特許第6639866号(P6639866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6639866
(24)【登録日】2020年1月7日
(45)【発行日】2020年2月5日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1345 20060101AFI20200127BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20200127BHJP
【FI】
   G02F1/1345
   G02F1/1368
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-214375(P2015-214375)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-83760(P2017-83760A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 喬之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕行
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−216894(JP,A)
【文献】 特開2013−238829(JP,A)
【文献】 特開2008−051908(JP,A)
【文献】 特開2009−122636(JP,A)
【文献】 特開2008−292995(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0083677(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1343−1/1345
G02F 1/135−1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査線と、ドレイン線と、映像信号引き出し線とが形成されたTFT基板を有する表示装置であって、
前記表示装置の表示領域は、非矩形であり、
前記表示領域に沿って配置され、前記ドレイン線と、映像信号引き出し線との間にセレクタが存在し、
前記走査線は、走査線号を供給し、前記表示領域に沿って配置されたする走査回路に接続されており、
前記走査線と前記映像信号引き出し線とが交差しており、
前記セレクタは、セレクタTFTを有しており、
前記セレクタTFTのゲートに接続されたセレクタ制御線は、前記ドレイン線と同じ層に形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記セレクタと前記走査回路との間にコモン配線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記セレクタは、セレクタTFTを有しており、
前記セレクタ制御線は、前記映像信号引き出し線と、前記セレクタとの間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記セレクタ制御線は、前記ドレイン線と同じ層に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記コモン配線と前記TFT基板の端部との間には、前記走査回路が設けられていること特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
走査線と、ドレイン線と、映像信号引き出し線とが形成されたTFT基板を有する表示装置であって、
前記表示装置の表示領域は、非矩形であり、
前記表示領域に沿って配置され、前記ドレイン線と、映像信号引き出し線との間にセレクタが存在し、
前記走査線は、走査線号を供給し、前記表示領域に沿って配置された走査回路に接続されており、
前記走査線と前記映像信号引き出し線とが交差しており、
前記セレクタは、セレクタTFTを有しており、
前記セレクタTFTのゲートに接続されたセレクタ制御線と前記走査線とは、絶縁膜を介して交差し、
前記セレクタ制御線と前記映像信号引き出し線とは、前記絶縁膜を介して交差していることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
前記映像信号引き出し線はドライバICに接続されており、
前記ドライバICは、前記表示領域の第1の辺に沿って形成され、前記走査回路は前記表示領域の前記第1の辺と隣接する第2の辺と、前記第2の辺と対向する第3の辺に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
走査線と、ドレイン線と、映像信号引き出し線とが形成されたTFT基板を有する表示装置であって、
前記表示装置の表示領域は、非矩形であり、
前記表示領域に沿って配置され、前記ドレイン線と、映像信号引き出し線との間にセレクタが存在し、
前記走査線は、走査線号を供給し、前記表示領域に沿って配置された走査回路に接続されており、
前記走査線と前記映像信号引き出し線とが交差しており、
前記セレクタは、セレクタTFTを有しており、
前記表示領域における、前記走査線の延在方向の画素の数は、前記ドレイン線の延在方向の画素の数と異なっており、前記ドレイン線の延在方向の画素の数が多い列に対応する前記セレクタTFTのチャンネル幅は、前記ドレイン線の延在方向の画素の数が少ない列に対応する前記セレクタTFTのチャンネル幅よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
前記表示領域の外形は直線部分と曲線部分の組み合わせからなり、前記直線部分に対応して前記ドライバICが配置していることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示領域の外形は直線部分と曲線部分の組み合わせからなり、前記直線部分に対応して前記ドライバICが配置しており、
前記直線部分に対応する前記セレクタTFTのチャンネル幅は、前記曲線部分に対応する前記セレクタTFTのチャンネル幅よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項11】
前記映像信号引き出し線は、前記表示領域に沿って延在している、請求項1乃至10の何れか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に表示領域および外形が矩形ではない表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つである液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して対向基板が配置され、TFT基板と対向基板との間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。液晶表示装置はフラットで軽量であることから、色々な分野で用途が広がっている。
【0003】
液晶表示装置に表示領域や外形は矩形のものが多いが、自動車に使用される表示装置、種々のゲーム等に使用される表示装置等では、表示領域や装置の外形が矩形でない表示装置に対する要求も存在する。表示装置が矩形でないことに起因する走査線駆動回路の問題と対策を記載したものとして、特許文献1があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−292995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示領域が矩形でないと表示装置の周辺に配置される周辺回路や配線のレイアウトは、表示領域が矩形でない場合とは異なってくる。また、表示装置が矩形でないと、表示領域が矩形の場合には生じなかった問題が生ずる。以後、矩形でない表示領域を異形表示領域といい、表示領域が矩形でない表示パネルを異形表示パネルという。
【0006】
異形表示パネルの場合でも、高い解像度を要求される場合が多い。高解像度とすると、横方向の画素が多くなり、画素に映像信号を供給するドレイン線の数も多くなる。ドレイン線の数が多くなると、表示領域外において、ドレイン引き回し線の数が多くなり、このための配線領域の面積が増大する。特に最近は、表示領域の端部から表示パネルの端部までの幅、いわゆる額縁領域を小さくしたいという要求がある。このためには、ドレイン引き回し線の数を減らす必要がある。
【0007】
ドレイン引き回し線の数の増大を防ぐために、後で説明するようなセレクタ回路を用いてドライバICから供給される映像信号線の数を1/2、あるいは1/3等に減少させて、引き回し線の数を減らす技術がある。しかし、異形表示領域にセレクタ回路を用いると、セレクタ回路と走査線あるいはコモン配線等とセレクタ回路との干渉(レイアウト上の交差、或いは、交差や近接に伴う電気的な影響)が生ずる。
【0008】
本発明の課題は、セレクタ回路を有する異形表示領域を有する異形表示パネルを用いた場合であっても、額縁領域を抑えることが出来る表示領域を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を克服するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)走査線が第1の方向に延在して第2の方向に配列し、ドレイン線が前記第2の方向に延在して前記第1の方向に配列し、走査線とドレイン線で囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板に、液晶を介して対向基板を配置し、表示領域の外形が矩形ではない液晶表示装置であって、前記表示領域の外側に映像信号を供給するドライバが配置し、前記表示領域と前記ドライバの間にセレクタ用TFTを有するセレクタが存在し、前記ドライバと前記セレクタの間には映像信号線が存在し、前記セレクタと前記表示領域の間には前記ドレイン線が存在し、前記表示領域に対応する前記ドレイン線の数をNdとし、前記ドレイン線に対応する前記映像信号線の数をNvとした場合、Nd/Nv=nであって、nは2以上の整数であり、
前記表示領域の外側には前記走査線に走査信号号を供給する走査回路が存在し、前記セレクタは前記走査線と前記表示領域との間、或いは、前記走査回路と前記表示領域との間に存在し、前記セレクタは、コモン電極であるITOによって覆われ、前記セレクタの外側にコモンバス配線が配置していることを特徴とする液晶表示装置。
【0011】
(2)前記セレクタ用TFTにゲート電圧を供給するセレクタ制御信号線は、前記ドレイン線と同じ層で形成されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】液晶表示装置の表示領域の断面図である。
図2】異形表示パネルの例である。
図3】セレクタの構成を示す等価回路である。
図4】表示領域の周辺を示す模式図である。
図5】ドレイン線が形成された状態までの表示領域の周辺のレイアウトを示す平面図である。
図6】画素電極が形成された状態までの表示領域の周辺のレイアウトを示す平面図である。
図7】セレクタ部分における断面図である。
図8】異形表示パネルの他の例である。
図9】表示領域が矩形である場合におけるレイアウトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
表示装置には各種が存在するが、その一種である液晶表示装置では視野角特性が問題となる。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。以後の実施形態では、IPS方式の液晶表示装置を前提に説明する。本発明は、表示領域の外側における構成が対象となるが、層構造の説明のために、まず、表示領域の断面構造を説明する。
【0014】
図1は、IPS方式の液晶表示装置の断面図である。図1におけるTFTは、いわゆるトップゲートタイプのTFTであり、使用される半導体としては、LTPS(Low Temperature Poly−Si)が使用されている。図1において、ガラス基板100の上にSiNからなる第1下地膜101およびSiOからなる第2下地膜102がCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。第1下地膜101および第2下地膜102の役割はガラス基板100からの不純物が半導体層103を汚染することを防止することである。
【0015】
第2下地膜102の上には半導体層103が形成される。この半導体層103は第2下地膜102に上にCVDによってa−Si膜を形成し、これをレーザアニールすることによってpoly−Si膜に変換したものである。このpoly−Si膜をフォトリソグラフィによってパターニングする。
【0016】
半導体膜103の上にはゲート絶縁膜104が形成される。このゲート絶縁膜104はTEOS(テトラエトキシシラン)によるSiO膜である。この膜もCVDによって形成される。その上にゲート電極105が形成される。ゲート電極105は走査線が兼ねている。ゲート電極105は例えば、MoW膜によって形成される。ゲート電極105あるいは走査線10の抵抗を小さくする必要があるときはAl合金が使用される。
【0017】
ゲート電極105を覆って層間絶縁膜106をSiOによって形成する。層間絶縁膜106はゲート配線105とコンタクト電極107とを絶縁するためである。層間絶縁膜106およびゲート絶縁膜104には、半導体層103のソース部Sをコンタクト電極107と接続するためのスルーホール120が形成される。層間絶縁膜106とゲート絶縁膜104にスルーホール120を形成するためのフォトリソグラフィは同時に行われる。
【0018】
層間絶縁膜106の上にコンタクト電極107が形成される。コンタクト電極107は、スルーホール130を介して画素電極112と接続する。TFTは、図示しない部分においてドレイン線と接続している。
【0019】
コンタクト電極107およびドレイン線は、同層で、同時に形成される。コンタクト電極107およびドレイン線(以後コンタクト電極107で代表させる)は、抵抗を小さくするために、例えば、AlSi合金が使用される。AlSi合金はヒロックを発生したり、Alが他の層に拡散したりするので、例えば、図示しないMoWによるバリア層、およびキャップ層によってAlSiをサンドイッチする構造がとられている。
【0020】
コンタクト電極107を覆って無機パッシベーション膜(絶縁膜)108を被覆し、TFT全体を保護する。無機パッシベーション膜108は第1下地膜101と同様にCVDによって形成される。無機パッシベーション膜108を覆って有機パッシベーション膜109が形成される。有機パッシベーション膜109は感光性のアクリル樹脂で形成される。有機パッシベーション膜109は、アクリル樹脂の他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等でも形成することが出来る。有機パッシベーション膜109は平坦化膜としての役割を持っているので、厚く形成される。有機パッシベーション膜109の膜厚は1〜4μmであるが、多くの場合は2μm程度である。
【0021】
画素電極112とコンタクト電極107との導通を取るために、有機パッシベーション膜109にスルーホール130が形成される。その後コモン電極110となるITO(Indium Tin Oxide)をスパッタリングによって形成し、スルーホール130およびその周辺からITOを除去するようにパターニングする。コモン電極110は各画素共通に平面状に形成することが出来る。コモン電極は初めに形成されるITOなので第1ITOと呼ばれることもある。
【0022】
その後、容量絶縁膜111となるSiNをCVDによって全面に形成する。その後、スルーホール130内において、コンタクト電極107と画素電極112の導通をとるためのスルーホールを容量絶縁膜111および無機パッシベーション膜108に形成する。
【0023】
その後、ITOをスパッタリングによって形成し、パターニングして画素電極112を形成する。画素電極は2番目に形成されるITOなので第2ITOと呼ばれることもある。画素電極の平面は、例えば図6に示すような、屈曲したストライプ状である。画素電極を屈曲させるのは、視野角特性をより均一にするためである。画素電極112の上に配向膜材料をフレキソ印刷あるいはインクジェット等によって塗布し、焼成して配向膜113を形成する。配向膜113の配向処理にはラビング法のほか偏光紫外線による光配向法が用いられる。
【0024】
画素電極112とコモン電極110の間に電圧が印加されると図1に示すような電気力線が発生する。この電界によって液晶分子301を回転させ、液晶層300を通過する光の量を画素毎に制御することによって画像を形成する。
【0025】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタが形成されており、これによってカラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0026】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。オーバーコート膜の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成される。配向膜113の配向処理はTFT基板100側の配向膜113と同様、ラビング法あるいは光配向法が用いられる。
【0027】
なお、以上の構成は例であり、例えば、品種によってTFT基板100における無機パッシベーション膜108が形成されていない場合もある。また、スルーホール130の形成プロセスも品種によって異なる場合がある。以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図2は異形表示パネルの例である。図2は、表示領域1000、外形とも、上下が直線で、側部が曲線であるようなレーストラック状となっている。図2はTFT基板側の平面図である。図2において、表示領域1000には、横方向に走査線10が延在し、縦方向にドレイン線20が延在し、走査線10とドレイン線20で囲まれた領域に画素が形成されている。
【0029】
図2において、表示領域1000より下側には、セレクタ30とドライバIC40とが配置されている。ドライバIC40の外側は、フレキシブル配線基板と接続するための端子領域150となっている。表示領域1000のドレイン線20にはセレクタ30を介してドライバIC40から映像信号が供給される。ドレイン線20は、表示領域1000の横方向の画素分存在するが、ドライバIC40からセレクタ30までの映像信号引き出し線21の数は、例えば、ドレイン線の1/3である。なお、ドレイン線の数をNdとし、映像信号引き出し線の数をNvとすると、Nd/Nv=nで、nは2以上の整数となっている。
【0030】
表示領域1000の両側には、走査線10に走査信号を供給するための走査回路11が存在している。図2では、セレクタ30が表示領域1000と隣接して配置されている。表示領域1000がレーストラック状であるため、表示領域1000の側部の曲線部の外側における領域Aにおいて、走査回路11と表示領域1000の間にセレクタ30が存在している。この場合、走査線10とセレクタ30との間で、配線上の干渉が生ずる。
【0031】
図9は、表示領域1000が矩形の場合の表示装置の平面図である。図9において、表示領域1000の下側にはセレクタ30とドライバIC40、端子部150が順に配置し、表示領域1000の両側には走査回路11が存在している。この場合は、走査回路11から延在する走査線10とセレクタ30との干渉はない。
【0032】
本発明は、異形表示パネルにおいて、走査線10とセレクタ30との干渉を防止して、かつ、額縁領域を小さくする構成を与えるものである。図3はセレクタ30の構成を示す等価回路である。上側が表示領域側であり、下側がドライバIC側である。図3において、TFT51および画素容量52を有する画素50が横方向に配列している。各画素50には、ドレイン線20を介して映像信号が供給される。また、各画素50のTFT51は走査線10によって制御される。
【0033】
セレクタ30は表示領域外におけるドレイン引き出し線(映像信号引き出し線)21の数を減らすために配置され、表示領域の最外部に隣接して配置される。図3におけるセレクタによって、ドライバICから出力する映像信号引き出し線21の数はドレイン線20の1/3になっている。したがって、映像信号引き出し線21の引き回し配線のための面積を節約することが出来る。
【0034】
一方、セレクタ30を制御するために、セレクタ制御線31が必要になる。図4は、図2の領域Aにおけるセレクタ30と画素50の配置を示す平面図である。図4において、赤画素R、緑画素G、青画素Bの3つの画素50のセットは、表示領域1000の外端が曲線に近似されるように、階段状に形成されている。各画素セットに対応するセレクタ30は画素セットに隣接して形成されている。従来は、表示領域1000の外端部に隣接して、表示領域のコモン電極にコモン電圧を供給するコモンバス配線が形成されていたが、本発明では、セレクタ30が配置している点が異なっている。
【0035】
各画素には、図4の横方向の外側に配置する走査回路から走査線が接続される。つまり、セレクタ30はセレクタ用TFTを有しているが、セレクタ用TFTのゲート電極、すなわち、セレクタ制御線と走査線の干渉を防ぐ必要がある。
【0036】
図5は、ドレイン線20が形成された状態までにおける表示領域端部付近の配線レイアウトを示す平面図である。図5の表示領域には、くの字型に屈曲したドレイン線20が縦方向に延在して横方向に配列し、走査線10が横方向に延在して縦方向に配列している。ドレイン線20と走査線10とで囲まれた領域が画素であり、画素電極が形成されるが、図5では、まだ、画素電極は形成されていない。図5において、点線より、ドレイン線20が形成された側が表示領域になっている。
【0037】
最外周の画素に隣接してセレクタ用TFT32がドレイン線20毎に配置している。各セレクタ用TFT32にゲート信号を送るための3本のセレクタ制御線31がセレクタ用TFT32の外側に延在している。走査線10とセレクタ制御信号線31との干渉を防止するために、セレクタ制御線31はドレイン線20と同じ層で配線し、セレクタ用TFT32と接続する直前でスルーホールを介して走査線10と同じ層に乗りかえている。これによって、表示領域が異形であっても、セレクタ30を表示領域に隣接して配置することが出来る。
【0038】
セットになった3つのセレクタ用TFT32には、共通して映像信号引き出し線21を介して映像信号が送られる。この映像信号を、セレクタ制御線31を介する信号によって、ドレイン線20に振り分けて供給する。したがって、図5では、映像信号引き出し線21の数はドレイン線20の数の1/3になっている。本願発明では、セレクタを表示領域に近接して設けている。そのため、映像信号引き出し線21と走査線とが交差することとなる。しかし、セレクタを表示領域から離間して設けた場合は、映像信号引き出し線と走査線との交差箇所を減らすことができるが、ドレイン線との交差数が増加してしまう。本願発明の構成により、走査線とドレイン線との交差箇所数を減らすことができる。更に、セレクタ制御線31を映像信号引き出し線とセレクタとの間に設けることにより、セレクタ制御線と映像信号引き出し線との交差個所を少なくすることが出来るとともに、セレクタ制御線の長さを短くすることができる。尚、図5では、セレクタ制御線をセレクタに沿って配置しているが、映像線引き出し線と平行に設けることも可能である。それにより、セレクタ制御線の長さを更に短くすることが可能となる。
【0039】
ところで、図4に示すように、各セレクタで受け持つY方向の画素の数はX方向によって異なっている。例えば、表示領域1000の外形が直線となっている部分では、セレクタ30が受け持つ画素の数は320画素、表示領域の外形が曲線になっている部分での、セレクタ30が受け持つ画素の最も少ない数は6画素である。
【0040】
そうすると、各セレクタ30で受け持つ配線の抵抗や容量が異なり、したがって、信号の大きさや遅延等が場所によって異なることになる。これを防止するために、本発明では、セレクタ用TFT32のチャンネル幅を場所によって変えている。例えば、直線部に配置するセレクタ用TFT32のチャンネル幅は曲線部に配置されるおけるセレクタ用TFT32のチャンネル幅よりも大きくする。また、曲線部に配置するセレクタ用TFT32のチャンネル幅も場所によって変えている。これによって、異形表示パネルであっても均一な画像を形成することが出来る。
【0041】
図6は、図5と同じ領域に対し画素電極112まで形成した状態における平面図である。すなわち、図5に対し、無機パッシベーション膜、有機パッシベーション膜、コモン電極、容量絶縁膜、画素電極が積層して形成された状態である。図6において、点線より、ドレイン線20が形成された側が表示領域になっている。
【0042】
図6において、透明電極であるコモン電極110がスルーホール130を除く全面に形成されている。表示領域において、ドレイン線20と走査線10とで囲まれた領域に画素電極112がITOによって形成されている。表示領域の外側には、画素電極112と同じ形状のダミー画素電極1121が表示領域の画素電極112と同じピッチで形成されている。これによって、表示領域の最外部における画素電極112が他の表示領域内の画素電極112と同様のプロセス条件で形成できるようにしている。後で述べるように、ダミーの画素電極1121には、コモン電圧を印加することが出来る。
【0043】
図7図5、のA−Aに対応する断面図であり、セレクタ用TFT32付近の断面図を示している。層構造は、図1で説明した表示領域における断面構造と同じである。すなわち、半導体層103の上にゲート絶縁膜104が形成され、その上にゲート電極105が形成され、これを覆って層間絶縁膜106が形成されている。
【0044】
ゲート電極105はセレクタ制御線31に接続されており、ソース電極は映像信号線21となっている。また、ドレイン電極はドレイン線20である。すなわち、セレクタ用TFT32はソース電極が並列して2個形成されている。ドレイン電極およびソース電極を覆って無機パッシベーション膜108が形成され、その上に有機パッシベーション膜109が形成されている。有機パッシベーション膜109の上には、平面状にITOで形成されたコモン電極110が形成されている。
【0045】
コモン電極110を覆って容量絶縁膜111が形成され、その上にダミー画素電極1121が形成されている。すなわち、本発明では、セレクタ用TFT32の上をコモン電極110で覆う形となっている。このコモン電極110は表示領域のコモン電極110と連続して形成されている。このような構成とすることによって、セレクタ30をコモン電極110でシールドすることになる。そして、コモン電極110には、セレクタ30よりもさらに外側に形成されたコモン配線(コモンバス配線)からコモン電圧が供給される。
【0046】
従来は、コモンバス配線は表示領域に隣接して形成されていたが、本発明の構成では、コモンバス配線はセレクタ30よりも外側に形成される。このような構成とすることによって、セレクタ制御線31をドレイン線20あるいはコモンバス配線と同層で形成することが出来るようになる。
【0047】
図6に示すダミー画素電極1121をフロートにしたくない場合は、図7の右側に示すように、容量絶縁膜111にスルーホール140を形成して、ダミー画素電極1121にコモン電圧を供給することが出来る。なお、容量絶縁膜111に形成するスルーホール140は表示領域におけるスルーホール130内において、容量絶縁膜111に形成するスルーホールと同時に形成することが出来る。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、異形表示パネルの場合であっても、表示領域と隣接してセレクタを形成することができるので、異形表示パネルにおける額縁領域の面積の増大を防止することが出来る。また、セレクタをコモン電極によってシールドすることが出来、かつ、セレクタ用TFTのチャンネル幅を場所によって変化させることによって、異形表示パネルにおいても均一な画面を形成することが出来る。
【0049】
以上は図2に示すようなレーストラック状の異形表示パネルについて説明したが、これに限らず、例えば、図8に示すようなハート型異形表示パネルについても適用することが出来る。図8の形状に対しては、図2で説明したのとほとんど同じ構成を適用することが出来る。つまり、図8の領域Aは図2の領域Aと同様な構成とすることが出来る。ただし、図8では表示領域の上部が直線ではないので、表示領域の下方に配置するセレクタ用TFTの容量、すなわち、チャンネル幅は、直線部においても変える必要がある。
【0050】
図2図8等の異形表示領域は、直線と曲線の組み合わせであるが、3角形、5角形、6角形等の辺が直線の組み合わせで形成された表示領域を有する表示装置に対しても本発明を適用することが出来る。また、図2図8等は走査回路が画面の両側に存在しているが、走査回路は画面の片側に存在する場合にも本発明を適用することが出来る。尚、本発明は、液晶表示装置に限定されるものではなく、矩形以外の形状の表示領域を有し、表示領域のドレイン線(映像信号線)に対し、映像信号を時分割で供給するセレクタ(スイッチ回路)を有する、有機EL型表示装置等、表示装置全般に適用することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
10…走査線、 11…走査回路、 20…ドレイン線、 21…映像信号線、 30…セレクタ、 31…セレクタ制御信号線、 32…セレクタ用TFT、 40…ドライバIC、 50…画素、 51…画素用TFT、 52…画素容量、 100…TFT基板、 101…第1下地膜、 102…第2下地膜、 103…半導体層、 104…ゲート絶縁膜、 105…ゲート電極、 106…層間絶縁膜、 107…コンタクト電極、 108…無機パッシベーション膜、 109…有機パッシベーション膜、 110…コモン電極、 111…容量絶縁膜、 112…画素電極、 113…配向膜、 120…第1スルーホール、 130…第2スルーホール、 140…スルーホール、 150…端子領域、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 1121…ダミー画素電極、 D…ドレイン部、S…ソース部
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