(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置1を説明する。
なお、本実施形態では、
図1に示す歯科診療手段誘導装置1において、歯科診療手段3の支持部31側を上方向、誘導器具2の先端側を下方向として説明する。
【0012】
≪歯科診療手段誘導装置≫
図2に示すように、歯科診療手段誘導装置1は、被治療歯aの被治療位置gに歯科用切削器具等の歯科診療手段3を誘導するための誘導器具装置である。歯科診療手段誘導装置1は、歯科診療手段誘導装置1を使用する前に、歯牙(被治療歯a)の根管bから歯根膜腔に向けて延びた側枝dの開口方向及び位置(深さL1)を、側枝開口方向検出装置(図示省略)等で検出して確認してから使用する。歯科診療手段誘導装置1は、歯科診療手段3を挿通するための導入口2a、中空部2b、及び、導出口2cを有し、歯科診療手段3を被治療位置gに誘導する誘導器具2を備えて構成されている。
誘導器具2を説明する前に、側枝dを治療するための歯科診療手段3、側枝dの開口方向及び位置(角度)を検出するための側枝開口方向検出装置、根管長測定器及び根管撮影用カメラについて説明する。
【0013】
<歯科診療手段>
図2に示すように、歯科診療手段誘導装置1に使用される歯科診療手段3は、被治療歯aを治療するものであればよく、器具の種類は特に限定されない。歯科診療手段3は、例えば、リーマ、ファイル、ゲーツドリル、クレンザー、角ブローチ、スケーラ、歯科用レーザ治療装置の照射ノズル(照射ファイバー)、超音波用根管治療機器のスケラーチップ、側枝dを監視するための根管撮影用カメラ、注水管、エア供給管、薬液供給管、スプレー管、排気管、排水管等による歯科治療に使用される器具装置である。
【0014】
歯科診療手段3は、例えば、そのような器具装置を使用して、側枝dを開拡後に洗浄、乾燥、滅菌するための処理、側枝dの拡大及び形成により根管壁に生じるスメア層を溶解及び洗浄処理、薬液として次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)溶液、Er−YAGレーザを用いた乾燥処理、側枝dを観察する等を行うのに使用される。
このように、歯科診療手段3は、被治療歯aの根管bに形成された側枝dを開拡、洗浄、乾燥あるいは滅菌するための治療手段、または、側枝d内を観察する観察手段である。
【0015】
以下、歯科診療手段3の一例として、リーマまたはファイルから成る歯科用切削器具30を使用する場合を例に挙げて説明する。
なお、リーマ及びファイルは、細菌に感染した根管b等の歯質を削り取る治療を行う際に使用される歯科用器具である。リーマ及びファイルは、手動的に使用されるものと、歯科用エンジンによる機械的作動するものがあり、また、種々のサイズや、種々の金属によって形成されたものがある。リーマは、回転させながら切削する刃を有する器具である。ファイルは、掻き出すようにして削除する刃を有する器具である。
【0016】
図2に示すように、歯科診療手段3(歯科用切削器具30)は、支持部31と、支持部31に基端部が固定されて刃部32aを有する針部32と、針部32の基端部寄りの位置に設けられたストッパー33と、を備えて成る。
【0017】
支持部31は、術者が手で把持したり、治具やホルダに固定したりする箇所である。支持部31は、例えば、略円柱形状に形成されている。
針部32は、根管b内から側枝d内に挿入する針状の挿入部である。針部32の先端部側寄りに箇所には、側枝dを切削する刃部32aが形成されている。刃部32aは、側枝d等を切削する切削部である。
ストッパー33は、誘導器具2の把手2gの上端面に当接することによって、針部32の先端が側枝d内に入り込む深さを制限するための抑止部である。ストッパー33は、例えば、針部32の上部の適宜な位置に固定された円板状の部材から成る。
【0018】
<側枝開口方向検出装置>
不図示の側枝開口方向検出装置は、特許文献1に記載されているような市販の装置である。側枝開口方向検出装置は、電源、制御部及び表示部等を備えた側枝検出機能付きの根管長測定器と、根管長測定器に接続されて側枝方向検出用電極を有する側枝位置検出手段と、測定器接続手段と、を備えている、側枝開口方向検出装置は、側枝方向検出用電極の側枝方向検出用の開口部に流れる電流値の最小値を検出したときの開口部の位置から、根管bから歯根膜腔に延びた側枝dの根管軸径方向の位置を自動的に検出可能である。
【0019】
<根管長測定器>
不図示の根管長測定器は、特許文献1に記載されているような市販の装置である。根管長測定器は、被治療歯aの根管bを治療する際に、根管治療に先立って行われる根管長の測定と、側枝dの有無の検出と、側枝dの有る位置を示す表示と、を行う側枝検出機能付きの装置である。根管長測定器は、電源と、信号切換部と、整合部と、増幅部と、変換部と、データ処理部と、第1の記憶部と、第2の記憶部と、表示部と、制御部と、アース電極及びリード線を有する測定器接続手段と、を備えている。根管長測定器は、側枝方向検出用の開口部の位置を報知する報知手段としても機能する。根管長測定器は、被治療歯aの根管b内に挿入した側枝方向検出用電極の先端位置を検出して、表示部に表示するように構成されている。また、根管長測定器は、側枝方向検出用電極の開口部が、側枝dの付近になると報知手段のアイコンによって報知するように構成されている。
【0020】
<根管撮影用カメラ>
不図示の根管撮影用カメラは、歯牙の根管b内や、歯周ポケットh(
図10参照)内に内視鏡挿入部を挿入させて、根管b内や、歯周ポケットh内を撮影するための市販の極細径内視鏡である(例えば、特開2004−65623号公報参照)。
【0021】
<誘導器具>
図2及び
図3に示すように、誘導器具2は、歯科診療手段3の針部32の先端部位を側枝開口部eに誘導するためのガイドである。誘導器具2は、歯科診療手段3の針部32をガイドするガイド部材21と、ガイド部材21の高さ(L1)を調整するための調整具22と、ガイド部材21に形成された導出口2cの位置と側枝開口部eとの位置を合わせるための位置合わせ手段20と、を備えている。誘導器具2の表面は、電鋳で形成されている。
【0022】
<ガイド部材>
ガイド部材21は、上端部に形成された導入口2aと、上端部から先端部側面に亘って形成された中空部2bと、中空部2bの下側開口端である導出口2cと、導出口2cの前側に形成された湾曲部2eと、有する筒状部材から成る。
図3に示すように、ガイド部材21の外周面2dには、導出口2cの中央部から基端部側に向かって付記された目盛2fと、上端部に形成された把手2gと、把手2gの下側に形成された雄ネジ部2hと、把手2gに形成された目印2i(
図1参照)と、が形成されている。根管はまっすぐとは限らないため、曲がった根管にも適用可能なようにガイド部材21は、例えば、弾性変形可能な弾性を有するフレキシブルなガイドバイプ部材によって形成されていることが好ましい。ガイド部材21は、例えば、ステンレス鋼等の金属、または、樹脂によって形成されている。
なお、把手2gは、掴みやすいようにガイド部材21の外周面2dより大きな径にしているが、調整具22を上方から入れやすくするために、外周面2dと同じ径にしてもよい。
【0023】
図2に示すように、導入口2aは、針部32を挿入する挿入口である。導入口2aは、ガイド部材21(把手2g)の上端面中央に形成されている。導入口2aの開口縁は、テーパ形状に形成して、針部32の先端を挿入し易くしてもよい。
【0024】
中空部2bは、針部32が挿通される空洞部分であり、管路形状に形成されている。中空部2bは、導入口2aから誘導器具2の先端方向に延設されて、先端部が導出口2cの方向に湾曲して形成されている。
【0025】
導出口2cは、中空部2bに挿入された針部32の先端部側が中空部2b内から導出される横孔の開口である。導出口2cは、誘導器具2の外周面2dの下端部に形成されている。換言すると、導出口2cは、歯科診療手段3の導入方向とは異なる方向に開口している。このため、導出口2cは、中空部2b内に挿入された針部32を側枝dがある方向に向けて導出させることが可能になるように形成されている。
【0026】
湾曲部2eは、中空部2bの下端部を円弧状に曲げた状態に形成されている。湾曲部2eは、導入口2aからガイド部材21の下端部に向かって真っすぐに延びた中空部2bの下端部を導出口2c方向に向けて案内されるように曲がって形成されている。
【0027】
目盛2fは、導出口2cの中央部からの距離L1(
図2参照)を示す寸法表示部である。目盛2fは、ミリ単位で示す印と、ミリ単位の長さを示す数字と、から成る。目盛2fは、ガイド部材21の外周面2d(表面)に上下方向に刻設されている。また、目盛2fは、導出口2cの中央部からの寸法記載や、色分け表示を行うことによって、更に、表示を判り易くすることも可能である。
【0028】
図2に示すように、把手2gは、術者が導出口2cの位置を側枝開口部eのある方向に一致させるために、目印2iの位置を導出口2cの位置に位置合わせしたり、また、測定基準点fから側枝開口部eの中央部までの長さL1に合わせて調整具22の位置を調整したりする際に、手等で掴む回動操作部である。把手2gの形状は、特に限定されず、適宜変更してもよい。把手2gは、例えば、円板形状、ナット形状、多角形の厚板状に形成されている。なお、この把手2gは、なくてもよい。その場合は、調整具22から上方向に突出した雄ネジ部2hの上端部を直接掴んで操作する。
【0029】
雄ネジ部2hは、調整具22の雌ネジ部22aに螺合する螺合部である。雄ネジ部2hは、筒状のガイド部材21の上部に形成されて、調整具22を上下動させるためのガイド部である。
【0030】
図1に示すように、目印2iは、導出口2cのある方向を示すマークである。目印2iは、導出口2cの位置と、側枝開口部eの位置と、を一致させるために、平面視して導出口2cの位置と同じ方向に向けて形成されている。目印2iは、例えば、三角形のマークから成る。
【0031】
<調整具>
図2に示すように、調整具22は、被治療歯aを治療する際に、下面を被治療歯aの上面(測定基準点f)に当接した状態に配置される回転操作可能な部材である。調整具22は、回転操作することによって上下動して、測定基準点fから導出口2cまでの距離L1を、被治療歯aの上面から側枝開口部eの中央部までの距離に一致させるための高さ調整を行う回動操作部である。調整具22は、例えば、ナット形状の部材、あるいは、ローレット加工を施した円筒板形状部材(リング状部材)から成る。
【0032】
<位置合わせ手段>
図2及び
図3に示すように、位置合わせ手段20は、導出口2cを、被治療歯aの根管bに形成された側枝dの側枝開口部eに位置決めするための位置合わせを行うための機構である。位置合わせ手段20は、不図示の側枝開口方向検出装置の根管長測定器と、側枝位置検出手段と、で検出した側枝dの高さ方向の長さ及び側枝dの開口方向を、歯科診療手段誘導装置1の調整具22の下面から導出口2cまでの距離L1及び目印2iの向きに、一致させるためのものである。位置合わせ手段20は、側枝dの高さ方向と、側枝dの開口方向と、を位置合わせ可能な調整具22と、調整具22の雌ネジ部22aに螺合する雄ネジ部2h、目盛2f及び目印2iを有するガイド部材21と、を備えて構成されている。
【0033】
≪作用≫
次に、
図1〜
図3を参照して本実施形態に係る歯科診療手段誘導装置1の作用を作業手順に沿って説明する。
【0034】
<準備工程>
歯科診療手段誘導装置1を使用する前に、まず、被治療歯aの虫歯の感染部分を切削工具で取り除き、更に、治療し易くなるように切削した箇所を広げる。次に、ドリルで
図2に示す根管bの入り口を、ガイド部材21が入り易くなるように拡大させる。
【0035】
<側枝計測工程>
続いて、市販の側枝開口方向検出装置(特許文献1参照)を使用して、側枝dの有無と、側枝dの位置と、側枝dの開口方向(角度)と、測定基準点f(根管bの開口部)から側枝開口部eの中央部までの距離L1と、を測定する。これらの測定結果から誘導器具2の導出口2cの位置を決める。
【0036】
<根管撮影用のカメラによる側枝開口部の確認工程>
続いて、
図2及び
図3に示すように、調整具22を回動操作して、調整具22の下面から導出口2cの中央部までの距離L1を、被治療歯aの上面から側枝開口部eの中央部までの距離に一致させる。さらに、誘導器具2の目印2i(
図1参照)を側枝dの開口方向に合わせてセットする。この状態で、誘導器具2のガイド部材21を根管b内に挿入する。次に、誘導器具2の導入口2aに根管撮影用のカメラ(図示省略)を挿入して、導出口2cにカメラの先端を合わせ、根管bの内壁の画像を確認しながら側枝開口部eを見つけて、導出口2cの位置と、側枝開口部eの位置と、が一致していることを確認する。
なお、前記「側枝計測工程」のみを行って、「根管撮影用のカメラによる側枝開口部の確認工程」は、省略してもよい。
【0037】
<位置合わせ工程>
導出口2cの位置と側枝開口部eの位置がずれている場合は、把手2gを回動させて目印2iを、側枝開口方向検出装置で測定した側枝dの開口方向の角度に合わせる。これにより、側枝開口部eの開口方向(角度)と、ガイド部材21の導出口2cの開口方向(角度)と、を一致させることができる。
【0038】
その状態を維持しながら、
図2に示す調整具22を回転操作して、調整具22の下面から導出口2cまでの距離L1を、被治療歯aの上面から側枝開口部eの中央部までの距離L1に一致させる。これにより、導出口2cの上下方向の位置を、側枝開口部eの上下方向の位置に位置合わせすることができる。この状態で、調整具22を被治療歯aの測定基準点fに固定する。
【0039】
<側枝内の治療、洗浄、充填工程>
次に、その状態で、根管撮影用のカメラを誘導器具2から抜く。続いて、リーマ等の歯科診療手段3をガイド部材21内に挿通させて、側枝d内の治療を行う。次に、注水管、エア管等の歯科診療手段3をガイド部材21内に挿通させて、側枝d内の洗浄を行った後、根管充填材(剤)により側枝d等の充填を行うことで、治療が完了する。
なお、「根管撮影用のカメラによる側枝開口部の確認工程」を省略した場合は、カメラを誘導器具2から抜く作業は不要である。
【0040】
このように、本発明は、
図1〜
図3に示すように、被治療歯aの被治療位置gに歯科診療手段3を誘導するための歯科診療手段誘導装置1であって、歯科診療手段3を挿通するための導入口2a、中空部2b、及び、導出口2cを有し歯科診療手段3を誘導する誘導器具2を備え、導出口2cは、歯科診療手段3の導入方向とは異なる方向に開口し、中空部2bは、導入口2aから誘導器具2の先端方向に延設されて、先端部側が導出口2cの方向に湾曲している。
【0041】
これにより、本発明の歯科診療手段誘導装置1は、中空部2bが導入口2aから誘導器具2の先端方向に延設されて、先端部側が導出口2cの方向に湾曲していることで、歯科診療手段3を容易に高い精度で被治療位置gに誘導することができる。このため、被治療位置gが術者から見えない位置にあったとしても、容易に治療することができる。
【0042】
このように、導出口2cは、
図1〜
図3に示すように、誘導器具2の外周面2dに形成されている。
これにより、導出口2cは、誘導器具2の外周面2dに形成されていることで、例えば、誘導器具2が挿入される根管bの延びている方向に対して、側枝dが略直交する方向に形成されているため、導出口2cの方向を側枝dの延在する方向に合わせることができる。このため、側枝開口部eが術者から見えない位置にあったとしても、歯科診療手段3を容易に側枝開口部eの方向に導いて、歯科診療手段3の先端部を側枝dの方向に容易に向けて、側枝d内の治療を行い易くすることができる。
【0043】
また、
図2及び
図3に示すように、導出口2cを、被治療歯aの根管bに形成された側枝dの側枝開口部eに位置決めするための位置合わせ手段20を備えていることが好ましい。
これにより、位置合わせ手段20は、側枝開口部eの位置を視認することができなくても、導出口2cの位置を、側枝開口部eに容易に位置決めすることができる。
【0044】
また、位置合わせ手段20は、
図2及び
図3に示すように、側枝dの高さ方向と、側枝dの開口方向と、を位置合わせ可能な調整具22を備えていることが好ましい。
これにより、位置合わせ手段20は、調整具22によって、側枝dの高さ方向と、側枝dの開口方向と、を容易に位置合わせすることができる。
【0045】
また、誘導器具2は、フレキシブル素材から成ることが好ましい。
これにより、誘導器具2は、中空部2b内に挿入した際に、中空部2b内に湾曲部2eがあったとしても、湾曲部2eに沿って弾性変形して側枝開口部eの方向に導かれるようにすることができる。
【0046】
また、誘導器具2は、電鋳で形成されていることが好ましい。
これにより、誘導器具2は、電鋳で形成されていることによって、
図1及び
図2に示す目盛2fを正確に設けることが可能である。
【0047】
また、
図1及び
図3に示すように、誘導器具2の表面には、導出口2cの中央部を基準とする目盛2fが設けられていることが好ましい。
これにより、誘導器具2は、直接視認することができない側枝dの位置や、歯周ポケットh(
図10参照)の深さを、目盛2fを目視することで読み取ることが可能となる。
【0048】
また、歯科診療手段3は、被治療歯aの根管bに形成された側枝dを開拡、洗浄、乾燥あるいは滅菌するための治療手段、または、前記側枝d内を観察する観察手段であることが好ましい。
【0049】
ここで、治療手段とは、被治療歯aを治療するのに使用されるものであって、リーマ、ファイル、ゲーツドリル、クレンザー、角ブローチ、スケーラ、歯科用レーザ治療装置の照射ノズル(照射ファイバー)、超音波用根管治療機器のスケラーチップ、注水管、エア供給管、薬液供給管、スプレー管、排気管、排水管等である。
また、観察手段とは、側枝dを監視するための装置であって、根管撮影用カメラ等である。
【0050】
これにより、歯科診療手段3は、側枝dを治療する際に、側枝d内を観察する観察手段に使用したり、側枝dを開拡、洗浄、乾燥あるいは滅菌したりするのに使用できるため、種々の治療器具を対応可能で便利である。
【0051】
[第1変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図4は、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置の第1変形例を示す概略拡大正面図である。
図5は、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置の第1変形例を示す概略拡大分解斜視図である。
【0053】
例えば、誘導器具2Aは、
図4及び
図5に示すように、被治療歯aに固定するための固定手段24Aを備えていてもよい。
これにより、誘導器具2Aは、固定手段24Aを備えていることで、被治療歯aに安定した状態に固定することができる。このため、誘導器具2Aは、手等で支える必要がないので、歯科診療手段3を誘導器具2A内に容易に挿入することができる。また、誘導器具2Aは、固定手段24Aを備えていることで、側枝開口方向検出装置等の測定器で検出した基準位置と、誘導器具2Aの基準位置と、を容易に合わせることが可能となる。
【0054】
また、
図4または
図5に示すように、固定手段24Aは、被治療歯aを頬側または舌側方向から挟む挟持部24Abと、挟持部24Abの基端部側に設けられて被治療歯aの根管bに形成された側枝dの側枝開口部eの開口方向を表示するための開口方向表示部24Aeと、誘導器具2Aを挿入するための誘導器具挿入孔24Afと、を備え、誘導器具2Aは、当該誘導器具2Aの基準位置と、側枝開口方向検出装置で検出した側枝dの基準位置と、を合わせることが好ましい。
【0055】
これにより、固定手段24Aは、
図4に示すように、被治療歯aを頬側または舌側方向から挟む挟持部24Abを有していることで、誘導器具2Aを被治療歯aに挟んで安定した状態に固定することができるため、治療を行い易くすることができる。また、固定手段24Aは、側枝開口部eの開口方向を表示するための開口方向表示部24Aeを有していることで、見えない箇所にある側枝dの開口方向を表示することができるため、側枝dを手探りで探すのを解消することができる。また、誘導器具2Aは、この誘導器具2Aの基準位置と、側枝開口方向検出装置で検出した側枝dの基準位置と、を合わせることができるので、側枝dの位置(角度)及び側枝開口部eの高さを明確に把握することが可能となる。
【0056】
本発明の第1変形例の場合、誘導器具2Aのガイド部材21Aは、
図4または
図5に示すように、調整具22Aまたは締結具23Aとは別体でもよい。ガイド部材21Aには、導入口2Aaと、中空部2Abと、導出口2Acと、湾曲部2Aeと、目盛2Afと、雄ネジ部2Ahと、目印2Aiと、を有している。目印2Aiは、側枝開口部eの開口方向を示す三角形のマークである。目印2Aiは、誘導器具2Aの上端面において、において、平面視して導出口2Acの方向と同一方向に目印2Aiを向けて付記されている。
【0057】
調整具22A及び締結具23Aは、雌ネジ部22Aa,23Aaを有するナット状の部材である。調整具22Aと締結具23とは、固定手段24Aの上面を上下方向から挟持するように雄ネジ部2Ahに螺着される。調整具22A及び締結具23Aの雄ネジ部2Ahに螺着される位置を調整することによって、導出口2Acの中央部から測定基準点fとなる締結具23の下面までの距離を調整することが可能になっている。
【0058】
固定手段24Aは、側面視して三角形に折曲加工された板ばね部材から成るダブルクリップ形状の固定部本体24Aaによって形成されている。
固定部本体24Aaの左右には、被治療歯aに挟んで固定するためのばね力を有する挟持部24Abが形成されている。固定部本体24Aaの左右下端部には、挟持部24Abを外側に広げるためのレバー25Aがそれぞれ軸支される軸支部24Acが設けられている。固定部本体24Aaの上側の平らな面には、誘導器具2Aを設置するための誘導器具挿入孔24Afと、導出口2Acの開口方向を示す開口方向表示部24Aeと、が設けられている。
【0059】
開口方向表示部24Aeは、側枝開口部eの開口方向(角度)を合わせるときの角度目盛である。開口方向表示部24Aeは、誘導器具挿入孔24Afの周囲に放射状に付記または刻設されている。
【0060】
レバー25Aは、金属製棒状部材を側面視して略Ω字状に形成した左右一対の部材から成る。左右のレバー25Aは、矢印C方向に操作すると、固定部本体24Aaの左右の折曲部24Adを中心として挟持部24Abが外側方向(矢印A方向)に広がる。レバー25Aから指を放せば、挟持部24Abがこの挟持部24Abのばね力によって元の位置方向(矢印B方向)に自動戻りして、被治療歯aに挟持させることができる。
【0061】
次に、本発明の第1変形例の歯科診療手段誘導装置1Aによる作業手順を説明する。
まず、
図1〜
図3に示すように、実施形態と同様に、例えば、「準備工程」、「側枝計測工程」、「根管撮影用のカメラによる側枝開口部の確認工程」を行う。次に、
図4に示すガイド部材21Aと調整具22Aを使って側枝dの位置合わせを行う位置合わせ工程を行う。この時点で側枝eの開口方向と、基準位置fから側枝開口部eまでの距離L1と、が定まる。
【0062】
続いて、調整具22Aから突出しているガイド部材21Aの雄ネジ部2Ahが、固定手段24Aの誘導器具挿入孔24Afの中を通過するように、レバー25Aを使って固定手段24Aの挟持部24Abを開いて、上方から固定手段24Aを被治療歯aに被せる。次に、被治療歯aを固定手段24Aの挟持部24Abで頬側と舌側方向から挟むようにして挟持部24Abを閉じる(固定手段取付工程)。
【0063】
続いて、固定手段24Aから突出した雄ネジ部2Ahの部分に締結具23Aを螺着させて、誘導器具2Aを被治療歯aの測定基準点fに固定させる(誘導器具取付工程)。
このようにして、誘導器具2Aを被治療歯aに固定して、ガイド部材21A及び導出口2Acを根管b内の側枝開口部eに合致した状態で固定することができる。このため、固定手段24Aは、この後行う「側枝内の治療、洗浄、充填工程」の作業を行い易くすることができる。
【0064】
[第2変形例]
図6は、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置の第2変形例を示す要部拡大概略縦断面図である。
【0065】
また、誘導器具2Bは、
図6に示すように、導出口2Bcとは反対側の外周面2Bdに、被治療歯aの根管bの内壁面に当接させるためのガイド凸部2Bfを形成していることが好ましい。
【0066】
この場合、被治療歯aの被治療位置gに歯科診療手段3を誘導するための歯科診療手段誘導装置1Bは、歯科診療手段3を挿通するための導入口2Ba、中空部2Bb、及び、導出口2Bcを有し、歯科診療手段3を誘導する誘導器具2Bを備えている。導出口2Bcは、誘導器具2Bの先端に形成されて、歯科診療手段3の導入方向とは異なる方向に向けて開口している。中空部2Bbは、導入口2Baから誘導器具2Bの先端方向に延設されて、先端部側が導出口2Bcの方向に湾曲し、導出口2Bcが側枝開口部eの方向を向くように形成されている。
【0067】
このように、誘導器具2Bは、
図6に示すように、ガイド凸部2Bfがあることで、ガイド凸部2Bfを根管bの内壁に当接させて安定化させて案内させることができる。
また、誘導器具2Bは、そのガイド凸部2Bfを支点として、てこの原理で、誘導器具2Bの元端(支持部)を側枝dとは反対方向(矢印E方向)に指先でモーメントを加えることで、導出口2Bcの周囲端部が作用点として働き、側枝dの周囲の根管壁iと接触し、誘導器具2Bを根管b内に安定した状態に保持し、歯科診療手段3の側枝dへの案内を容易にすることができる。
【0068】
図7は、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置の第2変形例の変形例を示す要部拡大概略縦断面図である。
また、
図7に示すように、誘導器具2B1は、例えば、弾力性のある素材によってS字状に形成することで、ガイド凸部2B1fが根管bの内壁iに触れる接触点jと、誘導器具2B1の他の部分が根管bの内壁iに触れる接触点kとの2点が、互いに反発するように根管bの内壁iに接触し、接触したときの摩擦力によって安定化させて保持するようにしてもよい。
【0069】
さらにまた、
図6に示す誘導器具2Bは、例えば、弾力性のある素材によってスパイラル状に形成することで、誘導器具2Bが根管b内で周囲に広がるように(点または線で)接触し、接触したときの摩擦力によって安定化させて保持するようにしてもよい。この場合、誘導器具2Bが縦横方向の揺れを抑えることができる。
【0070】
[第3変形例]
図8は、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置の第3変形例を示す要部拡大概略縦断面図である。
図9は、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置の第3変形例を示す要部拡大概略斜視図である。
【0071】
また、本発明に係る歯科診療手段誘導装置1Cは、
図8及び
図9に示すように、誘導器具2Cを着脱可能に保持するホルダ20Cと、を備え、ホルダ20Cは、歯科診療手段3Cの支持部31Cを回転自在に軸支する回転支持部21Cと、回転支持部21Cを進退自在に支持するガイド部20Cbと、を備え、支持部31Cは、回転させることによって歯科診療手段3Cを連動回転させ、回転支持部21Cを進退させることによって支持部31Cに軸支された歯科診療手段3Cを進退させることが好ましい。
【0072】
本発明の第3変形例の場合、誘導器具2Cは、例えば、実施形態で説明したものと同一である。
ホルダ20Cは、誘導器具2Cの把手2gを保持するチャック部20Caと、回転支持部21Cを進退自在に支持するガイド部20Cbと、回転操作及びスライド操作するためのグリップ部20Ccと、を有している。
回転支持部21Cは、ガイド部20Cbに進退自在及び着脱可能に取り付けられているスライダ部21Caと、支持部31Cを回転自在に軸支する軸支部21Cbと、を有している。
【0073】
歯科診療手段3Cは、軸支部21Cbに軸支された支持部31Cと、先端部に刃部32Caを有する針部32Cと、を有している。
支持部31Cは、ホルダ20Cに配置されて、手で回転操作及びスライド操作可能するためのロータリー式のノブである。
針部32Cは、誘導器具2Cに進退自在及び回転自在に挿入されている。
なお、支持部31Cから針部32Cまでの部材は、例えば、バネ部材や、ゴムチューブにすることで、支持部31Cの回転を針部32Cに伝達することが可能である。
【0074】
歯科診療手段誘導装置1Cは、誘導器具2Cを着脱可能に保持するホルダ20Cを備えていることで、誘導器具2Cを安定した状態にしっかりと保持することができる。また、ホルダ20Cは、歯科診療手段3Cの支持部31Cを回転自在に軸支する回転支持部21Cを備えていることで、支持部31Cを回転操作することによって、刃部32Caを回転させて、被治療位置gを切削することができる。また、ホルダ20Cは、回転支持部21Cを進退自在に支持するガイド部20Cbを備えていることで、回転支持部21Cを前後方向に(矢印D方向)に移動させることによって、刃部32Caを進退移動させて被治療位置gに容易に移動させることができる。このように、支持部31Cは、歯科診療手段3Cを回転操作及び進退操作させることで、容易に治療を行うことができる。
【0075】
[第4変形例]
図10は、本発明の実施形態に係る歯科診療手段誘導装置の第4変形例を示す要部拡大概略縦断面図である。
【0076】
また、本発明は、
図10に示すように、導出口2Dcは、誘導器具2Dの先端に形成され、誘導器具2Dは、導入口2Daから誘導器具2Dの先端方向に延設されて、先端部側が湾曲していることが好ましい。
【0077】
この場合、歯科診療手段3Dは、歯周ポケットh内の歯根部分に付着した歯石(歯肉縁下歯石)を取り除くスケーリング・ルートプレーニングという歯周治療を行うキュレットと呼ばれる手用スケーラである。歯科診療手段3Dは、針部32Dの先端側に刃部32Daを有している。
【0078】
誘導器具2Dは、導入口2Daと、中空部2Db、導出口2Dcと、把手2Dgと、誘導器具2D内に挿入した針部32Dの進退方向をガイドする方向を規制するガイド部2Djと、ガイド部2Djの先端側寄りの部分に形成されて刃部32Daの先端部を被治療位置gの向に導くための湾曲部2Dkと、を有している。
【0079】
このように、誘導器具2Dは、導入口2Daから誘導器具2Dの先端方向に延設されて、先端部側が湾曲していることで、誘導器具2D内に挿入した針部32Dの先端部を被治療位置gの方向に向くように規制することができる。このため、刃部32Daによって被治療位置gを容易に治療することができる。
【0080】
また、
図10に示すように、被治療歯aの被治療位置gは、根管b内、または、歯周ポケットh内にあることが好ましい。
これにより、歯科診療手段誘導装置1Dは、側枝d以外に、根管b内、または、歯周ポケットh内にある被治療歯aの被治療位置gであっても治療可能である。
【0081】
また、
図10に示すように、被治療歯aの被治療位置gは、歯周ポケットh内にあり、歯科診療手段3Dは、歯石または細菌性プラークの除去、炎症した歯肉または細菌が作り出す代謝産物を切開、切除、蒸散または凝固させるための器具から成ることが好ましい。
【0082】
これにより、歯科診療手段誘導装置1Dは、従来、歯周ポケットhが深くなるに連れて操作は複雑となり、適切な技術及び時間と労力を必要としていたのを解消することができる。歯科診療手段誘導装置1Dは、その作業を容易にし、歯科診療手段3Dで使われる器具を交換することで、従来では入り込めなかった歯茎の内部に入り込んだ歯石を除去することができる。更に、汚染された根面のセメント質や、象牙質を除去して、硬く滑らかな根面に滑沢にすることができる。それにより、滞留物が付着し難くなり、歯肉の炎症を解消し、歯周組織が更に破壊されるのを抑制することができる。
【0083】
なお、歯科診療手段誘導装置1Dは、歯石または細菌性プラークの除去、炎症した歯肉または細菌が作り出す代謝産物を切開、切除、蒸散または凝固させるための歯科診療手段3Dで、誘導器具2Dに挿入できるものであればよい。例えば、
図10に示す歯科診療手段3Dは、手用スケーラ以外に、レーザ照射ファイバーであってもよい。
【0084】
[その他の変形例]
例えば、本発明の第1変形例の固定手段24Aは、
図4及び
図5に示すようなダブルクリップ形状のものに限定されるものではなく、被治療歯aに固定できるものであればよい。固定手段24Aは、小型のバイスや、小型の万力等の固定具であってもよい。
【0085】
また、本発明の第3変形例の回転支持部21C及び支持部31Cは、
図8及び
図9に示すような手動式のものに限定されるものではなく、モータ等を設けた電動式のものであってもよい。ガイド部材21Cは、モータ歯車機構によってスライド移動するようにしてもよい。また、支持部31は、モータ歯車機構によって回転駆動するようにしてもよい。
【解決手段】歯科診療手段誘導装置1は、被治療歯aの被治療位置gに歯科診療手段3を誘導するための装置である。歯科診療手段誘導装置1は、歯科診療手段3を挿通するための導入口2a、中空部2b、及び、導出口2cを有し歯科診療手段3を誘導する誘導器具2を備えている。導出口2cは、歯科診療手段3の導入方向とは異なる方向に開口している。中空部2bは、導入口2aから誘導器具2の先端方向に延設されて、先端部側が導出口2cの方向に湾曲している。