(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6638387
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】エンジンのブリーザ構造
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20200120BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
F01M13/04 H
F01M13/00 Q
F01M13/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-255080(P2015-255080)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-115826(P2017-115826A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金池 聡志
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 輝展
(72)【発明者】
【氏名】愛原 茂
(72)【発明者】
【氏名】徳久 勝規
(72)【発明者】
【氏名】今泉 徹大
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−122242(JP,U)
【文献】
特開2012−026285(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第0158859(KR,B1)
【文献】
特開2000−240462(JP,A)
【文献】
米国特許第06308679(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F01M 13/04
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックと、
クランク軸によって回転する駆動側スプロケットとカム軸に設けられた被動側スプロケットとに巻掛けられたチェーンと、
前記チェーンを覆うチェーンケースと、
前記チェーンケースと前記シリンダブロックとの間に形成され上下方向に延びるブリージング通路と、
前記シリンダブロックの内部で発生したブローバイガスを前記ブリージング通路に流入させるよう前記シリンダブロックに形成されたブローバイガス流入口と、
前記ブリージング通路を流れるブローバイガスを前記シリンダブロックの上面から流出させるブローバイガス流出部と、
前記ブリージング通路に配置されたチェーンテンショナと、
を具備し、
前記シリンダブロックは、前記チェーンテンショナを取付けるチェーンテンショナ取付部を前記ブリージング通路に有し、
前記チェーンケースは、前記チェーンテンショナ取付部に対向するよう突出したブローバイガス衝突部を有したことを特徴とするエンジンのブリーザ構造。
【請求項2】
前記チェーンテンショナは、前記チェーンテンショナ取付部に固定されるボディを有し、該ボディを挟むよう前記ブローバイガス衝突部を前記チェーンケースに設けたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのブリーザ構造。
【請求項3】
前記ブローバイガス衝突部が前記チェーンケースの内面に形成されたリブであり、該リブと前記チェーンテンショナの前記ボディとの間にブローバイガスが流れる曲り流路を有したことを特徴とする請求項2に記載のエンジンのブリーザ構造。
【請求項4】
前記ブローバイガス衝突部が前記チェーンテンショナの前記ボディの下側に位置して該ボディの軸線に沿う方向に延びる第1リブと、前記ボディの上側に位置して該ボディの軸線に沿う方向に延びる第2リブとを含み、前記第1リブと前記ボディとの間に第1の曲り流路を有し、前記第2リブと前記ボディとの間に第2の曲り流路を有したことを特徴とする請求項3に記載のエンジンのブリーザ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブローバイガス中のオイル分を分離して回収するエンジンのブリーザ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(内燃機関)のピストンとシリンダとの摺動部などを通ってエンジン本体の内部に漏れるブローバイガスにはオイル分が含まれている。そのためエンジンにブリーザ装置を組付けることにより、ブローバイガス中のオイル分を分離し、このオイルをオイルパンなどエンジンの内部へ戻すことが行われている。
【0003】
例えば従来のエンジンの一例では、シリンダヘッドの上部に組付けるカムカバーにブローバイガスからオイル分を分離するためのブリーザ装置が設けられている。この構造は、ブリーザ装置がカムカバーに内蔵されるためにエンジンを小形化する上で不利である。そこでエンジンの外部にブリーザ装置を設置することも行われている。しかしエンジンにブリーザ装置を外付けする場合には、ブリーザ装置を取付けるためのスペースをエンジンまわりに確保しなければならない。しかもエンジン内部のブローバイガス排出口とブリーザ装置とをホース等によって接続する必要があるなど、エンジンまわりの構造が複雑になるという問題がある。
【0004】
また特許文献1に記載されているブリーザ装置のように、エンジンに附属するチェーンケースの内側にブリージング通路を形成し、このブリージング通路の内部にフィン部を有した衝突板を配置するとともに、チェーンケースの内面にも同様のフィン部を形成することによって、オイル分離室を形成することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−99088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のブリーザ装置のようにチェーンケースやシリンダブロックとは別部材であるフィン部を有した衝突板をチェーンケースの内部に配置する構造では、ブリーザ装置のための専用部品が必要となる。しかもフィン部を有する衝突板をチェーンケース内に収容するための専用スペースを確保する必要があるため、エンジンの小形化を図る上で不利である。またチェーンケースの内部には各種機器が存在するため、フィン部を有する衝突板を配置することが困難なこともある。
【0007】
従って本発明の目的は、ブローバイガス中に含まれるオイル分を分離できかつ構造が簡単でコンパクトに構成することができるエンジンのブリーザ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施形態は、シリンダブロックと、クランク軸によって回転する駆動側スプロケットとカム軸に設けられた被動側スプロケットとに巻掛けられたチェーンと、前記チェーンを覆うチェーンケースと、前記チェーンケースと前記シリンダブロックとの間に形成され上下方向に延びるブリージング通路と、前記シリンダブロックの内部で発生したブローバイガスを前記ブリージング通路に流入させるよう前記シリンダブロックに形成されたブローバイガス流入口と、前記ブリージング通路を流れるブローバイガスを前記シリンダブロックの上面から流出させるブローバイガス流出部と、前記ブリージング通路に配置されたチェーンテンショナとを具備したブリーザ構造である。
【0009】
この実施形態において、シリンダブロックは前記チェーンテンショナを取付けるチェーンテンショナ取付部を前記ブリージング通路に有し、前記チェーンケースは前記チェーンテンショナ取付部に対向するよう突出したブローバイガス衝突部を有していてもよい。また前記チェーンテンショナは前記チェーンテンショナ取付部に固定されるボディを有し、該ボディを挟むようブローバイガス衝突部を前記チェーンケースに設けてもよい。
【0010】
前記ブローバイガス衝突部が前記チェーンケースの内面に形成されたリブであり、該リブと前記チェーンテンショナの前記ボディとの間にブローバイガスが流れる曲り流路を有してもよい。前記ブローバイガス衝突部の一例は、前記チェーンテンショナの前記ボディの下側に位置して該ボディの軸線に沿う方向に延びる第1リブと、前記ボディの上側に位置して該ボディの軸線に沿う方向に延びる第2リブとを含み、前記第1リブと前記ボディとの間に第1の曲り流路を有し、前記第2リブと前記ボディとの間に第2の曲り流路を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエンジンのブリーザ構造によれば、ブローバイガスに含まれるオイル分を分離させてエンジンの内部に回収することができるとともに、エンジンの構成要素であるチェーンケースの一部とチェーンテンショナを利用してブリーザ部を構成することができ、省スペース化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】1つの実施形態に係るブリーザ部を備えたエンジンの斜視図。
【
図5】同エンジンのチェーンケースのブリーザ部を内側から示す斜視図。
【
図6】同エンジンのシリンダブロックとチェーンケースのブリーザ部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に1つの実施形態に係るエンジンのブリーザ構造について、
図1から
図6を参照して説明する。
図1は、エンジン10の一例として、自動車に搭載されるディーゼルエンジンを示している。エンジン10は、内部に複数の気筒を有するシリンダブロック11と、シリンダブロック11の上端に設けられたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の一方の壁面に取付けられたチェーンケース13とを含んでいる。チェーンケース13は複数のボルト14(一部のみ符号を付す)によってシリンダブロック11とシリンダヘッド12とに固定されている。
【0014】
シリンダブロック11の内部にクランク軸20が回転するクランク室21が形成されている。シリンダブロック11の各気筒内にはそれぞれピストンが収容され、各ピストンが往復運動することによりクランク軸20が回転する。シリンダブロック11の下側にはクランク室21に通じるオイルパン22が設けられている。シリンダヘッド12の上端にロッカーカバー23が配置されている。
【0015】
図2はエンジン10の一部を示す縦断面図である。クランク軸20に駆動側スプロケット(クランク軸スプロケット)30が取付けられている。シリンダヘッド12には、被動側スプロケット31が設けられている。駆動側スプロケット30と被動側スプロケット31との間に、チェーン(タイミングチェーン)32が巻き掛けられている。被動側スプロケット31は排気弁用のカム軸33に設けられている。
【0016】
被動側スプロケット31と同軸に排気弁用タイミングギヤ40が設けられている。排気弁用タイミングギヤ40は、排気弁用のカム軸33を介して排気弁を駆動する。排気弁用タイミングギヤ40に吸気弁用タイミングギヤ41が噛み合っている。吸気弁用タイミングギヤ41は、吸気弁用のカム軸43を介して吸気弁を駆動する。これらによって構成される動弁機構がロッカーカバー23(
図1に示す)によって覆われている。クランク軸20の回転角に応じて各気筒の排気弁と吸気弁が所定のタイミングで開閉するとともに、各点火プラグが所定のタイミングで動作することにより、各気筒ごとに、吸気、圧縮、爆発、排気の一連のサイクルが繰り返される。
【0017】
図2に示されるようにチェーン32の側面と対向してタイミングチェーンレバー45が配置されている。タイミングチェーンレバー45は、上端部に設けられた支軸46を中心に揺動可能であり、後述するチェーンテンショナ60によってチェーン32の側面に向けて付勢されることにより、チェーン32の張力を自動調整する機能を担っている。チェーン32やタイミングチェーンレバー45はチェーンケース13によって覆われている。
【0018】
チェーンケース13がシリンダブロック11に取付けられた状態において、シリンダブロック11とチェーンケース13との間にブリージング通路50が形成されている。ブリージング通路50の下端側には、ブリージング通路50に連通するブローバイガス流入口51がシリンダブロック11の壁部に形成されている。ブローバイガス流入口51はエンジン内部のクランク室21と連通している。すなわちこのブローバイガス流入口51は、シリンダブロック11の内部で発生したブローバイガスをブリージング通路50に流入させるようシリンダブロック11に形成されている。
【0019】
シリンダブロック11の上端にブローバイガス流出口52が形成されている。ブローバイガス流出口52はブローバイガス流入口51の上方に位置している。このようにシリンダブロック11とチェーンケース13との間の空間を利用して、ブローバイガス流入口51からブローバイガス流出口52に向かってブローバイガスが流れるブリージング通路50が形成されている。ブローバイガス流出口52はエンジンの吸気系に接続されている。
【0020】
図3はシリンダブロック11の正面図である。シリンダブロック11の一部にチェーンテンショナ取付部55が形成されている。
図3に示されるようにチェーンテンショナ取付部55は、ブローバイガス流入口51の上方でブリージング通路50の途中においてブリージング通路50を臨む位置に形成されている。チェーンテンショナ取付部55の下部と上部にそれぞれねじ穴56,57が形成されている。チェーンテンショナ取付部55の内側に、シリンダブロック11内の油路58(
図5に示す)に連通する油孔59が開口している。
【0021】
チェーンテンショナ取付部55にチェーンテンショナ60が取付けられている。チェーンテンショナ60は、チェーンケース13の一部をなすチェーンテンショナ収容部13aの内側に配置されている。チェーンテンショナ収容部13aはチェーンケース13の外側に少し膨らんだ凸部をなす形状となっている。
【0022】
図4はチェーンテンショナ60の一例を示している。チェーンテンショナ60は、内部に油圧室を有するボディ60aと、内蔵されたスプリングによってボディ60aから突き出る方向に付勢されるプランジャ60bとを有している。ボディ60aの下部と上部に設けられたフランジ部70,71にそれぞれ取付孔72,73が形成されている。これら取付孔72,73に挿入されたボルト74,75(
図2に示す)によって、チェーンテンショナ60がシリンダブロック11のチェーンテンショナ取付部55に固定される。
【0023】
チェーンテンショナ60がチェーンテンショナ取付部55に固定された状態において、内蔵されたスプリングの反力により、チェーンテンショナ60のプランジャ60bの先端がタイミングチェーンレバー45に当接するとともに、油孔59を通じて油路58から供給されるオイル圧力により減衰力を得る。この状態においてタイミングチェーンレバー45が支軸46を中心に回動することにより、チェーン32の張力が規定値の範囲に保たれる。
【0024】
図5に示されるように、チェーンケース13の一部であるチェーンテンショナ収容部13aの内面に、チェーンテンショナ取付部55に向かって突出する第1リブ81と第2リブ82とからなるブローバイガス衝突部80が形成されている。このブローバイガス衝突部80は、チェーンテンショナ取付部55に対向するように突出している。すなわちブローバイガス衝突部80は、チェーンテンショナ60のボディ60aを挟むようにチェーンケース13に設けられている。後に詳しく説明するように、ブローバイガス衝突部80とチェーンテンショナ60のボディ60aとの間に、ブローバイガスが通る流路が形成される。
【0025】
第1リブ81と第2リブ82とは、それぞれチェーンケース13の内面13bに形成され、シリンダブロック11に向かって突き出ている。ブローバイガス衝突部80を構成するリブあるいは凸部の数は、1もしくは3以上であってもよい。チェーンケース13の材質は問わないが、チェーンケース13の一例は金属の一体成形品である。チェーンケース13は合成樹脂製であってもよい。
【0026】
第1リブ81は第2リブ82よりも低い位置にある。すなわち第1リブ81は、チェーンテンショナ取付部55の下部付近すなわちチェーンテンショナ60の下側のフランジ部70と対向する位置において、チェーンテンショナ60のボディ60aの軸線X1に沿って形成され、ブリージング通路50に向けて突き出ている。第2リブ82は、チェーンテンショナ取付部55の上部付近すなわちチェーンテンショナ60の上側のフランジ部71と対向する位置において、チェーンテンショナ60のボディ60aの軸線X1に沿って形成され、第1リブ81と同様にブリージング通路50に向けて突き出ている。
【0027】
図6に示されるように、第1リブ81と第2リブ82との間にチェーンテンショナ60のボディ60aが隙間を存して位置するようにチェーンテンショナ60をブリージング通路50内に突出させて配置することにより、ブローバイガスに含まれるオイル分を分離させるためのブリーザ部90が構成されている。すなわち本実施形態のブリーザ部90は、シリンダブロック11の一部と、チェーンケース13の一部と、チェーンテンショナ60等によって構成されている。チェーンテンショナ60のボディ60aは剛性の高い固体物であり、このボディ60aと第1リブ81と第2リブ82等によって、ブローバイガス中のオイル分を分離する衝突方式のオイル分離機構が構成されている。
【0028】
図6中の矢印Gはブローバイガスが流れる方向を模式的に示している。本実施形態では、第1リブ81と第2リブ82との間にチェーンテンショナ60を配置したことにより、チェーンテンショナ60と第1リブ81および第2リブ82との間に、下から上に向かってブローバイガスが進路を変えながら流れる流路が形成されている。この流路は、第1の曲り流路91と第2の曲り流路92とを含んでいる。第1の曲り流路91は、第1リブ81とチェーンテンショナ60のボディ60aとの間に形成されている。第2の曲り流路92は、第2リブ82とチェーンテンショナ60のボディ60aとの間に形成されている。
【0029】
第1リブ81の下方にオイル受け部95が形成されている。オイル受け部95はシリンダブロック11の一部とチェーンケース13の一部とによって構成され、ブローバイガス流入口51に連通している。オイル受け部95上に落ちたオイルは、ブローバイガス流入口51とクランク室21を経てオイルパン22に戻ることができる。ブローバイガス流入口51はオイル戻り口を兼ねている。
【0030】
次に、ブリーザ部90の作用について説明する。
エンジン10が回転することによりエンジン10の内部で発生したブローバイガスはクランク室21に入る。クランク室21内のブローバイガスは、ブローバイガス流入口51を経てブリージング通路50内に流入し、第1リブ81に向かって流れる。ブリージング通路50に流入したブローバイガスは第1リブ81の下面等に衝突し、オイル分が分離するとともに第1の曲り流路91を経て第2リブ82に向かって上昇する。
【0031】
ブローバイガスは第1の曲り流路91を上昇する途中でチェーンテンショナ60の下面やフランジ部70やボルト74あるいはチェーンケース13の内面13bに衝突するなどしてオイル分が分離するとともに、第2リブ82に向かって上昇する。またこのブローバイガスは、第2リブ82の底面やチェーンテンショナ60のフランジ部71やボルト75に衝突しながら第2の曲り流路92を上昇することにより、さらにオイル分が分離しながらブリージング通路50を通ってブローバイガス流出口52へと流れ、エンジンの吸気系に供給される。吸気系に流入したブローバイガスは、燃焼用空気および燃料に混入して吸気弁から燃焼室に入り、燃焼に供される。一方、ブリージング通路50内でブローバイガスから分離したオイルは、オイル受け部95に落ち、ブローバイガス流入口51からクランク室21へ戻され、オイルパン22に回収される。
【0032】
本実施形態のブリーザ部90は、シリンダブロック11の一部と、チェーンケース13の一部と、チェーンテンショナ60等のエンジン構成要素を利用して構成されている。このためブリーザ部90のための専用部品を追加せずとも、エンジン10の一部にブリーザ部90をコンパクトに構成することができる。このため小形化が望まれかつブローバイガスのオイル分離性能が求められるディーゼルエンジン等のエンジンに適している。
【0033】
しかもこのブリーザ部90は、
図6に示されるように第1リブ81と第2リブ82との間にチェーンテンショナ60のボディ60aの一部が入り込むように配置されることよって、第1の曲り流路91と第2の曲り流路92とを形成しているため、シリンダブロック11からチェーンケース13の端面までの厚さT1(
図6に示す)が大きくなることを抑制できている。このため、ブリーザ部90のためにエンジンの長さが増大することを抑制できる。
【0034】
またチェーンケース13の一部であるチェーンテンショナ収容部13aに形成された第1リブ81と第2リブ82との間にチェーンテンショナ60のボディ60aを配置することでブリーザ部90を構成することができるため組付が簡単であるだけでなく、第1リブ81と第2リブ82とによってチェーンテンショナ収容部13aの剛性を高めることができ、かつ、ブリーザ部90のための専用部品が増えることも抑制することができる。
【0035】
本実施形態のブリージング通路50は、シリンダブロック11の上下方向に延びる縦長のチェーンケース13の内部空間を利用しているため、駆動側スプロケット30や被動側スプロケット31および周囲の補機類等を避けることができるとともに、大きなブリージング有効長を確保することができる。またシリンダブロック11とチェーンケース13の一部を利用してオイル受け95が形成され、ブローバイガスから分離したオイルをオイル受け部95からブローバイガス流入口51を通じてエンジン内部に戻すことができるため、ブローバイガスから分離したオイルの回収経路が簡単である。
【0036】
なお本発明を実施するに当たり、シリンダブロックやチェーンケースおよびチェーンテンショナ等の具体的な構成や配置をはじめとして、この発明を構成する各要素の構造や形状、配置等の態様をエンジンの仕様に応じて適宜変更して実施できることは言うまでもない。チェーンケースの内面に形成する凸部からなるブローバイガス衝突部はリブ以外の形状でもよいし、1箇所以上のリブによってブローバイガス衝突部が構成されてもよい。また本発明に係るブリーザ構造はディーゼルエンジンに限ることはなくガソリンエンジンにも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…エンジン、11…シリンダブロック、13…チェーンケース、13a…チェーンテンショナ収容部、13b…内面、20…クランク軸、21…クランク室、30…駆動側スプロケット、31…被動側スプロケット、32…チェーン、33…カム軸、45…タイミングチェーンレバー、50…ブリージング通路、51…ブローバイガス流入口、52…ブローバイガス流出口、55…チェーンテンショナ取付部、60…チェーンテンショナ、60a…ボディ、60b…プランジャ、70,71…フランジ部、80…ブローバイガス衝突部、81…第1リブ、82…第2リブ、90…ブリーザ部、91…第1の曲り流路、92…第2の曲り流路、95…オイル受け部。