(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6637907
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】経皮治療システムにおける半フッ素化アルカン類の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/06 20060101AFI20200120BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20200120BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20200120BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20200120BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20200120BHJP
A61K 31/568 20060101ALI20200120BHJP
A61K 31/565 20060101ALI20200120BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20200120BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
A61K47/06
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K31/568
A61K31/565
A61K31/485
A61K31/381
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-567628(P2016-567628)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公表番号】特表2017-515855(P2017-515855A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015000937
(87)【国際公開番号】WO2015172872
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年4月23日
(31)【優先権主張番号】14168081.9
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】508154999
【氏名又は名称】ノヴァリク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】NOVALIQ GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・ヴィーダースベルク
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・シェーラー
【審査官】
菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/160179(WO,A1)
【文献】
特開2002−249425(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/192250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/06
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/107
A61K 31/381
A61K 31/485
A61K 31/565
A61K 31/568
A61K 47/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効医薬成分(単数または複数)が1種又はそれ以上のF6H8及びエタノールと組み合わせて存在し、ここで、F6H8のエタノールに対する体積比が3:1から1:3である、ヒトの皮膚を横断して有効医薬成分を適用するための経皮治療システム(TTS)。
【請求項2】
有効医薬成分(単数または複数)がF6H8で溶解、懸濁又は乳化した形態である、請求項1に記載のTTS。
【請求項3】
有効成分が親油性であり、及び/又は、分子量が500より大きいか又はオクタノール/水分配係数(LogP)が1未満または3以上を有する有効成分である、
請求項1又は2に記載のTTS。
【請求項4】
有効成分がテストステロン、エストラジオール、ブプレノルフィン、ロチゴチン及び他のホルモン類の群から選択される1種又はそれ以上の有効成分である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のTTS。
【請求項5】
有効成分含有製剤中の有効成分の割合が0.1から50重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のTTS。
【請求項6】
TTSがリザーバ、又は液体リザーバシステムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のTTS。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載したTTSの製造のための、TTS中の有効医薬成分の可溶化剤、浸透促進剤及び/又は強化剤としてのエタノールとの混合物中でのF6H8の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮治療システムにおける半フッ素化アルカン類の使用及び、半フッ素化アルカン類を含有する経皮治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半フッ素化アルカン類(SFAS)は、局所的な適用が可能な医薬製剤中でそのまま使用するものとして、知られている。ここでは、SFAsは有効医薬成分をより深い皮膚層に移送し、そのようにすることで、皮膚の角質外層(角質層=SC)(例えば、特許文献1及び2参照)を乗り越えるのに役立つ。製剤は、通常溶液または油性エマルジョンである。
【0003】
このプロセスにおけるSFAsの役割が主として、可溶化剤及び/又は浸透促進物質であると見做すかどうかは、未だ最終的には明確にされてはいない。
【0004】
しかしながら、前記の局所的適用が可能な医薬製剤は様々な欠点を有する。開始するためには、一般にそれを毎日複数回適用して、患者に処置する部位上で、治療上必要とされる特定の有効成分濃度を設定しなければならない。ほとんどの場合、局所製剤は全身的効果ではなく局所的効果のみを達成することを意図している。一般に、繰返し使用を必要とする全ての医薬形態の場合、服薬遵守が不十分になってしまう可能性がる。
【0005】
これまで所謂経皮治療システム(TTSS)が提案され、従来技術において、皮膚を横断する医薬的有効成分を全身に投与するための開発がなされて来た。TTSsは皮膚に適用し、皮膚の中に有効成分を放出し、これにより、前記有効成分が全身に利用可能となる剤形である。また有効成分プラスターとも称するTTSsは、様々なデザインで存在し、しかも、例えば特許文献3に記載されている。しかし、これらのシステムもまた、その使用における問題点が皆無という訳ではない。
【0006】
TTS中に存在する有効成分は、皮膚の角質外層のほかに、TTS内の様々な障壁、例えば制御膜と接着層などの全てをも、先ず最初に乗り越えねばならず、結果的に、皮膚内フラックス(定常状態での浸透率)が最終的には低減され得る。しかしながら、有効成分の大部分を経皮吸収的に投与した場合には、TTSからの放出は相対的に急速に進行し、後続する、実際上の皮膚の浸透障壁である角質最外層を貫通する有効成分の浸透が律速になる。例えば、ニコチンな等ごく少数の有効成分は、肌に非常によく浸透するので、必要とする血液レベルを達成するためには、TTS中の追加の膜の補助により有効成分フラックスを、低減しなければならない。
【0007】
しかしながら、経皮吸収有効成分の大部分は皮膚への浸透が、むしろ、かなり悪く、必要とする血液レベルを達成するためには、追加の強化剤(浸透促進剤)を、システムに更に追加しなければならない。
【0008】
その一例としては、親油性のホルモンであるテストステロンの投与(分配係数(LogP)=3.3)が挙げられる。Hardung(University of Freiburg, Germany, 2008)は、その論文の中で、テストステロンを含有する局所製剤、その製剤は所謂担体物質としてSFASを含む、について研究している。前記論文中、103頁の完結した第一段落によれば、前記製剤による、皮膚下層内へのテストステロンの浸透の改善、及び、従って角質外皮層を貫通するための浸透促進効果についても、示していない。
【0009】
特許文献4には、少なくとも4種つの異なる成分からなり、親油性で、及び/又は皮膚浸透性がやや困難な有効成分をTTSsの手段により投与すると、その浸透速度が増加するという強化システムについて記述されている。このようなシステムは、本来、単純な組成物システムよりも複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許公開第0670159号
【特許文献2】国際特許公開第2012/160179号
【特許文献3】国際特許公報第02/17889号
【特許文献4】ドイツ国特許公開第10 2005 050 431号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の目的は、従来の技術で記述した欠点を有さない又は前記欠点の程度が少なくとも明らかに低い医薬製剤又は方法を提供することにある。さらに、対応する医薬製剤が、患者にとって出来るだけ使用容易かつ管理容易であることを意図している。
【0012】
本発明の目的は、SFAsを可溶化剤及び/又は浸透促進物質、及び/又はTTSs中での強化剤として使用することにより達成される。
【0013】
半フッ素化アルカン類(SFAs)は、水素原子がフッ素で部分的に置換された直鎖状または分岐鎖状のアルカン類である。本発明の目的のために好ましい一形態においては、前記SFAsは、非フッ素化部分と過フッ素化部分とからなる。過フッ素化とは、分子のこの部分において、すべての水素原子がフッ素で置換されていることを意味する。このSFAsを単純に標識付けするには略語であるFnHmやFnHmFoの形式で命名することにより可能であり、ここでSFAの、F=過フッ素化セグメント/部分、H=非フッ素化セグメント/部分、およびn、m及びoは、独立して、特定セグメント部分の炭素原子の数である。従って、略語F3H3は、例えば、1−パーフルオロプロピルプロパンを意味する。直鎖状SFAsが好ましく、かつ、F3H3は2−パーフルオロプロピルプロパン、1−パーフルオロイソプロピルプロパンまたは2−パーフルオロイソプロピルプロパンをも意味し得るため、これは、最後に述べた場合に付いて、さらに別途追加的に明記することになろう。従って、これらの指示がなければ、略語であるFnHmやFnHmFoは、直鎖状SFAsを意味する。これは、F6H8がパーフルオロヘキシルオクタンで、F4H5がパーフルオロブチルペンタンを意味する。
【0014】
好ましくは、n、m、oは、独立して、3から20個の炭素原子であり、より具体的には、SFAの過フッ素化セグメントは、4から12個の炭素原子を有し、及び/又は非フッ素化セグメントは、4から10個の炭素原子を有する。従って、好ましい化合物としては、F4H5、F4H6、F4H8、F6H4、F6H6、F6H8及び F6H10である。特に好ましくは、F4H5、F4H6、F6H6及びF6H8であり、その中の特にF6H8とF4H5である。本発明による、SFAs特性に関しては、国際特許公開第2012/160179号(5頁及び6頁)に明示的に言及している。
【0015】
本発明に従って使用されるSFAsは、SFAsを代表する様々の混合物であってもよい。好ましくは、これらは、上記の物質のうちの少なくとも一つを順々に含む。
【0016】
更に、例えば、エタノール、1,2−プロパンジオールおよび種々のブタンジオール等の一価及び多価アルコールの添加により、SFAsの又はSFA混合物の可溶化及び浸透促進特性を明確に高めることができることを見出した。特にエタノールは好適であり、たとえ少量でも明確な効果を提示出来る。この所謂強化効果または促進効果は、SFA/エタノール混合物について特に高い。好ましくは、SFA(s) 又は SFA混合物のアルコールに対する混合比は1:5から5:1であり、より具体的には1:3から3:1である。それぞれの場合において、ここでは体積分率が関わる。
【0017】
本発明によれば、既述した物質および物質の混合物は、皮膚を横断するTTSによる手段により、特に、より親油性で及び/又は皮膚浸透するのがやや困難な物質を患者に供給するために利用されるのが好ましい。
【0018】
本明細書中における「親油性」とは、有効成分が水とは混和不可能な状態の相になるような強い傾向を有することを意味する。親油性物質は、高分配係数(logP>2.5)によって区別される。分配係数値とは、オクタノールと水との間の物質の分配係数、C
octanol/C
waterである。
【0019】
本明細書中における「難水溶性」とは、有効成分が水中で0.3重量%未満の溶解度を有すること、即ち、水1ミリリットル中で3mg未満の物質が溶解し得ることを意味するものと理解される。
【0020】
本明細書中における「やや困難な皮膚浸透性」とは、有効成分のフラックスが、それ自体では、即ち、浸透促進剤や皮膚浸透性を増加させる他の手段が存在しない状態では、治療効果の達成に必要とされる有効成分の血漿中濃度を達成出来るためには少な過ぎることを意味する。
【0021】
一般的に、分子量が500より大きいか、又はLogPが1未満または3以上を有する有効成分は、やや困難な皮膚浸透性と見なされる。
【0022】
親油性で水に難溶性の有効成分は、一般に経口投与の場合、生物学的利用能が低いことは顕著である。経口投与の場合に、生物学的利用能が低い有効成分を経皮投与するのは、原理的には考え得るが、過度に親油性の有効成分もまた、通常は、皮膚浸透性がやや困難または低い有効成分の中の一つとして数えている。
【0023】
本明細書中で、好ましい親油性の有効医薬成分の例としては、テストステロン(LogP=3.3)、エストラジオール(logP=4.01)、ブプレノルフィン(logP=4.98)、ロチゴチン(logP=4.58)、オキシブチニン(logP値=4.02)および他のホルモン類が挙げられる。
【0024】
従来技術では、TTSsは、医薬不浸透性支持層(裏打ち層とも称する)、医薬含有貯蔵層、及び皮膚上に固定するための接着剤層から成る。最後に述べた前記層は又、医薬含有層と同一でもよい。更に、TTSsは通常、保護層を有し、これは、同様に有効成分不浸透性であり、かつ適用前に除去される。この外にも、更なる構成部品、例えば、有効成分の放出を制限する制御膜が存在しても良い。
【0025】
本発明のTTSsは、マトリックスシステムの形態中でもリザーバシステム(リザーバマトリックスのTTSs、液体リザーバシステム)の形態中でも、又は膜システムの中で製造することができる。
【0026】
例えば、TTSの一体式構造形態であるマトリックスシステムは、基本的に、保護裏打ち層、有効成分を含有する接着剤マトリックス、及び除去可能な保護フィルムからなる。リザーバマトリックスTTSは、通常、裏打ち層、液体リザーバ、制御膜、接着層及び除去可能な保護膜を有する。揮発性有効成分のために改造したTTSの構成部品は、裏打ち層、接着層、有効成分含有不織布、接着剤層及び除去可能な保護フィルムからなる。このようなシステムは、当業者周知であり、例えばドイツ公開特許第102005050431号及び、国際特許公開第02/17889号に記載されている。
【0027】
いわゆるリザーバまたは液体リザーバシステムは、揮発性の高い有効成分又は添加剤(例えば、強化剤)を投与する目的には好適である。前記システムの場合、有効成分や賦形剤を揮発する可能性のある乾燥工程は不必要である。一般に、(溶液、乳濁液、懸濁液のような)液体有効成分製剤が、放出制御膜、好ましくは有効成分不浸透性膜から形成されたパウチ中に存在する経皮治療液体リザーバシステム自体は、当業者に周知である。前記システムの場合は、薬学的に許容され、皮膚に適合し得る有機溶媒は、キャリア媒体としての役割を果たし、その粘度は適切な賦形剤(例えば、鉱油)を使用し、特定の技術的要件に調整することができる。使用される溶媒が患者の皮膚を通して、有効成分の浸透を促進する特性を同時に有すると理想的である。然しながら、有効成分の浸透を促進する物質、所謂強化剤を、溶媒に添加することも出来る。また、液体リザーバシステムは接着剤層を含み、この手段によりシステムは患者の皮膚に固定される。
【0028】
本発明の液体リザーバシステムの場合、有効成分は、SFA類、SFA混合物、又は、1種若しくはそれ以上のSFA類と1種若しくはそれ以上の更なるアルコール類との混合物中で、溶解、分散、懸濁、又は乳化している。
【0029】
有効成分を含有する製剤中の有効成分の割合は、0.1から50重量%で、好ましくは、5〜25重量%である。更に、有効成分製剤は他の物質を含有することが出来、この手段により、遅延放出と言う意味での、有効成分の放出制御が出来る。このような物質としては、例えば、吸収剤である。
【0030】
吸収剤は、シクロデキストリン類、ポリビニルピロリドン類およびセルロース誘導体を含む群から選択することが出来る。
【0031】
有効成分製剤は、どのような放出制御機能も持たない増粘性賦形剤を追加的に含有しても良い。好ましくは、増粘性賦形剤は、微細に分散した二酸化ケイ素、例えばAerosilR974
(R)、ポリアクリル酸、例えばCarbopol934P
(R)、鉱物油、ラノリン(wool waxes)および高分子量ポリエチレングリコール、からなる群から選択される。好ましいポリエチレングリコールの例としては、Carbowax 1000
(R)である。液体リザーバ内の有効成分の製剤は、溶液、分散液、懸濁液、ペーストまたはゲルの形態でも良い。
【0032】
本発明のTTSの場合において、液体リザーバーシステムから皮膚への有効成分および強化剤(SFA類及びその混合物)の放出は制御可能であり、下記を介して行なう。
・浸透障壁としての皮膚、
・例えばその化学組成物及び/又は孔径の観点から、使用する制御膜の種類、
・例えば化学組成物及び/又はその厚さの観点から、制御膜の下側で使用され、皮膚上にシステムを固定する接着層の種類、
・液体リザーバ内での使用を通じて遅延放出する、例えばシクロデキストリン類、ポリビニルピロリドン類およびセルロース誘導体の吸収剤。
【0033】
制御膜としては、定義された孔径を有すように製造され、かつポリプロピレン、ポリウレタン、エチレンと酢酸ビニルとシリコーンとの共重合体から構成される微孔性高分子フィルムを使用することが可能である。該高分子フィルムは、有効成分製剤内に存在する物質に対して耐性があるならば、適合する。
【0034】
有効医薬成分の放出を制御する特性を有し、かつ、皮膚上にシステムを固定するために制御膜の下に取り付けられている接着剤として、好ましくは、添加剤として接着性樹脂と組み合わせた、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をベースとした接着剤である。前記接着剤の場合には、酢酸ビニルに対するエチレンの割合を介して接着剤層の貫通性または浸透性を調整することが出来る。有効成分および賦形剤の大部分に対して、浸透性であるため、シリコーンベースの接着剤も又好ましく、又、ポリ(メタ)アクリレートベースの接着剤及びポリイソブチレンベースの接着剤が好ましい。
【0035】
従って、本発明は、
a)TTS中に置いて、可溶化剤、浸透促進剤及び/又は強化剤として作用することが可能な、SFA類、又はSFA類の混合物、又はSFA類とアルコール類との混合物の使用、
b)a)の中で述べた物質を含有するTTS類、
c)a)の中で述べた物質、及び、好ましくは親油性であり、及び/又はやや困難な皮膚浸透性である有効医薬成分を含有するTTS類、および
d)b)及びc)の中で述べたTTSを(ヒト)の皮膚を横断する有効医薬成分に適用するための使用を含む。
【0036】
以下の例示的な実施態様は、本発明を更に説明するのに役立つが、本発明がこれに制限を受けるものではない。逆に、記載した全ての形態は、自由に組み合わせ可能であり、当業者が適切に現出したように思える、どのような形態であっても、及び前記すべての形態は、本発明に包含される。
【実施例】
【0037】
実施例1および2
接着性液体リザーバシステムは、Duro Tak
(R) 1050 (アントワープ、National Starch社製)タイプの有効成分を含まないポリアクリレート接着剤溶液または、ロジン(Foral
(R)85 B)ベースの接着性樹脂を添加したエチレンと酢酸ビニルの共重合体を、先ず拡張用ヘラ(extension knife)を用いて300ミクロンの湿潤膜厚のシリコン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上に被覆して調製した。その後、排気システムを用い被覆膜を50℃の乾燥キャビネット中、30分間乾燥することにより、溶媒を除去した。次に溶剤と有効成分とを含まない接着性フィルムを厚さ35μmのポリウレタンフィルム(Lohmann社製、Opraflex
(R))またはポリプロピレンフィルムで被覆し、後に積層することにより制御膜とした。ポリエステルフィルム(3M社製、Scotchpak
(R) No.1220)を制御膜に適用し、特定の封止マスクを用い、市販の電気アイロンで加熱し、直径25mmの円形状リザーバを有するパウチを形成した。
【0038】
リザーバへの既設の開口部を介して、表1及び表2による特定の混合物を、注射器でリザーバ内に充填した。リザーバに充填した後、充填口を電気アイロンでヒートシールし、完全に自己完結型で貯蔵安定性の液体リザーバシステムを形成した。
【0039】
前述のシステムの浸透速度は「ヒト表皮」上で、改造フランツ型拡散セルを用いたin vitro拡散モデルで測定した。全ての場合において、使用した受容媒体はリン酸緩衝液(pH5.5)であり、NaN
3 0.1%を保存料として添加し、恒温32℃に制御した。
【0040】
テストステロンの累積浸透割合を
図1及び
図2に示し、独立した測定点は3つの独立した測定の平均値を表す。テストステロンの浸透に関する調査の結果を表1及び2にまとめた。
【0041】
【表1】
【0042】
図1は表1に対応する溶媒(媒体または賦形剤)中のテストステロンの飽和溶液に関する累積浸透割合[μg/cm
2]を示している。最高の累積浸透割合は当然、表1に対応する最高のインビトロ皮膚フラックスJSS[μg/cm
2 x h]にも連携する。
【0043】
ここでは、SFAとアルコールとから構成した系(F6H8:エタノール1:3(V/V))が格別な強化効果を示し、これは、相乗効果(水に対するこの効果、促進係数は28である)とも称し得る。
【0044】
図2及びその対応する表2には、SFAとアルコールとの混合物(ここでは例としてF6H8とエタノールを使用)に、特定の飽和濃度の80%を有するテストステロン溶液を例として使用し、成分の様々な体積混合比(V/V)についての前記強化効果を示した。結果は、すべての混合比において、(溶媒としての水と比較して)予想外の強化効果を示し、しかも、体積比3のF6H8と体積比1のエタノールとの混合物では強化効果係数EF=34付近を示した。