(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6637384
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】筆記具等のキャップ
(51)【国際特許分類】
B43K 23/08 20060101AFI20200120BHJP
【FI】
B43K23/08
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-107041(P2016-107041)
(22)【出願日】2016年5月30日
(65)【公開番号】特開2017-213688(P2017-213688A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】坂元 大介
【審査官】
金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−170761(JP,A)
【文献】
特開平08−216589(JP,A)
【文献】
特開平10−217674(JP,A)
【文献】
特表2012−510386(JP,A)
【文献】
米国特許第5492248(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 3/00
23/08 − 23/12
A45D 34/00
B65D 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が開放された外筒部と、前記外筒部の内部に配置され、下端が開放され且つ上端が閉鎖された有底筒状の内筒部とが一体に連結された合成樹脂成形体からなり、前記外筒部の内面に、前記内筒部より下方に軸方向に延設され且つ径方向内方に突出された複数のガイドリブが一体に形成され、且つ、前記外筒部の内面の、前記ガイドリブの下端よりも下方に離れた位置に、複数の内向突起が一体に形成されてなる筆記具等のキャップであって、
前記外筒部の内面において、前記ガイドリブ相互間の領域を軸方向下方に延長した仮想延長領域のみに前記内向突起が配置されることを特徴とする筆記具等のキャップ。
【請求項2】
前記ガイドリブ相互間の領域と、その下方に延設される前記仮想延長領域とが、略同一内径である請求項1に記載の筆記具等のキャップ。
【請求項3】
前記ガイドリブ相互間の領域の内面及び前記内方突起よりも上方の前記仮想延長領域の内面に、径方向内方に突出し且つ軸方向に延びる平面状凸部が一体に形成されてなる請求項1または2に記載の筆記具等のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具等のキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、外筒の内周面と有底筒体よりなる内筒の外周面とが複数の縦リブにより一体に連結され、前記縦リブの下端にペン先を内方にガイドするテーパ状のガイド部が形成され、前記縦リブの下方の外筒の内周面に面状突起が一体に形成された、合成樹脂成形体よりなる筆記具等のキャップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の筆記具等のキャップは、成形後、金型から成形品のキャップを取り出すとき、コアピンの縦リブ形成用の縦溝が、前記面状突起の表面に接近した位置を通過する。その際、前記コアピンの縦溝の内縁部が前記面状突起の表面に接触して前記面状突起の表面を傷つけるおそれがある。特に、縦リブ下端の内径と面状突起上端の内径との差が小さいと、コアピンを成形品から引き抜くときに、コアピンの縦溝の内縁部が面状突起の表面に接触して前記面状突起の表面を損傷させやすくなる。
もし、前記面状突起(本願の内向突起に相当)の表面が損傷されると、筆記具本体とのキャップ装着が適正になしえず、例えば、筆記具本体の外面との取付状態が不安定となったり、キャップをペン先側に装着する際、ペン先が面状突起に引っ掛かり、円滑なキャップ装着がなしえないおそれがある。
【0005】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、金型から成形品のキャップを取り出すときに、内向突起の損傷を確実に防止し、筆記具本体外面との適正な装着が可能となる筆記具等のキャップを提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明において、「上」とはキャップ閉塞側を指し、「下」とはキャップ開口側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、下端が開放された外筒部と、前記外筒部の内部に配置され、下端が開放され且つ上端が閉鎖された有底筒状の内筒部とが一体に連結された合成樹脂成形体からなり、前記外筒部の内面に、前記内筒部より下方に軸方向に延設され且つ径方向内方に突出された複数のガイドリブが一体に形成され、且つ、前記外筒部の内面の、前記ガイドリブの下端よりも下方に離れた位置に、複数の内向突起が一体に形成されてなる筆記具等のキャップであって、前記外筒部の内面において、前記ガイドリブ相互間の領域を軸方向下方に延長した仮想延長領域のみに前記内向突起が配置されることを要件とする。
【0008】
前記第1の発明の筆記具等のキャップは、前記外筒部の内面において、前記ガイドリブ相互間の領域を軸方向下方に延長した仮想延長領域のみに前記内向突起が配置されること(即ち、ガイドリブの軸方向下方に延長した仮想延長領域に内向突起が存在しないこと)により、金型から成形品のキャップを取り出すときに、コアピンのガイドリブ形成用の縦溝の内縁部が前記内向突起の表面に接触して前記内向突起の表面を傷つけることを確実に防止できる。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の筆記具等のキャップにおいて、前記ガイドリブ相互間の領域と、その下方に延設される前記仮想延長領域とが、略同一内径であることを要件とする。
【0010】
前記第2の発明の筆記具等のキャップは、前記ガイドリブ相互間の領域と前記仮想延長領域とが、略同一内径であることにより、キャップの外筒部の内面の形状をシンプルにでき、外筒部の金型の製造コストを抑えることができる。ここで、ガイドリブ相互間の領域とその下方に延設される仮想延長領域とが、略同一内径とは、抜き勾配(例えば1度〜2度)を含むものである。また、前記ガイドリブ相互間の領域の内径、及び前記仮想延長領域の内径とは、内面形状が円筒状の場合はその内径をいい、内面形状がその他の形状(例えば、平面状、凸曲面状等)の場合は、その内面に接する仮想内接円の直径をいう。
【0011】
本願の第3の発明は、本願の第1の発明または第2の発明の筆記具等のキャップにおいて、前記ガイドリブ相互間の領域の内面及び前記内方突起よりも上方の前記仮想延長領域の内面に、径方向内方に突出し且つ軸方向に延びる平面状凸部が一体に形成されてなることを要件とする。
【0012】
前記第3の発明の筆記具等のキャップは、前記ガイドリブ相互間の領域の内面及び前記内方突起より上方の前記仮想延長領域の内面に、径方向内方に突出し且つ軸方向に延びる平面状凸部が一体に形成されてなることにより、内向突起よりも上方の外筒部の内面の平面状凸部により、金型のコアピンを抜く際のアンダーカットとなる内向突起のアンダーカット量を減少させ、適正形状の内向突起を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の筆記具等のキャップは、金型から成形品を取り出すときに、内向突起の損傷を確実に防止し、筆記具本体外面との適正な装着が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の縦断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明の筆記具等のキャップの実施の形態を図面に従って説明する。(
図1及び
図2参照)
【0016】
キャップ1は、外筒部2と、当該外筒部2の内面に一体に連結された内筒部3とからなる。キャップ1は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により製造される。外筒部2は、上端が閉鎖され且つ下端が開放された有底筒状に形成されている。内筒部3は、上端が閉鎖され且つ下端が開放された有底筒状に形成されている。外筒部2の上端と内筒部3の上端とは、連結壁部4により一体に連結されている。内筒部3の下端は、外筒部2の下端よりも上方に位置されている。外筒部2の内面は、円筒状に形成されている。外筒部2の外面は、横断面が略6角形状を有し、各辺の角部にR曲面を備える。内筒部3の外面及び内筒部3の内面は円筒状に形成されている。
【0017】
・ガイドリブ
外筒部2の内面には、径方向内方に突出され且つ軸方向に延びる複数本(例えば12本)のガイドリブ21が一体に形成されている。各々のガイドリブ21は、外筒部2の内面に等間隔に配置されている。各々のガイドリブ21は、外筒部2の内面の上端から内筒部3の下端より下方に延設されている。各々のガイドリブ21の上端は、連結壁部4に一体に連設されている。各々のガイドリブ21の下端は、内筒部3の下端より下方且つ外筒部2の下端より上方の位置に配置されている。各々のガイドリブ21は、少なくとも内筒部3の下端より下方に延設されている。各々のガイドリブ21は、キャップ1を筆記具本体のペン先側に装着する際、ペン先を内筒部3に案内するものである。各々のガイドリブ21は、下端に第1の傾斜部21aを備え、当該第1の傾斜部21aより上方且つ内筒部3の下端よりも下方に第2の傾斜部21bを備える。各々のガイドリブ21の径方向内端部(径方向頂部)と内筒部3の側壁外面との間には隙間が形成されており、各々のガイドリブ21の径方向内端部と内筒部3の側壁外面とは非接触状態に維持されている。それにより、内筒部3の肉厚変動を抑え、内筒部3の内面のヒケの発生を回避できる。
【0018】
・内向突起
外筒部2の下端部近傍内面には、径方向内方に突出する複数(例えば6個)の内向突起22が一体に形成されている。各々の内向突起22は、ガイドリブ相互間の領域5を軸方向下方に延長した仮想延長領域6のみに配置されている。各々の内向突起22は、外筒部2の内面のガイドリブ21の下端よりも下方に離れた位置に一体に形成されている。各々の内向突起22は、キャップ1を筆記具本体のペン先側に装着した状態において、筆記具本体の外面と嵌合されている。ガイドリブ相互間の領域5と、その下方に延設される仮想延長領域6とが、略同一内径である。
【0019】
・シール部
内筒部3の内面には環状にシール部31が形成される。シール部31は、キャップ1を筆記具本体のペン先側に装着した状態において、筆記具本体の外面と気密嵌合され、ペン先が密封状態にされる。シール部31は、環状突起または環状平滑面からなる
【0020】
本実施の形態の筆記具等のキャップ1は、外筒部2の内面において、ガイドリブ相互間の領域5を軸方向下方に延長した仮想延長領域6のみに内向突起22が配置されること(即ち、ガイドリブ21の軸方向下方に延長した仮想延長領域6に内向突起22が存在しないこと)により、金型から成形品のキャップ1を取り出すときに、コアピンのガイドリブ21形成用の縦溝の内縁部が内向突起22の表面に接触して内向突起22の表面を傷つけることを確実に防止できる。
【0021】
本実施の形態の筆記具等のキャップ1は、ガイドリブ相互間の領域5と仮想延長領域6とが、略同一内径であることにより、キャップ1の外筒部2の内面の形状をシンプルにでき、外筒部2の金型の製造コストを抑えることができる。
【0022】
<第2の実施の形態>
本発明の筆記具等のキャップの実施の形態を図面に従って説明する。(
図3及び
図4参照)
【0023】
キャップ1は、外筒部2と、当該外筒部2の内面に一体に連結された内筒部3とからなる。キャップ1は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により製造される。外筒部2は、上端が閉鎖され且つ下端が開放された有底筒状に形成されている。内筒部3は、上端が閉鎖され且つ下端が開放された有底筒状に形成されている。外筒部2の上端と内筒部3の上端とは、連結壁部4により一体に連結されている。内筒部3の下端は、外筒部2の下端よりも上方に位置されている。外筒部2の内面は、円筒状に形成されている。外筒部2の外面は、横断面が略6角形状を有し、各辺の角部にR曲面を備える。内筒部3の外面及び内筒部3の内面は円筒状に形成されている。
【0024】
・ガイドリブ
外筒部2の内面には、径方向内方に突出され且つ軸方向に延びる複数本(例えば12本)のガイドリブ21が一体に形成されている。各々のガイドリブ21は、外筒部2の内面に等間隔に配置されている。各々のガイドリブ21は、外筒部2の内面の上端から内筒部3の下端より下方に延設されている。各々のガイドリブ21の上端は、連結壁部4に一体に連設されている。各々のガイドリブ21の下端は、内筒部3の下端より下方且つ外筒部2の下端よりも上方の位置に配置されている。各々のガイドリブ21は、少なくとも内筒部3の下端より下方に延設されている。各々のガイドリブ21は、キャップ1を筆記具本体のペン先側に装着する際、ペン先を内筒部3に案内するものである。各々のガイドリブ21は、下端に傾斜部21cを備える。各々のガイドリブ21の径方向内端部(径方向頂部)と内筒部3の側壁外面との間には隙間が形成されており、各々のガイドリブ21の径方向内端部と内筒部3の側壁外面とは非接触状態に維持されている。それにより、内筒部3の肉厚変動を抑え、内筒部3の内面のヒケの発生を回避できる。
【0025】
・内向突起
外筒部2の下端部近傍内面には、径方向内方に突出する複数(例えば6個)の内向突起22が一体に形成されている。各々の内向突起22は、ガイドリブ相互間の領域5を軸方向下方に延長した仮想延長領域6のみに配置されている。各々の内向突起22は、外筒部2の内面のガイドリブ21の下端よりも下方に離れた位置に一体に形成されている。各々の内向突起22は、キャップ1を筆記具本体のペン先側に装着した状態において、筆記具本体の外面と嵌合されている。ガイドリブ相互間の領域5と、その下方に延設される仮想延長領域6とが、略同一内径である。
【0026】
・平面状凸部
ガイドリブ相互間の領域5の内面及び内方突起より上方の仮想延長領域6の内面に、径方向内方に突出する複数本の平面状凸部23が一体に形成されている。各々の平面状凸部23の下端が、各々の内向突起22の上端と接続されている。平面状凸部23は、内向突起22と同数の6本を有している。各々の平面状凸部23の上端が、連結壁部4と接続されている。
【0027】
・シール部
内筒部3の内面には環状にシール部31が形成される。シール部31は、キャップ1を筆記具本体のペン先側に装着した状態において、筆記具本体の外面と気密嵌合され、ペン先が密封状態にされる。シール部31は、環状突起または環状平滑面からなる
【0028】
本実施の形態の筆記具等のキャップ1は、外筒部2の内面において、ガイドリブ相互間の領域5を軸方向下方に延長した仮想延長領域6のみに内向突起22が配置されること(即ち、ガイドリブ21の軸方向下方に延長した仮想延長領域6に内向突起22が存在しないこと)により、金型から成形品のキャップ1を取り出すときに、コアピンのガイドリブ21形成用の縦溝の内縁部が内向突起22の表面に接触して内向突起22の表面を傷つけることを確実に防止できる。
【0029】
本実施の形態の筆記具等のキャップ1は、ガイドリブ相互間の領域5と仮想延長領域6とが、略同一内径であることにより、キャップ1の外筒部2の内面の形状をシンプルにでき、外筒部2の金型の製造コストを抑えることができる。
【0030】
本実施の形態の筆記具等のキャップ1は、ガイドリブ相互間の領域5の内面及び内方突起より上方の仮想延長領域6の内面に、径方向内方に突出し且つ軸方向に延びる平面状凸部23が一体に形成されてなることにより、内向突起22よりも上方の外筒部2の内面の平面状凸部23により、金型のコアピンを抜く際のアンダーカットとなる内向突起22のアンダーカット量を減少させ、適正形状の内向突起22を得ることができる。
【0031】
本発明の筆記具等のキャップ1は、例えば、マーキングペン、サインペン、ボールペン等の一般的な筆記具のほか、修正液、化粧液、接着剤等の塗布液を収容した塗布具にも適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 キャップ
2 外筒部
21 ガイドリブ
21a 第1の傾斜部
21b 第2の傾斜部
21c 傾斜部
22 内向突起
23 平面状凸部
3 内筒部
31 シール部
4 連結壁部
5 ガイドリブ相互間の領域
6 仮想延長領域