(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、複数の実施形態について図面に基づいて説明する。各実施形態の説明において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図1から
図4を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の巻鉄心10は、2つの鉄心11と、各鉄心11に挟まれたギャップ材12と、各鉄心11およびギャップ材12を環状に組み合わせた状態に締結する締結部材13とを備えている。この巻鉄心10は、図示しないコイルとともに例えば変圧器等に用いられる。
【0008】
各鉄心11は、例えばけい素鋼板等の鉄心材を環状に巻回したものを2つに切断することにより、概ねC字状に形成されている。このとき、各鉄心11の切断面、つまりは、互いの鉄心11が対向する部位である端面11aは、水平研磨されている。このため、切断後においては、各鉄心11の端面11aは、互いに平行となっている。つまり、巻鉄心10では、内周側のギャップ長(L1)は、外周側のギャップ長(L2)と一致している。ここで、「一致」とは、所定の公差を含んだ状態を意味している。
【0009】
ギャップ材12は、鉄心11を環状に組み合わせた際の接合部、つまりは、各鉄心11の端面11aが向かい合う空間であるギャップを埋めるように設けられている。このギャップ材12は、本実施形態では、例えばフェライトやアルミナ等、無機物を焼き固めた焼結体であるセラミック材料で形成されている。このため、ギャップ材12は、熱膨張率が極めて低いとともに、鉄心11に比べて硬度が相対的に高くなっている。つまり、ギャップ材12は、形状の変化に対する耐性が非常に高く、温度や外部から加わる力による変形がほぼ生じないものとなっている。このギャップ材12は、例えば樹脂材料等により鉄心11に接着あるいは固定されている。
【0010】
締結部材13は、各鉄心11を、鉄心11間にギャップ材12を挟んだ状態で環状に組み合わせた状態に締結する。この締結部材13は、鉄心11を環状に維持できる強度で、且つ、比較的重量がある鉄心11がばらばらにならないように、鉄心11およびギャップ材12を強固に締結している。これにより、巻鉄心10は、四隅にR状のコーナー部を有する略長方形の環状に形成される。
次に、上記した構成の作用について説明する。
【0011】
まず、
図2および
図3を参照しながら、従来の巻鉄心110に生じる不具合について説明する。
図2は、従来の巻鉄心110を模式的に示しており、ギャップ材112の材料以外は、
図1に示した本実施形態の巻鉄心10と共通する。この従来の巻鉄心110は、ギャップ材112が例えばソフトフェライト等の比較的硬度が低い材料で形成されており、変形を許容する構造となっていた。
そのため、製造時に端面11aを水平研磨したとしても、例えば変圧器等において実際に運転した場合には、磁束は鉄心11の内周側のほうが流れ易いことから、内周側の方が外周側よりも発熱量が多くなり、内周側の変形量が大きくなって鉄心11の変形を招いていた。
【0012】
具体的には、例えば締結部材13により強固に鉄心11を締結した場合には、外周側への変形が許容されないことから、ギャップ材12を囲うようにコイルを設けた構成であれば、巻鉄心110は、
図2に示すように内側に向かって変形する。すなわち、ギャップ材112の外周側が押しつぶされることによって、鉄心11間の距離すなわちギャップ長が内周側と外周側とで異なるようになる。この場合、内周側のギャップ長(L11。ただし、L11>L1)が長くなる一方、外周側のギャップ長(L12。ただし、L12<L1)が短くなる。そして、ギャップ長が短くなった側、つまり、
図2でいえば巻鉄心110の外周側には磁束がより集中することになるため、巻鉄心110は、外周側がさらに発熱し、更なる変形が引き起こされる可能性がある。
【0013】
あるいは、締結部材13により比較的緩やかに鉄心11を締結した場合には、外周側への変形が許容され、巻鉄心110は、
図3に示すように外側に向かって変形する。すなわち、ギャップ材112の内周側が押しつぶされることによって、鉄心11間の距離すなわちギャップ長が内周側と外周側とで異なるようになる。この場合、内周側のギャップ長(L11。ただし、L11<L1)が短くなる一方、外周側のギャップ長(L12。ただし、L12>L1)が長くなる。つまり、ギャップの内周側と外周側とで磁気抵抗が不均一となる。
【0014】
そして、ギャップ長が短くなった側、つまり、
図3でいえば巻鉄心110の内周側には磁束がより集中することになるため、巻鉄心110は、内周側がさらに発熱し、更なる変形が引き起こされる可能性がある。
このように、従来では、実際に運転した際の熱膨張による変形によってギャップ長が変化して温度分布が不均一化するという問題があった。
【0015】
これに対して、実施形態の巻鉄心10の場合、ギャップ材12は、上記したように熱膨張率が極めて低いとともに、鉄心11に比べて硬度が相対的に高いセラミック材料で形成されている。このため、巻鉄心10の場合には、実際に運転した場合に変形することがない。すなわち、巻鉄心10の場合には、内周側と外周側とでギャップ長が異なる状態にはならない。
【0016】
これにより、内周側と外周側とでギャップ長が変わらないことから、磁気抵抗を均一化することができ、外周側や内周側の一方のみが発熱し続けることを防止することができる。また、ギャップ長が変わらないことから、温度分布の不均一化を防止することができる。
このとき、締結部材13を外せば巻鉄心10を2つに分解することができるため、巻鉄心10や図示しないコイルの修理や交換作業を効率よく行うことができるとともに、例えば変圧器の補修等が容易な構成であることは勿論である。
【0017】
また、例えば
図4に示す他の巻鉄心20の場合にも、巻鉄心10と同様の効果を得ることができる。具体的には、巻鉄心20は、外側に広がった形状の2つの鉄心21と、各鉄心21の間に設けられているセラミック材料で形成されたギャップ材22と、締結部材13とを備えている。この鉄心21は、製造時に既に広がった形状とされており、各鉄心21の切断面は、鉄心21が広がった状態で互いに平行となるように水平研磨されている。
このような巻鉄心20であっても、外周側や内周側の一方のみが発熱し続けることを防止することができるとともに、ギャップ長が変わらないことから、温度分布の不均一化を防止することができる。
【0018】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、
図5から
図7を参照しながら説明する。
上記した第1実施形態で説明したように、従来では、実際に運転した際の熱膨張による変形によってギャップ長が変化して温度分布が不均一化するという問題があった。ただし、その問題は、予め熱膨張による変形を考慮した構造とすることによっても解決することができる。以下、4つの具体例1〜4に基づいて説明する。
【0019】
<具体例1>
図5に示す巻鉄心30は、2つの鉄心31と、各鉄心31に挟まれたギャップ材32と、各鉄心31およびギャップ材32を組み合わせた状態に締結する締結部材13とを備えている。各鉄心31は、それぞれ、環状に組み合わされた状態において内周側に配置される第一鉄心31aと、外周側に配置される第二鉄心31bとにより構成されている。また、本例の場合、ギャップ材32は、外部から加わる力に応じて変形する材料、例えばソフトフェライトにより形成されている。
【0020】
第一鉄心31aおよび第二鉄心31bは、鉄心材をそれぞれ異なる径となるように巻回したものを2つに分割することで形成されている。このとき、第一鉄心31aの外形は、第二鉄心31bの内径にほぼ一致するように形成されている。このため、第一鉄心31aおよび第二鉄心31bを組み合わせた場合には、互いの隙間がほとんど無い状態となる。
そして、第一鉄心31aおよび第二鉄心31bの端面は、互いに平行となるように水平研磨されている。ただし、内周側に配置される第一鉄心31a間のギャップ長(L1)は、外周側に配置される第二鉄心31bのギャップ長(L2)よりも長くなるように形成されている。
【0021】
すなわち、巻鉄心30は、鉄心31を環状に組み合わせた状態における内周側と外周側とでギャップ長が異なっているとともに、内周側のギャップ長(L1)が外周側のギャップ長(L2)よりも長くなるように形成されている。
そして、内周側のギャップ長と外周側のギャップ長とは、運転時の発熱量、例えば定格負荷で運転した際の発熱量に基づいてそれぞれ設計されている。換言すると、内周側のギャップ長および外周側のギャップ長は、運転時に第一鉄心31aおよび第二鉄心31bが発熱により変形する変形量を考慮して、運転時に両者が概ね同じ長さとなるように設計されている。
【0022】
この巻鉄心30を例えば変圧器等において実際に運転した場合には、磁束が流れ易い内周側の方が外周側よりも変形量が大きくなることから、内周側のギャップ長が短くなる。このとき、上記したようにギャップ材32はソフトフェライトにより形成されていることから、鉄心31が変形することにより押しつぶされ、ギャップ長が短くなることが許容される。つまり、ギャップ材32は、自身が圧縮されることにより、鉄心31の変形を吸収する。
【0023】
これにより、運転時には、内周側と外周側のギャップ長が概ね同じ長さとなり、磁気抵抗を均一化することができ、温度分布の不均一化を防止することができる。
また、ギャップ材32をソフトフェライトで形成しているため、上記した段差のあるギャップに対しても、容易にギャップ材32を充填あるいは挿入することができる。
【0024】
<具体例2>
図6に示す巻鉄心40は、2つの鉄心41と、各鉄心41に挟まれたギャップ材42と、各鉄心41およびギャップ材42を組み合わせた状態に締結する締結部材13とを備えている。各鉄心41は、それぞれ、環状に組み合わされた状態において内周側に配置される第一鉄心41aと、外周側に配置される第二鉄心41bとにより構成されている。また、本例の場合、ギャップ材42は、外部から加わる力に応じて変形する材料、例えばソフトフェライトにより形成されている。
【0025】
第一鉄心41aおよび第二鉄心41bは、鉄心材をそれぞれ異なる径となるように巻回したものを2つに分割することで形成されている。このとき、第一鉄心41aの外形は、第二鉄心41bの内径にほぼ一致するように形成されている。このため、第一鉄心41aおよび第二鉄心41bを組み合わせた場合には、互いの隙間がほとんど無い状態となる。
【0026】
そして、第一鉄心41aおよび第二鉄心41bの端面は、ギャップ長が内周側に向かうほど長くなるように研磨されている。具体的には、内周側に配置される第一鉄心41a間のギャップ長(L1)は、外周側に配置される第二鉄心41bのギャップ長(L2)よりも長くなるように形成されている。
すなわち、巻鉄心40は、鉄心41を環状に組み合わせた状態における内周側と外周側とでギャップ長が異なっているとともに、内周側のギャップ長(L1)が外周側のギャップ長(L2)よりも長くなるように形成されている。
【0027】
そして、内周側のギャップ長と外周側のギャップ長とは、運転時の発熱量、例えば定格負荷で運転した際の発熱量に基づいてそれぞれ設計されている。換言すると、内周側のギャップ長および外周側のギャップ長は、運転時に第一鉄心41aおよび第二鉄心41bが発熱により変形する変形量を考慮して、運転時に両者が概ね同じ長さとなるように設計されている。
【0028】
この巻鉄心40を例えば変圧器等において実際に運転した場合には、磁束が流れ易い内周側の方が外周側よりも変形量が大きくなることから、内周側のギャップ長が短くなる。このとき、上記したようにギャップ材42はソフトフェライトにより形成されていることから、鉄心41が変形することにより押しつぶされ、ギャップ長が短くなることが許容される。
これにより、運転時には、内周側と外周側のギャップ長が概ね同じ長さとなり、磁気抵抗を均一化することができ、温度分布の不均一化を防止することができる。
また、ギャップ材42をソフトフェライトで形成しているため、上記した段差のあるギャップに対しても、容易にギャップ材42を充填あるいは挿入することができる。
【0029】
<具体例3>
図7に示す巻鉄心50は、2つの鉄心51と、各鉄心51に挟まれたギャップ材52と、各鉄心51およびギャップ材52を組み合わせた状態に締結する締結部材13とを備えている。各鉄心51は、鉄心材を巻回したものを2つに分割することで形成されている。そして、各鉄心51の端面は、内周側のギャップ長(L1)が外周側のギャップ長(L2)よりも長くなるように、段差状に研磨されている。
【0030】
すなわち、巻鉄心50は、鉄心51を環状に組み合わせた状態における内周側と外周側とでギャップ長が異なっているとともに、内周側のギャップ長(L1)が外周側のギャップ長(L2)よりも長くなるように形成されている。
また、本例の場合、ギャップ材52は、外部から加わる力に応じて変形する材料、例えばソフトフェライトにより形成されている。なお、ギャップ材52は、実質的には上記した具体例1のギャップ材32と共通するものである。
【0031】
このとき、内周側のギャップ長と外周側のギャップ長とは、運転時の発熱量、例えば定格負荷で運転した際の発熱量に基づいてそれぞれ設計されている。換言すると、内周側のギャップ長および外周側のギャップ長は、運転時に鉄心51が発熱により変形する変形量を考慮して、運転時に両者が概ね同じ長さとなるように設計されている。
【0032】
この巻鉄心50を例えば変圧器等において実際に運転した場合には、磁束が流れ易い内周側の方が外周側よりも変形量が大きくなることから、内周側のギャップ長が短くなる。このとき、上記したようにギャップ材52はソフトフェライトにより形成されていることから、鉄心51が変形することにより押しつぶされ、ギャップ長が短くなることが許容される。
【0033】
これにより、運転時には、内周側と外周側のギャップ長が概ね同じ長さとなり、磁気抵抗を均一化することができ、温度分布の不均一化を防止することができる。
また、ギャップ材52をソフトフェライトで形成しているため、上記した段差のあるギャップに対しても、容易にギャップ材52を充填あるいは挿入することができる。
【0034】
<具体例4>
図8に示す巻鉄心60は、2つの鉄心61と、各鉄心61に挟まれたギャップ材62と、各鉄心61およびギャップ材62を組み合わせた状態に締結する締結部材13とを備えている。そして、各鉄心61の端面は、ギャップ長が内周側に向かうほど長くなるように研磨されている。具体的には、内周側のギャップ長(L1)は、外周側のギャップ長(L2)よりも長くなるように形成されている。
【0035】
すなわち、巻鉄心60は、鉄心61を環状に組み合わせた状態における内周側と外周側とでギャップ長が異なっているとともに、内周側のギャップ長(L1)が外周側のギャップ長(L2)よりも長くなるように形成されている。
また、本例の場合、ギャップ材62は、外部から加わる力に応じて変形する材料、例えばソフトフェライトにより形成されている。なお、ギャップ材62は、実質的には上記した具体例2のギャップ材42と共通するものである。
【0036】
そして、内周側のギャップ長と外周側のギャップ長とは、運転時の発熱量、例えば定格負荷で運転した際の発熱量に基づいてそれぞれ設計されている。換言すると、内周側のギャップ長および外周側のギャップ長は、運転時に鉄心61が発熱により変形する変形量を考慮して、運転時に両者が概ね同じ長さとなるように設計されている。
【0037】
この巻鉄心60を例えば変圧器等において実際に運転した場合には、磁束が流れ易い内周側の方が外周側よりも変形量が大きくなることから、内周側のギャップ長が短くなる。このとき、上記したようにギャップ材62はソフトフェライトにより形成されていることから、鉄心61が変形することにより押しつぶされ、ギャップ長が短くなることが許容される。
【0038】
これにより、運転時には、内周側と外周側のギャップ長が概ね同じ長さとなり、磁気抵抗を均一化することができ、温度分布の不均一化を防止することができる。
また、ギャップ材62をソフトフェライトで形成しているため、上記した段差のあるギャップに対しても、容易にギャップ材62を充填あるいは挿入することができる。
【0039】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、
図9を参照しながら説明する。
上記した第1実施形態で説明したように、従来では、実際に運転した際の熱膨張による変形によってギャップ長が変化して温度分布が不均一化するという問題があった。ただし、その問題は、予め熱膨張による変形を考慮した構造とすることによっても解決することができる。
【0040】
図9に示す巻鉄心70は、2つの鉄心71と、各鉄心71に挟まれたギャップ材72と、各鉄心71およびギャップ材72を組み合わせた状態に締結する締結部材13とを備えている。各鉄心71は、それぞれ、環状に組み合わされた状態において内周側に配置される第一鉄心71aと、外周側に配置される第二鉄心71bとにより構成されている。また、本例の場合、ギャップ材72は、例えばソフトフェライトでもよいが、本実施形態では第1実施形態で説明したセラミック材料により形成されている。
【0041】
第一鉄心71aおよび第二鉄心71bは、鉄心材をそれぞれ異なる径となるように巻回したものを2つに分割することで形成されている。また第一鉄心71aおよび第二鉄心71bの端面は、互いに平行となるように水平研磨されている。そして、製造時には、内周側に配置される第一鉄心71a間のギャップ長(L1)と、外周側に配置される第二鉄心71bのギャップ長(L2)とがほぼ一致するように形成されている。つまり、第一鉄心71aおよび第二鉄心71bは、組み合わされた状態においてその端面が面一となっている。
【0042】
これにより、巻鉄心70は、四隅がR状となった略長方形の環状に形成されるとともに、その幅方向(図示左右方向)つまりは略長方形における短手方向においては第一鉄心71aおよび第二鉄心71bの隙間がほとんど無い状態となる一方、その高さ方向(図示上下方向)つまりは略長方形における長手方向においては第一鉄心71aおよび第二鉄心71bとの間に空隙73(緩衝部)が形成される。つまり、略長方形の環状の短手側の腕部間に、空隙73が形成される。
【0043】
この空隙73は、運転時の発熱量、例えば定格負荷で運転した際の発熱量に基づいてそれぞれ設計されている。換言すると、空隙73は、運転時に第一鉄心71aが発熱により変形する変形量を考慮して設計されている。
本実施形態の場合、空隙73には、例えば樹脂材料で形成された充填剤74が充填されている。なお、
図9では、充填剤74を模式的にハッチングにより示している。これにより、第一鉄心71aと第二鉄心71bとは、空隙73において互いに固定あるいは固着されている。この充填剤74は、ギャップ材72よりも強度が相対的に低い材料で形成されている。
【0044】
この巻鉄心30を例えば変圧器等において実際に運転した場合には、磁束が流れ易い内周側の方が外周側よりも変形量が大きくなることから、第一鉄心71aの変形量が大きくなる。このとき、上記したようにギャップ材72よりも充填剤74のほうが硬度は低いことから、第一鉄心71aは、充填剤74を押し付けながら空隙73内に侵入する。つまり、発熱による第一鉄心71aの変形は、空隙73によって吸収される。つまり、空隙73は、緩衝部として機能する。
【0045】
これにより、運転時には、内周側と外周側のギャップ長が概ね同じ長さとなり、磁気抵抗を均一化することができ、温度分布の不均一化を防止することができる。
なお、例えば樹脂を含浸させること等により長手側のヨーク(図示左右のヨーク)にて第一鉄心71aと第二鉄心71bとを固定できるのであれば、必ずしも空隙73に充填剤74を充填しなくてもよい。
【0046】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、
図10および
図11を参照しながら説明する。
上記した実施形態ではギャップを長手側のヨークに設けた例を示したが、ギャップを他の位置に設けてもよい。
【0047】
例えば、
図10に示す巻鉄心80のように、ギャップをコーナー部80aに設けてもよい。本実施形態の場合、鉄心81は、図示左右側の長手側となるヨークを有する略U字状の鉄心81aと、図示上方の短手側の腕部となる鉄心81bとにより形成されている。つまり、巻鉄心80は、略長方形の環状において、端手側の1辺が分割可能に形成されている。この鉄心81aは、鉄心材をそれぞれ異なる径となるように巻回したものを分割することで形成されている。
【0048】
各鉄心81a、81bは、それぞれの端面が、環状に組み合わされた状態で平行となるように研磨されている。そして、各鉄心81a、81bの端面間に、ギャップが設けられている。このギャップには、本実施形態では第1実施形態で説明したセラミック材料により形成されたギャップ材82が配置されている。
このように、ギャップをR状のコーナー部80aに設けた巻鉄心80であっても、ギャップ材82をセラミック材料により形成することにより、運転時にギャップ長が変化することによる温度分布の不均一化を招くことがない。
【0049】
また、コーナー部80aにギャップを設けているので、バンド状の締結部材13で締め付けることにより、短手側の腕部を、ギャップ材を介して長手側のヨークに密着させて押し付けることができる。したがって、鉄心81およびギャップ材82をしっかりと締結することができる。
【0050】
ところで、ギャップを設ける場合には、ギャップにおいて透磁率が低下することになるため、ギャップにおける透磁率を調整する構成としてもよい。具体的には、
図11(a)に示すように、巻鉄心90は、鉄心91a、91b、ギャップ材92、および締結部材13を備えている。これら鉄心91a、91bは、上記した鉄心81a、81bと実質的に共通するので、その説明を省略する。
【0051】
ギャップ材92は、
図11(b)に示すように、磁性体材料で形成されている磁性部材92aと、磁性部材92aを保持する保持部材92bとにより構成されている。磁性部材92aは、例えばフェライトにより薄い板状、且つ、ギャップ内に納まる大きさに形成されている。保持部材92bは、鉄心91a、91bのコーナー部に沿った形状の鍔部と、磁性部材92aを収容するとともに磁性部材92aが内周側に落下しないように保持する保持部とから構成されている。
【0052】
これにより、磁性部材92aによってギャップにおける透磁率が調整されるとともに、うず電流損発生部位の縮小と渦電流路の遮断を果たすことができる。
また、鍔部と保持部とを有する保持部材92bにより磁性部材92aを保持することにより、磁性部材92aのずれや脱落を防止することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各実施形態に示した構成や構造を任意に変形あるいは組み合わせることができる。
第1実施形態の巻鉄心10に、第4実施形態で例示した磁性部材92aおよび保持部材92bを設けてもよい。
【0054】
第2実施形態の
図5では内周側と外周側の2つの第一鉄心31aと第二鉄心31bに区分けした巻鉄心30例示したが、鉄心31を3以上に区分けしてもよい。すなわち、第一鉄心31aとは、鉄心31において最も内周側に配置されるものであることを意味し、第二鉄心31bとは、鉄心31において最も外周側に配置されるものであることを意味するのであって、鉄心31の区分けを2に限定するものではない。
【0055】
第2実施形態の
図6では外周側から内周側に向かってほぼ連続的にギャップ長が変化するように端面を傾斜させた巻鉄心40を例示したが、ギャップ長が段階的に変化するように端面を段差状としてもよい。
第2実施形態の
図7では内周側と外周側とで異なる2段階のギャップ長を有する巻鉄心50を例示したが、3段階以上のギャップ長を有する構成としてもよい。
【0056】
第2実施形態の
図8では外周側から内周側に向かってほぼ連続的にギャップ長が変化するように端面を傾斜させた巻鉄心60を例示したが、ギャップ長が段階的に変化するように端面を段差状としてもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。