(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、例えば、エアコンや冷凍機などの空気調和機は、小型化する傾向であり、それに伴い、冷媒循環回路などに用いられる制御機器にも性能を維持しつつ、小型化や取回しの向上を図ることが望まれている。
【0005】
特に、制御機器の一つである、流体制御弁は、例えば、上述した電動弁100のように、電磁コイルユニット102と弁本体104とに分かれているため、電磁コイルユニット102の内周に形成された装着孔108に、弁本体104を装着する際には細心の注意を払わなければならない。
【0006】
たとえば、リード線109の取り回しをする際には、ブラケット106にリード線109が干渉したり、誤って接触することなどが考えられる。このため、弁本体104に電磁コイルユニット102を装着する際には、リード線109がブラケット106によって傷つけられないようにする必要がある。
【0007】
また、弁本体104に電磁コイルユニット102を装着する際に、誤って電磁コイルユニット102を落下させてしまった場合、ブラケット106や切欠き120dが外力によって変形し、電磁コイルユニット102を弁本体104に取り付けることが困難となるおそれがある。なお、ブラケット106や切欠き120dは、電磁コイルユニット102を出荷する際などにおいて箱に詰めた場合にも、上に積まれた電磁コイルユニット102の重みで破損することも考えられ得る。
【0008】
さらに、上述した電動弁100においては、電磁コイルユニット102の装着孔108の内径の太さと弁本体104の外径の太さにほとんど差がない上、ブラケット106の先端が装着孔108の内側に延びた構成を有している。このため、装着孔108に弁本体104を挿入する際には、装着孔108に弁本体104の頂部を挿入した当初からブラケット106の弾性力によって弁本体104の外周が押圧され続ける。したがって、電磁コイルユニット102を弁本体104に装着する過程において負荷が生じる。
【0009】
また、室外機に配管ろう付けされた弁本体104に電磁コイルユニット102を装着する場合などに、特に弁本体104が他の配管等によって見えにくいときには、作業者にとって装着孔108に弁本体104を挿入することや、きちんと弁本体104が装着されたか否かを確認することが難しくなり、装着作業が困難になる。
【0010】
他に、電磁コイルユニットを弁本体に対し所定の位置にしっかりと固定する工夫がなされた電動弁としては、
図9に示すように、ブラケット220を電磁コイルユニット202の上方に突設するように形成したものも知られている(例えば、特許文献2)。この電動弁200においては、ブラケット220の内側に形成された係合凸部222を弁本体208の上部に形成された係合凹部224に嵌め込むことにより、電磁コイルユニット202が弁本体208に固定される。
【0011】
しかしながら、このように上方にブラケット220を突出させた場合、電動弁200の軸方向の長さが長くなり、電動弁200自体のサイズが大きくなるため、小型化の要求を満たさなくなる。また、ブラケット220の大きさ、形状、および係合凸部222の位置によって、この電磁コイルユニット202に装着できる弁本体208のサイズ等も限定されるという問題もある。
【0012】
本発明の目的は、弁本体に電磁コイルユニットを装着し易い小型の流体制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の流体制御弁は、
弁本体に電磁コイルユニットを脱着自在に装着するように構成された流体制御弁であって、
前記弁本体が、
小径部と、
前記小径部の下方に形成され前記小径部よりも径が太く少なくとも一つ以上の凹状の係合部が外周に形成された大径部と
を備え、
前記電磁コイルユニットが、
前記小径部が挿入される第1の空間と、
前記第1の空間の下方に形成され前記第1の空間よりも内周径が大きな第2の空間と、
前記第2の空間内に配置され、前記電磁コイルユニットが前記弁本体に装着された際に前記大径部の外周に形成された凹状の前記係合部と係合する凸状の係止部が設けられたブラケットと
、
前記第2の空間を囲んで全周に亘って筒状に形成され、前記ブラケットを保護する筒状壁と
を備え、
前記ブラケットは、帯状の部品を折り曲げて形成され前記筒状壁の一部のみを覆うものであり、前記筒状壁の外周に沿って下方に延びて前記筒状壁の下端部で折り曲がり前記筒状壁の内周に沿って上方に延びるように配置され、かつ前記筒状壁の内周に延びた部分に前記係止部が形成され、
凹状の前記係合部に凸状の前記係止部を係合させることにより、前記弁本体に対する前記電磁コイルユニットの位置合わせおよび装着がなされることを特徴とする。
【0014】
このように、電磁コイルユニットの下方に内周径の大きな第2の空間を形成することにより、第1の空間に弁本体を挿入しやすくすることができる。また、弁本体の小径部を第1の空間に挿入する際、小径部の外周がブラケットの弾性力によって押圧されることがなくなるため、小径部を傷つけることなく容易に電磁コイルユニットを弁本体に装着することができる。
【0015】
他の効果として、弁本体を第1の空間に挿入する際にブラケットの弾性力による大きな負荷がかからないため、容易に弁本体に対する電磁コイルユニットの軸方向および径方向の位置合わせを行うことができる。
【0016】
さらに他の効果として、挿入過程においてブラケットに押圧されるのは大径部のみになるため、挿入過程で弁本体がブラケットの負荷を受ける距離と時間が短くなり、弁本体に電磁コイルユニットを所定の位置で容易に固定することができる。
【0017】
さらに他の効果としては、第1の空間と第2の空間の間には段差が形成されるため、段差によって弁体部が第1の空間に必要以上に深く挿入されることを防止することができる。
【0019】
また、
筒状壁の内周に沿ってブラケットを配置することにより、ブラケットが電磁コイルユニットから大きく突出することがなくなるため、リード線を取回した場合に、ブラケットがリード線に干渉し、リード線が傷付けられることなどを回避することができる。また、誤って電磁コイルユニットを落下させてしまった場合などにブラケットが変形し、電磁コイルユニットが弁本体に取り付けられなくなることを防止することができる。
【0021】
また、ブラケットを保護する
筒状壁がブラケットの配置された部分だけ突出しているのではなく、ブラケットの配置されていない部分も含め全周に亘って円筒形状を有しているため、ブラケットを保護する機能を有する
筒状壁の剛性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の流体制御弁は、
前記ブラケットの前記側壁の内周に延びた部分と前記側壁の内周との間には、所定の幅の隙間が形成されていることを特徴とする。
【0023】
これにより、弁本体が挿入された際にブラケットが逃げる空間を確保することができるため、ブラケットの弾性力が向上し、より強固に電磁コイルユニットと弁本体を固定することができる。
【0024】
また、本発明の流体制御弁は、
前記側壁の内周において、前記ブラケットが配置される部分が、外周側に向かって凹状に変形していることを特徴とする。
【0025】
これにより、ブラケットの装着空間をさらに広くすることができるため、ブラケットの弾性力をより向上させることができる。また、電磁コイルユニットを製造する際の樹脂ポッティング時にブラケットを適切な位置に保持することができ、電磁コイルユニットのポッティング作業が容易になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る発明によれば、電磁コイルユニットに弁本体を装着し易い小型の流体制御弁を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る流体制御弁について説明する。
図1は、実施の形態に係る流体制御弁の一部断面を含む正面図であり、
図2は、
図1から弁本体14を取り外した状態の電磁コイルユニット12を示す図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは
図1に示された流体制御弁10を基準として規定したものである。
【0029】
図1に示すように、実施の形態に係る流体制御弁10は、略リング形状の電磁コイルユニット12と、略円筒形状の弁本体14とを備えており、弁本体14に電磁コイルユニット12を脱着自在に装着するように構成されている。
【0030】
ここで、弁本体14は、大径部18と、小径部20とを備えている。この大径部18の内部には、図示しない弁室、弁座、および弁座に対して離接して弁ポートを開閉する弁体が備えられており、この
弁体による弁ポートの開閉動作により、第1の流体通路22と第2の流体通路24との間の開度を可変に制御するように構成されている。
【0031】
また、大径部18の外周径は、小径部20の外周径よりも太く形成され、大径部18と小径部20の間には段差19が形成されている。また、大径部18の外周には、後述するブラケット34の凸部42と嵌合する複数の凹部48が形成されている。また、複数の凹部48は、段差19からの軸方向の距離がそれぞれ略同一になる位置に形成されている。なお、凹部48の数は必ずしも複数でなくともよく、1個以上であればよい。
【0032】
また、小径部20の内部には、図示しないが、例えば、電磁弁の場合には、プランジャ、吸引子などが備えられている。また、例えば、電動弁の場合には、永久磁石からなるロータマグネットなどが備えられている。
【0033】
図2(a)は、電磁コイルユニット12の一部を断面にした状態の正面図であり、
図2(b)は、電磁コイルユニット12を
図2(a)のA方向から視た側面図であり、
図2(c)は、電磁コイルユニット12の下方から視た図である。電磁コイルユニット12は、ケース本体28を備えており、このケース本体28の内部に、巻線が巻かれたボビン30を備えた電磁コイル(図示せず)、電磁コイルを封止する封止樹脂32などが備えられている。なお、封止樹脂32には、たとえば、エポキシやウレタン等の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0034】
電磁コイルユニット12には、電磁コイルに通電するためのリード線36が備えられている。そして、電磁コイルユニット12の下方には、電磁コイルユニット12を弁本体14に対し所定の位置に固定するためのブラケット34が設けられている。
【0035】
ボビン30の内部には、小径部20が挿入される第1の空間30xが形成され、その下方には、第1の空間30xよりも内周径の大きな第2の空間30y
が形成されている。また、ボビン30の下方には、第2の空間30yを囲繞する筒状壁
(側壁)30aが形成されている。
【0036】
なお、第1の空間30xと第2の空間30yの間には段差30bが形成されている。これにより、弁本体14に電磁コイルユニット12を装着する際、仮に弁本体14を挿入しすぎた場合には、ボビン30に形成された段差30bと弁本体14に形成された段差19が当接し、それ以上の挿入ができなくなる。よって、ボビン30に段差30bを形成することにより、弁本体14が必要以上に深く挿入されないようにすることができる。
【0037】
また、
図1に示すように、
電磁コイルユニット12の第2の空間30yの内周径と、
弁本体14の大径部18の外周径との間
におけるクリアランス66の幅は、
電磁コイルユニット12の第1の空間30xの内周径と、
弁本体14の小径部20の外周径との間
における隙間67の幅よりも広くなるように形成されている。
このように、弁本体14の入り口となる
電磁コイルユニット12の筒状壁30aの内周径を大きくすることにより、
弁本体14の小径部20にブラケット34の弾性力による負荷を与えることがなく
なり、電磁コイルユニット12の第1の空間30xに
、弁本体14を挿入しやすくすることができる。
【0038】
ブラケット34は、筒状壁30aの外周に沿って下方に延び、筒状壁30aの下端部で折り返して筒状壁30aの内周に沿って上方に延びるように配置され、断面視で略U字形状を有している。このように、筒状壁30aに沿ってブラケット34を配置することにより、従来のようにブラケット34が電磁コイルユニット12から大きく突出することがなく
なる。したがって、誤って電磁コイルユニット12を落下させてしまったり、強打してしまった場合において、ブラケット34が変形し、電磁コイルユニット12が弁本体14に取り付けられなくなることを防止することができる。
【0039】
また、第2の空間30y内に配置されたブラケット34の先端部34aの近傍には、大径部18の外周に形成された凹部48に嵌合される凸部42が設けられている。凹部48に凸部42が嵌合されることにより、弁本体
14に対する電磁コイルユニット12の径方向および軸方向の位置合わせを適切に行うことができる。なお、ブラケット34の先端部34aと筒状壁30aの間には、所定の幅の隙間35が形成され、先端部34aはブラケット34の弾性力により、筒状壁30a側に僅かに移動することができる。
【0040】
次に、
図3を参照しながら、弁本体14に電磁コイルユニット12が装着されるまでの過程について説明する。まず、
図3(a)に示すように、
電磁コイルユニット12の第2の空間30y内に弁本体14の頂部を入れ
る。続けて図3(b)に示すように、第1の空間30xの内部に弁本体14の小径部20が挿入される。
ここで、ブラケット34の凸部42が段差19に接触するまでは、ブラケット34の弾性力が弁本体14に働かず、容易に電磁コイルユニット12を固定したい位置、角度まで到達させることができる。
【0041】
電磁コイルユニット12を固定したい位置と角度が決定され、さらに弁本体14が挿入されると、ブラケット34の弾性力により、先端部34aが外側に移動する。次に、弁本体14を径方向に回すなどして、大径部18に形成された凹部48の位置に、ブラケット34の凸部42の位置が合わせられる。凹部48の位置と凸部42の位置が合致すると、ブラケット34の先端部34aが、その弾性によって内径側に移動し、
図3(c)に示すように、凸部42と弁本体14の凹部48が嵌合する。これにより、電磁コイルユニット12が弁本体14に装着され、流体制御弁10が組み立てられる。
【0042】
この実施の形態に係る流体制御弁10によれば、電磁コイルユニット12内に第1の空間30xよりも内周径の大きな第2の空間30yが形成され、かつ弁本体14に大径部18と小径部20が形成されているため、弁本体14の小径部20を第1の空間30xに挿入する際、小径部20の外周がブラケット34の弾性力によって押圧されることがなくなり、小径部20を傷つけることなく容易に電磁コイルユニット12を弁本体14に装着することができる。
【0043】
また、ブラケット34の凸部42が段差19に接触するまでの間は、ブラケット34の弾性力が弁本体14に働かないため、容易に電磁コイルユニット12を固定したい位置と角度まで到達させることができ、弁本体14に対する電磁コイルユニット12の軸方向および径方向の位置合わせを行うことができる。
【0044】
また、電磁コイルユニット12を弁本体14に装着する際に、ブラケット34の弾性力による負荷が掛かるのは、ブラケット34の凸部42が弁本体14の段差19に接触してから凹部48に嵌合されるまでの短い距離と時間に限定される。このため、作業者は、電磁コイルユニット12を固定したい位置と角度まで到達させた後、容易に弁本体14に電磁コイルユニット12を固定することができる。
【0045】
また、第1の空間30xと第2の空間30yの間に段差30bを形成し、弁本体14が必要以上に深く挿入されることを防止できる。
また、
筒状壁30aに沿ってブラケット34を配置することにより、ブラケット34が電磁コイルユニット12の外側に大きく突出することがなくなるため、リード線36を取回した場合に、ブラケット34がリード線36に干渉し、リード線36が傷付けられることなどを回避することができる。また、誤って電磁コイルユニット12を落下させてしまったり、強打してしまった場合にブラケット34が変形することを防止することができる。すなわち、電磁コイルユニット12が弁本体14に取り付かなくなることを防止することができる。
【0046】
また、ブラケット34を保護する筒状壁30aがブラケット34の配置された部分だけ突出しているのではなく、ブラケット34の配置されていない部分も含め全周に亘って円筒形状を有しているため、ブラケット34を保護する部材(筒状壁30a)の剛性を向上させることができる。
【0047】
また、
本発明の流体制御弁10は、従来の電動弁200(
図9参照)のように、ブラケット
34(220)が電磁コイルユニット
12(202)の上方に突設していない。
このため、流体制御弁10の軸方向の長さを短くすることができ、流体制御弁10の小型化を図ることができる。
【0048】
以上により、弁本体14に電磁コイルユニット12を装着し易い小型の流体制御弁10を提供することができる。
【0049】
なお、上述の実施の形態において、
図4、5に示すように、筒状壁
60bと封止樹脂の表面が略フラットな形状にしてもよい。
すなわち、図4、5に示す流体制御弁52
のように筒状壁60bの高さ方向の長さを短くすることにより、さらに筒状壁60bの剛性を向上させることができると
共に、ブラケット34が電磁コイルユニット
62から突出せず、電磁コイルユニット
62の軸方向の長さを短くすることができる。
【0050】
また、
図5(a)、
図5(b)に示すように、筒状壁60bのブラケット34が配置される位置の両サイドに、筒状壁60bの内側に突出した凸状部68を形成してもよい。これにより、ブラケット34が左右に動かないように抑える必要がなくポッティング(封止)作業が容易になる。
【0051】
また、上述の実施の形態において、ブラケット34は、必ずしも筒状壁の下端部で折り返した断面視略U字形状を有している必要はなく、
図4、5に示すように、筒状壁60bの下端部で折り曲がって筒状壁60bの内周に沿って上方に延びる断面視略L字形状を有していてもよい。
【0052】
また、
図6に示すように、筒状壁70bのブラケット34が配置される部分を外周側に凹状に変形させてもよい。これにより、ブラケット34の先端部34aと筒状壁70bの内周面との間の隙間35をより大きくすることができ、弁本体14に電磁コイルユニット72を装着する際におけるブラケット34の弾性力をより向上させることができる。
【0053】
また、筒状壁70bのブラケット34が配置される部分を外周側に凹状に変形させることにより、上述した電磁コイルユニット62(
図4、5参照)と同様に、組み付け時にブラケット34が左右に動かないようにできるため、ポッティング作業が容易になる。
【0054】
また、上述の実施の形態において、弁本体14は、別部品の大径部18と小径部20とを組み合わせて形成した部材であってもよく、大径部18と小径部20が一体となった一つの部材であってもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態においては、大径部18の内部に弁体が配置され、小径部20の内部にプランジャ、吸引子(電磁弁の場合)やロータマグネット(電動弁の場合)が配置されている場合を例に説明しているが、部品の配置は必ずしも上述の実施の形態の通りでなくてよい。たとえば、弁体の上部が小径部20内に位置していてもよく、プランジャ、吸引子、ロータマグネットの下部が大径部18内に位置していてもよい。
【0056】
また、上述の実施の形態においては、ブラケット34に形成された凸部42が大径部18に形成された凹部48に嵌合される場合を例に説明しているが、弁本体14に対する電磁コイルユニット12の径方向および軸方向の位置合わせを行う仕組みは、必ずしもこれに限定されない。たとえば、ブラケット34側に凹部が形成され弁本体14側に凸部が形成されていてもよい。また、ブラケット34に係止部を設け、弁本体14に係合部を設けて両者を係合させるなど、凹凸によらずに弁本体14に対する電磁コイルユニット12の位置合わせを行ってもよい。