(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電動モータの駆動力で走行可能な電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両の普及に伴い、この車両に搭載されたバッテリへ充電する車両用充電装置の普及が求められている。
このような車両用充電装置は、住戸の車庫(駐車スペース)などに設置されるが、例えば車庫の壁面等に固定されて設置されたり、車庫の地面に立設された充電スタンド用支柱に支持されたりしている。
【0003】
ところで、上記充電スタンド用支柱のような支柱をコンクリート基礎に立設するのに用いる支柱支持構造や施工方法としては、従来より種々のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図8に示すように、特許文献1に記載された手摺用支柱支持構造501は、コンクリート基礎610に立設される手摺に設けられた手摺用支柱514を、コンクリート基礎610に結合するためのものである。
【0004】
手摺用支柱支持構造501は、表面に仕上げ層600が設けられたコンクリート基礎610に埋設されたアンカーボルト520と、アンカーボルト520を貫通させた状態でナット521を締結してコンクリート基礎610に固定されて立ち上げられた柱支持部材532を有する柱脚部材530と、柱脚部材530に下部を固定された管状の支柱本体540と、支柱本体540の下部と柱脚部材530とで形成された手摺用支柱下部内に充填され、コンクリート基礎610と一体に固化されたグラウト材570と、を備えている。
【0005】
そこで、コンクリート基礎610にアンカーボルト520を埋設するだけでよく、専用のアンカ部材を用いる場合と比較して、施工が容易である。しかも、手摺用支柱下部内にグラウト材570を充填してコンクリート基礎610と一体に固化させたため、柱脚部材530が水に接触するのを防止して錆の発生を防ぐとともに、手摺用支柱514のぐらつき、たわみを抑制でき、高い支持強度を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような従来の手摺用支柱支持構造501により支柱本体540をコンクリート基礎610に固定する場合、コンクリート基礎工事でコンクリート基礎610を打設する際にアンカーボルト520を予め埋設する。このコンクリート基礎工事後、コンクリートが固まるのを待つ数日の養生期間を設けた後に、アンカーボルト520に柱脚部材530を固定する。そして、柱脚部材530に支柱本体540を固定した後、支柱本体540の側面に設けた充填口542からグラウト材570を充填し、固化させなければならない。
そのため、上記手摺用支柱支持構造501の施工方法では、アンカーボルト埋設工程と、数日の養生期間を空けて行う支柱本体設置工程及びグラウト材充填工程とが必要となり、二日を要する施工作業となるため施工コストが高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、工期を短縮して施工コストを抑えながら、支柱内に雨水等が溜まって腐食するのを防止すると共に高い支持強度を得ることができる充電スタンド用支柱の施工方法および支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る充電スタンド用支柱の施工方法は、下記
(1)の構成を特徴としている。
(1) 充電装置を支持する管状の支柱をコンクリート基礎に立設するための充電スタンド用支柱の施工方法であって、前記支柱の設置位置に埋設穴を掘る工程と、
電源用ケーブルを通したPF管を前記支柱内に挿入する工程と、前記埋設穴の底面に対して垂設した状態の前記支柱の下部内に充填口から充填材を充填する工程と、
前記充填材を充填した後に、前記埋設穴をコンクリートで埋戻し、前記充填材が充填された前記支柱の周囲に前記コンクリート基礎を打設する工程と、を備えたことを特徴とする充電スタンド用支柱の施工方法。
【0010】
上記(1)の構成の充電スタンド用支柱の施工方法によれば、支柱の下部内に充填した充填材が固化するための養生期間を取らずに、支柱の周囲にコンクリート基礎を打設することができる。そこで、充填材を充填する工程と、コンクリート基礎を打設する工程とを同日に行うことができるので、工期が短縮されて施工コストが安くなる。
そして、コンクリート基礎に立設された支柱は、下部内に充填した充填材がコンクリート基礎と一体に固化されることで、支柱内に雨水等が溜まって腐食するのを防止されると共に、支柱のぐらつき、たわみが抑制されて支持強度が高められる。
【0011】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る充電スタンド用支柱の支持構造は、下記(2)及び(3)の構成を特徴としている。
(2) 充電装置を支持
し、電源用ケーブルを通したPF管が挿通される管状の支柱をコンクリート基礎に立設するための充電スタンド用支柱の支持構造であって、前記コンクリート基礎に下部が埋設された前記支柱と、前記支柱の下部内に充填された充填材と、前記支柱の下部側面に設けられ、前記支柱の周囲に打設された前記コンクリート基礎により少なくとも一部が隠れている充填口と、
前記充填口より下方の前記支柱の下部側面に形成されたPF管取り入れ口と、を備えたことを特徴とする充電スタンド用支柱の支持構造。
【0012】
上記(2)の構成の充電スタンド用支柱の支持構造によれば、支柱の下部内に充填材を充填するため充填口が、充填の作業性を高めるために大きく開口された場合でも、コンクリート基礎により少なくとも一部が隠されるので、支柱の見栄えが低下することはない。即ち、従来の充填口は、充填の作業性を高めるために開口面積を大きくすると支柱の見栄えが低下し、支柱の見栄えを良くするために開口面積を小さくすると充填の作業性が低下してしまう。
【0013】
(3) 前記充填口が、前記充填材を充填するための充填部と、前記充填部の上方に連通して形成され、前記コンクリート基礎より露出すると共に、前記充填部より開口面積が小さい水抜き部と、を有することを特徴とする上記(2)に記載の充電スタンド用支柱の支持構造。
【0014】
上記(3)の構成の充電スタンド用支柱の支持構造によれば、充填材を充填するための充填部と支柱内の水を排出するための水抜き部とを支柱の下部側面に一体に形成することができ、それぞれ別々に開口した場合に比べて加工コストを下げることができる。また、開口面積が大きい充填部をコンクリート基礎で隠して開口面積が小さい水抜き部だけを露出させることができるので、支柱の見栄えを損なうことがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、工期を短縮して施工コストを抑えながら、支柱内に雨水等が溜まって腐食するのを防止すると共に高い支持強度を得ることができる充電スタンド用支柱の施工方法および支持構造を提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る充電スタンド1は、
図1に示すように、電気自動車を駐車する地面75に打設されたコンクリート基礎73に立設される充電スタンド用支柱11と、充電スタンド用支柱11の上部に装着される車両用充電装置(充電装置)21と、を備えている。この充電スタンド1は、車両用充電装置21を住戸の車庫(駐車スペース)などに設置するものである。
【0019】
車両用充電装置21は、装置本体23と、充電用ケーブル43と、充電用コネクタ41とを有している。この車両用充電装置21は、電動モータの駆動力で走行可能な電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリへ充電する充電装置である。
【0020】
装置本体23は、充電器を内蔵しており、前面には、充電状態等を表示するモニタ部29を有している。充電用ケーブル43は、装置本体23の下部から延出しており、充電用コネクタ41は、充電用ケーブル43の先端に設けられている。充電用コネクタ41は、車両に設けられたコネクタに対して着脱可能とされている。充電用ケーブル43は、車両のコネクタが車両用充電装置21から遠く離れた位置に配置された場合であっても、車両のコネクタに充電用コネクタ41を接続することができるように、かなりの余裕を持った長さを有している。そこで、充電用ケーブル43は、装置本体23の下部に設けられたフック27に巻回した状態で係止されることで保持されている。
【0021】
装置本体23は、コネクタ保持部25を有しており、このコネクタ保持部25に充電用コネクタ41が保持される。車両のバッテリへの充電時には、充電用コネクタ41を装置本体23のコネクタ保持部25から取り外して車両のコネクタへ接続する。車両のバッテリへの充電終了後は、充電用コネクタ41を車両のコネクタから外して装置本体23のコネクタ保持部25に保持させる。
【0022】
車両用充電装置21では、充電用コネクタ41を車両のコネクタに接続した状態で、装置本体23の充電器から充電用ケーブル43を介して車両側へ給電される。これにより、車両のバッテリが充電される。
【0023】
本実施形態に係る充電スタンド用支柱11は、
図2〜
図4に示すように、管状の支柱13と、支柱13の上端部に固定される取付プレート15と、支柱13の下端部に取付けられる固定用アングル19と、とを組み立てることで形成されている。
【0024】
支柱13は、ステンレスなどの金属製で、矩形断面を有する略正方形の管状に形成されている。支柱13の対向する一対の上端縁には切欠きが形成されており、取付プレート15に形成された一対の切欠き溝と咬合することで、取付プレート15を所定位置に固定している。
【0025】
図4の(a)に示すように、支柱13の下部側面(本実施形態では、充電スタンド用支柱11の下部背面)には、充填材81を充填するための充填部33と支柱内の水を排出するための水抜き部35とが一体に形成された充填口37が設けられている。充填口37は、
図5の(a)に示すように、充填材81を充填するための円形の充填部33と、充填部33の上方に連通して形成されて充填部33より開口面積が小さい細溝形の水抜き部35と、を有する。更に、充填口37の下方には、支柱13内に電源用ケーブルを通したPF管51を引き込むためのPF管取り入れ口31が設けられている。
【0026】
また、
図4の(b)に示すように、支柱13の上部側面(本実施形態では、充電スタンド用支柱11の上部右側面)には、支柱13内に挿通されたPF管51を引き出すためのPF管取り出し口39が設けられている。更に、PF管取り出し口39の下方には、アース線53を支柱13に接続するためのアースねじ穴32が設けられている。
【0027】
取付プレート15は、ステンレスなどの金属板製で、略長円形の長手方向下端には、支柱13の切欠きと咬合する一対の切欠き溝が形成されている。そして、取付プレート15の前面には、車両用充電装置21を固定するためのブラケット18が溶接されている。更に、取付プレート15には、車両用充電装置21の上部を覆って太陽光を遮ると共に雨除けとなるキャップ17が取付けられている。このキャップ17には、アルミ板等のように輻射熱を反射する金属板を用いたり、遮熱塗料を塗布した金属板を用いたりすることができる。
【0028】
固定用アングル19の一方の片は、
図3及び
図5に示すように、支柱13の下端部における各側面にそれぞれ溶接されている。各固定用アングル19の他方の片には、アンカーボルト取付穴19aが設けられている。
【0029】
次に、本実施形態に係る充電スタンド用支柱11の支持構造について説明する。
図1及び
図2に示すように、充電スタンド用支柱11における支柱13は、平面視で長方形のコンクリート基礎73の略中央部に下部が埋設された状態で立設されている。支柱13の下端部は、割栗石71から立設されたアンカーボルト61に固定用アングル19が固定されている。
【0030】
コンクリート基礎73に埋設された支柱13の下部内には、充填材81が充填されている。そして、支柱13の下部側面に形成された充填口37は、支柱13の周囲に打設されたコンクリート基礎73によって、充填口37の一部である充填部33が隠れ、充填部33の上方に連通して形成されている水抜き部35がコンクリート基礎73より露出している。
なお、本実施形態では、充填部33と水抜き部35とが一体に形成された充填口37とされているが、本発明の充填口はこれに限らず、支柱13内の水を排出するための水抜き穴が別に形成されてもよい。
【0031】
上述した本実施形態に係る充電スタンド用支柱11の支持構造によれば、支柱13の下部内に充填材81を充填するため充填口37の充填部33が、充填の作業性を高めるために大きく開口された場合でも、コンクリート基礎73により充填部33が隠され、水抜き部35だけが露出するので、支柱13の見栄えが低下することはない。即ち、
図8に示したような従来の充填口542は、充填の作業性を高めるために開口面積を大きくすると支柱本体540(支柱)の見栄えが低下し、支柱本体540の見栄えを良くするために開口面積を小さくすると充填の作業性が低下してしまう。
【0032】
更に、本実施形態の充電スタンド用支柱11の支持構造によれば、
図5の(a)に示したように、充填材81を充填するための充填部33と支柱13内の水を排出するための水抜き部35とを支柱13の下部側面に一体に形成することができ、それぞれ別々に開口した場合に比べて加工コストを下げることができる。また、開口面積が大きい充填部33をコンクリート基礎73で隠して開口面積が小さい水抜き部35だけを露出させることができるので、支柱13の見栄えを損なうことがない。
【0033】
次に、本実施形態に係る充電スタンド用支柱の施工方法について説明する。
(埋設穴を掘る工程)
先ず、
図6に示すように、支柱13の設置位置である電気自動車を駐車する地面75に、埋設穴70を掘る。そして、埋設穴70の底に割栗石71を敷く。
【0034】
次に、支柱13を設置位置に合わせて、支柱13が埋設穴70の底面に対して垂直になるように固定する。この時、充填口37の水抜き部35が、打設されたコンクリート基礎73の上面74より上方に位置して露出できるようにする。本実施形態では、割栗石71の上に捨てコンクリートおよびアンカーボルト61を打設し、支柱13の下端部に固定した固定用アングル19のアンカーボルト取付穴19aにアンカーボルト61を通した後、アンカーボルト61にナット64を締結することで、支柱13が埋設穴70の底面に対して垂直に固定される。なお、本発明の施工方法はこれに限らず、支柱13が埋設穴70の底面に対して垂直になるように、埋設穴70の周囲に設けた枠型から伸ばした支持部材によって、支柱13をコンクリート基礎73の打設が完了するまで支持してもよい。
【0035】
そして、アース線53の一端が取り付けられたアース棒55が地面75に打ち込まれ、アース線53の他端がアースねじ穴32にねじ止めされる。
電源用ケーブルを通したPF管51は、埋設穴70に連通する配管溝72に沿って配管され、先端部51aがPF管取り入れ口31から支柱13内に挿入され、支柱13の上部側面のPF管取り出し口39から引き出される。PF管取り出し口39から引き出された先端部51aは、車両用充電装置21の装置本体23に接続される。
【0036】
(充填材を充填する工程)
次に、
図7の(a),(b)に示すように、垂設した状態の支柱13の下部内に充填口37から充填材81が充填される。この際、充填材81は、
図5の(a)に示すように、充填口37における充填部33の穴下ラインLまで充填される。
本実施形態における充填材81は、コンクリート基礎73を打設するコンクリートを用いることで、材料コストを下げると共に、充填材81の充填作業とコンクリート基礎73の打設作業とを連続して作業できるようにしている。勿論、本発明の充填材としては、モルタルやセメントペースト等のグラウト材を用いることもできる。
【0037】
(コンクリート基礎を打設する工程)
次に、埋設穴70をコンクリートで埋戻し、充填材81が充填された支柱13の周囲にコンクリート基礎73を打設する。コンクリート基礎73は、
図2に示したように、上面74が地面75のグラインドラインGよりも高くなるようにする。この際、
図5の(a)に示すように、上面74が充填口37における水抜き部35の上端よりも低くなるようにし、水抜き部35が塞がれることがないようにする。
その後、コンクリート基礎73は十分な強度が得られるように、必要な養生期間が確保される。
【0038】
上述した本実施形態に係る充電スタンド用支柱の施工方法によれば、支柱13の下部内に充填した充填材81が固化するための養生期間を取らずに、支柱13の周囲にコンクリート基礎73を打設することができる。そこで、充填材81を充填する工程と、コンクリート基礎73を打設する工程とを同日に行うことができるので、工期が短縮されて施工コストが安くなる。
【0039】
そして、コンクリート基礎73に立設された支柱13は、下部内に充填した充填材81がコンクリート基礎73と一体に固化されることで、支柱13内に雨水等が溜まって腐食するのを防止されると共に、支柱13のぐらつき、たわみが抑制されて支持強度が高められる。
【0040】
従って、本実施形態の充電スタンド用支柱11の施工方法および支持構造によれば、工期を短縮して施工コストを抑えながら、支柱13内に雨水等が溜まって腐食するのを防止すると共に高い支持強度をもった充電スタンド用支柱11を得ることができる。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
例えば、上記実施形態に係る充電スタンド用支柱11は、略正方形の管状に形成された支柱13を用いているが、略長方形や略円形等の種々の管状に形成された支柱を用いることができる。
【0043】
ここで、上述した本発明に係る充電スタンド用支柱の施工方法および支持構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 充電装置(車両用充電装置21)を支持する管状の支柱(13)をコンクリート基礎(73)に立設するための充電スタンド用支柱(11)の施工方法であって、前記支柱の設置位置に埋設穴(70)を掘る工程と、前記埋設穴の底面に対して垂設した状態の前記支柱の下部内に充填口(37)から充填材(81)を充填する工程と、前記埋設穴をコンクリートで埋戻し、前記充填材が充填された前記支柱の周囲に前記コンクリート基礎73を打設する工程と、を備えたことを特徴とする充電スタンド用支柱の施工方法。
[2] 充電装置(車両用充電装置21)を支持する管状の支柱(13)をコンクリート基礎(73)に立設するための充電スタンド用支柱(11)の支持構造であって、前記コンクリート基礎に下部が埋設された前記支柱と、前記支柱の下部内に充填された充填材(81)と、前記支柱の下部側面に設けられ、前記支柱の周囲に打設された前記コンクリート基礎により少なくとも一部が隠れている充填口(37)と、を備えたことを特徴とする充電スタンド用支柱の支持構造。
[3] 前記充填口が、前記充填材を充填するための充填部(33)と、前記充填部の上方に連通して形成され、前記コンクリート基礎より露出すると共に、前記充填部より開口面積が小さい水抜き部(35)と、を有することを特徴とする上記[2]に記載の充電スタンド用支柱の支持構造。