(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本明細書において、特に限定されない限り、記号、単位、略号、用語は以下の意味を有するものとする。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
【0013】
本明細書において、〜または−を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5〜25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0014】
本明細書において、炭化水素は、炭素および水素を含み、必要に応じて、酸素または窒素を含むものを意味する。炭化水素基は、1価または2価以上の、炭化水素を意味する。 本明細書において、脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族炭化水素を意味し、脂肪族炭化水素基は、1価または2価以上の、脂肪族炭化水素を意味する。芳香族炭化水素は、必要に応じて脂肪族炭化水素基を置換基として有することも、脂環と縮合していていることもできる、芳香環を含む炭化水素を意味する。芳香族炭化水素基は、1価または2価以上の、芳香族炭化水素を意味する。また、芳香環とは、共役不飽和環構造を有する炭化水素を意味し、脂環とは、環構造を有するが共役不飽和環構造を含まない炭化水素を意味する。
【0015】
本明細書において、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味し、直鎖状アルキルおよび分岐鎖状アルキルを包含し、シクロアルキルとは環状構造を含む飽和炭化水素から水素をひとつ除外した基を意味し、必要に応じて環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルを側鎖として含む。
【0016】
本明細書においてアリールとは、芳香族炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味する。アルキレンとは、直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素を二つ除去した基を意味する。アリーレンとは、芳香族炭化水素から任意の水素を二つ除去した炭化水素基を意味する。
【0017】
本明細書において、「C
x〜y」、「C
x〜C
y」および「C
x」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C
1〜6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0018】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれかである。
本明細書において、%は質量%、比は質量比を表す。
【0019】
本明細書において、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0020】
<ポジ型感光性ポリシロキサン組成物>
本発明によるポジ型感光性ポリシロキサン組成物(以下、単に、組成物ということがある)は、(I)ポリシロキサン、(II)カルボン酸化合物、(III)ジアゾナフトキノン誘導体、および(IV)溶剤を含んでなるものである。
以下、本発明による組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0021】
(I)ポリシロキサン
本発明において用いられるポリシロキサンは、その構造は特に制限されず、目的に応じて任意のものから選択することができる。ポリシロキサンの骨格構造は、ケイ素原子に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素原子に結合する酸素原子数が4)に分類できる。本発明においては、これらのいずれであってもよい。ポリシロキサン分子が、これらの骨格構造の複数の組み合わせを含んだものであってもよい。
【0022】
好ましくは、本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ia):
【化1】
(式中、
R
Iaは、水素、C
1〜30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、または1以上のメチレンがオキシ、アミノ、イミノもしくはカルボニルで置きかえられており、ただし、R
Iaはヒドロキシ、アルコキシではない)で示される繰り返し単位を含んでなる。
なお、ここで、上記したメチレンは、末端のメチルも含むものとする。
また、上記の「フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており」とは、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基中の炭素原子に直結する水素原子が、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置き換えられていることを意味する。本明細書において、他の同様の記載においても同じである。
【0023】
式(Ia)で示される繰り返し単位において、
R
Iaとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。R
Iaがメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、R
Iaがフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。また、R
Iaがヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0024】
本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ib):
【化2】
(式中、
R
Ibは、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数の水素を除去した基である)
で示される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0025】
式(Ib)における、R
Ibとしては、好ましくは、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素含有脂肪族炭化水素環、より好ましくは構成員に窒素を含む5員環または6員環、から複数、好ましくは2つまたは3つの水素を除去した基である。例えばピペリジン、ピロリジン、およびイソシアヌレートから2つまたは3つの水素を除去した基が挙げられる。R
Ibは、複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する。
【0026】
本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Ic):
【化3】
で示される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0027】
式(Ib)および式(Ic)で示される繰り返し単位は、配合比が高いと、組成物の感度低下や、溶媒や添加剤との相溶性の低下、膜応力が上昇するためクラックが発生しやすくなることがあるため、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明に用いられるポリシロキサンは、以下の式(Id):
【化4】
(式中、
R
Idは、それぞれ独立に、水素、C
1〜30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置きかえられており、かつ炭素原子が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されている)
で示される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0029】
式(Id)で示される繰り返し単位において、
R
Idとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基、(vii)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。R
Idがメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、R
Idがフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。また、R
eがヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0030】
上記式(Id)の繰り返し単位を有することによって、本発明によるポリシロキサンは、部分的に直鎖構造とすることができる。ただし、耐熱性が下がるため、直鎖構造部分は少ないことが好ましい。具体的には、式(Id)の繰り返し単位は、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して30モル%以下であることが好ましい。
【0031】
また、ポリシロキサンは以下の式(Ie):
【化5】
(式中、
L
Ieは、−(CR
Ie2)
n−または
【化6】
であり、
ここで、nは1〜3の整数であり、
R
Ieはそれぞれ独立に水素、メチル、またはエチルを表す)
で示される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0032】
式(Ie)において、L
Ieは、−(CR
Ie2)
n−であることが好ましく、またR
Ieは、ひとつの繰り返し単位中で、あるいはポリシロキサン分子中で、同一であるか、または異なっているが、1つの分子中のR
Ieがすべて同一であることが好ましく、またすべてが水素であることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられるポリシロキサンは、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、R
Iaがメチル、フェニルである式(Ia)で示される繰り返し単位、式(Ic)で示される繰り返し単位を有する、3種類の繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0034】
本発明による組成物は、ポリシロキサンを2種以上含むことができる。1種目を例えば、上記した式(Ia)〜(Id)いずれかの繰り返し単位を含むポリシロキサンを用い、2種目を、式(Ie)の繰り返し単位と、式(Ie)以外の繰り返し単位(好ましくは式(Ia)、(Ib)、および/または(Id)の繰り返し単位)を含むポリシロキサンを用いることができる。
好ましくは1種または2種以上のポリシロキサンが式(Ia)のR
Ia、式(Ib)のR
Ibおよび/または式(Id)のR
Idのうちの少なくとも1つに嵩高い基である繰り返し単位を含み、さらには式(Ia)のR
Iaが嵩高い、C
3〜20の、飽和または不飽和の、環状脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセン)である繰り返し単位)と式(Ie)の繰り返し単位を含んでなるポリシロキサンを用いることが好ましい。嵩高い基を有するとシワの発生が起こりやすい傾向にあるため、本発明によるシワの抑制が効果的に発現し、これに式(Ie)の繰り返し単位を含むことでさらにパターンのテーパー角制御が可能となるから、特に有利である。
ポリシロキサン中に含まれる繰り返し単位の総数に対して、繰り返し単位(Ie)と繰り返し単位(Ia)との総数の割合が、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。また、(Ia)20〜95モル%かつ(Ie)5〜40モル%であることが好ましい。
また、ポリシロキサン中に含まれる繰り返し単位の総数に対して、前述の嵩高い基を含む繰り返し単位(Ia)、(Ib)および(Id)の割合合計が好ましくは10モル%以上であることが好ましい。
【0035】
本発明に用いられるポリシロキサンは、上記したような繰り返し単位が結合した構造を有するが、末端にシラノールを有することが好ましい。このようなシラノール基は、前記した繰り返し単位またはブロックの結合手に、−O
0.5Hが結合したものである。
【0036】
本発明に用いられるポリシロキサンの質量平均分子量は、特に限定されない。ただし、分子量が高い方が塗布性が改良される傾向がある。一方で、分子量が低い方が合成条件の限定が少なく、合成が容易であり、分子量が非常に高いポリシロキサンは合成が困難である。このような理由から、ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常500以上25,000以下であり、有機溶媒への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から1,000以上20,000以下であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィにより測定することができる。
【0037】
また、本発明に用いられるポリシロキサンは、ポジ型感光性を有する組成物に含まれ、この組成物は、基材上に塗布、像様露光、および現像を経て、硬化膜が形成される。このとき、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要であり、露光部における塗膜は、現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、プリベーク後の塗膜の2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHということがある)水溶液への溶解速度(以下、アルカリ溶解速度またはADRということがある。詳細後述)が50Å/秒以上であれば露光−現像によるパターンの形成が可能であると考えられる。しかし、形成される硬化膜の膜厚や現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたポリシロキサンを適切に選択すべきである。組成物に含まれるジアゾナフトキノン誘導体の種類や添加量により異なるが、例えば、膜厚が0.1〜100μm(1,000〜1,000,000Å)であれば、2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度は50〜5,000Å/秒が好ましく、さらに200〜3,000Å/秒であることがより好ましい。
【0038】
本発明に用いられるポリシロキサンは、用途や要求特性に応じ、上記範囲の何れかのADRを有するポリシロキサンを選択すればよい。また、ADRの異なるポリシロキサンを組合せて所望のADRを有する混合物にすることもできる。
【0039】
アルカリ溶解速度や質量平均分子量の異なるポリシロキサンとしては、触媒、反応温度、反応時間あるいは重合体を変更することで調製することができる。アルカリ溶解速度の異なるポリシロキサンを組合せて用いることで、現像後の残存不溶物の低減、パターンだれの低減、パターン安定性などを改良することができる。
【0040】
このようなポリシロキサンは、例えば
(M)プリベーク後の膜が、2.38質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が200〜3,000Å/秒であるポリシロキサンが挙げられる。
【0041】
また、必要に応じ
(L)プリベーク後の膜が、5質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン、または
(H)プリベーク後の膜の、2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度が4,000Å/秒以上であるポリシロキサンと
混合し、所望の溶解速度を有する組成物を得ることができる。
【0042】
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法]
ポリシロキサンまたはその混合物のアルカリ溶解速度は、アルカリ溶液としてTMAH水溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
【0043】
ポリシロキサンをPGMEAに35質量%になるように希釈し、室温でスターラーで1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したポリシロキサン溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウェハー上にピペットを用い1ccシリコンウェハーの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製)で、塗膜の膜厚測定を行う。
【0044】
次に、この膜を有するシリコンウェハーを、23.0±0.1℃に調整された、所定濃度のTMAH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウェハー端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウェハーをTMAH水溶液に一定時間浸漬した後、200℃のホットプレート上で5分間加熱することにより溶解速度測定中に膜中に取り込まれた水分を除去した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をポリシロキサンの溶解速度とする。
【0045】
<ポリシロキサンの合成方法>
本発明に用いられるポリシロキサンの合成方法は特に限定されないが、例えば、
R
ia−Si−(OR
ia’)
3 (ia)
(式中、
R
iaは、水素、C
1〜30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置きかえられており、かつ炭素原子が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されており、かつ
R
ia’は、直鎖または分岐の、C
1〜6アルキルである)
で示されるシランモノマー
を必要に応じて、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、加水分解し、重合させることによって得ることができる。
【0046】
式(ia)において、好ましいR
ia’は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルなどが挙げられる。式(ia)において、R
ia’は複数含まれるが、それぞれのR
ia’は、同じでも異なっていてもよい。
好ましいR
iaは、上記のR
Iaと同じである。
【0047】
式(ia)で表されるシランモノマーの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。その中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。式(ib)で表されるシランモノマーは、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0048】
さらに以下の式(ic)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(ic)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Ic)を含むポリシロキサンを得ることができる。
Si(OR
ic’)
4 (ic)
式中、R
ic’は、直鎖または分岐の、C
1〜6アルキルである。 式(ic)において、好ましいR
ic’は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルなどが挙げられる。式(ic)において、R
ic’は複数含まれるが、それぞれのR
ic’は、同じでも異なっていてもよい。
式(ic)で示されるシランモノマーの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、等が挙げられる。
【0049】
下記式(ib)で表わされるシランモノマーをさらに組み合わせることもできる。
R
ib−Si−(OR
ib’)
3 (ib)式中、
R
ib’は、直鎖または分岐の、C
1〜6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルなどが挙げられる。R
ib’は、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのR
ib’は、同じでも異なっていてもよく、
R
ibは、アミノ基、イミノ基、および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から複数、好ましくは2つまたは3つの水素を除去した基である。好ましいR
ibは、上記好ましいR
Ibと同じである。
【0050】
式(ib)で示されるシランモノマーの具体例としては、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス−(3−トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0051】
さらに、以下の式(id)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(id)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Id)を含むポリシロキサンを得ることができる。
(R
id)
2−Si−(OR
id’)
2 (id)
式中、
R
id’は、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C
1〜6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルなどが挙げられる。R
id’は、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのR
id’は、同じでも異なっていてもよく、
R
idは、それぞれ独立に、水素、C
1〜30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、メチレンが、置きかえられていないか、またはオキシ、イミドもしくはカルボニルで置きかえられており、かつ炭素原子が非置換であるか、またはフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されている。好ましいR
idは、上記好ましいR
Idである。
【0052】
さらに、以下の式(ie)で示されるシランモノマーを組み合わせてもよい。
(OR
ie’)
3−Si−L
ie−Si−(OR
ie’)
3
式(ie)式中、
R
ie’は、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C
1〜6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルなどが挙げられる。
L
ieは、−(CR
ie2)
n−または
【化7】
であり、好ましくは、−(CR
ie2)
n−である。ここで、
nはそれぞれ独立に1〜3の整数であり、
R
ieはそれぞれ独立に水素、メチル、またはエチルである。
【0053】
(II)カルボン酸化合物
本発明に用いられるカルボン酸化合物は、組成物の総質量を基準として200〜50,000ppmの、モノカルボン酸またはジカルボン酸である。
好ましくは、モノカルボン酸の第1酸解離定数pKa
1が5.0以下である。好ましくは、ジカルボン酸の第1酸解離定数pKa
1が4.0以下、より好ましくは3.5以下である。
【0054】
好ましくは、モノカルボン酸は、式(i)で表される。
R
i−COOH 式(i)
式中、R
iは、水素、または炭素数1〜4の、飽和または不飽和の、炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜3の炭化水素基である。
【0055】
本発明に用いられるモノカルボン酸としては、酢酸、ギ酸、アクリル酸が挙げられ、好ましくは酢酸である。
【0056】
好ましくは、ジカルボン酸は、式(ii)で表される。
HOOC−L−COOH 式(ii)
式中、Lは、
単結合、
炭素数1〜6の、非置換アルキレン、ヒドロキシ置換アルキレンもしくはアミノ置換アルキレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2〜4のアルケニレン、
置換もしくは非置換の、炭素数2〜4のアルキニレン、または
置換もしくは非置換の、炭素数6〜10のアリーレン
である。
ここで、本発明において、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価基を意味するものとする。同様に、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価基を意味するものとする。
【0057】
好ましくは、Lは、
単結合、
炭素数2〜4の、ヒドロキシ置換または非置換アルキレン、
非置換の、C=C結合を1つ有する、炭素数2〜4のアルケニレン、または
非置換の、炭素数6〜10のアリーレン
であり、
より好ましくは、Lは、単結合、炭素数1〜2の非置換アルキレン、ビニレン、ヒドロキシエチレン、フェニレンである。
【0058】
本発明に用いられるジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、o−フタル酸、コハク酸、グルタコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リンゴ酸、イタコン酸、3−アミノヘキサン二酸、マロン酸が挙げられ、好ましくは、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、o−フタル酸、リンゴ酸、またはマロン酸である。
【0059】
本発明に用いられるカルボン酸化合物としては、より好ましくはジカルボン酸であり、中でも特に分子内脱水縮合のより、環状構造をとりうるものであることが好ましい。このようなジカルボン酸としては、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、o−フタル酸、グルタコン酸、イタコン酸が挙げられる。なかでも、分子内脱水縮合反応が起きる温度が100℃〜250℃であるジカルボン酸が好ましく、さらにはマレイン酸、コハク酸、シュウ酸が好ましい。
【0060】
カルボン酸化合物は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明による組成物において、本発明に用いられるカルボン酸化合物の含有量は、組成物の総質量を基準として200〜50,000ppmであり、より好ましくは、300〜30,000ppmであり、さらに好ましくは、500〜30,000ppmである。50,000ppmより多い場合は、感度の低下が起こるので、好ましくない。
現像工程で、有機現像液(例えば、TMAH水溶液)を用いる場合には、(II)の化合物の含有量は、300〜10,000ppmであることが好ましく、より好ましくは、500〜5,000ppmである。
現像工程で、無機現像液(例えば、KOH水溶液)を用いる場合には、(II)の化合物の含有量は、1,000〜30,000ppmであることが好ましく、より好ましくは、3,000〜10,000ppmである。
【0062】
本発明による組成物は、特定の量の特定のカルボン酸化合物を含むことで、硬化膜のしわを抑制して、パターン表面の平滑性を改善する効果をもたらすのであるが、理論に拘束されることを望まないが、以下によるものと考えられる。
ポジ型ポリシロキサン組成物は、塗布し、露光し、アルカリ現像液で現像し、リンスし、そして、加熱により硬化される。リンスにより現像液を洗い流すが、膜中、特に膜表面に残存するアルカリ成分が、膜表面の硬化反応を過度に早めてしまう。
リンス後に、全面露光のプロセスを入れると、全面露光により、硬化反応を過度に早めることが起こらなくなる。よって、しわの発生が抑制されるのである。
本発明による組成物は、特定の量の特定のカルボン酸化合物を含むことで、全面露光のプロセスがなくても、アルカリ現像液によるアルカリ成分を中和することによって、硬化反応を過度に早めることがなく、しわの形成を抑制することができる。
特に、カルボン酸化合物が特定の温度で分子内脱水反応により環状構造を形成できる化合物である場合、硬化のための加熱の前までは、ポリシロキサンのシラノール基がカルボン酸基で保護されるが、硬化のための加熱時に、保護されていないシラノール基から硬化し、カルボン酸化合物が無水物化して、膜中から除去され、保護が外れたシラノール基が次に硬化するといった、段階的な硬化が起こることが考えられるため、しわの抑制効果がより高くなるものと考えられる。
アルカリ現像液は、有機系と無機系に分類されるが、無機現像液は、有機現像液に比較して、分子サイズが小さく、現像の際に膜中に入り込みやすいため、中和のために必要とされる酸の量も多くなる。よって、無機系現像液を用いる場合は、カルボン酸化合物の含有量がより多いのである。
【0063】
(III)ジアゾナフトキノン誘導体
本発明による組成物は、ジアゾナフトキノン誘導体を含んでなる。ジアゾナフトキノン誘導体を含んでなる組成物は、露光された部分が、アルカリ現像液に可溶になることにより現像によって除去されるポジ像を形成する。すなわち、本発明による組成物は、一般的にはポジ型フォトレジスト組成物として機能する。本発明のジアゾナフトキノン誘導体は、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物であり、特に構造について制限されないが、好ましくはフェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とのエステル化合物であることが好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、4−ナフトキノンジアジドスルホン酸、あるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸を用いることができる。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を選択することが好ましい。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
【0064】
フェノール性水酸基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、BisP−AF、BisOTBP−A、Bis26B−A、BisP−PR、BisP−LV、BisP−OP、BisP−NO、BisP−DE、BisP−AP、BisOTBP−AP、TrisP−HAP、BisP−DP、TrisP−PA、BisOTBP−Z、BisP−FL、TekP−4HBP、TekP−4HBPA、TrisP−TC(商品名、本州化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0065】
ジアゾナフトキノン誘導体の添加量は、ナフトキノンジアジドスルホン酸のエステル化率、あるいは使用されるポリシロキサンの物性、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、好ましくはポリシロキサンの総質量100質量部に対して、1〜20質量部であり、さらに好ましくは2〜15質量部である。ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が1質量部より少ない場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、現実的な感光性を有さない。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには2質量部以上が好ましい。一方、ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が20質量部より多い場合、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物との相溶性が悪くなることによる塗布膜の白化が起こったり、熱硬化時に起こるキノンジアジド化合物の分解による着色が顕著になるため硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、ジアゾナフトキノン誘導体の耐熱性は、ポリシロキサンに比較すると劣るため、添加量が多くなると熱分解により硬化膜の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。また、硬化膜がモノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0066】
(IV)溶剤
溶剤は、前記した、ポリシロキサンとカルボン酸化合物、および必要に応じて添加される添加剤を均一に溶解または分散させるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる溶剤の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。かかる溶剤は、それぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられ、その使用量は塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。
【0067】
本発明による組成物の溶剤含有率は、採用する塗布方法を考慮して、用いるポリシロキサンの質量平均分子量、その分布及び構造に応じて適宜選択することができる。本発明による組成物は、組成物の全質量を基準として、一般に40〜90質量%、好ましくは60〜80質量%の溶剤を含む。
【0068】
本発明による組成物は、前記した(I)〜(IV)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(I)〜(IV)以外の成分は、全体の質量に対して、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
【0069】
[シラノール縮合触媒]
本発明による組成物は、光酸発生剤、光塩基発生剤、光熱酸発生剤、および光熱塩基発生剤からなる群から選択されるシラノール縮合触媒を含むことができる。これらは、硬化膜製造プロセスにおいて利用する重合反応や架橋反応に応じて、選択されることが好ましい。
なお、本発明において、光酸発生剤には、上記に記載の(III)ジアゾナフトキノン誘導体は、含まれないものとする。
【0070】
これらの含有量は、分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラスト、パターン形状により最適量は異なるが、ポリシロキサンの総質量100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。添加量が0.1質量部より少ないと、発生する酸または塩基の量が少なすぎて、パターンだれを起こしやすくなる。一方、添加量が10質量部より多い場合、形成される硬化膜にクラックが発生したり、これらの分解による着色が顕著になることがあるため、硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、硬化膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0071】
本発明において、光酸発生剤または光塩基発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして酸または塩基を発生する化合物のことをいう。発生した酸または塩基は、ポリシロキサンの重合化に寄与すると考えられる。ここで、光としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
光酸発生剤または光塩基発生剤は、パターンを投影するための像様露光(以下、最初の露光という)ではなく、その後に行う全面露光の際に、酸または塩基が発生することが好ましく、最初の露光時の波長には吸収が少ないことが好ましい。例えば、最初の露光をg線(ピーク波長436nm)および/またはh線(ピーク波長405nm)で行い、2回目の露光時の波長をg+h+i線(ピーク波長365nm)にするときは、光酸発生剤または光塩基発生剤は波長436nmおよび/または405nmにおける吸光度よりも、波長365nmにおける吸光度が大きくなる方が好ましい。
具体的には、波長365nmにおける吸光度/波長436nmにおける吸光度、または波長365nmにおける吸光度/波長405nmにおける吸光度が、2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上、最も好ましくは100以上である。
ここで、紫外可視吸収スペクトルは、溶媒としてジクロロメタンを用いて測定される。測定装置は特に限定されないが、例えばCary 4000 UV−Vis 分光光度計(アジレント・テクノロジー株式会社製)が挙げられる。
【0072】
光酸発生剤は、一般的に使用されているものから任意に選択できるが、例えば、ジアゾメタン化合物、トリアジン化合物、スルホン酸エステル、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホンイミド化合物等が挙げられる。
【0073】
上述のものを含めて、具体的に使用できる光酸発生剤としては、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルーp−トルエンスルホナート、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルトリフレート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジル−p−トルエンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
また、5−プロピルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、5−オクチルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、5−カンファースルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、5−メチルフェニルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン−(2−メチルフェニル)アセトニトリル等は、h線の波長領域に吸収をもつため、h線に吸収を持たせたくない場合には使用を避けるべきである。
【0074】
光塩基発生剤の例としては、アミド基を有する多置換アミド化合物、ラクタム、イミド化合物もしくはその構造を含むものが挙げられる。
また、アニオンとしてアミドアニオン、メチドアニオン、ボレートアニオン、ホスフェートアニオン、スルホネートアニオン、またはカルボキシレートアニオン等を含むイオン型の光塩基発生剤も用いることができる。
【0075】
本発明において、光熱酸発生剤または光熱塩基発生剤とは、露光により化学構造が変化するが、酸または塩基を発生させず、その後、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらのうち、光熱塩基発生剤が好ましい。光熱塩基発生剤として、以下の式(II)で表されるものが挙げられ、より好ましくはその水和物または溶媒和物が挙げられる。式(II)で表される化合物は、露光によりシス型に反転し不安定になるために、分解温度が下がり、その後の工程でベーク温度が100℃程度であっても塩基を発生させる。
光熱塩基発生剤は、ジアゾナフトキノン誘導体の吸収波長と調整する必要はない。
【化8】
ここで、xは、1以上6以下の整数であり、
R
a’〜R
f’は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、スルフィド、シリル、シラノール、ニトロ、ニトロソ、スルフィノ、スルホ、スルホナト、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスホナト、アミノ、アンモウム、置換基を含んでもよいC
1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
6〜22の芳香族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
1〜20のアルコキシ、または置換基を含んでもよいC
6〜20のアリールオキシである。
【0076】
これらのうち、R
a’〜R
d’は、特に水素、ヒドロキシ、C
1〜6の脂肪族炭化水素基、またはC
1〜6のアルコキシが好ましく、R
e’およびR
f’は、特に水素が好ましい。R
1’〜R
4 ’のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。このとき、その環状構造はヘテロ原子を含んでいてもよい。
Nは含窒素複素環の構成原子であり、その含窒素複素環は3〜10員環であり、その含窒素複素環は1つ以上の、式(II)中に示されたC
xH
2XOHと異なる置換基を含んでもよい、C
1〜20、特にC
1〜6の脂肪族炭化水素基をさらに有していてもよい。
【0077】
R
a’〜R
d’は、使用する露光波長により適宜選択することが好ましい。ディスプレイ向け用途においては、例えばg、h、i線に吸収波長をシフトさせるビニル、アルキニルなどの不飽和炭化水素結合官能基や、アルコキシ、ニトロなどが用いられ、特にメトキシ、エトキシが好ましい。
【0078】
具体的には以下のものが挙げられる。
【化9】
【0079】
本発明において、熱酸発生剤または熱塩基発生剤とは、熱によって結合開裂を起こして、酸または塩基を発生する化合物のことをいう。これらは、組成物の塗布後、プリベーク時の熱では酸または塩基を発生しない、もしくは少量しか発生しないことが好ましい。
熱酸発生剤の例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、芳香族スルホン酸とそのアンモニウム塩、各種アミン塩、芳香族ジアゾニウム塩及びホスホン酸とその塩など、有機酸を発生する塩やエステル等を挙げることができる。熱酸発生剤の中でも特に、有機酸と有機塩基からなる塩であることが好ましく、スルホン酸と有機塩基からなる塩が更に好ましい。好ましいスルホン酸としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4−ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。これら酸発生剤は、単独又は混合して使用することが可能である。
【0080】
熱塩基発生剤の例としては、イミダゾール、第三級アミン、第四級アンモニウム等の塩基を発生させる化合物、これらの混合物を挙げることができる。放出される塩基の例として、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N−(3−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N−(5−メチル−2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N−(4−クロロ−2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールなどのイミダゾール誘導体、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7が挙げられる。これら塩基発生剤は、酸発生剤と同様、単独又は混合して使用することが可能である。
【0081】
その他の添加剤としては、界面活性剤、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合阻害剤、消泡剤、または増感剤などが挙げられる。
【0082】
界面活性剤は塗布性を改善することができるため、用いることが好ましい。本発明におけるポリシロキサン組成物に使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0083】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレートなどのアセチレンアルコール誘導体、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、又は有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0084】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩などが挙げられる。
【0085】
さらに両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0086】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その配合比は、組成物の総質量に対し、通常50〜10,000ppm、好ましくは100〜5,000ppmである。
【0087】
現像液溶解促進剤、またはスカム除去剤は、形成される塗布膜の現像液に対する溶解性を調整し、また現像後に基板上にスカムが残留するのを防止する作用を有するものである。このような添加剤として、クラウンエーテルを用いることができる。
その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.05〜15質量部が好ましく、さらに0.1〜10質量部が好ましい。
【0088】
また、必要に応じ増感剤を添加することができる。クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、アセトフェノン類、並びにピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素、アントラセン骨格含有化合物が挙げられる。
【0089】
増感剤を使用する場合、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0090】
重合阻害剤として、ニトロン、ニトロキシドラジカル、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジン、フェノキサジン、ヒンダードアミンおよびこれらの誘導体の他、紫外線吸収剤を添加することが出来る。その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0091】
消泡剤としては、アルコール(C
1〜
18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200〜10,000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200〜10,000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はポリシロキサンの総質量100質量部に対して、0.1〜3質量部とすることが好ましい。
【0092】
密着増強剤は、本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、硬化後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましい。
【0093】
これらのその他の添加剤は単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はアクリル重合化ポリシロキサンの総質量100質量部に対して、20質量部以下、好ましくは0.05〜15質量部である。
【0094】
<硬化膜の製造方法>
本発明による硬化膜は、以下の工程:
(1)本発明による組成物を基板に塗布して組成物層を形成させること、
(2)前記組成物層に露光すること、
(3)アルカリ現像液で現像し、パターンを形成させること、および
(4)得られたパターンを加熱すること
を含んでなる。
工程順に説明すると以下の通りである。
【0095】
(1)塗布工程
まず、前記した組成物を基板に塗布する。本発明における組成物の塗膜の形成は、感光性組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。
また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0096】
組成物を塗布することにより、塗膜を形成させた後、その塗膜を乾燥させ、且つ塗膜中の溶剤残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(前加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10〜300秒間、好ましくは30〜120秒間、クリーンオーブンによる場合には1〜30分間実施することができる。
【0097】
(2)露光工程
塗膜を形成させた後、その塗膜表面に光照射を行う。なお、この工程を後述する全面露光と区別するために、最初の露光ということがある。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360〜430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。このような場合に、本発明による組成物に増感色素を組み合わせると有利であることは上述した通りである。
照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に5〜2,000mJ/cm
2、好ましくは10〜1,000mJ/cm
2とする。照射光エネルギーが5mJ/cm
2よりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2,000mJ/cm
2よりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0098】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0099】
(3)現像工程
露光後、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来、感光性組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。現像液は、有機現像液と、無機現像液とがあり、有機現像液の例としては、TMAH水溶液、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコールが挙げられ、好ましくはTMAH水溶液であり、さらに好ましくは2.38質量%TMAH水溶液である。無機現像液としては、アルカリ金属塩が挙げられ、好ましくは水酸化カリウム水溶液、または水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、重炭酸ナトリウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、メタケイ酸ナトリウム水溶液、アンモニア水であり、特に好ましくは水酸化カリウム水溶液である。水酸化カリウム水溶液を用いる場合、この濃度は、好ましくは0.1〜3.0質量%であり、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。これらの現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。
現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。現像温度は、好ましくは常温(20〜25℃)であるが、30〜50℃に加熱してもよい。現像時間は好ましくは15〜180秒、より好ましくは30〜60秒である。この現像によって、パターンを得ることができ、現像液により現像が行われた後には、リンス(水洗)がなされることが好ましい。
【0100】
リンスは、水を用いることが好ましく、現像同様の方法で行うことができ、60秒間以上シャワーすることが好ましい。
【0101】
現像(必要に応じてリンス)後、全面露光の工程を行うことが一般的である。上記したように、この全面露光を行うことで、硬化膜のしわ形成を抑制できるからである。このほかに、全面露光をすることで、膜中に残存する未反応のジアゾナフトキノン誘導体が光分解して、膜の光透明性がさらに向上するので、透明性を求める場合は、全面露光工程を行うことが好ましい。全面露光の方法としては、PLA(例えば、キヤノン製PLA−501F)などの紫外可視露光機を用い、100〜2000mJ/cm
2程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する方法がある。
本発明による組成物を用いた場合には、全面露光を行わなくても、しわの抑制が可能であるため、過度の透明性を必要としない場合は、全面露光をおこなわなくてよい。
【0102】
(4)硬化工程
現像後、得られたパターン膜を加熱することにより硬化させる。この工程における加熱温度としては、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、シラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。具体的には360℃以下で加熱することで硬化させることが好ましく、硬化後の残膜率を高く保つために、硬化温度は300℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。一方で、硬化反応を促進し、十分な硬化膜を得るために、硬化温度は70℃以上であることが好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分〜24時間、好ましくは30分〜3時間とされる。なお、この加熱時間は、パターン膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。
【0103】
本発明による組成物を用いることで、この硬化工程で、硬化膜の表面に発生するしわの発生を抑制できる。ここで、しわとは、硬化膜のパターン部近傍または離れたところに発生する凹凸のことをいう。
図1に、パターン表面に形成される典型的なしわの電子顕微鏡写真を示す。
しわ無し(
図1(P))、小さなしわ(
図1(Q))、大きなしわ(
図1(R))の違いのおおよその目安は、触針式表面測定装置(Daektak)で硬化後のパターンから離れたところでパターンとは被らない膜表面を力3mgで1.5cmの距離を50秒間かけて測定すると、表面の凹凸は、しわ無しでは、段差30nm未満程度であり、小さなしわでは、段差30nm以上100nm以下程度であり、大きなしわでは、段差100nmより大きいものをいう。
【0104】
こうして得られた硬化膜は、優れた平坦性、電気的絶縁特性等を達成することができる。例えば比誘電率も4以下を達成することができる。このため、フラットパネルディスプレー(FPD)など、前記したような各種素子の平坦化膜、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜、透明保護膜などとして多方面で好適に利用することができる。
【0105】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0106】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、HLC−8220GPC型高速GPCシステム(商品名、東ソー株式会社製)およびSuper Multipore HZ−N型GPCカラム(商品名、東ソー株式会社製)2本を用いて測定した。測定は、単分散ポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを展開溶媒として、流量0.6ミリリットル/分、カラム温度40℃の分析条件で行った。
【0107】
<合成例1(ポリシロキサンPa−1の合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液49.0g、イソプロピルアルコール(IPA)600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロート中にメチルトリメトキシシラン68.0g、フェニルトリメトキシシラン79.2g、およびテトラメトキシシラン15.2gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10質量%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンの分子量(ポリスチレン換算)をゲル浸透クロマトグラフィにて測定したところ、質量平均分子量(以下「Mw」と略記することがある)は1,700であった。また、得られた樹脂溶液をシリコンウェハーにプリベーク後の膜厚が2μmになるようにスピンコーター(MS−A100(ミカサ製))により塗布し、プリベーク後2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度(以下「ADR」と略記することがある。)を測定したところ、1,200Å/秒であった。
【0108】
<合成例2(ポリシロキサンPa−2の合成)>
TMAH水溶液を32.5gに変更した他は合成例1と同様に合成した。
得られたポリシロキサンPa−2は、Mw=2500であり、プリベーク後の5質量%TMAH水溶液に対するADR=300であった。
【0109】
<合成例3(ポリシロキサンPb−1の合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液102g、IPA600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン68.0g、フェニルトリメトキシシラン79.2g、ビス(トリエトキシシリル)メタン68.1gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10質量%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに400mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンPb−1のMw=6,500、プリベーク後の2.38質量%TMAH水溶液に対するADR=3,300Å/秒であった。
【0110】
<合成例4(ポリシロキサンPb−2の合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液102g、イソプロピルアルコール(IPA)600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン68.0g、フェニルトリメトキシシラン79.2g、ビス(トリメトキシシリル)エタン54.0gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10質量%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2相に分離させ、水相を除去した。さらに400mlの水にて3回洗浄し、得られた有機相を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整した。
得られたポリシロキサンのMw=9,000、プリベーク後の2.38質量%TMAH水溶液に対するADR=2,600Å/秒であった。
また、ポリシロキサン全体の、プリベーク後の2.38質量%TMAH水溶液に対するADRは以下の通りであった。
ポリシロキサンPa−1:Pa−2:Pb−1=40:10:50のADR=1,800Å/秒
ポリシロキサンPa−1:Pa−2:Pb−2=40:10:50のADR=1,600Å/秒
ポリシロキサンPa−1:Pa−2=90:10のADR=900Å/秒
【0111】
<実施例101〜114および比較例101〜108(ポジ型感光性ポリシロキサン組成物の調製)>
以下の表1に示す化合物を含み、残部はPGMEAである、実施例101〜114および比較例101〜108のポジ型感光性ポリシロキサン組成物を調製した。
【表1】
表中、
ジアゾナフトキノン誘導体:4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールのジアゾナフトキノン2.0モル変性体
界面活性剤:KF−53、信越化学工業株式会社製
である。
また、「−」は添加量がゼロであったことを意味する。
【0112】
<シワの評価>
感度評価で得られた最適露光量で露光した、硬化後の表面のシワの状態を目視により観察し、評価した。評価基準は、以下のとおりとし、評価結果は表1に記載したとおりである。
A:表面にシワが確認されなかった
B:表面に小さなシワが確認されたが、シワが確認されない部分が80%以上あった
C:表面の小さなシワが確認され、シワが確認されない部分は80%未満であった
D:表面に、大きなシワが確認された
なお、シワが確認されないパターン(P)、小さなシワがあるパターン(Q)、および大きなシワがあるパターン(R)の、それぞれ典型的な電子顕微鏡写真を
図1に示す。
【0113】
<パターン形状の評価>
感度評価で得られた最適露光量で露光した、硬化後のパターンの形状を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、評価した。評価基準は以下のとおりとし、評価結果は表1に記載したとおりである。
X:形成されたパターンの角が丸みを大きく帯びていた
Y:形成されたパターンの角が丸みを帯びていた
Z:形成されたパターンの角が丸みを帯びていなかった
V:抜けたパターンがマスクサイズよりも小さかった
W:パターンが形成されなかった
なお、上記の各形状に対応する、それぞれ典型的な電子顕微鏡写真を、
図2に示す。
【0114】
<感度の評価>
実施例101〜105の組成物を、スピンコートにより、プリベーク後の膜厚が1.6μmになるように塗布した。得られた塗膜を110℃で90秒間プリベークして溶剤を揮発させた。その後、g+h線マスクアライナー(FX−604F型、株式会社ニコン製)により、最適露光量で、サイズ5μmのコンタクトホールをパターン露光した。露光後2.38質量%TMAH水溶液を用いて70秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスし、乾燥させた。そして、大気中180℃で20分間加熱後、さらに230℃で20分間加熱して、硬化させた。
ここで5ミクロンのマスクでパターニングしたときに硬化後のコンタクトホールの底幅が5ミクロンになる露光量を最適露光量とした。
実施例101〜105の組成物は、500mJ未満の露光量が最適露光量であり、実用上十分に使用しうる感度であった。
一方、マレイン酸が80,000ppmであること以外は実施例101と同じ組成物を用いて、上記と同様に、最適露光量を求めると、露光量を上げても、パターン形成ができなかった。
【0115】
<実施例201、202および比較例201〜204(ポジ型感光性ポリシロキサン組成物の調製)>
以下の表2に示す化合物を含み、残部はPGMEAである、実施例201、202および比較例201〜204のポジ型感光性ポリシロキサン組成物を調製した。
【表2】
表中、
ジアゾナフトキノン誘導体:4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールのジアゾナフトキノン2.0モル変性体
界面活性剤:KF−53、信越化学工業株式会社製
である。
また、「−」は添加量がゼロであったことを意味する。
【0116】
各組成物を、スピンコートにより、プリベーク後の膜厚が1.6μmになるように塗布した。得られた塗膜を110℃で90秒間プリベークして溶剤を揮発させた。その後、g+h線マスクアライナー(FX−604F型、株式会社ニコン製)により、最適露光量で、サイズ5μmのコンタクトホールをパターン露光した。露光後1.0質量%KOH水溶液を用いて70秒間パドル現像を行い、さらに純水で60秒間リンスし、乾燥させた。そして、大気中180℃で20分間加熱後、さらに230℃で20分間加熱して、硬化させた。
【0117】
シワ評価およびパターン形状評価について上記と同様の評価基準で評価した。評価結果は表2に記載したとおりである。
【課題】硬化助剤の添加や全面露光を行うことがなくても、しわの発生が抑制された、表面の平滑性の高い硬化膜を製造することができる、ポジ型感光性ポリシロキサン組成物およびそれを用いた製造方法の提供。
【解決手段】(I)ポリシロキサン、(II)組成物の総質量を基準として200〜50,000ppmの、モノカルボン酸またはジカルボン酸であるカルボン酸化合物、(III)ジアゾナフトキノン誘導体、および(IV)溶剤を含んでなる、ポジ型感光性ポリシロキサン組成物、およびその組成物を用いた硬化膜の製造方法。