特許第6638013号(P6638013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6638013クランプ装置及びそのようなクランプ装置を含んだ工作ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6638013
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】クランプ装置及びそのようなクランプ装置を含んだ工作ユニット
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/117 20060101AFI20200120BHJP
   B23B 31/26 20060101ALI20200120BHJP
   B23B 29/04 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   B23B31/117 601A
   B23B31/26
   B23B29/04 Z
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-63920(P2018-63920)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-176416(P2018-176416A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年5月14日
(31)【優先権主張番号】10 2017 107 488.0
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507082873
【氏名又は名称】オット−ヤコブ シュパンテヒニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ グライフ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター モーア
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド ロッシュ
(72)【発明者】
【氏名】バルトロメーウス ライザッハ
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−039143(JP,A)
【文献】 特開昭57−061438(JP,A)
【文献】 独国特許発明第102015121236(DE,B3)
【文献】 特開昭56−069055(JP,A)
【文献】 米国特許第04352612(US,A)
【文献】 実開昭59−039137(JP,U)
【文献】 実開平04−060604(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第102004026438(DE,A1)
【文献】 特開2017−104974(JP,A)
【文献】 実開昭49−071880(JP,U)
【文献】 特開平05−050359(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3069855(JP,U)
【文献】 特開2010−162647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/04
B23B 31/00−33/00
B23Q 3/00−3/154
B23Q 3/16−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械部品(2)と、前記機械部品(2)に工具保持取付具(1)をクランプするためのクランプ装置とを有した工作機械の工作ユニットであって、該クランプ装置は、
前記機械部品(2)内にスライド可能に取り付けられたテンションロッド(17、18)と、該テンションロッド(17、18)によってクランプ位置と解放位置との間で可動であるクランプセット(6)と、該クランプセット(6)の引き込み力を発生させるための前記テンションロッド(17、18)専用のテンションスプリング(7)と、該テンションロッド(17、18)による該テンションスプリング(7)の作用力に抗して前記クランプセット(6)を解放位置にまで動かすことができる解放機構(8)と、を含んでおり、
前記テンションスプリング(7)は、前記テンションロッド(17、18)の第1ロッド部(17)と、該第1ロッド部に対して可動である第2ロッド部(18)との間でクランプされ、
前記クランプセット(6)は、前記テンションロッドの2つのロッド部(17、18)によって互いに対して反対方向に可動である2つの部分(9、10)で成るクランプコーンと、前記部分の外側に当接し、周方向に互いに離間している複数のテンション要素(19)とを含んでおり、当該テンション要素は、前記クランプコーンの2つの部分(9、10)を反対方向にスライドさせることで半径方向の外側のクランプ位置と半径方向の内側の解放位置との間で動くことができ、
前記テンションロッド(17、18)は、前記解放機構(8)と前記クランプセット(6)とを連結すると共に、前記解放機構(8)と前記クランプセット(6)の間に位置する前記機械部品(2)の挿通空隙部(42)を貫通しており、
前記テンションスプリング(7)は、前記クランプセット(6)のクランプ位置および解放位置の両方で前記機械部品(2)から離れるように該機械部品(2)の前記挿通空隙部(42)内に配置されており、
前記テンションスプリング(7)は、前記クランプセット(6)が解放位置に移動するとき、前記解放機構(8)による2つのロッド部(17、18)の反対方向の動きによって、両端押圧されることを特徴とする工作ユニット
【請求項2】
前記解放機構(8)は、固定された受領取付具(59)内にスライド可能に取り付けられている前記第2ロッド部(18)を動かすための包囲体(53、54)と、該包囲体(53、54)の圧力チャンバ(55)内でスライド可能にガイドされ、圧力媒体によって可動である前記第1ロッド部(17)を動かすための圧力ピストン(56)とを含んでいることを特徴とする請求項1記載の工作ユニット
【請求項3】
テンションスリーブ(45)が前記第2ロッド部(18)の後方端に配置され、該テンションスリーブは接続部品(64)によって前記解放機構(8)の前記包囲体(53、54)に接続されることを特徴とする請求項2記載の工作ユニット
【請求項4】
前記接続部品(64)は、周方向に相互に離間している複数のキャリパー型の接続要素(67)を含んでおり、その前方突出部(68)と後方突出部(69)は、前記テンションスリーブ(45)のカラー部(65)上および前記包囲体(53、54)の包囲部分(53)のカラー部(66)上に延びていることを特徴とする請求項3記載の工作ユニット
【請求項5】
複数の前記キャリパー型の接続要素(67)はバネ(70)によって共に保持され、内側に付勢されることを特徴とする請求項4記載の工作ユニット
【請求項6】
前記第1ロッド部(17)の後方端(50)は前記テンションスリーブ(45)内で軸方向にスライド可能に取り付けられ、前記後方端は拡張された径を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の工作ユニット
【請求項7】
前記第1ロッド部(17)の後方端(50)は前記テンションスリーブ(45)内で軸方向にスライド可能にガイドされる複数のピンによってスラストリング(44)に接続されることを特徴とする請求項6記載の工作ユニット
【請求項8】
前記テンションスプリング(7)は、前記第2ロッド部(18)の環状肩部(43)と、前記スラストリング(44)との間にクランプされ、前記第1ロッド部(17)に接続されていることを特徴とする請求項7記載の工作ユニット
【請求項9】
前記テンション要素(19)は、前記クランプコーンの前記第1部分(9)の錐形外面(12)に当接するための第1内側クランプ面(28)と、前記クランプコーンの前記第2部分(10)の錐形外面(16)に当接するための第2内側クランプ面(29)とを含んでいることを特徴とする請求項1記載の工作ユニット
【請求項10】
前記クランプコーンの前記第1部分(9)は円筒形ガイド区分(13)を有しており、当該円筒形ガイド区分(13)に前記クランプコーンの前記第2部分(10)の中空の円筒形ガイド部分(14)がスライド可能に配置されていることを特徴とする請求項9記載の工作ユニット
【請求項11】
前記テンション要素(19)は、錐形面部分によって形成されている第1外側クランプ面(22)と、該第1外側クランプ面(22)に対して反対方向に傾斜し、錐形面部分によって形成されている第2外側クランプ面(25)とを有したクランプ鉤爪の形状に構成されていることを特徴とする請求項9又は10記載の工作ユニット
【請求項12】
前記機械部品(2)は、スピンドル保持取付具(58)内に回転可能に取り付けられ、モータによって回転される加工スピンドルであることを特徴とする請求項1記載の工作ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加工対象物または工具(工具)をクランプ(圧締め固定)するためのクランプ装置に関する。特には、請求項1の前置部分による工作機械の機械部品内の工具保持取付具に関する。さらに本発明は、そのようなクランプ装置を含んだ工作ユニット(設備)にも関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのクランプ装置は特許文献1(DE102004026438B4)で知られている。このクランプ装置は、機械スピンドル(軸)内にスライド可能に取り付けられるテンションロッドと、その機械スピンドル内に取り付けられるクランプセットとを含んでおり、このクランプセットは、テンションロッドの手段によりクランプ位置と解放(解除)位置との間で可動である。さらに、クランプセットのクランプ力を発生させるためにプレートスプリングアセンブリ(構造体)の形態のテンションスプリングが機械スピンドル内に取り付けられる。そのテンションスプリングは拡張された径を有する後方端のテンションロッドと、機械スピンドル内で軸方向に支持されている保持リングとの間でクランプされている。機械スピンドルの後方端に設置されている解放機構の手段によって、クランプセットはテンションロッドの手段によりテンションスプリングの作用力に対抗して解放位置にまで移動できる。この従来技術のクランプ装置のテンションスプリングは工作スピンドルに対抗して片側で支持されているため、機械スピンドルは比較的に強い軸方向の作用力で稼動される。その結果、例えば、一般にスピンドルジャケットあるいはスピンドル保持取付具の内部で回転可能に取り付けられる機械スピンドルのベアリングは大きな摩耗化現象に曝される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102004026438号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明によって解消されるべき課題は、共に作用して最善の作用力で効果的なクランプを提供できるクランプ装置およびそのようなクランプ装置を含んだ工作ユニットを利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1の特徴を備えたクランプ装置および請求項13の特徴を備えた工作ユニットによって解消される。さらに、本発明の進歩した改良と有用な実施態様が従属請求項において定義されている。
【0006】
加工対象物あるいは工具、特には工作機械の機械部品における工具保持取付具をクランプするための本発明のクランプ装置においては、機械部品内に配置されているクランプセットの引き込み作用力を発生させるためのテンションスプリング(引張バネ)がテンションロッドの第1ロッド部と第2ロッド部との間にクランプされ、そこで第2ロッド部は第1ロッド部に対して可動であり、クランプセットが解放位置に移動し、それら2つのロッド部の互いに対する反対方向の動きによって、解放機構によりその両端で押圧される。これでテンションスプリングによって発生される軸方向の作用力がさらに効果的に活用され、クランプ装置を保持する機械部品に対する摩耗が減少する。
【0007】
それら2つのロッド部の反対方向の動きをできるだけ安価に、少ない努力で可能にするため、解放機構は、静止受領取付具内にスライド可能に取り付けられる第2ロッド部を動かすための包囲体と、その包囲体の圧力チャンバ内にスライド可能に取り付けられ、圧力媒体の手段によって動かされる第1ロッド部を動かすための圧力ピストンとを含むことができる。包囲体の可動形態は、この圧力ピストンが第1ロッド部を機械部品内に押し込むとき、軸方向に動くことができない包囲体を機械部品に対して後方に押させる。これで第2ロッド部が可動な包囲体を介して機械部品から同時的に引き出されることを可能にする。
【0008】
第2ロッド部の後方端には、接続構造部の手段で解放機構の包囲体に接続されているテンションスリーブが配置されている。取り付けを簡単にするため、この接続構造部は、相互に周方向に離れている複数のキャリパー型のの接続要素を含んでおり、その前方突出部と後方突出部はテンションスリーブのカラー部と包囲体の包囲部分(分割部)のカラー部で延びている。このキャリパー型のの複数の接続要素はバネによって共に保持でき、内側方向に付勢できる。
【0009】
拡張された直径を有した第1ロッド部の後方端は、好適には軸方向にスライドできるようにテンションスリーブ内でガイドされる。第1ロッド部の後方端は、軸方向にスライドできるようにテンションスリーブ内でガイドされる複数のピンの手段によってスラストリングに接続できる。
【0010】
テンションスプリングは、好適には第2ロッド部の環状肩部と、第1ロッド部に接続されているスラストリングとの間でクランプされている。テンションロッドのこれら2つのロッド部を互いに反対方向に動かすことで、クランプ装置が解放されるときにテンションスプリングは両側から容易に押圧できる。
【0011】
本発明の1好適実施態様において、クランプセットは2つの部分で成るクランプコーン(錐体部)を有しており、それら2つの部分はテンションロッドの2つのロッド部の手段と、それら部分の外側に当接し、周方向に互いに離間されている複数のテンション要素によって互いに反対方向に動くことができ、それらテンション要素は、放射状外側方向のクランプ位置と、放射状内側方向の解放位置との間で、クランプコーンの2つの部分を反対方向にスライドさせることによって動くことができる。1つの部分で成るクランプコーンとは対照的に、稼動力は包囲体上に保持されず、クランプコーンの他方の部分に移される。これでテンションスプリングのロードファクタ(荷重率)が向上され、さらに効果的なクランププロセスが得られる。
【0012】
第2の好適実施態様において、テンション要素は、クランプコーンの第1部分の錐形外面に当接するための第1内側クランプ面と、クランプコーンの第2部分の錐形外面に当接するための第2内側クランプ面とを有する。
【0013】
互いに対してスライドできるクランプコーンのそれら2つの部分が効果的および正確にガイドされることを確実にするため、クランプコーンの第1部分は、クランプコーンの第2部分の中空の円筒形ガイド部分をスライド可能にガイドさせる円筒形ガイド区分(域)を有する。
【0014】
テンション要素は、例えば、錐形表面部分によって形成された第1外側クランプ面と、第1クランプ面に対して反対方向に傾斜し、これも錐形表面部分によって形成されている第2外側クランプ面を備えたクランプ鉤爪の形状に形状化できる。しかしながら、テンション要素は異なる形状を有することもできる。
【0015】
本発明は、機械部品と、加工対象物または工具、特に工具保持取付具をその機械部品にクランプするための上述のクランプ装置とを含んだ工作機械の工作ユニットにも関する。
【0016】
特に有用な実施態様において、テンションスプリングは機械部品の挿通空隙部内に配置されており、このテンションスプリングは、クランプセットのクランプ位置と解放位置の両方で機械部品から離れて配置されている。よって、クランプセットのクランプ位置と解放位置の両方で、テンションスプリングによって発生される作用力は2つのテンションロッドによって吸収され、クランプ装置を保持する機械部品にかかる応力はさらに減少され、テンションスプリングのロードファクタは大きく改善されることができる。
【0017】
1好適実施態様では、機械部品は、スピンドル保持取付具に回転可能に取り付けられ、モータによって回転される加工スピンドルでよい。
【0018】
本発明の追加の特徴と利点は、図面に照らして以下の好適実施例の説明を読めば理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】クランプ位置のクランプ装置の長手方向断面図である。
図2】解放位置のクランプ装置の長手方向断面図である。
図3図1図2で図示されているクランプ装置のクランプセットの詳細図である。
図4】クランプ位置の稼動機構の長手方向断面図である。
図5】解放位置の稼動機構の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図2は、クランプ位置(図1)と解放位置(図2)の工作機械の機械部品2への工具保持取付具1のクランプのためのクランプ装置を図示する。図示されている実施例において、機械部品2は加工スピンドル(軸)であり、それはベアリング(非図示)の手段を介してスピンドル保持取付具の長手軸3の周囲に取り付けられ、駆動装置(非図示)の手段を介して長手軸3の周囲で回転できる。図1図2では底部に設置されているその前方端で、ここでは加工スピンドルの形態である機械部品は、工具保持取付具1上でクランプコーン5を受領するための錐形受領スロット4を有している。図示の実施例では、工具保持取付具1は中空のテーパシャンクの形態のクランプコーン5を備えているHSK工具保持取付具である。
【0021】
ここでは加工スピンドルの形態である機械部品2にはクランプセット6が配置されており、それはクランプ位置と解放位置との間で動くことができ、ここではそれはプレートスプリング構造体の形態であり、それも機械部品2内に配置されており、工具保持取付具1を保持するためにクランプ位置に移動でき、工具保持取付具1を解放するためにテンションスプリング7の作用力に抗して機械部品2の後方端に配置されている解放機構8によって解放位置に移動される。
【0022】
図3で別個に提供されているクランプセット6は互いに反対方向で軸方向に動く2つの分離された部分9と10で成るクランプコーンを含んでいる。工具保持取付具4に対面し、図3では底部に設置されているクランプコーンの第1部分9は、錐形外面12を備えた錐形クランプ区分11と、円筒形ガイド区分13とを含んでいる。クランプコーンの第2部分10は、第1部分9のガイド区分13をスライド可能にガイドされる中空の円筒形ガイド部分14と、錐形外面16を備えた錐形クランプ区分15とを含んでいる。これら2つの部分9と10の上のクランプ区分11と15の錐形外面12と16は互いに対して反対方向に傾斜している。ガイド区分13とガイド部分14はクランプコーンの2つの部分9と10を互いに反対方向で軸方向にスライド可能にガイドさせる。
【0023】
クランプコーンのそれら2つの部分9と10は、軸方向にスライドできる第1ロッド部17と、第1ロッド部17に対して軸方向にスライドできる第2ロッド部18とを備えた2部分で成るテンションロッドによって動かされることができる。クランプコーンの第1部分19は、ここでは管状の第1ロッド部17の前方端に取り付けられ、クランプコーンの第2部分10は、第1ロッド部17の周囲で同軸的に配置されている第2管状ロッド部18の端部に取り付けられている。これら2つのロッド部17と18の手段によって、クランプコーンの2つの部分9と10が互いの方向に、または互いから離れる方向に動くことが可能である。
【0024】
第1部分9の錐形外面12と、クランプコーンの第2部分10の錐形外面16に当接しているのは複数のテンション要素19であり、それらは、相互に周方向に等間隔に離間しており、図3で示すクランプ位置ではクランプセット6の中心線軸20に平行に設置されている。ここではクランプ鉤爪の形態であるテンション要素19は工具保持取付具1に対面する厚太化された第1端21を有しており、図1に示されるクランプ位置にて、工具保持取付具1の工具コーン5(クランプコーン5の誤記)の内部で錐形内面23に当接する第1外側クランプ面22を備えている。鉤爪形状テンション要素19は、第2外側クランプ面25を備え、第1クランプ面22とは反対方向に傾斜し、これも錐形表面部分によって形成されている厚太化された第2端24も有しており、その第2外側クランプ面の手段によって、テンション要素19は図1に示すように機械部品2の環状出張部27内で錐形カウンター面26に保持される。
【0025】
クランプコーンの2つの部分9と10を互いの方向に動かすと、鉤爪形状テンション要素19は放射状(半径方向の)外側のクランプ位置にまで移動し、クランプコーンの2つの部分9と10を引き離すと、それらは放射状(半径方向の)内側の解放位置にまで移動する。
【0026】
図3に示されるクランプ位置にて、前方端21の内部に配置された第1内側クランプ面28を備えた鍵爪形状テンション要素19は第1部分9の錐形外面12に当接し、後方端24の内部に配置された第2内側クランプ面29を備えたテンション要素は第2部分10の錐形外面16に当接する。
【0027】
図2に示される解放位置にて、第1内側クランプ面28を備えた工具保持取付具1で係合する鉤爪形状テンション要素19の前方端21は、錐形クランプ区分からクランプコーンの第1部分9の、さらに細くなったガイド区分13への移行部にて、図3に示されるように面取り部30に配置され、鉤爪形状テンション要素19の前方端21は放射状で内側方向に動き、交換または代替のために工具保持取付具1を解放する。クランプコーンの2つの部分9と10の上の錐形外面12と16および鉤爪形状テンション要素19の内側クランプ面28と29は、クランプコーンの2つの部分9と10が同時的に押圧されたときにテンション要素19を放射状で外側に動かし、2つの部分9と10が押し離されたときにテンション要素19を放射状で内側に動かすように形態化されている。
【0028】
クランプコーンの第2部分10に当接する鉤爪形状テンション要素19の第2端24には、図2で詳細に示されているスペーサが配置され、それを介して周囲方向にテンション要素19が所定の距離だけ相互に離間して配置されている。このスペーサは、ガイドスリーブ31内で軸方向にスライド可能にガイドされ、テンション要素19に対面してその端部で、傾斜した前方端面34を備えた複数の出張部33を有する保持スリーブ32を含んでおり、それら出張部は周方向に等間隔に離間されており、軸方向に張り出している。保持スリーブ32はガイドスリーブ31内でスライドし、圧縮バネ35によって鉤爪形状テンション要素19の方向に押される。保持スリーブ32の出張部33は鉤爪形状テンション要素19の後方第2端24で溝部36に係合し、傾斜した前方端面34で溝部36の基部の傾斜したカウンター面37に当接する。
【0029】
ガイドスリーブ31は後方接触面38を有しており、その前方端に、鉤爪形状テンション要素19の後方第2端24に当接するための傾斜前方端40を有しており、周方向に相互に離間し、保持スリーブ32の出張部33同士間に張り出す複数のリングセグメント(部分)39を含んでいる。
【0030】
図1図2が示すように、ここでは前後に配置されている複数のプレートスプリング41を含んだプレートスプリング構造体の形態であるテンションスプリング7が機械部品2の挿通空隙部42の中央部に配置され、放射状で外側に延びる第2ロッド部18の環状肩部43と、挿通空隙部42内で軸方向にスライドできるスラストリング44との間でクランプされている。テンションスプリング7は、図1に示されるクランプ位置において、あるいは図2に示される解放位置においても機械部品2と接触状態とはならない態様にて環状肩部43とスラストリング44との間に配置されている。
【0031】
図4図5に示すように、テンションスリーブ45が放射状で外側に延びる第2ロッド部18の後方端に取り付けられている。テンションスリーブ45は拡張された径を有する機械部品2の挿通空隙部42の後方部46内で軸方向にスライド可能にガイドされ、機械部品2の後方端内に螺合される保持リング47によって軸方向に固定される。テンションスリーブ45は機械部品2内を出張部48と保持リング47との間でスライドできる。テンションスリーブ45の空腔部49において、第2ロッド部18内をスライド可能にガイドされる拡張された径を有する第1ロッド部17の後方端50が軸方向にスライド可能にガイドされる。内側の第1ロッド部17の後方端50は、周方向に相互に離間されており、テンションスリーブ45内を軸方向にスライド可能にガイドされる複数のピン51の手段によってスラストリング44に接続されている。よって、それらピン51を介して、スラストリング44は内側ロッド部17の後方端50によって移動できる。冷却剤または他の圧力流体を内側ロッド部17から工具保持取付具1または工具に供給することができる搬送管52が内側ロッド部17の後方端内に螺合される。
【0032】
図4図5に別々に図示されている解放機構8は、工具保持取付具1とは反対側を向いている機械部品2の後方端に配置されている。解放機構8の手段によって、第1ロッド部17は機械部品2の挿通空隙部42内に押し入れが可能であり、第2ロッド部18は機械部品2から引き出しが可能であり、クランプセット6は、これら2つのロッド部17と18によって形成されているテンションロッドの手段によってテンションスプリング7の作用力に対抗して解放位置内に移動する。クランプセット6が解放位置内に移動するとき、テンションスプリング7は解放機構8の手段によって両端で追加的に押圧される。これでテンションスプリング7の両端が動かされる。
【0033】
解放機構8は、外側方向に配置された第1包囲部分53、および、第1包囲部分の内部に配置され、そこに頑丈に接続されている第2包囲部分54で成る中空円筒型包囲体を含んでいる。これら2つの包囲部分53と54は環状圧力チャンバ55を包囲しており、内部ではスリーブ形状の圧力部品57を備えた環状圧力ピストン56がガイドされ、放射形状シールの手段で封止されており、圧力媒体の手段によって軸方向に可動となっている。これら2つの包囲部分53と54で構成されている包囲体はスリーブ形状の受領取付具59内で軸方向にスライド可能に配置されており、解放機構8が機械部品2に対して可動となるようにスピンドルジャケット58あるいは別の静止部分に取り付けられている。加工スピンドルの形態である機械部品2は、例えば、スピンドルジャケット58内に回転可能に取り付けが可能である。
【0034】
第1包囲部分53には、傾斜した腔部を介して環状圧力チャンバ55の後方端にまで延びる第1軸方向供給空腔部60が配置されている。第2包囲部分53内の第1結合腔部61を介して、この供給空腔部60は圧力流体により加圧でき、圧力ピストン56上に圧力部品57を延出させる。第1包囲部分53内の第2軸方向供給空腔部62および第2傾斜腔部は圧力チャンバ55の前方端にまで延びる。第2包囲部分53内の第2結合腔部63を介して、この供給空腔部60は圧力流体によって加圧でき、圧力ピストン56上で圧力部品57を引っ込める。
【0035】
解放機構8と、テンションロッドの2つのロッド部17および18は、一方では圧力ピストン56上で圧力部品57の手段によって、他方では、テンションスリーブ45の端部で環状カラー部(立襟形状部)65上を延びる接続部品64の手段によって互いに接続されており、その端部は機械部品2に対して後方に突き出しており、テンションスリーブ45に対面する包囲部分53の前方端上の環状カラー部66上を延びている。図示されている接続部品64は、周方向に互いに離間しており、テンションスリーブ45上のカラー部65と包囲部分53上のカラー部66の上を延びる前方突出部68と後方突出部69を有した複数のキャリパー型の接続要素67を含んでいる。このキャリパー型の接続要素67はスプリング70によって一緒に保持され、放射状で内側方向に付勢される。
【0036】
上述したクランプ装置は次のように作用する。
【0037】
図1に示されるクランプ位置において、クランプコーンのこれら2つの部分9と10は、テンションロッドのテンションスプリング7と2つのロッド部分17および18の手段によって互いの方向に移動され、テンション要素19は放射状で外側方向のクランプ位置にまで押し込まれる。このクランプ位置にて、テンション要素19の外側クランプ面22と25は、機械部品2内で工具保持取付具1の錐形内面23と、錐形カウンター面26にそれぞれ当接し、工作部分2の受領スロット4内で工具保持取付具1を緊張状態にて保持する。
【0038】
工作作業中に、加工スピンドルの形態の機械部品2が長手軸3の周囲を高速で回転するが、解放機構8は回転動作に処されていないので、図4でも示されているが、クランプ位置において解放機構8と機械部品2との間に接触は存在しない。クランプ位置においては、解放機構8の圧力ピストン56は引っ込められ、圧力ピストン56の圧力部品57と第1ロッド部17の後方端50との間には間隙が形成されている。クランプ位置において、間隙は接続要素67の前方突出部68とテンションスリーブ45との間にも形成されている。
【0039】
クランプ装置を解放するために、圧力流体が第1結合腔部61を介して供給されて圧力ピストン56が延伸し、そのスリーブ形状の圧力部品57は内側方向に配置された第1ロッド部17の後方端50を押圧し、それを機械部品2の受領スロット4の方向で前方にスライドさせる。同時に、解放機構8の軸方向に可動な包囲体の2つの包囲部分53と54は後方に動き、内側方向に配置された第2ロッド部18はテンションスリーブ45と接続要素67を介して後方に引っ張られる。これで、第2ロッド部18の環状カラー部43とスラストリング44との間でクランプされているテンションスプリング7の両端が押圧され、クランプコーンの2つの部分9と10が移動して離れ、テンション要素19は図2で示される解放位置に到達する。この位置でクランプコーンの2つの部分9と10の外側に当接するテンション要素19は十分に放射状で内側方向に移動しており、工具保持取付具1の内部でクランプ面22を錐形内面23から脱係合させ、工具保持取付具1は錐形受領スロット4から容易に取り外される。
【0040】
本発明のクランプセットは上記の実施例には限定されない。よって、テンション要素は、例えば、球状または任意の他の適した形状を有することができる。本発明のクランプシステムは中空テーパシャンク工具システムのみならず、急傾斜テーパシャンク工具システムまたは他のクランプシステムにおいても使用できる。多辺形テーパシャンク工具システム(PSC)のためのクランプセットとして、または、球状テンション要素を備えたクランプセットとして、あるいは別なタイプの工具交換システムのためのクランプセットとして、中空テーパシャンク(HSK)を備えた工具を取り付けるため、および、コレット形態で急傾斜テーパシャンク(SK)を備えた工具を取り付けるためにクランプセットを形状化できる。このクランプ装置は加工対象物を着脱式に取り付けるのにも適している。さらに、テンションロッドの2つのロッド部を共に動かし、または離れるように動かすための異なる解放機構も同様に使用することができる。
【0041】
構成部材リスト
1 工具保持取付具
2 機械部品
3 長手軸
4 錐形受領スロット
5 クランプコーン
6 クランプセット
7 テンションスプリング
8 解放機構
9 クランプコーンの第1部分
10 クランプコーンの第2部分
11 錐形クランプ区分
12 錐形外面
13 円筒形ガイド区分
14 ガイド部分
15 錐形クランプ区分
16 錐形外面
17 第1ロッド部
18 第2ロッド部
19 鉤爪形状テンション要素
20 中心線軸
21 テンション要素の第1端
22 第1外側クランプ面
23 錐形内面
24 テンション要素の第2端
25 第2外側クランプ面
26 錐形カウンター面
27 環状出張部
28 第1内側クランプ面
29 第2内側クランプ面
30 面取り部
31 ガイドスリーブ
32 保持スリーブ
33 出張部
34 前方端面
35 圧縮バネ
36 溝部
37 カウンター面
38 後方接触面
39 リングセグメント
40 傾斜前方端
41 プレートスプリング
42 挿通空隙部
43 環状肩部
44 スラストリング
45 テンションスリーブ
46 挿通空隙部の後方部
47 保持リング
48 出張部
49 空腔部
50 第1ロッド部の後方端
51 ピン
52 搬送管
53 内側包囲部分
54 外側包囲部分
55 圧力チャンバ
56 圧力ピストン
57 圧力部品
58 スピンドルジャケット
59 受領取付具
60 第1軸方向供給空腔部
61 第1結合腔部
62 第2軸方向供給空腔部
63 第2結合腔部
64 接続部品
65 カラー部
66 カラー部
67 キャリパー型の接続要素
68 突出部
69 突出部
70 バネ
図1
図2
図3
図4
図5