10mg、0.049mmol)およびDIPEA(9uL、0.049mmol)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を濃縮し、MeOH(3mL)に再度溶解させ、MS起動式HPLC(55〜80%のACN 3.5分の勾配 室温=2.35分、予測質量値:514.70 実測質量値:514.40)によって精製して、7mgのクリーンな生成物を58%の収率で得た。
【0648】
ステップ3:
【0649】
【化101】
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100μLのBCN−dGDF15(I−60:pH4.5の緩衝液中0.68mg/mL)の溶液に、pH4.5の緩衝液(100μL)およびアジド(DMSO中6μL、10mg/mL)を加え、混合物を室温で終夜インキュベートした。混合物をAmicon 10kで4回洗浄した。得られた溶液をMALDIによって分析し、主要なコンジュゲーションが+1および+2であることを示した。Maldi:計算質量値:26546 実測質量値:26483;計算質量値:27060 実測質量値:27128;計算質量値:27574 実測質量値:27789。
【0650】
実施例16:中間体44にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN(I−58):
【0651】
【化102】
[この文献は図面を表示できません]
【0652】
【表37】
[この文献は図面を表示できません]
【0653】
His−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の1分子(1つの単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0654】
His−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方の分子(両方の単量体単位)におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0655】
実施例17:中間体52にコンジュゲートされたHis−hGDF15BCN
【0656】
【化103】
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7mLのpH4の酢酸ナトリウム緩衝液中3mLのシクロオクチンGDF15(I−58:0.46mg/mL、0.051umol)の溶液に、脂肪酸pegアジド(35mg/mLのDMSO中15uL、0.36umol)を加え、混合物を室温で終夜インキュベートした。MALDI分析によって、変換が完了したことを観察した。アミコン濾過10kDにより精製した生成物を3回洗浄して、4.3mlの0.29mg/mlの所望の生成物を90%の収率で得た。Maldi:シクロオクチン sm 約5% 予測質量値:26902 実測質量値:26997;+1脂肪酸 約40% 予測質量値:28421 実測質量値:28525;+2脂肪酸 約50% 予測質量値:29940 実測質量値:30191 +3脂肪酸 5% 予測質量値:31459 実測質量値:31874。
【0657】
実施例18:中間体37にコンジュゲートされたMH−(199−308)GDF15(I−54)
【0658】
【化104】
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MH−(199−308)−GDF15(中間体54:0.393mL、0.028μmol、1.78mg/mL)を1.5mlの30mM酢酸ナトリウム緩衝液に加え、NHS脂肪酸(474ug、0.284umol、10mg/ml)を溶液に加えた。5時間後、反応をMALDIにより完了した。生成物を、アミコン限外濾過10kDを使用して5回洗浄することによって精製して、575ugのコンジュゲートを73%の収率で得た。MALDI:sm(18%)、予想質量値:24638 実測質量値:24735;+1脂肪酸(38%) 予想質量値:26192 実測質量値:26268;+2脂肪酸(40%) 予想質量値:27746 実測質量値:27798;+3脂肪酸(4%) 予想質量値:29300 実測質量値:29333。
【0659】
実施例19A:中間体37にコンジュゲートされたHis−hGDF15(I−59)
【0660】
【化105】
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His−GDF15(0.493mL、0.026μmol、1.42mg/mL)を1.5mlの30mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH=4)に加え、nhs脂肪酸(0.221mg、0.132umol、10mg/mL)を溶液に加えた。終夜反応が完了しなかったため、さらに2.5当量の脂肪酸NHS(0.110mg、0.066umol、10mg/mL)を加え、5時間後、Maldiは主要な生成物として+2コンジュゲートを示した。生成物を、アミコン限外濾過10kDを使用して5回洗浄することによって精製して、565ugのコンジュゲートを76%の収率で得た。MALDI:sm(18%)、予想質量値:26468 実測質量値:26553;+1脂肪酸(38%) 予想質量値:28022 実測質量値:28099;+2脂肪酸(40%) 予想質量値:29576 実測質量値:29649;+3脂肪酸(4%) 予想質量値:31130 実測質量値:31201。
【0661】
実施例19B:中間体37とコンジュゲートされたAHA−hGDF15
【0662】
【化106】
[この文献は図面を表示できません]
分子生物学グレードの水中の中間体37の10mg/mL溶液を調製した。AHA−hGDF15(中間体57、30mMのNaOAc(pH4.0)中6.67mg/mL、5.247mL、1.433μmol)に、30mMのNaOAc(pH4.6)(許容される範囲4.5〜5.0)を加えて、最終タンパク質濃度0.88mg/mLを得た。中間体37(10当量、2.39mL、0.014mmol)を加え、反応液を室温で18時間混合した。反応バイアル中に沈殿が形成された。反応混合物を、4×15mLの10kDaアミコン遠心濾過器の中で分割して、それぞれを、30mMのNaOAc(pH4.0)で15mLに希釈した。材料を、30mMのNaOAc(pH4.0)に4回緩衝液交換し、サンプルを合わせて、25.6mLの体積とし、洗浄の間に、フィルターの沈殿をピペットチップで撹拌した。沈殿が溶液中に残ったので、混合物を4℃で終夜静置した。濃度は、A280(30040cm
−1M
−1;27538g/mol)によって、1.62mg/mL(100%)であることが測定された。UPLC分析により、+1FA(保持時間:4.88分)および+2FA生成物(保持時間:5.80分)の60%の回収率が示された(方法J)。LCMS法Tは、所望の質量を示す。
【0663】
実施例19Bの粗製の混合物(以下の表に表された比率)をin vivoで試験し、表1に報告した:
【0664】
【表38】
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【0665】
(実施形態11B、式Hで表されるように)AHA−hGDF15+1FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の(単量体単位における)ポリペプチド鎖の1つにおけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0666】
(実施形態11B、式Gで表されるように)AHA−hGDF15+2FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の両方のポリペプチド鎖におけるN末端アミノ官能基での反応に相当する。
【0667】
AHA−hGDF15+3FA(脂肪酸)は、GDF15ホモ二量体の一部の他の部位における非選択反応に相当する。
【0668】
精製:
粗生成物を、逆相クロマトグラフィー(緩衝液A 水中0.1%TFA、緩衝液B ACN中0.1MTFA 勾配;99%〜80%緩衝液A)、Waters BEH300 130Å、3.5μm、4.6mm×100mm 流量2.5ml/分によって精製した。
【0669】
画分1:未反応AHA−hGDF15:Rt=17.33分
画分2:(19B1)AHA−hGDF15+1FA:Rt=20.20分(およそ15%の収率)(式H)
画分3:(19B2)AHA−hGDF15+2FA:Rt=21.60分(およそ15%の収率)(式G)
画分4:(19B3)AHA−hGDF15+3FA:Rt=23.0分(およそ5%の収率)
19B1と19B2の1:1の比の混合物を調製し、試験した(19Bm)。
【0670】
あるいは、反応は、pH4.73で、10mMのNa
2HPO
4−7H
2Oおよび30mMのNaOAc中で行ってもよく、分子生物学グレードの水中中間体37の10mg/mL溶液を調製した。AHA−hGDF15(中間体57、30mMのNaOAc(pH4.0)中12.04mg/mL、4.15μL、0.002μmol)に、30mMのNaOAc 10mMのNa
2HSO
4−7H
2O(pH4.73)を加えて、最終タンパク質濃度0.88mg/mLを得た。中間体37(20当量、6.83μL、0.041μmol)を加え、反応液を室温で18時間混合した。反応混合物は、沈殿によって濁った。UPLC分析により、58%の+1および+2生成物が示された(方法J)。
【0671】
【表39】
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【0672】
反応はまた、pH4.6で、30mMのNaOAcおよび10mMのK
2HPO
4中で行ってもよく、分子生物学グレードの水中中間体37の10mg/mL溶液を調製した。AHA−hGDF15(中間体57、30mMのNaOAc(pH4.0)中6.21mg/mL、5.261mL、1.337μmol)に、30mMのNaOAc 10mMのK
2HSO
4(pH4.6)(許容される範囲4.5〜5.0)を加えて、最終タンパク質濃度0.88mg/mLを得た。中間体37(10当量、68.3μL、0.409μmol)を加え、反応液を室温で7時間混合した。反応混合物は、沈殿によって濁った。反応混合物を、15mLの10kDaアミコン遠心濾過器の中4つの9mL部分に分割して、30mMのNaOAc(pH4.0)で15mLに希釈した。材料を、30mMのNaOAc(pH4.0)に4回緩衝液交換し、各洗浄の間に、沈殿をピペットチップで撹拌した。反応混合物を75mLの体積まで濃縮した。沈殿が残ったので、材料を4℃で2日間保存した。濃度は、A280(30040cm
−1M
−1、27538g/mol)によって、0.4mg/mL(97%)であることが測定された。UPLC分析により、+1および+2生成物の61%の回収率が示された(方法J)。
【0673】
【表40】
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