【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0017】
図1から
図3は、本実施例の主要部分を示すもので、
図1は加熱調理器本体を前面側から見た斜視図、
図2は同本体の外枠を除いた状態で後方側から見た斜視図、
図3は
図1のA−A断面図である。
【0018】
図において、加熱調理器の本体1は、加熱室28の中に加熱する食品を入れ、マイクロ波やヒータの熱、過熱水蒸気を使用して食品を加熱調理する。
【0019】
ドア2は、加熱室28の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱や過熱水蒸気を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0020】
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0021】
ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられており、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0022】
入力手段71は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、マイクロ波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱する時間等と加熱温度の入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成されている。 外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。
【0023】
水タンク42は、加熱水蒸気を作るのに必要な水を溜めておく容器であり、加熱調理器の本体1の前面下側に設けられ、本体1の前面から着脱可能な構造とすることで給水および排水が容易にできるようになっている。
【0024】
後板10は、前記したキャビネットの後面を形成するものであり、上部に外部排気ダクト18が取り付けられ、食品から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風(廃熱)39を外部排気ダクト18の外部排気口8から排出する。
【0025】
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47、制御基板23、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却するファン装置15等が取り付けられている。 加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波エネルギーが導波管47、回転アンテナ26の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26の出力軸46aは回転アンテナ駆動手段46に連結されている。
【0026】
ファン装置15は、底板21に取り付けた冷却モータに取り付けられた冷却ファンとで構成する。このファン装置15によって発生する冷却風39は、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33やインバータ基板(図示無し)、重量検出手段25c,25bなどを冷却する。また、加熱室28の外側と外枠7の間および前記したように熱風ケース11aと後板10の間を流れ、外枠7と後板10を冷却しながら外部排気ダクト18の外部排気口8より排出される。さらに、後述する熱風モータ13を冷却するためのダクト16aと、後述する赤外線ケース48内に収められた赤外線ユニット50を冷却するためのダクト16bが設けられ、赤外線ユニット50を冷却した冷却風39は、加熱室28内の排熱(水蒸気など)を廃棄する排気ダクト28eの反対側から排出された後外部排気ダクト18より外に排出される。
【0027】
加熱室28の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、該熱風ユニット11内には加熱室28内の空気を効率良く循環させる熱風ファン32が取り付けられ、加熱室後部壁面28bには空気の通り道となる熱風吸気孔31と熱風吹出し孔30が設けられている。
【0028】
熱風ファン32は、熱風ケース11aの外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0029】
また、熱風ユニット11は、加熱室奥壁面28bの後部側に熱風ケース11aを設け、加熱室奥壁面28bと熱風ケース11aとの間に熱風ファン32とその外周側に位置するように熱風ヒータ14を設け、熱風ケース11aの後側に熱風モータ13を取り付け、そのモータ軸を熱風ケース11aに設けた穴を通して熱風ファン32と連結している。
【0030】
熱風モータ13は、加熱室28や熱風ヒータ14からの熱によって温度上昇するため、それを防ぐために、熱風モータカバー17によって囲い、略筒状に形成されてダクト16aを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16aの上端開口部を熱風モータカバー17の下面に接続し、下端開口部をファン装置15の吹出し口に接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を熱風モータカバー17内に取り入れるようにしている。
【0031】
加熱室28の加熱室天面28cの裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0032】
また、加熱室28の加熱室天面28cの奥側には後述する赤外線ユニット50が設けられ、赤外線ユニット50を冷却するために赤外線ケース48にて覆い、略筒状に形成されてダクト16bを熱風ケース11aと後板10との間に位置し、ダクト16bの上端開口部を赤外線ケース48の側面に接続し、下端開口部を熱風モータカバー17上面と接続し、ファン装置15からの冷却風39の一部を取り入れるようにしている。
【0033】
また、加熱室底面28aには、複数個の重量検出手段25、例えば前側左右に右側重量センサ25b、左側重量センサ(図示無し)、後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。 テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良い材料で成形されている。
【0034】
ボイラー43は、熱風ユニット11の熱風ケース11aの外側面に取り付けられ、飽和水蒸気を熱風ユニット11内に臨ませ、熱風ユニット11内に噴出した飽和水蒸気は熱風ヒータ14によって加熱され過熱水蒸気となる。
【0035】
ポンプ手段87は、水タンク42の水をボイラー43まで汲み上げるもので、ポンプとポンプを駆動するモータで構成される。ボイラー43への給水量の調節はモータのON/OFFの比率で決定する。
【0036】
次に、
図4〜
図7を用いて赤外線ユニットについて詳細を説明する。
【0037】
51はモータで、モータ51の向きは、回転軸51aと加熱室奥壁面28bと並行となるように取り付けられている。そして、回転軸51aが後述する筒状のユニットケース54を回転(駆動)させることで、ユニットケース54に収めた赤外線センサ52
を搭載した基板53を回転させて赤外線センサ52のレンズ部52aの向きを加熱室底面28aの奥側(加熱室奥壁面28b側)から加熱室開口部28dの高さ方向に下方から30%程度までの範囲を回転移動して温度を検出できるようにしている。モータ51はステッピングモータを使用し制御基板23に設けられた制御部の制御によって回転軸51aを正転、逆転、また回転角度を好みに動作可能となっている。
【0038】
52は赤外線センサで、赤外線検出素子(例えばサーモパイル)を複数個設けたもので、ここでは、回転軸51aの鉛直方向に一列に8素子整列した赤外線センサを使用している。そのため、加熱室底面28aの左右方向は一度に前記複数個所の温度の検出が可能であり、加熱室28の奥側(加熱室奥壁面28b側)から前側(ドア2側)にかけては、赤外線センサ52を回転させることで加熱室底面28aの全域の温度を検出するものである。
【0039】
54は筒状のユニットケースで、最大径部に基板53を配置し赤外線センサ52のレンズ部52aを臨ませる窓部54aを設けている。また、ユニットケース54の材料にはカーボンを含ませることでユニットケース54の特性を導電材とすることで外来ノイズのユニットケース54内への侵入を防止している。
【0040】
55は金属板から成るシャッタである。シャッタ55は、赤外線センサ52を使用しない時に後述する観測窓44aを閉じるものである(
図7参照)。また加熱室28の温度がユニットケース
54に伝わるのを防止するために、ユニットケース
54の外周に冷却風を流せるようにユニットケース
54の外周に沿って隙間を設けた風路55cを形成するようにシャッタ55を配置し、前記風路55cに冷却風39流す出入り口となる開口55aと開口55bを設けている。
【0041】
56は位置決め凸部で、赤外線センサ52の検知点を基準位置(
図4の検知点a)に示すように前記制御部がモータ51の回転を制御した時、赤外線センサ52の検知点の基準位置を補正できるように、シャッタ55によって観測窓44aを閉じた時に、位置決め凸部56が赤外線ケース48に設けられたストッパ(図示無し)に当接させた状態で回転軸51aをスリップさせることで、前記制御部の制御する基準位置と赤外線センサ52の検知する基準位置となる検知点aの位置を補正することができる。
【0042】
44は加熱室28の内方向に
突出した円弧状の観測部で、回転軸51aの回転中心と筒状のユニットケース54の中心とユニットケース54の外周に沿って設けられて円弧状に曲げられたシャッタ55の円弧の中心と円弧状の観測部44の各中心位置は全て同一位置となっている。44aは観測部44に設けた観測窓で、赤外線センサ52の検出する視野範囲となる範囲を開口している。また、マイクロ波加熱時に観測窓44aからのマイクロ波漏洩を防止するために、観測窓44aの周囲外側には立上壁(バーリング)44bを2mm程度設けている。
【0043】
観測部44を加熱室28の内側に突出させることで、最低限の狭い観測窓開口範囲で広範囲の温度検知が可能となる。
【0044】
49は凸部であり、加熱室天面28cから赤外線ケース48と赤外線ユニット50を離すもので、加熱室天面28cとの接触を凸部49のみとすることで加熱時にグリル加熱手段12や熱風ユニット11などのヒータによって加熱された加熱室天面28cの温度が赤外線ユニット50に伝わりにくいようにしている。
【0045】
次に被加熱物の温度を検出する動作について説明する。
【0046】
被加熱物(牛乳)60cの入っている上方が開口した容器の例としてコップ60を加熱室底面28aに設けられているテーブルプレート24に載置して加熱を開始した時、マグネトロン33が安定発信する1〜2秒間はシャッタ55にて観測窓44aを閉じて(
図7参照)マグネトロン33の発信開始時の不安定発信によるノイズが赤外線センサ52に入り込むのを防止する。
【0047】
マグネトロン33の発信が安定した後に、前記制御手段はモータ51の回転軸51aを基準位置に回転するように制御する。回転軸51aが基準位置へと回転することでユニットケース54も回転し、赤外線センサ52のレンズ部52aの向きも基準位置の検知点aを検知できる位置に回転(
図4,
図5参照)する。この時、冷却風39は赤外線センサ52のレンズ部52aを流れて
観測窓44aから加熱室28へと流れるので、レンズ部52aへの汚れ付着を防止している。
【0048】
ユニットケース54を回転することで、被加熱物60cの温度の検出は前述した基準位置(検知点a)からテーブルプレート24の検知点b、検知点cへと進み、さらにユニットケース54が回転するとコップ60の外側の温度を高さ方向に検知し、検知点dから検知点eの温度
を検知する。検知点がコップ60の開口部の頂点に達した後は、被加熱物60cの表面の温度を検知点fで検知し、次にコップ60の内側の温度を検知点gで検知し、次にテーブルプレート24の温度を検知点hで検知し、終点のドア2の温度を検知点iで検知する。
【0049】
検知点a〜検知点iの温度検知範囲の温度の検知は、ユニットケース54を回転する往復時の両方で行っても良いし、一度終点まで温度検知を行った後、再度基準位置に戻ってから再び検知点a〜検知点iと順次行っても良い。温度の検知数は好みに変えられ、前述した検知点a〜検知点iは、説明上の例である。
【0050】
また、温度の検知はモータ51を回転した状態で検出しても良いし、温度を検知している間はモータ51の回転を止めて検知し、検知した後に回転を行っても良い。ただし、正確に温度を検知したい時は回転を止めて測定する方が良い。例えば、加熱初めは、ユニットケース54を回転しながら温度を検出し、被加熱物60cが加熱され、温度の上昇を検出した後に、温度上昇している付近の検知点をユニットケース54の回転を細かく止めて被加熱物60cの温度を多く検知してもよい。そうすることで、背の高いコップ60に入れられた被加熱物60cの温度を検知する場合、被加熱物60cの温度を直接検知できる範囲が狭くなるので、狭い範囲の温度検知に有効である。
【0051】
また、温度の検知点iの終点がドア2の温度を検知する位置まで設けているのは、被加熱物60cを入れたコップ60が加熱室28の手前側に載置された場合でも、コップ60の上部開口部から被加熱物60cの表面温度を検知できる位置まで拡大しているためである。
【0052】
さらに、重量検出手段25による重量情報と赤外線センサ52による検知した温度分布情報から重量情報が軽く温度分布の温度上昇が広範囲に認められるときは、被加熱物60cが薄くて軽いものと判断できる。また、重量情報が重く温度分布の温度上昇が狭い範囲のみに認められるときは、例えば背の高いコップ60に被加熱物60cが入れられていると判断できる。
【0053】
本実施例では、加熱室天面28cに赤外線ユニット50を設けたが、赤外線ユニット50の取り付ける位置は、加熱室奥壁面28b、加熱室左壁面、加熱室右壁面のいずれかの上方に取り付けられれば良く、加熱室奥壁面28bに取り付けた時は、モータ51の向きは、回転軸51aと加熱室奥壁面28bと並行となるように取り付け、ユニットケース54の回転は、ユニットケース54に収めた赤外線センサ52のレンズ部52aの向きが加熱室底面28aの奥側(加熱室奥壁面28b側)から加熱室開口部28dの高さ方向に下方から30%程度までの範囲を回転移動して温度を検知できるようにする。また、加熱室左壁面に取り付けた時は、モータ51の向きは、回転軸51aと加熱室左壁面と並行となるように取り付け、ユニットケース54の回転は、ユニットケース54に収めた赤外線センサ52のレンズ部52aの向きが加熱室底面28aの左側(加熱室左壁面側)から加熱室底面28aの右側(加熱室右壁面)の高さ方向に下方から30%程度までの範囲を回転移動して温度を検知できるようにする。そうすることで右側においたコップ60に入れられた被加熱物60cの温度を検知できる。加熱室右壁面に取り付けた時も同様の考え方で被加熱物の温度を検知可能である。
【0054】
また、加熱室天面28cの左側、右側、手前側に赤外線ユニット50を取り付けた場合でも同様の考えに基づいて設置すれば、被加熱物60cの温度を正確に検知可能である。
【0055】
また、被加熱物60cを載置する加熱室底面28aの前後方向の長さと左右方向の長さの関係において、本実施例の温度検知を行う場合は、長さの短い前後方向に赤外線センサ52を回転させる方が、コップ60に入れられた被加熱物60cの温度を検知するのに向いている。
【0056】
さらに、本実施例では、コップ60に入れた被加熱物60cの温度検知の方法を詳細説明したが、容器を使用しない被加熱物60cがブロック状の大きな塊の場合でも、ブロック状の被加熱物60cの側面の高さ方向と上面の温度を検知できるため、被加熱物60cの温度分布を詳細に検知することが可能となる。
【0057】
上記した本実施例によれば、容器の高さに左右される事無く被加熱物の温度検出に優れ、さらに赤外線センサは温度の影響や電波漏れに対しても配慮された加熱調理器とすることができる。以上要するに本発明は、「被加熱を入れて加熱する加熱室と、前記被加熱物を加熱する加熱手段と、前記被加熱物の上方斜めより該被加熱物の表面温度を検知する赤外線センサと、前記被加熱物の側面の高さ方向に温度を検知するように前記赤外線センサを駆動するモータと、前記赤外線センサの検知温度に基づき前記加熱手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする加熱調理器。」のように構成したものである。さらに本発明においては、「前記赤外線センサは、観測窓を介して前記被加熱物の温度を検知するものであり、前記赤外線センサを使用しないときに前記観測窓を閉じるシャッタを備えたことを特徴とする加熱調理器」のように構成したものである。また本発明は、「加熱物を入れて加熱する加熱室と、前記被加熱物を加熱する加熱手段と、該加熱室の奥側に設けられた赤外線ユニットと、該赤外線ユニット内に収納され、前記被加熱物の上方斜めより該被加熱物の表面温度を検知する赤外線センサと、前記被加熱物の側面の高さ方向に温度を検知するように前記赤外線センサを駆動するモータと、前記赤外線センサの検知温度に基づき前記加熱手段を制御する制御手段と、前記赤外線ユニットに冷却風を導く冷却手段と、を備えたことを特徴とする加熱調理器。」のように構成したものである。さらに本発明においては、「前記赤外線センサは、観測窓を介して前記被加熱物の温度を検知するものであり、前記赤外線センサを使用しないときに前記観測窓を閉じるシャッタを備えるとともに、前記赤外線センサを使用しないときに前記シャッタと前記赤外線センサとの間に前記冷却風を導く風路を形成している加熱調理器」ように構成したものである。