特許第6639403号(P6639403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6639403-活性エネルギー線硬化性組成物 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6639403
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20200127BHJP
   C08F 283/12 20060101ALI20200127BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20200127BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20200127BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20200127BHJP
   C08G 77/20 20060101ALN20200127BHJP
【FI】
   C08G59/20
   C08F283/12
   C09D163/00
   C09D7/40
   B32B27/38
   !C08G77/20
【請求項の数】12
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-552124(P2016-552124)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2015077770
(87)【国際公開番号】WO2016052636
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-203949(P2014-203949)
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 淳司
(72)【発明者】
【氏名】深海 洋樹
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/031985(WO,A1)
【文献】 特表2011−518666(JP,A)
【文献】 特開2014−118557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08G 77/00−77/62
C08L 83/00−83/16
C09D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)および下記一般式(II)で表される加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)を加水分解および縮合させて得られる共縮合物(a)と、重合性不飽和モノマー(b)とを反応せしめてなる共重合体(A)、および光酸発生剤(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、共縮合物(a)中の重合性不飽和基が、1分子中に0.1〜3.0個含有されることを特徴とする、活性エネルギー線硬化性組成物。
一般式(I):
−(SiR(OR3−a) (I)
(式中、Rは末端がエポキシ構造含有基で置換された炭素数1〜10のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
一般式(II):
−(SiR(OR3−a) (II)
(式中、Rは重合性不飽和基を末端に有する炭素数1〜10の置換アルキル基、アルケニル基、または非置換もしくは置換アリール基から選ばれ、エポキシ構造含有基を有さない基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
【請求項2】
重合性不飽和モノマー(b)が、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリール基を有するモノマーおよびスチリル基を有するモノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
重合性不飽和モノマー(b)が、少なくとも1種類以上の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマーおよび/またはエポキシ基を有する重合性不飽和モノマーを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
共重合体(A)100質量部に対して、光酸発生剤(B)を0.01〜10質量部含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
光酸発生剤(B)が、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
光酸発生剤(B)のカウンターアニオンが、フルオロフォスフェート系アニオンまたはフルオロアンチモネート系アニオンであることを特徴とする、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、顔料(C)を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項8】
さらに、光増感剤(D)を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項9】
光増感剤(D)が、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体またはベンゾフェノン誘導体であることを特徴とする、請求項8に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化被膜を形成することを特徴とする、硬化塗膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化被膜を形成してなる硬化物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材表面に形成された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性、耐擦傷性、耐薬品性に優れる一液型の活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックや金属の成型体、フィルム、シート等に耐擦傷性や耐薬品性、耐候性を付与する目的で、様々なコーティング剤が塗装されている。中でも、近年、硬化が早く作業性に優れ、更に耐擦傷性、耐薬品性に優れた塗膜を形成する活性エネルギー線硬化性コーティング剤が多く用いられている。
【0003】
これらの活性エネルギー線硬化性コーティング剤として、多官能性モノマーやオリゴマーを主な構成成分とし、光ラジカル発生剤を用いてUV硬化するものが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、光ラジカル発生剤を用いる活性エネルギー線硬化性コーティング剤は、十分なエネルギーの活性エネルギー線を照射されなければ、目的とする塗膜物性を有する硬化塗膜を得ることができない。
【0004】
すなわち、透明コーティング剤の場合でも、立体形状を有する被塗物では活性エネルギー線が照射されにくい部位が存在する為、これらの部位では硬化不良により目的とする塗膜物性が得られない問題がある。
【0005】
また、顔料を含有するコーティング剤では、顔料により活性エネルギー線が遮られる為、塗膜内部まで十分に活性エネルギー線が照射され難くなり、硬化不良により目的とする塗膜物性が得られない問題がある。
【0006】
さらには、光ラジカル発生剤を用いる活性エネルギー線硬化性コーティング剤より得られる塗膜は、耐候性に劣る問題もある。
【0007】
そこで、耐候性を向上させる目的で、ケイ素系化合物を含む活性エネルギー線硬化性コーティング剤の報告がなされている(特許文献2〜4参照)が、分子間架橋を形成する結合がシロキサン結合である為、アルカリによる加水分解を容易に受け、耐アルカリ性が十分とは言えない。このため、活性エネルギー線が部分的に遮蔽される様な条件であっても、硬化性に優れ、且つ容易に取り扱いができ、さらには得られた塗膜が耐擦傷性、耐薬品性に優れたコーティング剤及びそれを塗装した塗装体の開発が求められていた。
【0008】
これに対して、加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル系共重合体、特定の光酸発生剤および/または特定の光塩基発生剤を含有するコーティング用樹脂組成物を用いることにより、立体形状を有する基材や非照射部を有する基材に塗装し、高圧水銀灯などを用いたUV照射により、活性エネルギー線が照射され難い部位であっても短時間で硬化塗膜が形成され、耐候性に優れ、耐溶剤性、耐薬品性が良好な塗装体が得られる方法が開示されている(特許文献5参照)。しかしながら、上記の方法では、得られた塗装体の耐擦傷性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開平5−230397号(1993年9月7日公開)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2000−109695号(2000年4月18日公開)」
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2009−73944号(2009年4月9日公開)」
【特許文献4】国際公開第2014/061630号パンフレット(2014年4月24日公開)
【特許文献5】日本国公開特許公報「特開2014−118557号(2014年6月30日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、活性エネルギー線硬化塗料において、透明コーティング剤であっても被塗物の立体形状に起因する活性エネルギー線が照射され難い部位での硬化や、塗膜内部まで活性エネルギー線が照射され難い顔料を含有するコーティング剤の硬化においても、硬化性、耐擦傷性、耐薬品性、耐候性が良好な塗装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、エポキシ構造含有基および重合性不飽和基を有する共縮合物と、重合性不飽和モノマーとを反応せしめてなる共重合体、および光酸発生剤を含有する活性エネルギー線硬化性組成物とすることにより、上記のような活性エネルギー線が照射され難い状況においても、耐擦傷性、耐薬品性、耐候性が良好な塗装体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、以下のとおりである。
[1] 下記一般式(I)で表される加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)および下記一般式(II)で表される加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)を加水分解および縮合させて得られる共縮合物(a)と、重合性不飽和モノマー(b)とを反応せしめてなる共重合体(A)、および光酸発生剤(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、共縮合物(a)中の重合性不飽和基が、1分子中に0.1〜3.0個含有されることを特徴とする、活性エネルギー線硬化性組成物。
一般式(I):
−(SiR(OR3−a) (I)
(式中、Rは末端がエポキシ構造含有基で置換された炭素数1〜10のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
一般式(II):
−(SiR(OR3−a) (II)
(式中、Rは重合性不飽和基を末端に有する炭素数1〜10の置換アルキル基、アルケニル基、または非置換もしくは置換アリール基から選ばれ、エポキシ構造含有基を有さない基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
[2] 重合性不飽和モノマー(b)が、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリール基を有するモノマーおよびスチリル基を有するモノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、[1]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[3] 重合性不飽和モノマー(b)が、少なくとも1種類以上の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマーおよび/またはエポキシ基を有する重合性不飽和モノマーを含むことを特徴とする、[1]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[4] 共重合体(A)100質量部に対して、光酸発生剤(B)を0.01〜10質量部含有する、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[5] 光酸発生剤(B)が、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[6] 光酸発生剤(B)のカウンターアニオンが、フルオロフォスフォネート系アニオンまたはフルオロアンチモネート系アニオンであることを特徴とする、[5]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[7] さらに、顔料(C)を含有することを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[8] さらに、光増感剤(D)を含有することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[9] 光増感剤(D)が、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体またはベンゾフェノン誘導体であることを特徴とする、[8]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化被膜を形成することを特徴とする、硬化塗膜の形成方法。
[11] [1]〜[9]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化被膜を形成してなる硬化物。
[12] [1]〜[9]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材表面に形成された積層体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、活性エネルギー線硬化塗料において、透明コーティング剤であっても被塗物の立体形状に起因する活性エネルギー線が照射され難い部位での硬化や、塗膜内部まで活性エネルギー線が照射され難い顔料を含有するコーティング剤の硬化においても、硬化性、耐擦傷性、耐薬品性、耐候性が良好な塗装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、表6および8〜10で作成した樹脂組成物を塗装したABS板の一部を遮蔽板で遮蔽し、活性エネルギー線を照射している図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の詳細について述べる。
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)を加水分解および縮合させて得られる重合性不飽和基を有する共縮合物(a)と、重合性不飽和モノマー(b)とを反応せしめてなる共重合体(A)、および光酸発生剤(B)を含有することを特徴とする。
【0017】
<共重合体(A)>
本発明における共重合体(A)は、下記一般式(I)で表される加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)および下記一般式(II)で表される加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)を加水分解および縮合させて得られる重合性不飽和基を有する共縮合物(a)と、重合性不飽和モノマー(b)とを反応せしめてなる共重合体である。
【0018】
加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)は、下記一般式(I):
−(SiR(OR3−a) (I)
(式中、Rは末端がエポキシ構造含有基で置換された炭素数1〜10のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
で表される。
【0019】
加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)は、下記一般式(II):
−(SiR(OR3−a) (II)
(式中、Rは重合性不飽和基を末端に有する炭素数1〜10の置換アルキル基、アルケニル基、または非置換もしくは置換アリール基から選ばれ、エポキシ構造含有基を有さない基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリ−ル基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、aは0〜2の整数である。)
で表される。
【0020】
一般式(I)のRにおける末端がエポキシ構造含有基で置換されたアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、または2−エチルヘキシル基、等の末端がエポキシ構造含有基で置換されたものが挙げられる。一般式(I)のRにおけるエポキシ構造含有基としては、エポキシ基を含有してさえすればよく、例えば、エポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基、等が挙げられる。
【0021】
一般式(I)のRは、末端が3,4−エポキシシクロヘキシル基で置換された炭素数1〜10のアルキル基であってもよく、例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ヘキシル基であってもよい。
【0022】
一般式(I)および(II)のRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基である。このような炭化水素としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0023】
一般式(I)および(II)のRは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
【0024】
一般式(I)で表される具体的な化合物としては、1−グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、1−グリシジルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1−グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、1−グリシジルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルメチルジメトキシシラン2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−グリシジルオキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシジルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシジルオキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシジルオキシブチルメチルジエトキシシラン、6−グリシジルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6−グリシジルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6−グリシジルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6−グリシジルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8−グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン、8−グリシジルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8−グリシジルオキシオクチルトリエトキシシラン、8−グリシジルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、等のグリシジル基含有シラン;
1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジメトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジエトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルメチルジメトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルメチルジエトキシシラン、6−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ヘキシルトリメトキシシラン、6−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ヘキシルメチルジメトキシシラン、6−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ヘキシルトリエトキシシラン、6−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ヘキシルメチルジエトキシシラン、8−(3,4−エポキシシクロヘキシル)オクチルトリメトキシシラン、8−(3,4−エポキシシクロヘキシル)オクチルメチルジメトキシシラン、8−(3,4−エポキシシクロヘキシル)オクチルトリエトキシシラン、8−(3,4−エポキシシクロヘキシル)オクチルメチルジエトキシシラン、等の脂環エポキシ基含有シラン;
エポキシトリメトキシシラン、エポキシメチルジメトキシシラン、エポキシトリエトキシシラン、エポキシメチルジエトキシシラン、1−エポキシメチルトリメトキシシラン、1−エポキシメチルメチルジメトキシシラン、1−エポキシメチルトリエトキシシラン、1−エポキシメチルメチルジエトキシシラン、2−エポキシエチルトリメトキシシラン、2−エポキシエチルメチルジメトキシシラン、2−エポキシエチルトリエトキシシラン、2−エポキシエチルメチルジエトキシシラン、3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、3−エポキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−エポキシプロピルトリエトキシシラン、3−エポキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−エポキシブチルトリメトキシシラン、4−エポキシブチルメチルジメトキシシラン、4−エポキシブチルトリエトキシシラン、4−エポキシブチルメチルジエトキシシラン、6−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、6−エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、6−エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8−エポキシオクチルトリメトキシシラン、8−エポキシオクチルメチルジメトキシシラン、8−エポキシオクチルトリエトキシシラン、8−エポキシオクチルメチルジエトキシシラン、等のエポキシ基含有シラン、等が挙げられる。
【0025】
特に、入手性の観点から好適な化合物としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランや1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0026】
上述のように、加水分解性シリル基を有するシラン化合物を加水分解および縮合させやすいという観点から、一般式(I)および(II)におけるRのアルキル基の炭素数は1〜3が好ましく、最も好ましくは1である。
【0027】
また、活性エネルギー線照射時のエポキシ構造含有基の反応性という観点から、一般式(I)で表される化合物においては、エポキシ構造含有基とケイ素を結ぶ炭素数が重要であり、その炭素数は1〜4が好ましく、更に好ましくは2または3である。
【0028】
一般式(II)のRは、重合性不飽和基を末端に有する炭素数1〜10の置換アルキル基、アルケニル基、非置換または置換アリール基から選ばれ、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有さない基であり、重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0029】
が(メタ)アクリロイル基置換アルキル基であるシラン化合物としては、例えば、
(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルジメチルメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルメチルジエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルジメチルエトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルメチルジメトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルジメチルメトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルメチルジエトキシシラン、5−(メタ)アクリロキシペンチルジメチルエトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルメトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジエトキシシラン、6−(メタ)アクリロキシヘキシルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0030】
がアルケニル基であるシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン等があげられる。
【0031】
が非置換アリール基であるシラン化合物としては、例えば、アリールトリメトキシシラン、アリールトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0032】
が置換アリール基であるシラン化合物としては、例えば、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、9p−スチリルジメチルメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルメチルジエトキシシラン、p−スチリルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、熱ラジカル重合反応性の点から、Rとしては、(メタ)アクリロイル基置換アルキル基が好ましい。
【0034】
共縮合物(a)は、エネルギー活性線照射時の架橋密度を高め、硬化物の物性(特に耐擦傷性)が高くなる観点から、1分子中に含有されるエポキシ構造含有基が、4個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、6個以上であることがさらに好ましい。
【0035】
共縮合物(a)は、1分子中に含有される重合性不飽和基が、0.1個以上3.0個以下であることが好ましく、0.3個以上2.0個以下であることがより好ましく、0.5個以上1.5個以下であることがさらに好ましい。
【0036】
1分子中に有する重合性不飽和基が0.1個未満では、重合性不飽和モノマー(b)との反応が不十分となる傾向があり、3.0個より多いと、重合性不飽和モノマー(b)との重合反応中にゲル化する可能性が極めて高くなる。
【0037】
また、共縮合物(a)は、1分子中に含有される重合性不飽和基が、0.1個以上1個以下であってもよく、0.3個以上0.8個以下であってもよく、0.5個以上0.7個以下であってもよい。
【0038】
ここで、共縮合物(a)中の1分子中に含有されるエポキシ構造含有基および重合性不飽和基の個数は、下記に示した式から計算された数値である。
エポキシ構造含有基の個数=S×M/(M×S+MII×T−X}
重合性不飽和基の個数=T×M/(M×S+MII×T−X}
:共縮合物(a)の重量平均分子量
:加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)の分子量
II:加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)の分子量
S:加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)のモル%
T:加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)のモル%
X:加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)、(II)中の加水分解性シリル基が全て加水分解および縮合反応した時に、それぞれの化合物から脱離するアルキル基または水素原子と酸素原子の質量。
【0039】
なお、例えば、シラン化合物(I)としてβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを用い、シラン化合物(II)としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた場合、X=69である。また、例えば、シラン化合物(I)として3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを用い、シラン化合物(II)としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた場合、X=69である。
【0040】
共縮合物(a)の重量平均分子量は、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上がさらに好ましく、2,000以上4,000以下が特に好ましい。また、重量平均分子量は、20,000以下が好ましく、18,000以下がより好ましく、16,000以下がさらに好ましく、14,000以下が特に好ましく、12,000以下が最も好ましい。
【0041】
共縮合物(a)の重量平均分子量が500以上であると、揮発性がなく、硬化前に一部あるいは全量が揮発してしまう虞がない。また、重量平均分子量が高いほど耐衝撃性が向上する傾向がある。重量平均分子量が20,000以下であれば、共重合体(A)の粘度が高くなりすぎず、作業性に優れる傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPCで測定した重量平均分子量である。
【0042】
本発明におけるエポキシ構造含有基および重合性不飽和基を有する共縮合物(a)と反応せしめる重合性不飽和モノマー(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロ−ルモノ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド;
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシスチレンビニルトルエン、
東亞合成化学工業(株)製のアロニクス5700、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製のHE−10、HE−20、HP−1およびHP−2(以上、何れも末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマ−);
日本油脂(株)製のブレンマーPPシリ−ズ、ブレンマーPEシリ−ズ、ブレンマーPEPシリ−ズ等のポリアルキレングリコ−ル(メタ)アクリレート誘導体;
水酸基含有化合物とε−カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物PlaccelFM−1、FM−4(以上ダイセル化学工業(株)製)、TONEM−201(UCC社製)、HEAC−1(ダイセル化学工業(株)製)等のポリカーボネート含有ビニル系化合物などの水酸基含有ビニル系単量体および/またはその誘導体が挙げられる。
【0043】
さらに、重合性不飽和モノマー(b)としては、例えば、
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物などのリン酸エステル基含有(メタ)アクリル系化合物、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレ−トなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物;
スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル化合物;
無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物、これら酸無水物と炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖を有するアルコールまたはアミンとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレ−トなどのビニルエステルやアリール化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;
イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;
(メタ)アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルビニルエ−テル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他ビニル系化合物などが挙げられる。
【0044】
これらの中でも、硬化塗膜の耐傷性、耐薬品性、耐候性の観点から、重合性不飽和モノマー(b)が、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリール基を有するモノマーおよびスチリル基を有するモノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、同じ観点から、重合性不飽和モノマー(b)が、少なくとも1種類以上の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマーおよび/またはエポキシ基を有する重合性不飽和モノマーが含まれることが好ましい。
【0045】
加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
これらの加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマーは、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用しても良い。
【0047】
これらの中では、取扱いの容易さ、価格および重合安定性、並びに、得られる組成物の硬化性が優れるという点から、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が特に好ましい。
【0048】
エポキシ基を有する重合性不飽和モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド 1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのエポキシ基を有する重合性不飽和モノマーは、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用しても良い。価格、入手の容易さの点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
尚、加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマー、エポキシ基を有する重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独で用いてもよいし、併用しても良い。
【0050】
本発明においては、エポキシ基および重合性不飽和基を有する共縮合物(a)と重合性不飽和モノマー(b)とを反応させることにより、得られる共重合体(A)の分子量を増大させることができ、特に硬化性、耐擦傷性を向上することができる。
【0051】
本発明において、共重合体(A)における共縮合物(a)の比率としては、50重量%以上が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
【0052】
共重合体(A)における共縮合物(a)の比率が50重量%以上であれば、耐擦傷性が得られ易くなる傾向があり、90重量%以下であれば、活性エネルギー線が部分的に遮蔽されるような条件での硬化性が向上する傾向がある。
【0053】
本発明の共重合体(A)の製法の一例について、説明する。
【0054】
本発明の共重合体(A)は、例えば、加水分解性シリル基を有するシラン化合物(I)および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(II)を加水分解および縮合させたエポキシ基および重合性不飽和基を有する共縮合物(a)と、重合性不飽和モノマー(b)とをアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて、溶液重合法などにより共重合することによって製造することができる。
【0055】
本発明の共重合体(A)の重量平均分子量としては、10,000以上500,000以下が好ましく、15,000以上400,000以下がより好ましく、30,000以上300,000以下が特に好ましい。
【0056】
共重合体(A)の重量平均分子量が300,000以下であれば、粘性が低くなり、スプレー塗装などの際のレベリング性が向上し、塗膜の外観が損なわれにくい傾向にある。また、重量平均分子量が10,000以上であれば、ある程度の粘性を有し、立面基材に塗装した際に塗液が垂れ落ちるなどの不具合が生じにくい傾向にあり、更には、活性エネルギー線が部分的に遮蔽される様な条件での硬化性が向上する傾向がある。
【0057】
本発明の共重合体(A)の重量平均分子量は、100,000以上300,000以下であってもよく、120,000以上200,000以下であってもよい。
【0058】
なお、共重合体(A)の重合平均分子量は、共縮合体(a)を用いることにより増大させることができる。
【0059】
本発明の硬化性組成物中の共重合体(A)の割合が高い方が、耐擦傷性や耐薬品性に優れる塗膜が得られる傾向がある。硬化性組成物中に共重合体(A)が30〜99重量%で含有されることが好ましく、50〜99重量%がより好ましい。
【0060】
<光酸発生剤(B)>
本発明における(B)成分である光酸発生剤は、活性エネルギー線に暴露されることにより酸を発生する化合物であり、例えば、
トルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素などの強酸、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩またはセレニウム塩などのオニウム塩類;
鉄−アレン錯体類;シラノール−金属キレート錯体類;
ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネ−ト類、ベンゾインスルホネ−ト類などのスルホン酸誘導体;
有機ハロゲン化合物類など、特開平5−134412号公報に示される放射線の照射により酸を発生する化合物が挙げられる。
【0061】
スルホン酸誘導体としては、例えば、米国特許第4618564号公報に示されるベンソイントシレート、ニトロベンジルトシレート、コハク酸イミドトシルスルホネートなどのスルホン酸エステル類;米国特許第4540598号公報、特開平6−67433号公報に示されるα−(4−トシルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニドなどのオキシムスルホネ−ト類;特開平6−348015号公報に示されるトリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼンなど;特開昭64−18143号公報に示される9,10−ジアルコキシアントラセンスルホン酸ニトロベンジルエステルなど;N−(p−ドデシルベンゼンスルホニルオキシ)−1,8−ナフタルイミドなどが挙げられる。
【0062】
有機ハロゲン化合物類としては、例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどの特開昭55−32070号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭63−238339号公報に示されるハロゲン含有トリアジン化合物;特開平2−304059号公報に示される2−ピリジル−トリブロモメチルスルホンなどのハロゲン含有スルホン化合物;
トリス(2−クロロプロピル)ホスフェ−ト、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートなどのハロゲン化アルキルリン酸エステル;2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジンなどのハロゲン含有へテロ環状化合物;1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィンなどのハロゲン含有炭化水素化合物などが挙げられる。
【0063】
これらの光酸発生剤の中では、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩が、共重合体(A)との組成物の安定性が高く入手しやすいという点から好ましい。
【0064】
さらには、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨ−ドニウム塩のカウンターアニオンがフルオロフォスフォネート系アニオン、フルオロアンチモネート系アニオンまたはフルオロスルフォネ−ト系アニオンであることが、硬化が速く、プラスチック基材への付着性に優れるという点から好ましい。安全性を考慮すると、フルオロフォスフォネート系アニオンまたはフルオロスルフォネート系アニオンであることが特に好ましい。
【0065】
このような光酸発生剤としては、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート、またはジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0066】
光酸発生剤(B)の添加量は、生成する酸の発生量、発生速度に応じて調整が必要だが、共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部含有することが好ましい。また、共重合体(A)の固形分100重量部に対し、0.05〜30重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0067】
光酸発生剤(B)の添加量が0.05重量部以上であれば、十分な量の酸が生成され、得られる塗膜の耐溶剤性や耐薬品性が良好である傾向にあり、30重量部以下であれば、塗膜外観の低下や着色などの問題が発生しにくい傾向にある。
【0068】
<顔料(C)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、意匠性を付与する目的で、必要に応じて、顔料(C)を添加することができる。
【0069】
顔料(C)としては、例えば、
酸化チタン、群青、紺青、亜鉛華、ベンガラ、黄鉛、鉛白、カ−ボンブラック、透明酸化鉄、アルミニウム粉などの無機顔料;
アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノリン系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0070】
顔料の添加量は、顔料の種類に応じて適宜選択することが可能であるが、例えば、カーボンブラックの場合、共重合体(A)の固形分100重量部に対して1〜5重量部が好ましく、着色性と硬化性とのバランスの観点から1〜2重量部がより好ましい。
【0071】
カーボンブラックの添加量が1重量部以上であれば、十分な着色性が得られる傾向があり、5重量部以下であれば、活性エネルギー線の遮蔽が強くなり過ぎず、十分な硬化性が得られる傾向にある。
【0072】
<光増感剤(D)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、(B)成分の感光性を向上させる目的で、必要に応じて、光増感剤(D)を使用することができる。
【0073】
光増感剤(D)は、使用する(B)成分では吸収できない波長域の光を吸収できるものがより効率的である為、吸収波長域の重なりが少ないものがよい。
【0074】
光増感剤(D)としては、特に限定されないが、例えば、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられ、より詳しくは、9,10−ジアルコキシアントラセン、2−アルキルチオキサントン、2,4−ジアルキルチオキサントン、2−アルキルアントラキノン、2,4−ジアルキルアントラキノン、p,p’−アミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アルコキシベンゾフェノン、ベンゾインエ−テル等が挙げられる。
【0075】
さらに、具体的には、アントロン、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9−エトキシアントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、フェナントレン、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイル安息香酸ブチル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−i−ブチルエーテル、9−フルオレノン、アセトフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フェノチアジン、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3’−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン等が挙げられる。
【0076】
これらの光増感剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0077】
光増感剤(D)を使用する場合の添加量は、目的とする硬化速度に応じて適宜調整すればよいが、光酸発生剤(B)100重量部に対し、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。また、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。
【0078】
光増感剤の添加量が0.1重量部以上であれば、目的とする光増感剤の効果が得られやすく、10重量部以下であれば、塗膜が着色しにくく、コストダウンに繋がる傾向がある。
【0079】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、上記(A)成分および(B)成分を含有し、必要により(C)成分および/または(D)成分を含有するが、物性を調整する為に、さらに各種の添加剤を適宜配合してもよい。例えば、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤などの通常塗料に用いられる添加剤を添加することができる。
【0080】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には溶剤を配合することができる。
【0081】
溶剤として特に制限はないが、使用する基材がプラスチックの場合には、基材の耐溶剤性が低いことが多い為、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;
ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;
酢酸ブチルや酢酸イソプロピルなどのエステル類;
ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル類が好ましい。
【0082】
特に、エーテル系溶剤を全溶剤の30重量%以上使用することが、基材を傷めない点で好ましい。
【0083】
溶剤の配合量としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分の総量100重量部に対して、0〜300重量部が好ましく、0〜150重量部がより好ましい。
【0084】
溶剤の配合量が300重量部以下であれば、上記のごとく基材を傷める可能性が低い為、好ましい。
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の調製方法としては、特に限定はなく、例えば、
上記の成分を配合し、必要であれば遮光して、ハンドミキサーやスタティックミキサーで混合したり、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダーなどを用いて、常温又は加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が挙げられる。
【0086】
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて得られるものである。
【0087】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、硬化被膜を形成することにより、硬化塗膜または硬化物を得ることができる。
【0088】
硬化させる際に照射する活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、δ線などを挙げることができるが、反応速度が速く、活性エネルギー線発生装置が比較的安価であるという点からは、紫外線が最も好ましい。
【0089】
活性エネルギー線の照射量としては、50〜10,000mJ/cmの積算光量が好ましく、100〜2,000mJ/cmの積算光量がより好ましい。
【0090】
活性エネルギー線の照射量が50mJ/cm以上の場合、光量が十分である為、硬化に時間が掛からず、生産性が良くなる傾向がある。一方、活性エネルギー線の照射量が10,000mJ/cm以下の場合、綺麗に硬化する傾向にあり、基材を傷める可能性が低い。
【0091】
硬化温度には、特に限定はなく、通常100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、50℃以下がさらにより好ましい。硬化温度が100℃より低温で硬化させる場合、硬化物と基材との間の線膨張差による歪みが生じにくい傾向がある。室温で硬化することが特に好ましい。
【0092】
<積層体>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて、積層体を製造することができる。
【0093】
本発明の積層体は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布する工程、及び、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させ、硬化被膜を形成する工程を含む、製造方法により得られる。
【0094】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布する際には、ロールコーター法、ブレードコーター法、グラビアコーター法、ビートコーター法、カーテンフローコーター法、浸漬塗布法、及びスプレー塗布法のいずれも可能である。
【0095】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化塗料として用いた場合、透明コーティング剤であっても被塗物の立体形状に起因する活性エネルギー線が照射され難い部位での硬化や、塗膜内部まで活性エネルギー線が照射され難い顔料を含有するコーティング剤の硬化においても、硬化性が良好な塗装体を得ることができる。
【0096】
例えば、活性エネルギー線硬化性組成物を透明コーティング剤として用いる場合、基材が立体形状を有すると、活性エネルギー線が十分に照射されない影になる部分(以降、「非照射部」と称する場合がある。)が生じる可能性があるが、本発明の硬化性組成物では、非照射部でも1日後には硬化しており、均一な塗膜を得ることができる。
【0097】
また、活性エネルギー線を塗布部の一部にのみ照射すれば、1日後には全面に硬化塗膜を得ることができる。「一部」とは、具体的には塗布面の15%以上であり、10%以上や5%以上でも硬化塗膜を得ることができる。塗布面の15%以上に活性エネルギー線を照射すれば、1日後には全面に硬化塗膜を得ることができる。
【0098】
また、基材が立体形状を有すると、平面状や直線状の照射部を持つ照射装置との距離が箇所によって異なり、従来の硬化性組成物では均一な硬化塗膜を得ることが難しいが、本発明の硬化性組成物を用いれば、均一な硬化塗膜を得ることができる。基材の立体形状によって基材と照射部との距離が1cm以上異なっていても、本発明の組成物を用いれば均一な塗膜を得ることができ、3cmや5cm以上異なっていても均一な塗膜を得ることができる。
【0099】
次に、活性エネルギー線硬化性組成物を顔料含有コーティング剤として用いる場合、顔料により活性エネルギー線が部分的に遮蔽され硬化不良を生じ、全く硬化しない、または硬化塗膜にシワ、ワレ等が生じる可能性があるが、本発明の硬化性組成物では、シワ、ワレ等を生じることなく均一な塗膜を得ることができる。
【0100】
基材としては、特に限定されず、後述する各種基材を使用することができる。
【0101】
本発明の積層体は、情報機器端末/家電製品の内外装材、自動車内外装材、建築内外装材、家具外装材等に好適に使用できる。
【0102】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系基材、プラスチック、フィルム、シート、木材、紙、繊維などからなる建築物、家電用品、産業機器などの塗装に好適に使用できる。特に、活性エネルギー線の照射しやすさから、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、PET樹脂等のプラスチック、フィルム、シートなどの基材に好適に使用できる。
【0103】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0104】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
[1] 下記一般式(I)、(II)で表される加水分解性シリル基を有するシラン化合物を加水分解・縮合させた重合性不飽和基を有する共縮合物(a)と、重合性不飽和モノマー(b)とを反応せしめてなる共重合体(A)、および光酸発生剤(B)を含有することを特徴とする、活性エネルギー線硬化性組成物。
一般式(I):
−(SiR(OR3−a) (I)
(式中、Rは末端が3,4−エポキシシクロヘキシル基で置換された炭素数1〜10のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基、Rはそれぞれ独立して1価の炭化水素基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、aは0〜2の整数。)
一般式(II):
−(SiR(OR3−a) (II)
(式中、Rは重合性不飽和基を末端に有する炭素数1〜10の置換アルキル基、アルケニル基、非置換または置換アリール基から選ばれ、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有さない基であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、aは0〜2の整数。)
[2] Rが、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基であることを特徴とする、[1]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[3] 共縮合物(a)中の重合性不飽和基が、1分子中に0.1〜1個含有されることを特徴とする、[1]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[4] 重合性不飽和モノマー(b)が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリール基、スチリル基を有するモノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[5] 重合性不飽和モノマー(b)が、少なくとも1種類以上の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマーを含むことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[6] 共重合体(A)100質量部に対して、光酸発生剤(B)を0.01〜10質量部含有することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[7] 光酸発生剤(B)が、芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[8] 光酸発生剤(B)のカウンターアニオンが、フルオロフォスフォネート系アニオン若しくはフルオロアンチモネート系アニオンであることを特徴とする、[7]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[9] 顔料(C)を含有することを特徴とする、[1]〜[8]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化組成物。
[10] さらに、光増感剤(D)を含有することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[11] 光増感剤(D)が、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体、若しくはベンゾフェノン誘導体であることを特徴とする、[10]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[12] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化被膜を形成する硬化塗膜の形成方法。
[13] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化被膜を形成した硬化物。
[14] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材表面に形成された積層体。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0106】
実施例および比較例において使用した原材料は以下のとおりである。
○加水分解性シリル基を有するシラン化合物
A−186:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
A−187:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
A−174:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
○中性塩触媒
塩化マグネシウム:和光純薬工業(株)製、特級
○重合性不飽和モノマー
メチルメタアクリレート:三菱レイヨン(株)製
グリシジル(メタ)アクリレート:キシダ化学(株)製
A−174:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
○重合開始剤
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):和光純薬工業(株)製
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬工業(株)製
○溶媒
メチルイソブチルケトン:三菱化学(株)製
酢酸ブチル:KHネオケム(株)製
○脱水剤
オルト酢酸メチル:日宝化学(株)製
○コーティング剤
U−6LPA:新中村化学工業(株)製、UV硬化型ハードコート用ウレタンアクリレート
○光酸発生剤
CPI−101A:サンアプロ(株)製、トリアリールスルホニウム・SbF6塩のプロピレンカーボネート溶液
○光ラジカル発生剤
DAROCUR1173:BASFジャパン製、光ラジカル発生剤
IRGACURE819:BASFジャパン製、光ラジカル発生剤
○顔料関連
MA−100:三菱化学(株)製、カ−ボンブラック顔料
DISPERBYK−2025:BYK社製顔料分散剤
BYK−300:BYK社製レベリング剤
実施例および比較例での物性評価は、以下のように実施した。
【0107】
・硬化性(目視外観)
照射1日後、塗装塗膜の外観を目視で観察し、評価した。
【0108】
実施例1〜6および比較例1〜10については、以下の基準にて評価した。
○:均一で平滑な塗面。
×:ワレ、シワおよび/またはムラ等が発生し、不均一な塗面。
【0109】
実施例7〜24および比較例11〜36については、以下の基準にて評価した。
○:均一で平滑な塗面。
△:塗面のタックはないが、シワ・チヂミ等が観察される。
×:硬化せず(塗面が液状)。
【0110】
・碁盤目密着性試験(付着性試験)
照射1日後に、JIS K5600に準拠して、1mm間隔の碁盤目密着性試験を行った(一次密着)。さらに、試験片を40℃の水に1週間浸漬し、取り出し直後の密着性も評価した(二次密着)。
【0111】
・耐アルカリ性
照射7日後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を塗膜にスポットし、水分が揮発しないようスポットした液滴に時計皿を被せて密閉し、55℃で4時間静置した後、脱脂綿で拭取り、塗膜の状態を観察した。
○:変化なし。
×:スポット跡が残る。
【0112】
・耐薬品性
照射7日後、日焼け止めクリーム(コパトーンSPF50)を塗膜に滴下し塗り広げ、55℃で4時間静置した後、脱脂綿で拭取り、塗膜の状態を観察した。
○:変化なし。
×:艶引け、変色、ワレおよび/またはフクレなどの外観異常あり。
【0113】
・耐擦傷性
照射7日後、消しゴム磨耗試験機(株式会社光本製作所製)を用い、200g/cm荷重をかけて、塗膜をスチールウール#0000を用いて10回擦った後の、傷付き状態を目視観察し、評価した。
○:傷なし。
△:1本以上10本未満の傷。
×:10本以上の傷。
【0114】
・耐候性
キセノンアークランプ式耐候性試験機[岩崎電気製、型式XER−W75]を用い、促進耐候性試験を実施した。
促進耐候性試験1000時間後における硬化膜の外観を目視で観察し、以下の基準で耐候性を評価した。
○:外観変化(クラック、剥離、変褪色等)がない。
×:外観変化(クラック、剥離、変褪色等)が認められる。
【0115】
[共縮合物(a)の合成方法]
(合成例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた4つ口フラスコ等の反応器に、シラン化合物としてA−186[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]100重量部に対して、A−174[3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン]5.3重量部、触媒として塩化マグネシウム0.02重量部、水11.5重量部を仕込み、反応温度105℃にて3時間撹拌させながら反応させた後、エバポレーターを用いた減圧脱揮にて水を除去し、酢酸ブチルで60%濃度まで希釈し、共縮合物溶液(a−1)を得た。
得られた共縮合物溶液(a−1)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表1に示す。
【0116】
(合成例2)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を8.2重量部、水の仕込み量を11.8重量部に変更した以外は、合成例1と同様の操作により、共縮合物溶液(a−2)を得た。
得られた共縮合物溶液(a−2)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表1に示す。
【0117】
(合成例3)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を11.2重量部、水の仕込み量を12.2重量部に変更した以外は、合成例1と同様の操作により、共縮合物溶液(a−3)を得た。
得られた共縮合物溶液(a−3)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表1に示す。
【0118】
(合成例4)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた4つ口フラスコ等の反応器に、シラン化合物としてA−187[3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン]100重量部に対して、A−174[3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン]3.3重量部、触媒として塩化マグネシウム0.05重量部、水11.8重量部を仕込み、反応温度105℃にて7時間撹拌させながら反応させた後、エバポレーターを用いた減圧脱揮にて水を除去し、酢酸ブチルで60%濃度まで希釈し、共縮合物溶液(a−4)を得た。得られた共縮合物溶液(a−4)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表2に示す。
【0119】
(合成例5)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を5.5重量部、水の仕込み量を12.0重量部に変更した以外は、合成例4と同様の操作により、共縮合物溶液(a−5)を得た。得られた共縮合物溶液(a−5)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表2に示す。
【0120】
(合成例6)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を7.9重量部、水の仕込み量を12.3重量部に変更した以外は、合成例4と同様の操作により、共縮合物溶液(a−6)を得た。得られた共縮合物溶液(a−6)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表2に示す。
【0121】
(合成例7)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を11.7重量部、塩化マグネシウム0.06重量部、水の仕込み量を12.7重量部に変更した以外は、合成例4と同様の操作により、共縮合物溶液(a−7)を得た。得られた共縮合物溶液(a−7)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表2に示す。
【0122】
(合成例8)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を17.1重量部、塩化マグネシウムの仕込み量を0.06重量部、水の仕込み量を13.3重量部に変更した以外は、合成例4と同様の操作により、共縮合物溶液(a−8)を得た。得られた共縮合物溶液(a−8)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表2に示す。
【0123】
(合成例9)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を0.5重量部、塩化マグネシウムの仕込み量を0.05重量部、水の仕込み量を11.5重量部に変更した以外は、合成例4と同様の操作により、共縮合物溶液(a−9)を得た。得られた共縮合物溶液(a−9)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表2に示す。
【0124】
(合成例10)
シラン化合物としてのA−174の仕込み量を45.0重量部、塩化マグネシウムの仕込み量を0.07重量部、水の仕込み量を16.3重量部に変更した以外は、合成例4と同様の操作により、共縮合物溶液(a−10)を得た。得られた共縮合物溶液(a−10)の重量平均分子量、1分子あたりの重合性不飽和基の数を、表2に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
なお、表2のA−187、A−174、水および塩化マグネシウムの数値は重量部を表している。
【0128】
(実施例1〜24および比較例1〜36)
[共重合体(A−1〜4)の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器に、表3に示す量のメチルイソブチルケトンを仕込み、窒素ガスを導入しつつ75℃に昇温した後、表3に示す種類および量の共縮合物(a)、重合性不飽和モノマーおよびメチルイソブチルケトンの混合物(ア)を滴下ロ−トから5時間かけて等速で滴下した。
【0129】
次に、表3に示す量の開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)とメチルイソブチルケトンとの混合溶液(イ)を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、75℃で2時間攪拌した後に、室温まで冷却した。最後に、脱水剤としてのオルト酢酸メチルを表3に示す量添加して攪拌し、共重合体(A−1〜4)を合成した。
【0130】
得られた共重合体(A−1〜4)の固形分濃度、GPCで測定した重量平均分子量を、表3に示した。共重合体(A−1〜4)は、重合溶剤で固形分濃度が50%となるように一旦希釈して、次の配合へと進めた。
【0131】
【表3】
【0132】
[共重合体(A−5〜8)の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器に、表4に示す量の溶媒(酢酸ブチル)と共縮合物(a)とを仕込み、窒素ガスを導入しつつ80℃に昇温した後、表4に示す種類および量の重合性不飽和モノマー、開始剤および酢酸ブチルの混合物(ア)を滴下ロ−トから3時間かけて等速で滴下した。
【0133】
次に、表4に示す量の開始剤と酢酸ブチルとの混合溶液(イ)を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、80℃で2時間攪拌した後に、室温まで冷却した。最後に、脱水剤としてのオルト酢酸メチルを表4に示す量添加して攪拌し、共重合体(A−5〜8)を合成した。
【0134】
得られた共重合体(A−5〜8)の固形分濃度、GPCで測定した重量平均分子量を、表4に示した。共重合体(A−5〜8)は、重合溶剤で固形分濃度が50%となるように一旦希釈して、次の配合へと進めた。
【0135】
[共重合体(A−9〜16)の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器に、表5に示す量の溶媒(酢酸ブチル)を仕込み、窒素ガスを導入しつつ80℃に昇温した後、表5に示す種類および量の共縮合物(a)、重合性不飽和モノマー、開始剤および酢酸ブチルの混合物(ア)を滴下ロ−トから5時間かけて等速で滴下した。
【0136】
次に、表5に示す量の開始剤と酢酸ブチルとの混合溶液(イ)を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、80℃で2時間攪拌した後に、室温まで冷却した。最後に、脱水剤としてのオルト酢酸メチルを表5に示す量添加して攪拌し、共重合体(A−9〜16)を合成した。
【0137】
得られた共重合体(A−9〜14、16)の固形分濃度、GPCで測定した重量平均分子量を、表5に示した。共重合体(A−9〜14、16)は、重合溶剤で固形分濃度が50%となるように一旦希釈して、次の配合へと進めた。共重合体(A−15)は重合反応途中でゲル化した。
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
[コーティング用樹脂組成物の作製]
表6に示すように、配合し(配合量の単位は重量部)、透明コーティング剤用樹脂組成物を作製した。
【0141】
【表6】
【0142】
他方、表7に示すように配合し(配合量の単位は重量部)、顔料含有コーティング剤用樹脂組成物を作製した。
【0143】
【表7】
【0144】
また、表8〜10に示すように、配合し(配合量の単位は重量部)、透明コーティング剤用樹脂組成物を作製した。
【0145】
【表8】
【0146】
【表9】
【0147】
【表10】
【0148】
他方、表11〜13に示すように配合し(配合量の単位は重量部)、顔料含有コーティング剤用樹脂組成物を作製した。
【0149】
【表11】
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
【0152】
[試験片の作製]
表6で作製した透明コ−ティング剤用樹脂組成物または表7で作製した顔料含有コ−ティング剤用樹脂組成物を、ABS板(50mm×150mm)に対してエアスプレ−を用いて、乾燥膜厚が約15μmとなるように塗布し、溶剤除去の為に80℃で10分間乾燥して、塗装板を得た。
【0153】
表8〜10で作製した透明コ−ティング剤用樹脂組成物または表11〜13で作製した顔料含有コ−ティング剤用樹脂組成物を、ABS板(50mm×150mm)に対してエアスプレ−を用いて、乾燥膜厚が約15μmとなるように塗布し、溶剤除去の為に80℃で15分間乾燥して、塗装板を得た。
【0154】
透明コーティング剤塗装板については、図1に示すように、塗装部位の一部に活性エネルギー線が照射されないように、活性エネルギー線を遮蔽した。そして、空気中で高圧水銀ランプを用い、160mWで、波長310〜390nmの積算光量が800mJ/cmとなるように活性エネルギー線である紫外線(UV)を照射することにより硬化させ、試験片を作製した。
【0155】
顔料含有コーティング剤塗装板については、図1に示すような遮蔽部を設けることなく、空気中で高圧水銀ランプを用い、160mWで、波長310〜390nmの積算光量が800mJ/cmとなるように活性エネルギー線である紫外線(UV)を照射することにより硬化させ、試験片を作製した。
得られた試験片に対して、各物性を評価し、表3または表4に示した。
【0156】
透明コーティング剤において、実施例1〜3および7〜15では、照射部はもちろんのこと、遮蔽部においても硬化性、耐薬品性(または耐アルカリ性)、耐擦傷性に優れた結果が得られた。
【0157】
また、着色顔料を含有したコーティング剤においても、実施例4〜6および16〜24では、硬化性、耐薬品性(または耐アルカリ性)、耐擦傷性、耐候性にも優れた結果が得られた。
【0158】
一方、従来技術である光ラジカル発生剤を用いた活性エネルギー線硬化性コーティング剤である比較例5および13では遮蔽部は硬化塗膜を形成できず、比較例10でも硬化性、耐アルカリ性、耐擦傷性、耐候性が不十分であることが示された。また、比較例36でも硬化塗膜を形成できないことが示された。
【0159】
更に、共縮合物(a)を含まない重合体を用いたコーティング剤である比較例1、6、13、36では、耐擦傷性が不十分であることが示された。比較例2〜4、7〜9の共縮合物(a)のみを用いたコーティング剤では硬化性が不十分であることが示された。比較例13〜22、26〜25の共縮合物(a)のみを用いたコーティング剤、比較例11、24の重合性不飽和基が1分子中に0.1未満の共縮合物(a)からなる共重合体(A)を用いたコーティング剤では遮蔽部の硬化性が不十分であることが示された。
【0160】
以上のように、本発明のコーティング用樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射が部分的に遮蔽されるような条件であっても、硬化性、耐擦傷性、耐薬品性、耐候性に優れた活性エネルギー線組硬化塗膜を与えることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、硬化性、耐擦傷性、耐薬品性、耐候性に優れた活性エネルギー線組硬化塗膜を提供することができる。それゆえ、本発明は、様々なコーティング剤の分野に好適に利用することができる。
図1