(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の前駆体材料が、10000センチポアズ未満の粘度を有する、アクリル系材料、モノマー材料、オリゴマー材料、又はこれらの任意の組み合わせからなる、請求項1に記載の方法。
前記第2の前駆体材料、前記硬化された第2のポリマー材料、及び前記空洞の少なくとも1つの側面のうちの少なくとも1つが、250〜1100ナノメートルの範囲の波長における電磁放射線に対して透明である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも1つの刃先構造が、ゴシックアーチ、半円アーチ、又は1つ以上のアンダーカットを備え、前記少なくとも1つの刃先構造の先端半径が1マイクロメートル未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記第1のポリマー材料が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリジメチルシロキサン(PDMS)からなり、前記第1のポリマー材料が柔性である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記分離させる工程が、前記硬化された第2のポリマー材料刃先構造からの前記基礎構造の物理的な又は化学的な取り外しを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
前記硬化させる工程が架橋結合又は重合を含み、前記硬化させる工程が、熱、光、又はこれらの組み合わせによって媒介される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
かみそり刃は、典型的には、ステンレス鋼などの好適な金属板材料から形成され、この金属板材料は、所望の幅に細長く切り離され、金属を硬化させるために熱処理される。硬化作業は高温炉を使用し、金属が約1000℃を超える温度に最長約20秒間曝され得、その後に焼入れが続き、それによって、金属は急冷されて特定の所望の材料特性を獲得する。
【0003】
硬化後、一般に、刃を研削することによって、刃先が形成される。鋼製のかみそり刃は、長期間にわたって毛髪を切る鋭利かつ丈夫な刃先をもたらすために機械的に研磨される。連続的な研削加工では、一般に、刃の形状は、輪郭(例えば、断面)が実質的に三角形又は楔形の直刃を有するものに制限される。刃先の楔形形状は、典型的には、半径が約1000オングストローム未満の最終的な先端部を有する。
【0004】
この先行技術の方法の利点は、大量かつ高速に刃を作製するための実績のある経済的なプロセスであることである。このようなプロセスが、より安価な材料を刃の形成に利用すると共に、実質的に三角形の輪郭以外の刃先の輪郭を可能にすることもできるとしたら、特に好ましいであろう。
【0005】
使い捨て刃物類又は使い捨て外科用メスのために、ポリマー材料から作製された刃先を有する刃が開示されている(例えば、米国特許第6,044,566号、同第5,782,852号)。ポリマー材料から作製されるかみそり刃が、英国特許出願公開第2310819(A)号に開示されている。任意の先行技術のポリマー刃の欠点は、このようなプラスチック刃を作製するプロセスが、毛髪を切断するのに必要とされる1μm未満の先端半径を有する刃先を作製するのに適していないことである。
【0006】
一般に、先行技術は溶融流動加工技術を利用する。先行技術の溶融ポリマーは、典型的には金属である成形型の空洞に射出されるが、このポリマーは、一般に、粘度が高過ぎて(典型的には100,000センチポアズを超える)、かみそり刃縁部を作製するために空洞に必要なサブマイクロメートル(例えば、1マイクロメートル未満)寸法の空間に完全には浸透することができない。しかしながら、サブマイクロメートル寸法の空間への浸透に役立ち得る、より低い粘度の材料を選択するか、又は射出圧力を高くすると、「バリ」として知られる、2つの半成形型の接合面間へのポリマー材料の浸透が起こり、その結果、必要な刃先先端半径を達成することができない。ポリマー材料の粘度の低下は、ポリマー原材料を加熱してガラス転移温度より高くする、多くの場合、200℃を超えることによって、達成することもできる。更に、空洞を充填した後、流体ポリマー材料は、冷却されて固体状態になる必要があり、これにより、刃の形状の収縮及び縁部の円筒状化が起こり、その結果、必要な刃先先端半径を達成することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ポリマーから作製される刃先構造のための改善されたプロセス、並びに、必要な先端半径、より小さいばらつきの縁部品質、及び同程度の又は改善された剃毛体験をもたらす切れ味を有する、剃毛かみそりの刃先構造を作製するより費用効果の高い方法に対して需要が存在する。
【0009】
また、非線状縁部など、任意の形状を有する刃先構造を形成することができる、及び/又は、一体化したアセンブリを提供することができる、材料及びプロセスを見出すことも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリマー材料由来のかみそり刃など、1つ以上の刃先構造を製造するための単純な、効率のよい方法、及びかみそり刃などの機能性ポリマー刃先構造を提供する。更に、いくつかの方法は、複数のそのような刃先構造、又はかみそりカートリッジ内に単一ユニットとして配設されるべき、ポリマー材料に形成された複数のかみそり刃を備える「ブレードボックス」を製造するのに適している。
【0011】
一態様では、少なくとも1つの刃先構造を製造するための方法は、第1のポリマー材料を容器中に液状形態で提供することと、当該第1のポリマー材料内に少なくとも1つの刃先型板を提供することと、基礎構造を形成するように当該少なくとも1つの刃先型板が当該第1のポリマー材料内に配設されている間、当該第1のポリマー材料を硬化させることと当該型板を取り除いて当該基礎構造内に空洞を得ることと、第2の材料がポリマー材料の前駆体である、当該第2の材料で当該空洞を充填することと、当該第2の材料を硬化させることと、当該少なくとも1つの刃先構造が当該硬化された第2のポリマー材料からなる、当該基礎構造及び当該硬化された第2のポリマー材料を分離させることと、を含む。
【0012】
更に、第2の前駆体材料は、モノマー材料、オリゴマー材料、又はこれらの任意の組み合わせからなる。少なくとも1つの刃先構造は、ゴシックアーチ、半円アーチ、又は1つ以上のアンダーカットを備える。少なくとも1つの刃先構造の先端半径は、1マイクロメートル未満である。
【0013】
一態様では、第1のポリマー材料は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる。第2の態様では、第2の前駆体材料は、アクリル系又はエポキシ系材料からなる。別の態様では、第2の前駆体材料の粘度は、約10000センチポアズ未満である。
【0014】
本発明の別の態様では、基礎構造は1つの部分のみであり、空洞は基礎構造内の単一の部分内に完全に含まれる。更に別の態様では、空洞の一部は、形成後に基礎構造によって囲まれていない。
【0015】
更に、第2の前駆体材料、硬化された第2のポリマー材料、及び空洞の少なくとも1つの側面のうちの少なくとも1つは、250〜1500ナノメートルの範囲の波長における電磁放射線に対して透明である。
【0016】
加えて、本発明の分離させる工程は、硬化された第2のポリマー材料刃先構造からの基礎構造の物理的な又は化学的な取り外しを含む。一態様では、第1のポリマー材料は柔性である。別の態様では、分離された基礎構造は、充填する工程で再使用され得る。
【0017】
本発明の別の態様では、硬化させる工程の前に、組成物の約1重量%〜約3重量%の光開始剤が第2の前駆体材料に添加される。
【0018】
本発明の硬化させる工程は、架橋結合又は重合を含み、硬化させる工程は、熱、UV光などの光、又はこれらの組み合わせによって媒介される。
【0019】
本発明のまた更に別の態様では、本明細書に記載の方法を使用して形成される少なくとも1つの刃先構造は、かみそり刃、又はブレードボックスの一部であり、かみそり刃又はブレードボックスは、かみそりカートリッジハウジング又はフレームの中に固定される。ブレードボックスは、様々な種類の刃先構造からなり得る。
【0020】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの刃先構造を備えるブレードボックスを含んでおり、少なくとも1つの非刃先構造が当該少なくとも1つの刃先構造に連結され、刃先構造及び非刃先構造の両方がポリマー材料からなり、ポリマー材料はポリマー材料の前駆体材料によって製造される。
【0021】
本発明の別の実施形態は、ポリマー材料からなる少なくとも1つの刃先構造を含むかみそり刃であり、ポリマー材料はポリマー材料の前駆体材料によって製造される。
【0022】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付図面及び以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに請求項から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の方法は、刃先構造(例えば、剃毛デバイス又はかみそりで使用され得るかみそり刃)の製造を提供する。具体的には、剃毛デバイス用の刃先又はかみそり刃をポリマー材料から製造する方法が開示される。
【0025】
本明細書で使用するとき、ポリマー材料は、ポリマーから形成されている材料を意味し、ポリマーは、モノマーから構成されている大きな鎖状分子であり、モノマーは小さい分子である。一般に、ポリマーは、天然起源又は合成品であり得る。本発明では、好ましい実施形態は、合成ポリマー又は半合成ポリマーを含む。合成又は半合成ポリマー材料は、一般に、2つの形態又は状態で発生することができる。第1の状態は軟質、つまり流体状態であり得、第2の状態は硬質、つまり固体状態であり得る。一般に、合成ポリマーは、第1の状態(例えば、液状又は軟質)であるときに金型成形又は押出成形され、その後に第2の状態(例えば、硬質又は固体)の物体に形成される。場合によっては、材料は可逆的である(例えば、第2の状態の材料をその第1の状態に戻すことができる)一方、他の場合では、重合は不可逆的である(例えば、材料をその第1の状態に戻すことはできない)。
【0026】
熱可塑性ポリマーは、高温(例えば200℃以上)では軟質、つまり液状の第1の状態にあり、周囲温度まで冷却されると固体の第2の状態になる、可逆性ポリマーの一種である。熱可塑性ポリマーは、典型的には、先行技術の射出成形又は押出成形技術に使用される。
【0027】
不可逆的重合によって第1の状態から第2の状態が得られるそれらのポリマー材料では、第1の状態のポリマー材料は、一般に、第2の状態のポリマー材料の「前駆体」であると考えることができる。そのため、本発明では、ポリマー材料は、前駆体材料、つまり第1の状態の材料から生成され得る。
【0028】
本発明の刃先構造に一般に望ましい材料は、モノマー、オリゴマーとして知られる短鎖長(例えば、低分子量)ポリマー、又はその両方を含む、第1の軟質又は液状の状態の材料である。本明細書では、モノマーとオリゴマーの両方を「前駆体」と称する。これらの前駆体は、本明細書では硬化プロセスと称する、重合又は架橋結合プロセスによって第2の固体状態の長鎖長ポリマー材料に転化される。前駆体材料を硬化させることは、一般に、熱、光、イオン若しくは高エネルギー放射線、又はこれらの任意の組み合わせの影響を受けて達成され得る。硬化させた後は、固体ポリマー材料が得られる。
【0029】
図1は、先行技術の基礎構造の断面図を示す。先行技術の一実施形態では、基礎構造10が、2つの部分、上側部分11及び下側部分12を有するものとして図示されており、一方、先行技術の別の実施形態では、基礎構造13が、左側部分14及び右側部分15を有するものとして図示されている。先行技術の各基礎構造の接合面間又は境界面16に、刃先構造17が形成され得る。先行技術の基礎構造材料は、一般に、金属から機械で作製されることに留意されたい。基礎構造10及び13のいずれにおいても、刃先構造17を形成するために、各基礎構造の両部分が、それぞれに、基礎構造内に存在し、しっかりと接合される必要がある。基礎構造は、実質的に、液状ポリマーが射出される1つ以上の小さい流路のみを有する閉じたシステムである。更に、基礎構造10及び13のいずれにおいても、ポリマーを射出し、凝固させた後、刃先構造17を取り出すために、基礎構造が開かれる又は解体される必要がある。
【0030】
図2aでは、本発明の好ましい実施形態による、1つ以上のポリマー材料からかみそり刃を製造する方法の流れ
図20aが例示されている。工程100では、容器105が提供される。容器は、任意の種類、形状又はサイズであってよいが、好ましくは、かみそり刃などの刃先構造を中に形成する適当な基礎構造405を製造するように選択される。基礎構造の寸法(例えば、高さ、長さ)に関しても制限は存在しないが、望ましくは、基礎構造は、少なくとも約5mmの高さ及び少なくとも約30mmの長さを有し得る。
【0031】
一般に、基礎構造405を形成するために使用される本発明の第1のポリマー材料220は、工程200aにて容器105内へ分注できるように、第1の硬化されていない流体状態を有することが望ましい。一般に、基礎構造405を形成するために使用することができる第1のポリマー材料の種類に対して制限は存在しない。好ましい実施形態では、第1のポリマー材料及び関連する前駆体は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、又はマイクロレプリケーション若しくはナノインプリントリソグラフィに一般に使用される他の材料であり、そのため、工程200aの第1のポリマー材料220は、好ましくは、Dow CorningのSYLGARD(登録商標)184からなる。SYLGARD(登録商標)の粘度は、約5100センチポアズである。容器105は、以下に説明するように、プロセスの終了時に残されるか、又は取り外され得る。
【0032】
基礎構造405は、刃先構造(例えば、かみそり刃)を形成する成形型の一部であるとみなされ得ることに留意されたい。本発明の流れ
図20aでは、基礎構造405は、事実上、一般に更なる部分に分割することができない、単体成形型を表す。基礎構造405は、他方の半分(例えば、上半分)が本発明の構成要素ではないため、典型的な成形型の半分(例えば、下半分)であるとみなされ得る。これは、単体成形型又は半分の成形型のみを有することにより、
図1に示した先行技術の基礎構造を対比するものであり、先行技術の溶融流動加工で見られる2体の成形型において生じる「バリ」の問題が回避される。
【0033】
刃先型板310は、工程300aにおいて、液状の第1のポリマー材料205内へ挿入される。刃先型板310は、所望の任意の種類であってよいが、一般に好ましくは、
図3に示される種類の三次元のステンレス鋼製刃である。刃先型板310はまた、シリコン、サファイア、又はダイヤモンドからなっていてもよい。型板310は、材料組成に関係なく、刃先に適した任意の形状又は輪郭を有してよい。例えば、型板の形状、ひいては最終刃先構造形状は、結果として生ずるポリマー刃に存在すべき所望の数の斜面及び小面を含めて、直線状、曲線状、楕円状、切欠き付き若しくは鋸歯状、又は内側開口部付きであってよい。本発明で形成されることができるいくつかの形状又は輪郭が、
図10及び11に示されている。
【0034】
工程300aにて、刃先型板310が第1のポリマー材料内へ挿入された後、型板310が第1のポリマー材料205内に配設されている間、第1のポリマー材料205は、液状の第1のポリマー材料205が固体のポリマー材料になるように、工程400にて重合され、それにより、基礎構造405を形成する。例えば、第1のポリマー材料205がPDMSからなる場合、PDMSは、硬化された又は重合された状態になるように加熱される。PDMSは、典型的には、可逆的ではない、水を必要とする化学反応によって(例えば、大気から水分を吸収して)硬化又は凝固する。材料を完全に硬化させるためのプロセスは、一般に、比較的遅いプロセスであり得るが、好ましくは、熱420で促進させることができる。
【0035】
図2bは、第1の液状ポリマー材料220が容器内に配設される前に、工程200bにおいて、刃先型板310が容器105内へ挿入される、本発明の代替プロセスフロー20bを示している。上述したように、刃先型板310は、所望の任意の種類であってよいが、一般に好ましくは、
図3に示される種類の三次元のステンレス鋼製刃である。刃先型板310はまた、シリコン、サファイア、又はダイヤモンドからなっていてもよい。型板310は、材料組成に関係なく、刃先に適した任意の形状又は輪郭を有してよい。例えば、型板の形状、ひいては最終刃先構造形状は、結果として生ずるポリマー刃に存在すべき所望の数の斜面及び小面を含めて、直線状、曲線状、楕円状、切欠き付き若しくは鋸歯状、又は内側開口部付きであってよい。本発明で形成されることができるいくつかの形状又は輪郭が、
図10及び11に示されている。
【0036】
図2bの工程300bでは、基礎構造405を製造するために選択される第1のポリマー材料205は、第1の硬化されていない流体状態220であることが好ましく、その結果、工程300bに示されているように、容器105内にかつ刃先型板310の周囲に配設されることができる。一般に、基礎構造405を形成するために使用することができる第1のポリマー材料の種類に対して制限は存在しない。好ましい実施形態では、第1のポリマー材料及び関連する前駆体は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、又はマイクロレプリケーション若しくはナノインプリントリソグラフィに一般に使用される他の材料であり、そのため、工程300bの第1のポリマー材料220は、好ましくは、Dow CorningのSYLGARD(登録商標)184からなる。SYLGARD(登録商標)の粘度は、約5100センチポアズである。容器105は、以下に説明するように、プロセスの終了時に残されるか、又は取り外され得る。
【0037】
基礎構造405は、刃先構造(例えば、かみそり刃)を形成する成形型の一部であるとみなされ得る。
図2aの流れ
図20aと同様に、本発明の流れ
図20bでは、基礎構造405は、事実上、一般に更なる部分に分割することができない、単体成形型を表す。基礎構造405は、他方の半分(例えば、上半分)が本発明の構成要素ではないため、典型的な成形型の半分(例えば、下半分)であるとみなされ得る。これは、単体成形型又は半分の成形型のみを有することにより、
図1に示した先行技術の基礎構造を対比するものであり、先行技術の溶融流動加工で見られる2体の成形型において生じる「バリ」の問題が回避される。
【0038】
図2aの工程300a及び
図2bの工程300bより先では、プロセスの工程が本質的に同じであることに留意されたい。そのため、工程300a又は300bのいずれかの後も、プロセス20a及び20bは両方とも工程400に進み得、形成された基礎構造405から刃先型板310が取り外され、基礎構造405内の空洞510が露出する。(第1のポリマー材料を硬化させる)工程400の持続時間は、25度にて約48時間であり得る。空洞510は、所望の先端半径(例えば、1μm未満)を有するかみそり刃の形状を有する。本発明のPDMS基礎構造405を使用して工程500で形成される空洞510の断面の顕微鏡写真が、
図4に示されている。
【0039】
図2a及び2bに示されているように、空洞は、刃先の型板の複製によって作製される単体であることに留意されたい。上述したように、単体成形型又は半分の成形型のみを含むことにより、先行技術の溶融流動加工において2体の成形型の境界面に生じる「バリ」の問題が回避される。
【0040】
工程600に示されているように、第1のポリマー材料220から作製された基礎構造405に形成されている空洞510には、第2のポリマー材料620が、一般に第2のポリマーの前駆体の形態で充填される。本発明での前駆体は、好ましくは、モノマー又は短鎖長若しくは低分子量オリゴマー材料であり得る。
【0041】
望ましくは、本発明の充填する又は注入する工程600は、約10℃〜約40℃の範囲の周囲温度で行われるか、又はその粘度を更に低下させるために最高で100℃まで加熱され得る。一般に、空洞を充填するのに使用することができる第2のポリマー材料の種類に対して制限は存在しないが、空洞510内への材料の完全な浸透を達成するために、並びに、所望のかみそり刃及び先端の形状を有する空洞510を充填するために、ポリマー前駆体は、周囲温度又は周囲温度近くにおいて、溶融流動加工で使用されるポリマー材料よりも流動性が高くかつ粘度の低いものであることが望ましい。そのため、本発明の第2のポリマー材料前駆体の好ましい粘度は、約10000センチポアズ未満、より好ましくは約5000センチポアズ未満、及び最も好ましくは約3000センチポアズ以下である。
【0042】
本発明では、第2の前駆体材料は、好ましくはアクリル系材料、より好ましくはFemtobond 4Bなどのモノマー又はオリゴマー配合を有するポリマー、及び最も好ましくは、Microresist Technology GmbHによって供給されるORMOCOREなど、ORMOCER(登録商標)ファミリ由来のポリマー材料である。ORMOCORE材料は、周囲温度において約2900センチポアズの粘度を有する。前駆体として使用することができるE−SHELL(登録商標)300という名前の別の材料は、約340センチポアズの粘度を有する。この前駆体材料は、基礎構造又は第1のポリマー材料の粘度よりも低い粘度を有する。本発明では、ORMOCOREなど、非重合材料は、粘度を更に低下させるために最高で100℃まで加熱され得ることに留意する。一般に、100℃を超えて加熱すると、硬化された構造を冷却する際に収縮を不所望にもたらすことがある。
【0043】
あるいは、2.5〜1250センチポアズの粘度の範囲を有する、MicroChemによって供給されるSU8など、エポキシ系材料を第2のポリマー材料として利用することができる。
【0044】
図2a及び
図2bの硬化させる工程700の前に、組成物の約1〜約3重量%の光開始剤が第2のポリマー材料に添加され得る。光開始剤は、一般に、放射線、通常は可視光又はUV光を吸収し、次いで、モノマー又はオリゴマーと反応してそれらを結合させるラジカルを生成することにより、ポリマー材料の前駆体の重合又は架橋結合(例えば、硬化)プロセスを開始する。アクリレート系前駆体と一般に併用される光開始剤は、IRGACURE(登録商標)184の商品名でBASFによって販売されている、アルファヒドロキシケトンである。ORMOCOREの場合、光開始剤は、やはりBASFによるIRGACURE(登録商標)369であり得る。
【0045】
第2のポリマー材料620を硬化させて固体ポリマー710を作製することは、
図2a及び
図2bの工程700において実行される。硬化プロセスは、熱又は光720からなっているか、又はそれによって媒介され得るが、より好ましくは、本発明の硬化プロセスは光である。硬化させるための温度は、好ましくは周囲温度又は室温を含めて、任意の温度であり得る。望ましくは、本発明の硬化プロセスは、約10℃〜約40℃の範囲の周囲温度で行われるか、又はその粘度を更に低下させるために最高で100℃まで加熱され得る。一般に、適用される温度が高くなれば、材料の硬化は速くなる。前駆体(例えば、固体ポリマーを作製するためのモノマー又はオリゴマー)の硬化は、重合、即ち、分子鎖形成若しくは既存の分子鎖の架橋結合、又は両方を伴い得る。本発明の硬化は、好ましくは、前駆体又は第2のポリマー材料620を電磁放射線、例えば、UV光に曝すことによって実施される。電磁放射線の波長は、約250ナノメートル〜1500ナノメートル、好ましくは約400ナノメートル〜約1100ナノメートルの範囲であり得る。光開始剤が使用される場合、ポリマー材料は、使用される光開始剤に最適に選択された、この範囲内の特定の波長において透明である。したがって、本発明の第2のポリマー材料の前駆体及び硬化された固体ポリマー並びに/又は空洞の少なくとも1つの側面は、一般に、有効であるべき電磁放射線の波長に対して少なくとも部分的に透明である必要がある。光を使用する際にその光がポリマーの表面下に差し込むことができないと、一般に、物体全体(例えば、刃先構造)の硬化又は重合が起こらないので、効果を得るために、ポリマーの透明性選択は必要である。収縮を回避するには光硬化が好ましいが、熱もまた一般に、光とほぼ同じ結果をもたらし得る。この工程は、材料の膨張、収縮、又は変形を回避し、第2のポリマー材料620から刃先構造710を形成する。工程700での硬化の持続時間は、約1分以上〜約1時間の範囲であり得、これは、レーザー出力、温度、第2のポリマー材料の厚さ、及び他の要因などの変数におそらく依存し得る。
【0046】
好ましい実施形態では、基礎構造405を形成する第1のポリマー材料220及び関連する前駆体は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。基礎構造を形成する材料は、好ましくは柔性であり、これは、材料が可撓性又は変形可能であることを意味し、その結果、ORMOCORE又はFemtobond 4B又はSU8などの第2の材料から形成される複製刃構造710を、硬化後に、基礎構造405から容易に取り出すことができるようになる。PDMSで形成された基礎構造405では、PDMS材料の弾性特性及び低表面エネルギー特性により、刃先型板310の望ましい取り外しが可能になる。弾性は、刃先型板310を解放するための基礎構造405の変形をもたらすと共に、刃先型板310が取り外された後に基礎構造405が元の形状に戻ることも可能にする。PDMS材料の低表面エネルギーは、刃先型板310が基礎構造405に粘着することを防ぎ、更には取り外し中に基礎構造405が損傷することも防ぐ。これら2つの特性を有することにより、基礎構造材料は、刃先型板の取り外しの支援において有益な役割を果たす。
【0047】
工程800では、基礎構造405は、刃先構造810から取り外される。基礎構造は、物理的な又は化学的な手段によって取り外される。物理的な取り外しは、基礎構造405を刃先構造810から離間してかつ離れる方向に曲げることを含み得る。基礎構造が物理的な手段によって取り外される場合は、容器105は、先に基礎構造から分離される必要があり得る。場合によっては、基礎構造405は、基礎構造と刃先構造及び/又は容器105との間の物理的な取り外しを実現可能にするゴムのような特性を有してもよい。化学的な取り外しプロセスは、基礎構造405を溶解することを含み得る。基礎構造が溶解される場合は、容器105は残存してもよい。基礎構造を溶解するための化学作用の種類には有機溶媒が挙げられ得、PMMAから作製される場合は、アセトン、アセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、及びジクロロベンゼンなどの溶媒が挙げられ得、PDMAから作製される場合は、NMP(N−メチルピロリジノン)中若しくはDMF(ジメチルホルムアミド)中若しくはTHF(テトラヒドロフラン)中若しくはPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)中のTBAF(フッ化テトラブチルアンモニウム)の溶液又はこれらの任意の組み合わせなどの溶媒が挙げられ得る。
【0048】
取り外しプロセスは、溶解、ウェットエッチング(例えば、化学溶液によって)、融解、又はこれらの任意の組み合わせによって達成され得る。
【0049】
刃先構造810は、最終の刃先又はかみそり刃縁部の形状での構造を表す。
【0050】
先行技術(
図1)の2つの合わせ部又は半体部に対立するものとして1つの部分から基礎構造が形成されるため、本発明の基礎構造は、ポリマー刃を1つの部分の基礎構造内に形成することができ、その結果、本発明のプロセスではバリの発生が回避されている。
【0051】
図5では、本明細書に記載の製造方法により製造された、実際に解放された刃先構造の顕微鏡写真が示されている。複製された刃先構造又は刃縁部は、本発明のプロセスを使用してPDMS(第1のポリマー材料基礎構造)成形型から取り外されたORMOCORE(第2のポリマー材料)から作製されている。
【0052】
本発明のプロセスによって製造された刃先構造の先端半径は、望ましくは約1マイクロメートル未満の範囲内である。ORMOCER(登録商標)などで形成されたポリマー刃先構造の硬度は、硬化後にほぼ100MPaに達し得る。SU8の場合、刃先構造は、
図2及び
図2bの工程800で基礎構造から取り外した後、硬度を更に高めるために熱分解され得る。重合された状態のSU8は約180MPaの硬度を有し、熱分解されたSU8は約1GPaの硬度を有する。
【0053】
図5に示されているように、
図2a及び
図2bのプロセスを使用して形成されたかみそり刃50は、先端部54を有する楔形の鋭利な縁部と共にポリマー本体部分又は基材部52を含む。先端部54は、
図5に示されているように、約15度の刃先角55を有する刃縁部53を有する。小面56及び58は、先端部54から分岐する。
【0054】
図5には従来のかみそり刃の楔形輪郭が示されているが、本発明は、任意の数、例えば、2つ又は3つを超える数の小面を有する刃先構造を企図しており、これらの小面は平面である必要はない。
図10及び11に本発明のいくつかの例示的な形状が以下に示されているが、本発明では、任意の望ましい、実現可能な形状が企図される。
【0055】
図2a及び
図2bの基礎構造405は、工程800にて刃先構造を取り外す際に溶解又は融解されなければ、追加の刃先構造を形成するために更に繰り返して使用され得ることに留意されたい。基礎構造が使用され得る回数は、基礎構造に使用される第1のポリマー材料の種類及び毎回の使用後の基礎構造の堅牢性によって制限され得る。
図2a及び
図2bの工程600に戻る矢印612は、基礎構造の再使用を示している。
【0056】
基礎構造から自由になると、製造された各刃先構造は、一般に、かみそりカートリッジに個々に組み込まれることができる。例えば、1つ以上のポリマーかみそり刃は、刃支持部に(例えば、接着剤、超音波溶接で)接着され、かみそりカートリッジハウジングに組み込まれてよい。基礎構造から取り外されると、刃は、必要に応じて処理又はコーティングされ、
図2a及び
図2bの工程900にてかみそりカートリッジに組み込まれることができる。
【0057】
図6に示すように、本発明のポリマー64から作製された1つ以上の刃先構造又はかみそり刃62を備えるかみそりカートリッジ60が組み立てられ得る。かみそりカートリッジ60は、鋼製刃を使用する市販のかみそりカートリッジと類似するものであり、プラスチックハウジング及びフレーム構成要素66を備える。組み立て工程900では、ポリマーかみそり刃62は、フレーム66又はハウジングの中に挿入される前に、取り付けアセンブリに固定されることができ、又はそれらはフレーム上に直接取り付けられてもよい。
【0058】
本明細書に記載の製造方法は、単一の刃先構造(例えば、かみそり刃)を主に参照して言及されてきたが、これらの方法は、同時に複数の刃先構造の製造に容易に適用され得る。
【0059】
図7では、本明細書に記載の方法により製造された複数の空洞74(例えば、5つの空洞)を備える基礎構造72が例示されている。複数の刃先構造(例えば、かみそり刃)の製造は、
図2a及び
図2bのプロセスに従うが、1つ以上の刃先型板(図示せず)が(2つ以上の場合は)同時に又は(1つのみの場合は)順に基礎構造内へ押し込まれることを含む。基礎構造上での複数のかみそり刃などの刃先構造のこのような「バッチ」製造後、刃先構造は、
図2a及び
図2bと併せて上述したように、かみそりカートリッジへの更なる組み立てに備えて分離され得る。基礎構造72のサイズは、所望の刃先構造のサイズに応じて、
図2a及び
図2bの基礎構造405より大きくなり得ることに留意されたい。
【0060】
図8を参照すると、複数のかみそり刃82は、小さいフレーム84を有する3枚の刃の集団にクラスタ化されて形成され得る。フレームは非刃先構造である一方、かみそり刃は刃先構造である。クラスタは、概ね矩形の形状を有しており、説明を簡単にするために、本明細書ではブレードボックス86と称される。複数のかみそり刃82は、剃毛かみそりシステムの組み立てにおいて後続プロセスの工程を減らすために、このクラスタ化構成で製造されることができる。ブレードボックス86は、図示されるように、フレーム84によって囲まれた3つの個々のかみそり刃82を有する。ブレードボックス86は、完全に同じように製造することができ、又は、各ボックスが刃の間隔、刃先角、刃数、刃の向きなどに差異を有するといった、異なるものにすることもできる。これらの差異は、異なる型板を使用すること、異なる方向で押し込むことなど、上述の様々な方法工程に対する変更によって生じさせることができる。ブレードボックス86は、上述したのと同じ方法であるが、自己完結したブレードボックス86が単独の一体部分となるように、基礎構造から取り外すことができる。
図9では、ブレードボックス86が、かみそりカートリッジ90のハウジング94内の開口部92内へ挿入されてその中に固定されるか、最初からかみそりカートリッジ内に完全に形成される(図示せず)。
【0061】
このようにかみそりカートリッジを組み立てると、各個々のかみそり刃を刃支持部に又はハウジングに付着させ、各刃支持部−かみそり刃対又は各刃をかみそりカートリッジハウジング内に挿入し、各別個のかみそり刃を所望の刃の高さ、角度、及び間隔に揃える、いささか時間のかかる又は難しい工程を省くことができる。本明細書に記載の方法を使用することにより、複数のかみそり刃は、ブレードボックス内に整列され、固定されており、これにより、個々の刃支持部を付着させる必要性、及び3つ以上の別個のかみそり刃をかみそりカートリッジハウジング内に整列させる難しいプロセスがなくなる。
図8及び9は、3つのかみそり刃を有するブレードボックス86を例示しているが、2つ、4つ、5つ、又はそれ以上など、任意の数のかみそり刃が、クラスタ化又は共に形成され得ることを理解されたい。
【0062】
図に例示されている刃はこれまで概ね線状の刃縁部を有するが、本明細書に記載の方法によって他の刃形状及び縁部パターンが製造され得る。
【0063】
そのため、また更なる代替実施形態では、刃縁部の直刃形状又は楔形形状に加えて別の刃構造もまた、本発明では企図される。
【0064】
これらの他の形状は、工程300a/200bで別の輪郭を備える刃先型板を使用することによって製造される。場合によっては、
図10のブレードボックス150に示されているように、非線状である内側刃先152を含む開口部154と共に材料のシート又はフレーム153が使用される。本発明のこの実施形態では、シート153は、好ましくは
図2a及び
図2bのプロセスを使用して、基礎構造内に配設され得る。
【0065】
刃先型板、ひいては、形成される刃先構造に対して、任意の数の形状又は輪郭が本発明では企図される。本発明は、
図11に示されている追加の例示的な実施形態を含むが、これらに限定されない。2つのアーチ形の刃先輪郭、例えば、ゴシックアーチ輪郭162、半円アーチ輪郭164が
図11に示されているが、任意の他の実現可能な形状の刃先構造が、本発明によって包含される(例えば、波形、セレーション、鋸歯など)。加えて、1つ以上のアンダーカット167を有する刃先輪郭166もまた、
図11に示されている。
【0066】
本明細書に記載の方法で剃毛用のかみそり刃をポリマーから製造することの多数の利点のうちの1つは、結果として生ずる形成された刃先構造又は刃縁部が、型板の刃先と非常に類似した表面粗さを有することである。したがって、鋼製刃を複製するとき、鋼製型板の刃先の研削条痕も複製される。型板がシリコン又はサファイアなどの単結晶材料から製造されると、研削条痕のない非常に滑らかな小面表面が作製され得る。したがって、結果として生ずる刃先構造は、型板の刃先と類似の表面粗さを有する。型板の刃先材料の変化は、結果として生ずる刃先の表面粗さを変化させるであろう。
【0067】
したがって、他の実施形態も以下の「特許請求の範囲」内にある。
【0068】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に断らない限り、そのような寸法のそれぞれは、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0069】
相互参照される又は関連する特許又は出願などの、本願に引用される全ての文書は、明示的に除外される、又は別途限定されない限り、参照によりその全体が本願に援用される。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのような任意の発明を教示、示唆、又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0070】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の「特許請求の範囲」にて網羅することを意図したものである。