特許第6639221号(P6639221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エア・ウォーター株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6639221-飲料水ディスペンサ 図000006
  • 特許6639221-飲料水ディスペンサ 図000007
  • 特許6639221-飲料水ディスペンサ 図000008
  • 特許6639221-飲料水ディスペンサ 図000009
  • 特許6639221-飲料水ディスペンサ 図000010
  • 特許6639221-飲料水ディスペンサ 図000011
  • 特許6639221-飲料水ディスペンサ 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6639221
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】飲料水ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/07 20060101AFI20200127BHJP
   B67D 3/00 20060101ALI20200127BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20200127BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20200127BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   B67D1/07
   B67D3/00 G
   C02F1/44 B
   B01D71/68
   B01D63/02
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-252765(P2015-252765)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-114536(P2017-114536A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】安達 陽平
(72)【発明者】
【氏名】阿保 洋一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 瑞恵
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/094364(WO,A1)
【文献】 特開2007−216992(JP,A)
【文献】 特開2006−305516(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/110926(WO,A1)
【文献】 特開平11−255294(JP,A)
【文献】 特開2014−169805(JP,A)
【文献】 特開2000−085893(JP,A)
【文献】 特開2015−110434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0015208(US,A1)
【文献】 実公平06−015912(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/00−3/04
C02F 1/44
B01D 71/68
B01D 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水を供給するボトルと、
前記ボトルを着脱自在に設置でき、前記飲料水を出水口から出水する本体部とを少なくとも備え、
前記本体部には、出水前の前記飲料水を濾過する中空糸膜モジュールが少なくとも1つ設けられており、
前記中空糸膜モジュールにおける中空糸膜は、親水性を有し、かつ、グラフト重合されていないものである飲料水ディスペンサ。
【請求項2】
前記中空糸膜が、親水性を有するポリスルフォン系中空糸膜である請求項1に記載の飲料水ディスペンサ。
【請求項3】
前記本体部は、
前記ボトルから供給される飲料水を貯留する貯留槽であって、当該飲料水を上側の層において常温で貯留すると共に、下側の層において冷却して貯留するものと、
前記貯留槽より下方側に位置し、当該貯留槽から供給される飲料水を高温で貯留する温水槽と、
前記出水口と前記貯留槽とを接続し、当該貯留槽に貯留されている冷却された飲料水を流動させるための冷却水供給管とを備え、
前記中空糸膜モジュールは、前記冷却水供給管の任意の位置に設けられており、前記貯留槽から供給される冷却水を濾過するものである請求項1又は2に記載の飲料水ディスペンサ。
【請求項4】
前記本体部は、
前記ボトルから供給される飲料水を常温で貯留する他の貯留槽と、
前記他の貯留槽より下方側に位置し、当該他の貯留槽から供給される飲料水を冷却して貯留する冷却水槽と、
前記冷却水槽より下方側に位置し、前記他の貯留槽から供給される飲料水を高温で貯留する温水槽とを備え、
前記中空糸膜モジュールは、前記他の貯留槽と冷却水槽の間に設けられ、かつ、前記他の貯留槽から供給される飲料水を濾過するものである請求項1又は2に記載の飲料水ディスペンサ。
【請求項5】
前記本体部は、
前記ボトルから供給される飲料水を常温で貯留する他の貯留槽と、
前記他の貯留槽より下方側に位置し、当該他の貯留槽から供給される飲料水を冷却して貯留する冷却水槽と、
前記冷却水槽より下方側に位置し、前記他の貯留槽から供給される飲料水を高温で貯留する温水槽と、
前記他の貯留槽に貯留されている常温の飲料水を前記冷却水に供給する供給管とを備え、
前記中空糸膜モジュールは、前記供給管の任意の位置に設けられており、前記他の貯留槽から供給される常温の飲料水を濾過するものである請求項1又は2に記載の飲料水ディスペンサ。
【請求項6】
前記本体部は、
前記ボトルから飲料水を取水するための取水管を備え、
前記中空糸膜モジュールは、前記取水管の任意の位置に設けられており、前記ボトルから取水する飲料水を濾過するものである請求項1又は2に記載の飲料水ディスペンサ。
【請求項7】
前記ポリスルフォン系中空糸膜がポリサルフォン、ポリエーテルスルホン、又はポリフェニレンスルホンからなる請求項2に記載の飲料水ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料水ディスペンサに関するものであり、より詳細には、採水される飲料水の雑菌を確実に除去し、かつ、味移りや臭いを生じさせることのない飲料水ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水ディスペンサ(又は飲料水サーバ)は、ミネラルウォーター等の飲料水を充填した大容量ボトル(7〜12L程度)を設置しておき、必要量を適時的にコップ等に採水して飲用されるものである。近年、このボトルを家庭や飲食店、病院、各種オフィスなどに配送して消費する形態が増えている。
【0003】
このような従来の飲料水ディスペンサとしては、例えば、下記特許文献1の図8に図示されたものが挙げられる。同図に示す飲料水ディスペンサによれば、ボトルから供給される飲料水は、飲料水ディスペンサ内に設けられた冷却機構により冷却されて冷水タンクに貯留されると共に、加熱機構により加熱されて温水タンクにも貯留される構造となっている。これにより、使用者は冷水と温水のいずれも採水可能となっている。
【0004】
このような飲料水ディスペンサは、残留塩素を含まない飲用水をボトルに充填しているため、ボトル交換の際に、雑菌等が差込口等に付着し、ディスペンサ内部に侵入した場合、ミネラルウォーター中で雑菌が発生してしまう可能性がある。とりわけ、飲料水ディスペンサ内で、冷却水や常温水といった温水以外が流れる流路では、外部から侵入した雑菌が増殖する可能性がある。
【0005】
このような問題に対し、例えば、下記特許文献2では、飲料水の出水口より上流側の通路に、濾過手段を設ける方法が開示されている。この方法によれば、濾過手段が雑菌を除去するため、出水口から流出する飲用水を清浄に保つことができるとされている。また、濾過手段としては、中空糸膜や吸着剤が開示されており、当該中空糸膜を用いた場合には、極めて微小な雑菌を除去できるとされ、吸着剤を用いた場合には、残留塩素、カビ臭及び飲料水ディスペンサ内で付着した臭い等を吸着することができるとされている。さらに、中空糸膜としては、取り扱い性や加工特性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系中空糸膜が好ましいとされている。
【0006】
しかし、使用する中空糸膜の種類によっては、当該中空糸膜の樹脂由来による飲料水への味移りや臭いが付くという問題がある。前述の通り、吸着剤を設けることにより、前記残留塩素等の臭いを吸着することができるとされているが、この吸着剤は中空糸膜の上流側に設置されるため、中空糸膜を構成する樹脂由来の味移りや臭いを除去することは困難である。吸着剤を中空糸膜の下流側に設置することも考えられるが、この場合、吸着剤は雑菌の繁殖の温床になるため、出水口から侵入した雑菌が当該吸着剤で繁殖する可能性がある。その結果、採水された飲料水から雑菌が検出されるという問題がある。
【0007】
また、中空糸膜の樹脂由来の味移りや臭いを除去するために、飲料水の通水を続けることも考えられるが、完全に除去するには通水を大量に行う必要がある。また、中空糸膜を飲料水ディスペンサに設置する前に、洗浄することで味移り及び臭いを除去する方法も考えられるが、当該洗浄後の乾燥処理により中空糸膜の孔径が変化し、濾過性能が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−255960号公報
【特許文献2】再公表特許WO2007/094364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、雑菌等を除去すると共に、採水される飲料水に味移りや臭いが付くのを防止又は低減させることが可能な飲料水ディスペンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題は、以下に述べる発明により解決される。
即ち、本発明に係る飲料水ディスペンサは、前記の課題を解決する為に、飲料水を供給するボトルと、前記ボトルを着脱自在に設置でき、前記飲料水を出水口から出水する本体部とを少なくとも備え、前記本体部には、出水前の前記飲料水を濾過する中空糸膜モジュールが少なくとも1つ設けられており、前記中空糸膜モジュールにおける中空糸膜は、親水性を有し、かつ、グラフト重合されていないものであることを特徴とする。
【0011】
グラフト重合は、中空糸膜が本来的に疎水性である場合に、これを親水性に改質することを目的として行われる。しかし、グラフト重合による改質が行われた中空糸膜モジュールを飲料水の濾過手段に用いると、濾過後の飲料水に味移りや臭いが付く原因になっていると推定する。そのため、本発明においては、前記構成の通り、飲料水の濾過手段としての中空糸膜モジュールにおいて、親水性を有し、かつ、グラフト重合されていない中空糸膜を備える構成としている。これにより、濾過後の飲料水の雑菌を除去ないし低減しつつ、味移りや臭いが付くのを防止することができる。
【0012】
前記の構成に於いては、前記中空糸膜が、親水性を有するポリスルフォン系中空糸膜であることが好ましい。尚、「ポリスルフォン系中空糸膜」とは、ポリスルフォン系高分子を主たる原料とした中空糸膜を意味する。
【0013】
さらに、前記の構成に於いて、前記本体部は、前記ボトルから供給される飲料水を貯留する貯留槽であって、当該飲料水を上側の層において常温で貯留すると共に、下側の層において冷却して貯留するものと、前記貯留槽より下方側に位置し、当該貯留槽から供給される飲料水を高温で貯留する温水槽と、前記出水口と前記貯留槽とを接続し、当該貯留槽に貯留されている冷却された飲料水を流動させるための冷却水供給管とを備え、前記中空糸膜モジュールは、前記冷却水供給管の任意の位置に設けられており、前記貯留槽から供給される冷却水を濾過するものであることが好ましい。
【0014】
また、前記の構成に於いて、前記本体部は、前記ボトルから供給される飲料水を常温で貯留する他の貯留槽と、前記他の貯留槽より下方側に位置し、当該他の貯留槽から供給される飲料水を冷却して貯留する冷却水槽と、前記冷却水槽より下方側に位置し、前記他の貯留槽から供給される飲料水を高温で貯留する温水槽とを備え、前記中空糸膜モジュールは、前記他の貯留槽と冷却水槽の間に設けられ、かつ、前記他の貯留槽から供給される飲料水を濾過するものであることが好ましい。
【0015】
また、前記の構成に於いて、前記本体部は、前記ボトルから供給される飲料水を常温で貯留する他の貯留槽と、前記他の貯留槽より下方側に位置し、当該他の貯留槽から供給される飲料水を冷却して貯留する冷却水槽と、前記冷却水槽より下方側に位置し、前記他の貯留槽から供給される飲料水を高温で貯留する温水槽と、前記他の貯留槽に貯留されている常温の飲料水を前記冷却水に供給する供給管とを備え、前記中空糸膜モジュールは、前記供給管の任意の位置に設けられており、前記他の貯留槽から供給される常温の飲料水を濾過するものであることが好ましい。
【0016】
また、前記の構成に於いて、前記本体部は、前記ボトルから飲料水を取水するための取水管を備え、前記中空糸膜モジュールは、前記取水管の任意の位置に設けられており、前記ボトルから取水する飲料水を濾過するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
本発明の飲料水ディスペンサは、親水性を有し、かつ、グラフト重合されていない中空糸膜モジュールを備えているので、採水される飲料水の雑菌を単に除去又は低減するだけでなく、当該グラフト重合された樹脂由来の味移りや臭いが付くのを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る飲料水ディスペンサの全体構成を表す断面模式図である。
図2】前記飲料水ディスペンサにおける中空糸膜モジュールの全体構成を表す断面模式図である。
図3】前記飲料水ディスペンサの全体構成を表す正面図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る飲料水ディスペンサの全体構成を表す断面模式図である。
図5】本発明の実施の形態3に係る飲料水ディスペンサの全体構成を表す断面模式図である。
図6】本発明の実施の形態4に係る飲料水ディスペンサの全体構成を表す断面模式図である。
図7】実施例及び比較例で用いた実験装置の全体構成を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る飲料水ディスペンサについて、以下に説明する。図1は、実施の形態1に係る飲料水ディスペンサの全体構成を示す断面模式図である。図2は、前記飲料水ディスペンサにおける中空糸膜モジュールの全体構成を表す断面模式図である。図3は、前記飲料水ディスペンサの全体構成を表す正面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態の飲料水ディスペンサ10は、飲料水15を供給するためのボトル11と、当該ボトル11を着脱自在に設置することが可能な本体部12とを少なくとも備える構成である。
【0021】
本体部12は、飲料水15を出水する出水口13、ボトル11から供給される飲料水を貯留する貯留槽14、貯留槽14より下方側に設けられている温水槽16、出水口13と貯留槽14を接続する冷却水供給管17、及び冷却水供給管17に設けられた中空糸膜モジュール18を主として備える。
【0022】
ボトル11は、注水口36が下向きとなる状態で、本体部12の上部における注水口受け19に取り付けられる。注水口受け19の中央部には、ボトル11の注水口36に差し込み、飲料水15を取り入れるための取水管20が立設されている。取水管20によって取り込まれた飲料水15は、貯留槽14に貯留される。尚、ボトル11の構成材料としては特に限定されず、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等が挙げられる。
【0023】
貯留槽14は、ボトル11から供給された飲料水15を、その内部において、常温の飲料水と一定の温度に冷却された冷却水に区分して貯留する。より詳細には、貯留槽14の内部には、板状のセパレータ21が設けられており、当該セパレータ21の上側では、飲料水を常温で貯留する常温水層14aが設けられ、下側では、飲料水を冷却して貯留する冷却水層14bが設けられている。貯留槽14の外周には、セパレータ21よりも下側に対応する部分に、冷却手段(図示しない)が設けられており、これにより、冷却水層14bに貯留される飲料水を冷却することができる。
【0024】
貯留槽14には、出水口13と連通する冷却水供給管17が接続されている。冷却水供給管17は貯留槽14の底部に接続されているので、当該貯留槽14における冷却水層14bの冷却水のみが冷却水供給管17を流れる構造となっている。
【0025】
貯留槽14の天井部には、フィルタが内蔵された外部連通部34が設けられている。貯留槽14から常温の飲料水や冷却水が取り出され、又は温水槽16から温水が取り出される際に、外部連通部34から外気を取り入れることにより、貯留槽14内の圧力が低下するのを防止することができる。その結果、常温水層14aに貯留されている飲料水の水位を無理なく下降させることができる。また、貯留槽14にボトル11から飲料水15が供給される際に、当該貯留槽14内部の空気を、外部連通部34を介して排出することにより、貯留槽14内の圧力が上昇するのを抑制することができる。これにより、貯留槽14に飲料水を無理なく貯留させることができる。尚、外部連通部34には前記フィルタが設けられているので、貯留槽14の内部に雑菌等が侵入するのを防止することができる。
【0026】
冷却水供給管17には、中空糸膜モジュール18が設けられている。ここで、中空糸膜モジュール18は、図2に示すように、メインケース26内部に封止材23により液密に固定された中空糸膜22からなる濾材が設けられた構造となっている。中空糸膜22は、上流側(1次側)で屈曲しており、その両端が下流側(2次側)の封止材23で固定されるように設けられている。
【0027】
貯留槽14から冷却水供給管17を流れてきた原水としての冷却水は、冷却水入口24から中空糸膜モジュール18内に流れ込み、中空糸膜22により濾過され、濾過水として濾過水出口25から流れ出る。これにより、冷却水の雑菌の除去が可能になる。尚、原水を流す方向を逆向き、すなわち、2次側から1次側の方向にした場合には、圧損が大きくなり過ぎ、ほとんど流れなくなる。
【0028】
中空糸膜22は多孔質であり、管状の構造を有している。また、中空糸膜22としては、親水性を有しており、かつ、グラフト重合がなされていないものであれば、特に限定されない。そのような中空糸膜22としては、例えば、本来的にその性質が親水性である中空糸膜や、親水性が付与された中空糸膜が挙げられる。前記本来的にその性質が親水性である中空糸膜としては、例えば、セルロース系、ポリビニルアルコール系、エチレン・ビニルアルコール共重合体系、ポリアクリロニトリル系、ポリアミド系等の各種材料からなるものが挙げられる。前記親水性が付与された中空糸膜としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)系、ポリエーテル系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリスルフォン系、ポリ四弗化エチレン系、ポリビニリデンフロライド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系等の各種材料からなるものであって、コーティング、オゾン、プラズマ、紫外線(UV)、電子線(EB)、化学的エッチング、金属酸化物の蒸着又はスパッタリング処理等の表面処理が施されたものが挙げられる。また、これらの各種材料に、親水性ポリマーが添加されたブレンド等によるものが挙げられる。
【0029】
ポリスルフォン系高分子としては、例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン等が挙げられる。
【0030】
ポリスルフォン系中空糸膜の親水化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーを適正量含有させることにより、ポリスルフォン系中空糸膜に親水性を付与する方法等が挙げられる。
【0031】
中空糸膜22の有効膜面積は0.1m以上が好ましく、0.1m〜0.5mがより好ましい。前記有効膜面積を0.1m以上にすることにより、雑菌等の濾過性能の維持が図れ、濾過寿命が過度に短くなり過ぎるのを防止することができる。その一方、前記有効膜面積の上限については、有効膜面積が大きい程、濾過寿命が伸びるため特に限定されない。但し、有効膜面積が0.5mを超えると、濾過性能が飽和し、濾過効果の向上があまり見込めない。
【0032】
中空糸膜22の孔径は0.01μm〜0.45μmが好ましく、0.01μm〜0.1μmがより好ましい。前記孔径を0.01μm以上にすることにより、目詰まりや圧力損失が大きくなり、流れにくくなるのを抑制することができる。その一方、前記孔径を0.45μm以下にすることにより、雑菌等の除去を可能にする。
【0033】
中空糸膜22の外径は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。通常は、20μm〜3000μmである。また、中空糸膜22の膜厚は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。通常は、5μm〜1000μmである。さらに中空糸膜22のメインケース26への充填率は30%〜50%が好ましい。前記充填率を30%以上にすることにより、濾過性能の低下を抑制することができる。その一方、前記充填率を50%以下にすることにより、製造工程上、作製が困難になるのを防止することができる。
【0034】
封止材23としては特に限定されず、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等からなる従来公知のものを採用することができる。
【0035】
また、冷却水供給管17には、中空糸膜モジュール18の上流側にポンプ27が設けられている。これにより、冷却水を一定以上の流量で圧送することができる。但し、本実施の形態はこの態様に限定されず、ポンプ27を省略しても冷却水の採水可能である。また、ポンプ27は中空糸膜モジュール18の下流側に設けてもよい。
【0036】
さらに、冷却水供給管17は冷水出水口13aに接続されており、これにより中空糸膜モジュール28により雑菌が除去又は低減され、かつ、味移りや臭いが抑制された冷却水を出水することができる(図3参照)。
【0037】
温水槽16は、貯留槽14の下方に位置している。温水槽16には、貯留された飲料水を加熱するためのヒータ(図示しない)が設けられており、これにより、温水状態で貯留されている。また、温水槽16には、貯留槽14における常温水層14aから常温の飲料水が供給されるのを可能にするための供給管29が設けられている。供給管29の入口開口29aは、貯留槽14の常温水層14aに対して開口している。また、出口開口29bは、温水槽16の底部側に開口している。さらに、温水槽16は、温水出水口13bと温水供給管28を介して接続されており、これにより、当該温水出水口13bから温水の出水が可能となっている(図3参照)。
【0038】
尚、本実施の形態の飲料水ディスペンサ10は、中空糸膜モジュール18を出水口13の上流側の直前に設置するだけで、採水される飲料水に味移りや臭いが付くのを抑制し、雑菌の除去又は低減が可能となる。従って、複雑な装置構成となるのを回避することができる。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る飲料水ディスペンサについて、図4に基づき以下に説明する。図4は、実施の形態2に係る飲料水ディスペンサの全体構成を示す断面模式図である。尚、前記実施の形態1の飲料水ディスペンサと同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
図4に示すように、本実施の形態の飲料水ディスペンサ30は、前記実施の形態1の飲料水ディスペンサ10と比較して、常温の飲料水と、冷却水を別々の槽に分けて貯留させ、両者の間を中空糸膜モジュール18が連通させる様に配置した点が異なる。また、冷却水槽33の内部の圧力変動を緩和するための排圧管35を設けた点が異なる。
【0041】
より具体的には、飲料水ディスペンサ30は、本体部31において、他の貯留槽32と、他の貯留槽32より下方側に位置する冷却水槽33と、冷却水槽33より下方側に位置する温水槽16とを主として備える。
【0042】
他の貯留槽32は、ボトル11から供給される飲料水を、常温で貯留する。冷却水槽33は、他の貯留槽32から中空糸膜モジュール18を介して供給された常温の飲料水を冷却し、冷却水として貯留する。また、他の貯留槽32の天井部に設けられた外部連通部34を設けることにより、当該外部連通部34を介して外部の空気を取り込むことが可能になる。その結果、ボトル11の内部が陰圧となって、当該ボトル11から他の貯留槽32の飲料水15の供給量が低下するのを、防止することができる。
【0043】
冷却水槽33に貯留される冷却水は、中空糸膜モジュール18により濾過され、雑菌が除去又は低減されたものにできる。また、中空糸膜モジュール18は、前述の通り、親水性を有し、かつ、グラフト重合されていない中空糸膜22を備えたものであるので、冷却水に味移りや臭いが付くのを防止することができる。
【0044】
冷却水槽33には、その底部に、出水口13と連通するための冷却水供給管17が接続されている。冷却水供給管17には、ポンプ27が設けられており、これにより、冷却水供給管17を流れる冷却水について、一定以上の流量の確保が可能になっている。しかし、本実施の形態はこの態様に限定されず、ポンプ27を設置しなくても採水が可能である。
【0045】
排圧管35は、冷却水槽33の頂部と貯留槽32の頂部を接続している。排圧管35は、冷却水槽33の内部の水圧が上昇し、圧力が上昇したときに、当該圧力変動を緩和するものである。排圧管35の下側は、冷却水が満たされており、冷却水槽33の内圧が特に高く無い状態では、当該冷却水の水位は貯留槽32の水位と同じとなっている。また、排圧管35の上側には、空気が満たされている。そして、他の貯留槽32に貯留されている飲料水が中空糸膜モジュール18で濾過されて、冷却水槽33に新たに貯留される冷却水が増えると、当該冷却水槽33内の内圧が上昇する。このとき、排圧管35では、冷却水槽33で上昇した内圧分だけ、下側に満たされていた冷却水の水位が上昇し、上側の空気は他の貯留槽32の空気層43に排出される。さらに、他の貯留槽32においては、外部連通部34を介して外部に空気を排出することが可能なため、これにより、他の貯留槽32の内部においても圧力が上昇するのを防止することができる。その結果、排圧管35は、冷却水槽33の圧力変動を緩和することができる。
【0046】
また、温水槽16には、他の貯留槽32から常温の飲料水が供給されるのを可能にするための供給管29が設けられている。供給管29は、その入口開口29aが他の貯留槽32に対して開口しており、出口開口29bが温水槽16の底部側に開口している。
【0047】
(実施の形態3)
本実施の形態3に係る飲料水ディスペンサについて、図5に基づき以下に説明する。図5は、実施の形態3に係る飲料水ディスペンサの全体構成を示す断面模式図である。尚、前記実施の形態1及び2の飲料水ディスペンサと同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
図5に示すように、本実施の形態の飲料水ディスペンサ40は、前記実施の形態2の飲料水ディスペンサ30と比較して、他の貯留槽32と冷却水槽33を供給管42で接続し、当該供給管42に中空糸膜モジュール18を設けた点が異なる。
【0049】
供給管42は、他の貯留槽32における常温の飲料水が貯留されている水層部分に入口開口42aが設けられている。中空糸膜モジュール18は、供給管42の任意の位置に設けることができる。これにより、冷却水槽33に貯留される冷却水は、中空糸膜モジュール18により予め濾過され、雑菌が除去又は低減されたものにできる。また、中空糸膜モジュール18は、前述の通り、親水性を有し、かつ、グラフト重合されていない中空糸膜22を備えたものであるので、飲料水に味移りや臭いが付くのを防止している。
【0050】
尚、冷却水供給管17には、ポンプ27が設けられており、これにより、冷却水を一定以上の流量で圧送することができる。しかし、本実施の形態はこの態様に限定されず、ポンプ27を設置しなくても冷却水の採水が可能である。また、ポンプ27は、供給管42に設けてもよい。この場合、ポンプ27は、中空糸膜モジュール18の上流側又は下流側の何れに設けてもよい。
【0051】
(実施の形態4)
本実施の形態4に係る飲料水ディスペンサについて、以下に説明する。図6は、実施の形態4に係る飲料水ディスペンサの全体構成を示す断面模式図である。尚、前記実施の形態1〜3の飲料水ディスペンサと同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、本実施の形態の飲料水ディスペンサ50は、前記実施の形態1の飲料水ディスペンサ10と比較して、中空糸膜モジュール18が取水管20に設けられた点が異なる。
【0053】
本実施の形態に於いて、中空糸膜モジュール18は、取水管20の任意の位置に設けることができる。これにより、常温水層14aに貯留される飲料水、冷却水槽33に貯留される冷却水、及び温水槽16に貯留される温水は、中空糸膜モジュール18により予め濾過され、雑菌が除去又は低減されたものにできる。また、中空糸膜モジュール18は、前述の通り、親水性を有し、かつ、グラフト重合がなされていない中空糸膜22を備えたものであるので、飲料水に味移りや臭いが付くのを防止している。
【0054】
尚、本実施の形態では、実施の形態1の飲料水ディスペンサ10において、冷却水供給管17に設けた中空糸膜モジュール18を、取水管20に設ける場合について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、実施の形態2の飲料水ディスペンサ30や実施の形態3の飲料水ディスペンサ40に対しても、それぞれの取水管20に中空糸膜モジュール18を設けることにより適用可能である。
【実施例】
【0055】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている材料等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0056】
(実施例1)
本実施例においては、図7に示す実験装置を用いて、ボトル11に充填されているミネラルウォーター(商品名;AW・ウォーター 北アルプスの天然水、エア・ウォーター株式会社製)の濾過を行った。すなわち、ミネラルウォーターを充填したボトル11と、これを濾過した濾過水を受けるための容器51を供給管52で接続し、当該供給管52には中空糸膜モジュール50を設けた。また、中空糸膜モジュール50の上流側にはポンプ27も設置した。さらに、中空糸膜モジュール50としては、下記表1に示す形状、有効膜面積及び孔径を有する、ポリスルフォン系中空糸膜モジュール(型番;AWPSF01、株式会社キッツ マイクロフィルター製)を用いた。
【0057】
中空糸膜モジュール50を用いた濾過は、次の通り行った。すなわち、ポンプ27を用いて、ボトル11内に貯留されている常温(20〜25℃)のミネラルウォーターを圧送し、中空糸膜モジュール50に濾過させ、最初の200mlの濾過水を採水した。
【0058】
次に、採水した濾過水についてTOC(Total Organic Carbon)濃度分析を行い、中空糸膜モジュール50から溶出している有機成分の確認を行った。
【0059】
具体的には、先ず、フタル酸水素カリウム2.125gを精製水に溶かして1Lのフタル酸溶液を作製し、これを全有機炭素標準原液とした(この溶液1mlは、炭素1mgを含む)。さらに、この全有機炭素標準原液である前記フタル酸溶液を、精製水でさらに100倍に希釈し、得られたフタル酸溶液を全有機炭素標準液とした(この溶液1mlは、炭素0.01mgを含む)。
【0060】
次いで、全有機炭素標準液を段階的にメスフラスコ4個以上に採り、それぞれに精製水を加えて一定量とした。さらに、下記の装置の補正方法に従い検量線に相当する補正を行った。
【0061】
濾過水及び濾過前の原水の一定量を全有機炭素定量装置(型番;TOC−VCSH、(株)島津製作所製)で測定し、検水中の全有機炭素の濃度を算定した。結果を下記表2に示す。
【0062】
また、前述の様にして採水した濾過水について、官能試験も実施した。官能試験は、濾過水に、中空糸膜モジュール50の樹脂由来の味うつりや臭いが生じているか否かについて行った。
【0063】
すなわち、年齢が20代から50代の男女21名を対象に、採水した常温の濾過水を試飲させ、味及び臭いに違和感があるか否かを評価させた。結果を下記表3に示す。
【0064】
(比較例1)
本比較例においては、中空糸膜モジュール50として、下記表1に示す形状、有効膜面積及び孔径を有する、ポリエチレン系中空糸膜モジュールを用いた。また、中空糸膜の構成材料としては、下記化学式で表されるポリエチレンであって、グラフト重合により親水化されたものを採用した。それ以外は、前記実施例1と同様にして、ボトル11内に充填されているミネラルウォーターの濾過を行った。
【0065】
【化1】
【0066】
また、実施例1と同様にしてTOC濃度分析及び官能試験も行った。結果を下記表2及び表3に示す。但し、官能試験においては、年齢が20代から50代の男女20名を対象に行った。
【0067】
(結果)
表2から分かる通り、比較例1のポリエチレン系中空糸膜モジュールでは、TOC濃度が2.26mg/Lであるのに対し、実施例1のポリスルフォン系中空糸膜モジュールでは、TOC濃度が0.63mg/Lであり、有機成分の溶出が抑制されていることが確認された。
【0068】
表3から分かる通り、実施例1のポリスルフォン系中空糸膜モジュールでは、味に違和感があったパネラーの人数は21人中4人であり、比較例1のポリエチレン系中空糸膜モジュールでは、20人中19人が味に違和感があったと回答した。本結果について、有意差検定を行った結果(Statcel3ソフト((有)オーエスエム出版製)を使用し、フィッシャーの直接確率法で算出)、p値はp<0.001であり、実施例1と比較例1の結果は統計学的に有意な差があると言える。
【0069】
このことから、グラフト処理を行っていないポリスルフォン系中空糸膜モジュールに通水したミネラルウォーター(濾過水)においては、ポリエチレン系中空糸膜モジュールに通水したミネラルウォーターよりも、味移りや臭いの発生源と推定される有機系成分が少ないことが確認された。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【符号の説明】
【0073】
10、30、40、50 飲料水ディスペンサ
11 ボトル
12、31 本体部
13 出水口
14 貯留槽
14a 常温水層
14b 冷却水層
15 飲料水
16 温水槽
17 冷却水供給管
18、28、50 中空糸膜モジュール
19 注水口受け
20 取水管
21 セパレータ
22 中空糸膜
23 封止材
24 冷却水入口
25 濾過水出口
26 メインケース
27 ポンプ
28 温水供給管
29 供給管
29a 入口開口
29b 出口開口
32 貯留槽
33 冷却水槽
34 外部連通部
35 排圧管
36 注水口
42 供給管
42a 入口開口
43 空気層
51 容器
52 供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7