(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外輪に取付けられ、前記外輪と前記内輪との間を覆うシールドを有し、前記グリースは、前記シールドの内面に付着していることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
前記外輪の内周面において前記グリースが付着する付着面の表面粗さが、前記シールドの前記内面の表面粗さよりも大きいことを特徴とする請求項2または3に記載の転がり軸受。
前記グリースは、複数のグリースが前記外輪に円周方向に沿って互いに離間して配置されるように充填されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の転がり軸受。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る転がり軸受の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る転がり軸受の一部破断平面図である。
図2は、
図1の縦断面図である。
図3は、
図2の一部拡大図である。
図1〜3に示すように、本実施形態に係る転がり軸受1は、グリースが封入されたシールド付の玉軸受であって、外輪2と、内輪3と、複数の転動体である8つのボール4と、保持器5と、2つのシールド6と、グリース7とを備えている。なお、
図1では、構造の説明のためにシールド6の図示を省略している。
【0017】
外輪2は、鋼材などの金属材料からなり、その内周面に円周方向に延びるように形成された軌道溝8を有している。この軌道溝8の表面は軌道面を構成している。また、内輪3は、外輪2の内周側に配置されている。内輪3は、鋼材などの金属材料からなり、その外周面に円周方向に延びるように形成された軌道溝9を有している。この軌道溝9の表面は軌道面を構成している。
【0018】
各ボール4は、鋼材などの金属材料からなり、外輪2の軌道溝8と内輪3の軌道溝9との間に設けられている。軌道溝8と軌道溝9とは軌道を構成しており、各ボール4は各軌道溝8、9の軌道面に接触しながら軌道を転動する。なお、本実施形態ではボール4の数は8であるが、ボール4の数は特に限定されない。
【0019】
保持器5は、各ボール4を回転可能に保持する合成樹脂製の冠型の保持器であり、8つのボール4を軌道内に等間隔に配置するものである。なお、保持器5は、冠型に限らず他の形状のものでもよく、また、金属等の他の材質からなっていてもよい。
【0020】
2つのシールド6は、略円環形状の板材であり、それぞれの外周部で外輪2に取り付けられている。具体的には、外輪2の各内周縁部にはそれぞれ取付溝10が形成されており、各シールド6は、その外周部が各取付溝10内に収容され、止輪11によって固定されている。一方、各シールド6はその内周部が内輪3の直近まで延びている。これにより、シールド6は、外輪2と内輪3との間を覆い、ボール4およびグリース7を保護する。
【0021】
グリース7は、外輪2と内輪3との間の軸受空間13内に保持されている。具体的には、グリース7は、軸受空間13のうち、外輪2の内周面側に充填され、外輪2の内周面のグリース付着面14に付着している。ここで、グリース付着面14は、外輪2の内周面のうち、ボール4に接触する軌道面(軌道溝8)に対して軸方向外側に位置する領域を意味する。また、グリース7は、シールド6の内面15に付着している。これにより、グリース7は軸受空間13内に保持されている。ここで、グリース付着面14、内面15は、それぞれ表面粗さR1、R2を有する。
【0022】
さらに、グリース7は、内輪3の外周面に接触しないように、外輪2の内周面側に偏って、かつ円周方向に沿って連続する円環状となるように充填されている。これにより、グリース7と内輪3の外周面とには、ギャップGが形成される。
【0023】
なお、グリース7は、たとえば、外輪2と、内輪3と、ボール4と、保持器5とを組み合わせた後、転がり軸受1の保持器5の挿入側とは反対側(冠型の保持器5のボール4を挿入するポケットの開口側)から充填される。そして、グリース7は、外輪2の内周面の軌道溝8に対して軸方向外側のグリース付着面14に付着し、円周方向に沿って連続する円環状になるように充填される。
【0024】
グリース7を充填した後、外輪2の両端部の取付溝10にシールド6が取付けられて、外輪2と内輪3との間の軸受空間13が密封される。これにより、グリース7は、グリース付着面14およびシールド6の内面15に付着して保持される。なお、2つのシールド6が金属からなるものであれば、グリース7の付着力が高くなり、好ましい。シールド6が金属からなる場合、たとえば亜鉛メッキ鋼板もしくはステンレス鋼で構成することが好適である。ただし、シールド6は金属からなるものに限られず、たとえばゴムシールで構成してもよい。また、グリース7の充填量は、外輪2と内輪3との間の軸受空間13の体積の10%〜50%程度とすることができる。
【0025】
つぎに、本実施形態に係る転がり軸受1を、外輪2を固定して内輪3が回転させるように使用する場合の動作について説明する。転がり軸受1が回転すると、各ボール4は軌道溝8と軌道溝9とにより構成される軌道を転動する。このとき、グリース7は、外輪2のグリース付着面14およびシールド6の内面15に付着し、外輪2の軌道溝8および内輪3から離れて保持されている。各ボール4が転動すると、各ボール4はグリース7にわずかに接触してグリース7の一部を取り去り、これを外輪2の軌道溝8、各ボール4、保持器5、内輪3の軌道溝9の接触面に適当量だけ供給する、あるいは、適当量の基油を供給して油膜を形成する。これにより、これらの接触面が良好に潤滑されると共に、外輪2と内輪3との回転に伴うグリース7の撹拌が最小限になるため、回転トルクを低減することができる。グリース7は、外輪2の内周面から内輪3の外周面の近傍まで充填することができるので、必要な量を保持することができ、長期にわたって良好な潤滑性能を維持することができる。また、グリース7は、連続して円環状に充填することができるので、充填が簡単であり、容易に充填の自動化が可能である。
【0026】
特に、本実施形態に係る転がり軸受1では、グリース7が、所定の測定条件、すなわち温度が25℃、周波数が1Hz、ひずみ量が0.07(固定)%の条件で測定した時の損失正接tanδが、0.1以上0.2以下の値であるように構成されていることで、回転トルクの低減と長期にわたる良好な潤滑性能の維持とをより好適に両立できる。
具体的には、損失正接tanδが0.2以下であることで、各ボール4がグリース7にわずかに接触したときに取り去られるグリース7の量が適切となり、潤滑剤の供給性が適正となる。しかし、損失正接tanδが0.2より大きい場合は、グリースの粘性が高くなり、グリースがボールに引き摺られてしまうため、各ボールの一回の接触あたりに取り去られるグリースの量が多くなり、供給過多となる。そのため、回転トルクが増大するとともに、グリースが早く減少するため、良好な潤滑性能を維持できる期間も短くなる。一方、損失正接tanδが0.1より小さいと、グリースの弾性が高くなるため、外輪と内輪との間の軸受空間にグリースを適正な量および形状で充填することが困難となる。以上のような理由により、グリース7の損失正接tanδは、0.1以上0.2以下の値であることが好ましいのである。
【0027】
なお、グリース7の損失正接tanδを0.1以上0.2以下の値とするためには、たとえば、基油と、増ちょう剤と、その他の添加剤とを、損失正接tanδが0.1以上0.2以下の値となるように配合してなるものを用いることができる。
【0028】
基油の種類は特に限定されるものではなく、一般的にグリース基油として使用される、合成炭化水素油、アルキルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、エステル油、鉱油、フッ素油、シリコーン油などを単独または混合して使用できる。グリースにおける基油の含有量は、たとえば70wt%以上90wt%以下の範囲であるが、上記損失正接tanδの範囲を実現できれば特に限定されない。
【0029】
合成炭化水素油系としては、たとえばノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセントエチレンオリゴマーなどのポリアルファオレフィンが挙げられる。エステル油としては、たとえばジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルタレート、メチル・アセチルシノレートなどのジエステル油、トリオクチルトリメリテート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート、テトラ−2−エチルヘキシルピロメリテート等の芳香族エステル油、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなどのポリオールエステル油、炭酸エステル油などが挙げられる。アルキルジフェニルエーテル油としては、モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリアルキルジフェニルエーテルなどが挙げられる。上述した中でも、芳香族エステル油が好ましく、単独または混合して使用できる。特に、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテートとテトラ−2−エチルヘキシルピロメリテートとを混合した基油を使用することが好ましい。
【0030】
増ちょう剤として、非ウレア化合物またはウレア化合物を使用できるが、耐熱性および静音性の点からウレア化合物を使用することが好ましい。グリースにおける増ちょう剤の含有量は、たとえば10wt%以上30wt%以下の範囲であるが、上記損失正接tanδの範囲を実現できれば特に限定されない。
【0031】
非ウレア化合物としては、金属石けん、ポリテトラフルオロエチレン樹脂が挙げられる。金属石けんは、ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸などの少なくとも1個の水酸基を含む脂肪族モノカルボン酸とアルカリ土類金属水酸化物から合成される。また、脂肪族モノカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸などの二塩基酸とから合成される複合金属石鹸も用いることができる。
【0032】
ウレア化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、ポリウレア化合物などのウレア化合物を使用できる。特に、耐熱性および静音性の点から、ジウレア化合物を使用することが好ましい。ジウレア化合物は、下記の式(1)で示すことができる。
R
1−NHCONH−R
2−NHCONH−R
3・・・(1)
ここで、R
1、R
3は脂肪族炭化水素基でも脂環族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、炭素数に特に限定はない。R
2は、芳香族炭化水素基であり、フェニル基が1個もしくは2個置換したものである。これらを合成する際に使用する原料には、アミン化合物とイソシアネート化合物を用いる。アミン化合物として、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキアデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどに代表される脂肪族アミンや、ヘキシルアミンなどに代表される脂環式アミンの他に、アニリン、p−トルイジン、エトキシフェニルアミンなどに代表される芳香族アミンが用いられる。イソシアネート化合物として、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネートが用いられる。脂肪族アミンと芳香族アミンをアミン原料に用いて、芳香族イソシアネートとで合成する脂肪−芳香族ジウレア化合物を用いることが好ましい。
【0033】
さらに、グリース7には、その他の添加剤として、分散剤、酸化防止剤、摩擦防止剤、金属不活性剤、錆止め剤、油性剤、粘度指数向上剤などを必要に応じて含有させることができる。
【0034】
また、グリース7はグリース付着面14、内面15に付着し、保持されるが、グリース付着面14、内面15は、それぞれ所定の表面粗さR1、R2を有するので、アンカー効果により、グリース7のグリース付着面14、内面15に対する付着力が高くなる。その結果、グリース7は保持された場所から移動しにくくなる。そのため、グリース7とボール4との位置関係も変化しにくくなるので、回転トルクの低減と長期にわたる良好な潤滑性能を維持する観点から好適である。ここで、表面粗さR1、R2としては、たとえば平均表面粗さRaを採用することができる。表面粗さR1、R2は、グリース7に対してアンカー効果を発揮する程度の表面粗さであれば特に限定はされない。
【0035】
さらに、グリース付着面14の表面粗さR1が、内面15の表面粗R2さよりも大きいことが好ましい。その理由は以下の通りである。
【0036】
外輪2側(グリース付着面14)に対するグリース7の付着力が小さいと、グリース7が
図1に示す軸方向に移動し易くなる。グリース7が軸方向に移動すると、ボール4との位置関係が変化してしまうので、回転トルクや潤滑性能(すなわち軸受寿命)に与える影響が大きい。これに対して、グリース7が径方向に移動しても、回転トルクや潤滑性能に与える影響は、軸方向で移動する場合よりも小さい。したがって、グリース付着面14の表面粗さR1が、内面15の表面粗R2さよりも大きいことが好ましいのである。なお、このような好ましい表面粗さR1、R2は、公知の粗面加工方法を採用することで容易に実現することができる。
【0037】
なお、外輪2の軌道溝8の軌道面については、軌道溝8をボール4が転動する際の摩擦抵抗を低くするために、表面粗さができるだけ小さいことが好ましい。内輪3の軌道溝9の表面粗さについても同様である。
【0038】
さらには、転がり軸受1では、シールド6と内輪3とが離間しているため、外輪2に対して内輪3が相対回転したときに、内輪3の振動のシールド6への伝搬が抑制される。その結果、グリース7の形状や位置の保持性がより一層向上する。
【0039】
なお、転がり軸受1は、外輪2を固定して内輪3を回転させる場合のほか、内輪3を固定して外輪2を回転させる場合にも適用することができる。この場合、外輪2の回転により、グリース7に遠心力が作用したとき、外輪2のグリース付着面14および外輪2に固定されたシールド6の内面15に付着して保持されたグリース7は、外輪2側に移動しようとするので、内輪3に接触することがなく、回転トルクを増大させることがない。
【0040】
(実施例、比較例)
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。実施例および比較例では、種々のグリースを作製し、その動的粘弾性の評価試験を行い、さらに各グリースを用いて転がり軸受を作製し、その高速回転トルク特性の試験を行った。なお、転がり軸受としては、
図1〜3に示す実施形態に係る転がり軸受1と同じの構造のものを作製した。このようにグリースを外輪の内周面側に充填した転がり軸受を特殊封入軸受と呼ぶこととする。また、実施形態に係る転がり軸受1と同様の構造を有するが、グリースについては、外輪と内輪との間の軸受空間内に、これらの両方に接触するようにグリースを充填した転がり軸受も作製した。このような転がり軸受を通常封入軸受と呼ぶこととする。
【0041】
実施例および比較例についてさらに具体的に説明する。まず、グリースの基油としては、エステル油の一種であるPET油と、PAO(ポリアルファオレフィン)の一種であるPAO8とを使用した。増ちょう剤としては、ウレア増ちょう剤として、脂肪族芳香族ウレア化合物(脂肪−芳香族ウレア)と、脂環式脂肪族ウレア化合物(脂環−脂肪族ウレア)とを使用した。また、金属石けん増ちょう剤として、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム石けん(12OHLi石けん)を使用した。
【0042】
これらの基油と増ちょう剤とを配合し、表1に示す実施例1〜7、比較例1〜6のグリースを作製した。なお、表1において、「○」は配合した成分を示している。たとえば、実施例1は基油としてPET油、増ちょう剤として脂肪−芳香族ウレアを配合したものである。
【表1】
【0043】
つぎに、実施例1〜7、比較例1〜6のグリースの動的粘弾性の評価試験を行った。なお、評価試験はレオメータとして、応力制御型のPaar Physica製のMCR300を用い周波数依存性測定を行った。上部プレートと下部プレート間にグリースを挟み、上部のプレートを一定のひずみ量で周波数を徐々に変化させていき、応答性を評価した。周波数依存性測定により、サンプルのネットワーク構造の時間的応答から力学的緩和時間の評価を行った。
測定条件は、ギャップを0.5mmに設定した直径25mmのパラレルプレート間に測定対象のグリースを挟み、温度が25℃、周波数が1Hz、ひずみ量が0.07(固定)%の条件にて測定を行い、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を測定した。また、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)より、式1により損失正接tanδを算出した。損失正接tanδは、数値が大きいとその物質が粘性的で、小さいと弾性的であることを意味する。
損失正接tanδ=G”/G’ (式1)
その結果、表1に示すように、実施例1〜7、比較例1〜6の損失正接tanδは0.11〜0.28の範囲となった。
【0044】
さらに、実施例1〜7、比較例1、2のグリースを用いて特殊封入軸受を作製し、比較例3〜6のグリースを用いて通常封入軸受を作製した。なお、いずれの転がり軸受も、呼び径が外径8mm、内径3mmで、非接触形の金属シールドおよびポリアミド樹脂製冠型保持器を用いたものとし、グリースは、冠型保持器のポケットの開口側から充填し、その充填量は軸受空間の30%とした。
【0045】
つぎに、各転がり軸受の高速回転トルク特性の試験を行った。具体的には、2つの転がり軸受の外輪をハウジングにセットし、各転がり軸受の内径にシャフトを挿入して、試験用モータの回転軸にシャフトを結合し、各転がり軸受が内輪回転するようにして、常温常湿下で10000rpmで回転させ、回転開始から2分後の回転トルクの瞬間値を測定し、その1/2の値を1つの転がり軸受あたりの回転トルク値とした。なお、各転がり軸受に掛ける予圧は2Nとした。その結果、回転トルク値は、表1に示す値となった。表1においては、回転トルクが200μNm以下のものを良好なものと判定して「○」で示し、回転トルクが200μNmより大きいものを良好ではないものと判定して「×」で示している。
【0046】
図4は、実施例および比較例のグリースを用いた転がり軸受における動的粘弾性(損失正接tanδ)と高速回転トルクとの関係を示す図である。
図4と表1とに示すように、損失正接tanδが0.1以上0.2以下である実施例1〜7のグリースを用いた特殊封入軸受は、回転トルクが200μNm以下と小さい値であった。一方、比較例1、2のグリースを用いた特殊封入軸受は、回転トルクが200μNmよりも大きい値であった。さらに、比較例3〜6のグリースを用いた通常封入軸受は、すべてが回転トルクが275μNm以上と大きい値であった。
【0047】
以上の結果が示すように、損失正接tanδが0.1以上0.2以下である実施例1〜7のグリースを用いた特殊封入軸受は、高速回転トルクが低減されていることを確認した。また、このように高速回転トルクが低減されているということは、グリースにより潤滑剤が適正量で供給されていることを意味する。したがって、実施例1〜7のグリースを用いた特殊封入軸受は、高速回転トルクが低減されているとともに、長期の軸受寿命を有するものと考えられる。
【0048】
なお、上記実施の形態に係る転がり軸受1では、グリース7は外輪2に円周方向に沿って連続する円環状になるように充填されているが、たとえば
図5に示す、実施形態の変形例に係る転がり軸受1Aのように、複数のグリース7が外輪2に円周方向に沿って互いに離間して配置されるように充填してもよい。このとき、グリースの充填間隔および径方向での充填長さを調整することにより、軸受空間へのグリースの充填量を容易に制御することができる。
【0049】
また、上記実施の形態に係る転がり軸受1は2つのシールド6を備えているが、本発明はこれに限らず、1つのシールドのみを備えていてもよいし、シールドを備えていなくてもよい。
【0050】
また、上記実施形態に係る転がり軸受1は玉軸受であるが、本発明はこれに限らず、ローラ軸受等の他の構造の転がり軸受にも適用することができる。
【0051】
なお、上記の実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。