特許第6637510号(P6637510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6637510
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】排気ガスからのエネルギ回収システム
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/00 20060101AFI20200120BHJP
   F02C 6/02 20060101ALI20200120BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20200120BHJP
   F02C 7/141 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   F02C6/00 Z
   F02C6/02
   F02C7/00 B
   F02C7/00 G
   F02C7/141
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-536265(P2017-536265)
(86)(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公表番号】特表2018-510281(P2018-510281A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】FR2016050341
(87)【国際公開番号】WO2016132057
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年1月9日
(31)【優先権主張番号】1551319
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デスキューブ,オリビエ・ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ベドリーヌ,オリビエ
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−193865(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第01557817(GB,A)
【文献】 特表平01−500605(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第01166419(FR,A1)
【文献】 特開昭53−011220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00− 1/70
B64C 1/00−99/00
B64D 1/00−47/08
B64F 1/00− 5/60
B64G 1/00−99/00
F02C 1/00− 9/58
F02G 1/00− 5/04
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリードガスとして知られている、排気ガスの少なくとも一部(14)をブリードオフし、前記ブリードガスを大気圧より低い圧力の膨張ガス(42)になるように膨張させるように適合された、回収軸(40)を中心に回転可能に取り付けられたタービン(34)と、
冷熱源(45)を使用して、前記膨張ガス(42)を冷却ガス(46)になるように冷却するように適合された第1の熱交換器(44)と、
前記冷却ガス(46)を大気圧まで圧縮するように適合された、前記回収軸(40)を中心に回転可能に取り付けられた圧縮機(36)と、
冷熱源(45)を第1の熱交換器(44)に送るように構成されたファン(38)であって、回収軸(40)に回転駆動されるファン(38)と、
を備える、少なくとも1つのターボシャフトエンジン(10)からの排気ガス(16)からのエネルギ回収システム。
【請求項2】
第1の熱交換器(44)に入る前に膨張ガス(42)の予備冷却を実施するように適合された第2の熱交換器(50)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギ回収システム。
【請求項3】
第1の熱交換器(44)に入る前に膨張ガス(42)の予備冷却を実施するように適合された空気取入口(51)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のエネルギ回収システム。
【請求項4】
複数のターボシャフトエンジン(10)から発生する排気ガス(16)をブリードオフするために、タービン(34)を複数の排気管(22)に連結する複数のダクト(24)を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエネルギ回収システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエネルギ回収システム(12)を装備したターボシャフトエンジン。
【請求項6】
ガス発生器軸に回転駆動されるガス発生器をさらに備え、回収軸(40)がガス発生器軸に連結されていることを特徴とする、請求項5に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項7】
フリータービン軸を回転駆動するフリータービン(20)をさらに備え、回収軸(40)がフリータービン軸に連結されていることを特徴とする、請求項5または6に記載のターボシャフトエンジン。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のターボシャフトエンジン(10)を備えるヘリコプタ。
【請求項9】
後軸(62)に駆動されるテールロータ(64)をさらに備え、回収軸(40)が前記後軸(62)に連結されていることを特徴とする、請求項8に記載のヘリコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスからのエネルギ回収システムに関する。特に、本発明は、たとえばヘリコプタなど、航空機に取り付けられたターボシャフトエンジンからの排気ガスからのエネルギ回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプタを含め、航空機は、一般に1つまたは複数のターボシャフトエンジンを装備し、その原理は、燃料が噴射されるガスの燃焼によってタービンを回転駆動することである。
【0003】
タービンの出口では、排気ガスとして知られている、タービンを回転駆動した既燃ガスが、排気管を通って外部に排出される。ターボシャフトエンジンのサイクルは、約600℃の排気ガス温度をもたらす。この排気ガスの流れに含まれる理論的熱エネルギは、タービン入口で噴射される燃料に含まれるポテンシャルエネルギの60%と推定される。
【0004】
したがって、ターボシャフトエンジンの効率を高めるために、この熱エネルギの一部の回収を試みることが有利である。これを行うため、具体的には、ターボシャフトエンジンの排気管に位置する熱交換器を使用して、熱エネルギの一部の回収を可能にするという解決方法が提案された。この回収された熱エネルギは、たとえば、ターボシャフトエンジンに供給されるガスを燃焼前に予熱すること、あるいは、航空機内に存在するタービンエンジンまたはピストン機械型の二次機械からのガスを再加熱することに使用される。
【0005】
しかし、これらの解決方法は、多数の欠点をもたらす。これは、排気管に熱交換器が存在することで、タービンの動作に影響を及ぼす圧力損失がもたらされるからである。この熱交換器は、ターボシャフトエンジンの性能に影響を及ぼし、適切な洗浄手順を必要とするファウリングをもたらすおそれがあり、またブレード損失およびブレード脱落の場合には劣化をもたらすおそれもある。ブレード脱落は、ターボシャフトエンジンのフリータービンの過速度に対する機械的保護である。
【0006】
加えて、このような熱交換器の使用には、この熱交換器と共に動作するためにターボシャフトエンジンを較正することが必要である。ガスタービンに燃料を供給するガスを予熱するための熱交換器を使用する状況では、熱交換器の存在は、熱交換器がない場合の動作点とは異なるエンジン動作点を必要とし、これは、熱交換器が使用されない場合に、エンジン性能が大きく影響されることを意味する。この熱交換器の不使用は、それが(熱交換器の故障により)偶発的な場合には、熱交換器の劣化およびエンジンの不動作をさらに引き起こすおそれがある。
【0007】
最後に、排気管内の熱交換器の動作に対する制約(600℃以上の高温、4〜8バールの圧力など)は、具体的には、そのサイズおよび重量の増加をもたらす熱交換器の適切なサイズ決定、およびこれらの制約に耐えることができる材料の使用を必要とする。しかし、制約に耐えるように適合されたこれらの材料の熱伝導性能は、一般に劣っており、それによって熱交換器の効率および有用性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、既知の排気ガスからのエネルギ回収システムの欠点の少なくともいくつかを克服することである。
【0009】
具体的には、本発明はまた、本発明の少なくとも1つの実施形態において、ターボシャフトエンジンの動作に影響を及ぼす圧力損失をもたらさないエネルギ回収システムを提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、その故障がターボシャフトエンジンの動作に影響を及ぼさないエネルギ回収システムを提供することを目的とする。
【0011】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの実施形態において、既存のターボシャフトエンジンに設置することができるエネルギ回収システムを提供することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、少なくとも1つの実施形態において、より優れた熱交換効率を有する材料で作られた熱交換器の使用を可能にするエネルギ回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明は、
ブリードガスとして知られている、排気ガスの少なくとも一部をブリードオフし、前記ブリードガスを大気圧より低い圧力の膨張ガスになるように膨張させるように適合された、回収軸を中心に回転可能に取り付けられたタービンと、
冷熱源を使用して、前記膨張ガスを冷却ガスになるように冷却するように適合された第1の熱交換器と、
前記冷却ガスを大気圧まで圧縮するように適合された、前記回収軸を中心に回転可能に取り付けられた圧縮機と、
冷熱源を第1の熱交換器に送るように構成されたファンであって、回収軸に回転駆動されるファンと、
を備える、少なくとも1つのターボシャフトエンジンからの排気ガスからのエネルギ回収システムに関する。
【0014】
したがって、本発明によるシステムは、少なくとも1つのターボシャフトエンジンからの排気ガスからエネルギの少なくとも一部を回収することを可能にし、これは、従来技術とは異なり、オフセットして実施される。これは、この場合は、ターボシャフトエンジンの排気管に熱交換器が位置する従来技術よりもより良好な条件で、熱交換器によって熱交換を実施するために、排気ガスの一部がブリードオフされるからである。排気ガスをブリードオフすることができるタービンは、排気ガスの圧力を下げることもでき、したがって、排気ガスの温度を下げることができる。したがって、熱交換器はより低い圧力およびより低い温度を受けて、より優れた熱交換効率を有する材料の使用が可能になる。同様に、タービンと圧縮機との間を循環するガスの圧力が低く、大気圧より低いことは、一般にこれらのガスによるエネルギ回収システムの構成要素への内部応力を制限する。
【0015】
好ましくは、主に高温ガスを取り除くことによって良好なレベルの効率を維持するために、エネルギ回収システムは排気ガスのすべてをブリードオフはせず、ブリードオフされる排気ガスの割合は、排気ガスを排出することができるターボシャフトエンジンの排気管の空気力学に依存する。ブリードオフは、排気管の屈曲部で有利に実施されることができる。たとえば、この種の屈曲部は、一般にヘリコプタに取り付けられたターボシャフトエンジンの排気管内に存在する。
【0016】
排気ガスから回収されるエネルギは、排気ガスがタービンを通過して回収軸に送られるときに発生する機械的エネルギと、第1の熱交換器によって冷却された排気ガスを圧縮するために圧縮機を回転駆動するために、回収軸によって消費されるエネルギとの間の差から生じる。交換器に冷熱源を送るのに必要とされるエネルギは、必要に応じて、この回収エネルギから取られてもよい。したがって、回収エネルギは、回収軸によって伝達される機械的エネルギの形で使用されることができる。回収軸は、さらに、たとえば、リレーボックスを介して他の軸に連結されて、これらの他の軸にさらなる機械的エネルギを供給する。回収軸で回収されるエネルギを使用可能な軸は、たとえば、ターボシャフトエンジンのフリータービンの軸、ターボシャフトエンジンのガス発生器の軸、ヘリコプタのメイン・トランスミッション・ボックスの軸、ヘリコプタのテールロータに連結された後軸などである。回収軸で回収されるこのエネルギは、機械的エネルギの形であるが、続いて別の(電気的、空気的などの)形に変換されることができる。
【0017】
さらに、排気ガスのブリードオフ部分は、ターボシャフトエンジン内に圧力損失を生じさせない。ターボシャフトエンジンの排気管に交換器が位置した従来技術とは異なり、タービンによる排気ガスのブリードは、ターボシャフトエンジンの通常動作を阻害せず、したがって、圧力損失を制限する。加えて、エネルギ回収システムのいかなる故障も、ターボシャフトエンジンの動作に影響を及ぼすことはなく、その排気ガスのすべてが排気管を通って排出される。さらに、エネルギ回収システムは、このようにして既存のターボシャフトエンジンに適合され、これが設置されているターボシャフトエンジンの動作点のいかなる変更も必要とせず、したがって、その性能に影響を及ぼさない。
【0018】
有利には、本発明によるシステムは、第1の熱交換器に入る前に膨張ガスの予備冷却を実施するように適合された第2の熱交換器を備える。
【0019】
本発明のこの態様によれば、第2の交換器により、第1の熱交換器に入る前に排気ガスの温度を下げることができるようになって、第1の熱交換器の温度制約のさらなる軽減が可能になり、したがって、第1の熱交換器は、より効率的な材料および縮小されたサイズによって、高い熱交換性能を可能にするように設計されることができる。有利には、かつ本発明によれば、第1の交換器に使用される材料はアルミニウムであり、軽減した重量(約2700kg/mの密度)に対する良好な熱交換性能(約150W/m/℃の熱伝導率)間の良好な妥協が可能になる。
【0020】
有利には、本発明によるシステムは、第1の熱交換器に入る前に膨張ガスの予備冷却を実施するように適合された外気取入口を備える。
【0021】
本発明のこの態様によれば、空気取入口により、膨張ガスが、その温度を下げるために、外部からの空気と混合することができるようになる。空気取入口を通した外気の注入は、膨張ガスが外気の大気圧より低い圧力であることによって容易になる。このようにして冷却されたガスは、第1の交換器に送られる。空気取入口は、前述の第2の交換器に取って代わるか、またはこれを補うことができる。
【0022】
有利には、本発明によるシステムは、複数のターボシャフトエンジンから発生する排気ガスをブリードオフするために、タービンを複数の排気管に連結する複数のダクトを備える。
【0023】
本発明のこの態様によれば、単一のエネルギ回収システムは、複数のターボシャフトエンジンから発生する排気ガスのエネルギの一部の回収を可能にする。
【0024】
本発明はまた、本発明によるエネルギ回収システムを装備したターボシャフトエンジンに関する。
【0025】
本発明によるターボシャフトエンジンは、エネルギ回収システムによる、排気ガスに含まれる熱の形のポテンシャルエネルギの一部の回収によって、より優れた動作の全体効率を可能にする。
【0026】
有利には、本発明によるターボシャフトエンジンは、ガス発生器軸に回転駆動されるガス発生器をさらに備え、回収軸がガス発生器軸に連結されている。
【0027】
本発明のこの態様によれば、エネルギ回収システムによって回収された機械的エネルギは、ガス発生器軸で使用され、それによってターボシャフトエンジンの性能を向上させる。エネルギ回収システムの故障の場合に、ガス発生器は正常に動作することができ、唯一の結果は、ターボシャフトエンジンの性能が低下することである。
【0028】
有利には、本発明によるターボシャフトエンジンは、フリータービン軸を回転駆動するフリータービンをさらに備え、回収軸がフリータービン軸に連結されている。
【0029】
本発明のこの態様によれば、エネルギ回収システムによって回収された機械的エネルギは、たとえばプロペラの回転を駆動するよう意図された、フリータービン軸で使用され、それによってターボシャフトエンジンの性能を向上させる。エネルギ回収システムの故障の場合に、ガス発生器は正常に動作することができ、唯一の結果は、ターボシャフトエンジンの性能が低下することである。
【0030】
本発明はまた、本発明によるターボシャフトエンジンを備えるヘリコプタに関する。
【0031】
有利には、かつ本発明によれば、ヘリコプタは後軸に駆動されるテールロータをさらに備え、回収軸が前記後軸に連結されている。
【0032】
本発明はまた、
排気ガスの少なくとも一部をブリードオフするステップと、
ブリードオフステップでブリードオフされた排気ガスを膨張させるステップと、
膨張ステップで膨張された排気ガスを冷却するステップと、
冷却ステップで冷却された排気ガスを圧縮するステップと、
を有する、ターボシャフトエンジン排気ガスからのエネルギ回収方法に関する。
【0033】
有利には、本発明によるエネルギ回収方法は、本発明によるエネルギ回収システムによって実施される。
【0034】
有利には、本発明によるエネルギ回収システムは、本発明によるエネルギ回収方法を実施する。
【0035】
本発明はまた、上記または下記の特徴の全部または一部による組み合わせを特徴とする、エネルギ回収システム、エネルギ回収方法、ターボシャフトエンジン、およびヘリコプタに関する。
【0036】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、全く非限定的に与えられ、添付の図面を参照する、以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態によるエネルギ回収システムを装備したターボシャフトエンジンの概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態によるエネルギ回収システムの概略図である。
図3】本発明の第2の実施形態によるエネルギ回収システムの概略図である。
図4】本発明の実施形態によるエネルギ回収方法の概略表示である。
図5】本発明の実施形態によるターボシャフトエンジンを備えるヘリコプタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の実施形態は例である。説明は1つまたは複数の実施形態について言及するが、これは、必ずしも各言及が同一の実施形態に関連すること、あるいは、特徴が単一の実施形態だけに適用することを意味するものではない。異なる実施形態の個々の特徴は、他の実施形態を提供するために組み合わせることもできる。
【0039】
図1は、本発明の実施形態によるエネルギ回収システム12を装備したターボシャフトエンジン10の概略表示である。
【0040】
エネルギ回収システム12は、排気ガス16から発生する熱エネルギの一部を回収するために、ターボシャフトエンジン10の排気ガスの少なくとも一部14を回収するように適合される。これらの排気ガス16は、入口ダクトを通ってターボシャフトエンジン10に入り、次いで、ターボシャフトエンジン10の出口にあるフリータービン20の回転を駆動するために、ターボシャフトエンジン10内で燃料と混合して燃焼される、ガス18によって形成される。既燃ガスの運動エネルギの大部分は、固定して回転させたフリータービン20によって回収され、残留運動エネルギは、このフリータービン20の出口において、排気ガス16を排出することができる。排気ガス16は、航空機内のターボシャフトエンジン10を使用する状況では、航空機の外部の外気に排気ガス16を排出することができる排気管22を通って排出される。
【0041】
エネルギ回収システム12は、たとえば、ターボシャフトエンジン10の排気管22に連結されたブリードダクト24を用いて、矢印14で表されるこれらの排気ガスの一部をブリードオフすることができる。排気ガスの一部14のブリードオフは、ブリードオフされた排気ガスを膨張させることができるタービンのおかげで実施されて、ブリードダクト24を通して排気管内の排気ガスの一部14を吸い出すことを可能にする。本発明の別の実施形態によれば、エネルギ回収システム12は、複数のターボシャフトエンジンから発生する排気ガスの一部をブリードオフするために、複数の排気管に連結された複数のブリードダクトを備える。
【0042】
エネルギ回収システム12は、外気28の給気用ダクト26をも備えて、エネルギ回収システム12内に存在する熱交換器を用いて、タービンによってブリードオフされたガスを冷却することを可能にする。いったん排気ガスの一部14からのエネルギが回収されると、出口ガス30は排出ダクト32を通って排出される。この排出ダクト32は、熱交換器に入った後に外気28を排出するために使用することもできる。
【0043】
図2は、第1の実施形態によるエネルギ回収システム12の概略表示である。この第1の実施形態では、タービン34、圧縮機36、およびファン38が、回収軸40に連結されている。タービン34は、排気管10から排気ガスの一部14をブリードオフし、これらの排気ガスを膨張させ、したがって、これらの温度を下げ、それによって、矢印42で表される膨張ガスを形成することができる。タービン34による膨張から生じた膨張ガス42の圧力は、大気圧より小さい。膨張ガス42は、冷却されるために第1の熱交換器44を通過し、したがって、矢印46で表される冷却ガスを形成する。膨張ガス42の冷却は、この場合は、回収軸40によって回転駆動され、外気28を加えることを可能にするファン38により、第1の熱交換器44に送られる冷熱源45のおかげで、第1の熱交換器44で実施される。
【0044】
第1の熱交換器44によって冷却されたガス46は、回収軸40に連結された圧縮機36に送られる。圧縮機は、図1を参照して既に示したように、たとえば排出ダクト32を通して排出される出口ガス30として知られている、大気圧に実質的に等しい圧力のガスを得るために、冷却ガス46を圧縮する。排出ダクトは、第1の熱交換器44に入った後に冷熱源45を排出することも可能にする。冷熱源45および出口ガス30の排出は、矢印48で表される。
【0045】
エネルギ回収システム12によって回収されたエネルギは、回収軸40によって伝達される機械的エネルギの形で使用されることができる。この回収された機械的エネルギは、排気ガスの一部14の通過のためにタービン34の回転によって回収軸40に送られる機械的エネルギと、回収軸40から発生し、冷却ガス46を大気圧に実質的に等しい圧力まで圧縮するために圧縮機36によって消費される、機械的エネルギとの間の差から生じる。第1の熱交換器44によって膨張ガスを冷却することにより、膨張ガスの温度を下げることが可能になり、したがって、冷却ガスを大気圧まで圧縮するために圧縮機36が必要とするエネルギを減少させることが可能になる。したがって、回収されるエネルギの量は、第1の熱交換器44による冷却の効率に依存する。ファン38によって消費されるエネルギも、回収エネルギから取られなければならない。回収軸40における回収エネルギは、次いで、たとえば、リレーボックスを用いて航空機の他の軸に伝達され、あるいは、別のエネルギ形態に変換されることができる。
【0046】
特定の状況では、タービンの出口で、かつ第1の熱交換器44に入るときに、膨張ガス42の温度は高いままである。その結果、こうした高温はターボシャフトエンジン10の排気管22内で発生する温度よりも低いが、第1の熱交換器44の寸法および材料はこうした高温と相性がよくなければならない。
【0047】
より効率的な第1の熱交換器44の使用を可能にするために、1つの解決方法は、膨張ガス42の温度を事前に下げることである。これを行うため、図3を参照して示すように、エネルギ回収システム12は、第1の熱交換器40に入る前に膨張ガス42を冷却することができる第2の熱交換器50を備える。図3において、図2に示す実施形態と比べて変わってない要素は、同じ参照符号を有する。第2の熱交換器50での予備冷却は、たとえば、圧縮機を出る出口ガス30と、第1の熱交換器44に入った後の冷熱源45とからなる、第2の冷熱源52を使用して実施される。このように、第2の熱交換器50によるこの予備冷却のおかげで、第1の熱交換器に入るガス53の温度はより低い。したがって、第1の熱交換器44は、より適切な温度限界を有し、より効率的な冷却および/またはより小さい寸法および重量を可能にする材料で作ることができる。
【0048】
たとえば、鋼鉄などの高温に耐性がある材料は、約15W/m/℃の熱伝導率および約7800kg/mの密度を有する。したがって、第2の熱交換器50は、たとえば鋼鉄で作ることができる。アルミニウムは、高温に対する耐性がより低いが、約150W/m/℃の高い熱伝導率および約2700kg/mの密度を有する。したがって、第1の熱交換器44は、たとえば、軽量化のために、これを通過するガス53のより効率的な冷却を可能にするアルミニウムで作ることができる。
【0049】
温度およびサイズ決定に対する制約、ならびに排気ガスの少なくとも一部がブリードオフされるターボシャフトエンジンによって異なってよい所望の性能に応じて、また1つまたは2つの交換器を有する実施形態に従って、他の種類の金属または合金を第1の熱交換器44および第2の熱交換器50の製造のために使用することができる。熱交換器および/またはこうした熱交換器に使用される材料は、航空機への適用のためにあらかじめテストされていることが好ましい。たとえば、エネルギ回収システムは、航空使用のためにあらかじめテストされた、航空機の客室空気調和システムに使用されるタイプの熱交換器を使用することができる。
【0050】
第1の熱交換器44に入る前の予備冷却は、この実施形態では、第1の熱交換器44に向かうガスに外気を注入することができる空気取入口51の使用によっても実施される。ガスと外気との混合は、このように、温度の低下を可能にする。外気の注入は、エネルギ回収システム12内に存在するガスが大気圧よりも低い圧力であることによって、さらに容易になる。
【0051】
実施形態に応じて、エネルギ回収システム12は、第1の熱交換器44のみ、あるいは、第2の熱交換器50を伴う、または空気取入口51を伴う、または第2の熱交換器50と空気取入口51との組み合わせを伴う、第1の熱交換器44を備えてよい。
【0052】
図4は、本発明の実施形態によるエネルギ回収方法54の概略表示である。エネルギ回収方法54は、図1を参照して説明したように、ブリードガスとして知られている、ターボシャフトエンジンから発生する排気ガスの少なくとも一部をブリードオフするステップ55を有する。次いで、ブリードガスを膨張させるステップ56で、たとえば、前述のように、エネルギ回収システム12内のタービン34によって、ブリードガスが膨張される。この膨張ステップ56は、圧力の低下によりブリードガスの温度よりも低い温度の膨張ガスの形成を可能にする。次いで、膨張ガスは冷却ステップ58の間に冷却されて、冷却ガスを形成する。次いで、これらの冷却ガスは圧縮ステップ60の間に圧縮される。
【0053】
このようにして実施されるエネルギ回収方法54は、圧力低下を伴う逆ブレイトンサイクルである熱力学サイクルに従う。このサイクルによって回収される機械的エネルギは、ブリードオフされた排気ガスに含まれる熱エネルギから発生する。
【0054】
図5は、本発明の実施形態によるターボシャフトエンジン10を備えるヘリコプタ61の概略表示である。ターボシャフトエンジンは、本発明の実施形態によるエネルギ回収システム12を装備する。この実施形態では、エネルギ回収システム12は、ヘリコプタ61の後軸62に連結されている。この後軸62は、ヘリコプタ61のテールロータ64を固定して回転させることができ、具体的には、メイン・トランスミッション・ボックスを介してターボシャフトエンジン10に駆動されるメインロータ66によって及ぼされるトルクを補償することによって、ヘリコプタを安定化させることを可能にする。エネルギ回収システム12によって回収された機械的エネルギは、このように、回収軸40によってヘリコプタ61の後軸62に伝達される。
【0055】
エネルギ回収システム12の始動には、たとえば、ヘリコプタの後軸62を介して外部エネルギ源を加えることにより、タービン34および圧縮機36に連結された回収軸40を事前に回転状態にさせることが必要である。したがって、始動の間、エネルギ回収システム12はエネルギ受信機である。いったん動作点に達すると、エネルギ回収システム12は、平衡状態に達して、機械的エネルギの回収を可能にする排気ガスの少なくとも一部のブリードオフのおかげで原動力となる。
【0056】
本発明は、説明した実施形態のみに限定されない。具体的には、1つまたは複数の交換器で使用される冷熱源は、たとえば電動ファンまたはポンプなどを介した給気など、異なる形態を取ることができる。加えて、システムによって生成された機械的エネルギは、たとえば、ヘリコプタのメイン・トランスミッション・ボックスで、あるいは、空気エネルギ、電気エネルギなどに変換することにより、異なる形態で再利用されることができる。さらに、エネルギ回収システムは、3つ以上の交換器を備えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5