(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  調整可能な投与インクリメントと、表示装置と、シリンジに液体を注入する引抜きレバーと、シリンジから液体を段階的に排出するコントロール・ボタンとを備えたピペット、ならびに、前記ピペットを用いて作動する前記シリンジを用いる、液体を投与するための方法であって、以下のステップを含む、方法:
  1.1.前記シリンジが前記ピペットに着脱自在に接続され、
  1.2.前記投与インクリメントが、任意選択的に設定されるか、あるいは、すでに設定された投与インクリメントが維持され、
  1.3.前記投与インクリメントにより設定された投与体積が、表示装置を用いて表示され、
  1.4.引抜きレバーを作動させることによって、液体が前記シリンジに吸引され、
  1.5.駆動要素が経路に沿って変位する場合、前記シリンジを充填して排出するためのピペットの駆動機構の駆動要素のそれぞれの位置が検出され、
  1.6.充填終了後に達する前記駆動要素の位置から始まる逆ストロークを実行した後に、前記設定された投与インクリメントでの前記シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数が経路上の前記駆動要素の検出位置を活用して確定され、前記表示装置を用いて表示され、
  1.7.前記シリンジが液体で完全にまたは部分的に充填された後、コントロール・ボタンを少なくとも1回作動させることによって、前記逆ストロークが実行され、
  1.8.投与ステップが投与ボタンを作動させることにより実行され、実行された投与ステップが計数され、実行された投与ステップ数および/またはシリンジを再充填することなくなお可能な投与ステップ数が、前記表示装置を用いて確定されて表示され、
  1.9.前記シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数を実行した後に、前記シリンジが前記ピペットから取外されるか、ステップ1.2から1.8が同じシリンジによって繰り返されるかのどちらかであり、ステップ1.8では、前記設定された投与インクリメントを備えたシリンジで実行される投与ステップの総数が計数され、かつ/または、シリンジを再充填することなくなお可能な投与ステップ数が、表示装置を用いて確定されて表示される。
  前記ピペットが、実行されるべき逆ストロークが実行されるまでの、かつ/または、実行されるべき逆ストロークが実行される場合の必要作動数の実行を示す表示、および/または信号を出力する、請求項1に記載の方法。
  前記シリンジを液体で充填し終える前に前記シリンジが前記ピペットに着脱自在に接続された後、シリンジを再充填しない逆ストロークを実行した後の、設定された投与インクリメントおよび完全に充填されたシリンジでの可能最大投与ステップ数が、前記表示装置により表示される、請求項1または2に記載の方法。
  駆動要素の変位が停止した場合、かつ/または、駆動要素の変位方向が逆転した場合、前記シリンジの充填終了が認識される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  前記シリンジが前記ピペットに着脱自在に接続される場合に表示が表示装置により示されるのみであり、前記シリンジが前記ピペットから分離されるとこの表示は消失する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  逆ストロークを実行した後に、前記シリンジを再充填しない可能最大投与ステップ数を実行する前に前記投与インクリメントがリセットされる場合、前記表示装置が、リセットされた投与インクリメントでのシリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数と、リセットされた投与インクリメントにより設定された投与体積とを示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  前記実行された投与ステップ数は、前記シリンジが完全に排出されるまで、あるいは完全な投与ステップが実行されるまで、不完全に実行された投与ステップの後では計数されず、前記ピペットは、シリンジが完全に排出されるまで、あるいは完全な投与ステップが実行されるまで、表示装置または別の表示装置を用いて、液体の不完全な放出を示す表示、信号、または他の情報を出力する、請求項8に記載の方法。
  ピペットは、接続されているシリンジのシリンジ体積を示すコードを検出し、設定された投与インクリメントおよび検出されたコードに基づいて投与体積を測定し、表示装置を用いてその投与体積を表示する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  前記変位手段のそれぞれの位置を検出する手段が、前記変位手段の変位要素に配置されているインクリメント式エンコーダと、前記インクリメント式エンコーダの変位を検出するために、ハウジング(2)に固定式に配置され制御装置(42)に接続されている少なくとも1つのセンサ(44)とを有する、請求項12に記載のピペット(1)。
  前記変位要素が歯付ラック(27)であり、この歯付ラック(27)の下端部は注入本体(25)に接続されており、この下端部は、コントロール・ボタン(8)が作動して投与ステップで歯付ラック(27)を変位させる場合、コントロール・ボタン(8)に枢動可能に装着されている爪(37)と係合可能である、請求項13に記載のピペット(1)。
  前記インクリメント式エンコーダが歯付ラック(27)を備えた単一部品として設計されているか、歯付ラック(27)に堅固に接続されている構成部品である、請求項13または14に記載のピペット(1)。
【技術分野】
【0001】
  本発明は、ピペットおよびシリンジを用いて液体を投与する方法、および液体を投与するシリンジを作動するためのピペットに関する。
【0002】
  ここで問題となっているシリンジを作動させるピペットは、いくつかのステップでシリンジに注入された液体を分注するのに役立つものである。これらのピペットはまた、ディスペンサまたはリピート式ピペットとも称される。ロッド状のハウジングの下端部に、これらのピペットはシリンジ・シリンダのフランジ用シートを有し、ハウジング内に、シリンジ・プランジャのプランジャ・ロッドの上端部領域のためのプランジャ・シートを備えた変位可能なシート本体を有する。このシリンジはフランジおよびプランジャ・ロッドの端部領域とともに軸方向に位置合わせされた開口部を通ってシートに挿入可能である。フランジおよび端部領域は、取り外し可能に保持するための、たとえばばね荷重把持レバーとして設計されている手段によって、シート内に保持されている。さらに、ピペットは、シート本体を移動させる手段を有する。この手段は、シリンダからプランジャを部分的に除去して液体をシリンジに注入することが可能であり、液体を段階的に分注するためにプランジャをシリンダに段階的に押圧する。
【0003】
  独国特許第2926691C2号および米国特許第4,406,170A号は、ハウジング内でシート本体を移動させる手段を記載している。これらは、シート本体に接続されており、直線状のスロットを通してハウジングから突出し、シートからシート本体を離して変位させることによって、液体をシリンジに注入させる引抜きレバーを含む。さらに、引抜きレバーは、前後に変位可能な投与レバーによって段階的にプランジャを移動させる歯付ラックおよび爪装置を含む。回転可能な爪が、投与レバーに取り付けられている。この歯付ラックが、シート本体に接続されており、爪の回転範囲内に配置されている。調節可能な可動カバーが、歯付ラック上の歯列をある程度覆い、投与レバーを回転させると爪の歯付ラックとの係合を制限する。さらに、歯付ラックは、ある輪郭で設計されており、この輪郭によって、プランジャが前方位置にある場合にカバーが歯付ラックと係合し、このことによって、爪が歯付ラックの覆いのない歯に係合するのを防止するように、カバーが歯付ラックから離れて変位可能である。このことによって、各分注ステップで分注される測定量よりも少ない残量がシリンジから分注されるのを防止する。
【0004】
  シリンジを着脱自在に保持する手段の展開が、欧州特許第0656229B1号および米国特許第5,620,660A号に記載されている。欧州特許第1724020B1号および米国特許第7,731,908B2号は、シリンジをピペットから片手操作によって解除可能な保持装置の展開を記載している。
【0005】
  欧州特許第0657216B1号および米国特許第5620661A号は、シリンジ・フランジの凹凸を検出するセンサと、関連するシリンジとを備えたピペットを記載している。このセンサは、挿入されたシリンジのサイズを測定する役割をする。電子機器が、設定されたインクリメントに基づいて各分注ステップで分注された液体の量を測定する。これがディスプレイに表示される。
【0006】
  欧州特許2574402B1号および米国特許第9291529B2号は、シリンジの認識の展開を記載している。ここでは、さらに符号化のコーディング要素に加えて、シリンジがテスト要素を有し、コーディング要素はテスト要素と共に全部で6つの隆起を有し、記録要素およびテスト要素を走査する走査装置と、関連する評価装置とを備えた投与機構とを有する。展開されたシリンジ認識では、正確でない投与のリスクがさらに減少する。
【0007】
  シート本体を変位させる手段の展開は、独国特許第4437716C2号、欧州特許第0679439B1号、および米国特許第5,591,408A号に記載されている。欧州特許第0679439B1号、および米国特許第5,591,408A号によると、リピート式ピペットが、シート本体をシリンジ・プランジャの作動部分に対してシリンジ・シリンダのシリンダ・シートに向かって移動させる第1のインクリメント長さに対して定数を設定する、定数インクリメント装置を有する。この値は、以下のインクリメントの設定とは無関係である。投与精度を損なうピペットとシリンジとの間の遊びは、液体の抽出後、シート本体がシリンダ・シートに向かって戻るときに、この一定の逆ストロークを用いて克服される。
【0008】
  欧州特許第EP2656916A1号は、ピペットおよびシリンジを用いる液体を投与する方法、および液体を投与するためのシリンジを作動させるピペットを記載している。この開発技術では、設定された投与インクリメントで完全に充填されたシリンジが、シリンジを再充填することのなく可能な最大投与ステップ数をピペット表示装置を用いて表示する。逆ストロークの後、実行された投与ステップを計数し、かつ/またはシリンジを再充填することのなく可能な投与ステップ数が確定されて表示装置で表示される。最大投与ステップ数が実行された後に、シリンジが再充填され、さらなる投与ステップが実行される場合、設定された投与インクリメントでシリンジにより実行される総投与ステップが計数され、シリンジを再充填することなくさらに可能な投与ステップ数が確定されて表示される。シリンジがピペットから取り外され新しいシリンジと交換される場合、実行された投与ステップが最初から計数され、かつ/または、再充填することのなくさらに可能な投与ステップが確定されて表示される。点灯ディスプレイや、あるいはシリンジに液体を注入し逆ストロークを実行する進行中のプロセスを示すディスプレイによって、ユーザは、可能な場合にシリンジを液体で完全に充填して逆ストロークを行うように指示を受ける。シリンジに液体を不完全に注入した後に投与ステップが実行されると、ピペットの表示装置は、逆ストロークが1つ以上の投与ステップにより実行されるまで、逆ストロークの実行を示すディスプレイを表示し、次の投与ステップが計数されて表示装置により表示される。1つの例示的実施形態によると、シリンジが部分的に充填されると、ユーザは、点灯ディスプレイによって、完全な充填のための表示された最大数の投与ステップが達成されるかどうか不確定であることが示される。ユーザが逆ストロークに対応した十分な数の投与ステップを実行する場合、点灯のみが停止する。このことは、投与が正確ではなく、ユーザが分注された投与量を放棄するべきであることをユーザに示すものである。一旦逆ストロークが実行されると、制御装置は、表示装置により設定された分注体積と、実行された投与ステップ数とを示す。しかし、ディスプレイでは、残りの進行ブロックを使用した後でさえ計数が続けられるので、ユーザは正確な体積で実際に分注されてどのくらいの数の投与ステップがなされたかがわからない。
【0009】
  したがって、シリンジが部分的に充填されると、ユーザは、シリンジを再充填せずに可能な最大投与ステップ数を知ることはない。可能な最大投与ステップ数を表示することは、シリンジを完全に充填することによってのみ確実となるであろう。
【0010】
  このような背景に対して、本発明の目的は、ピペットおよびシリンジを用いて液体を投与する方法、および液体を投与するシリンジを作動させるためのピペットを提供することであり、このピペットによって、シリンジが部分的に充填される場合でさえ、ユーザは可能な最大投与ステップ数が示されることを確保する。  
【0011】
  本目的は、請求項1の特徴を有する方法により達成される。
【0012】
  この方法の有利な実施形態は、従属請求項に引用されている。
【0013】
  調整可能な投与インクリメントと、表示装置と、シリンジに液体を注入する引抜きレバーと、シリンジから液体を段階的に排出するコントロール・ボタンとを備えたピペット、ならびに、ピペットを用いて作動するシリンジを用いる、液体を投与するための方法であって、この方法は以下のステップを含む:
  1.1.シリンジがピペットに着脱自在に接続され、
  1.2.投与インクリメントが、任意選択的に設定されるか、あるいは、すでに設定された投与インクリメントが維持され、
  1.3.投与インクリメントにより設定された投与体積が、表示装置を用いて表示され、
  1.4.引抜きレバーを作動させることによって、液体がシリンジに吸引され、
  1.5.駆動要素が経路に沿って変位する場合、シリンジを充填して排出するためのピペットの駆動機構の駆動要素のそれぞれの位置が検出され、
  1.6.充填終了後に達する駆動要素の位置から始まる逆ストロークを実行した後に、設定された投与インクリメントでのシリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数が
経路上の前記駆動要素の検出位置を活用して確定され、表示装置を用いて表示され、
  1.7.シリンジが液体で完全にまたは部分的に充填された後、コントロール・ボタンを少なくとも1回作動させることによって、逆ストロークが実行され、
  1.8.投与ステップが投与ボタンを作動させることにより実行され、実行された投与ステップが計数され、実行された投与ステップ数および/またはシリンジを再充填することなくなお可能な投与ステップ数が、表示装置を用いて確定されて表示され、
  1.9.シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数を実行した後に、シリンジがピペットから取外されるか、ステップ1.2から1.8が同じシリンジによって繰り返されるかのどちらかであり、ステップ1.8では、設定された投与インクリメントを備えたシリンジで実行される投与ステップの総数が計数され、かつ/または、シリンジを再充填することなくなお可能な投与ステップ数が、表示装置を用いて確定されて表示される。
【0014】
  本発明の方法では、シリンジが部分的に充填される場合、シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数が、シリンジの充填終了後、経路上の駆動要素の検出位置を活用して確定される。駆動要素が歯付ラックとして設計される場合、この経路は直線状である。最大投与ステップ数が確定されると、実行されるべき設定された投与インクリメントおよび逆ストロークが考慮される。好ましくは、実行されるべき逆ストロークが、ピペットとシリンジとの間の遊びが逆ストロークを実行するときに克服されるように固定された固有値である。シリンジが完全に充満している場合のみ、上述の先行技術による定数インクリメント装置が作用するので、コントロール・ボタンを少なくとも1回押圧することにより投与ステップを1回以上実行することによって、実行されるべき逆ストロークが好ましくは実行される。逆ストロークを実行するためのコントロール・ボタンの作動数は、設定された投与インクリメントに依存する。コントロール・ボタンの作動は、特定の初期位置から特定の終了位置までコントロール・ボタンの完全に変位する理解される。これらの位置は、たとえば、停止部またはそれぞれ開始位置または終了位置を越えてさらに変位することへの抵抗力が増すことよって確定される。
【0015】
  本方法の設計によると、経路に沿って変位する間の駆動要素のそれぞれの位置が、ピストンをシリンジのシリンダ内で変位させるための手段の変位要素に配置されているインクリメント式エンコーダにより検出され、かつ、変位要素に対してピペットのハウジングに固定的に配置されている少なくとも1つのセンサを用いて検出される。別の実施形態によると、インクリメント式エンコーダは、光学スケールまたは磁気ストリップであり、このセンサが光バリアまたは磁気センサである。別の実施形態によると、駆動要素の位置が、静電容量センサにより検出される。この静電容量センサは、変位手段の変位要素に配置されている少なくとも1つの第1のコンデンサ極板と、ハウジングに固定式に配置されている少なくとも1つの第2のコンデンサ極板を有する。別の実施形態によると、変位要素が歯付ラックであり、インクリメント式エンコーダが、歯付ラックを備えた単一部品として設計されるか、歯付ラックに堅固に接続されている構成要素である。別の実施形態によると、インクリメント式エンコーダが、歯付ラックの歯により形成されている。別の実施形態によると、インクリメント式エンコーダが、変位要素に密着しているか、中に射出成形されているか押印されている。別の実施形態によると、駆動要素の位置が、ギア・ドライブまたは別のギア装置により変位要素に連結されている回転式エンコーダにより検出される。
【0016】
  本発明の別の実施形態によると、シリンジが完全に充填されると、シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数が、シリンジが部分的に充填されるように確定される。設定された投与インクリメントに応じて投与ボタンを1回以上作動させることによって、逆ストロークが部分充填と同様に実行可能である。シリンジが完全に充填されると、駆動要素の変位および実行される逆ストロークがわかる。したがって、別の実施形態によると、シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数が、設定された投与インクリメント、シリンジが完全に充満しているときの駆動要素の知られている変位、および実行される逆ストロークを活用して確定される。完全に充填された場合の駆動要素の変位は、たとえば開始位置と終了位置とにより画定され、この位置間で、完全に充填された場合に駆動要素が経路に沿って変位する。別の実施形態によると、シリンジが完全に充填されると、上述の先行技術に従って、逆ストロークが定数インクリメント装置を用いて実行される。あるいは、シリンジが完全にかつ部分的に充填される場合に作用する作用する定数インクリメント装置を用いて、逆ストロークが実行される。
【0017】
  実行されるべき逆ストロークの後、ユーザは、コントロール・ボタンを作動させることによって投与ステップを実行可能である。知られている方法で、実行された投与ステップが計数され、実行された投与ステップ数および/またはシリンジを再充填することなくなお可能な投与ステップ数が、表示装置を用いて確定されて表示される。シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数を実行した後に、同じシリンジまたは新規なシリンジで作用し続けることはまた、知られている方法に相当する。
【0018】
  本発明の好ましい一実施形態では、設定された投与インクリメントのために実行される逆ストローク用のコントロール・ボタンの作動数が確定され、実行されるべき逆ストロークが実行されるまでの、かつ/または、実行されるべき逆ストロークが実行される場合の必要作動数の実行を示す表示、および/または
信号をピペットが出力する。これは、実行されるべき逆ストロークが完全に実行されるまで、コントロール・ボタンを作動させるようにユーザに指示する。実行されるべき逆ストロークが実行されるまで、あるいは実行されるべき逆ストロークが実行された場合のみ、この出力は継続可能である。組合せもまた可能であり、好ましくは、実行される逆ストロークの実行前と実行される逆ストロークの実行後とで、出力が異なる。あるいは、ユーザは、実行されるべき逆ストロークが実行されるように、設定された投与インクリメントで必要なコントロール・ボタンの作動数をテーブルで参照することができる。
【0019】
  別の実施形態によると、シリンジを液体で充填し終える前にシリンジがピペットに着脱自在に接続された後、シリンジを再充填することなく逆ストロークを実行した後の、設定された投与インクリメントおよび完全に充填されたシリンジでの可能最大投与ステップ数が、表示装置により表示される。ユーザがシリンジを完全に充填すると、ユーザは、これらの表示された可能最大投与ステップ数をシリンジを再充填することなく実行できる。シリンジが完全に充填される前にユーザがシリンジの充填を停止すると、シリンジが部分的に充填される場合の、シリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数が表示される。別の実施形態によると、部分的な充填の場合に表示される可能最大投与ステップ数が不十分であると、ユーザには、シリンジをさらに充填するオプションがある。別の実施形態によると、ユーザは、部分的な充填の場合にシリンジを再充填しない可能最大投与ステップ数のみを実行することができ、あるいは、放出レバーを用いてシリンジを排出し、ついでシリンジを再充填できる。
【0020】
  別の実施形態によると、駆動要素の変位が停止した場合、かつ/または、駆動要素の変位方向が逆転した場合、シリンジの充填終了が認識される。別の実施形態によると、第1の変形例では、前もって排出せずにシリンジを連続して充填することが可能であり、第2の変型(version)では、シリンジを前もって排出せずにシリンジをさらに充填することは不可能である。
【0021】
  別の実施形態によると、シリンジに液体を注入し逆ストロークを実行する進行中のプロセスを示す表示、信号、
または出力が、コントロール・ボタンを作動させることによって逆ストロークを実行するまで、引抜きレバーを作動させることによって、液体を吸入しながら、表示装置によって、および/またはピペットの別の出力装置によって出力可能であり、かつ、上述の出力は、液体を吸引する前および逆ストロークを実行した後では出力されない。別の実施形態によると、この表示が、上方を指す矢印、または描きながら表示される別の明らかなアイコンである。別の実施形態によると、この表示は、描きながら回転するか点灯する、上方を指す矢印である。別の実施形態によると、この表示は、シリンジが完全に充填された後に回転するか点灯する、下方を指す矢印である。これによって、ピペットを操作しやすくなる。
【0022】
  別の実施形態によると、この表示は、シリンジがピペットに着脱自在に接続される場合に表示装置により表示されるのみであり、シリンジがピペットから分離されるとこの表示は消失する。このことによって、ピペットの消費電力が減少し、バッテリまたは別の電源が節約される。
【0023】
  別の実施形態によると、逆ストロークを実行した後に、シリンジを再充填しない可能最大投与ステップ数を実行する前に投与インクリメントがリセットされる場合、表示装置が、リセットされた投与インクリメントでのシリンジを再充填することなく可能な最大投与ステップ数と、リセットされた投与インクリメントにより設定された投与体積とを示す。このことによって、投与処置がより柔軟性をもつようになる。シリンジを再充填せずに可能な最大投与ステップ数の表示は、まず、シリンジを部分的に充填した後に投与インクリメントがリセットされる場合に可能となる。
【0024】
  別の実施形態によると、投与ステップが不完全に実行された場合、ピペットは、表示装置または別の表示装置によって、不完全に実行された投与ステップを示す表示、信号
または情報、および/または完全に放出された投与ステップ数、および/またはシリンジを再充填することなくさらに可能な投与ステップ数を出力する。不完全に実行された投与ステップは、コントロール・ボタンが開始位置から終了位置まで移動しないように、コントロール・ボタンを不適切に作動させることから生じる。不完全な投与ステップは、コントロール・ボタンを不正確に作動することによって、あるいはコントロール・ボタンを偶発的に作動させることによって、生じ得る。
【0025】
  別の実施形態によると、実行された投与ステップ数は、シリンジが完全に排出されるまで、あるいは完全な投与ステップが実行されるまで、不完全に実行された投与ステップの後では計数されず、ピペットは、シリンジが完全に排出されるまで、あるいは完全な投与ステップが実行されるまで、表示装置または別の表示装置を用いて、液体の不完全な放出を示す表示、信号、または他の情報を出力する。本実施形態では、計数されるさらなる投与ステップが可能となるように、不完全に実行された投与ステップの後にシリンジが完全に排出されなければならず、あるいは、他の投与ステップが実行可能で計数可能であるように、完全な投与ステップが最初に実行されなければならないかのどちらかである。完全な投与ステップを実行するために、ユーザは、たとえば、シリンジのプランジャを最適に変位させるために歯付ラックの爪/爪の配置が歯付ラックに係合するまで、不正確な投与後にコントロール・ボタンをおそらくは数回再作動させなければならない。
【0026】
  別の実施形態によると、シリンジを充填する間の液体量が、経路上の駆動要素の検出位置を参照しつつ測定され、表示装置を用いて表示される。このことによって、シリンジが部分的に、または、完全に充填されると抽出される液体量をユーザが容易に測定できる。この実施形態によって、液体抽出量の体積をオンラインで測定できる。別の実施形態によると、シリンジを充填しながら液体の抽出量が連続的に表示される。別の実施形態によると、シリンジの充填が終了した後で、液体の抽出量が表示される。駆動要素の変位が停止した場合、かつ/または、駆動要素の変位方向が逆転した場合、シリンジの充填終了が認識される。
【0027】
  別の実施形態によると、逆ストロークを実行した後になお放出される液体の全抽出量が、液体の抽出量に加えて表示される。別の実施形態によると、シリンジを液体で充填しながら、かつ/またはシリンジを液体で充填終了後、逆ストロークを実行した後で放出される液体の全体量が連続的に表示される。この実施形態によって、いくつかのステップで投与体積を正確に分注するのに利用可能な液体の抽出量の一部の体積をオンラインで測定できる。
【0028】
  別の実施形態によると、液体の抽出量の表示および/または逆ストロークを実行した後で分注するのに利用可能な液体量の表示のオンオフを切り替えることができる。別の実施形態によると、液体の抽出量が、単一の投与ステップまたは複数の投与ステップで放出される。
【0029】
  別の実施形態によると、シリンジを充填しながらその作動と反対方向に引抜きレバーを作動させることにより、液体の抽出量が放出される。このことによって、ある液体量を移動させることができ、あるいはそれぞれ液体量の体積を測定できる。液体量は、逆ストロークなしで放出可能である。これは単一ステップで生じ得る。
【0030】
  別の実施形態によると、ピペットは、ピペットに接続されているシリンジのシリンジ体積を示すコードを検出し、設定された投与インクリメントおよび検出されたコードに基づいて投与体積を測定し、表示装置を用いてその投与体積を表示する。この実施形態によって、異なるサイズのシリンジを使用することが可能となり、使用されたシリンジにより放出される投与体積を設定された投与インクリメントで常に自動的に表示する。
【0031】
  本方法の別の実施形態によると、ピペットが、以下に記載するピペットの少なくとも1つのさらなる特徴およびその実施形態を有する。
【0032】
  本目的は、請求項12の特徴を有するピペットによっても達成される。
【0033】
  本発明による、シリンジを操作するピペットは、
  ・ロッド状のハウジングと、
  ・ハウジングの下端部に開口部を有し、締結部を備えたシリンジをシリンダの頂縁部に挿入するための
台座と、
  ・別のシートおよびハウジング内の下端部にある別の開口部を有し、シリンジのプランジャの別の締結部を挿入するための
台座本体と、
  ・上記締結部を上記
台座内で、かつ上記別の締結部を上記別のシート内で着脱自在に保持する手段と、
  ・ハウジング内で
台座本体をハウジングの長手方向に変位させる少なくとも1つの手段と、
  ・液体をシリンジに注入するためにハウジングの外側で作動可能な引抜きレバーと、
  ・液体をシリンジから段階的に排出するための、ハウジングの外側で作動可能なコントロール・ボタンと、
  ・上記ハウジングの外側で調整可能な、投与インクリメントを調整する調整要素と、
  ・調整要素で設定された投与インクリメントを検出する手段と、
  ・ピペットに着脱自在に接続されたシリンジを検出する手段と、
  ・変位手段を経路に沿ってハウジングに対して変位させた場合に、シート本体を変位させる手段のそれぞれの位置を検出する手段と、
  ・検出手段に接続されている電子制御装置と、
  ・電子制御装置に接続されている電子表示装置と、
  を備え、
  ・制御装置はシリンジがピペットに挿入された場合に設定された投与インクリメントによって投与体積を測定し、設定された投与インクリメントを示すシリンジを再充填せずに可能な最大投与ステップ数
と、完全にあるいは部分的に充填されたシリンジとを
経路上の変位手段の検出位置を活用して確定し、これらを表示装置に表示するように構成されており、コントロール・ボタンを少なくとも1回作動させることによって実行されるべき逆ストロークの実行を確定し、逆ストロークが実行されるまで、かつ/または逆ストロークが実行された後に、表示装置または別の表示装置を用いて、これを示す出力を出力するように構成されており、実行された投与ステップ数を確定し、実行された投与ステップ数および/またはシリンジを再充填することなくなお可能な投与ステップ数が、表示装置を用いて表示される。
【0034】
  ピペットに着脱自在に接続されたシリンジを検出する手段は、シリンジが挿入されていることを制御装置に指示する。ついで、検出された投与インクリメントおよび制御装置で利用可能な挿入済みシリンジに関するデータによってシリンジを完全にまたは部分的に充填した後、制御装置がシリンジを再充填せずに可能な最大投与ステップ数を確定する。シリンジを再充填せずに可能な最大投与ステップ数を確定すると、制御装置は、注入本体の変位手段のそれぞれの位置を検出する手段によって検出された、経路上の変位手段の位置を考慮する。シリンジが完全に充填されると、ある実施形態では、制御装置がたとえば検出位置に代わって省かれる駆動要素の変位固有値を使用する。表示装置を用いて、制御装置が、投与インクリメントにから検出された投与体積と、確定された最大投与ステップ数とを表示する。投与が行われると、シート本体を経路上で変位させる手段の位置を検出する位置検出用の手段を用いて、制御装置にこのことを示してもよい。一代替実施形態によると、このために、コントロール・ボタンを作動させることによって投与ステップの実行を検出する手段が存在する。この手段は、たとえば、コントロール・ボタンを作動させるたびに信号を発するセンサまたは押しボタンである。したがって、ユーザが知らされるのは、設定された投与体積、シリンジが完全にまたは部分的に充填された場合の最大可能投与ステップ数、実行された投与ステップ数、および/または再充填なしでなお可能な投与ステップである。ある変形例によると、実行された投与ステップ数が表示され、シリンジを再充填しないでなお可能な投与ステップ数は表示されないように、制御装置が構成されている。別の変形例によると、シリンジを再充填しないでなお可能な投与ステップ数が、実行された投与ステップ数の代わりに表示されるように、制御装置が構成されている。さらなる変形例によると、実行された投与ステップ数と、シリンジを再充填しないでなお可能な投与ステップ数とが表示されるように、制御装置が構成されている。
【0035】
  別の実施形態によると、変位手段のそれぞれの位置を検出する手段が、変位手段の変位要素に配置されているインクリメント式エンコーダ(光学スケールや磁気ストリップなど)と、変位要素の変位を検出するための、ハウジングに固定式に配置され制御装置に接続されている少なくとも1つのセンサ(光バリアや磁気センサなど)とを有する。インクリメント式エンコーダを用いて、変位要素の変位を極めて簡単にかつ正確に検出することが可能である。インクリメント式エンコーダおよびセンサは既製システムとして入手可能である。このシステムはインクリメント式エンコーダの異なる方向の移動を検出し示すことが可能である。インクリメント式エンコーダのセグメント化は、液体を注入し分注するための精度要件に応じて選択可能である。好ましい実施形態によると、このセグメント化は、0.1mmから0.5mmの範囲内から選択される。これは、たとえば0.1mm、0.25mm、または0.5mmである。
【0036】
  別の実施形態によると、変位手段のそれぞれの位置を検出する手段が静電容量センサを有する。別の実施形態によると、静電容量センサが、変位手段の変位要素に配置されている少なくとも1つの第1のコンデンサ極板と、ハウジングに固定式に配置されている少なくとも1つの第2のコンデンサ極板を有する。第1および第2のコンデンサ極板が制御装置に接続されており、この制御装置が第1および第2のコンデンサ極板間の電気容量を測定する。第1および第2のコンデンサ極板間の電気容量は、第1および第2の極板のオーバーラップの測定単位であり、従って、変位手段のそれぞれの位置の測定単位である。静電容量センサは、たとえば、加国特許第2,126,934C号(第10ページ、第3行から第26行)に記載されているように設計され、これによってその内容は本願に組み込まれている。
【0037】
  別の実施形態によると、変位要素が歯付ラックである。この歯付ラックの下端部は注入本体に接続されている。この下端部は、コントロール・ボタンが作動して投与ステップで歯付ラックを変位させる場合、コントロール・ボタンに枢動可能に装着されている爪と係合可能である。歯付ラックおよび爪を有するこの種の装置は、前述の先行技術に記載されている。
【0038】
  好ましい実施形態によると、インクリメント式エンコーダが歯付ラックを備えた単一部品として設計されているか、歯付ラックに堅固に接続されている構成部品である。インクリメント式エンコーダはまた、歯付ラックの歯によって形成されてもよい。別の実施形態によると、インクリメント式エンコーダが歯付ラックの歯とは異なる側に形成されている。別の実施形態によると、インクリメント式エンコーダが、変位要素に密着しているか、中に射出成形されているか押印されている。別の実施形態によると、変位を検出する装置が、ギア・ドライブまたは別のギア装置により変位要素に連結され、そのセンサが制御装置に接続されている回転式エンコーダを含む。
【0039】
  別の実施形態によると、ピペットには、歯付ラックの最下位および最上位を検出する分離したセンサがない。本実施形態では、欧州特許出願第2  656  916  A1号において参照符号81および67で指定されている下端位置および上端位置が省略されている。代わりに、下端位置および上端位置を含む歯付ラックのそれぞれの位置が、インクリメント式エンコーダによって検出される。該当する場合には、上端位置および下端位置が、特定のマークを用いてインクリメント式エンコーダに標示可能である。この特定のマークは、光学スケールの特に広いスケール線や磁気ストリップの連続した極などである。下端位置および上端位置のセンサが省略される場合、装着する間にピペットに教示するのに、すなわち下端位置および上端位置の場所を正確に設定するのに有用である。このために、第1のスケール線または第1のスケール線のグループが下端位置に設定可能であり、第2のスケール線または第2のスケール線のグループが上端位置に設定可能である。このような機能の教示が使用されると、該当する場合には、この機能の教示を使用して、下端位置を第1の歯または歯の第1のグループに設定し、あるいは上端位置を第2の歯または歯の第2のグループに設定することによって、歯付ラックを個別に表示することが完全に省略される。
【0040】
  別の実施形態によると、最大投与ステップ数を行い同じシリンジを再充填した後、シリンジで行われた総投与ステップ数を設定された投与インクリメントで確定し、かつ/または再充填せずになお可能な投与ステップ数を表示し、これらを表示装置に表示するように、制御装置が構成されている。別の実施形態によると、シリンジが使用されるたびに行われた投与ステップ数を再度確定するように、制御装置が構成されている。
【0041】
  別の実施形態によると、シリンジがピペットに着脱自在に接続された後でシリンジを液体で充填し終える前に、設定された投与インクリメントおよびシリンジを再充填せずに完全に充填されたシリンジでの可能最大投与ステップ数が表示装置で表示されるように、制御装置が構成されている。
【0042】
  別の実施形態によると、駆動要素の変位が停止した場合、かつ/または、駆動要素の変位方向が逆転した場合、シリンジの充填終了が認識されるように、制御装置が構成されている。
【0043】
  別の実施形態によると、表示装置による表示、信号、または他の出力、および/またはピペットの別の出力装置が、コントロール・ボタンを作動させることによって逆ストロークを実行するまで、引抜きレバーを作動させることによって、液体を吸入しながら、シリンジに液体を注入し逆ストロークを実行する進行中のプロセスを示す表示であり、この出力は、液体を吸引する前および逆ストロークを実行した後では出力されないように、制御装置が構成されている。
【0044】
  別の実施形態によると、シリンジがピペットに着脱自在に接続される場合に表示が表示装置により示されるのみであり、シリンジがピペットから分離されるとこの表示は消失するように、制御装置が構成されている。
【0045】
  別の実施形態によると、逆ストロークを実行した後に、シリンジを再充填しない可能最大投与ステップ数を実行する前に投与インクリメントがリセットされる場合、表示装置が、シリンジを再充填しないリセットされた投与インクリメントでの可能最大投与ステップ数と、リセットされた投与インクリメントにより設定された投与体積とを示すように、制御装置が構成されている。
【0046】
  別の実施形態によると、投与ステップが不完全に実行された場合、ピペットは、表示装置または別の表示装置によって、不完全に実行された投与ステップを示す表示、信号または他の情報、および/または完全に放出された投与ステップ数、および/またはシリンジを再充填しないさらに可能な投与ステップ数を出力するように、制御装置が構成されている。
【0047】
  別の実施形態によると、実行された投与ステップ数は、シリンジが完全に排出されるまで、あるいは完全な投与ステップが実行されるまで、不完全に実行された投与ステップの後では計数されず、ピペットは、シリンジが完全に排出されるまで、あるいは完全な投与ステップが実行されるまで、表示装置または別の表示装置を用いて、液体の不完全な放出を示す表示、信号、または他の情報を出力するように、制御装置が構成されている。
【0048】
  別の実施形態によると、ピペットは、ピペットに着脱自在に接続されているシリンジのシリンジ体積を示すコードを検出するセンサを有する。このことによって、体積が異なるシリンジでピペットを使用することが可能となる。ここでは、制御装置が設定された投与インクリメントおよび測定されたシリンジの体積によって設定された投与体積を常に測定し、これらを表示装置に表示する。このセンサは、好ましくはリング・センサである。好ましい実施形態によると、コードを検出するセンサは、同時に、ピペットに着脱自在に接続されたシリンジを検出する手段でもある。
【0049】
  別の実施形態によると、シリンジを充填する間の液体量が、経路上の駆動要素の検出位置を参照しつつ測定され、表示装置を用いて表示されるように、制御装置が構成されている。
【0050】
  別の実施形態によると、設定された投与インクリメントおよびピペットに保持されているシリンジの検出されたコードによって投与体積が測定され、表示装置を用いて表示されるように、制御装置が構成されている。
【0051】
  別の実施形態によると、請求項1から11に示され明細書の第5頁から第13頁に記載されている実施形態の1つによる方法を実行するように、ピペットが設計されている。好ましい実施形態によると、制御装置が検出手段によってもたらされる信号を処理して表示装置およびさらなる実施形態のうちの1つによる方法に対応する任意選択的なさらなる出力装置を制御するように設計されている。
【0052】
  別の実施形態によると、ピペットがユーザの筋力によって駆動するピペットである。別の実施形態によると、ピペットには、ユーザの筋力によって駆動するシート本体を駆動させるための機械駆動装置がある。
【0053】
  好ましくは、シートに締結部を保持し、別のシートに別の締結部を保持する手段が、上述の書類に記載されているように先行技術から設計される。好ましくは、ハウジング内でシート本体を変位させる手段が、上述の書類に記載されているように先行技術から設計される。好ましくは、シリンジのコードを検出するセンサおよびそのシリンジのコードが、上述の書類に記載されているように先行技術から設計される。この点に関して、上述の書類である独国特許第29  26  691C2号、米国特許第4,406,170A号、独国特許第4  437  716C2号、欧州特許第0  679  439B1号、米国特許第5,591,408A号、欧州特許第0  562  229B1号、米国特許第5,620,660A号、欧州特許第1  724  020B1号、米国特許第7,731,708B2号、欧州特許第0  657  216B1号、米国特許第5,620,661A号、欧州特許第2  574  402B1号、および米国特許第9,291,529号を参照のこと。これによって、その内容は本願に組み込まれる。
【0054】
  本願では、「投与量」、すなわち「排出された液体量、またはそれぞれ排出されるべき液体量」は、用語「投与体積」の同義語として使用されている。さらに、「分注体積」は、上述の用語の代わりに使用される。但し、分注はいくつかのステップで起こる。
【0055】
  本発明を、例示的実施形態の添付図面に基づいて、以下により詳細に説明する。
 
【発明を実施するための形態】
【0057】
  本願では、用語「上部」および用語「下部」は、ロッド状のハウジングが垂直に位置合わせされるピペットの位置合わせに関するものであり、シリンジ用シートが下部に配置されている。
 
【0058】
  図1から
図3によると、ピペット1が、ロッド状のハウジング2を有し、中にはシリンジ3が下部に保持されている。引抜きレバー5が、ハウジング2から、直線状のスロット4を超えてハウジング2の側壁から突出している。歯付ラック/爪を制御するコントロール・ボタン8が、2つのさらなるスロット6、7を超えてハウジングの同じ側壁から突出している。その上方に、液晶ディスプレイ9の形での表示装置が、ハウジング2の同じ側壁に嵌め込まれている。選択歯車10の一部が、隣接する側壁の開口部から突出している。
 
【0059】
  図4によると、シリンジ3が、シリンダ11と、中で可動式に配置されているプランジャ12とを有する。シリンダ11は、下部に、液体の通過させるための孔14を有する円すい部13と、それより上に、プランジャ12が中で変位可能な円筒部15を有する。シリンダ11は、上部に、周縁フランジ17を備えた締結部16を有する。プランジャ・ロッド18が、プランジャ12から上方へ突出し、複数の周縁ビードを備えた別の締結部19を有する。
 
【0060】
  シリンジ3は、ハウジング2の底端部のシート20にフランジ17を備えて配置されている。シート20は、シリンジ3を挿入除去するための軸方向に向く開口部21.1をハウジング2の下端部に有する。シリンジ3は、その頂部側で、フランジ17の頂縁部にある突起を検出する感圧性リング・センサ22を押圧する。フランジ17は、この位置で、把持レバー23によってハウジング2内に保持されている。
 
【0061】
  プランジャ12の別の締結部19が、中空の円筒状シート本体25の別のシート24に配置されている。これは、別の締結部19を挿入するための軸方向に向く別の開口部21.2を有する。別の締結部19は、別の締結部19のビード間を係合するかまたはこれらを圧締する別の把持レバー26によって保持されている。
 
【0062】
  シート本体25が、ハウジング2の長手方向のスロット4の下に延びる歯付ラック27に堅固に接続されている。
 
【0063】
  引抜きレバー・ホルダ28が、シート本体25および歯付ラック27の下部に固定されている。
 
【0064】
  さらに、スロット4の縁部の下側に当たっている、摺動プレートを備えた引抜きレバー支持部29、30がある。摺動プレート30は、上方に突出しスロット4を貫通するくぎ状突起31を有する。引抜きレバー5は、ハウジング2の外側でくぎ状突起31に固定されている。
 
【0065】
  ハウジング2の上半分では、投与レバー34が、スロット4の反対側で、ハウジング2の側壁のバルジ33にあるピボット軸受32に枢動可能に取り付けられている。投与レバー34は、互いにある距離だけ離れている2つの脚部35、36を有する。この脚部35、36は、ハウジング2の反対側の側壁で2つのスロット6、7から延びる。コントロール・ボタン8がハウジングから延びる脚部35、36の端部に固定されている。
 
【0066】
  爪37が、投与レバー34の2つの脚部35、36間に枢動可能に取り付けられている。爪37は、歯付ラック27の歯39の上に、爪歯38とともに配置されている。投与レバー34は、ばね装置(図示せず)によって、
図4の位置まで押圧される。投与レバー34は、コントロール・ボタン8をばね装置の効果と反対の方向に作動させることによって、下方に揺動可能である。爪37は、別のばね装置(図示せず)を用いて、歯付ラック27の歯39に押圧される。
 
【0067】
  可動カバー40が、爪37と歯付ラック27との間に配置されている。このカバー40は、ハウジング2の側面から突出する選択歯車10を回転させることによって変位可能であるので、歯付ラック27の歯39がある程度覆われる。
 
【0068】
  さらに、電子機器を備えたプリント回路基板41が、ハウジング2の上半分に配置されている。電子機器は、電子制御装置42を備える。バッテリまたは充電式電池43の形での電圧源もまた、ここに配置されている。
 
【0069】
  選択歯車10は、選択歯車10の回転位置を検出する別のセンサ44により指定される。リング・センサ22およびさらなるセンサ44によって測定される測定値は、ケーブルを介して制御装置42に転送される。
 
【0070】
  フランジ17に示されるコードは、それぞれのシリンジ3のサイズを示している。制御装置42は、リング・センサ22により出力される測定信号からそれぞれのシリンジのサイズを測定し、選択歯車10の設定からインクリメントを測定する。このことから、制御装置42は、設定された分注体積を計算し、それをディスプレイ9に表示する。
 
【0071】
  スロット6、7が、投与レバー34に接続されているシールド45によって内側で覆われている。
図4および
図5によると、可撓性のカバーストリップ46がハウジング2のスロット4の下にあり、スロット4を覆う。カバーストリップ46は、ポリプロピレンからなる。カバーストリップ46はその両端がスロット4の両側でハウジングに固定されている。
 
【0072】
  図4および
図5によると、カバーストリップ46は引抜きレバー・ホルダ28と引抜きレバー支持部29との間のチャネル47を通っている。
 
【0073】
  カバーストリップ46と、ハウジング2、引抜きレバー・ホルダ28、および引抜きレバー支持部29の関連する実施形態とに関するさらなる詳細が、欧州特許第2  656  916  A1号の段落65から69に記載されており、これによって、その内容は本願に組み込まれる。
 
【0074】
  図4および
図5によると、磁気ストリップ48が歯付ラック27の背面に配置されており、歯付ラック27の長手方向に延びる。長手方向では、磁気ストリップ48は、複数の連続した磁気要素を含む。この磁気要素は、互いに隣りとある所定距離をおいて(分割化されて)配置されている。磁気センサ49が、歯付ラック27に対向する印刷プリント基板41の一面に配置されており、磁気ストリップ48の変位を検出するのに適している。磁気センサ49は制御装置42に結線されている。
 
【0075】
  さらに、ピペットはハウジング内に伝達要素50を有する。この伝達要素50は、シリンジ3が完全に充填されると逆ストロークを制御する。伝達要素50およびその機能に関する詳細は、欧州特許第2  656  916  A1号の段落71から74と段落81から83、ならびにそこで参照される図面に記載されており、これによって、その内容は本発明に組み込まれる。
 
【0076】
  図6は別の実施形態を示しており、ここでは、歯付ラック27の並進運動が歯付ラック27のさらなる歯51を介してロータリ・エンコーダ53に接続されているピニオン52に伝達される。ロータリ・エンコーダ53は、歯付ラック27のそれぞれの位置を報告するために、ケーブルによって制御装置42に接続されている。
 
【0077】
  図7の実施形態では、接触センサ54が歯付ラック27のさらなる歯51を検知する。接触センサ54は、歯付ラック27のそれぞれの位置を報告するために、ケーブルによって制御装置42に接続されている。
 
【0078】
  図8の実施形態では、光学センサ55が歯付ラックの歯39、51を検知する。これらは、爪37と相互作用する歯39またはさらなる歯51であってもよい。光学センサ55は、歯付ラック27のそれぞれの位置を制御装置42に知らせるために、ケーブルによって制御装置42に接続されている。
 
【0079】
  図1から
図5のピペット1の使用を、
図9を参照しつつ説明する。まず、ユーザにより選択されたシリンジ・サイズを有するシリンジ3を、締結部16でシート20に挿入し、さらなる締結部19でシート24に挿入することによって、ピペット1に着脱自在に接続するので、フランジ22を把持レバー23によって把持し、締結部19をさらなる把持レバー26によって把持する。
 
【0080】
  リング・センサ22は、シリンジ3のフランジ17上の記号を検出する。リング・センサ22により提示された信号によって、制御装置42は、シリンジ3が挿入されたことを認識し、ディスプレイ9のスイッチを入れる。リング・センサ22およびセンサ44により提示された信号によって、制御装置42は、設定された分注体積を決定し、それをディスプレイ9に表示する。さらに、制御装置42は、完全に充填した後でシリンジ3を排出するための可能投与ステップ数を画定し、これらをディスプレイ9に示す(ブロック60)。
 
【0081】
  ユーザは、選択歯車10を使用して分注体積の設定を変更してもよく、変更された分注体積は、ディスプレイ9に表示される(ブロック61)。
 
【0082】
  シリンジ3の開口部14を通して液体を抽出するために、引抜きレバー5を
図1から
図3に示す位置から上方に押圧する。ここでは、磁気センサ49が歯付ラックの上方の変位を検出し、それを制御装置42に転送する。したがって、制御装置42は表示装置のフラッシュを制御する(ブロック62)。
 
【0083】
  同様に、磁気センサ49が停止部による液体抽出の終了、または歯付ラック27の下方への移動を検出し、それを制御装置42に転送する。ついで、制御装置42が、それぞれの充填レベルでシリンジを再充填するための可能最大投与ステップ数をディスプレイ9に表示する(ブロック62)。
 
【0084】
  実行される逆ストロークがコントロール・ボタン8を1回または複数回作動させることによって行われた後、制御装置42はフラッシュを停止するようにディスプレイ9を制御する(ブロック63)。
 
【0085】
  逆ストロークの実行は、磁気センサ49によって検出された歯付ラック27の変位のために、電子機器42によって検出される。
 
【0086】
  図9は、部分充填のステップを示す。あるいは、シリンジ3が完全に充填されると、このシリンジ3を再充填することなく可能な最大投与ステップ数が表示される。シリンジが完全に充填されると、伝達要素によって、作動ボタン8を1回作動させることによって逆ストロークが実行可能である。
 
【0087】
  作動ボタン8を繰り返し作動させることによって、個々の投与ステップが行われる。投与ステップの実行はまた、磁気センサ49によって決定される。磁気センサ49から、制御装置42が実行された投与ステップ数、および/または残りの投与ステップ数を計算し、これらをディスプレイ9に表示させる(ブロック64)。
 
【0088】
  最後の投与ステップが完了すると、制御電子機器が計数を停止する。ついで、処理がブロック60で継続するように、流体が再び同じシリンジ3で抽出される。制御電子機器42によって、行われたすべての投与ステップが表示される(ブロック65)。
 
【0089】
  あるいは、引抜きレバー5を作動させることによって、残りの流体を分注する。ついで、制御装置42が、設定された投与体積と終わった投与ステップの表示に加えて、ディスプレイ9のフラッシュを制御する(ブロック66)。
 
【0090】
  把持レバー23、26を開口することによってシリンジ3が放出されると、リング・センサ22によって検出されることはなく、制御装置42がディスプレイ9のスイッチを切る(ブロック67)。
 
【0091】
  図10を参照しつつ、ステップのエラーを説明する。
 
【0092】
  ブロック60から64は
図9に対応している。
 
【0093】
  不適切な投与があると、設定された投与ステップに対応していない磁気センサ49によって報告された変位のために、その不適切な投与が制御電子機器42によって確定される。ブザーが警告音を発する(ブロック68)。
 
【0094】
  作動ボタン8が作動したままであると、不適切な投与までに行われたステップ数を表示するように制御装置42がディスプレイ9を制御し、ディスプレイがフラッシュする。この実施形態のバージョンでは、作動ボタンを繰り返し作動させることによって計数を継続することは不可能である(ブロック69)。
 
【0095】
  次のステップで、引抜きレバー5を作動させることによって残りの液体を分注することができ、ここでは、不適切な投与までの投与ステップ数がまた表示されており、ディスプレイ9がフラッシュする(ブロック70)。
 
【0096】
  最後に、シリンジが排出されると、制御装置42はディスプレイが空白となるように制御する(ブロック67)。