(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6638122
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】標的核酸の検出方法及びキット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20200120BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20200120BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20200120BHJP
C12Q 1/6855 20180101ALI20200120BHJP
【FI】
C12Q1/6851 ZZNA
C12N15/09 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6855 Z
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-76848(P2017-76848)
(22)【出願日】2017年4月7日
(62)【分割の表示】特願2012-547941(P2012-547941)の分割
【原出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2017-136086(P2017-136086A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-275948(P2010-275948)
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】507316642
【氏名又は名称】アボット ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104684
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】小宮 健
【審査官】
上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/001376(WO,A2)
【文献】
特表2005−516610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68−1/70
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、
該試料に
(a)5’から3’の方向に、22〜50程度の塩基を有する第1の任意の配列、エンドヌクレアーゼの認識部位、及び該標的核酸の3’末端に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチドと、
(b)5’から3’の方向に、該第1の任意の配列に実質的に相同的な22〜50程度の塩基を有する第2の任意の配列、エンドヌクレアーゼの認識部位、及び該第1の任意の配列に実質的に相同的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチドと、
(c)ポリメラーゼと、
(d)ニッキング反応に用いられる少なくとも一つのエンドヌクレアーゼと、を混合する工程、
標的核酸の3’末端が該標的核酸の3’末端に相補的な第1のオリゴヌクレオチドの配列に結合し、第2のオリゴヌクレオチドの第2の任意の配列に相補的なシグナルDNAを作製する条件下に、約35℃〜約37℃の温度を保持する工程であって、
該シグナルDNAが3’末端配列において第2のオリゴヌクレオチドに結合し、さらにシグナルDNAを作製する工程、及び
シグナルDNAを検出する工程であって、該シグナルDNAの存在により標的核酸を検出する工程、
を含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに検量線を形成し、検量線に基づいて該標的核酸の濃度を決定する工程を含んでなる方法。
【請求項3】
上記エンドヌクレアーゼが、Nb.BbvCI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、及びNt.BsmAIからなる群から選択される酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記ポリメラーゼが、鎖置換機能を有するDNAポリメラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記ポリメラーゼが、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、バチルス・ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、及びバチルス・カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1及び第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも一方の3’末端が修飾されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法を実施するためのキットであって、第1及び第2のオリゴヌクレオチド、及び約35℃の温度を保持するための説明書を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子解析等において有用な核酸(DNA又はRNA)の検出方法に関する。特には、短鎖の核酸であっても検出することのできる、標的核酸の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸(DNA、RNA等)の検出は微生物の存在の評価、感染症の診断、遺伝子多型の評価、疾患のプロファイリング等、医学や生物学をはじめ食品の検査、環境評価、法医学等の幅広い分野、用途において重要である。さらに近年、生命活動において重要な役割を担う短鎖の核酸(miRNA等)が多数発見されており、このような短鎖の核酸を検出することのできる手法の必要性が高まっている。
【0003】
核酸の高感度かつ特異的な検出法としてPCR増幅法が一般的に行われている(米国特許第4683195号、米国特許第4683202号、米国特許第4800159号等)
。PCR法においては、例えば、二本鎖鋳型DNAの一本鎖への解離(変性)、一本鎖鋳型DNAへのプライマーのアニーリング、プライマーからの相補鎖合成(伸長)の3工程からなる反応により核酸の増幅が行われる。通常のPCR法においてはサーマルサイクラーを使用して、変性工程、アニーリング工程、伸長工程を異なる温度で行っている。このため、このような反応を行う高価な温度サイクル制御装置が必要であり、フィールド検査やポイントオブケア(ベッドサイド)診断、安価な検査ができないという問題がある。また、3種類の異なる温度で反応を行なうので、温度制御が煩雑であり、またサイクル数に比例して時間のロスが増大するという問題もあった。更に、指数関数的な増幅には複数のプライマーを必要とし、プライマー結合配列を確保できない短鎖の核酸を直接検出することは不可能である。そこで、前処理として標的核酸にプライマー配列を付加する他の反応を組み合わせて増幅を行うことも提案されているが、付加反応の工程が加わることで検出操作がより煩雑かつ長時間になり、使用する試薬も増えるだけでなく、この工程により、サンプルを一部もしくはすべて失うことによる感度の低下や定量性が失われる危険性があり、また、異なる配列に対する付加工程の効率のバラつきによって、複数サンプル間の量比の情報も失われる危険性がある。
【0004】
そこで、PCR法に代わる核酸増幅方法とし、等温状態で実施することができる方法が開発されている。このような方法としては、例えば、G.T.Walker,M.C.Little,J.G.Nadeau and D. D.Shank“Isothermal in vitro amplification of DNA by a restriction enzyme/DNA polymerase system”Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,392−396(1992)や特公平7−114718号公報に記載の鎖置換型増幅法(SDA法;strand displacement amplification)法、国際公開第00/28082号パンフレットに記載のLAMP法(Loop−Mediated Isothermal Amplification)、国際公開第02/16639号パンフレットに記載のICAN法(Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids)等がある。
【0005】
G.T.Walkerらに記載されたSDA法においては、検出標的核酸が含まれない系でも検出反応が起こる場合があり、感度、特異性の評価には疑問がある。また、特公平7−114718号公報に記載のSDA法においては、最終的にDNAが増幅される系において、DNAポリメラーゼと制限エンドヌクレアーゼが介する二本鎖の置換により、試料中の目的核酸(およびその相補鎖)の増幅が可能となる。この方法では、4種類のプライマーが必要とされ、その内の2種類は、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含むように設計する必要がある。この方法を直接短鎖核酸の増幅のために用いることはできなかった。
【0006】
また、前記LAMP法においても、4種類のプライマーが必要とされ、それらが6個所の領域を認識することにより、目的遺伝子の増幅が可能となる。すなわち、この方法では、まず、第一のプライマーが鋳型鎖にアニーリングして伸長反応が起こり、次に、第一のプライマーよりも上流側に設計された第二のプライマーによる鎖置換反応により第一のプライマーによる伸長鎖が鋳型鎖から分離する。この時に、剥ぎ取られた第一のプライマー伸長産物の構成に起因して伸長鎖の5’末端部分でステムループ構造が形成されるものであって、この方法を直接短鎖核酸の増幅のために用いることはできなかった。
【0007】
また、Y.Weizmann,M.K.Beissenhirtz,Z.Cheglakov,R.Nowarski and I.Willner“A virus spotlighted by an autonomous DNA machine”Angew.Chem.Int.Ed.,45,7384−7388(2006)には、ニッキング能と鎖置換能を持つDNAポリメラーゼによる伸長反応において、検出標的核酸と結合する配列をプライマーに用いて酵素活性を持つDNA(デオキシリボザイム)を合成し,さらにデオキシリボザイムによるペルオキシダーゼ反応で生成される分子をシグナルとして検出を行っている。この方法においても、短鎖核酸の検出は行っていなかった。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4683195号
【特許文献2】米国特許第4683202号
【特許文献3】米国特許第4800159号等
【特許文献4】特公平7−114718号公報
【特許文献5】国際公開第00/28082号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/16639号パンフレット
【非特許文献1】G.T.Walker,M.C.Little,J.G.Nadeau and D. D.Shank“Isothermal in vitro amplification of DNA by a restriction enzyme/DNA polymerase system”Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,392−396(1992)
【非特許文献2】Y.Weizmann,M.K.Beissenhirtz,Z.Cheglakov,R.Nowarski and I.Willner“A virus spotlighted by an autonomous DNA machine”Angew.Chem.Int.Ed.,45,7384−7388(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、核酸(DNA、RNA等)を等温条件下で高感度で検出する方法、特に短鎖核酸をも直接検出することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討し、特定のオリゴヌクレオチドを用い、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行うことによって、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、試料中の標的核酸を検出する方法であって、(a)5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチドを用意する工程、(b)前記試料に含まれる標的核酸をプライマーとして、前記ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位を認識するエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行う工程、及び(c)前記核酸増幅反応によって得られる、第1の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを検出する工程を含んでなる方法を提供するものである。
また、本発明は、試料中の標的核酸を検出する方法であって、(a)5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチド、及び5’から3’の方向に、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有する第2の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び前記第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチドを用意する工程、(b)前記試料に含まれる標的核酸をプライマーとして、前記ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位を認識するエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行う工程、及び(c)前記核酸増幅反応によって得られる、第2の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを検出する工程を含んでなる方法を提供する。
また、本発明の方法は、(d)濃度が既知の前記標的核酸、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記エンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行い、該核酸増幅反応によって得られる、第1の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを測定する工程;(e)前記工程(d)を、異なる濃度の標的核酸について同様に行い、測定結果から検量線を作成する工程;(f)前記検量線に基づいて、検出されるべき標的核酸の濃度を決定する工程を含んでもよい。
また、前記工程(d)において、更に前記第2のオリゴヌクレオチドの存在下に核酸増幅反応を行ってもよい。
【0012】
本発明の標的核酸を検出する方法は、核酸増幅反応が等温で実施されることが好ましい。
前記エンドヌクレアーゼとしてはニッキングエンドヌクレアーゼを用いることができる。
本発明において用いられるニッキングエンドヌクレアーゼとしては、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.BtsI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.BspQI、Nt.BstNBI、Nt.CviPII及びNt.BsmAIが挙げられる。
本発明の標的核酸を検出する方法における核酸増幅反応においては、好ましくは鎖置換能を有するDNAポリメラーゼが使用される。
本発明の標的核酸を検出する方法においては、核酸増幅反応において用いられるDNAポリメラーゼとしては、例えば、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させた変異体を含む)、バチルス・ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、又はバチルス・カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼからなる群から選択されるDNAポリメラーゼが使用される。
好ましくは、前記第1のオリゴヌクレオチドの3’末端は修飾されている。
また、好ましくは前記第2のオリゴヌクレオチドの3’末端は修飾されている。
また、本発明は、試料中の標的核酸を検出するためのキットであって、5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。
また、本発明は、試料中の標的核酸を検出するためのキットであって、5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチドと、5’から3’の方向に、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有する第2の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び前記第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチドとを含むキットを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の標的核酸を検出する方法によれば、核酸(DNA、RNA等)を等温条件下でも検出することができ、特に短鎖核酸をも直接検出することが可能である。また、本発明の方法によれば、標的核酸を容易に定量することが可能である。また、本発明の方法は、種々の不純物が含まれる試料中の標的核酸を検出、定量することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の標的核酸の検出方法の作用機序を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の標的核酸の検出方法の作用機序を模式的に示す図である。
【
図3】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図4】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図5】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図6】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図7】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図8】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図9】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図10】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図11】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図12】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図13】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図14】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図15】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図16】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図17】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図18】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図19】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図20】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図21】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図22】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図23】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図24】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図25】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図26】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図27】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図28】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図29】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図30】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図31】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図32】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図33】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図34】2種の標的核酸を含む溶液中で、それぞれの標的核酸に対する検出を同時に行うことが可能であることを確認した結果を示すグラフである。
【
図35】標的核酸の濃度によって、蛍光強度がある値に達するまでの時間が変化することを確認した結果を示すグラフである。
【
図37】標的核酸以外の核酸を含む場合にも検出が可能であることを確認した結果を示すグラフである。
【
図38】配列変換DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【
図39】配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いて実施した核酸の検出の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の試料中の標的核酸を検出する方法について説明する。
まず、本発明の試料中の標的核酸を検出する方法の第一の実施態様について説明する。
本発明の試料中の標的核酸を検出する方法は、(a)5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチドを用意する工程、(b)前記試料に含まれる標的核酸をプライマーとして、前記ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位を認識するエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行う工程、及び(c)前記核酸増幅反応によって得られる、第1の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを検出する工程を含んでなる。
【0016】
まず、工程(a)について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の標的核酸を検出する方法の第1の実施態様の作用機序を示す図である。まず、5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチド(以下、本明細書において配列変換DNAともいう)について説明する。配列変換DNAは、5’から3’の方向に、第1の任意の配列(A)、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)及び標的核酸に相補的な配列(C)を含む。
【0017】
本発明の標的核酸を検出する方法においては、配列変換DNAを用意する。配列変換DNAにおける第1の任意の配列は、5’末端側に第1の任意の配列を有する。第1の任意の配列は、後述するように、DNAポリメラーゼによる伸長反応の鋳型となる部位であり、どのような配列のものであってもよいが、その塩基数も、特に制限はないが、扱いやすさの点から5〜50塩基程度、又は5〜30塩基程度、又は10〜20塩基長程度でよい。
【0018】
ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)について説明する。本明細書において「ニッキング反応」とは、二本鎖核酸のいずれか一方の鎖のみを切断する反応を意味する。従って、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)は、特定の配列を有する二本鎖DNAの一方の鎖のみを切断するエンドヌクレアーゼによって認識される部位であり、後述するように、DNAポリメラーゼの作用によりDNAの伸長が開始された後、伸長されたオリゴヌクレオチドの部分が切断されるようになっている。本発明において用いられるエンドヌクレアーゼは、ニッキング反応に用い得るものであれば特に制限なく用いることができる。このような反応に用いられる多くのエンドヌクレアーゼが認識配列とともに知られており、当業者であれば、これらのエンドヌクレアーゼの中から適宜選択して使用することができる。このようなエンドヌクレアーゼとしては、例えば、ニッキングエンドヌクレアーゼ、制限酵素等が挙げられる。
制限酵素は、通常は二本鎖の両方の鎖を切断する酵素であるが、例えば、制限酵素によって切断されない化学修飾を二本鎖核酸の一方の鎖に施すことにより、他方の鎖のみを切断するニッキング反応に用いられることができる(例えば、特許文献4参照)。具体例として、例えば、一方の鎖のホスホジエステル結合の酸素原子を硫黄原子に置換することにより、ニッキング反応に用いることが可能となる。
ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼとしてはニッキングエンドヌクレアーゼが用いられる。ニッキングエンドヌクレアーゼを用いることにより、二本鎖DNAの一方の鎖のホスホジエステル結合が開裂して、開裂部位の5’側にリン酸基が生じ、3’側にはヒドロキシル基が生じる。ニッキングエンドヌクレアーゼとしては、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.BtsI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.BspQI、Nt.BstNBI、Nt.CviPII、Nt.BsmAIが挙げられる。
【0019】
標的核酸に相補的な配列(C)は、検出しようとする標的核酸の配列、塩基数等を考慮して設計すればよいが、本発明の標的核酸を検出する方法は短鎖の核酸も検出することが可能である。
例えば、標的核酸としてヒトのマイクロRNA配列に相当する配列、TGGCTCAGTTCAGCAGGAACAG(配列番号:1)(hsa−miD−24)を検出しようとする場合、配列変換DNAのCの部分の配列としては、CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA(配列番号:2)、CTGTTCCTGCTGAAC(配列番号:3)等が用いられる。また、標的核酸としてヒトのマイクロRNA配列に相当する配列、AGCAGCATTGTACAGGGCTATCA(配列番号:4)(hsa−miD−107)を検出しようとする場合、配列変換DNAのCの部分の配列としては、TGATAGCCCTGTACAATGC(配列番号:5)、TGATAGCCCTGTACAATGCTGCT(配列番号:6)等が用いられる。また、標的核酸としてヒトのマイクロRNA配列に相当する配列、AGCTACATTGTCTGCTGGGTTTC(配列番号:7)(hsa−miD−221)を検出しようとする場合、配列変換DNAのCの部分の配列としては、GAAACCCAGCAG(配列番号:8)、GAAACCCAGC(配列番号:9)、GAAACCCAGCAGACAATGTAGCT(配列番号:10)等が用いられる。
また、本発明の試料中の標的核酸を検出する方法は、例えば、癌や感染症の診断に用いることができる。例えば、癌や感染症の原因となる細菌やウイルスの保持している特定の核酸や、癌に特異的な塩基配列を含む核酸の検出(定量)を行なうことにより、癌や感染症の診断が可能となる。感染症の診断を行う場合、感染症の原因となる細菌やウイルスが有する、特異的な核酸配列を検出することにより、診断が可能である。また、癌細胞と正常細胞とで転写量が異なるRNAを検出(定量)して行なう癌の診断も可能である。すなわち、細菌やウイルスの核酸を、その細菌やウイルスに特異的な塩基配列が3’末端になるように制限酵素などにより切断し、切断された核酸を標的核酸として用い、この標的核酸に相補的な配列を含むように、配列変換DNAを設計することにより実施が可能である。また、細菌やウイルスの核酸の特異的配列に相補的な配列を有する、アダプターに用いるための適切なヘアピン構造をとるDNAを設計し、その際に、アダプター用ヘアピンDNAの配列の3’ 末端部分に相補的な配列を含むように、配列変換DNAを設計することにより、特定の配列を含むか否かを検出することが可能になる。
なお、本明細書において、塩基配列を記載する場合、核酸の5’側端から3’側端の方向に記載した。
【0020】
なお、配列変換DNAの3’末端側には、3’末端側より伸長反応が起こらないように、3’末端を修飾しておくことが好ましい。このような修飾の例としては、例えば、TAMRA、DABCYL、FAM等が挙げられる。その他、ビオチン化、蛍光色素、リン酸化、チオール化、アミノ化等による修飾であってもよい。
【0021】
配列変換DNAにおいては、第1の任意の配列(A)とニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)との間、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)と標的核酸に相補的な配列(C)との間、標的核酸に相補的な配列(C)の3’末端側に、反応に影響を与えない介在配列を含んでいてもよい。また、第1の任意の配列(A)とニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)の配列の塩基が一部重複していてもよく、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)の配列と標的核酸に相補的な配列(C)の塩基が一部重複していてもよい。配列変換DNAは、公知の方法、例えば、ホスホアミダイト法、リン酸トリエステル法、H−ホスホネート法、チオホスホネート法等を用いて合成することができる。
【0022】
本発明の標的核酸を検出する方法の工程(b)は、試料に含まれる標的核酸をプライマーとして、前記ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位を認識するエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行う工程である。
図1に示すように、検出しようとする標的核酸(D)が試料中に存在する場合、その標的核酸(D)は、それと相補的な配列(C)にハイブリダイズし、この標的核酸がプライマーとして作用し、DNAポリメラーゼが作用し、核酸増幅反応が行われる。核酸増幅反応の反応条件は、利用する核酸増幅反応に従って、当業者であれば適宜決定することができる。
【0023】
本発明の標的核酸を検出する方法において用いられる試料としては、本発明において検出しようとする標的核酸が含まれている可能性のあるあらゆる試料を用いることができ、これらの試料から調製、あるいは単離したものでもよい。このような核酸を含む試料には特に限定はないが、例えば、全血、血清、バフィーコート、尿、糞便、脳脊髄液、精液、唾液、組織(例えば、癌組織、リンパ節等)、細胞培養物(例えば、哺乳動物細胞培養物及び細菌培養物等)のような生体由来試料、ウイロイド、ウイルス、細菌、カビ、酵母、植物及び動物のような核酸含有試料、ウイルス又は細菌のような微生物が混入もしくは感染している可能性のある試料(食品、生物学的製剤等)、又は土壌、排水のような生物を含有する可能性のある試料等が挙げられる。また、このような試料等を公知の方法で処理することによって得られる核酸含有調製物を試料として用いてもよい。このような調製物としては、例えば細胞破砕物やそれを分画して得られる試料、該試料中の核酸、又は特定の核酸分子群、例えば、mRNAを富化した試料等が挙げられる。また、本発明の標的核酸を検出する方法において用いられる試料としては、上述したような生物又は天然由来のものに限定されず、合成オリゴヌクレオチドを含む試料も用いられる。
また、本発明の標的核酸を検出する方法において、検出対象となる核酸は、DNA又はRNAのどちらでもよい。DNAには、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAのいずれもが含まれ、RNAには、全RNA、mRNA、rRNA、siRNA、hnRNA、piRNA、aRNA、miRNA及び合成RNAのいずれもが含まれるが、これらに限定されるものではなく、DNA又はRNAに分類される全てのオリゴヌクレオチドが検出対象となる。また、DNA及びRNAで構成されるキメラオリゴヌクレオチドや非天然塩基を含むオリゴヌクレオチド、DNA及びRNA以外の核酸分子も本発明における検出対象である。本発明においては、短鎖の核酸であっても高感度で検出することが可能である。
【0024】
本発明の標的核酸を検出する方法は、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行なうものであり、ニッキングエンドヌクレアーゼについては前述した通りである。
【0025】
本発明においては、核酸増幅反応は等温下で行なうことが好ましい。ここで、「等温」とは、酵素及びプライマー(本発明においては、試料中の標的核酸がプライマーとして機能する)が実質的に機能しうるような、ほぼ一定の温度条件下に保つことをいう。更に、「ほぼ一定の温度条件」とは、設定された温度を正確に保持することのみならず、酵素及びプライマーの実質的な機能を損なわない程度の温度変化であれば許容されることを意味する。一定の温度条件下における核酸増幅反応は、使用する酵素の活性を維持できる温度(反応が進行するにつれ、酵素活性が減衰する場合であっても、本発明の方法を実施できる温度であればよいことを意味する)に保つことにより実施することができる。また、この核酸増幅反応において、プライマーとしての標的核酸が第1のオリゴヌクレオチドにアニーリングするように、ストリンジェンシーのレベルを設定することが好ましい。従って、反応温度は、好ましくは、約20℃〜約75℃であり、更に好ましくは、約35℃〜約65℃とする。
【0026】
核酸増幅反応に用いられるDNAポリメラーゼは、鎖置換活性(鎖置換能)を有するものであることが好ましく、常温性、中温性又は耐熱性のいずれのものも好適に用いることができる。また、このDNAポリメラーゼは、実質的に5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないものであることが好ましい。このようなDNAポリメラーゼとしては、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させた変異体を含む)、バチルス・ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、及びバチルス・カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0027】
核酸増幅反応に用いられるその他の試薬としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩、dNTPミックス等の基質、トリス塩酸バッファー、トライシンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー等の緩衝液を使用することができる。さらに、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)やベタイン(N,N,N−trimethylglycine)等の添加物、国際公開第99/54455号パンフレットに記載の酸性物質、陽イオン錯体等を使用してもよい。
【0028】
次に、工程(c)について説明する。工程(c)は、工程(b)における核酸増幅反応によって得られる、第1の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを検出する工程である。本発明の標的核酸を検出する方法について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、検出しようとする標的核酸(D)が試料中に存在する場合、その標的核酸(D)は、それと相補的な配列変換DNAの(C)の部位にハイブリダイズし、この標的核酸(D)がプライマーとして作用し、DNAポリメラーゼが作用し、核酸増幅反応が行われ、DNAポリメラーゼによる伸長反応の産物としての配列(E)が生成する。次いで、配列(E)が生成したことで、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)が二本鎖になり、ニッキングエンドヌクレアーゼがこれを認識して(E)を切断してオリゴヌクレオチド(F)を生成し、鎖置換能を有するDNAポリメラーゼによって生成したオリゴヌクレオチド(F)が配列変換DNAから遊離する。DNAポリメラーゼは、この反応を繰り返し、オリゴヌクレオチド(F)は線形的(比例的)に増幅される。本明細書において、このオリゴヌクレオチド(F)(以下に説明する、第二の実施態様におけるオリゴヌクレオチドも同様に)をシグナルDNAともいう。
本発明の標的核酸を検出する方法においては、このようにして生成されたシグナルDNAを検出する。すなわち、
図1に示す標的核酸(D)が存在しない場合には、
図1及び
図2に示す核酸増幅反応が進行しないため、シグナルDNAは生成されないが、標的核酸(D)が存在すると、シグナルDNAが生成され、このシグナルDNAを検出することにより、標的核酸(D)の存在することがわかる。本発明の標的核酸を検出する方法においては、標的核酸(D)が微量に存在すれば、上述のシグナルDNAが増幅されるので、感度の高い検出法である。
【0029】
上記反応幅反応によって得られた増幅産物であるシグナルDNAの存在は、当該技術分野において公知の方法により検出できる。例えば、ゲル電気泳動によれば、エチジウムブロマイドでゲルを染色することによって増幅産物を検出することができ、増幅産物であるオリゴヌクレオチドの配列及び長さについても、検出しようとするオリゴヌクレオチドと相補的な配列のオリゴヌクレオチドとをハイブリダイゼーションした上でゲル電気泳動する方法によって確認できる。また、増幅産物を検出するための検出系としては、蛍光偏光、イムノアッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移、酵素標識(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミンなど)、ケミルミネッセンス、又はバイオルミネッセンスなどを用いることができる。更に、Taqmanプローブや分子ビーコンを利用して検出することもできる。ビオチンなどで標識した標識ヌクレオチドを使用することによって増幅物を検出することもできる。この場合、増幅産物中のビオチンは、蛍光標識アビジン又は酵素標識アビジンなどを用いて検出することができる。また、当業者に公知の酸化還元型インターカレーターを使用することで、電極により増幅産物を検出することもできる。また、SPR(表面プラズモン共鳴)を用いて増幅産物を検出してもよい。
【0030】
本発明の、試料中の標的核酸を検出する方法は、試料中の標的核酸を定量することに用いることもできる。すなわち本発明は、前記方法において、更に(d)濃度が既知の前記標的核酸、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記エンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行い、該核酸増幅反応によって得られる、第1の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを測定する工程;(e)前記工程(d)を、異なる濃度の標的核酸について同様に行い、測定結果から検量線を作成する工程;(f)前記検量線に基づいて、検出されるべき標的核酸の濃度を決定する工程を含む、方法を提供する。
すなわち、本発明は、濃度が既知の標的核酸を含む系において、前記に説明した方法を実施し、この方法を異なる濃度の標的核酸を含む系において実施し、測定結果から検量線を作成する(工程(e))ことを含む方法が提供される。次いで、工程((e))において求められた検量線に基づいて、検出しようとする標的核酸の濃度を決定する(工程(f))。
検量線は、例えば、蛍光を測定することにより、標的核酸を検出する場合、蛍光強度から検量線を作成することができる。
【0031】
次に、本発明の試料中の標的核酸を検出する方法の第二の実施態様について説明する。
本発明の試料中の標的核酸を検出する方法の第二の実施態様は、試料中の標的核酸を検出する方法であって、(a)5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチド、及び5’から3’の方向に、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有する第2の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び前記第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチドを用意する工程、(b)前記試料に含まれる標的核酸をプライマーとして、前記ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位を認識するエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行う工程、及び(c)前記核酸増幅反応によって得られる、第2の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを検出する工程を含んでなる。
【0032】
まず、工程(a)について図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2は、本発明の標的核酸を検出する方法の作用機序を示す図である。
図1については前述した通りである。本発明の標的核酸を検出する方法において用いられる第2のオリゴヌクレオチド(以下、本明細書においてシグナル増幅DNAともいう)は、5’から3’の方向に、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有する第2の任意の配列(A’)、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)及び前記第1の任意の配列と実質的に相同的な配列(C’)を含む(
図2参照)。
【0033】
本発明の標的核酸を検出する方法においては、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用意する。配列変換DNAにおける第1の任意の配列は、5’末端側に第1の任意の配列を有する。第1の任意の配列は、後述するように、DNAポリメラーゼによる伸長反応の鋳型となる部位であり、どのような配列のもであってもよいが、その塩基数も、特に制限はないが、扱いやすさの点から5〜50塩基程度、又は5〜30塩基程度、又は10〜20塩基長程度でよい。
【0034】
ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)、制限酵素については前述した通りである。ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼとしてはニッキングエンドヌクレアーゼが用いられ、前述したのと同様である。
【0035】
次に、第2のオリゴヌクレオチド(シグナル増幅DNA)について説明する。シグナル増幅DNAは、5’末端側に、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有する第2の任意の配列を有する。この第2の任意の配列は、後述するように、DNAポリメラーゼによる伸長反応の鋳型となる部位であり、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有するものである。また、本発明の標的核酸を検出する方法においては、この第2の任意の配列を鋳型として伸長された、この部分に相補的な鎖を検出するものである。その点については後述する。第2の任意の配列と第1の任意の配列とは実質的に相同的な配列を有しており、このため、例えば、後述するような分子ビーコンを用いて増幅産物を検出する場合には、第1の任意の配列に対して相補的な配列のオリゴヌクレオチド、第2の任意の配列に対して相補的な配列の両者を検出することが可能となる。
なお、実質的に相同的とは、完全に同一の配列を有することであってもよいが、例えば、後述するような分子ビーコンを用いて増幅産物を検出する場合に、増幅反応によって生成する第1の任意の配列に相補的な配列と、第二の任意の配列に相補的な配列とが同一の分子ビーコンによって検出できる程度に、1〜5個、又は1〜4個、又は1〜3個、又は1〜2個、又は1個の塩基が欠失、置換又は付加されていてもよく、また、いずれかに分子ビーコンとの反応を阻害しない程度の配列が付加されていてもよい。
【0036】
シグナル増幅DNAにおける、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)は、上述した、配列変換DNAにおいて説明したものと同様である。配列変換DNAに含まれるニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位と、シグナル増幅DNAに含まれるエンドヌクレアーゼ認識部位とは同一であってもよく、異なるものであってもよいが、本発明の標的核酸を検出する方法は、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位を認識するエンドヌクレアーゼの存在下に実施するので、配列変換DNAとシグナル増幅DNAとで、同一のエンドヌクレアーゼ認識部位を有している場合には、1種類のエンドヌクレアーゼのみ用いて反応を行うことができるので、同一であることが好ましい。
【0037】
前記第1の任意の配列と実質的に相同的な配列(C’)は、前記第1の任意の配列(A)からDNAポリメラーゼの作用により生成したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする配列を意味する。従って、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列(C’)は、第1の任意配列(A)と全て同一であることが好ましいが、例えば、塩基長は必ずしも同じである必要はなく、後述する反応において、プライマーとして機能すれば特に制限はなく、1〜5個、又は1〜4個、又は1〜3個、又は1〜2個、又は1個の塩基が欠失、置換又は付加されていてもよい。
【0038】
なお、シグナル増幅DNAの3’末端側には、3’末端側より伸長反応が起こらないように、3’末端を修飾しておくことが好ましい。このような修飾の例としては、配列変換DNAについて説明したのと同様である。
【0039】
シグナル増幅DNAにおいては、第2の任意の配列(A’)とニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)との間、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)と第1の任意の配列と実質的に相同的な配列(C’)との間、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列(C’)の3’末端側に、反応に影響を与えない介在配列を含んでいてもよい。また、第2の任意の配列(A’)とニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)の配列の塩基が一部重複していてもよく、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)の配列と第1の任意の配列と実質的に相同的な配列(C')の塩基が一部重複していてもよい。シグナル増幅DNAは、公知の方法、例えば、ホスホアミダイト法、リン酸トリエステル法、H−ホスホネート法、チオホスホネート法等を用いて合成することができる。
【0040】
本発明の標的核酸を検出する方法の工程(b)は、試料に含まれる標的核酸をプライマーとして、前記ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位を認識するエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行う工程であって、前述した、第一の実施態様と同様である。
【0041】
本発明の標的核酸を検出する方法において用いられる試料、検出対象となる核酸は、DNA又はRNAのどちらでもよい。DNAには、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAのいずれもが含まれ、RNAには、全RNA、mRNA、rRNA、siRNA、hnRNA、piRNA、aRNA、miRNA及び合成RNAのいずれもが含まれるが、これらに限定されるものではなく、DNA又はRNAに分類される全てのオリゴヌクレオチドが検出対象となる。また、DNA及びRNAで構成されるキメラオリゴヌクレオチドや非天然塩基を含むオリゴヌクレオチド、DNA及びRNA以外の核酸分子も本発明における検出対象である。本発明においては、短鎖の核酸であっても高感度で検出することが可能である。
【0042】
本発明の標的核酸を検出する方法は、前記ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行なうものであり、ニッキングエンドヌクレアーゼについては前述した通りである。
【0043】
本発明においては、核酸増幅反応は等温下で行なうことが好ましい。ここで、「等温」とは、酵素及びプライマー(本発明においては、試料中の標的核酸がプライマーとして機能する)が実質的に機能しうるような、ほぼ一定の温度条件下に保つことをいう。更に、「ほぼ一定の温度条件」とは、設定された温度を正確に保持することのみならず、酵素及びプライマーの実質的な機能を損なわない程度の温度変化であれば許容されることを意味する。一定の温度条件下における核酸増幅反応は、使用する酵素の活性を維持できる温度(反応が進行するにつれ、酵素活性が減衰する場合であっても、本発明の方法を実施できる温度であればよいことを意味する)に保つことにより実施することができる。また、この核酸増幅反応において、プライマーとしての標的核酸が第1のオリゴヌクレオチドにアニーリングするように、ストリンジェンシーのレベルを設定することが好ましい。従って、反応温度は、好ましくは、約20℃〜約75℃であり、更に好ましくは、約35℃〜約65℃とする。
【0044】
核酸増幅反応に用いられるDNAポリメラーゼは、鎖置換活性(鎖置換能)を有するものであることが好ましく、常温性、中温性又は耐熱性のいずれのものも好適に用いることができる。また、このDNAポリメラーゼは、実質的に5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないものであることが好ましい。このようなDNAポリメラーゼとしては、大腸菌由来のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させた変異体を含む)、バチルス・ステアロサーモフィラス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BstDNAポリメラーゼ、及びバチルス・カルドテナックス由来の5’→3’エキソヌクレアーゼ欠損BcaDNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0045】
核酸増幅反応に用いられるその他の試薬としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩、dNTPミックス等の基質、トリス塩酸バッファー、トライシンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー等の緩衝液を使用することができる。さらに、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)やベタイン(N,N,N−trimethylglycine)等の添加物、国際公開第99/54455号パンフレットに記載の酸性物質、陽イオン錯体等を使用してもよい。
【0046】
次に、本発明の、試料中の標的核酸を検出する方法における工程(c)について説明する。工程(c)は、工程(b)における核酸増幅反応によって得られる、第1の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを検出する工程である。
本発明の標的核酸を検出する方法について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、検出しようとする標的核酸(D)が試料中に存在する場合、その標的核酸(D)は、それと相補的な配列変換DNAの(C)の部位にハイブリダイズし、この標的核酸(D)がプライマーとして作用し、DNAポリメラーゼが作用し、核酸増幅反応が行われ、DNAポリメラーゼによる伸長反応の産物としての配列(E)が生成する。次いで、配列(E)が生成したことで、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)が二本鎖になり、ニッキングエンドヌクレアーゼがこれを認識して(E)を切断してオリゴヌクレオチド(F)を生成し、鎖置換能を有するDNAポリメラーゼによって生成したオリゴヌクレオチド(F)が配列変換DNAから遊離する。DNAポリメラーゼは、この反応を繰り返し、オリゴヌクレオチド(F)は線形的(比例的)に増幅される。
次いで、
図2に示すように、上記のようにして線形的に増幅したオリゴヌクレオチド(F)は、第1の任意の配列(A)と相補的な配列を有するので、シグナル増幅DNAの(C’)の部位、すなわち配列変換DNAの第1の任意の配列(A)と実質的に相同的な(C’)の部位とハイブリダイズする。
図2に示すように、オリゴヌクレオチド(F)がシグナル増幅DNAの(C’)の部位とハイブリダイズすることにより、プライマーとして機能し、DNAポリメラーゼが作用し、核酸増幅反応が行われ、DNAポリメラーゼによる伸長反応の産物としての配列(G)が生成する。次いで、配列(G)が生成したことで、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位(B)が二本鎖になり、ニッキングエンドヌクレアーゼがこれを認識して(G)を切断してオリゴヌクレオチド(H)を生成し、鎖置換能を有するDNAポリメラーゼによって生成したオリゴヌクレオチド(H)がシグナル増幅DNAから遊離する。なお、オリゴヌクレオチド(H)はオリゴヌクレオチド(F)と相同的な配列を有しており、以下、ともにシグナルDNAともいう。
本発明の標的核酸を検出する方法においては、このようにして生成されたシグナルDNAを検出する。すなわち、
図1に示す標的核酸(D)が存在しない場合には、
図1及び
図2に示す核酸増幅反応が進行しないため、シグナルDNAは生成されないが、標的核酸(D)が存在すると、シグナルDNAが生成され、このシグナルDNAを検出することにより、標的核酸(D)の存在することがわかる。本発明の標的核酸を検出する方法においては、標的核酸(D)が微量に存在すれば、上述のシグナルDNAが指数的に増幅されるので、非常に感度の高い検出法である。
【0047】
上記反応によって得られた増幅産物であるオリゴヌクレオチド(H)の存在は、当該技術分野において公知の方法により検出できる。例えば、ゲル電気泳動によれば、エチジウムブロマイドでゲルを染色することによって増幅産物を検出することができ、増幅産物であるオリゴヌクレオチドの配列及び長さについても、検出しようとするオリゴヌクレオチドと相補的な配列のオリゴヌクレオチドとをハイブリダイゼーションした上でゲル電気泳動する方法によって確認できる。また、増幅産物を検出するための検出系としては、蛍光偏光、イムノアッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移、酵素標識(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミンなど)、ケミルミネッセンス、又はバイオルミネッセンスなどを用いることができる。更に、Taqmanプローブや分子ビーコンを利用して検出することもできる。ビオチンなどで標識した標識ヌクレオチドを使用することによって増幅物を検出することもできる。この場合、増幅産物中のビオチンは、蛍光標識アビジン又は酵素標識アビジンなどを用いて検出することができる。また、当業者に公知の酸化還元型インターカレーターを使用することで、電極により増幅産物を検出することもできる。また、SPR(表面プラズモン共鳴)を用いて増幅産物を検出してもよい。
本発明の第二の実施態様は、標的核酸を非常に感度良く検出することができる。第一の実施態様においても標的核酸を感度よく検出可能であるが、第二の実施態様は、更に感度が向上したものとなる。
【0048】
第二の実施態様は、試料中の標的核酸を定量することに用いることもできる。すなわち本発明は、前記方法において、更に(d)濃度が既知の前記標的核酸、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記エンドヌクレアーゼの存在下に核酸増幅反応を行い、該核酸増幅反応によって得られる、第1の任意の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを測定する工程;(e)前記工程(d)を、異なる濃度の標的核酸について同様に行い、測定結果から検量線を作成する工程;(f)前記検量線に基づいて、検出されるべき標的核酸の濃度を決定する工程を含む、方法を提供する。
【0049】
次に、本発明の試料中の標的核酸を検出するためのキットについて説明する。
本発明の試料中の標的核酸を検出するためのキットは、5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチドを含む。また、本発明の試料中の標的核酸を検出するためのキットは、5’から3’の方向に、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有する第2の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び前記第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。すなわち、本発明は、試料中の標的核酸を検出するためのキットであって、5’から3’の方向に、第1の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び標的核酸に相補的な配列を含む第1のオリゴヌクレオチドと、5’から3’の方向に、第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を有する第2の任意の配列、ニッキング反応に用いられるエンドヌクレアーゼの認識部位及び前記第1の任意の配列と実質的に相同的な配列を含む第2のオリゴヌクレオチドとを含むキットをも提供する。
【0050】
すなわち、本発明の標的核酸を検出するためのキットは、上述した本発明の標的核酸を検出する方法において用いられる第1のオリゴヌクレオチド(配列変換DNA)を含むか、又は及び第2のオリゴヌクレオチド(シグナル増幅DNA)を含んでなる。第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドの詳細については上述した通りである。
本発明の試料中の標的核酸を検出するためのキットは、更にDNAポリメラーゼ及びニッキングエンドヌクレアーゼを含んでいてもよい。DNAポリメラーゼ及びニッキングエンドヌクレアーゼについては上述した通りである。本発明のキットは、更に試料溶液を調製するために用いられるバッファー等の他の試薬等を含んでいてもよい。
本発明の試料中の標的核酸を検出するためのキットは、本発明の標的核酸を検出する方法を実施するために用いられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
以下の実施例において、特に記載しない限り、核酸増幅反応は、増幅産物を検出するためのFAM−DABCYL修飾分子ビーコンを100nM濃度で含む1×NEバッファー2(10 mM Tris−HCl,10 mM MgCl
2,50 mM NaCl,1 mM DTT(pH7.9、25oC)の溶液25μL中で、リアルタイムPCRマシン Mx3005P(Stratagene社)を用いて、37℃で行った。また、特に記載しない限り、Bst DNAポリメラーゼ, Large Fragment 0.08単位/μL、及びNt.AlwI 0.1単位/μLを用いて反応を行った。また、特に記載しない限り、Mx3005Pのゲイン設定は×1とした。また、以下の実施例において用いたオリゴヌクレオチド及び分子ビーコンは常法にて作成した。以下の実施例において、図中、blankと記載のあるものは、バッファーのみを用いた場合の結果を示す。また、測定結果を表すグラフにおいては、横軸は、測定のサイクル数を表し、縦軸は蛍光強度を表す。
【0052】
実施例1
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
配列変換DNAを用いて、標的核酸を検出する実験を行った。標的核酸としては、ヒトのmicro RNAであるhsa−miR−24、hsa−miR−107、hsa−miR−221に相当する配列をそれぞれ有する、以下の3種のオリゴヌクレオチド(DNA)を用いた。
TGGCTCAGTTCAGCAGGAACAG(配列番号:1)
AGCAGCATTGTACAGGGCTATCA(配列番号:4)
AGCTACATTGTCTGCTGGGTTTC(配列番号:7)
配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAは以下の配列を有する。
TGATAGCCCTGTACAATGCTGCT
CAGAGATCCCTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA−(TAMRA)(配列番号:11、以下、C2(22)という)
配列番号:4の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAは以下の配列を有する。
TCAACATCAGTCTGATAAGCTA
CAGAGATCCTGATAGCCCTGTACAATGC−(TAMRA)(配列番号:12、以下、C3(19)という)
配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAは以下の配列を有する。
CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA
CAGAGATCCGAAACCCAGCAGACA−(TAMRA)(配列番号:13、以下、C1(15)という)
C2(22)、C3(19)及びC1(15)は、いずれもニッキングエンドヌクレアーゼNt.AlwIの認識部位である
GATCCを含んでおり、Nt.AlwIにより切断されるのは、CAGAGATCCの相補配列であるGGATCTCTGの3’末端側である。
【0053】
標的核酸 100nM(最終濃度、本明細書において以下同様)及び配列変換DNA 100nMを反応系に入れて増幅反応を行った。結果は30秒毎に測定し、255サイクルの測定を行った。なお、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。バッファーのみで行った実験の結果は図中において、「blank」と記載した。
なお、測定に用いた分子ビーコンは以下の通りである。
配列番号:1の核酸の検出に用いた分子ビーコン
(FAM)−CGCGATGATAGCCCTGTACAATGCTGCTTCGCG−(DABCYL)(配列番号:14)
配列番号:4の核酸の検出に用いた分子ビーコン
(FAM)−CGCGATCAACATCAGTCTGATAAGCTATCGCG−(DABCYL)(配列番号:15)
配列番号:7の核酸の検出に用いた分子ビーコン
(FAM)−CGCGA−CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCATCGCG−(DABCYL)(配列番号:16)
結果を
図3に示す。
図3において、縦軸は蛍光強度であり、横軸はサイクル数を表す。
図3から明らかなように、C2(22)、C3(19)及びC1(15)を用いた場合、いずれにおいても蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、DNAポリメラーゼの作用により、核酸の増幅が起こることがわかった。従って、この反応系により、配列番号:1、配列番号:4及び配列番号:7の標的核酸の検出を行うことができることがわかった。本実験例においては、標的核酸を100nMという高濃度で含む系であり、標的核酸が、このように高濃度で含まれていれば、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されるので、この反応系により、標的核酸が試料中に存在しているかどうかの検出が可能であることが示された。
【0054】
実施例2
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
次いで、標的核酸の濃度を30nMとし、配列変換DNAの濃度を30nMと代えた以外は実施例1と同様に実験を行った。配列変換DNAとしては、実施例1で用いた以外に以下のものを用いた。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。
配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAは以下の配列を有する。
TGATAGCCCTGTACAATGCTGCT
CAGAGATCCCTGTTCCTGCTGAAC−(TAMRA)(配列番号:17、以下、C2(15)という)
配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAは以下の配列を有する。
CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA
CAGAGATCCGAAACCCAGCAG−(TAMRA)(配列番号:18、以下、C1(12)という)
配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAは以下の配列を有する。
CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA
CAGAGATCCGAAACCCAGC−(TAMRA)(配列番号:19、以下、C1(10)という)
なお、本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。
結果を
図4に示す。
図4から明らかなように、C2(22)及びC2(15)を用いた場合にも蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。従って、C2(22)及びC2(15)を用いて配列番号:1の標的核酸が試料中に存在するかどうかの検出が可能であることがわかった。また、この反応系においても、C3(19)を用いて配列番号:4の標的核酸が試料中に存在するかどうかの検出が可能であり、C1(15)、C1(12)及びC1(10)を用いて配列番号:7の標的核酸が試料中に存在するかどうかの検出が可能であることがわかった。
【0055】
実施例3
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
次いで、標的核酸の濃度を10nMとし、配列変換DNAの濃度を10nMと代えた以外は実施例1と同様に実験を行った。配列変換DNAとしては、C1(15)、C2(22)及びC3(19)を用いた。なお、本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図5に示す。
図5から明らかなように、本実験においても蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されるので、この反応系により標的核酸が試料中に存在するかどうかの検出は可能であった。
【0056】
実施例4
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
次いで、標的核酸の濃度を30nMとし、配列変換DNAの濃度を30nMと代えた以外は実施例1と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。配列番号:7の標的核酸を検出するための配列変換DNAとしては、以下の配列を有するC1(23)を用いた。
CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA
CAGAGATCCGAAACCCAGCAGACAATGTAGCT−(TAMRA)(配列番号:22)
実験は、3本のPCRチューブ内で同時に行い、それぞれについて測定を行った。なお、本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は120秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図6に示す。また、FAM−DABCYL修飾分子ビーコンの濃度は60nMとした。
図6においては、3本のPCRチューブの結果を、それぞれ、C1(23)−1、C1(23)−2及びC1(23)−2と示した。
図6から明らかなように、配列変換DNAとしてC1(23)を用いた場合にも蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。従って、C1(23)を用いて配列番号:1の標的核酸が試料中に存在するかどうかの検出が可能であることがわかった。また、3本のPCRチューブにおいてほとんど同じ結果が得られたことから、良好な再現性を得ることが可能であることがわかった。
【0057】
実施例5
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチドを、配列番号:1の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:11で表わされるC2(22)を用いた以外は実施例4と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図7に示す。
図7に示すように、配列変換DNAとしてC2(22)を用いた場合にも、3本のPCRチューブでほぼ同じ結果を示し、この場合にも良好な再現性を得ることが可能であることがわかった。
【0058】
実施例6
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:4で表されるオリゴヌクレオチドを、配列番号:4の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして、以下の配列を有するC3(23)(配列番号:23)を用いた以外は実施例4と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図8に示す。
図8に示すように、配列変換DNAとしてC3(23)を用いた場合にも、3本のPCRチューブでほぼ同じ結果を示し、この場合にも良好な再現性を得ることが可能であることがわかった。
TCAACATCAGTCTGATAAGCTA
CAGAGATCCTGATAGCCCTGTACAATGCTGCT−(TAMRA)(配列番号:23)
【0059】
実施例7
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
次いで、標的核酸の濃度を10nM又は0Mとし、配列変換DNAの濃度を10nMと代えた以外は実施例1と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしては、配列番号:22で表わされるC1(23)を用いた。
なお、本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×1とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図9に示す。また、FAM−DABCYL修飾分子ビーコンの濃度は100nMとした。
図9から明らかなように、配列変換DNAとしてC1(23)を用いた場合にも蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。また、配列変換DNAを含まない場合には、標的核酸が存在しても、増幅反応が起こらないことが示された。
【0060】
実施例8
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチドを、配列番号:1の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:11で表わされるC2(22)を用いた以外は実施例7と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図10に示す。
図10に示すように、配列変換DNAとしてC2(22)を用いた場合にも、蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。また、配列変換DNAを含まない場合には、標的核酸が存在しても、増幅反応が起こらないことが示された。
【0061】
実施例9
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:4で表されるオリゴヌクレオチドを、配列番号:4の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして、配列番号:23で表わされるC3(23)を用いた以外は実施例7と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図11に示す。
図11に示すように、配列変換DNAとしてC3(22)を用いた場合にも、蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。また、配列変換DNAを含まない場合には、標的核酸が存在しても、増幅反応が起こらないことが示された。
【0062】
実施例10
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチドを、配列番号:1の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして、配列番号17で表わされるC2(15)を用いた以外は実施例7と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図12に示す。
図12に示すように、配列変換DNAとしてC2(15)を用いた場合にも、蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。また、配列変換DNAを含まない場合には、標的核酸が存在しても、増幅反応が起こらないことが示された。
【0063】
実施例11
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:4で表されるオリゴヌクレオチドを、配列番号:4の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして、配列番号12で表わされるC3(19)を用いた以外は実施例7と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図13に示す。
図13に示すように、配列変換DNAとしてC3(19)を用いた場合にも、蛍光強度が上昇し、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。また、配列変換DNAを含まない場合には、標的核酸が存在しても、増幅反応が起こらないことが示された。
【0064】
実施例12
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチドを、100nM、10nM及び0nM用い、配列番号:1の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:11で表わされるC2(22)を100nM用い、DNAポリメラーゼとして、DNAポリメラーゼIのKlenow断片(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性欠損変異体)を0.05単位/μL用い、結果を60秒毎に測定した以外は、実施例1と同様に実験を行い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図14に示す。
図14に示すように、標的核酸を含まない系、バッファーのみの系においては、増幅反応が起こらないことが示された。標的核酸を含む場合、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。増幅産物は、標的核酸の量が多いほど早く検出された。
実施例12においては、増幅産物を検出するためのFAM−DABCYL修飾分子ビーコンの濃度を100nMとし、実施例13〜18においては、増幅産物を検出するためのFAM−DABCYL修飾分子ビーコンの濃度を60nMとし、また実施例12〜18においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とした。
【0065】
実施例13
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:7で表わされるオリゴヌクレオチドを、0nM、30nMの濃度で用い、配列番号:7の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号で表わされるC1(23)を30nM用いた以外は、実施例12と同様に実験を行った。比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図15に示す。
図15に示すように、標的核酸を含まない系、バッファーのみの系においては、増幅反応が起こらないことが示された。標的核酸を含む系では、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。
【0066】
実施例14
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表わされるオリゴヌクレオチドを、0nM、30nMの濃度で用い、配列番号:1の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:11で表わされるC2(22)を用いた以外は、実施例13と同様に実験を行った。比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図16に示す。
図16に示すように、標的核酸を含まない系、バッファーのみの系においては、増幅反応が起こらないことが示された。標的核酸を含む系では、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。
【0067】
実施例15
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:4で表わされるオリゴヌクレオチドを、0nM、30nMの濃度で用い、配列番号:4の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:23で表わされるC3(23)を用いた以外は、実施例13と同様に実験を行った。比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図17に示す。
図17に示すように、標的核酸を含まない系、バッファーのみの系においては、増幅反応が起こらないことが示された。標的核酸を含む系では、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。
【0068】
実施例16
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
配列番号:7の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:13で表わされるC1(15)を用いた以外は、実施例13と同様に実験を行った。比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図18に示す。
図18に示すように、標的核酸を含まない系、バッファーのみの系においては、増幅反応が起こらないことが示された。標的核酸を含む系では、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。
【0069】
実施例17
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表わされるオリゴヌクレオチドを用い、配列番号:1の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:17で表わされるC2(15)を用いた以外は、実施例13と同様に実験を行った。比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図19に示す。
図19に示すように、標的核酸を含まない系、バッファーのみの系においては、増幅反応が起こらないことが示された。標的核酸を含む系では、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。
【0070】
実施例18
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:4で表わされるオリゴヌクレオチドを用い、配列番号:4の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして配列番号:17で表わされるC3(19)を用いた以外は、実施例13と同様に実験を行った。比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図20に示す。
図20に示すように、標的核酸を含まない系、バッファーのみの系においては、増幅反応が起こらないことが示された。標的核酸を含む系では、標的核酸がプライマーとして機能し、増幅産物であるオリゴヌクレオチドが検出可能な量まで十分に速く増幅されることがわかった。
【0071】
実施例19
配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
配列変換DNAとしてC2(22)を100nM、シグナル増幅DNAとして以下の配列を有するA2(23)を100nM用いた、及び用いなかった以外は、実施例1と同様に操作を行った。ここで、標的核酸としては、配列番号:1で表わされる核酸10nMを用いた。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。測定は60秒毎に255サイクルまで行った。
A2(23)の配列
TGATAGCCCTGTACAATGCTGCT
CAGAGATCCTGATAGCCCTGTACAATGCTGCT−(TAMRA)(配列番号:20)
配列番号20で表わされるA2(23)はニッキングエンドヌクレアーゼNt.AlwIの認識部位である
GATCCを含んでおり、Nt.AlwIにより切断されるのはCAGAGATCCの相補配列であるGGATCTCTGの3’末端側である。
測定結果を
図21に示す。
図21において、C2(22)&A2(23)_10nMは、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを含む系、C2(22)_10nMは配列変換DNAを含むがシグナル増幅DNAを含まない系である。
図21から明らかなように、シグナル増幅DNAを含む系及び含まない系、いずれにおいても蛍光強度が上昇したが、シグナル増幅DNAを含む方が蛍光強度の上昇が早く確認され、上昇速度も速かった。従って、この反応条件では検出しようとする標的核酸の含有量が10nMと低い場合には、シグナル増幅DNAがない系よりも、シグナル増幅DNAが含まれる系の方が、その検出感度が高いことが示された。
【0072】
実施例20
配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸の濃度を1nMとした以外は実施例19と同様に操作を行った。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図22に示す。
図22から明らかなように、シグナル増幅DNAを含まない系においては、蛍光強度の上昇はほとんどなく、従って、この反応条件では1nMという低濃度の標的核酸の検出は不可能であった。シグナル増幅DNAを含む系によって、シグナルDNAがプライマーとして機能することにより、核酸の増幅反応が指数的に進み、蛍光強度の上昇が確認できることがわかった。従って、検出しようとする核酸が1nMと低い濃度においては、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAの両者を含む系によって、検出が可能であることがわかった。
【0073】
実施例21配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:7で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC1(10)を100nM、シグナル増幅DNAとして以下の配列を有するA1(15)を100nM用い、Bst DNAポリメラーゼ,Large Fragmentの使用量を0.016単位/μLとした以外は、実施例19と同様に操作を行った。ここで、標的核酸としては、配列番号:7で表わされる核酸10nMを用いた。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図23に示す。
A1(15)の配列
CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA
CAGAGATCCCTGTTCCTGCTGAAC−(TAMRA)(配列番号:21)
配列番号21で表わされるA1(15)はニッキングエンドヌクレアーゼNt.AlwIの認識部位である
GATCCを含んでおり、Nt.AlwIにより切断されるのは、CAGAGATCCの相補配列であるGGATCTCTGの3’末端側である。
図23から明らかなように、シグナル増幅DNAを含む系においても含まない系においても蛍光強度の上昇が観察されたが、シグナル増幅DNAを含む系の方が含まない系よりも上昇の上限値付近に達するのが早かった(分子ビーコンに対して等量のシグナルDNAが作用すると蛍光強度は飽和し、過剰量のシグナルDNAが増幅されても蛍光強度は増加しない)。これより、検出しようとする標的核酸の濃度が10nMと低い場合には、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAの両者を含む系の方が、より迅速に高感度に標的核酸の検出が可能であることがわかった。
【0074】
実施例22
配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
配列変換DNAとしてC1(12)を用いた以外は実施例21と同様に操作を行った。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図24に示す。
図24から明らかなように、シグナル増幅DNAを含む系においても含まない系においても蛍光強度の上昇が観察されたが、シグナル増幅DNAを含む系の方が含まない系よりも上昇の上限値付近に達するのが早かった(分子ビーコンに対して等量のシグナルDNAが作用すると蛍光強度は飽和し、過剰量のシグナルDNAが増幅されても蛍光強度は増加しない)。これより、検出しようとする標的核酸の濃度が10nMと低い場合には、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAの両者を含む系の方が、より迅速に標的核酸の検出が可能であることがわかった。
【0075】
実施例23
配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC1(15)を用いた以外は実施例21と同様に操作を行った。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。結果を
図25に示す。
図25から明らかなように、シグナル増幅DNAを含む系においても含まない系においても蛍光強度の上昇が観察されたが、シグナル増幅DNAを含む系の方が含まない系よりも上昇の上限値付近に達するのが早かった(分子ビーコンに対して等量のシグナルDNAが作用すると蛍光強度は飽和し、過剰量のシグナルDNAが増幅されても蛍光強度は増加しない)。これより、検出しようとする標的核酸の濃度が10nMと低い場合には、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAの両者を含む系の方が、より迅速に標的核酸の検出が可能であることがわかった。
【0076】
実施例24
配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチドを用い、配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC2(22)を10nM、シグナル増幅DNAとしてA2(23)を30nM用いた、及び用いなかった以外は、実施例19と同様に操作を行った。ここで、標的核酸としては、配列番号:1で表わされる核酸10nMを用いた。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図26に示す。
図26から明らかなように、シグナル増幅DNAを含む系においても含まない系においても蛍光強度の上昇が観察されたが、シグナル増幅DNAを含む系の方が含まない系よりも上昇の上限値付近に達するのが早かった(分子ビーコンに対して等量のシグナルDNAが作用すると蛍光強度は飽和し、過剰量のシグナルDNAが増幅されても蛍光強度は増加しない)。これより、検出しようとする標的核酸の濃度が10nMと低い場合には、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAの両者を含む系の方が、より迅速に標的核酸の検出が可能であることがわかった。
【0077】
実施例25
配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC2(22)を10nM、シグナル増幅DNAとしてA2(23)を30nM用いた以外は、実施例19と同様に操作を行った。ここで、標的核酸としては、配列番号:1で表わされる核酸を入れない場合、0.1nM及び1nM含む場合について実験を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図27に示す。
図27から明らかなように、標的核酸の量が増加するにつれ、蛍光強度の上昇が早く確認されることがわかる。
【0078】
実施例26
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチド用い、増幅産物を検出するためのFAM−DABCYL修飾分子ビーコンの濃度を60nMとし(以下の実施例において同様)、配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC2(22)を10nM、シグナル増幅DNAとしてA2(23)を、30nM用いた、または用いなかった以外は、実施例19と同様に操作を行った。標的核酸としては、配列番号:1で表わされるオリゴヌクレオチドの濃度を0nM、1nM、10nMとした。なお、DNAポリメラーゼとしては、Bst DNAポリメラーゼ,Large Fragment0.08単位/μLを、ニッキングエンドヌクレアーゼとしては、Nt.AlwI 0.1単位/μLを用いた。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図28に示す。
図28から明らかなように、バッファーのみの場合は蛍光強度は増加しなかった。標的核酸の濃度が10nMの場合には蛍光強度は増加したが、シグナル増幅DNAを含む系では含まない系よりも上昇の上限値付近に達するのが早かった。標的核酸の濃度が1nMの場合は、シグナル増幅DNAを含む系では蛍光強度は増加したが、含まない系ではほとんど増加しなかった。これより、検出しようとする標的核酸の濃度が低い場合でも、シグナルDNAを含む場合には、より高感度に標的核酸の検出が可能であることがわかった。
【0079】
実施例27
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC2(22)を10nM、シグナル増幅DNAとしてA2(23)を、10nM用いる以外は、実施例19と同様に操作を行った。なお、DNAポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼIのKlenow断片(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性欠損変異体)0.05単位/μLを用いた。また、標的核酸としては、配列番号:1で表わされる核酸の濃度を0nM、10nM、100nMとした。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に150サイクルまで行った。結果を
図29に示す。
図29から明らかなように、標的核酸が含まれない場合には蛍光強度は増加しなかったが、標的核酸が含まれる場合には蛍光強度が増加し、標的核酸の濃度が高い方が、上限値付近に達するのが早かった。
【0080】
実施例28
標的核酸として配列番号:24で表されるオリゴヌクレオチド(RNA)を用い、配列番号:24の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC2(22)を10nM、シグナル増幅DNAとしてA2(23)を10nM用いた以外は、実施例19と同様に操作を行った。なお、DNAポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼIのKlenow断片(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性欠損変異体)を0.05単位/μL用いた。ここで、標的核酸としては、配列番号:24で表わされる核酸の濃度を、0nM、10nMとした。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図30に示す。
図30から明らかなように、標的核酸としてのRNAを含まない場合には蛍光強度がほとんど増加しないが、標的核酸としてのRNAを含む場合、蛍光強度が増加することがわかった。
UGGCUCAGUUCAGCAGGAACAG(配列番号:24)
【0081】
実施例29
標的核酸として配列番号:4で表されるオリゴヌクレオチドを、配列番号:4の標的核酸を検出するための配列変換DNAとして、配列番号:23で表わされるC3(23)を10nM用い、シグナル増幅DNAとして、配列番号:25で表わされるA3(19)を10nM用い、実施例19と同様に操作を行った。なお、DNAポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼIのKlenow断片(3’→5’エキソヌクレアーゼ活性欠損変異体)を0.05単位/μL用いた。ここで、標的核酸としては、配列番号:4で表わされる核酸の濃度を、0nM、10nMとした。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、増幅産物を検出するためのFAM−DABCYL修飾分子ビーコンの濃度を60nMとし、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図31に示す。
図31に示すように、標的核酸を含まない場合には蛍光強度が増加しないが、標的核酸を含む場合、蛍光強度が増加することがわかった。
A3(19)の配列
TCAACATCAGTCTGATAAGCTA
CAGAGATCCTCAACATCAGTCTGATAAG−(TAMRA)(配列番号:25)
A3(19)はニッキングエンドヌクレアーゼNt.AlwIの認識部位である
GATCCを含んでおり、Nt.AlwIにより切断されるのは、CAGAGATCCの相補配列であるGGATCTCTGの3’末端側である。
【0082】
実施例30
標的核酸として配列番号:7で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC1(10)を10nM、シグナル増幅DNAとして以下の配列を有するA1(22)(配列番号:26)を30nM用い、実施例19と同様に操作を行った。なお、DNAポリメラーゼとしては、Bst DNAポリメラーゼ,Large Fragment単位/μL及びNt.AlwI 0.1単位/μLを用いた。ここで、標的核酸としては、配列番号:7で表わされる核酸の濃度を、0nM、10nMとした。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図32に示す。
図32に示すように、標的核酸を含まない場合には蛍光強度が増加しなかった。また、配列変換DNAを含み、シグナル増幅DNAを含まない系では、標的核酸を含む場合でも蛍光強度がほとんど増加しなかったが、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを含む系では、蛍光強度が増加することがわかった。
A1(22)の配列
CTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA
CAGAGATCCCTGTTCCTGCTGAACTGAGCCA−(TAMRA)(配列番号:26)
A1(22)はニッキングエンドヌクレアーゼNt.AlwIの認識部位である
GATCCを含んでおり、Nt.AlwIにより切断されるのは、CAGAGATCCの相補配列であるGGATCTCTGの3’末端側である
【0083】
実施例31
標的核酸として配列番号:7で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC1(15)を10nM、シグナル増幅DNAとして、配列番号:26で表わされるA1(22)(配列番号:26)を10nM用いるか、又は用いずに実施例19と同様に操作を行った。なお、DNAポリメラーゼとしては、Bst DNAポリメラーゼ,Large Fragment0.08単位/μL及びNt.AlwI 0.1単位/μLを用いた。ここで、標的核酸としては、配列番号:7で表わされる核酸の濃度を、0、10nMとした。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図33に示す。
図33に示すように、標的核酸を含まない場合には蛍光強度がほとんど増加しなかった。また、配列変換DNAを含み、シグナル増幅DNAを含まない系では、標的核酸を含む場合でも蛍光強度がほとんど増加しなかったが、配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを含む系では、蛍光強度が増加することがわかった。
【0084】
実施例32
本実施例は、2種の標的核酸を含む場合にも同時に検出が可能かどうかを調べるものである。
標的核酸として配列番号:7で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:7の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC1(23)を30nM、シグナル増幅DNAとしてA1(22)を30nM用いた。また、標的核酸として配列番号:4で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:4の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC3(23)を30nM、シグナル増幅DNAとしてA3(19)を30nM用いた。DNAポリメラーゼとしては、Bst DNAポリメラーゼ,Large Fragment0.08単位/μL及びNt.AlwI 0.1単位/μLを用い、実施例19と同様に操作を行った。ここで、標的核酸としては、配列番号:7又は配列番号:4で表わされる核酸の濃度を、0、30nMとした。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。また、配列番号:7で表わされるオリゴヌクレオチドのみを含む場合と、配列番号:4で表わされるオリゴヌクレオチドのみを含む場合についても実験を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×4とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図34に示す。
図34に示すように、標的核酸を含まない場合、バッファーのみの場合には蛍光強度は増加しなかった。標的核酸として配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドのみを用いた場合、配列変換DNAとしてC1(23)を用い、シグナル増幅DNAとしてA1(22)を用いることにより、蛍光強度が増加した。また、標的核酸として配列番号:4で表されるオリゴヌクレオチドのみを用いた場合、配列変換DNAとしてC3(23)を用い、シグナル増幅DNAとしてA3(19)を用いることにより、蛍光強度が増加した。また、標的核酸として、配列番号:4で表わされるオリゴヌクレオチド及び配列番号:7で表わされるオリゴヌクレオチドの両者を含む場合、サイクル数の増加に伴い、蛍光強度の増加が見られ、2種の標的核酸を含む場合にも、同時に双方の核酸を検出できることが示された。
【0085】
実施例33
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC2(22)を10nM、シグナル増幅DNAとしてA2(23)を30nM用い、実施例19と同様に操作を行った。なお、DNAポリメラーゼとしては、Bst DNAポリメラーゼ, Large Fragment0.08単位/μL及びNt.AlWI 0.1単位/μLを用いた。ここで、標的核酸としては、配列番号:1で表わされる核酸の濃度を、0nM、2nM、4nM、6nM、8nM、10nMとした。また、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に60サイクルまで行った。結果を
図35に示す。
図35に示すように、標的核酸を含まない場合、バッファーのみの場合には蛍光強度は増加しなかった。また、標的核酸の濃度が高くなるにつれ、蛍光強度の増加が早くなった。
図35の結果において、蛍光強度の値が10000に達するサイクル数を縦軸にし、標的核酸の濃度を横軸にし、検量線を作成した。結果を
図36に示す。
図36に示すように、蛍光強度と標的核酸の濃度との間には一定の関係があり、この検量線を用いることにより、試料中の標的核酸の濃度を定量できることがわかった。
【0086】
実施例34
標的核酸として配列番号:1で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:1の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとしてC2(22)を10nM、シグナル増幅DNAとしてA2(23)を30nM用い、実施例32と同様に操作を行った。なお、標的核酸としてのオリゴヌクレオチドの濃度は、0nM、2nM、10nMとし、それぞれ、配列番号:7で表されるオリゴヌクレオチドを10nM含有させた場合についても同様に実験を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に50サイクルまで行った。結果を
図37に示す。
図37に示すように、バッファーのみの場合、標的核酸も配列番号:7で表されるオリゴヌクレオチドも含まれない場合には蛍光強度は増加しなかった。標的核酸の濃度を2nM、10nMとすると、濃度の増加に伴い蛍光強度が増加した。この蛍光強度は、配列番号:7で表されるオリゴヌクレオチドが混在している場合にもほとんど変化がなかった。このことより、本実験においては、標的核酸以外の核酸が系に混入していても、測定結果に影響がないことを示す。
【0087】
実施例35
配列変換DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:29で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:29の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとして、配列番号:27で表わされるBbv_C2(12)を10nM用い、標的核酸としては配列番号:29の標的核酸の濃度を、0、10nMとした。また、ニッキングエンドヌクレアーゼとして、Nb.BbvCIを0.1
単位/μL用い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に255サイクルまで行った。結果を
図38に示す。
なお、Bbv_C2(12)は、Nb.
BbvCIの認識部位である
CCTCAGCを含んでおり、Nb.
BbvCIで切断されるのは、
CCTCAとGCとの間である。
TGATAGCCCTGTACAATGCTGCT
CCTCAGCCACACGATCCT−(TAMRA)(配列番号:27)
図38から明らかなように、バッファーのみの場合、標的核酸を含まない場合には、蛍光強度は増加しなかったが、標的核酸を含む場合には、蛍光強度が増加した。
配列番号:29(TAGCTTATCAGACTGATGTTGA)
【0088】
実施例36
配列変換DNA及びシグナル増幅DNAを用いた標的核酸の検出
標的核酸として配列番号:29で表されるオリゴヌクレオチド用い、配列番号:29の標的核酸を検出するために用いた配列変換DNAとして、Bbv_C2(12)を10nM用い、シグナル増幅DNAとして、配列番号:28で表わされるBbv_A2(22)を30nM用い、標的核酸としては配列番号:29の標的核酸の濃度を、0、1、10nMとした。また、ニッキングエンドヌクレアーゼとして、Nb.BbvCIを0.1単位/μL用い、比較として、バッファーのみで同様の操作を行った。本実験においては、Mx3005Pのゲイン設定は×8とし、測定は60秒毎に120サイクルまで行った。結果を
図39に示す。
なお、Bbv_C2(12)、Bbv_A2(22)は、いずれもNb.BbvCIの認識部位であるCCTCAGCを含んでおり、Nb.BbvCIで切断されるのは、CCTCAGCの相補配列であるGCTGAGGのGCとTGAGGの間である。
TGATAGCCCTGTACAATGCTGCTCCTCAGCTGATAGCCCTGTACAATGCTGCT−(TAMRA)(配列番号:28)
図39から明らかなように、バッファーのみの場合、標的核酸を含まない場合には、蛍光強度は増加しなかったが、標的核酸を含む場合、蛍光強度は増加し、濃度が高い方が、蛍光強度が上昇するのが早かった。
以上詳述したように、本発明の標的核酸を検出する方法によれば、標的核酸を高感度で特異的に検出することが可能であり、短鎖の核酸であっても高感度で特異的に検出可能なことが示された。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]