(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6639712
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】熱硬化性離型塗料および熱硬化性離型塗料キット
(51)【国際特許分類】
C09D 161/28 20060101AFI20200127BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20200127BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20200127BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20200127BHJP
【FI】
C09D161/28
C09D7/63
C09D7/65
C09D7/61
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-25378(P2019-25378)
(22)【出願日】2019年2月15日
【審査請求日】2019年3月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591176225
【氏名又は名称】桜宮化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 一幸
(72)【発明者】
【氏名】田深 定輝
【審査官】
上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−164762(JP,A)
【文献】
特開昭59−117537(JP,A)
【文献】
特開2012−097132(JP,A)
【文献】
特開2015−152745(JP,A)
【文献】
特開2007−065488(JP,A)
【文献】
国際公開第2018/159418(WO,A1)
【文献】
特開平11−071521(JP,A)
【文献】
特開平04−117475(JP,A)
【文献】
特開2006−002075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂と、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つと、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂および前記官能基を含有する変性フッ素樹脂の少なくとも1つと、酸触媒と、を含み、
前記酸触媒は硫酸を含む熱硬化性離型塗料。
【請求項2】
前記低分子量ジオールおよび前記低分子量トリオールの少なくとも1つは、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、およびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の熱硬化性離型塗料。
【請求項3】
単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つ、ならびに水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂および前記官能基を含有する変性フッ素樹脂の少なくとも1つを含む第1剤と、
酸触媒を含む第2剤と、を含み、
前記酸触媒は硫酸を含む熱硬化性離型塗料キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化性離型塗料および熱硬化性離型塗料キットに関する。
【背景技術】
【0002】
基材フィルムに熱硬化性離型塗料を塗布して熱硬化させた離型フィルムは、粘着シート、粘着テープ、タッチパネルなどの対象物の保護フィルムとして広く用いられる。基材フィルムの熱による変形を抑制する観点から、低温で熱硬化することにより離型フィルムが得られる熱硬化性離型塗料の開発が求められている。
【0003】
特開2017−78161号公報(特許文献1)は、メチル化メラミン樹脂、分子量100〜3000のポリオール、および酸触媒を含有する熱硬化性離型コーティング剤を開示する。
【0004】
特開2018−168303号公報(特許文献2)は、基材と、基材の片側に設けられた剥離剤層とを備えた粘着シート用剥離フィルムであって、剥離層は、メラミン樹脂と、カルビノール変性オルガノシロキサンとを含有する剥離剤組成物から形成されており、剥離剤組成物中におけるメラミン樹脂の配合量は70質量%以上99質量%以下であり、剥離剤組成物中におけるカルビノール変性ポリオルガノシロキサンの配合量は1質量%以上10質量%以下である粘着シート用剥離フィルムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−78161号公報
【特許文献2】特開2018−168303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2017−78161号公報(特許文献1)に開示の熱硬化性離型コーティング剤は、離型性および残留接着性に優れた硬化膜を比較的低温かつ短時間(具体的には90〜130℃で30秒間〜2分間)で形成することができる。しかしながら、基材フィルムの熱による変形をさらに抑制するため、さらに低温において熱硬化が可能な熱硬化性離型塗料が求められている。
【0007】
特開2018−168303号公報(特許文献2)に開示の粘着シート用剥離フィルムは、剥離剤層が比較的低温での硬化性に優れている(具体的には120℃で1分間)。しかしながら、基材フィルムの熱による変形をさらに抑制するため、さらに低温において熱硬化が可能な熱硬化性離型塗料が求められている。
【0008】
そこで、従来よりも低温においても短時間(たとえば80℃で1分間)で硬化が可能な熱硬化性離型塗料および熱硬化性離型塗料キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の熱硬化性離型塗料は、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂と、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つと、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂およびかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂の少なくとも1つと、酸触媒と、を含む。
上記熱硬化性離型塗料において、酸触媒は硫酸を含むことができる。
【0010】
上記熱硬化性離型塗料において、低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つを、エチレングリコール、プロピレング
リコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、およびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1つとすることができる。
【0011】
本開示の熱硬化性離型塗料キットは、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つ、ならびに水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂およびかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂の少なくとも1つを含む第1剤と、酸触媒を含む第2剤と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
上記によれば、従来よりも低温においても短時間(たとえば80℃で1分間)で硬化が可能な熱硬化性離型塗料および熱硬化性離型塗料キットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1:熱硬化性離型塗料>
本実施形態の熱硬化性離型塗料は、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂と、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つと、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂およびかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂の少なくとも1つと、酸触媒と、を含む。本実施形態の熱硬化性離型塗料は、従来よりも低温においても短時間(たとえば80℃で1分間)で硬化が可能であるため、従来よりも低温で離型フィルムを形成することができる。
【0014】
(メラミン樹脂)
上記熱硬化性離型塗料に含まれるメラミン樹脂は単核体の含有量が80質量%以上である。ここで、単核体の含有量とは、メラミン樹脂中に含まれる、単核体(1つのメラミン核で構成されているメラミン樹脂成分体)および多核体(2以上のメラミン核で構成されているメラミン樹脂成分体、二核体、三核体など)の全体量に対する単核体の含有量をいう。上記熱硬化性離型塗料は、それに含まれる単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂が、低分子量ジオールおよび/または低分子量トリオールならびに水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂および/またはかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂との反応性が高いため、従来よりも低温で硬化が可能となる。
【0015】
上記メラミン樹脂は、特に制限はないが、低温でかつ短時間で硬化する観点から、メトキシメチルメラミンなどのメチル化メラミン樹脂が好ましく、ヘキサメトキシメチルメラミンがより好ましい。
【0016】
上記熱硬化性離型塗料における上記メラミン樹脂および後述の低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つの全体の固形分100質量部に対する上記メラミン樹脂の固形分の質量部数は、特に制限はないが、塗料の表面張力の上昇および上記変性シリコーン樹脂および/または上記変性フッ素樹脂との相溶性低下などによる塗膜におけるハジキおよび/または白化の発生を抑制する観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、さらに好ましくは50質量部以上であり、低温でかつ短時間で硬化する観点から、好ましくは99質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下である。
【0017】
(低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つ)
上記熱硬化性離型塗料に含まれる低分子量ジオールおよび低分子量トリオールは、分子量が100未満である。上記熱硬化性離型塗料は、それに含まれる分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つが、上記単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、ならびに水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂および/またはかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂との反応性が高いため、従来よりも低温で硬化が可能となる。
【0018】
上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つは、分子量が100未満であれば特に制限はないが、低温でかつ短時間で硬化する観点から、エチレングリコール、プロピレング
リコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、およびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。さらに、上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つは、低温でかつ短時間で硬化するとともに安価である観点から、エチレングリコールがより好ましい。ここで、上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つは、上記低分子量ジオールまたは上記低分子量トリオールのそれぞれ単独であってもよく、上記低分子量ジオールおよび上記低分子量トリオールの両方の併用または混合であってもよい。
【0019】
上記熱硬化性離型塗料における上記メラミン樹脂および上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つの全体の固形分100質量部に対する上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つの固形分の質量部数は、特に制限はないが、低温でかつ短時間で硬化する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、塗料の表面張力の上昇および上記変性シリコーン樹脂および/または上記変性フッ素樹脂との相溶性低下などによる塗膜におけるハジキおよび/または白化の発生を抑制する観点から、好ましくは90質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下であり、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0020】
(水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂およびかかる官能基を含有するフッ素樹脂の少なくとも1つ)
上記熱硬化性離型塗料に含まれるシリコーン樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂である。また、上記熱硬化性離型塗料に含まれるフッ素樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性フッ素樹脂である。上記熱硬化性離型塗料は、上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つを含むため、形成される離型フィルムは対象物との離型性を有する。ここで、上記熱硬化性離型塗料は、それに含まれる上記変性シリコーン樹脂および/または上記変性フッ素樹脂の種類および含有量により、形成される離型フィルムと対象物との剥離力を調節することができる。また、上記熱硬化性離型塗料が上記変性シリコーン樹脂を含む場合には、上記変性シリコーン樹脂と上記単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂および上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つとの反応性が高く、従来よりも低温で硬化が可能となる。
【0021】
上記変性シリコーン樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有するものであれば、変性の形態は特に制限はないが、メラミン樹脂との反応性が高い観点から、ポリシロキサンの少なくとも一方の末端もしくは側鎖を、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有するポリエステルと反応させた、あるいは、上記官能基を含有するポリシロキサンの少なくとも一方の末端もしくは側鎖を、ポリエステルと反応させたポリエステル変性シリコーン樹脂が好ましく、ポリシロキサンの両末端を、上記官能基を含有するポリエステルと反応させた、あるいは、上記官能基を含有するポリシロキサンの両末端を、ポリエステルと反応させた両末端ポリエステル変性シリコーン樹脂がより好ましい。
【0022】
なお、上記官能基を含有するシリコーン変性アクリル樹脂などのようにシリコーン樹脂以外の樹脂名であっても、上記官能基を含有するシリコーンを含む樹脂は上記変性シリコーン樹脂に含めるものとする。ここで、上記官能基を含有するシリコーン変性アクリル樹脂とは、アクリル樹脂の少なくとも一方の末端もしくは側鎖を、上記官能基を有するポリシロキサンと反応させた樹脂、あるいは、上記官能基を有するアクリル樹脂の少なくとも一方の末端もしくは側鎖を、ポリシロキサンと反応させた樹脂をいう。
【0023】
また、上記変性フッ素樹脂は、特に制限はないが、剥離性が良好な観点から、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性フッ素樹脂オリゴマーが好ましい。また、上記変性フッ素樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有するものであれば、変性の形態は特に制限はない。
【0024】
ここで、上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つは、上記変性シリコーン樹脂または上記変性フッ素樹脂のそれぞれ単独であってもよく、上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の両方の併用または混合であってもよい。
【0025】
上記熱硬化性離型塗料における上記メラミン樹脂および上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つの全体の固形分100質量部に対する上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つの固形分の質量部数は、特に制限はないが、形成される離型フィルムと対象物との剥離力を高くし過ぎない観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、形成される離型フィルムと対象物との剥離力を低くし過ぎない調節する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0026】
(酸触媒)
上記熱硬化性離型塗料に含まれる酸触媒は、特に制限はないが、上記単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび/または分子量が100未満の低分子量トリオール、ならびに水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂および/またはかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂を、従来よりも低温で硬化させる観点から、スルホン酸系触媒を含むことが好ましく、パラトルエンスルホン酸および硫酸の少なくともいずれかを含むことがより好ましく、硫酸を含むことがさらに好ましい。特に、上記熱硬化性離型塗料に含まれる酸触媒が硫酸を含むことにより、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、上記低分子量ジオールおよび上記低分子量トリオールの少なくとも1つ、ならびに上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つと、酸触媒とを混合させてから熱を加えるまでのポットライフを長くすることができる。酸触媒中の硫酸の含有率は、特に制限はないが、上記ポットライフを長くする観点から、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。ここで、酸触媒は、1種類の酸触媒の単独であってもよく、複数の種類の酸触媒の併用または混合であってもよい。
【0027】
上記熱硬化性離型塗料における上記メラミン樹脂および上記低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つの全体の固形分100質量部に対する酸触媒の固形分の質量部数は、特に制限はないが、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つ、ならびに上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つを、従来よりも低温で硬化させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、実用性が高い観点から、好ましくは12質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。
【0028】
<実施形態2:熱硬化性離型塗料キット>
本実施形態の熱硬化性離型塗料キットは、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つ、ならびに水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂およびかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂の少なくとも1つを含む第1剤と、酸触媒を含む第2剤と、を含む。本実施形態の熱硬化性離型塗料キットは、上記第1剤と上記第2剤とを混合することにより、実施形態1の熱硬化性離型塗料が得られ、従来よりも低温で離型フィルムを形成することができる。また、本実施形態の熱硬化性離型塗料キットは、第1剤に含まれる単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つ、ならびに上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つと、第2剤に含まれる酸触媒とが接触しないため、第1剤に含まれる単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂と、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つと、上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つとの熱硬化反応が抑制されるため、使用前に長期に亘って保存が可能である。
【0029】
単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つ、上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つ、ならびに酸触媒は、実施形態1の熱硬化性離型塗料において説明した単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つ、上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つ、ならびに酸触媒とそれぞれ同じであるため、ここでは繰り返さない。
【実施例】
【0030】
1.熱硬化性離型塗料の調製
表1〜4に示す種類および質量部のメラミン樹脂、低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つ、変性シリコーン樹脂および変性フッ素樹脂の少なくとも1つ、ならびに酸触媒を、メチルエチルケトンおよびトルエンの混合溶剤(メチルエチルケトンとトルエンの体積比が50:50)中で、固形分濃度が20質量%になるように配合することにより、熱硬化性離型塗料を調製した。
【0031】
ここで、メラミン樹脂としては、オルネクスジャパン社製サイメル300(単核体の含有量:80質量%、固形分:100質量%)、または、オルネクスジャパン社製サイメル303(単核体の含有量:60質量%、固形分:100質量%)を用いた。
【0032】
低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの少なくとも1つとしては、エチレング
リコール(分子量:62.07、固形分:100質量%)、プロピレングリコール(分子量:76.09、固形分100質量%)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(分子量:90.12、固形分100質量%)、1,3−ブタンジオール(分子量:90.12、固形分:100質量%)、1,4−ブタンジオール(分子量:90.12、固形分:100質量%)、グリセリン(分子量:90.09、固形分:100質量%)、または、トリメチロールプロパン(分子量134.17、固形分100質量%)を用いた。
【0033】
変性シリコーン樹脂としては、ビッグケミー・ジャパン社製BYK−375(水酸基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分:25質量%)、信越化学工業社製x−22−4952(水酸基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分:100質量%)、ビッグケミー・ジャパン社製BYK−370(水酸基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分:25質量%)、JNC社製FM−4425(水酸基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分:100質量%)、ビッグケミー・ジャパン社製BYK−SILCLEAN(水酸基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分:25質量%)、信越化学工業社製x−22−162C(カルボキシル基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分100質量%)、信越化学工業社製x−22−167B(メルカプト基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分97.6質量%)、信越化学工業社製x−22−161B(アミノ基を含有する変性シリコーン樹脂、固形分100質量%)、または、信越化学工業社製x−22−163B(エポキシ基を含有するシリコーン変性アクリル樹脂、固形分100質量%)を用いた。変性フッ素樹脂としては、DIC社製メガファックRS−56(含フッ素基・親水性基(ここで、親水基とは、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基をいう)・親油基・UV反応性基含有オリゴマー、固形分:40質量%)を用いた。
【0034】
酸触媒としては、パラトルエンスルホン酸(固形分:100質量%)、ドデシルベンゼンスルホン酸(固形分:100質量%)、または、硫酸(固形分:97質量%以上、塗料調製における質量部は固形分100質量%として計算したものである)を用いた。
【0035】
2.離型フィルムの作製
得られた熱硬化性離型塗料を、塗料調製から室温(25℃)で1時間以内に、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製E5101、厚さ25μm)のコロナ処理面に、熱硬化後の塗膜の厚さが1μmになるように塗布した後、80℃の低温で1分間熱硬化させることにより、離型フィルムを作製した。また、得られた熱硬化性離型塗料を静置し、塗料調製から室温(25℃)で24時間(1日)経過後に、上記と同じ条件(80℃の低温で1分間)で熱硬化させることにより塗膜を形成することにより、離型フィルムを作製した。
【0036】
3.硬化性の評価
得られた離型フィルム(塗料調製から室温(25℃)で1時間以内に80℃で1分間の条件で熱硬化したものおよび塗料調製から室温(25℃)で24時間(1日)経過後に80℃で1分間の条件で熱硬化したもの)の塗膜形成面を、メチルエチルケトンを浸したガーゼで1kgfの荷重で擦り、基材フィルムが露出するまでの往復回数を測定した。100回以上擦っても基材フィルムが露出しないものを硬化性が優、10回以上99回以下擦ったときに基材フィルムが露出するものを硬化性が良、9回以下擦ったときに基材フィルムが露出するものを硬化性が不良と評価した。結果を表1〜4にまとめた。
【0037】
4.剥離力の評価
得られた離型フィルム(塗料調製から室温(25℃)で1時間以内に80℃で1分間の条件で熱硬化したもの)に、ポリエステル粘着テープ(日東電工社製31Bテープ、幅:25mm)を、ゴムロールを用いて2kgfの荷重で圧着させながら貼り合せた後、25℃で30分間放置した。次に、このテープを180°角度、剥離速度300mm/minで引っ張り、剥離するのに要する力(剥離力)を島津製作所社AUTO GRAPH AGS−Hを用い測定した。剥離力が0gf以上100gf以下のものを低、剥離力が100gfより大きく200gf以下のものを中、剥離力が200gfより大きく800gf以下のものを高と評価した。なお、剥離力の低、中、または高は、用途およびその目的によって、いずれが適切かが異なる。本実施例においては、剥離力が中であることを目標とした。結果を表1〜4にまとめた。ここで、表1の備考欄において、「ハジキ」とは基材上の塗料の一部がはじかれて塗膜の一部に基材が露出する現象をいい、「白化」とは塗膜の乾燥過程で塗膜表面が白くボケて艶がなくなった状態をいう。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
表1〜4を参照して、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂と、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つと、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂およびかかる官能基を含有する変性フッ素樹脂の少なくとも1つと、酸触媒と、を含む熱硬化性離型塗料は、従来に比べて低温においても短時間(たとえば80℃で1分間)で熱硬化が可能であり、良好な離型フィルムが得られた。さらに、酸触媒中に硫酸を含む熱硬化性離型塗料は、ポットライフが長くなった。
【0043】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【要約】
【課題】従来よりも低温においても短時間(たとえば80℃で1分間)で硬化が可能な熱硬化性離型塗料および熱硬化性離型塗料キットを提供する。
【解決手段】熱硬化性離型塗料は、単核体の含有量が80質量%以上のメラミン樹脂と、分子量が100未満の低分子量ジオールおよび分子量が100未満の低分子量トリオールの少なくとも1つと、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する変性シリコーン樹脂およびかかる官能基を含有するフッ素樹脂の少なくとも1つと、酸触媒と、を含む。熱硬化性離型塗料キットは、上記メラミン樹脂、上記低分子量ジオールおよび上記低分子量トリオールの少なくとも1つ、ならびに上記変性シリコーン樹脂および上記変性フッ素樹脂の少なくとも1つを含む第1剤と、上記酸触媒を含む第2剤と、を含む。
【選択図】なし