特許第6639510号(P6639510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6639510ハイブリッドターボシャフトエンジンおよび該ハイブリッドターボシャフトエンジンを再始動させるシステムを含むヘリコプタの推進システムの構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6639510
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】ハイブリッドターボシャフトエンジンおよび該ハイブリッドターボシャフトエンジンを再始動させるシステムを含むヘリコプタの推進システムの構造
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/268 20060101AFI20200127BHJP
   F02C 3/107 20060101ALI20200127BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20200127BHJP
   F01D 19/00 20060101ALI20200127BHJP
   B64C 27/12 20060101ALI20200127BHJP
   B64D 27/10 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   F02C7/268
   F02C3/107
   F02C7/00 F
   F01D19/00 N
   B64C27/12
   B64D27/10
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-538463(P2017-538463)
(86)(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公表番号】特表2017-537268(P2017-537268A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】FR2015052683
(87)【国際公開番号】WO2016059320
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年9月28日
(31)【優先権主張番号】1459777
(32)【優先日】2014年10月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】517123379
【氏名又は名称】サフラン・エレクトリカル・アンド・パワー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラール,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】バゼ,ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ル・デュイグ,ロイク
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−544329(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0086919(US,A1)
【文献】 特開2008−127013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/268
B64C 27/12
B64D 27/10
F01D 19/00
F02C 3/107
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達ギアボックスに接続された複数のターボシャフトエンジンを備えた多発ヘリコプタの推進システムの構造であって、
前記複数のターボシャフトエンジンのうちの少なくとも1つのターボシャフトエンジンであって、ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)と呼ばれ、ヘリコプタの安定巡航飛行時に少なくとも1つの待機モードで動作可能であり、他のターボシャフトエンジンがこの安定飛行時にのみ動作する少なくとも1つのハイブリッドターボシャフトエンジンと、
各々のハイブリッドターボシャフトエンジン(20)を制御するための少なくとも2つのシステム(30、40)であって、再始動システムと呼ばれ、各々のシステム(30、40)が、前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)に接続されて前記ハイブリッドターボシャフトエンジンを回転させるのに適した電気機械(31、41)と、および前記電気機械(31、41)用の少なくとも1つの電源(33、43、51)と、を備え、各々の再始動システム(30、40)が複数の所定モードのうち少なくとも1つの動作モードで前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)を駆動することができるようにそれぞれ構成される、少なくとも2つのシステム(30、40)と、
を備えることを特徴とする構造。
【請求項2】
各々のハイブリッドターボシャフトエンジンがガス発生器を備え、前記複数の所定モードが、
迅速再始動モードと呼ばれるモードであって、前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)が10秒未満の時間で前記ハイブリッドターボシャフトエンジンの前記ガス発生器の公称速度の80%から105%の範囲の速度になるまで回転されるモードと、
通常再始動モードと呼ばれるモードであって、前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)が10秒から60秒の範囲の時間で前記ハイブリッドターボシャフトエンジンの前記ガス発生器の公称速度の80%から105%の範囲の速度になるまで回転されるモードと、
支援超アイドルモードと呼ばれる待機モードであって、前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)が前記ハイブリッドターボシャフトエンジンの前記ガス発生器の公称速度の20%から60%の範囲の速度で連続して回転される待機モードと、
転換モードと呼ばれる待機モードであって、前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)の前記ガス発生器が前記公称速度の5%から20%の範囲の速度で連続して回転される待機モードと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)の前記ガス発生器を前記迅速再始動モードで駆動するように構成された各々の再始動システム(30、40)が、エネルギー貯蔵ユニット(33、43)で形成される電源を備え、
前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)の前記ガス発生器を前記通常再始動モードもしくは待機モードで駆動するように構成された各々の再始動システム(30、40)が、ヘリコプタの機内回路網(51)で形成される電源を備える
ことを特徴とする、請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記機内回路網(51)が、航空機の適合する交流電圧を供給するように構成された回路網であることを特徴とする、請求項3に記載の構造。
【請求項5】
迅速再始動モード、通常再始動モード、および少なくとも1つの待機モードで前記ハイブリッドターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第1の再始動システム(30)と、
前記通常再始動モード前記ハイブリッドターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第2の再始動システム(40)と、
を備えることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の構造。
【請求項6】
前記第2の再始動システム(40)がさらに、前記迅速再始動モードで前記ハイブリッドターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成されることを特徴とする、請求項5に記載の構造。
【請求項7】
迅速再始動モードおよび通常再始動モードの両方で前記ハイブリッドターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第1の再始動システム(30)と、
前記待機モード前記ハイブリッドターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第2の再始動システム(40)と
を備えることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の構造。
【請求項8】
前記第2の再始動システム(40)がさらに、前記通常再始動モードで前記ハイブリッドターボシャフトエンジン(20)を駆動することができるように構成されることを特徴とする、請求項7に記載の構造。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の構造を有することを特徴とする推進システムを備えたヘリコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発ヘリコプタ、特に、双発もしくは三発ヘリコプタの推進システムの構造に関し、そのような構造を有する推進システムを備えたヘリコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、双発もしくは三発ヘリコプタは、2機もしくは3機のターボシャフトエンジンを備えた推進システムを有し、各々のターボシャフトエンジンは、ガス発生器と、ガス発生器によって回転され、出力軸に剛接合されたフリータービンとを備える。各々のフリータービンの出力軸は、動力伝達ギアボックスの運動を引き起こすのに適しており、動力伝達ギアボックス自体はヘリコプタのロータを駆動する。
【0003】
ヘリコプタが巡航飛行状態にある時(すなわち、離陸、上昇、着陸もしくはホバリング飛行の移行段階を除いて、全飛行段階で通常の条件で前進している時)、ターボシャフトエンジンは連続最大出力未満の低レベルの出力を発生させることが周知である。これらの低レベルの出力は、ターボシャフトエンジンの燃焼室の時間当たりの燃料消費量とターボシャフトエンジンによって供給される機械力との比率として定義される燃料消費率(以降、SCとする)であって、離陸最大出力のSCより約30%高い燃料消費率につながり、したがって、巡航飛行時に燃料の過剰消費につながる。
【0004】
さらに、ヘリコプタのターボシャフトエンジンは、エンジンの1機に不具合が生じた場合にヘリコプタを飛行状態で維持することができるように、大型になるように設計される。この飛行状態は、エンジンの損失後に発生し、結果として、各々の動作エンジンが公称出力をはるかに超える出力レベルを供給することになり、ヘリコプタは危険な状態に対処して、飛行を継続することができる。
【0005】
ターボシャフトエンジンはさらに、航空機メーカーによって規定された飛行範囲全体にわたって確実に飛行することができるように、特に、高い高度で、かつ暑い気候で飛行できるように、大型にされる。要求水準の高いこれらの飛行点は、特に、ヘリコプタの重量が最大離陸重量に近い場合、特定の使用状況のみで発生する。
【0006】
これらの大型ターボシャフトエンジンは、重量および燃料消費量の点で不利である。このような巡航飛行時の燃料消費量を低減するために、飛行時にターボシャフトエンジンの少なくとも1つを待機状態にすることが想定される。動作エンジン(単数もしくは複数)は、その後、全ての必要な動力を供給するために、より高い出力レベルで動作し、したがって、より好ましいSCレベルで動作する。
【0007】
仏国特許出願公開第2967133号明細書および仏国特許出願公開第3011587号明細書において、本出願人は、ターボシャフトエンジンの少なくとも1機を安定飛行モード(連続飛行モードとして周知である)にして、ターボシャフトエンジンの少なくとも1機を特定の待機モードにする(必要に応じて、迅速にもしくは通常の方式で、待機モードから退出することができる)という任意選択によって、ヘリコプタのターボシャフトエンジンの燃料消費率を最適化する方法を提案している。
【0008】
待機モードからの退出は、飛行状態の変化が待機状態のターボシャフトエンジンの始動を必要とする場合、例えば、ヘリコプタが巡航飛行状態から着陸段階に移行している時に、「通常」とされる。このような待機モードからの通常退出は、10秒から1分の時間で行われる。待機モードからの退出は、動作しているエンジンの出力の不具合もしくは不足が発生した場合に、もしくは飛行条件が突然困難な条件になった場合に、「迅速」とされる。このような待機モードからの緊急退出は、10秒未満で行われる。
【0009】
本出願人は、待機状態のターボシャフトエンジンを再始動させて、電気機械を使用する待機モードから(通常の方式でもしくは迅速に)退出させることができるシステムをすでに提案している。この電気機械は、ヘリコプタの機内回路網(以降、OBNとする)によって電力供給されることができ、OBNは、直流電圧28ボルトの回路網および/または航空機の適合する交流電圧に接続された適切なパワーエレクトロニクス機器によって電圧が供給される回路網である。特定の待機モードの間、ターボシャフトエンジンを機械的に支援するために電気機械を使用することもまた提案されている。
【0010】
したがって、本発明者は、待機モードになるのに適した少なくとも1つのターボシャフトエンジンと、電気機械を備えるターボシャフトエンジンを再始動させるシステムとを備える推進システムの構造の性能を向上させることを追求した。
【0011】
特に、本発明者は、利用可能性が非常に高い再始動システムを実現することができる新奇な推進システム構造を提案することを追求した。さらに、本発明者は、待機状態のターボシャフトエンジンを再始動させるシステムの不具合を検出することができる新奇な構造を提案することを追求した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2967133号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第3011587号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、多発ヘリコプタの推進システムの新奇な構造を提供することである。
【0014】
さらに、本発明の目的は、少なくとも一実施形態では、待機状態にすることができるように構成されたターボシャフトエンジンと、先行技術のシステムと比べて利用可能性が向上した再始動システムとを備えた多発ヘリコプタの推進システムの構造を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、少なくとも一実施形態では、再始動システムの不具合を検出することができる構造を提供することである。
【0016】
また、本発明の目的は、本発明の構造を有する推進システムを備えたヘリコプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、動力伝達ギアボックスに接続されたターボシャフトエンジンを備えた多発ヘリコプタの推進システムの構造に関し、多発ヘリコプタ推進システムの構造であって、
前記ターボシャフトエンジンのうちの少なくとも1つのターボシャフトエンジンであって、ハイブリッドターボシャフトエンジンと呼ばれ、ヘリコプタの安定飛行時に少なくとも1つの待機モードで動作可能であり、他のターボシャフトエンジンがこの安定飛行時にのみ動作する、少なくとも1つのターボシャフトエンジンと、
各々のハイブリッドターボシャフトエンジンを制御するための少なくとも2つのシステムであって、再始動システムと呼ばれ、各々のシステムがハイブリッドターボシャフトエンジンに接続されて前記ハイブリッドターボシャフトエンジンを回転させることができるように設計された電気機械と、および前記電気機械用の少なくとも1つの電源と、を備え、各々の再始動システムが複数の所定モードのうち少なくとも1つの動作モードで前記ターボシャフトエンジンを駆動することができるようにそれぞれ構成される、少なくとも2つのシステムと、
を備えることを特徴とする構造に関する。
【0018】
したがって、本発明の構造により、待機モードで動作可能なハイブリッドターボシャフトエンジンを再始動させるシステムを少なくとも二重構造にすることができる。したがって、本発明の構造の再始動システムは、少なくとも2つの別個の電気機械を備え、各々の電気機械は、複数の所定モードから選択された少なくとも1つの動作モードへとターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも別個の2つの再始動システムを形成するためにハイブリッドターボシャフトエンジンに接続される。
【0019】
本発明の意味の範囲でのハイブリッドターボシャフトエンジンとは、要求に応じて、意図的に、少なくとも1つの所定の待機モードにすることができ、待機モードから通常の方式でもしくは迅速に(緊急とも呼ばれる)退出することができるように構成されたターボシャフトエンジンのことである。ターボシャフトエンジンは、ヘリコプタの安定飛行時のみ、すなわち、ヘリコプタのターボシャフトエンジンに不具合がない場合、巡航飛行状態の間、通常の条件で前進している時に、待機モードになることができる。待機モードからの退出は、条件に必要な退出モード(通常待機退出モード、もしくは緊急退出とも呼ばれる迅速待機退出モード)に対応した方法で駆動することによってターボシャフトエンジンをガス発生器加速モードに変化させることである。
【0020】
有利には、本発明によれば、ターボシャフトエンジンがガス発生器を備える場合、前記複数の所定モードは、
迅速再始動モードと呼ばれるモードであって、前記ターボシャフトエンジンが待機モードから10秒未満の時間で前記ターボシャフトエンジンの前記ガス発生器の公称速度の80%から105%の範囲の速度になるまで回転されるモードと、
通常再始動モードと呼ばれるモードであって、前記ターボシャフトエンジンが待機モードから10秒から60秒の範囲の時間で前記ターボシャフトエンジンの前記ガス発生器の公称速度の80%から105%の範囲の速度になるまで回転されるモードと、
支援超アイドルモードと呼ばれる待機モードであって、ターボシャフトエンジンが前記ターボシャフトエンジンの前記ガス発生器の公称速度の20%から60%の範囲の速度で連続して回転される待機モードと、
転換モードと呼ばれる待機モードであって、ターボシャフトエンジンが前記ターボシャフトエンジンの前記ガス発生器の公称速度の5%から20%の範囲の速度で連続して回転される待機モードと、
を含む。
【0021】
有利には、本発明によれば、前記ヘリコプタが少なくとも1つの機内回路網を備える場合、前記ターボシャフトエンジンを前記迅速再始動モードで駆動するように構成された各々の再始動システムは、エネルギー貯蔵ユニットで形成される電源を備え、前記ターボシャフトエンジンを前記通常再始動モードもしくは待機モードで駆動するように構成された各々の再始動システムは、ヘリコプタの機内回路網で形成される電源を備える。
【0022】
エネルギー貯蔵ユニットにより、待機モードから迅速に退出するためにターボシャフトエンジンに必要なエネルギーに対応した十分な量の電力を供給することができる。したがって、貯蔵ユニットは、ターボシャフトエンジンの迅速な再始動のための再始動システムに非常に適している。
【0023】
機内回路網により、例えば、ターボシャフトエンジンが待機状態になる前に、離陸前の地上および飛行中の両方で、対応する再始動システムを検査することができる。さらに、このようなエネルギー源は、通常の再始動条件下でハイブリッドターボシャフトエンジンを再開させるための電気機械に電力を供給するのに十分である。
【0024】
有利には、本発明によれば、前記機内回路網は、航空機の適合する交流電圧を供給するように構成された回路網である。
【0025】
本発明の第1の有利な変形形態によれば、構造は、
迅速再始動モード、通常再始動モード、および少なくとも1つの待機モードで前記ターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第1の再始動システムと、
前記通常再始動モードでのみ前記ターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第2の再始動システムと、
を備える。
【0026】
上記形態を実現するためには、実際に、第1のシステムは、2つの別個の電気エネルギー源、すなわち、エネルギー貯蔵ユニットとヘリコプタの機内回路網とに接続される。第2のシステムも機内回路網に接続される。
【0027】
この変形形態によれば、第1の再始動システムと第2の再始動システムは共に、ターボシャフトエンジンの通常の再始動に対応するものである。したがって、これらの再始動システムは、これらのシステムの利用可能性をチェックするために、始動ごとに交互に呼び出されることができる。
【0028】
第1の再始動システムは、さらに、迅速再始動モードおよび待機モードの両方のために構成される。したがって、待機モードの時に、第1の再始動システムが呼び出され、このことが、迅速な始動に備えて、システムをテストする役割を果たす。したがって、待機モードの時にシステムの故障がないことがチェックされる。
【0029】
第1のシステムが利用不可能である場合、ハイブリッドターボシャフトエンジンの通常の再始動のために第2のシステムが呼び出される。
【0030】
ハイブリッドターボシャフトエンジンの迅速な再始動の時に、第1のシステムが呼び出され、第2のシステムは、必要に応じて、追加の動力を供給することができる。
【0031】
第1の変形形態と組み合わせて、第2のシステムはさらに、前記迅速再始動モードでターボシャフトエンジンを駆動することができるよう構成されることができる。上記形態を実現するためには、第2のシステムは、実際には、第2の電気エネルギー貯蔵ユニットに接続される。
【0032】
したがって、この特定の変形形態の構造は、ターボシャフトエンジンを迅速に再始動させることができる2つの利用可能な別個の再始動システムを有する。したがって、一方の迅速再始動システムの不具合がある場合には、他方のシステムが不具合を補償することができる。
【0033】
本発明の第2の有利な変形形態によれば、構造は、
迅速再始動モードおよび通常再始動モードの両方で前記ターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第1の再始動システムと、
前記待機モードでのみ前記ターボシャフトエンジンを駆動することができるように構成された少なくとも1つの第2の再始動システムと
を備える。
【0034】
上記形態を実現するためには、第1の再始動システムは、2つの電源、すなわち、エネルギー貯蔵ユニットとヘリコプタの機内回路網とを備え、第2の再始動システムは、機内回路網に直接接続される。
【0035】
第1のシステムは、システムの利用可能性をチェックするために始動時に呼び出される。第2のシステムは、待機モードにおいて、迅速再始動に割り当てられたシステムにおける損耗の発生を避けるために呼び出される。第2のシステムが利用できなくなると、第1のシステムに切り替わり、ターボシャフトエンジンが再始動される。
【0036】
第2の変形形態と組み合わせて、第2のシステムはさらに、前記通常再始動モードでターボシャフトエンジンを駆動することができるよう構成されることができる。上記形態を実現するために、第2のシステムは、機内回路網に接続される。
【0037】
この変形形態は、第1のシステムの不具合が生じた場合に、第2のシステムがターボシャフトエンジンの通常再始動を実行することができるという点で、特に有利である。
【0038】
さらに、2つのシステムはいつでもテストが可能である。
【0039】
また、本発明は、本発明の構造を有することを特徴とする推進システムを備えたヘリコプタに関する。
【0040】
さらに、本発明は、多発ヘリコプタの推進システムの構造、および該構造を有する推進システムが装備されたヘリコプタに関し、該構造およびヘリコプタは、上述もしくは後述の特徴の全てもしくはいくつかの組み合わせを有することを特徴とする。
【0041】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、単なる非限定的な例として示され、添付図面に関して述べられた以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】単一制御システムによって制御されるターボシャフトエンジンを備える先行技術の構造の概略図である。
図2】先行技術の別の構造の概略図である。
図3】本発明の一実施形態の構造の概略図である。
図4】本発明の別の実施形態の構造の概略図である。
図5】本発明の別の実施形態の構造の概略図である。
図6】本発明の別の実施形態の構造の概略図である。
図7】本発明の別の実施形態の構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下で説明する実施形態は、本発明を実施するためのいくつかの例である。以下の詳細な説明は、1つ以上の実施形態に関するものであるが、必ずしもそれぞれの説明がいくつかの実施形態に関連しているというわけではなく、または必ずしも特徴が1つの実施形態にのみ適用されるというわけではない。異なる実施形態の個々の特徴は、他の実施形態を導き出すために組み合わされることもできる。また、図面において、説明および明瞭化のために、縮尺比および比率は必ずしも正確であるとは言えない。
【0044】
図1は、ターボシャフトエンジン10と前記ターボシャフトエンジンを制御するための制御システムとを備えた周知のヘリコプタ推進システムの構造の概略図である。制御システムは、要求に応じて、ターボシャフトエンジン10を確実に始動させるためにターボシャフトエンジン10を回転させるのに適した電気機械11を備える。電気機械11は、ヘリコプタの低電圧機内回路網12(一般的には、28ボルト直流電圧を供給する回路網である)から直接電力を引き込む。
【0045】
図2は、ターボシャフトエンジン10と前記ターボシャフトエンジンを制御するための別の制御システムとを備えた周知のヘリコプタ推進システムの構造の概略図である。制御システムは、要求に応じて、ターボシャフトエンジン10を確実に始動させるためにターボシャフトエンジン10を回転させるのに適した電気機械11を備える。電気機械11は、航空機の対応した交流高電圧機内回路網14から電力を引き込む。制御システムはさらに、機内回路網14によって供給された交流高電圧を電気機械11を制御するための電圧に変換するように設計された電力変換モジュール13を備える。
【0046】
図1および図2の構造を有するターボシャフトエンジン10は、通常、地上で始動される。この構造のターボシャフトエンジンの飛行中の再始動は、例外的な事象である。
【0047】
図3から図7は、少なくとも1つのターボシャフトエンジンを待機状態にして、飛行時に再始動させることができる本発明の構造を示している。さらに、提案されている構造により、再始動動作が確実になり、異なる再始動システムを定期的にテストすることができる。
【0048】
図3から図7では、ハイブリッドターボシャフトエンジンのみが示されているが、多発エンジン構造において、特に、双発もしくは三発構造において、構造は、少なくとも1つがハイブリッドターボシャフトエンジンである複数のターボシャフトエンジンを備えることが理解できる。
【0049】
本発明の構造は、動力伝達ギアボックス(図示せず)に接続される複数のターボシャフトエンジンを備える。
【0050】
複数のターボシャフトエンジンのうち、ハイブリッドターボシャフトエンジン20と呼ばれる少なくとも1つのターボシャフトエンジンは、ヘリコプタの巡航飛行時に少なくとも1つの待機モードで動作することができる。
【0051】
図3から図7に示されている実施形態によれば、構造は、ハイブリッドターボシャフトエンジン20を再始動させるための2つのシステム30、40を備える。以下の説明全体において、参照番号30で示されている再始動システムを第1の再始動システムとし、参照番号40で示されている再始動システムを第2の再始動システムとする。
【0052】
また、本明細書において、図3から図7では第1および第2の再始動システムを指すのに同じ参照番号30、40を使用しているが、再始動システムは実施形態によって同一でない場合があるものとする。
【0053】
各々の再始動システム30、40は、複数の所定のモードのうち少なくとも1つの動作モードでターボシャフトエンジン20を駆動することができるように構成される。
【0054】
ガス発生器を備えるターボシャフトエンジンの場合、所定モードは少なくとも、
迅速再始動モードと呼ばれるモードであって、ターボシャフトエンジン20が待機モードから10秒未満の時間内でターボシャフトエンジンのガス発生器の公称速度の80%から105%の範囲の速度になるまで回転されるモードと、
通常再始動モードと呼ばれるモードであって、ターボシャフトエンジン20が待機モードから10秒から60秒の範囲の時間内でターボシャフトエンジンのガス発生器の公称速度の80%から105%の範囲の速度になるまで回転されるモードと、
支援超アイドルモードと呼ばれる待機モードであって、ターボシャフトエンジン20がターボシャフトエンジンのガス発生器の公称速度の20%から60%の範囲の速度で連続して回転される待機モードと、
転換モードと呼ばれる待機モードであって、ターボシャフトエンジン20が前記公称速度の5%から20%の範囲の速度で連続して回転される待機モードと、
を含む。
【0055】
図3において、第1の再始動システム30は、電気機械31と、電力変換装置32と、電気エネルギー貯蔵ユニット33と、機内回路網51とを備える。第2の再始動システム40は、電気機械41と、電力変換装置42と、第1の再始動システム30と共有される機内回路網51とを備える。
【0056】
この実施形態では、第1の再始動システム30が、迅速再始動モード(貯蔵ユニット33からのエネルギーを使用)、通常再始動モード(機内回路網51もしくは貯蔵ユニット33からのエネルギーを使用)、または少なくとも1つの待機モード(機内回路網51からのエネルギーを使用)のうちのいずれかのモードでターボシャフトエンジン20を駆動することができる。さらに、この実施形態では、第2の再始動システム40が、前記通常再始動モード(機内回路網51からのエネルギーを使用)でターボシャフトエンジン20を駆動することができる。
【0057】
この実施形態によれば、第1および第2のシステムは、これらのシステムの利用可能性をチェックするために始動ごとに交互に呼び出されることができる。
【0058】
第1のシステムはさらに、迅速再始動モードおよび待機モード用に構成されるので、ターボシャフトエンジン20の待機モードへ移行することで、システム30のインテグリティをテストすることができ、したがって、システム30によるターボシャフトエンジン20の迅速な再始動を妨げる異常を検出することができる。異常が検出された場合、ハイブリッドターボシャフトエンジン20の通常の再始動のために第2のシステム40が呼び出される。
【0059】
第1の再始動システム30によるハイブリッドターボシャフトエンジン20の迅速な再始動の間に、第2のシステム40は、必要に応じて、追加の動力を供給することができる。
【0060】
図4に示されている構造は、図3に示されている構造の変形形態である。この構造は、図3に関して説明した要素の他に、第2の再始動システム40内に配置される第2の貯蔵ユニット43を備える。
【0061】
したがって、この実施形態では、第2の再始動システム40はさらに、迅速再始動モード(貯蔵ユニット43からのエネルギーを使用)でターボシャフトエンジン20を駆動することができる。
【0062】
したがって、この構造は、冗長構造であり、高い利用可能性を有する。
【0063】
図5では、第1の再始動システム30は、電気機械31と、電力変換装置32と、電気エネルギー貯蔵ユニット33と、機内回路網51(例えば、115ボルトの交流電圧を供給する機内回路網)とを備える。第2の再始動システム40は、電気機械41、電力変換装置42、機内回路網52(例えば、28ボルトの直流電圧を供給する回路網)、第1の再始動システム30と共有される機内回路網51、および任意選択で、電気エネルギー貯蔵ユニット53を備える。
【0064】
この実施形態では、第1の再始動システム30が、迅速再始動モード(貯蔵ユニット33からのエネルギーを使用)、通常再始動モード(機内回路網51もしくは貯蔵ユニット33からのエネルギーを使用)、または待機モードでターボシャフトエンジン20を駆動することができる。さらに、この実施形態では、第2の再始動システム40は、通常再始動モード(機内回路網52もしくは任意選択の貯蔵ユニット53からのエネルギーを使用または機内回路網51からのエネルギーを使用)でターボシャフトエンジン20を駆動することができる。特に、この特定の構造により、ターボシャフトエンジン20を再始動させるための第2のシステム40は、高い電力レベル(例えば、10kWより高いレベル)用の機内回路網51を使用し、低い電力レベル(例えば、10kW未満のレベル)用の機内回路網52を使用することができる。
【0065】
図6において、第1の再始動システム30は、電気機械31と、電力変換装置32と、電気エネルギー貯蔵ユニット33とを備える。第2の再始動システム40は、電気機械41と、電力変換装置42と、機内回路網51とを備える。
【0066】
この実施形態では、第1の再始動システム30は、迅速再始動モード(貯蔵ユニット33からのエネルギーを使用)でターボシャフトエンジン20を駆動することができる。さらに、この実施形態では、第2の再始動システム40は、待機モード(機内回路網51からのエネルギーを使用)もしくは通常再始動モードでターボシャフトエンジン20を駆動することができる。
【0067】
図7において、第1の再始動システム30は、電気機械31と、電力変換装置32と、電気エネルギー貯蔵ユニット33と、機内回路網51とを備える。第2の再始動システム40は、電気機械41と、電力変換装置42と、第1のシステム30と共有される機内回路網51とを備える。
【0068】
この実施形態では、第1の再始動システム30は、迅速再始動モード(貯蔵ユニット33からのエネルギーを使用)および通常再始動モード(機内回路網51もしくは貯蔵ユニット33からのエネルギーを使用)でターボシャフトエンジン20を駆動することができる。さらに、この実施形態では、第2の再始動システム40は、待機モードもしくは通常再始動モード(機内回路網51からのエネルギーを使用)でターボシャフトエンジン20を駆動することができる。
【0069】
変形形態では、第2のシステムは、待機モード(機内回路網51からのエネルギーを使用)でのみターボシャフトエンジン20を駆動するように構成されることができる。
【0070】
この構造の利点は、電力最適型電気機械を使用することができるという点であり、特に、電気機械41では、その唯一の機能は、待機モードにすることである。
【0071】
それぞれのモードに対して、再始動システムの制御は、Full Authority Digital Engine Controlの頭文字FADECとして周知のターボシャフトエンジン制御システムによって支配される。
【0072】
本発明は、記載されている実施形態のみに限定されない。特に、本発明は、複数のハイブリッドターボシャフトエンジンを備えてよく、各々のターボシャフトエンジンには、上述されているような独自の少なくとも2つの再始動システムが装備される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7